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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G02F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G02F |
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管理番号 | 1195163 |
審判番号 | 不服2007-10664 |
総通号数 | 113 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-04-12 |
確定日 | 2009-04-02 |
事件の表示 | 特願2002-109181「反射体および反射型液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月15日出願公開、特開2002-328368〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成13年6月28日(国内優先権主張平成12年7月3日)に出願された特願2001-197360号(以下、「原出願」という。)の一部を平成14年4月11日に新たな特許出願として出願した特願2002-109181号であって、平成18年2月2日付けで拒絶理由通知がなされ、同年4月12日付けで手続補正がなされ、これに対して、平成19年3月7日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年4月12日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年5月14日付けで手続補正がされたものである。 第2 補正の却下の決定 [結論] 平成19年5月14日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正 平成19年5月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、補正前(平成18年4月12日付け手続補正書参照)に 「【請求項1】 基材表面に対する正反射の方向からずれた反射特性を有し、且つ、斜め上方から入射した入射光に対する反射光は、前記正反射の方向よりも、前記基材表面に対する垂直位置にシフトした方向に明るい表示範囲がシフトした反射特性を有し、30゜の入射角で外光を照射したときに、その受光角が15゜から45゜の範囲内で明るい表示範囲を有することを特徴とする反射体。 【請求項2】 基材表面に対する正反射の角度より小さい反射角度範囲の反射率の積分値が、正反射の角度より大きい反射角度範囲の反射率の積分値より大きいことを特徴とする請求項1に記載の反射体。 【請求項3】 基材表面に対する正反射の角度より小さい反射角度範囲に反射率の最大値を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の反射体。 【請求項4】 前記受光角が20゜前後において反射率の最大値を有することを特徴とする請求項3に記載の反射体。 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の反射体が設けられたことを特徴とする反射型液晶表示装置。」 とあったものを、 「【請求項1】 基材表面に対する正反射の方向からずれた反射特性を有し、且つ、基材表面に対する正反射の角度より小さい反射角度範囲の反射率の積分値が、正反射の角度より大きい反射角度範囲の反射率の積分値より大きく、基材表面に対する垂線位置を0゜とし、この基材表面に対して30゜の入射角で外光を照射し、基材表面に対する正反射の方向である30゜を中心として、受光角を0゜から60゜まで振ったときに、受光角が15゜から45゜までの範囲内で反射率が高くなるように設定されており、なお且つ、正反射の角度より小さい反射角度範囲に反射率の最大値を有することによって、その受光角に対する反射率曲線が反射率の最大値となる角度を挟んで非対称となる反射特性を有することを特徴とする反射体。 【請求項2】 請求項1に記載の反射体が設けられたことを特徴とする反射型液晶表示装置。」 と補正するものであるところ、その内容は、次の補正事項1ないし4のとおりである。 (1)補正事項1 請求項1において、「反射特性を有し、且つ、斜め上方から入射した入射光に対する反射光は、前記正反射の方向よりも、前記基材表面に対する垂直位置にシフトした方向に明るい表示範囲がシフトした反射特性を有し、」を「反射特性を有し、且つ、基材表面に対する正反射の角度より小さい反射角度範囲の反射率の積分値が、正反射の角度より大きい反射角度範囲の反射率の積分値より大きく、」とする補正。 (2)補正事項2 請求項1において、「30゜の入射角で外光を照射したときに、その受光角が15゜から45゜の範囲内で明るい表示範囲を有する」を、「基材表面に対する垂線位置を0゜とし、この基材表面に対して30゜の入射角で外光を照射し、基材表面に対する正反射の方向である30゜を中心として、受光角を0゜から60゜まで振ったときに、受光角が15゜から45゜までの範囲内で反射率が高くなるように設定されており、なお且つ、正反射の角度より小さい反射角度範囲に反射率の最大値を有することによって、その受光角に対する反射率曲線が反射率の最大値となる角度を挟んで非対称となる反射特性を有する」とする補正。 (3)補正事項3 補正前の請求項2ないし4を削除する。 (4)補正事項4 補正前の請求項5における「請求項1乃至4のいずれか一項に記載の反射体」を補正後の請求項2において「請求項1に記載の反射体」とする補正。 2.新規事項の追加の有無について 補正事項2は、補正前の請求項1の「30゜の入射角で外光を照射したときに、その受光角が15゜から45゜の範囲内で明るい表示範囲を有する」という事項を、補正前の請求項3の「基材表面に対する正反射の角度より小さい反射角度範囲に反射率の最大値を有する」という事項に加えて、「基材表面に対する正反射の方向である30゜を中心として、受光角を0゜から60゜まで振ったときに、受光角が15゜から45゜までの範囲内で反射率が高くなるように設定されており」という事項、および、「受光角に対する反射率曲線が反射率の最大値となる角度を挟んで非対称となる反射特性を有する」という事項により限定しようとするものである。しかし、「基材表面に対する正反射の方向である30゜を中心として、受光角を0゜から60゜まで振ったときに、受光角が15゜から45゜までの範囲内で反射率が高くなるように設定されており」という事項は、当初明細書及び図面において記載されたものではない。 この点に関して、請求人は、平成20年12月25日付けで提出された回答書において、 「ここで、審査官殿がご指摘された「何と比較して反射率が高いものであるのか不明確である」との事項に対しては、受光角が15゜から45゜までの範囲は、それ以外の範囲(受光角が0゜以上15゜未満の範囲、受光角が45゜超60゜以下の範囲)よりも相対的に反射率が高くなっております。このことから、本願発明では「基材表面に対する正反射の方向である30゜を中心として、受光角を0゜から60゜まで振ったときに、受光角が15゜から45゜までの範囲内で反射率が高くなる」ことは明らかであります。 また、図5には、比較例として、従来から用いられている球面状の凹部を有する反射体(引用文献2に相当する。)を用いた場合の受光角と反射率との関係が示されております。そして、この図5に示す実施形態と比較例との比較においても、本願発明は、受光角が15゜から45゜までの範囲内で反射率が高いものとなっております。 」 と主張している。しかし、図5に示された反射特性では、受光角が15゜での反射率が、受光角が45゜での反射率よりも高くなっているために、例えば、受光角が15゜未満であっても反射率が45゜での反射率よりも高い範囲があるので、請求人の「受光角が15゜から45゜までの範囲は、それ以外の範囲(受光角が0゜以上15゜未満の範囲、受光角が45゜超60゜以下の範囲)よりも相対的に反射率が高くなっております。」との主張は失当である。また、図5に示された反射特性では、受光角が45゜以下であっても比較例よりも反射率が低い範囲があるので、「図5に示す実施形態と比較例との比較においても、本願発明は、受光角が15゜から45゜までの範囲内で反射率が高いものとなっております。 」との主張も失当である。 したがって、補正事項2は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものではない。よって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成14年改正前特許法」という。)第17条の2第3項の規定を満たしておらず、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反する。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.独立特許要件について 仮に、上記補正が当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであるとして、上記補正が、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の各号に掲げる事項を目的とするものにも該当するものであるか否かについて検討する。 補正事項1は、補正前の請求項1の「斜め上方から入射した入射光に対する反射光は、前記正反射の方向よりも、前記基材表面に対する垂直位置にシフトした方向に明るい表示範囲がシフトした反射特性を有し、」という事項を、補正前の請求項2の「基材表面に対する正反射の角度より小さい反射角度範囲の反射率の積分値が、正反射の角度より大きい反射角度範囲の反射率の積分値より大きい」という事項により限定しようとするものであり、補正事項2は、補正前の請求項1の「30゜の入射角で外光を照射したときに、その受光角が15゜から45゜の範囲内で明るい表示範囲を有する」という事項を、補正前の請求項3の「基材表面に対する正反射の角度より小さい反射角度範囲に反射率の最大値を有する」という事項に加えて、「基材表面に対する正反射の方向である30゜を中心として、受光角を0゜から60゜まで振ったときに、受光角が15゜から45゜までの範囲内で反射率が高くなるように設定されており」という事項、および、「受光角に対する反射率曲線が反射率の最大値となる角度を挟んで非対称となる反射特性を有する」という事項により限定しようとするものであるから、いわゆる限定的減縮を目的とする補正に該当する。よって、本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、補正事項3は、補正前の請求項2ないし4を削除するものであり、補正事項4は補正前の請求項2ないし4の削除に伴い、請求項の引用関係を整合させるものであるから、平成14年改正前特許法第4項第2号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。 したがって、本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれかの事項を目的とするものである。 本件補正は平成14年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げるいわゆる限定的減縮を目的とするものを含むものであるから、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)について以下に検討する。 (A)発明の明確性要件について 請求項1には、「基材表面に対する正反射の方向である30゜を中心として、受光角を0゜から60゜まで振ったときに、受光角が15゜から45゜までの範囲内で反射率が高くなるように設定されており」という記載があるが、「受光角が15゜から45゜までの範囲内で反射率が高くなる」という記載は、何と比較して反射率が高いものであるのか不明確であるので、「基材表面に対する正反射の方向である30゜を中心として、受光角を0゜から60゜まで振ったときに、受光角が15゜から45゜までの範囲内で反射率が高くなるように設定されて」いるという構成が不明確である。 この点に関して、請求人は、平成20年12月25日付けで提出された回答書において、 「ここで、審査官殿がご指摘された「何と比較して反射率が高いものであるのか不明確である」との事項に対しては、受光角が15゜から45゜までの範囲は、それ以外の範囲(受光角が0゜以上15゜未満の範囲、受光角が45゜超60゜以下の範囲)よりも相対的に反射率が高くなっております。このことから、本願発明では「基材表面に対する正反射の方向である30゜を中心として、受光角を0゜から60゜まで振ったときに、受光角が15゜から45゜までの範囲内で反射率が高くなる」ことは明らかであります。 また、図5には、比較例として、従来から用いられている球面状の凹部を有する反射体(引用文献2に相当する。)を用いた場合の受光角と反射率との関係が示されております。そして、この図5に示す実施形態と比較例との比較においても、本願発明は、受光角が15゜から45゜までの範囲内で反射率が高いものとなっております。 」 と主張している。しかし、図5に示された反射特性では、受光角が15゜での反射率が、受光角が45゜での反射率よりも高くなっているために、例えば、受光角が15゜未満であっても反射率が45゜での反射率よりも高い範囲があるので、請求人の「受光角が15゜から45゜までの範囲は、それ以外の範囲(受光角が0゜以上15゜未満の範囲、受光角が45゜超60゜以下の範囲)よりも相対的に反射率が高くなっております。」との主張は失当である。また、図5に示された反射特性では、受光角が45゜以下であっても比較例よりも反射率が低い範囲があるので、「図5に示す実施形態と比較例との比較においても、本願発明は、受光角が15゜から45゜までの範囲内で反射率が高いものとなっております。 」との主張も失当である。 よって、請求項1に係る発明は明確でない。 したがって、本件補正発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (B)発明の進歩性について 上述したように、本件補正発明は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないが、発明の進歩性についても検討する。 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の原出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-52367号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 (a)「【請求項1】法線に対して-45度の方向から光を入射させた時の反射光量の角度依存分布曲線において、極大値を示す反射角度を1個または2個を有し、反射光量の極大値を示す該反射角度の少なくとも1つが法線に対して+45度から5度以上ずれている反射光量分布特性を有する反射板、および少なくとも1つの光拡散層を有する反射型液晶表示装置。」 (b)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は反射型液晶表示装置に関する。」 (c)「【0039】実施例4 反射板表面が、互いに実質的に合同な三角柱が稜線方向に隣接して配列された形状となっており、その形状は、三角柱の稜線に垂直方向の断面において各三角柱によって形成される三角形の仰角が7.5°及び90°、頂角が82.5°、繰り返しピッチが30μmの鋸歯状であるプラスチックシート(大日本印刷(株)製)に、銀を蒸着(蒸着膜厚60nm)して反射板を得た(図2)。その上に、平均直径4μmの架橋ポリスチレンビーズを12重量%含有したアクリル系樹脂(粘着特性を有する)を塗工(厚み約25μm)して、光拡散層を積層した。光拡散層を積層したかかる光拡散反射板に対して、入射角度-45°の方向から光を照射し、反射光量の角度依存分布曲線を測定した。得られた角度依存分布曲線を図10に示す。反射光強度が極大値となる角度は、法線方向から+21°であり、その角度の+45°からのずれは24°であった。」 (d)図10の記載から、法線に対して-45度の方向から光を入射させた時の反射光量の角度依存分布曲線において、45度より小さい反射角度範囲の反射率の積分値が、45度より大きい反射角度範囲の反射率の積分値より大きいこと、すなわち、基材表面に対する正反射の角度より小さい反射角度範囲の反射率の積分値が、正反射の角度より大きい反射角度範囲の反射率の積分値より大きいことが見て取れる。 (e)図10の記載から、法線に対して-45度の方向から光を入射させた時の反射光量の角度依存分布曲線において、反射光強度が極大値となる角度が法線方向から+21°であって、該反射光強度が極大値となる角度より小さい角度は0度以上から21度未満であって、該反射光強度が極大値となる角度より大きい角度は21度超であること、すなわち、正反射の角度より小さい反射角度範囲に反射率の最大値を有することによって、その受光角に対する反射率曲線が反射率の最大値となる角度を挟んで非対称となる反射特性を有することが見て取れる。 上記記載を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「法線に対して-45度の方向から光を入射させた時の反射光量の角度依存分布曲線において、反射光強度が極大値となる角度が法線方向から+21°である反射光量分布特性を有する反射板であって、基材表面に対する正反射の角度より小さい反射角度範囲の反射率の積分値が、正反射の角度より大きい反射角度範囲の反射率の積分値より大きく、なお且つ、正反射の角度より小さい反射角度範囲に反射率の最大値を有することによって、その受光角に対する反射率曲線が反射率の最大値となる角度を挟んで非対称となる反射特性を有する反射板。」 (2)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「反射板」は、本件補正発明の「反射体」に相当する。 引用発明の「法線に対して-45度の方向から光を入射させた時の反射光量の角度依存分布曲線において、反射光強度が極大値となる角度が法線方向から+21°である反射光量分布特性を有する」ことは、本件補正発明の「基材表面に対する正反射の方向からずれた反射特性を有」することに相当する。 よって、本件補正発明と引用発明とは、 「基材表面に対する正反射の方向からずれた反射特性を有し、且つ、基材表面に対する正反射の角度より小さい反射角度範囲の反射率の積分値が、正反射の角度より大きい反射角度範囲の反射率の積分値より大きく、且つ、正反射の角度より小さい反射角度範囲に反射率の最大値を有することによって、その受光角に対する反射率曲線が反射率の最大値となる角度を挟んで非対称となる反射特性を有する反射体」の点で一致し、次の点で相違する。 (相違点) 「反射体」が、本件補正発明では「基材表面に対する垂線位置を0゜とし、この基材表面に対して30゜の入射角で外光を照射し、基材表面に対する正反射の方向である30゜を中心として、受光角を0゜から60゜まで振ったときに、受光角が15゜から45゜までの範囲内で反射率が高くなるように設定されて」いるのに対して、引用発明ではこのことが明らかでない点。 (3)判断 上記相違点について検討する。 上記(A)において検討したように、「受光角が15゜から45゜までの範囲内で反射率が高くなる」という記載は、何と比較して反射率が高いものであるのかも不明確であるので、「基材表面に対する正反射の方向である30゜を中心として、受光角を0゜から60゜まで振ったときに、受光角が15゜から45゜までの範囲内で反射率が高くなるように設定されて」いるという構成が不明確であるが、仮に上記の特定により、漠然とした構成が特定されるとしても、特定の反射光量分布とすることにより、明るく見えるようにすることは、引用発明に記載されており、入射角や反射光量分布をどのようなものとするかは、反射体を備える液晶表示装置を使用する環境や使用条件等に応じて当業者が適宜設計する設計的事項である。そして、基材表面に対して30゜の入射角で外光を照射したときに受光角が15゜から45゜までの範囲内で反射率が高くなるようにすることは、反射面の形状および光拡散層の材質を適宜選択することによって、当業者であれば必要に応じて適宜なし得ることである。 そして、本件補正発明の作用効果は引用発明から当業者が予期できたものである。 したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.本件補正についての結び よって、本件補正発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、また、上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるので、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反する。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、「第2[理由]1.」に補正前請求項1として記載したとおりのものである。 本願発明は、前記「第2[理由]2.」で検討した本件補正発明から、「斜め上方から入射した入射光に対する反射光は、前記正反射の方向よりも、前記基材表面に対する垂直位置にシフトした方向に明るい表示範囲がシフトした反射特性を有し、」という事項について、「基材表面に対する正反射の角度より小さい反射角度範囲の反射率の積分値が、正反射の角度より大きい反射角度範囲の反射率の積分値より大きい」という限定を省き、「30゜の入射角で外光を照射したときに、その受光角が15゜から45゜の範囲内で明るい表示範囲を有する」という事項について、補正前の請求項3の「基材表面に対する正反射の角度より小さい反射角度範囲に反射率の最大値を有する」という限定、「基材表面に対する正反射の方向である30゜を中心として、受光角を0゜から60゜まで振ったときに、受光角が15゜から45゜までの範囲内で反射率が高くなるように設定されており」という限定、および、「受光角に対する反射率曲線が反射率の最大値となる角度を挟んで非対称となる反射特性を有する」という限定を省いたものに相当する。 2.対比・判断 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2[理由]2.」において記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである 3.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-02-02 |
結審通知日 | 2009-02-03 |
審決日 | 2009-02-16 |
出願番号 | 特願2002-109181(P2002-109181) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(G02F)
P 1 8・ 575- Z (G02F) P 1 8・ 537- Z (G02F) P 1 8・ 121- Z (G02F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 下村 一石、森口 良子、瀬川 勝久 |
特許庁審判長 |
小松 徹三 |
特許庁審判官 |
安田 明央 森林 克郎 |
発明の名称 | 反射体および反射型液晶表示装置 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 棚井 澄雄 |