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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1194671 |
審判番号 | 不服2006-26762 |
総通号数 | 113 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-11-28 |
確定日 | 2009-03-16 |
事件の表示 | 特願2001-313666「カード玩具装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月22日出願公開、特開2003-117049〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は平成13年10月11日に出願されたものであって、原審において平成18年10月10日付けの手続補正書が平成18年10月27日付けで却下されるとともに、同日付けで拒絶の査定がされたところ、これを不服として同年11月28日付けで本件審判請求がされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正がされたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成18年11月28日付けの手続補正を却下する。 [理由] 平成18年11月28日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正を含んでおり、補正後の請求項1には、「該制御部は、 該読み出した音声データの信号を前記音声出力部に対して出力した後、所定の時間が経過すると、前記読み出した音声データに対応する取り札用カードのヒントである音声データの信号を前記音声出力部に対して出力を行うと共に、前記トーキングスイッチが操作されると次に進んで動作モードの選択に戻る終了とするか、又は、次に進んで新たな音声データを前記記憶部から選択して読み出して前記トーキングスイッチが再度操作されると読み出した音声データの信号を前記音声出力部に対して出力することを繰り返す」と記載されている。当該記載事項について検討する。 請求人は審判請求書において、この記載事項について「段落番号【0018】及び正誤判断のフローチャートを示す図8」を補正の根拠と主張しているので、それらの箇所も含めて、願書に最初に添付した明細書(以下、図面も含めて「当初明細書」という。)の記載を検討する。 当初明細書の段落【0018】は「キャラクターの姿」をした「装置本体10」の概要に関する説明であり、トーキングスイッチに関する制御の記載ではない。平成18年7月10日付け手続補正による全文補正明細書では、段落【0018】に「トーキングスイッチが操作されると、次の読み札に進む」という記載があるから、請求人の上記主張における「段落番号【0018】」はこちらを指す趣旨であると解される。当初明細書では、段落【0022】がこれに対応し、そこにおける記載は次のとおりである。 「【0022】ステップ206のカードの正誤判定となると、図8のステップ500に進み、読取手段によりカードに記載されている信号を読み取り、ステップ501にて正誤の判定をおこなう。ステップ501で、読み取り手段で読取った取り札が正解であると判定されるとステップ502に進み、例えば「大正解!次いくよ!」などの音声を出力し、ステップ207に戻る。取り札が間違えであった場合には、例えば「ブー!ちがうよ!」などの音声を出力し、ステップ504にてトーキングスイッチが操作されていなければ、ステップ500に戻り、再び新しくカードが差し込まれるのを待つ。不正解であってもトーキングスイッチが操作されると、次の読み札に進むため、ステップ207に戻る。」 そして【図8】には、「差し込まれたカード」を「読み取り」(ステップ500)、「カードは正解?」の判定を行い(ステップ501)、YES(当審注;「正解」)であれば「正解をほめる音声を出力」(ステップ502)して「戻る」に至り、NO(当審注;「不正解」)であれば「不正解」を告げ「正しいカードを差すように音声を出力」(ステップ503)して、「トーキングスイッチON?」の判定(ステップ504)を行い、YES(当審注;トーキングスイッチが操作された)であれば「戻る」に至り、NO(当審注;トーキングスイッチが操作されない)であればステップ500に戻る、というフロー図が示されている。 【図8】の「戻る」に至った場合、「通常モード」のフローである【図7】によれば、「カードの正誤判定」(ステップ404)に後続する処理として、「選択スイッチ変更あり?」の判定(ステップ405)がNOであれば「ランダムに音声データを1つ選択」(ステップ401)に戻り、YESであれば「A」に至る。「A」は【図4】の「選択スイッチに応じたモードを実行」(ステップ100)であり、段落【0020】の記載によれば「図4のステップ100にて現在選択スイッチによりステップ200のテストモード、ステップ300の練習モード、ステップ400の通常モードのいずれが選択されているかを読取り、選択されているモードで実行開始する」という動作に至る。なお、その他のモードである「テストモード」(【図5】)及び「練習モード」(【図6】)の場合についても、【図8】の「戻る」に至った際には「カードの正誤判定」(ステップ206又は306)に後続する処理に至り、そこには同様の「選択スイッチ変更あり?」の判定(ステップ208又は306)による同様の処理が含まれている。 「ヒント」については、段落【0031】に「読み札の音声が出力された後、所定の時間を経過しても読取手段に取り札が読み取られていない場合には、取り札を分かり易くするヒントとなる音声が出力されることで幼児などをサポートすることや、面白い独り言などの音声を出力することで、その場の雰囲気を盛り上げる愉快な装置とすることもできる。」との記載が存在するが、上述した処理フロー中の他の判断処理と特定の関係を持たせることは記載されていない。 以上の当初明細書の記載を総合すると、まず前述した段落【0022】、【図7】及び【図8】からして、「カードの正誤判定」において「差し込まれたカード」が「正解」した場合、並びに「差し込まれたカード」が「正解」でなく、「不正解」を告げられた後に「トーキングスイッチ」が操作された場合に、「カードの正誤判定」処理から抜けること(以下、「トーキングスイッチの第2の機能」と称する。)は、開示されていると言える。また、前述した段落【0031】の記載からして、「所定の時間を経過しても読取手段に取り札が読み取られていない場合」に「ヒントとなる音声」を出力するという事項についても、開示されていると言える。 しかしながら、本件補正後の請求項1に記載される如く「該制御部は、 ・・・所定の時間が経過すると、・・・ヒントである音声データの信号を前記音声出力部に対して出力を行うと共に、前記トーキングスイッチが操作されると次に進んで動作モードの選択に戻る終了とするか、又は、・・・・」という事項は、上記の如き当初明細書に記載されていたということはできない。すなわち、前掲請求項1の記載に従えば、「所定の時間が経過」して「ヒント」の「出力を行うと共に」、トーキングスイッチの第2の機能が有効にならなければならないが、当初明細書において「ヒント」の出力後にトーキングスイッチの第2の機能を有効にすることは示されていない。当初明細書において、トーキングスイッチの第2の機能が有効とされるのは、【図8】におけるステップ504に至ったときであり、要するに不正解のカードを差し込んで不正解を告げられた後である。その他のときにトーキングスイッチの第2の機能を有効とすることは記載されていない。「ヒント」の出力については、前掲段落【0031】に「所定の時間を経過しても読取手段に取り札が読み取られていない場合」にこれを行ってよい旨が記載されているものの、単にそれだけに止まる。不正解の後にトーキングスイッチの第2の機能を有効とする当初明細書に示された関係を作り変えて、ヒント出力の後に当該機能を有効にするという新たな関係を形成することは、当初明細書の記載の総合にない新たな事項と言わざるを得ない。なお、本件補正後の請求項1について、「ヒントである・・・出力を行うと共に」における「共に」の記載を誤記であると善解し、所定の時間でヒントを出力することと、トーキングスイッチに第2の機能を持たせることとが、無関係に並べて記載されているものと解しても、前述したとおり、不正解を告げられた後以外のときを含めて、一般的にトーキングスイッチに第2の機能を持たせることは、当初明細書に記載した事項を超えるものであるから、やはり新規事項である。 さらに、第2の機能が有効な状態で「トーキングスイッチが操作」された場合の処理内容について検討すると、当初明細書では、【図8】で不正解となりトーキングスイッチが操作された場合の処理内容は、同図中下端の「戻る」に至るというものであり、カードが正解であったときの処理内容と変わりはない。そしてその場合、【図7】で見ればステップ405で、「選択スイッチ変更あり?」の判断は行ったうえで、変更がされていなければステップ401へと進み「ランダムに音声データを1つ選択」する一方、変更がされていれば【図7】の「A」に進んで【図4】のステップ100に進み、「選択されているモードで実行開始」(前掲段落【0020】)する。すなわち、当初明細書の記載では、正解した場合と不正解の後にトーキングスイッチが操作された場合とで処理は変わらず、選択スイッチは確認したうえで、新たな音声データを読み出すか変更後のモードで動作を実行するかのいずれかとなる。これに対して、本件補正後の請求項1では、「正しいときは次に進み」と記載する一方、「前記トーキングスイッチが操作されると次に進んで動作モードの選択に戻る終了とするか、又は、次に進んで新たな音声データを前記記憶部から選択して読み出して・・・・」と記載しているから、正解のときと「トーキングスイッチが操作」されたときの処理の記載は同じではなく、「トーキングスイッチが操作」のときのみ、「動作モードの選択に戻る終了」とするか「次の音声データを読み出す」かのいずれかが行われることとなる。しかしながら、前述したとおり、当初明細書の記載では正解した場合と不正解でトーキングスイッチを操作した場合とで処理は変更しておらず、また選択スイッチは確認したうえで「次の音声データを読み出す」か「変更後のモードで動作を実行」するかのいずれかを行っているから、上記の如き本件補正後の請求項1の記載事項は、「トーキングスイッチが操作」されたときの処理内容の独自性、及びそのときの処理の選択内容という点で、当初明細書に示されていなかった事項を含んでいる。当初明細書の記載を総合しても、正解したときと「トーキングスイッチが操作」されたときとを差別化して後者の場合のみ択一的処理を行わせること、及び、当該択一的処理を「次の音声データを読み出す」か「モードの選択に戻る」かのいずれかという形とすることは、存在しなかった技術的関係であるから、これらは当初明細書の記載の総合との関係において、新たな事項である。 したがって、本件補正後の請求項1には、「該制御部は、 ・・・・ヒントである音声データの信号を前記音声出力部に対して出力を行うと共に、前記トーキングスイッチが操作されると次に進んで動作モードの選択に戻る終了とするか、又は、次に進んで新たな音声データを前記記憶部から選択して読み出して・・・・・出力することを繰り返す」と記載した点で、当初明細書の記載の総合との関係において新たな技術事項が導入されている。 [補正の却下の決定のむすび] 以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に違反しているから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。 よって、補正の却下の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求についての判断 平成18年11月28日付け手続補正は当審において却下され、平成18年10月10日付け手続補正は原審によって却下されているから、以下では、平成18年7月10日付けで補正された明細書及び図面に基づいて審理する。 1.本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年7月10日付け手続補正により補正された明細書の、特許請求の範囲における【請求項1】の記載により特定されるものであり、その記載は次のとおりである。 「絵及び文字列を表面に表示した複数の取り札用カードと、動作モードの選択操作に応じた操作信号を出力する入力部と、読み札の音声データが記憶されている記憶部と、前記取り札用カードの情報を読み取る読取手段と、信号を音声に変換して出力する音声出力部と、信号を表示する表示部と、前記記憶部より読み札の音声データを読み出し、該読み出した音声データの信号を前記音声出力部に対して出力した後、前記読取手段が読み取った情報に基づいて正誤の判定を行い、該正誤の判定結果に応じた信号を前記音声出力部や前記表示部に対して出力を行う制御部とを備え、前記制御部は、前記読み札の音声データを読み出し、該読み出した音声データの信号を前記音声出力部に対して出力した後、所定の時間が経過すると、前記読み出した音声データに対応する取り札用カードのヒントである音声データの信号を前記音声出力部に対して出力を行うことを特徴とするカード玩具装置。」 2.引用刊行物に記載される事項の認定 本願出願前に頒布された刊行物であり、原査定の理由に引用された特開昭59-91982号公報(以下、「引用例」という。)には、次の記載がされている。 ア.「合成音声発声玩具」(発明の名称) イ.「(2)は制御回路、(3)は音声合成回路で、これら記憶回路(1)、制御回路(2)、音声合成回路(3)は夫々電気回路により接続され、制御回路(2)により上記記憶回路(1)から所要の音声合成情報を選択的に読み出して上記音声合成回路(3)に与える様に構成される。(S1)は上記制御回路(2)にたいして予め設定された音声合成のモードを指定するための切換スイッチで、同スイッチ(S1)は4コのオンオフスイッチを用いて予めコード化された4ビットの情報として切換信号を制御回路(2)に与えるものとする。」(第1頁右欄第8-18行) ウ.「まづ電源スイッチ(S5)をオンし、カード(10)によって切換スイッチ(S1)を選択的にオンオフし、そのカード(10)による音声合成のモードを指定する信号を上記制御回路(2)に与える。」(第2頁左下欄第16-19行) エ.「つぎに第2のモードが選択された場合には予めプログラムされた全てのカードの内容を発声する多くの音声編集情報の中からランダムに一つの音声編集情報が読み出され、上記と同様にスピーカ(9)から一連の言葉が発声され、例えばカードの絵の内容として、「何々の何が何している何のカードをとりなさい」という様な音声が発声される。この発声に基づいて多くのカード(5)の中から上記言葉に対応すると思われる絵を表示したカード(5)を選び出しリセプター(4)にセットすると、同カード(5)の端縁に形成された機械的変形部によって上記スイッチ(S4)が応動し、上記9ビットの情報として制御回路(2)に与えられ、これに設定されたコードの内容が判別され、上記ランダムに読み出された音声編集情報の内容と比較され、その結果としての制御回路(2)の出力により選び出されたカード(5)が「正しい」か或いは「間違いである」との音声がスピーカ(9)から発声される。以上の様にしてこのモードではランダムに発声する言葉をたよりに多くのカード(5)の中からそのカード(5)を選び出すところのいわゆるカルタ遊びに相当するゲームを行うことができる。」(第3頁左上欄第12行-右上欄第14行) 3.引用刊行物記載の発明の認定 記載事項ア.にあるとおり、引用例は「合成音声発声玩具」に関し、この「合成音声発声玩具」は記載事項エ.にあるとおり、「カード(5)」を用いるものである。「カード(5)」は、記載事項エ.にあるとおり「絵を表示した」ものであり、かつ、「いわゆるカルタ遊びに相当するゲーム」に使用されている。 すなわち、引用例には「絵を表示した、いわゆるカルタ遊びに相当するゲームに使用するカード(5)を備え、カード(5)を用いる合成音声発声玩具」なる発明事項が開示されている。 記載事項イ.によると、この玩具は「モードを指定するための切換スイッチ(S1)」を備えており、「切換スイッチ(S1)」は記載事項ウ.にあるとおり「4コのオンオフスイッチ」を「カード(10)」によって「選択的にオンオフ」して「モードを指定する信号」を与えるものである。またこの玩具は、記載事項イ.にあるとおり「制御回路(2)」を有しており、記載事項エ.にあるとおり「カード(5)」の「9ビットの情報」を判別する「リセプター(4)」を備えている。 すなわち、引用例には「4コのオンオフスイッチをカード(10)によって選択的にオンオフしてモードを指定する信号を与える切換スイッチ(S1)と、カード(5)の9ビットの情報を判別するリセプター(4)と、スピーカ(9)と、制御回路(2)を備える」という発明事項が開示されている。 記載事項エ.には「第2のモード」での動作が示されており、そこでは「ランダムに一つの音声編集情報」を読み出して「スピーカ(9)」から「「何々の何が何しているカードをとりなさい」という様な音声」を発声させ、この発声に基づいて「多くのカード(5)」の中から「カード(5)を選び出しリセプター(4)にセットする」と、「9ビットの情報」に基づいて「制御回路(2)の出力により選び出されたカード(5)が「正しい」か或いは「間違いである」との音声がスピーカ(9)から発声」して、「いわゆるカルタ遊びに相当するゲーム」を行うことができる。 すなわち、引用例には「第2のモードでは、ランダムに一つの音声編集情報を読み出して、スピーカ(9)から「何々の何が何しているカードをとりなさい」という様な音声を発声させ、この発声に基づいて多くのカード(5)の中からてカード(5)を選び出しリセプター(4)にセットすると、9ビットの情報に基づいて制御回路(2)の出力により選び出されたカード(5)が「正しい」か或いは「間違いである」との音声をスピーカ(9)から発声して、いわゆるカルタ遊びに相当するゲームを行うことができる」という発明事項が開示されている。 以上をまとめると、引用例には、 「絵を表示した、いわゆるカルタ遊びに相当するゲームに使用するカード(5)と、 4コのオンオフスイッチをカード(10)によって選択的にオンオフしてモードを指定する信号を与える切換スイッチ(S1)と、 カード(5)の9ビットの情報を判別するリセプター(4)と、スピーカ(9)と、 制御回路(2)とを備え、 第2のモードでは、ランダムに一つの音声編集情報を読み出して、スピーカ(9)から「何々の何が何しているカードをとりなさい」という様な音声を発声させ、この発声に基づいて多くのカード(5)の中からカード(5)を選び出しリセプター(4)にセットすると、9ビットの情報に基づいて制御回路(2)の出力により選び出されたカード(5)が「正しい」か或いは「間違いである」との音声をスピーカ(9)から発声して、いわゆるカルタ遊びに相当するゲームを行うことができる、 カード(5)を用いる合成音声発声玩具」 なる発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 4.本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定 本願発明と引用発明とを比較する。 引用発明の「合成音声発声玩具」は「カード(5)」を用いるから本願発明の「カード玩具装置」に相当する。 引用発明における「カード(5)」は「多く」だから複数あり、また「絵」は表面に表示されていることが当然である。そして、引用発明における「カード(5)」は、「いわゆるカルタ遊びに相当するゲーム」において、「選択」されて「正しい」あるいは「間違い」という結果に至るから、本願発明における「取り札用カード」に相当する。 引用発明における「モード」は、「第2のモード」である場合に「いわゆるカルタ遊びに相当するゲーム」を実行するから、本願発明における「動作モード」に相当する。引用発明における「モード」の「指定」は本願発明における「動作モードの選択」に相当し、引用発明においてモードを「指定する信号」を「切換スイッチ(S1)」から与えることは、「カード(10)」を介するにしても、それを用いる者の操作に依拠して選択された信号を出力することであるから、当該信号を出力する「切換スイッチ(S1)」は、本願発明における「動作モードの選択操作に応じた操作信号を出力する入力部」に相当する。 引用発明において、カルタ遊びに相当するゲームで読み出される「何々の何が何をしているカードをとりなさい」という様な「音声」を生じさせる「音声編集情報」は、本願発明における「読み札の音声データ」に相当し、引用発明においてもそれが「読み出され」るからには当然に本願発明における「記憶されている記憶部」を有している。 引用発明における「カード(5)」の「9ビットの情報」は、本願発明における「取り札用カードの情報」に相当し、引用発明における「リセプター(4)」はそれを読み取ることが明らかであるから本願発明における「読取手段」に相当する。引用発明における「スピーカ(9)」は本願発明における「信号を音声に変換して出力する音声出力部」に相当する。 引用発明における「音声編集情報を読み出して」は、先に述べたことから本願発明における「前記記憶部より読み札の音声データを読み出し」に相当し、引用発明において「スピーカ(9)から「何々の何が何しているカードをとりなさい」という様な音声を発声させ」ているからには、本願発明と同様に「該読み出した音声データの信号を前記音声出力部に対して出力」している。また引用発明において、「この発声に基づいて」選択されたカード(5)について、リセプター(4)からの「9ビットの情報」に基づいて「正しい」或いは「間違いである」の音声を「スピーカ(9)」から発声するからには、本願発明と同様に「該読み出した音声データの信号」を「出力した後、前記読取手段が読み取った情報に基づいて正誤の判定」を行っており、かつ「該正誤の判定結果に応じた信号」を「前記音声出力部」に対して「出力」している。そして、引用発明においてこれらの動作は「制御回路(2)」によって行われており、当該「制御回路(2)」は本願発明における「制御部」に相当する。 以上を整理すると、両者は 「絵を表面に表示した複数の取り札用カードと、 動作モードの選択操作に応じた操作信号を出力する入力部と、 読み札の音声データが記憶されている記憶部と、 前記取り札用カードの情報を読み取る読取手段と、 信号を音声に変換して出力する音声出力部と、 前記記憶部より読み札の音声データを読み出し、該読み出した音声データの信号を前記音声出力部に対して出力した後、前記読取手段が読み取った情報に基づいて正誤の判定を行い、該正誤の判定結果に応じた信号を前記音声出力部に対して出力を行う制御部とを備えた、 カード玩具装置。」 である点で一致し、以下の点で相違または一応のところ相違する。 <相違点1> 本願発明では「取り札用カード」の表面に「絵」のみでなく「文字列」も表示されているのに対して、引用発明では「カード(5)に「文字列」が表示されているか不明な点。 <相違点2> 本願発明では「信号を表示する表示部」を備えており、「正誤の判定結果に応じた信号」が「前記表示部」にも出力されるのに対して、引用発明ではそのような表示部を備えていない点。 <相違点3> 本願発明では、「制御部」が「前記読み札の音声データを読み出し、該読み出した音声データの信号を前記音声出力部に対して出力した後、所定の時間が経過すると、前記読み出した音声データに対応する取り札用カードのヒントである音声データの信号を前記音声出力部に対して出力を行う」のに対して、引用発明ではそうなっていない点。 5.相違点の判断及び本願発明の進歩性 (1)相違点1について 引用発明の如く「カルタ遊びに相当するゲーム」に用いるカードにおいて、絵のみでなく、文字列も合わせて表示しておくことは、自由になし得る事項であり、そのようにして相違点1に係る本願発明の構成を得ることに困難性はない。 (2)相違点2について 引用発明も「玩具」であって、「正しい」或いは「間違い」という判定及び評価を行うゲームを行うものであるところ、玩具が対象とする子供に対して、演出によってゲームの興趣を高めるという一般的な目的から、スピーカに加えて演出用の表示部を設けることは十分に想到し得た事項である。そしてその際、「正しい」或いは「間違い」といった音声の出力と合わせて、正誤判定に応じた信号を表示部に出力し、音声の正誤評価と合わせて正誤に対応した演出表示をも行わせることは、適宜なし得る程度の事項というほかはなく、そのようにして相違点2に係る本願発明の構成を得ることに困難性はない。 (3)相違点3について 引用発明は、「何々の何が何しているカードをとりなさい」という様な音声により問題を発して、選び出されたカード(5)が正しいかどうかという、回答の正誤を判定するゲームを行う玩具であるところ、正誤を判定するゲームが成立するからには、玩具が対象とする子供が正しいカードを選べなかったり、正しいカードを選ぶために迷ったりすることが当然に想定されているものである。 ここで、たとえば特開平7-64464号公報に「例えば、制限時間を2段階に分けて設定し、最初の制限時間が経過した時点ではヒントを表示し」(段落【0151】)と記載され、また実願平5-61623号(実開平7-32671号公報参照)のCD-ROMに「時間経過とともにTV受像器画面には正解のヒント表示が次第に正解(最終的には「ぞう」が表示される)しやすいように表示されていく。」(段落【0034】)と記載されているように、設問に対して回答を求め正誤を判定するゲームにおいて、所定の時間が経過するとヒントを与えることは、回答に迷う者を想定して一般的に広く行われている事項である。そうであれば、引用発明において、当然に想定される正しいカード選ぶのに迷う子供たちに配慮して、前述した一般的な事項である、所定の時間が経過すると正しいカードのヒントを与えるという手法を採用することは、十分に想到できた事項と言わざるを得ない。 その際、引用発明では「スピーカ(9)」により「何々の何が何しているカードをとりなさい」という問題を発し、また「正しい」或いは「間違っている」という評価を伝えているのであるから、ヒントについても同様に「スピーカ(9)」に対して音声データを出力することで与え、またヒントを与えるべき時間経過の起点を、設問である音声データが「スピーカ(9)」に出力された時点にとり、このような動作の制御を「制御回路(2)」により行わせて、相違点3に係る本願発明の構成を得ることは、困難性のなかった事項である。 (4)本願発明の進歩性 以上のとおり、相違点1-3に係る本願発明の構成を得ることは困難ではなく、また、そのようにして本願発明の構成を採用したことによる効果も、格別のものとは認められない。 したがって、本願発明は引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-01-09 |
結審通知日 | 2009-01-15 |
審決日 | 2009-01-27 |
出願番号 | 特願2001-313666(P2001-313666) |
審決分類 |
P
1
8・
56-
Z
(A63F)
P 1 8・ 561- Z (A63F) P 1 8・ 121- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山崎 仁之 |
特許庁審判長 |
小原 博生 |
特許庁審判官 |
森 雅之 有家 秀郎 |
発明の名称 | カード玩具装置 |
代理人 | 水野 清 |