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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G
管理番号 1195073
審判番号 不服2007-17057  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-19 
確定日 2009-03-30 
事件の表示 特願2002-109196「地域型植栽方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月28日出願公開、特開2003-304737〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続きの経緯
本願は、平成14年4月11日の出願であって、平成19年5月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月19日に審判請求がなされるとともに、同年6月29日付けで手続補正がなされたものである。
また、当審において、平成20年11月7日付けで審査官による前置報告書に基づく審尋がなされたところ、平成21年1月7日付けで回答書が提出されたものである。

【2】平成19年6月29日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年6月29日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容・目的
本件補正は、特許請求の範囲について、補正前(平成19年4月23日付け手続補正書参照。)に、

「【請求項1】
建物の周辺に植栽を行うに際し、その植栽地域の気候特性を考慮した上で、前記建物からの方位に対応させて、前記植栽の種類を異なるものとする場合に、前記建物の南面には落葉広葉樹を植栽し、前記建物の北面及び、西面には高生垣を植栽し、前記落葉広葉樹のうち、高さの高い木ほど前記建物から離れた位置に植栽し、
さらに、前記建物の南面、東面には高木の常緑樹を植栽することを特徴とする、地域型植栽方法。
【請求項2】 建物の周辺に植栽を行うに際し、その植栽地域の気候特性を考慮した上で、前記建物からの方位に対応させて、前記植栽の種類を異なるものとする場合に、前記建物の南面及び西面には落葉広葉樹を建物に寄せて植栽し、前記建物の北面及び西面には高生垣を植栽し、
さらに、前記建物の東西面の少なくとも一方に壁面緑化を配置し、
さらに、前記建物の南面は中低木で葉の粗密が粗い常緑樹及び、生垣の少なくとも一方を植栽することを特徴とする、地域型植栽方法。
【請求項3】 建物の周辺に植栽を行うに際し、その植栽地域の気候特性を考慮した上で、前記建物からの方位に対応させて、前記植栽の種類を異なるものとする場合に、前記建物の南面には落葉広葉樹を植栽し、前記建物の西面には高生垣を植栽し、
前記高生垣は葉密の粗い樹種を植栽し、
前記建物の北面及び、東面には常緑樹を植栽することを特徴とする、地域型植栽方法。
【請求項4】 建物の周辺に植栽を行うに際し、その植栽地域の気候特性を考慮した上で、前記建物からの方位に対応させて、前記植栽の種類を異なるものとする場合に、前記建物の東面及び、西面には落葉広葉樹を植栽し、前記建物の北面及び西面には高生垣を植栽し、
前記落葉広葉樹は中高木であり、
さらに、前記建物の北面には中高木の常緑樹を群生させて植栽することを特徴とする、地域型植栽方法。」
とあったものを、

「【請求項1】 建物の周辺に植栽を行うに際し、その植栽地域の気候特性を考慮した上で、前記建物からの方位に対応させて、前記植栽の種類を異なるものとする場合に、前記建物の南面及び西面には落葉広葉樹を建物に寄せて植栽し、前記建物の北面及び西面には高生垣を植栽し、さらに、前記建物の東西面の少なくとも一方にツタ類を巻付けて植栽する壁面緑化を配置し、この壁面緑化は木製のネットで作られており、住宅の壁面から10?15cm離れて壁下地に止め付けられたものであり、さらに、前記建物の南面は中低木で葉の粗密が粗い常緑樹及び、生垣の少なくとも一方を植栽することを特徴とする地域型植栽方法。」
と補正しようとするものである。

上記補正は、本件補正前の請求項1、請求項3及び請求項4を削除し、本件補正前の請求項2に係る発明を特定するために必要な事項である「壁面緑化」について、「木製のネットで作られており、住宅の壁面から10?15cm離れて壁下地に止め付けられたもの」であると限定したものと認められるから、本件補正は、少なくとも、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものである。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしているか、について以下に検討する。

2.特許法第29条第2項違反について
2-1.公然実施されている技術の例
刊行物1:正木覚 監修、「特集 図説&植栽樹種図鑑[効く植栽]91のテクニック」、建築知識、株式会社建築知識、1996年3月1日、p.86-99
刊行物2:実願平3-107418号(実開平5-53445号)のCD-ROM

2-2.判断
本願明細書にも記載されているように、伝統的住生活は四季の移り変わるこの風土において、自然を遮断しないでその中に調和した住まいであり、人々は暑さ寒さを少しでも和らげるために、敷地内に屋敷林や生垣をつくり、樹木などを植えていた。樹木などの植物には微気候調節機能があり、一般住宅の庭に樹木等を配置することによりこの機能を利用することが、特に日本では古来から経験的に行われてきたことは広く知られている。また、公然実施の例として挙げた上記刊行物1にも示されているように、微気候調節のために住宅周囲に植栽すること、具体的には、高い日射しや西日を防ぐために南面や西面に落葉広葉樹を植栽したり、住宅内の温度変化の差を無くすために壁面緑化を行ったり、風を遮ったり強風を穏やかにするために生垣をたてたりすることは従来から広く行われていることであり、一般的課題に基づいて、具体的に、建物のどの方位にどの種類の植物を植栽するかは、建物の形態や配置、周辺地域の環境等、美観などを考慮して、当業者が適宜決定する事項に過ぎない。
また、壁面緑化を行うにあたり、壁面から適宜の間隔をおいてネットを取り付け、ツタ類を植栽して緑化することは、上記刊行物1乃至2に示されているように従来から慣用されている技術であり、ネットの材質、ネットと壁面の具体的な間隔、壁面への取付構造等については、当業者が必要に応じて適宜決定する事項に過ぎない。
してみると、本件補正発明に係る構成を想到することは、公然実施された技術に基づいて当業者が容易になし得たことである。

一方、請求人は回答書において「本願発明は上述の通り、建物の立地条件及び特に建物の向きに連動させて、上記種々の植栽条件を決定したものであり、更に加えて壁面緑化のためのネット設置についても、他の植栽と関連付けられたものであります。
これに対して引用発明においては・・・植栽ネットを他の植栽と関連付けるという発想は全くありません。
従って、上記単なる一般論で周知の手段の夫々を単に寄せ集めても、本願発明に想到し得るものではありません。・・・」と主張しているので、この点について検討する。本件補正発明は請求人が主張するように、建物の向きに連動させて種々の植栽条件を決定し、壁面緑化のためのネット設置もその一環として設置されているものである。しかし、それぞれの植栽はそれぞれの条件に応じて配置されたものであり(例えば、落葉広葉樹は日射遮蔽のため、葉の粗密が粗い生垣は下記の南風誘引のため、壁面緑化は日射調節のため等の植栽条件(目的)が、本願明細書の段落【0029】?【0035】に開示されている。)、それぞれの条件に応じて配置された植栽が寄せ集まって住宅周囲の植栽となっているのみであり、それぞれが相互に密接に関連し合っているものとは言えない。してみると、上記刊行物1乃至2に示したように、日射調節のために住宅の壁面を緑化することは公然実施された技術であって、これを他の植栽とともに住宅の植栽に適用することに、当業者であれば格別の困難性はない。
また、本件補正発明が奏する効果についても、それぞれ公然実施された技術が奏する効果の総和以上のものではなく、これらから予測することができる程度のことである。
よって、請求人の主張は採用できない。

以上により、本件補正発明は、公然実施された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.補正の却下の決定のむすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定する要件を満たしていないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。
よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

【3】本願発明
1.平成19年6月29日付けの手続補正書は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明は、平成19年4月23日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「建物の周辺に植栽を行うに際し、その植栽地域の気候特性を考慮した上で、前記建物からの方位に対応させて、前記植栽の種類を異なるものとする場合に、前記建物の南面及び西面には落葉広葉樹を建物に寄せて植栽し、前記建物の北面及び西面には高生垣を植栽し、
さらに、前記建物の東西面の少なくとも一方に壁面緑化を配置し、
さらに、前記建物の南面は中低木で葉の粗密が粗い常緑樹及び、生垣の少なくとも一方を植栽することを特徴とする、地域型植栽方法。」
(以下、「本願発明」という。)

2.特許法第29条第2項違反について
2-1.公然実施されている技術の例
公然実施されている技術の例として示す刊行物は、前記「【2】2.2-1.」に記載した通りである。

2-2.対比・判断
本願発明は、前記【2】で検討した本件補正発明から「壁面緑化は木製のネットで作られており、住宅の壁面から10?15cm離れて壁下地に止め付けられたもの」である事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「【2】2.2-2.」に記載したとおり、公然実施された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、公然実施された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたのものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、公然実施された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-28 
結審通知日 2009-02-03 
審決日 2009-02-16 
出願番号 特願2002-109196(P2002-109196)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂田 誠  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 草野 顕子
石川 好文
発明の名称 地域型植栽方法  
代理人 土井 清暢  

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