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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) G03B
管理番号 1195332
判定請求番号 判定2008-600039  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2009-05-29 
種別 判定 
判定請求日 2008-09-03 
確定日 2009-03-16 
事件の表示 上記当事者間の特許第4157908号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号物件説明図に示す「可搬式スクリーン装置」は、特許第4157908号発明の技術的範囲に属する。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は、イ号物件説明図に示す立ち上げ型スクリーンGUP(以下、「イ号物件」という。)が、請求人所有の特許第4157908号発明(以下、「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属するとの判定を求めたものである。

第2 本件特許発明
本件特許発明は、本件特許公報の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載されたとおりのものであって、請求項1を、その構成要件ごとにAないしIの符号を付して分節すると、次のとおりのものである。
「A 長手方向に延在する開口部を上面に有するケーシングと、
B 該ケーシングに回動自在に取り付けられたスプリングロールと、
C 収納時には上記スプリングロールに巻回され、使用時には上記開口部から巻き出されるスクリーンと、
D 該スクリーンの一端が固着され、収納時には上記開口部を塞ぐ蓋体を兼ねるトップバーと、
E 該ケーシングの側面中央部に一端が支持され、巻き出したスクリーンを展張状態に保持する伸縮可能な支柱と、
F を有する可搬式スクリーン装置であって、
G 上記トップバーの中央部にハンドル部を備えた係合部を設ける一方、
H ケーシングの前面中央部に保護部材を設けてケーシングの中央部を補強し、
I 収納時には、上記ケーシングの中央部に設けた被係合部と上記係合部とを係合させてなる可搬式スクリーン装置。」(以下、これを「本件特許発明」という。)

第3 イ号物件
1.イ号物件説明図について
上記本件特許発明に対し、判定請求書に添付したイ号物件説明図は、甲第2号証(GRANDVIEW PROJECTION SCREEN 立ち上げ型スクリーン(GUP-60W)取り扱い設置説明書)の頁番号1の「各部の名称と寸法」と同一であるので、甲第2号証はイ号物件の「取り扱い設置説明図」であると認められる。
また、甲第3号証の1、2(写真)に示された物品は、甲第2号証の表題と同じ「GRANDVIEW」との表示が付され、甲第2号証に記載されている物品(特に、頁番号2の2-1ならびに頁番号7の3-3の図示内容参照)と酷似する物品であることから、イ号物件の「要部写真」と認められる。
なお、以下では、イ号物件説明図中に「○の中に数字」を用いて記載されている参照番号、ならびに、甲第2号証においては「○の中に数字」を用いて記載されている項目番号は、いずれも「( )の中に数字」として記載した。

2.イ号物件説明図に記載されたイ号物件
そこで、甲第2号証の記載、甲第3号証の1、2の内容ならびに当業者の技術常識を参酌してイ号物件説明図について検討すると、次の(ア)ないし(キ)の事項が明らかである。
(ア)イ号物件は、スクリーン面(1)とマスク部(2)からなら「スクリーン部」を有する。
(イ)イ号物件の前記スクリーン部は、その上端でトップバー(4)に固定され、取り付け(使用)時にケース(7)の長手方向略全長から引き出され、収納時はトップバー(4)がケース(7)の上部に留まった状態でケース(7)内に収納されていることからして、ケース(7)は長手方向に延在する開口部を有し、トップバー(4)は収納時には上記開口部を塞ぐように開口部上に留まる。
(ウ)イ号物件の支柱(10)、(11)-1、(11)-2、(12)は、ケース(7)の背面に取り付けられていて、取り付け(使用)時に時計回りに回転させてストッパー(9)位置で止まるまで立ち上げ、その後、引き上げてスクリーン高さに応じてロックされ、使い終わったらロックを解除して引き下げるものである(甲第2号証頁番号2の「2-3」、頁番号4の「(4)」?「(5)」頁番号6「(1)」参照)ことからして、支柱(10)、(11)-1、(11)-2、(12)は、ケース(7)の背面の略中央部に一端が支持されている、スクリーン部を展張状態に保持する伸縮可能な支柱である。
(エ)イ号物件は、フットを広げ、支柱を立てて引き出し、使い終わった後にスクリーン部を収納して保管するものであって(甲第2号証の頁番号2?7の「スクリーン組み立て方法」、「スクリーン取り付け方法」、「使い終わったら」の項参照)、立てかけることも可能(甲第2号証の頁番号8の「注意」の欄参照)、であって「ハンドルを持ち上げて移動」(甲第3号証の1,2の写真中の表記内容参照)するものであるであることから、イ号物件は可搬式といえる。
(オ)イ号物件のハンドル(5)は、トップバー(4)上にトップバー(4)と並設されたショルダーバー(3)の略中央部に設けられたハンドルベース(6)に、回動可能に設けられている(甲第2号証の頁番号1の「背面図」、頁番号2の「2-1」の図、頁番号3の「(3)」の図、頁番号6の「2-1」の図参照)。
(カ)イ号物件のハンドルベース(6)は、ケース(7)の背面の略中央部に支柱ストッパー(9)とともに設けられたハンドルロック(18)(甲第2号証の頁番号1の「背面図」、頁番号7の「2-2」の下側、同「3-1」の図参照)と、使い終わった後にカチッと音がするまで確実に押し込まれるものである(甲第2号証の頁番号7の「注意」の欄参照)ことからして、ハンドルベース(6)は、ハンドル(5)を備えていて、収納時には、ケース(7)の背面の略中央部に設けられているハンドルロック(18)と係合する係合部を有する。
(キ)甲第2号証の頁番号1の正面図、頁番号2の「2-1」、「2-3」の図、頁番号3の「3-1」の図、頁番号4の「(5)」の図、頁番号7の「3-3」の図、甲第3号証の1、2に示された写真からして、イ号物件は、ケース(7)の正面の略中央部に「GRANDVIEW」と表記された短尺部材をケース(7)の長手方向に延在するように取り付けている。
以上の事項からして、イ号物件説明図に記載されたイ号物件は、次のaないしiの各構成を具備するものと認められる。
「a 長手方向に延在する開口部を上面に有するケース(7)と、
c 該ケース(7)に収納され、使用時には上記開口部から引き出されるスクリーン部と、
d 該スクリーン部の一端が固定され、収納時には上記開口部を塞ぐように開口部上に留まるトップバー(4)と、
e 該ケース(7)の背面の略中央部に一端が支持され、引き出したスクリーン部を展張状態に保持する伸縮可能な支柱(10)、(11)-1、(11)-2、(12)と、
f を有する可搬式スクリーン装置であって、
g 上記トップバー(4) 上に並設されたショルダーバー(3)の略中央部に設けられたハンドルベース(6)に、回動可能にハンドル(5)を設け、
h ケース(7)の正面の略中央部に「GRANDVIEW」と表記された短尺部材をケース(7)の長手方向に延在するように取り付け、
i 収納時には、ハンドル(5)を備えているハンドルベース(6)が、ケース(7)の背面の略中央部に設けられているハンドルロック(18)と係合する可搬式スクリーン装置。」

第4 被請求人の主張
被請求人は、本件特許発明について、平成20年10月29日付け答弁書において、本件特許発明とイ号物件とを対比し、概略、以下の主張を行っている。
(主張概要)
本件特許発明の構成要件のうち、AからFの構成要件は乙第2号証ないし乙第5号証等に記載されているように従来公知の可搬式スクリーン装置の構造そのものである上、構成要件Gは乙第2号証ならびに乙第6号証ないし乙第8号証に、また、構成要件Iは乙第2号証ならびに乙第7号証に、それぞれ記載された可搬式スクリーン装置が具備する常套的な構成要件であることからして、本件特許発明の技術的意義は構成要件Hにある。
そして、発明の詳細な説明に記載された「発明の課題」や「発明の作用効果」からして、本件特許発明の「ケーシング」は「分離可能な2個のケース部材から構成されている」と解すべきであって、前記構成要件H中の「保護部材」は、「開閉ヒンジ機構で連結された第1のケース部材1aと第2のケース部材1bとを、開閉ヒンジ機構を跨いで両者に渡って延在して取り付けられている」と解すべきものである。
一方、イ号物件のケース(7)は、横断面において前面,底面,後面の3面が一連一体で3面間で分離部のない3面一体型のケースであって、ケースを補強するための保護部材を必要としないものであるので、イ号物件は本件特許発明の「保護部材」を具備しない点で本件特許発明とは構成・作用効果を異にするものである。
また、可搬式スクリーン装置の長手方向中央部に、部材取付のための座板を設けることは乙第7号証や乙第8号証にも記載されているように従来公知の事項である以上、本件特許発明の「保護部材」は本件特許発明の要点部分とはなり得ないので、そのような座板に相当するイ号物件のパッチ状の部材(19) (前記「第3」において「「GRANDVIEW」と表記された短尺部材」とした部材に相当)を、本件特許発明の要部たる「保護部材」に対応する部材であるということもできない。
したがって、イ号物件は本件特許発明の技術範囲に属さないものである。

なお、被請求人は、本件特許発明は特許性に疑義がある旨の主張もしているが、特許性の有無についての主張は無効審判手続においてなされるべきものであって、特許発明の技術的範囲について判断する判定になじまないので、当該主張については参酌、検討をしない。

第5 被請求人の主張についての検討
被請求人の提示した乙第2号証ないし乙第8号証には、本件特許発明の構成要件中の個別の要素について開示があることが認められるものの、当業者の技術常識を勘案しても、いずれの乙号証にも本件特許発明の構成要件G,Iを兼備させること、すなわち、「トップバーの中央部にハンドル部を備えた」「係合部」を設け、「収納時には、上記ケーシングの中央部に設けた被係合部と上記(トップバーの中央部にハンドル部を備えた)係合部とを係合させ」ることは記載されていない。(なお、乙第2号証の係合部は「トップバー」自体に設けられているものであり、「ハンドル部を備えた係合部」とはいえない。)
さらに、本件特許発明の構成要件G,Iを具備した可搬式スクリーン装置に、部材取付のための座板を設けることが従来公知であったともいえない。
そうすると、乙各号証は本件特許発明の構成要件中の個別の要素について開示しているものの、
「G.上記トップバーの中央部にハンドル部を備えた係合部を設ける一方、
H.ケーシングの前面中央部に保護部材を設けてケーシングの中央部を補強し、
I.収納時には、上記ケーシングの中央部に設けた被係合部と上記係合部とを係合させてなる可搬式スクリーン装置」
について開示するものではない。
してみると、乙第2ないし第8号証を勘案しても本件特許発明が公知技術にまで技術的範囲が及ぶものであるとはいえないので、本件特許発明の構成要件を限定的に解釈すべき理由はなく、また、可搬式スクリーン装置の長手方向中央部に部材取付のための座板を設けることが従来公知の事項であったとしても、本件特許発明の構成要件であるGないしIを総合した構成が従来公知とはいえない以上、単にその事項のみをもって本件特許発明の「保護部材」が本件特許発明の要点部分とはなり得ないとすることもできない。
したがって、被請求人の主張を採用することはできない。

第6 本件特許発明とイ号物件との対比
そこで、本件特許発明とイ号物件とを対比すると、イ号物件の「ケース(7)」、「スクリーン部」、「スクリーン部の一端が固定」、「引き出される」が、それぞれ、本件特許発明の「ケーシング」、「スクリーン」、「スクリーンの一端が固着」、「巻き出した」に相当することが明らかである他、以下(あ)ないし(う)の事項も明らかである。
(あ)イ号物件が具備する「トップバー(4)が開口部を塞ぐように開口部上に留まる」との構成からして、イ号物件のトップバー(4)が、本件特許発明の「蓋体を兼ねるトップバー」に相当する。
(い)本件特許明細書の段落【0025】の記載、【図1】、【図2】、【図5】、【図9】、【図17】の図示内容からして、本件特許発明において支柱の設けられる面であるケーシングの「側面」は、実質的に、ケーシングの「背面」を意味する。
(う)イ号物件は、「トップバー(4) 上に並設されたショルダーバー(3)の略中央部に設けられたハンドルベース(6)に、回動可能にハンドル(5)を設け」ていて、前記ハンドルベース(6)は「ケース(7)の背面の略中央部に設けられているハンドルロック(18)と係合する」ものであることから、イ号物件の「ハンドルベース(6)」、「ハンドルロック(18)」は、それぞれ、本件特許発明の「ハンドル部を備えた係合部」、「被係合部」に相当する。
以上からして、イ号物件のa,d?g,iの各構成は、本件特許発明のA,D?G,Iの各構成要件を充足している。
さらに、イ号物件の「構成c」のごとく、スクリーン部が「ケース(7)に収納され、使用時には上記開口部から引き出される」ように構成する際に当業者が採用する常套手段は、ケース内にスプリングロールを回動可能に設け、前記スプリングロールにスクリーン部を巻回することであるという技術常識を勘案すると、イ号物件が「ケース(7)に回動自在に取り付けられたスプリングロール」を具備し、イ号物件のスクリーン部が「収納時には上記スプリングロールに巻回され」ていることは明らかであるので、イ号物件が本件特許発明のB,Cの各構成要件を充足していることも明らかといえる。
してみると、イ号物件と本件特許発明とは、イ号物件が「ケース(7)の正面の略中央部に「GRANDVIEW」と表記された短尺部材をケース(7)の長手方向に延在するように取り付け」ているのに対し、本件特許発明は「ケーシングの前面中央部に保護部材を設けてケーシングの中央部を補強」しているという構成要件を具備する点(以下、「相違点」という。)、すなわち、イ号物件の「構成h」と本件特許発明の「構成要件H」において相違し、その余の構成要件は充足するものと認められる。

第7 検討・判断
前記相違点について検討する。
一般に、物品表面に他の部材を取り付けた場合、少なくとも前記他の部材が取り付けられた部分については、前記他の部材が前記物品を保護するとともに、前記他の部材が前記物品の補強作用を果たすことは技術的に明らかな事項である。
この事項をイ号物件についてみると、他の物品である「「GRANDVIEW」と表記された短尺部材」は、物品である「ケース(7)」の正面の略中央部「に取り付け」られていることからして、イ号物件は、「ケース(7)の正面の略中央部に」「「GRANDVIEW」と表記された短尺部材」を設けて「ケース(7)の正面の略中央部」を保護するとともに補強したものであるといえる。なお、イ号物件の前記「「GRANDVIEW」と表記された短尺部材」が、その部材が固着されているケース(7)の中央部を「補強」する作用を果たすことは、乙1号証の1,2に示された前記短尺部材が、厚みのある部材であって、ケース(7)に一体的に固着されていることからも看取できる。
してみると、イ号物件の「h.ケース(7)の正面の略中央部に「GRANDVIEW」と表記された短尺部材をケース(7)の長手方向に延在するように取り付け」という構成は、本件特許発明の「H.ケーシングの前面中央部に保護部材を設けてケーシングの中央部を補強し、」を充足する。

したがって、イ号物件は本件特許発明の構成要件Aないし構成要件Iのすべてを充足するものと認められる。

第8 むすび
以上のとおりであるので、イ号物件は本件特許発明の技術的範囲に属するものと認められる。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2009-03-04 
出願番号 特願2007-314668(P2007-314668)
審決分類 P 1 2・ 1- YA (G03B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 星野 浩一  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 武田 悟
末政 清滋
登録日 2008-07-18 
登録番号 特許第4157908号(P4157908)
発明の名称 可搬式スクリーン装置  
代理人 言上 恵一  
代理人 高梨 幸雄  
代理人 北原 康廣  
代理人 田村 恭生  
代理人 鮫島 睦  

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