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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て不成立) B27B
管理番号 1195331
判定請求番号 判定2008-600032  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2009-05-29 
種別 判定 
判定請求日 2008-07-08 
確定日 2009-03-26 
事件の表示 上記当事者間の特許第3553514号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号説明書及び図面に示す「樹木の切断装置」は、特許第3553514号発明の技術的範囲に属する。 
理由 第1.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号説明書及び図面に示す「樹木の切断装置」(以下、これを「イ号物件」という。)は、特許第3553514号発明の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。
イ号物件は、請求人であるウエダ産業株式会社が販売している樹木の切断装置である。

第2.本件特許発明
特許第3553514号の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本件特許発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであって、請求項1を分説すると、次のとおりである。
「(A)ホルダ-1の先部に略湾曲状とされた両側一対の受片2が所定間隔をおいて並設され、
(B)該受片2間には略半円形状の可動刃4が嵌合自在に軸着され、
(C)該可動刃4はその弧状外周縁に沿って鋸歯状刃体6が形成され、
(D)可動刃4には流体圧シリンダ8が接続され、
(E)上記受片2の基端部には各々固定掴持片3が立設されると共に、
(F)該固定掴持片3に対応すべく可動刃4の背部に掴持部7が形成されてなる
(G)ことを特徴とする、廃材用切断装置。」

第3.イ号物件
1.イ号物件の説明
請求人 ウエダ産業株式会社が提出した、平成20年7月8日付け判定請求書に添付された「イ号説明書及び図面」には、以下の記載がある。
「1.構成
丸4 イ号物件の説明
以下の説明に示すとおり、イ号物件の『樹木の切断装置』 商品名『ニューワニラー』は、本件特許発明に対応して記載すると、次のとおりである。
(a)ホルダー1Bに両側一対の受片フレーム2Bが所定間隔をおいて並設され、
(b)受片フレーム2B間には可動刃4Bが嵌入可能に軸着40Bされ、
(c)可動刃4Bはその外周縁に沿って曲率半径約1156の略直線状の鋸歯状刃体6Bが形成され、
(d)可動刃4Bには流体圧シリンダ8Bが接続されて可動刃4Bを軸着40Bを中心に被切断物Aを押し切りできるように回動する。
(e)可動刃4Bの上死点には、U字状のストッパーフレーム41Bが1対の受片フレーム2Bの軸着40B上に立設して固着され回動可能に可動刃4Bが嵌入している。
(f)ホルダー1Bは、油圧モーター1B3が内設され、ピニオン1B4によって旋回輪軸受1B0を介して受片フレーム2Bを360°駆動回動させると共に、油圧シリンダ8Bに回り継手100Bを介して給油できるように形成されている。
詳述すると、ホルダー1Bには、アーム11B先端との取付用ピン穴12BとHリンク取付用ピン穴13Bとを設けた1対のブラケット板14Bが設けられている。
さらに、ホルダー1Bには、受片フレーム2Bを、1対のブラケット板14Bに対し、回動可能に駆動するため、外輪1B1と内歯1B5を内接固着した内輪1B2とからなる旋回輪軸受1B0と、ブラケット板14B間に設けられた油圧モーター1B3により駆動し内歯1B5と噛合するピニオン1B4と、ブラケット板14Bと固着し、中央の穴部1B60に回り継手100Bを挿入してボルト1B61により着脱可能に固着し、外輪1B1にボルト1B62により着脱可能に固着した外輪固着板1B6と、受片フレーム2Bに固着し、中央の穴部2B10から回り継手100Bを回転可能に突出できるようにした内輪回転板2B1とを備えている。
回り継手100Bは、図イ-3に示すように、ケーシング体101Bと、これに回転可能に挿入されたシャフト体102Bを備えている。
ケーシング体101Bは、油流入出口1011Bとこれに連通する流路10111Bと環状溝10112Bと、油流入出口1012Bとこれに連通する流路10121Bと環状溝10122Bが設けられている。
シャフト体102Bは、ベアリング104Bによりケーシング体101Bに回転可能に保持されると共に、シールリング105B、106B及び107Bによりケーシング体101Bに密着している。また、シャフト体102Bは、環状溝10112Bに対応する穴10212Bから軸方向の流路10211Bを経て流出入口1021Bに連通している。環状溝10122Bに対応する穴10222Bから軸方向の流路10221Bを経て流出入口1022Bに連通している。
圧力油は、圧入ホース10110Bから回り継手100Bのケーシング体101Bの流出入口1011Bから流路10111B、環状溝10112Bを経てシャフト体102Bの穴10212B、流路10211B、流出入口1021B、圧入ホース8B1から油圧シリンダ8Bに圧入されて油圧シリンダロッド(図示しない)を動作させたのち、圧出ホース8B2、シャフト体102Bの流出入口1022B、流路10221B、穴10222Bを経てケース体101Bの環状溝10122B、流路10121B、流出入口1012Bから圧出ホース10120Bに戻り油圧ポンプ(図示しない)に回帰できるようになっている。
(g)受片フレーム2Bの他端には2本のフォーク片31Bを2本の連結棒32B及び連結板33Bで連結した固定掴持片3Bが突出し、可動刃4Bの背部には、板状の刃物フレーム7Bの両側に2本のフォーク71Bが3本の連結棒711B及び2本の補助連結棒712Bにより3本フォークを形成した移動掴持片70Bが突出して、移動掴持片70Bは可動刃4Bの回動と共にストッパーフレーム41Bと固定掴持片3Bとの間で回動できるように形成されている。
2.作用効果
(1)従って、イ号物件のホルダー1Bは、パワーショベル(図示しない)の油圧ポンプにより給油される油圧モーター1B3の駆動正逆回転により内歯1B5に噛合するピニオン1B4を正逆回転してブラケット板14Bに対し旋回輪軸受1B0を介して受片フレーム2Bを360°回動させることができ、その際、油圧シリンダ8Bは、受片フレーム2Bの回動に拘わらず、回り継手100Bを介して給油を受けることができる。
(2)次に、油圧シリンダ8Bにより可動刃4Bが回動して被切断物Aの樹木を鋸歯状刃体6Bにより切断するが、その際、抜根、節木や松等の靱性樹木は鋸歯状刃体6Bに食い込んで切断できない場合が多く、この場合には、図イ-7、図イ-8に示すように、被切断物Aを食い込ませた可動刃4Bを上死点附近まで上昇させてストッパーフレーム41Bにより被切断物Aを抜き去ることができる。また、食い込んだ被切断物Aの状況により、油圧モーター1B3の駆動により、図イ-6に示すように被切断物Aに対し受片フレーム2Bを左右R方向に回動させることにより被切断物Aの食い込み切れ目を中心に被切断物Aを破断することができる。
さらに、図イ-9に示すように、立木や竹藪をそのまま横方向に切断したりすることができる。
(3)切断又は破断された大小様々の抜根、節木、切枝等の不均整な切断樹木は、2本フォーク状で連結片32B、33Bで連結した固定掴持片3Bと、3本フォーク状で連結片711B、712Bで連結した移動掴持片71Bで掴持しながら移動させる。この際、受片フレーム2Bを180°回転させて固定掴持片3Bを接地させて切断物を掴持させて移動させることができる。
3.効果
イ号物件は、
(1)比較的良質な木製廃材の場合と異なり、樹木の伐採では、特に、抜根、枝葉、節目、ヤニ等や靱性のある樹木の被切断物のほか、立木や竹藪等の切断も要求されるので、被切断物の状況に応じて、押し切り可動鋸刃をあらゆる角度から使用せねばならない苛酷な条件に対応できる。
(2)また、U字状のストッパーフレームの当接又は(同時に)受片フレームの360°駆動回転により迅速に被切断物の抜き去り又は破断によって押し切り鋸刃を迅速容易に再切断できる。
(3)切断された樹木等は、2本フォーク状で、その間隙を少なくした固定掴持片と、3本フォーク状で、その間隙を少なくした移動掴持片により容易に掴持して移動でき、また、固定掴持片を接地させながら、移動掴持片で掴持移動できる。」(イ号説明書及び図面の第1頁第2行-第4頁第1行。)

2.イ号物件の構成
図面の図イ-1ないし図イ-11を含めた前記1.の「イ号物件の説明」を参照することにより、前記第2に記載の本件特許発明の分説(A)?(G)に対応させて、イ号物件の構成を以下の(a)?(g)に分説できる。
(a)「両側1対の受片フレーム2Bを、1対のブラケット板14Bに対し、回動可能に駆動するため、ホルダー1Bには、外輪1B1と内歯1B5を内接固着した内輪1B2とからなる旋回輪軸受1B0と、ブラケット板14B間に設けられた油圧モーター1B3により駆動し内歯1B5と噛合するピニオン1B4と、ブラケット板14Bに固着し、中央の穴部1B60に回り継手100Bを挿入してボルト1B61により着脱可能に固着し、外輪1B1をボルト1B62により着脱可能に固着した外輪固着板1B6と、受片フレーム2Bに固着し、中央の穴部2B10から回り継手100Bを回転可能に突出できるようにした内輪回転板2B1とを備えている。」
(b)「受片フレーム2B間には可動刃4Bが嵌入可能に軸着40Bされ、」
(c)「可動刃4Bはその外周縁に沿って曲率半径約1156の略直線状の鋸歯状刃体6Bが形成され、」
(d)「可動刃4Bには流体圧シリンダ8Bが接続されて可動刃4Bを軸着40Bを中心に回動できるようにしている。」
(e)「受片フレーム2Bの他端には2本のフォーク片31Bを2本の連結棒32B及び連結板33Bで連結した固定掴持片3Bが突出し、」
(f)「可動刃4Bの背部には、板状の刃物フレーム7Bの両側に2本のフォーク71Bが3本の連結棒711B及び2本の補助連結棒712Bにより3本フォークを形成した移動掴持片70Bが突出して、移動掴持片70Bは可動刃4Bの回動と共にストッパーフレーム41Bと固定掴持片3Bとの間で回動できるように形成されている。」
(g)「樹木の切断装置。」

第4.当審の対比・判断
1.イ号物件が本件特許発明の構成要件(A)?(G)を充足するか否かについて
イ号物件が本件特許発明の構成要件(A)?(G)を充足するか否かについて、(A)をイ号物件の構成(a)に、構成要件(B)を構成(b)に、の如く順次対応させて、対比検討する。
(ア):構成要件(A)について
イ号物件において、「受片フレーム2B」は、本件特許発明の「受片2」に対応する。そして、図イ-1から、受片フレーム2Bの符号21Bで示される先端は所定間隔をおいて並設された部分となっている。また、図面の図イ-1、図イ-6、図イ-9において、受片フレーム2Bは明らかに湾曲しており、また、図イ-7、図イ-8、図イ-10、図イ-11においても、受片フレーム2Bの先端部(符号21Bで示される部分)においては直線状となっているものの、受片フレーム2Bの中間部において湾曲している。したがって、いずれの図面においても、受片フレーム2Bは略湾曲状とされていることは明らかである。
イ号物件において、図イ-1、図イ-2に示されるとおり、受片フレーム2Bは、内輪回転板2B1の隣接して設けられているものであるから、イ号物件において、「内輪回転板2B1」は、本件特許発明の「ホルダー1」に対応する。
そうすると、イ号物件において、1対の受片フレーム2Bは、内輪回転板2B1の先部に両側1対の受片フレーム2Bが所定間隔をおいて並設されたものであり、かつ、受片フレーム2Bは略湾曲状とされたものであるから、イ号物件には、「内輪回転板2B1の先部に略湾曲状とされた両側一対の受片フレーム2Bが所定間隔をおいて並設され」た構成が認められ、これは、本件特許発明の「ホルダ-1の先部に略湾曲状とされた両側一対の受片2が所定間隔をおいて並設され」た構成に対応するから、イ号物件の構成(a)は本件特許発明の構成要件(A)を充足する。
(イ):構成要件(B)について
イ号物件における「受片フレーム2B」及び「可動刃4B」は、それぞれ本件特許発明の「受片2」及び「可動刃4」に対応する。
本件特許発明の「嵌合自在」は「はめあい自在」を意味するものである。一方、イ号物件の「嵌入可能」も「はめこむことが可能」の意味であるから、イ号物件における「嵌入可能」は本件特許発明の「嵌合自在」に対応する。
そうすると、イ号物件の「受片フレーム2B間には可動刃4Bが嵌入可能に軸着40Bされ」る構成は、本件特許発明の「受片2間には可動刃4が嵌合自在に軸着され」る構成に対応するものの、本件特許発明の可動刃4は、「略半円形状」と特定されている点において、イ号物件の構成(b)は本件特許発明の構成要件(B)を文言上充足していない。
(ウ):構成要件(C)について
イ号物件における「可動刃4B」及び「鋸歯状刃体6B」は、それぞれ本件特許発明の「可動刃4」及び「鋸歯状刃体6」に対応する。また、「曲率半径約1156の略直線状」という形状が、「弧状」と言い得るものであることは明らかである。
そうすると、イ号物件の「可動刃4Bはその外周縁に沿って曲率半径約1156の略直線状の鋸歯状刃体6Bが形成され」る構成は、本件特許発明の「可動刃4はその弧状外周縁に沿って鋸歯状刃体6が形成され」る構成に対応するので、イ号物件の構成(c)は本件特許発明の構成要件(C)を充足する。
(エ):構成要件(D)について
イ号物件における「可動刃4B」及び「流体圧シリンダ8B」は、それぞれ本件特許発明の「可動刃4」及び「流体圧シリンダ8」に対応する。
そうすると、イ号物件の「可動刃4Bには流体圧シリンダ8Bが接続され」る構成は、本件特許発明の「可動刃4には流体圧シリンダ8が接続され」る構成に対応するので、イ号物件の構成(d)は本件特許発明の構成要件(D)を充足する。
(オ):構成要件(E)について
イ号物件において、「受片フレーム2B」及び「2本のフォーク片31B」は、それぞれ本件特許発明の「受片2」及び「固定掴持片3」に対応する。そして、図イ-1から、受片フレーム2Bの符号21Bで示される先端と2本のフォーク片31Bとに分岐している構成が認められ、2本のフォーク片31Bは、それぞれ、1対の受片フレーム2Bから設けられている。そして、受片フレーム2Bの分岐するまでの部分を「基端部」と呼ぶことにすると、2本のフォーク片31Bは、受片フレーム2Bの基端部から突出したものとなっている。そして、「突出」することと「立設」することとは同義である。
そうすると、イ号物件の、「受片フレーム2Bの他端には2本のフォーク片31Bを2本の連結棒32B及び連結板33Bで連結した固定掴持片3Bが突出し」た構成は、本件特許発明の「受片2の基端部には各々固定掴持片3が立設され」る構成に対応するから、イ号物件の構成(e)は本件特許発明の構成要件(E)を充足する。
(カ):構成要件(F)について
固定掴持片3Bが2本のフォーク片を有することは明らかである。そして、図イ-1から、可動刃4Bの背部に構成された刃物フレーム7Bには、移動掴持片70Bが、その両側の2本のフォーク71Bと共に設けられていることが認められることから、「移動掴持片70Bは可動刃4Bの背部に形成されている」とも言うことができる。フォーク片31Bと移動掴持片70Bと対向している、すなわち、「対応している」ことは明らかである。
ここで、イ号物件において、「2本のフォーク片31B」、「可動刃4B」及び「移動掴持片70B」は、それぞれ本件特許発明の「固定掴持片3」、「可動刃4」及び「掴持部7」に対応する。
そうすると、イ号物件の、「可動刃4Bの背部には、板状の刃物フレーム7Bの両側に2本のフォーク71Bが3本の連結棒711B及び2本の補助連結棒712Bにより3本フォークを形成した移動掴持片70Bが突出して、移動掴持片70Bは可動刃4Bの回動と共にストッパーフレーム41Bと固定掴持片3Bとの間で回動できるように形成されている」構成は、本件特許発明の「固定掴持片3に対応すべく可動刃4の背部に掴持部7が形成されてなる」構成に対応するから、イ号物件の構成(f)は本件特許発明の構成要件(F)を充足する。
(キ):構成要件(G)について
イ号物件は、「樹木の切断装置」であるが、樹木として木製廃材も切断可能なことは明らかであるので、「木製廃材も切断可能な樹木の切断装置」と言い得るものであることは明らかである。
したがって、イ号物件の構成(g)である「樹木の切断装置」という構成は、本件特許発明の構成要件(G)である「廃材用切断装置」を充足する。
(ク):まとめ
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明の構成要件のうち、(B)の構成要件である可動刃4が「略半円形状」であると言えない点において、本件特許発明の構成要件を文言上充足していない。

2.上記本件特許発明のイ号物件と異なる部分が均等であるか否かについて
最高裁平成6年(オ)第1083号判決(平成10年2月24日)は、特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存在する場合であっても、以下の5つの要件を満たす場合には、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、対象製品等は特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当であると判示している。
・異なる部分が特許発明の本質的部分ではなく(第1要件)、
・異なる部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達成することができ、同一の作用効果を奏するものであって(第2要件)、
・異なる部分を置き換えることに、当業者が対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり(第3要件)、
・対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から出願時に容易に推考できたものではなく(第4要件)、
かつ、
・対象製品等が、特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もない(第5要件)。
そこで、イ号物件の構成要件(b)と本件特許発明の構成要件(B)とが、上記第1?第5要件を満たすか否かについて、以下に検討する。
(ア)第1要件について
本件の特許明細書(甲第3号証)には、発明が解決しようとする課題として、段落【0006】に「・・・両側の受片2に木製廃材などの被切断物Aを横架状に保持せしめつつ、流体圧シリンダ8の作動により刃体6が鋸歯状とされた可動刃4を受片2間に嵌合せしめ、鋸歯状刃体6を被切断物Aに食込ませてその逃げを防止せしめつつ確実に切断せしめることが出来るのみならず、流体圧シリンダ8の作動により可動刃4を介して掴持部7を固定掴持片3方向に可動せしめ、固定掴持片3との間に所要の被切断物Aやその切断片などを掴持せしめることが出来るものである。」と記載されており、上記記載事項によれば、本件特許発明は、被切断物Aをその逃げを防止せしめつつ確実に切断するために、受片2を略湾曲状とし、また、被切断物Aやその切断片などを掴持するために、固定掴持片3と可動刃4の背部に掴持部7を設けたものである。
一方、可動刃4の形状に関して、第4の1.(ウ)で前記したように、「弧状外周縁に沿って鋸歯状刃体が形成され」るものである点では、イ号物件の構成は本件特許発明の構成要件を充足している。すなわち、可動刃4は、鋸歯状刃体6が形成される部分が弧状に突出していれば足り、この上さらに、可動刃4の形状を「略半円形状」と特定しても、そのことにより、上記被切断物Aをその逃げを防止せしめつつ確実に切断したり、被切断物Aやその切断片などを掴持することに特段の影響を与えるものでないことは明らかである。
以上により、本件特許発明において、構成要件(B)の可動刃を「略半円形状」とすることは発明の本質的部分でない。
そうすると、本件特許発明のイ号物件と異なる部分は、均等であるといえるための第1要件を満たしているといえる。
(イ)第2要件について
上述したように、本件特許発明は、可動刃4の形状を「略半円形状」としたという構成を採用することにより、発明が解決しようとする課題を解決するものではないから、可動刃4の形状の違いは、本件特許発明の課題の解決に何らの影響を及ぼす事項ではない。
してみれば、可動刃4の形状を、略半円形状以外の形状におけるものと置き換えたとしても、上記本件特許発明の技術課題が達成できることに相違はなく、イ号物件は、本件特許発明と同一の作用効果を奏するものであることは明らかである。
(ウ)第3要件について
一般に、可動刃4の形状を適当な形状とすることは、当業者が適宜設計することができる、単なる設計的事項程度のことと言える。
してみると、可動刃4の形状を略半円形状以外の適当な形状とすることは、当業者が、イ号物件の製造等の時点において容易に想到することができたものであることは明らかである。
(エ)第4要件について
本件特許の出願経過において、拒絶理由に記載された刊行物は特開2000-343505号公報(以下、「刊行物1」という。)、及び実願昭62-152641号(実開昭64-57005号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)であるので、この2つの刊行物を、本件特許の出願時の公知技術として参酌することとする。
刊行物1は、受け部20を有するジョー10に対して、回転軸部28を中心に回動するカッター50で木材を切断する木材切断装置、を開示する。
刊行物2は、刃体1に多数の鋸歯状刃体を有する折畳刃物、を開示する。
そして、上記刊行物1?2のいずれにも、上記「(ア)第1要件について」で指摘したところの、「流体圧シリンダ8の作動により可動刃4を介して掴持部7を固定掴持片3方向に可動せしめ、固定掴持片3との間に所要の被切断物Aやその切断片などを掴持せしめることが出来る」という技術課題を「受片2の基端部には各々固定掴持片3が立設されると共に、該固定掴持片3に対応すべく可動刃4の背部に掴持部7が形成されてなる」という構成を採用することにより達成できることを、開示ないし示唆する記載を見つけることはできない。いいかえれば、上記刊行物1?2からは、本件特許発明の本質的部分である構成要件(E)及び(F)に対応するイ号物件の構成(e)及び(f)を、開示ないし示唆する記載を見いだすことはできない。
したがって、イ号物件は、本件特許発明の特許出願時における公知技術と同一であるとも、また、当業者がこれら公知技術からその出願時に容易に推考できたものであるともいうことはできない。
(オ)第5要件について
本件特許の出願経過を参酌しても、その審査請求から特許査定に至る間において、可動刃4の形状として略半円形状以外のものを除外するという、イ号物件のような構成を採用することが、その特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情を見いだすことはできない。
以上のとおり、均等の判断にあたっての上記第1?第5要件は全て満たされるから、イ号物件の構成要件(b)は、本件特許発明の構成要件(B)と均等なものということができ、したがって、イ号物件の構成要件(b)は、本件特許発明の構成要件(B)を充足するものといえる。

第5.請求人の主張について
請求人は、判定請求書の第7頁から第11頁において、「丸5 本件特許発明とイ号物件の技術的対比」として、イ号物件と本件特許発明の一致点及び相違点等について、縷々主張している。以下、請求人の主張に沿って、逐次検討する。
(ア)[A]について
請求人は、「イ号物件のホルダー1Bは、一対の側板14Bの間に油圧モーター1B3が設けられ、その回転軸1B31に取り付けられたピニオン1B4と噛合する旋回輪軸受1B0の内輪1B2の内歯1B5を介して、内輪1B2と着脱可能に固着する内輪回転板2B1と固着する受片フレーム2Bを一対の側板14Bと固着する外輪固着板1B6に対し360°駆動回転できるように形成していると共に、可動刃4Bに接続する油圧シリンダー8Bに、回り継手(SWIVELJOINT)100Bを介して給油できるように形成している。
従って、受片フレーム2Bの先端21B側を接地させて被切断物Aを切断したり、逆に受片フレーム2Bの固定掴持片3B側を接地させて切断物を掴持移動したり、立木や竹藪をそのまま横方向に切断したり、自由な角度で回転刃4Bや固定掴持片3Bと移動掴持片70Bを使い分けることができる。」と主張している。
しかしながら、第4の1.(ア)で言及したとおり、イ号物件において、「内輪回転板2B1」を、本件特許発明の「ホルダー1」に対応させると、イ号物件は本件特許発明の構成要件(A)を充足する。
したがって、[A]についての請求人の主張は採用できない。
また、請求人は、受片フレーム2Bの形状につき、平成21年3月2日付け判定事件弁駁書において、「イ号説明書及び図面に示すように、イ号物件の受片フレーム2Bの先端側部分はストレート形状であって、三日月状の湾曲状部分として形成されていない。イ号物件の受片フレーム2Bは、その上に乗せた被切断物を、横架状に保持せしめて、受片フレーム2Bの先端側から逃さないような構造にはなっていない。」(第3頁第14行?第20行。)と主張している。
しかしながら、イ号物件において、図面の図イ-1、図イ-6、図イ-9において、受片フレーム2Bは明らかに湾曲しており、また、図イ-7、図イ-8、図イ-10、図イ-11においても、受片フレーム2Bの先端部(符号21Bで示される部分)においては直線状となっているものの、受片フレーム2Bの中間部においては湾曲している。そして、これらの湾曲部を有する構造により、湾曲部を有さない場合に比べて受片フレーム2B上に乗せた被切断物を逃さないという効果を奏することは明らかである。したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(イ)[B]について
請求人は、「イ号物件では、曲率半径R約1156の略直線状の可動刃4Bが嵌入可能に軸着され、流体シリンダーが接続されて、本件特許発明では可動刃4の鋸歯6により被切断物Aを挽き切り状に切断し、イ号物件では可動刃4Bの鋸歯6Bにより被切断物Aを押し切り状に切断する点が根本的に相違する。イ号物件の可動刃4Bの鋸歯6Bの押し切りの切断時の刃先の軌跡は、図イ-11のとおりであるが、本件特許発明の挽き切りでは、各切断刃が、前の歯の切断方向線を追越して彼の歯が切断していくが、本件イ号の押し切りでは、各切断刃がほぼ垂直方向に切断していく。挽き切りでは、複数歯で順次切断していくため、小さい歯で、小動力で済む利点があるが、切断時間が長く、言わば、ジヮーと切れるのに比べ、押し切りでは、一つの歯が最後まで押して一回で切断していくため、大きな歯で、大動力が必要となり、歯こぼれが発生することがある欠点があるが、切断時間が短く、言わば、バサッと切れる、という明らかな相違がある。」と主張している。
しかしながら、本件特許発明の図面の図4を参照する限り、9個設けられている鋸歯状刃体6は、回転中心である軸5からの距離が異なっているものであることから、若干の程度の差こそあれ、本件特許発明の切断装置も一つの鋸歯状刃体6が最後まで押して一回で切断するものであることは明らかである。
したがって、[B]についての請求人の主張は採用できない。
また、請求人は、平成21年3月2日付け判定事件弁駁書において、「可動刃4が軸5を中心として回転(回動)するとき、一部の複数の鋸歯状刃体6で被切断物Aが切断される。上記の切断に関与する複数の鋸歯状刃体6を軸5に近いものから順に、第1,第2,第3,・・鋸歯状刃体6とする。
可動刃4が軸5を中心として回動するとき、第1,第2,第3,・・鋸歯状刃体6がほぼ円弧状に縦列して被切断物Aに接近し、第1鋸歯状刃体6が被切断物Aの所定厚さ分を切断し、次にこれを時間遅れをもって第2鋸歯状刃体6が被切断物Aの次の所定厚さ分を切断し、次にこれに時間遅れをもって第3鋸歯状刃体6が被切断物Aの次の所定厚さ分を切断するという切断操作がなされる。
ここで、図4に示すように、鋸歯状刃体6間ピッチが大きいことも関係して、上記の時間遅れが無視できない大きさになる。そのため、上記の切断動作における「切断深さ方向」は、図4において軸5を中心とする半径方向(断面矩形の被切断物Aの左下がりの対角線の方向に近い方向)である。
従って、上記の切断動作は、拒絶査定の『指摘』に定義している『挽切る』に該当する切断動作である。しかも、この切断動作は、出願人が出願当初に想定し且つ明細書に記載していた『挽切る』という切断動作でもある。
依って、本件特許発明における、可動刃4の鋸歯状刃体6は、被切断物Aを『挽き切り状に切断する』ものと限定的に解釈すべきものである。」(第4頁第15行?第5頁第6行。)と主張している。
しかしながら、本件特許発明における可動刃4は、図面の図4を参照する限り、軸5を中心に回転するものではあるけれども、9個の鋸歯状刃体6は軸5を中心とする半径状に均等の距離に並べて設けられているものではなく、被切断物Aに対する切断時においても、複数個の鋸歯状刃体6が被切断物Aに接近する際の時間遅れはあるものの、これをもって通常ののこぎりのように切断することと同等の切断である「挽き切り状に切断する」ものに限定的に解釈すべきものでないことは明らかである。
以上のとおりであるから、請求人の上記主張は採用できない。
(ウ)[C]について
請求人は、「動力による可動刃の1回切りでは、鋸歯が被切断物に食い込んだまま抜き去ることが困難な場合が多く、特に樹木の伐採時には、樹木の靱性、節目、生節、ヤニ分のほか、抜根を含むので、鋸歯の1回切りでは、抜き去って迅速容易に再切断に使用することが困難な場合が多い。本件特許発明は、特許登録後1回も製作されていない。」と主張している。
しかしながら、本件特許発明が1回も製作されていないことは、イ号物件が本件特許発明に属するものであるかどうかの判断とは、無関係の事実である。
したがって、[C]についての請求人の主張は採用できない。
(エ)[D]について
請求人は、「イ号物件では、可動刃4Bには、U字状のストッパーフレーム41Bが受片フレーム2Bの軸着40B上に立設固着されているが、本件特許発明では前記ストッパーフレーム41Bに相当するものはない。
従って、イ号物件では、可動刃4Bの鋸歯状刃体6Bに食い込んだ被切断物Aは、そのまま上昇させれば被切断物Aはストッパーフレーム41Bに当接して抜き去り又は破断させることができ、迅速容易に可動刃4Bを再切断に振り向けることができる。」と主張している。
しかしながら、イ号物件には本件特許発明には存在しない構成要件が設けられているからと言って、すなわち、本件特許発明に比べてイ号物件が改良されたものであるからと言って、そのことによりイ号物件が本件特許発明に属しないことの根拠になるものではない。
したがって、[D]についての請求人の主張は採用できない。
(オ)[E]について
請求人は、「本件特許発明の固定掴持片3は2本のフォーク状、掴持部7は可動刃4の背部の板状の1本フォークで掴持できるようになっているが、イ号物件では、固定掴持片3Bの間に、3本の連結部材32B、板状の連結部材33Bを設け、移動掴持片70Bでは、3本の連結部材711B及び2本の補助連結部材712Bを連結して対処している。」と主張することにより、イ号物件では、掴持を確実にするための連結部材等を余分に設けている点を主張している。
しかしながら、本件特許発明においては、掴持部7は、固定掴持片3に対応するように可動刃4の背部に形成されて、可動刃4の開閉により固定掴持片3と共に掴持する機能を有するものであれば足りる。そして、イ号物件の構成(e)、(f)が本件特許発明の構成要件(E)、(F)を充足することは、前記第4の1.(オ)及び(カ)で前記したとおりである。
したがって、[E]についての請求人の主張は採用できない。
(カ)[F]について
請求人は、「本件特許発明の『廃材用切断装置』により切断されるものは、『木製廃材』であると明記されている。イ号物件は、木製廃材も切断できるが、樹木の伐採が主であり、伐採し終わった樹木の切断のほか立木、竹藪等の切断を行うものである。」と切断装置の用途の違いを主張している。
しかしながら、イ号物件は、木製廃材も切断できるものであるから、「廃材用切断装置」とも言い得るものである。
したがって、[F]についての請求人の主張は採用できない。
以上のとおりであり、上記請求人の主張は何れも採用し得るものではない。

第6.むすび
以上のとおりであるから、イ号説明書及び図面に示すイ号物件である樹木の切断装置は、本件特許発明の構成要件(A)ないし(G)の全てを充足するから、本件特許発明の技術的範囲に属する。

よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2009-03-13 
出願番号 特願2001-67901(P2001-67901)
審決分類 P 1 2・ 1- YB (B27B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 成就  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 尾家 英樹
鈴木 孝幸
登録日 2004-05-14 
登録番号 特許第3553514号(P3553514)
発明の名称 廃材用切断装置  
代理人 岡村 俊雄  
代理人 和田 宏徳  
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