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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1194884
審判番号 不服2007-31016  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-15 
確定日 2009-03-26 
事件の表示 特願2001-360795「結像光学系」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月 4日出願公開、特開2002-350730〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年(2001年)11月27日(国内優先権主張、平成13年3月19日)に出願した特願2001-360795号であって、平成19年10月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年11月15日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成19年12月14日付けで手続補正がなされ、平成20年11月6日付けで当審において拒絶理由の通知をし、これに対して平成21年1月6日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年1月6日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項に特定される次のとおりのものである。

「像側に入射瞳より小さい射出瞳を有する集光光学系と、
前記集光光学系と前記集光光学系の後段に位置する検出結像点との間に配置されているとともに、前記射出瞳近傍に配置され、前記集光光学系の収差を補正する補正光学素子を備え、
前記集光光学系は、少なくとも前記入射瞳を有する第1鏡と、前記収差を測定する収差測定手段とを有しており、
前記第1鏡は、複数の分割鏡から構成され、
前記補正光学素子は、前記収差測定手段が測定した前記収差に基づいて形状が変化する反射面を有した光反射体を有し、前記光反射体により前記収差を補正するようになっていることを特徴とする結像光学系。」

第3 引用例
1 引用例1
当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-13412号公報(以下、「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。(後述の「2 引用例1に記載された発明の認定」において直接引用した記載に下線を付した。)

「【0014】
【発明の実施の形態】実施の形態1.図1は、この発明の実施の形態1を示す構成図である。この実施の形態1は図8の3枚鏡を基本構成としており、1は第一位反射鏡、2は第二位反射鏡、3は第三位反射鏡、4は折り曲げミラー、5は一次元CCD、6は開口、8は光軸、9は中間結像点、14は透過型平行平面板である。図の左方から第二位反射鏡2の周囲空間を通って入射した光束は第一位反射鏡1で反射され、第二位反射鏡2に向かい反射され、この反射光束が第一位反射鏡1の中央に穿たれた開口6を通り、その開口6の近傍の中間結像点9で空中像として結像する。空中像を結んだ光束はさらに進行し、透過型平行平面板14を透過し、折り曲げミラー4を経て、第三位反射鏡3で反射される。そして、その反射光は一次元CCD5の上に再結像するものである。
【0015】図2及び図3を用いて、この実施の形態1の原理を説明する。図2において、1は第一位反射鏡、3は第三位反射鏡、4は折り曲げミラー、5は一次元CCDで、図1の光軸8に沿って入射側を見た図として示している。15は第二位反射鏡及び/または第三位反射鏡3によって形成される射出瞳である。射出瞳15は第三位反射鏡3と一次元CCD5の中間に出来るため、一次元CCD5に入射する各像高の像界主光線16の一次元CCD5に対して張る広がり角βが大きく、一次元CCD5の直前に置かれた僅かな厚みの透過型平行平面板14に対しても、大きな非点収差が発生することになる。さらにこの像界主光線16の広がり角βは、透過型平行平面板 14が帯域フィルタの場合には、像高が高くなるに従い中心波長が短波長側にシフトし、観測性能に重大な影響を与えることになる。」

【図1】【図2】から、第一位反射鏡1は入射瞳を備えること、及び、射出瞳15が第一位反射鏡1の入射瞳より小さいものであることが見て取れる。

2 引用例1に記載された発明の認定
上記「1 引用例1」の記載事項から、引用例1には、反射光学系に関し、
「第二位反射鏡2の周囲空間を通って入射した光束は第一位反射鏡1で反射され、第二位反射鏡2に向かい反射され、この反射光束が第一位反射鏡1の中央に穿たれた開口6を通り、その開口6の近傍の中間結像点9で空中像として結像し、空中像を結んだ光束はさらに進行し、透過型平行平面板14を透過し、折り曲げミラー4を経て、第三位反射鏡3で反射され、そして、その反射光は一次元CCD5の上に再結像するものであり、第一位反射鏡1は入射瞳を備え、第三位反射鏡3と一次元CCD5の中間に出来る射出瞳15を有し、射出瞳15が第一位反射鏡1の入射瞳より小さいものである反射光学系。」の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。

3 引用例2
当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平3-265819号公報(以下、「引用例2」という)には、次の事項が記載されている。(下記「第5 当審の判断」の「(1) 相違点1について」において参照した記載に下線を付した。)

「2.特許請求の範囲
(1) 結像光学系に収差補正機構を備えた光学系から得られる光学像を撮像装置で検出し、検出された信号から前記光学系の収差を求めた後、収差を補正する補正信号を生成し、該補正信号に応じて前記収差補正機構を制御して、ゆがみのない光学像を得る光学装置において、前記収差補正機構を、前記結像光学系の入射瞳位置又は射出瞳位置にマトリクス状の画素を有する透過型又は反射型液晶パネルを設けて構成し、前記補正信号に応じて、前記液晶パネルの各画素の屈折率を制御する液晶駆動回路を設けた事を特徴とする光学装置。」(第1ページ左下欄第4?15行)

「〔従来の技術〕
従来光学装置においては、光学系のレンズやプリズム、反射鏡などの光学素子は形状や屈折率が一般に固定されており、特定の状態において光学系が最良の状態を示す様に設計されていた。しかるに特に天体望遠鏡などにおいては光路である大気のゆらぎが大きく、逐次光学系の収差を制御しないと最良の結像状態が得られないという問題が生じた。第3図は従来技術を用いた光学装置の一例である。大気などの光路のゆらぎの影響をうけ、入射光線1を結像レンズ7を用いて一点に結像する事ができない。これに対して、Applied Optics第28巻、第24号、1989年刊の5326頁?5332頁にセグメントミラーアレーを用いて上記問題点を解決した装置が示されている。すなわち、第4図(a)に示した各々独立に姿勢を変えられるミラー29のアレーであるセグメントミラーアレー27を用い、第4図(b)に示す様な光学装置を用いた。第4図(b)において、大気などの光路のゆらぎ3により入射光線1の進行方向が本来の方向から傾いてしまうが、セグメントミラーアレー27の各ミラー29の角度を個々にコントロールする事により補正するという方法を用いた。撮像装置13は結像画像を検出し、画像信号15を演算装置17におくる。画像信号15には大気などの光路のゆらぎ3の情報が含まれているので、演算装置17でゆらぎの補正信号19を発生し、ミラー駆動回路31に送り、ミラー駆動信号33により各ミラー29の姿勢をコントロールする」(第1ページ右下欄第8?第2ページ左上欄第16行)

「〔発明の効果〕
以上の説明から明らかな様に、本発明によれば大気のゆらぎなどにより発生する光学系の収差を逐次補正する事が可能である。また同様の方法でレンズミラーなと光学素子そのものが持つ光学系の収差を補正する事も可能である。その場合液晶パネルは光学系の射出瞳位置に置くと都合が良い。」(第3ページ右上欄第7?12行)

4 引用例3
当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-121950号公報(以下、「引用例3」という)には、次の事項が記載されている。

「【0004】また、大口径の反射式望遠鏡などにおいて、温度環境や姿勢が変化した場合に反射鏡面形状が変化し、結像系としての性能が劣化することから、反射鏡面にアクチュエータを組み込み、鏡面を微小変形させることにより結像性能を向上させるアダプティブ制御光学が知られており、既に製品化されている例もある。例えば、直径10mの反射鏡を六角形で分割し、それぞれにアクチュエータを組み込むことによって構成された大型天体望遠鏡であるアメリカのKackI、IIや、直径8.3mの1枚鏡を、モータにより駆動される多数のばねに変形させるものが知られている。これらの例においても、焦点調整は上述の例のように接眼レンズを直線移動させる機構を設けることにより行っていた。」

第4 対比
1 対比
引用発明と本願発明を対比する。

引用発明の「入射した光束は第一位反射鏡1で反射され、・・・第三位反射鏡3で反射され、そして、その反射光は一次元CCD5の上に再結像するものであり、第一位反射鏡1は入射瞳を備え、第三位反射鏡3と一次元CCD5の中間に出来る射出瞳15を有し、射出瞳15が第一位反射鏡1の入射瞳より小さいものである反射光学系」が、本願発明の「像側に入射瞳より小さい射出瞳を有する集光光学系」に相当する。

引用発明の「入射した光束は・・・第三位反射鏡3で反射され、そして、その反射光は一次元CCD5の上に再結像するものであり、・・・第三位反射鏡3と一次元CCD5の中間に出来る射出瞳15を有」することが、本願発明の「前記集光光学系と前記集光光学系の後段に位置する検出結像点との間に・・・前記射出瞳」が配置されることに相当する。

引用発明の反射光学系の「第一位反射鏡1は入射瞳を備え」ることが、本願発明の「前記集光光学系は、少なくとも前記入射瞳を有する第1鏡」を有することに相当する。

引用発明の「その反射光は一次元CCD5の上に再結像する・・・反射光学系」が本願発明の「結像光学系」に相当する。

2 一致点
したがって、本願発明と引用発明は、
「像側に入射瞳より小さい射出瞳を有する集光光学系と、
前記集光光学系と前記集光光学系の後段に位置する検出結像点との間に前記射出瞳が配置され、
前記集光光学系は、少なくとも前記入射瞳を有する第1鏡を有している結像光学系。」の発明である点で一致し、次の各点で相違している。

3 相違点

(1)相違点1;
本願発明は、「射出瞳近傍に配置され、前記集光光学系の収差を補正する補正光学素子」を備えているのに対し、引用発明にはその限定がない点。

(2)相違点2;
本願発明の第1鏡は、「複数の分割鏡から構成されている」のに対し、引用発明の第一位反射鏡(本願発明の第1鏡に相当する)にはその限定がない点。

(3)相違点3;
本願発明は、集光光学系が「収差を測定する収差測定手段を有し」、「補正光学素子は、前記収差測定手段が測定した前記収差に基づいて形状が変化する反射面を有した光反射体を有し、前記光反射体により前記収差を補正するようになっている」のに対し、引用発明にはその限定がない点。


第5 当審の判断
上記の各相違点について検討する。

(1)相違点1について
結像光学系において、射出瞳近傍に集光光学系の収差を補正する補正光学素子を配置することは、引用例2に記載されている事項である(下線部の記載参照)。
そして、技術分野を共通にする引用発明においても、収差補正のために、引用例2に記載された上記発明を適用して、「射出瞳近傍に配置され、前記集光光学系の収差を補正する補正光学素子」を備える構造とし、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得た事項である。

(2)相違点2について
結像光学系に使用される反射鏡を、複数の分割鏡から構成することは、例えば、引用例2の〔従来技術〕の欄や引用例3(【0004】)にも記載されているように周知の技術である。
そして、技術分野を共通にする引用発明においても、上記の周知技術を適用して、第一位反射鏡を「複数の分割鏡」から構成し、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得た事項である。

(3)相違点3について
引用例2の〔従来技術〕の欄には、
「しかるに特に天体望遠鏡などにおいては光路である大気のゆらぎが大きく、逐次光学系の収差を制御しないと最良の結像状態が得られないという問題が生じた。・・・これに対して、Applied Optics第28巻、第24号、1989年刊の5326頁?5332頁にセグメントミラーアレーを用いて上記問題点を解決した装置が示されている。すなわち、第4図(a)に示した各々独立に姿勢を変えられるミラー29のアレーであるセグメントミラーアレー27を用い、第4図(b)に示す様な光学装置を用いた。第4図(b)において、・・・セグメントミラーアレー27の各ミラー29の角度を個々にコントロールする事により補正するという方法を用いた。撮像装置13は結像画像を検出し、画像信号15を演算装置17におくる。画像信号15には大気などの光路のゆらぎ3の情報が含まれているので、演算装置17でゆらぎの補正信号19を発生し、ミラー駆動回路31に送り、ミラー駆動信号33により各ミラー29の姿勢をコントロールする。」
と記載されている。
そして、上記記載の「セグメントミラーアレー27の各ミラー29の角度を個々に」変えることは、本願発明の「(反射面の)形状を変化する」ことに相当するといえるから、
「集光光学系が収差を測定する収差測定手段を有し、補正光学素子は、前記収差測定手段が測定した前記収差に基づいて形状が変化する反射面を有した光反射体を有し、前記光反射体により前記収差を補正するようになっている」構成は、引用例2に記載されている事項であるといえる。
よって、引用発明に上記の引用例2に記載されている事項を適用し、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得た事項である。
なお、反射面の形状を変化させて収差を補正することは、例えば、
・特開2001-34993号公報(【0011】)
・特開平10-222856号公報(【0018】【0030】)
にも記載されているように、反射光学系一般において周知の技術である。

そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明、上記引用例2及び3に記載された発明から当業者が予測し得る程度のものである。

したがって、本願発明は、引用発明、上記引用例2及び3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

第6 むすび
以上より、本願発明は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-21 
結審通知日 2009-01-27 
審決日 2009-02-10 
出願番号 特願2001-360795(P2001-360795)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬川 勝久  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 森林 克郎
武田 悟
発明の名称 結像光学系  
代理人 大宅 一宏  
代理人 上田 俊一  
代理人 古川 秀利  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 梶並 順  
代理人 曾我 道治  

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