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審決分類 審判 一部無効 判示事項別分類コード:533  G11B
審判 一部無効 2項進歩性  G11B
審判 一部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  G11B
管理番号 1195702
審判番号 無効2007-800197  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-09-19 
確定日 2009-03-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2138602号発明「記録再生装置の防振装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
(1)本件特許第2138602号に係る発明についての出願は、平成2年10月22日に出願され、平成7年12月25日に特公平7-122983号として出願公告がされ、平成8年3月22日及び平成8年3月25日に特許異議の申し立てがされたが、平成10年10月9日にその発明について特許の設定登録がされた。
(2)特許の設定登録がされた本件特許に対し、本件審判の請求までに特許無効審判請求が2件請求(平成11年審判第35576号,無効2000-35269号)された際の無効理由通知に応答して、平成13年2月26日に訂正請求書が提出された。そして、上記2件の特許無効審判請求及び訂正請求に対して、平成13年10月2日に「訂正を認める。請求不成立」の旨の審決がされ、これに対し審決取消訴訟(東京高裁平成13年(行ケ)第505号,東京高裁平成13年(行ケ)第501号)が提起されたが、平成14年10月29日に請求棄却の判決がなされ、平成14年11月12日に確定した。
(3)本件審判の請求は、上記訂正後の本件特許に対しての無効審判請求で、平成19年9月19日付けで、請求人:松下電器産業株式会社(以下「請求人」という。)から請求がされ、平成19年12月14日付けで被請求人:大成プラス株式会社(以下「被請求人」という。)から答弁書及び訂正請求書が提出され、さらに平成20年2月20日に請求人から口頭審理陳述要領書が、平成20年3月6日に被請求人から口頭審理陳述要領書(1)(2)が提出された。
(4)そして、平成20年3月11日に口頭審理が行われ、請求人は「請求の趣旨及び理由は、審判請求書及び平成20年2月20日付け口頭審理陳述要領書に記載のとおり」、被請求人は「答弁の趣旨及び理由は、平成19年12月14日付け答弁書、平成20年3月6日付け口頭審理陳述要領書(1)及び同日付け口頭審理陳述要領書(2)に記載のとおり」
と陳述した。
(5)平成20年3月17日付けで、請求人から無効審判請求理由の根拠条文について、被請求人から平成19年12月14日訂正請求書の訂正の事由の根拠条文につき、上申書の提出がされた。


II.本件訂正請求
1.本件訂正の事由と本件訂正内容
被請求人の求めた請求の理由での訂正の事由は「明瞭でない記載の釈明」であって、訂正事項は、平成14年11月12日に上記I.(2)の訂正請求で確定した訂正明細書(以下「訂正前明細書」という。)に対してのもので以下のとおりである。
(1)訂正前明細書の発明の詳細な説明における実施例のうち、「両者は混合または凝着して熱融着面を作る。」の記載部分(甲第1号証「平成11年審判第35576号に係る訂正公報」)の3頁下から7行ないし6行)とあるのを、「両者は一体となって熱融着面を作る。」と訂正(以下「本件訂正請求」という。)する。

2.本件訂正請求の目的の適否・新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)上記「両者は一体となって熱融着面を作る。」との本件訂正請求は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載があって、訂正前明細書の請求項1に係る発明に記載のある「c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材」と、技術的意義において関係する。
(2)上記「射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体」について、訂正前明細書を参酌すると以下の記載がある。(なお、下線は当審での付与)
(a)[作用]の欄:
「前記第1密封部材は、型成形により一体に筒状部に熱融着される。このため、従来のような密封部材を筒状部に取付けるための作業が省略される。」
(b-i)[実施例]の欄:
「・・・筒状部11の端部内周面には、環状段部13が形成されている。この環状段部13に、軟質の熱可塑性弾性体からなる第1密封部材14が射出成形により一体に熱融着されている。・・・(中略)・・・。
(b-ii)「流入された樹脂は、スプルー、ランナを通ってゲートを通りキャビティ部を満たす。キャビティ部に流入した熱可塑性弾性体は、それ自身の溶融熱で環状段部13の表面部分を一部溶かして、両者は混合または凝着して熱融着面を作る。このようにして第1密封部材14が熱融着されたブラケットを金型から取出し、他の必要な処理を行なう。」
(b-iii)「なお、この製造方法は、射出成形法であるが、筒状部11に第1密封部材14を熱融着する方法は、他の公知の手段でも良い。例えば、射出成形、ブロー成形、カレンダ成形、圧縮成形、トランスファ成形など成形と同時に融着する条件であれば、他の方法でも良い。また、凹部15が最初から筒状部11内に位置する形状に、成形しても良い。」
(c)[第4実施例]の欄:
「・・・(中略)・・・、この実施例では、筒状部11を含む筐体2全体が、前述した各種材料から選択される熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなり、射出成形により成形される。筐体2の成形後、熱可塑性弾性体からなる第1密封部材14が、射出成形により成形されると同時に筒状部11に熱融着される。」
(d)[発明の効果]の欄:
「以上のようにこの発明によれば、第1密封部材が型成形により一体に筒状部に金型内で熱融着される。したがって、この密封部材の組付作業が自動化できるので、工数が少くて済み、製造コストを安価なものとすることができる。」
(3)上記(2)の摘示事項によれば、上記請求項1に記載された上記(1)についての記載で、特に「射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体」の構成要件は訂正前明細書中の随所に記載がある。
(4)要するに、上記(2)の(a)?(d)に記載の事項は、いずれも「射出成形により筒状部11に第1密封部材を一体に熱融着」に関してのもので、上記(2)の(a)(b-i)(d)には『一体に熱融着』の文言もある。そして、射出成形により一体に熱融着する手段は、材料同士を一体に熱融着して防振装置としての機能を達成していくことを目的とする以上、本件特許発明においては、現実に生ずる振動に基づいて軟質の熱可塑性弾性体と熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる筒状部との間に所定の応力が生じたとしても、双方が「熱融着」によって剥離不能状態であること、防振装置として強固な固着状態にあること、をその前提としていることは技術的に明らかである。
『熱融着』は強固な固着状態を得る手段であって、防振装置としての機能を有し剥離しないようにその形態が『一体』になっているものである。
したがって、上記防振装置としての目的を達成し得ないような固着形態は含まれないことは当然である。

そして、上記(2)の(b-ii)に記載された訂正部分である『キャビティ部に流入した熱可塑性弾性体は、それ自身の溶融熱で環状段部13の表面部分を一部溶かして、両者は混合または凝着して熱融着面を作る。』構成も例外でない。即ち、「・・・両者は混合して熱融着面を作る」場合においても防振装置として強固な固着状態にあることを前提とすることは常識的に把握できる。

上記、「混合または凝着して」の記載部分と、訂正前明細書の随所にある「一体に筒状部に熱融着」の記載部分は、共に熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックと軟質の熱可塑性弾性体と「熱融着」が行われる段階における双方のポリマーの状況を表していると解される。文言上、
「一体」とは「いくつかのものがまとまって一つの組織となっていること。また、その状態」であれば複数のものが一つに纏まった状態となることを意味し、
「混合」とは「まじりあうこと。またまぜあわすこと」であれば異質のものが混じり合うというを意味し、
「凝着」とは「異種の物質がふれあって互いにくっつくこと」の意味であれば、双方のポリマーが一つに固まって離れなくなるということと解される。
そうであれば、
「混合」は、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックと軟質の熱可塑性弾性体双方のポリマーが混じり合って一体化、即ち、一つに纏まった状態を示して、「凝着」は熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックと軟質の熱可塑性弾性体の双方のポリマーが固まって離れなくなるような一体化、一つに纏まった状態を意味すると解することが素直である。
とすれば、ポリマーが「混合または凝着」は、ポリマー同士が一体化することを意味しており、「混合または凝着して」は「一体に」と技術的に実質的同一事項を表現していると認められる。

そして、「混合または凝着して」を「一体に」と訂正した場合においても、そもそも「一体」の文言は、願書に最初に添付した明細書の随所に記載された表現にすぎず、これに合うように訂正することに該当する。また、「一体に」の表現に代えて、「一体となって」という表現を採用することは、双方が技術的には同趣旨であること、さらには「熱融着面を作る」という後続する表現との関係においては、「一体に熱融着面を作る」という表現よりも、「一体となって熱融着面を作る」の方が分かり易いことを考慮すれば、「一体に」代えて「一体となって」は、文脈上の整理に過ぎない。

要するに、「混合または凝着」による「熱融着」の意義を不明確にしていることの解消であるし、特許請求の範囲に記載されている用語と発明の詳細な説明の定義(用語)との不統一の解消である。

以上、本件訂正請求は、願書に最初に添付した明細書に記載された範囲内においてするもので、特許請求の範囲に対応して発明の詳細な説明の記載の整合を取るために行う、不明な記載事項の釈明で、全体を統一した表現にしたにすぎないし、かつ、本件補正は特許請求の範囲を訂正するものでなく、また、本件訂正によって特許請求の範囲が変わるものでないから、この訂正により実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3.むすび
したがって、平成19年12月14日付けの本件訂正請求は、特許法第134条の2第1項及び同条第5項で準用する同法126条第3項、第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
なお、平成20年3月17日付け上申書中の「6.上申の内容・・・『特許法第134条第2項第3号規定の明瞭でない記載の釈明』と訂正致します・・・。」の本件訂正をする根拠条文は「特許法第134条の2第1項第3号に規定する明りようでない記載の釈明」の誤記と認める。

-補足-
(1)請求人は、口頭審理陳述要領書において、本件訂正請求が不適法であることについて、「本件特許に基づく侵害訴訟が、請求人を相手としては2件提起されたが、1件は知財高裁の判決が確定し(甲第13,14号証)、他の1件は原告・特許権者が請求の放棄をするに至っている(甲第15号証)。・・・。結局これらの訴訟は敗訴、断念し、この点からも本件明細書の記載の不備があったことは明白になっている(甲第13?15号証 参照。)」と主張する。
しかしながら、甲第13号証,甲第14号証は、大要「熱融着」についての技術的解釈が判示されているのであって、甲第15号証の中味は「請求の放棄」であって、「混合または凝着して」の文言を「一体になって」に変更することと直接関係ないものである。そして、本件訂正請求が不明瞭な記載事項の釈明で、全体を統一した表現にしたにすぎないものであるから、上記主張は採用できない。
また、本件訂正発明においての「熱融着」であるが、減衰手段の形成手段として「熱融着(のみ)」で必要な接着強度を確保する記載そのものはない。逆に、実施例として「熱融着」をベースにして附加的接合手段を加えて「熱融着」をする実施例の開示もない。
(2)請求人は「このような本件訂正は、本件出願当初の明細書及び図面に記載した事項の範囲内のものではなく、不適法であって許されない(特許法第134条の2第5項において準用する特許法第126条第3項参照。)。」との主張であるが、上記2.(3)に記載したとおり願書に最初に添付した明細書の随所に記載のある範囲内での訂正であって、記載の不統一の解消等であることは上記判断のおりである。
(3)請求人は「本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであり、不適法であって許されない(特許法第134条の2第5項において準用する特許法第126条第4項参照。)のである。」との主張であるが、願書に最初に添付した明細書に記載範囲内のものであるから拡張・変更でないことは上記判断のとおりである。
(4)請求人は「まず、「混合または凝着」を観察レベルの事項を表現しているとの見解は、被請求人の後付の解釈であり、意味をなさないのみならず、そもそも熱融着を溶融の上、「混合または凝着」と定義することは、混合するのみでくっつかない場合を熱融着とするのであるから、論理的に矛盾している。これを論理的にせんとすれば、不適法な訂正となることは自明の理である。・・・。特に、被請求人は、甲第3号証実験結果から「剥離不能状態」が「一体」の意に介されることも導出しているが、このこと自体根拠が全く不明であり、到底受けいれられるものではない。・・・。さらに、「混合または凝着して」のうち、「混合」、「凝着」について何らその根拠が明細書で明らかにされておらず、この用語を含めて「一体となって」の旨の訂正を行うことは、結局のところ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲で行う訂正ではない。」との主張であるが、本件特許の明細書に記載した課題からして第1密封部材が型成形により一体に筒状部に金型内で熱融着されることで再生装置への衝撃等により発生する振動を緩らげ、かつ減衰させるための防振装置に関するものであるから、混合するのみでくっつかない場合、熱融着とすることに含まれないことは発明の全趣旨をみて明らかで、請求人は文言どおりに正しく理解していない。
(5)本件訂正請求は請求を認めたことで、明細書の用語が統一されるもので、特許請求の範囲の「一体に熱融着」の構成要素に何らの影響を与えない。「混合または凝着して熱融着面を作る」ことは、「一体となって熱融着面を作る」ことと技術的に同一内容を表現しているもので、本件訂正請求を認めることによって、特許請求の範囲が実質的に拡張され、又は変更されることのないことは上記判断のとおりである。


III.本件特許発明
本件特許第2138602号の請求項1,2に係る発明、及び、請求項3,4に係る発明は、平成19年12月14日付け本件訂正請求により訂正された事項は発明の詳細な説明(以下「本件訂正明細書」という。)であって、特許請求の範囲は記載上変更がない。そして、本件特許発明は本件訂正明細書の特許明細書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本件特許の請求項1,2に係る発明(以下「本件発明1,2」という。)は以下に記載のとおりである。
「【請求項1】内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置であって、
前記減衰手段は、
a.前記筐体にその内方を向くように設けられた、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部と、
b.この筒状部内に収容された減衰材と、
c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と、
d.前記筒状部の他端部に固着された第2密封部材とを有する記録再生装置の防振装置。
【請求項2】請求項1において、前記減衰手段は、前記僅体に着脱自在に取付けられ、かつ熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなるブラケットを有し、このブラケットに前記筒状部が形成されていることを特徴とする記録再生装置の防振装置。」


IV.請求の趣旨及び請求の理由の概略
「請求人は、本件特許第2138602号の請求項1,請求項2に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。」旨の無効審判を請求し、証拠方法として後記の証拠を提示し、以下の請求理由1.?3.により無効とされるべきであると主張している。

1.無効理由1(進歩性欠如その1)
本件特許の請求項1に係る発明は、本件出願前に頒布された刊行物である甲第1号証、甲第2?3号証、甲第4?5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、また、本件特許の請求項2に係る発明は、前記甲各号証に加えて甲第6?8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、本件特許の請求項1,請求項2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

2.無効理由2(進歩性欠如その2)
本件特許の請求項1に係る発明は、本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第1号証,甲第9号証(甲第3号証,甲第10?11号証を参酌)、及び甲第12号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、また、本件特許の請求項2に係る発明は、前記甲各号証に加えて甲第6?8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、本件特許の請求項1,請求項2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

3.無効理由3(記載不備)
本件特許の請求項1乃至請求項2に記載の構成において「一体に熱融着された」は、発明の詳細な説明にはそれを裏付けする記載がなく、またその構成自体、明確ではない。
また、「一体に熱融着された」については、発明の詳細な説明には、当業者が容易に実施できる程度に記載されていない。
したがって、本件特許請求の範囲の請求項1,2の記載及び本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第3項,第4項に適合するものではないから、本件特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。


V.証拠方法及び参考資料
1.請求人の提示した証拠方法
甲第1号証:実願昭63-151566号(実開平2-72834号)のマイクロフィルム(平成2年6月4日公開)
甲第2号証:特開昭56-66537号公報(昭和56年6月5日公開)
甲第3号証:John E1vin“Coinjection of Thermoplastics and TPEs and its App1ications”,PROCESSING FOR PERFORMANCE,p.49-54,7th Apri1 1989(Papers from a one day seminar organized joint1y by EUROPEAN RUBBER JOURNAL AND RAPRA TECHNOLOGY LIMITED)(1989年4月7日に発行された「PROCESSING FOR PERFORMANCE」の「熱可塑性プラスチックとTPEの2色射出成型及びその応用」という論文)
甲第4号証:特開昭61-213145号公報(昭和61年9月22日公開)
甲第5号証:特開平1-139240号公報(平成1年5月31日公開)
甲第6号証:実願昭59-51286号(実開昭60-163592号)のマイクロフィルム(昭和60年10月30日公開)
甲第7号証:実願昭59-153438号(実開昭61-68393号)のマイクロフィルム(昭和61年5月10 日公開)
甲第8号証:実願昭61-181395号(実開昭63-114492号)のマイクロフィルム(昭和63年7月23日公開)
甲第9号証:特開平2-208025号公報(平成2年8月17日公開)
甲第10号証:特開平1-139241号公報(平成1年5月31日公開)
甲第11号証:特開平1-315911号公報(平成1年12月20日公開)
甲第12号証:実願昭61-15544号(実開昭62-128242号)のマイクロフィルム(昭和62年8月14日公開)
甲第13号証:平成19年3月16日 東京地裁判決 平成16(ワ)21737
甲第14号証:平成19年12月25日 知財高裁判決 平成19(ネ)10036
甲第15号証:平成19(ワ)2811平成20年2月8日期日弁論準備手続調書
(なお、甲第13?15号証は口頭審理陳述要領書提出の際提示。)

2.被請求人の提示した証拠方法
乙第1号証の1:特公平7-122983号公報
乙第1号証の2:平成11年審判第35576号に係る訂正公報
乙第2号証 :社団法人高分子学会編「高分子辞典 第3版」(2005年6月30日株式会社朝倉書店初版第1刷発行)
乙第3号証 :事実実験公正証書
乙第4号証 :「新明解国語辞典」(2005年5月25日株式会社 三省堂第6版発行)
乙第5号証 :日本塑性加工学会編「プラスチックの溶融・固相加工」(2000年12月15日株式会社コロナ社初版第3刷発行)


VI.請求人の無効理由について当審の判断
1.特許第36条違反について
(1)無効理由3(記載不備)
先ず、請求人は、「本件特許の請求項1乃至請求項2に記載の構成において「一体に熱融着された」は、発明の詳細な説明にはそれを裏付けする記載がなく、またその構成自体、明確ではない。また、「一体に熱融着された」については、発明の詳細な説明には、当業者が容易に実施できる程度に記載されていない。したがって、本件特許請求の範囲の請求項1?2の記載及び本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第2号,第1号及び第3項に適合するものではないから、本件特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。」と主張する。
請求人の主張は、本件特許明細書の「混合または凝着している熱融着面をつくる」という記載につき、「混合しているだけでなく、くっつかない」場合、及び「単に分子間力で弱くくっついているだけの状態」が「熱融着」に包摂されるが如き記載であるという前提に由来している。

しかしながら、「両者が混合または凝着して熱融着面を作る」こととは、相互のポリマーが「混合または凝着」を介して「熱融着」による接合界面を形成することであって、「混合」による「熱融着」の場合には、必然的に熱の要因に基づいて「くっつく」ことを前提としており、他方「凝着」の場合には、一つに固まって離れなくなるような状態の「熱融着」が、単なる分子間力では実現し得ないことは当然である。
本件特許発明は、現実に生ずる振動に基づいて軟質の熱可塑性弾性体と筒状部との間に所定の応力が生じたとしても、双方が「熱融着」によって剥離不能状態であることを技術上の前提としている。そのような剥離不能状態は、前記熱可塑性弾性体と筒状部の端部とが「一体」となることによって、実現可能である。
即ち、本件特許の請求項1乃至請求項2に記載の構成において「一体に熱融着された」とは、記録再生装置の減衰手段としての機能発揮に必要な「剥離不能状態にて熱融着された」の趣旨に他ならない。「一体」とは、複数のものが一つにに纏まった状態となることを意味している。減衰手段の構成要件『c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材』においては、軟質の熱可塑性弾性体と熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる筒状部の端部とが一つに纏まって不可分となって、剥離不能状態に至っていることを表現しているのである。「一体に熱融着」とは、筒状部及び前記熱可塑性弾性体を構成する各ポリマーが、剥離不能状態に至るまで相互に絡み合って溶融し合う接着状態の趣旨に他ならない。本件特許明細書においては、第1密封部材が射出成形によって筒状部に対する「熱融着」が、「一体に」行われていることを明らかにしており、請求項1発明の実施可能性を十分裏付けている。
そして、被請求人は、「混合または凝着」について、別途本件訂正請求によって「両者が混合または凝着して熱融着面を作る。」の記載部分については、「両者が一体となって熱融着面を作る。」と訂正請求を求め、上記II.2.及び3.で判断したように訂正が認められる以上、訂正により「混合または凝着」の不明瞭と主張する文言はなくなったので特許法第36条第3項の該当理由にならない。

また、本件特許の請求項1乃至請求項2に記載の構成要件に記載の構成要件『前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材』においては、「熱融着」が不可欠な要件であることを明示するも、発明の詳細な説明に記載のある「混合または凝着」は要件には該当しない以上、特許法第36条第4項第2号による規定の対象外というべきである。
「熱融着」の技術概念そのものは、明確で、既に確立しており、発明の詳細な説明における「混合または凝着」の記載の存否によって左右されない。 「混合または凝着」は特許請求の範囲に記載されておらず、また、前訂正明細書の発明の詳細な説明に「両者が混合または凝着して熱融着面を作る。」という記載があったとしても、「熱融着」の技術的意義自体上記したように明確で技術的概念そのものが確立しており「混合または凝着」の用語に影響されない。
そして、被請求人は、「混合または凝着」について、別途本件訂正請求によって「両者が混合または凝着して熱融着面を作る。」の記載部分については、「両者が一体となって熱融着面を作る。」と訂正請求を求め、上記II.2.及び3.で判断したように訂正が認められる以上、訂正により「混合または凝着」の不明瞭と主張する文言はなくなったので、特許法第36第4項第2号の該当理由にならない。

また、本件特許の請求項1乃至請求項2に記載の「一体に熱融着」に対応する記載は、発明の詳細な説明において随所に記載(上記II.2.参照)されており、特許法第36条第4項第1号は十分充足している以上、特許法第36第4項第1号の該当理由にならない。

したがって、本件特許は別途本件訂正請求によって訂正が認められるものであるから、本件特許請求の範囲の請求項1乃至請求項2の記載及び本件明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第3項及び第4項第1号及び第2号に規定する要件を満たしてないとすることができないから本件特許は特許法第123条第1項第4項に該当しない。

2.特許法第29条第2項違反について
(1)刊行物に記載の発明
請求人の提示した甲第1号証?甲12号証として提出された各刊行物には、以下の発明が記載されているものと認める。
(a)甲第1号証:実願昭63-151566号(実開平2-72834号)のマイクロフィルム(平成2年6月4日公開)
(i)「本考案は、車載用のコンパクトディスクプレーヤのドライブユニット等の精密機器を支持する際に使用される防振支持装置に関する。」(2頁6行?8行)
(ii)「第3図はコンパクトディスクプレーヤの主要部を示す図である。
図中1はシャーシ等の支持部材である。この支持部材1はコンパクトディスクプレーヤを取り付けるためのフレームである。この支持部材軸1に、メカシャーシ等の被支持部材2が弾性支持用附勢手段であるコイルスプリング6とダンパー60によって支持されている。 被支持部材2上にはコンパクトディスクDを支持して回転させるターンテーブル4aと、このターンテーブル4aを回転駆動させるモータ機構4と、光学ピックアップ5及び図示していない電子回路ユニットや表示機構ならびに外部接続コネクタ機構などが搭載されている。」(2頁10行?3頁3行)
(iii)「この防振支持装置は、第3図に示すように、支持部材1に対してコイルスプリング6により被支持部材2が支持されると同時に、支持部材1に設けられたダンパー60に被支持部材に設けられた支持軸66が連結されることにより、ダンパー60が支持部材1と被支持部材2間に介装されている。」(4頁6行?12行)
(iv)「なお、ダンパーの構造を少し簡素化したものとして、実開昭62-12842号公報に記載されたものが知られている。
即ち、第5図に示すように、ダンパー70は、容器部71の閉口を蓋体72で密閉して容器部71内に密閉室を構成すると共に、密閉室73に粘性液体Gを封入したものである。
しかしながら、このダンパー70は、容器部71の底部71aを薄肉に形成し、周囲部71bを厚肉に形成したものであり。且つこれ等は同一材料で一体に形成されている。
従って、支持軸76を支持する底部71aを軟らかくするために軟質になされている。
従って、周囲部71bを厚肉に形成しても、十分な振動減衰効果が得られないという問題を有していた。」(6頁3行?18行)
(v)「〔考案が解決しようとする課題〕
本考案は上記問題点に鑑みてなされたものであって、構造が簡単であり、且つ粘性流体の注入がし易く、しかも従来と同様に支持軸の変位に伴う粘性流体の流動抵抗を高め、優れた減衰効果を保証できる防振支持装置を提供することを目的とする。」(6頁18行?7頁5行)
(vi)「ダンパー10は、筒状の容器部12と、この容器部12の開口部を覆うように接着して配置された蓋部13と、容器部12の開口部を蓋部13により覆うことにより形成される収容空間14内に封入された粘性流体14aとから構成されている。
容器部12はブチルゴム等のゴム材料にて厚肉に形成された円筒状の胴部12aの一端に底12bが設けられて容器状に一体に成形されている。…(中略)…この蓋部13はブチルゴム等のゴム材料にて容器部12より柔らかく弾性体に成形される。」(10頁3行?11頁5行)
(vii)「収容空間14内に封入される粘性流体14aは粘度が10^(3)c.st以上シリコーンオイル等の流体が用いられている。」(11頁6?8行)
(viii)「第2図は、本考案の他の実施例の主要部を示す断面図である。
この実施例においては、ダンパー20の容器部22は筒状の胴部22aの一端に開口端22cを有し、その開口端22cの近辺の外周には支持部材の取付孔1aに嵌入させる溝22dが設けられている。胴部22aの一端には底部22bを有し、容器部22は一体成形されている。さらに、蓋部23は胴部22aの開口端を覆うとともに、容易に弾性変形するように容器部22より軟質に成形されている。蓋部23の中央部に支持軸挿入部23aを有し、この支持軸挿入部23aの周囲に連結して断面がV字状に内側に折曲げられた環状の薄肉部23cを有し、さらにこの薄肉部23cの外周に上記容器部22の開口端22cに対して接着できるように端部23bを有し、蓋部23は一体成形されている。」(12頁14行?13頁10行)
(ix)「以上説明したように、本考案によれば容器部と蓋部とをそれぞれ異なる硬度に別々に成形でき、支持軸を支持する蓋部を軟らかく形成する一方、容器部を硬質に形成したので、支持軸と容器部の相対変位が大きくでき、従来と同様に粘性流体の流動抵抗を高めて優れた減衰効果を得ることができることは勿論のこと、従来のダンパーに比較して構造が簡単にでき製作・組立が容易である。」(14頁1行?8行)

上記摘示事項と第3図及び第5図によれば、甲第1号証には、
「内部に空間を有する支持部材1と、この支持部材1に支持され、コンパクトディスクプレーヤを支持するための弾性支持用附勢手段であるコイルスプリング6と、前記支持部材軸こ支持され、前記コンパクトディスクプレーヤを支持するための複数のダンパー70とを備えた防振支持装置であって、
前記ダンパー70は、
前記支持部材軸1設けられた容器部71と、
前記容器部71の開口を密閉する蓋体72と、
前記容器部71内に構成した密閉室73に封入した粘性液体Gとを備え、
前記容器部71は、前記コンパクトディスクプレーヤに設けた支持軸76を支持するための凹部を有する底部71aを薄肉に、筒状の周囲部71bを厚肉に成形するとともに、底部71aと周囲部71bが、軟質の同一材料で一体に成形されている防振支持装置。」(以下「甲第1号証第5図発明」という。)が記載されている。

また、上記摘示事項と各第3図及び第2図によれば、甲第1号証には、
「内部に空間を区画する支持部材1と、この支持部材1に支持され、コンパクトディスクプレーヤを支持するための弾性支持用附勢手段であるコイルスプリング6と、前記支持部材1に支持され、前記コンパクトディスクプレーヤを支持するための複数のダンパー20とを備えた防振支持装置であって、
前記ダンパー20は、
a’;前記支持部材1にその内方を向くように設けられた、容器部22の筒状の胴部22aと、
b’;この収容空間14に収容された粘性流体14aと、
c’;前記容器部22の筒状の胴部22aの前記筐体内方側の端部のみに形成された軟質の弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた蓋部23と、
d’;容器部22の筒状の胴部22aの他端部に一体に成形された底部22bとを有する記録再生装置の防振支持装置。」(以下「甲第1号証第2図発明」という。)が記載されている。

(b)甲第2号証:特開昭56-66537号公報(昭和56年6月5日発行)
(i)「特許請求の範囲
1 剛性の熱可塑性ポリマー材料製の同心状で実質的に隔離された第1部分と第2部分、並びに該第1部分と第2部分との間に延長してこれらに固着された第3部分を有し、該第3部分は熱可塑性有機エラストマー材料製であり、該熱可塑性有機ポリマー材料の直接接合により前記第1部分及び第2部分に固着されてなる振動絶縁体。」(1頁左下欄3?11行)
(ii)「これらの目的は、共同成形法を用いて2つの異なる合成材料から絶縁体を製造することにより達成される。一の合成材料は剛性の熱可塑性材料であり、他は熱可塑性エラストマーである。後者は剛性の熱可塑性材料の後に射出される。」(3頁左上欄12?16行)
(iii)「第1図に、内側部分2、外側部分4及び中間部分6から成る板形の振動絶縁体を示す。内側部分2と外側部分4とは実質的に剛性の熱可塑性材料から出来ており、中間部分6は熱可塑性エラストマーから出来ている。本明細書において「実質的に剛性の熱可塑性材料」とは、適当な温度で加熱された時に融解(液状となるまで軟化)し、室温即ち70°F(21.1℃)に冷却された時に実質的に剛性になる性質を備えた固体状で実質的に剛性の材料を意味し、「熱可塑性エラストマー」という用語は、適当な温度まで加熱された時に融解し室温に冷却された時に弾性でエラストマーとしてのふるまいを示す固体になる性質をもつ固体材料を意味する。」(3頁右上欄1?14行)
(iv)「本発明の別の要件は、部分2,4,6が射出成形により製造されることである。従って実質的に合成の熱可塑性材料及び熱可塑性エラストマーは射出成形可能な成形材料から出来ていなければならない。この成形材料は1種以上のポリマー又は1種以上のコポリマーから成るか又は主に成るものとしてよい。更に部分2,4の製造に用いる材料と部分6の製造に用いる材料とは、融解により、即ち少なくとも一方が流動状態にある時に両材料を接触させ、次にその流動状態の材料をそれが固化して他方の材料と接合を形成するまで冷却することにより、互に接合されるという意味で、協調性をもっていなければならない。部分2,4は同一又はほぼ同一の温度において融解及び固化する協調性を示す異別の材料であってもよいが、同一材料であることが望ましい。」(3頁左下欄1?17行参照)

上記摘記事項によれば、甲第2号証には、「剛性の熱可塑性ポリマー材料製の第1部分と第2部分との間に、熱可塑性有機エラストマー材料製の第3部分を直接接合させて振動絶縁体を製造するに際して、剛性の熱可塑性ポリマー材料と熱可塑性有機エラストマー材料との接合は、融解により、即ち少なくとも一方が流動状態にある時に両材料を接触させ、次にその流動状態の材料をそれが固化して他方の材料と接合を形成するまで冷却する射出成形法により行なう」ことが記載されている。

(c)甲第3号証:John E1vin“Coinjection of Thermop1astics and TPEs and its App1ications”,PROCESSING FOR PERFORMANCE, p.49-54, 7th April 1989(Papers from a one day seminar organised joint1y by EUROPEAN RUBBER JOURNAL AND RAPRA TECHNOLOGY LIMITED) (1989年4月7日に発行された「PROCESSING FOR PERFORM/WCE」の「熱可塑性プラスチックとTPEの2色射出成型及びその応用」という論文)
(i)「序文
熱可塑性プラスチックの分野は、何年も前から知られており、その恩恵にあずかっている。・・・(中略)・・・。
けれども一の属性において、それらは欠点を有している。それは温度が低下すると、高分子量であるので、それらはより硬くなってしまう。これは理解できることであり、これらが硬くならなかったならば、特にいくつかの臨界的な応用分野において、悩むことはなかったであろう。
最も採算よい設計をしようと努力して、多くの人は、これらの材料のベストのものを結合しようとしてきたが、依然として、シール性を向上したり振動を減衰させるための可撓性を紹介している。
そこでこの点において、私は、射出成型可能な別の物質を紹介したい。それは、熱可塑性プラスチックエラストマーであり、これは天然ゴムの使用に大幅にとって代えられる。厳格な品質管理と高い生産管理の必要があるところでは、TPEの類は高信頼性を発揮する。・・・(中略)・・・。
熱可塑性プラスチックとTPEとの接合
セルロイドの2色成型技術はよく知られているが、TPEと他の熱可塑性プラスチックとの接合の射出成型技術については、ほとんど知られていない。
我々の所有するフォルシエダとの合弁企業のシェルアンドエフォート社が指導をしてくれ、そのおかげで、我々は、本日述べる種々の製品について成功することができた。
2色成型技術については3種類ある。
1.同種物質のものの化学的結合
2.異種物質の機械的接合
3.異種物質の化学的接合

(中略)
3.異種物質の化学的接合
化学的接合は、インサート方式により可能であり、そしてマニュアル装填による2個の型が必要である。高容積の製品にとって、これは経済的に適していない。
2つのカラー又は物質を同時に一つの型内に射出できる専用の射出成形機でもって、製品が一工程で製作される。
例えば、図3及び図3aに示される製品は、まず本体が成型され、次に2個の丸い孔にTEPが充填され2つのシール膜が作成される。この接合は型内にて行われる。この時同時に、ポリプロピレンとTPEを接合させる。
ポリプロピレンは、本来の色あるいはカラー又はタルクでファイバーとが充填されたものがよい。
TPEは、各硬度にて透明、カラー又は不透明なものである。
防臭、殺菌用の医薬品及びもちろんパッケージ及び組み立てシステムへの利用も十分考えられる。
剛性材に接合された弾性材(f1exible mater1a1)に話を戻せば、この生産原理により便宜が図れる分野が他にもいろいろある。
例えば
防水スイッチ
多層ガスケット
防御マスク
密閉蓋
水中使用品
カーベルト
防振装置
工業ファスナー
シールベーン
一体ヒンジ」(第49頁左欄1行?第51頁左欄21行の部分翻訳)

上記摘示事項によれば、甲第3号証には、「1989年当時は、ポリプロピレンと熱可塑性エラストマーとの2色成型による接合がほとんど知られていなかったが、射出成型により剛性材であるポリプロピレンに接合された弾性材である熱可塑性エラストマーが、防振装置を含む種々の分野に応用可能である」が記載されている。

(d)甲第4号証:特開昭61-213145号公報(昭和61年9月22日発行)
本件出願前に頒布された甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
(i)「2.特許請求の範囲
(1)硬質プラスチック成形部材および軟質プラスチック成形部材からなる複合プラスチック成形品において、上記硬質プラスチックがポリプロピレン樹脂であり、上記軟質プラスチックが熱可塑性エラストマーであり、且つ上記両部材が-体的に融着していることを特徴とする複合プラスチック成形品。」(1頁左下欄4?11行)
(ii)「(従来の技術)
従来、自動車部材、建築部材、電気製品その他あらゆる分野においてプラスチック成形品は広く使用されており、特に、アルミサッシの枠、自動車の窓枠、電気製品の各種スイッチやツマミ等の如く、本体に取り付ける部分は硬く強朝なプラスチックで成形し、その他の部分を軟質プラスチックあるいはゴム等のエラストマーで形成し、雨水の浸入を防止したり、あるいは人間の手で触れた場合の感触を良くしたり、更には人体が当たっても、怪我や部材の破損がないようるこしている場合が多い。」(1頁左下欄17行?右下欄9行)
(iii)「硬質プラスチックとして特定の材料を選択し、且つ軟質プラスチックとして別の材料を選択し、両者を組合わせて複合プラスチック成形品を得るときは、何らの接着剤も嵌合技術をも使用しないで十分に一体化した複合プラスチック成形品が得られることを知見して本発明を完成した。」(2頁左上欄12?18行)
(iv)「このような好ましい熱可塑性エラストマーは、本発明者の詳細な研究によれば、特定の成形温度(例えば、200℃以上)において剪断速度103?104の範囲においてポリプロピレン樹脂と同様の流動性や粘度を有するよういなるものであり、このような両者の性質の故に、従来は不可能とされていたポリプロピレン樹脂との十分な融着が可能となったものと考えられる。」(3頁左上欄8?15行)
(v)「このような本発明の複合プラスチック成形品の成形方法それ自体は、従来公知の各種のプラスチック成形方法がいずれも使用できる。例えば、・・・射出成形方法でまず硬質プラスチック成形部材を形成し、次いで熱可塑性エラストマーを注入して、成形と同時に両者を融着させるインサート方式の射出成形方法あるいは、従来公知の2色成形機を用いる方法等いずれも成形方法でもよい。」(3頁右上欄5?19行)

上記摘示事項によれば、甲第4号証には、「本体に取り付ける部分は硬く強靭なプラスチックで成形し、その他の部分を軟質プラスチックあるいはゴム等のエラストマーで形成した複合プラスチック成形品であって、硬く強剛な硬質プラスチックとしてポリプロピレン樹脂を用い、硬質プラスチックと軟質プラスチックあるいはゴム等のエラストマーとを射出成形方法により一体的に融着させた複合成形品」が記載されている。

(e)甲第5号証:特開平1-139240号公報(平成1年5月31日発行)
本件出願前に頒布された甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
(i)「2.特許請求の範囲
1.合成樹脂成形体の存在下に該合成樹脂成形体より硬度(JIS ショアー硬度)の低い成形体を与える熱可塑性弾性体組成物を熱融着により接合させるか、あるいは、熱可塑性弾性体組成物からの成形体の存在下に該熱可塑性弾性体組成物からの成形体より硬度が高い成形体を与える構成樹脂を熱融着により接合させて複合成形体を製造する方法において、前記熱可塑性弾性体組成物が、
(i) 熱可塑性弾性体 100重量部、
(ii) ポリエーテルブロックアミド 25?185重量部、
からなるものであることを特徴とする複合成形体の製造方法。」(1頁左下欄4行?18行)
(ii)「(産業上の利用分野)
本発明は、硬質部位と軟質部位を有する複合成形体の新規な製造方法に関する。更に詳しくは、ポリカーボネートなどの硬質で諸特性に優れたエンジニアリングプラスチックで構成された部位と、軟質の熱可塑性弾性体で構成された部位とを有する複合成形体を熱融着手段により効率よく製造する方法に関するものである。」(2頁左上欄1行?8行)
(iii)「(従来の技術)優れた機械的強度を持つエンジニアリングプラスチックスは、・・・(中略)・・・、一方熱可塑性弾性体 ・・・(中略)・・・近年、合成樹脂(プラスチック)性部品や部材の性能の高度化、機能の高度化の要求が厳しく、その中で前記したエンジニアプラスチックと熱可塑性弾性体との複合化を試みる動きがある。そして、その複合化に際し両者に共通した成形手段である射出技術により、両者を相互に熱融着させて複合化することが最も効果的である。」(2頁左上欄9行?右上欄16行)
(iv)「しかしながら、一般に熱可塑性のエンジニアリングプラスチックと熱可塑性樹脂とは熱融着性が必ずしも良くない。とりわけ、ゴム弾性に優れた熱可塑性弾性体(TPE)との熱融着性が悪く両者を強固に接合させることができない。」(2頁右上欄17行?左下欄1行)
(v)「本発明の課題は、エンジニアリングプラスチックなどの合成樹脂から構成される部位とゴム弾性に優れた熱可塑性弾性体から構成される部位と強力に接合した成形体、即ち複合成形体の新規な製造方法を提供することにある。更に本発明の課題は、機械的強度に優れたプラスチックと柔軟で弾性に優れた熱可塑性弾性体とを強力に接合して、水中メガネなどの強度と防水性能が高度に要求される製品(部材)、プラスチック製受話機や把手(取手)などの把持部を熱可塑性弾性で柔軟化した製品、プラスチック製自動車用前照灯カバー体などみこおいて取付時のパッキング効果をもたせるためにカバー体の緑部に熱可塑性弾性体を複合一体化した製品、エアーシールドなどのパッキング、バルブ部品、フレキシブル継手、歯車などの動力伝達部品、など新規な機能製品、高付加価値部品などを提供することにある。」(2頁右下欄8行?3頁左上欄4行)
(vi)「本発明の複合成形体の製造方法において、比較的高度の高い合成樹脂から構成される成形体部位と、ゴム弾性に優れた熱可塑性弾性体とポリエーテルブロックアミドから構成される成形体部位とを熱融着により接合させる技術手段は、いずれでも採用可能である。例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、カレンダ成形、圧縮成形、トランスファ成形など熱的に融着する条件が設定されているものであればいずれでもかまわない。これらのうちで、生産の観点から射出成形法が望ましい。」(4頁右上欄7?16行)

上記摘示事項によれば、甲第5号証には「熱可塑性のエンジニアリングプラスチックスからなる部材に、軟質の熱可塑性弾性体を特定の条件での射出成形により熱融着させた複合成形体」が記載されている。

(f)甲第6号証:実願昭59-51286号 (実開昭60-163592号)のマイクロフィルム(昭和60年10月30日公開)
本件出願前に頒布された甲第6号証には、耐振性の改善された光学ディスクプレーヤに関する技術が記載され、光学ディスクプレーヤを構成する部品であるダンパについて、以下の記載がある。
(i)「ダンパ11は、第4図及び第5図に示す如く、フレーム7の側板8a、8bに取付けられ、内部に粘性流体であるシリコンオイル13が封入された容器14と、メカデッキ1に固着され、容器14に固く嵌合されるロッド15とから構成されている。容器14は、シリコンゴム又はプチルゴム等から、周囲に蛇腹部16を有する薄皮の円筒状に形成されており、前部のフランジ部17が側板8a又は8bに固着されるように構成されている。またこの容器14の前部中央部には係合穴18が形成されており、この係合穴18にメカデッキ1に固着されたロッド15が固く嵌合される。そしてこのロッド15と容器14が結合されることによってメカデッキ1は、柔軟な容器14と粘性流体であるシリコンオイル13とを介して、フレーム7につながれることになる。」(5頁6行?6頁1行)

(g)甲第7号証:実願昭59-153438号(実開昭61-68393号)のマイクロフィルム(昭和61年5月10日公開)
本件出願前に頒布された甲第7号証には、自動車、航空機等に搭載して使用するのに好適な耐振性が改善された光学ディスクプレーヤに関する技術が記載され、光学ディスクプレーヤを構成する部品であるダンパについて、以下の記載がある。
(i)「次にダンパ11の構造及び動作を第5図?第6D図に基づいて説明する。ダンパ11は、シャーシ1の側板7、7に取付けられている容器部11aと、メカデッキ2に固着されているロッド11bとから構成されている。
容器部11aはゴム等の弾性材料から成り、その内部には、粘性流体を封入するための収容空間40が形成されている。そしてこの収容空間40のほぼ中央には、この収容空間40中に突出している泳動部41が設けられている。この泳動部41は四角筒状体の外周囲の各面に粘性抵抗を増すための突状42がそれぞれ形成された形状を有し、その内周面にはロッド11bが圧入嵌合される係合穴43が設けられている。収容空間40は、泳動部41の上記四角筒状体の各面にそれぞれ対抗する4つの面を有するので、断面がほぼ正方形に構成されている。なおロッド11bは例えば、剛体のロッド本体とこのロッド本体に嵌合されているゴム製の円筒体とから成っていてよい。
容器部11aはその外方側に蓋部48を有すると共にその内方側に肉厚でかつリング状のフランジ部44との間には、フランジ部44よりも更に外方に向かってドーナツ状に突出している薄膜状連結部49が設けられている。そしてフランジ部44と連結部49との間には、開口端から深さ方向に向かうに従って次第に中狭となる断面ほぼ三角形状のリング状溝50が形成されている。またフランジ部44の外周囲には、シャーシ1の側板部7、7に設けられた係止孔45の外周縁部が係止される溝46が設けられている。そしてこの溝46には、係止孔45の外周緑部に形成されている係合用凹部(図示せず)と契合して容器部11aの取付け角度を決めるための一対の係合用突起47が設けられている。
この実施例では、ブチルゴムから成る容器部11aの容器本体側に予め形成されている収容空間40にシリコンオイル(12,000cs)を充填した後、ブチルゴムから成る蓋部48を接着することによって、粘性流体が封入されるようにしている。また、容器部11aのフランジ部44における係合用突起47が同一水平線上に位置するように、容器部11aがシャーシ1の側板部7、7に取付けられている。」(8頁12行?10頁16行)

(h)甲第8号証:実願昭61-181395号(実開昭63-114492号)のマイクロフィルム(昭和63年7月23日公開)
本件出願前に頒布された甲第8号証には、車載用のコンパクドディスクプレーヤの筐体内にてディスク駆動ユニットを弾性的に支持するために用いられるダンパーに関する技術が記載され、光学ディスクプレーヤを構成する部品であるダンパについて、以下の記載がある。
(i)「[考案の背景]
第7図は車載用のコンパクトディスクプレーヤの構造の概略を示す平面図である。この種のプレーヤでは、ディスク駆動ユニット1が筐体4内にてダンパー5によって弾性的に支持されている。すなわち、ディスク駆動ユニット1側または筐体4側にダンパー5が設けられ、他方に設けられた支持軸6がダンパー5内に挿入されている。ディスクはディスク駆動ユニット1に設けられたテーンテーブル2上に設置されてモータにより回転駆動される。またこのディスクに対して光ピックアップ3の対物レンズ3aからレーザビームが照射され、情報の再生が行なわれる。
ディスク駆動ユニット1がダンパー5によって弾性的に支持されていることにより、筐体4に作用する車体の振動や衝撃などがこのダンパー5にて絶縁され、光ピックアップ3内の対物レンズ3aの補正動作が振動によって影響されることなどが防止されている。第3図は車載用コンパクトディスクプレーヤなどをこ有効なダンパーの従来例を示している。この種のダンパーは例えば実開昭61-146639号公報に開示されている。このダンパー5は、ゴムによって形成された袋体5aの内部にオイルなどの流動体5bが封入されており、支持軸6は袋体5aの一部に挿入されている。」(2頁1行?3頁6行)
(ii)「第1図は本考案によりダンパーを示す正面図、第2図はその断面図、第3図は第2図のIII-III断面図である。
このダンパー14はゴムによって形成された袋体14aの内部にオイルなどの流動体14bが封入されている。ダンパー14の支持部材である支持軸13は、その頭部13aが袋体14aの先端中央部に嵌着されている。」(5頁20行?6頁7行)
また、第8図、及び第1?3図に示されるダンパーは、ダンパーの周囲部に明らかにフランジと認識できる部分を有している。

(j)甲第9号証:特開平2-208025号公報(平成2年8月17日公開)
硬質の枠体すなわち「硬いプラスチック樹脂でできたマトリクス状の枠組25」と軟質の部材すなわち「ゴム弾性に優れた熱可塑性弾性体の合成樹脂でできた薄肉部15」を形成したボタン支持体とを備え、上記枠体と上記支持体とが溶融熱で一体に熱融着された、防水性が高い操作ボタンとその製造方法。
「硬質のプラスチック樹脂」には、ポリカーボネート、ナイロン11、ナイロン12、ABS樹脂、などの熱可塑性のエンジニアリングプラスチックを使用できる。
「軟質の熱可塑性弾性体」には、ナイロンエラストマ、ポリウレタン系エラストマ、オレフィン系エラストマ、などを使用できる。

(k)甲第10号証:特開平1-139241号公報(平成1年5月31日公開)
甲第9号証中に言及された、機械的強度などに優れたプラスチックと柔軟で弾性に優れた熱可塑性弾性体とを熱融着手段により接合した公知の複合成形体とその応用装置としてのものである。
本件出願前に頒布された甲第10号証には、「熱融着性に優れた熱可塑性弾性体組成物」について、以下の記載がある。
(i)「本発明は、機械的強度に優れたエンジニアリングプラスチックなどの合成樹脂で構成される成形体部位と、弾性に富んだ熱可塑性弾性体で構成される成形体部位とを有する複合成形体の構造に有用な、熱融着性に優れた熱可塑性弾性体組成物に関する。」(1頁右下欄13?18行)
(ii)「(実施例1)・・・
水中眼鏡の主体部を予めポリカーボネートで射出成形により成形し、ついでこのポリカーボネートの水中眼鏡の主体部に、前記した熱可塑性弾性体組成物を射出成形手段により熱融着接合し、顔面接触部を形成した。」(4頁左下欄8行?12行)
(iii)「(実施例)
特開昭57-144737号公報に示されるような機械部品の成形に本発明の熱融着に優れた熱可塑性弾性体を適用してみた。」(5頁左上欄20行?右上欄2行)
(iv)「(発明の効果)
本発明の熱融着に優れた熱可塑性弾性体組成物を用いることにより、熱可塑性エンジニアリングプラスチックと熱可塑性弾性体とを、効率的な熱融着手段により強力に融着接合させることができる。・・・新しい性能、機能をもった複合成形体が効果よく提供される。」(5頁右上欄13行?左下18行)

(l)甲第11号証:特開平1-315911号公報(平成1年12月20日公開)
甲第9号証中に言及された、機械的強度などに優れたプラスチックと柔軟で弾性に優れた熱可塑性弾性体とを熱融着手段により接合した公知の複合成形体とその応用装置としてのものである。
(i)「制卸パネルの押ボタンとその製造方法」
(ii)「特許請求の範囲
1.・・・
a.・・・硬度が高い合成樹脂からなるボタン本体と、
b.前記ボタン本体を構成する合成樹脂より硬度が低い熱可塑性弾性体からなりかつ前記ボタン本体に一体に熱融着されかつ前記ボタン本体を弾性的に上下動可能に支持するボタン支持体と、
c.前記ボタン支持体と前記ボタン本体との境界面が容易に剥離しないように前記ボタン支持体と前記ボタン本体とが接着した熱融着面とを有することを特徴とする制御パネルの押ボタン。
・・・(中略)・・・。
4.・・・前記ボタン本体がABS、ナイロン、ポリカーボネート、PBT、ポリプロピレンから選択される一種であり、前記ボタン支持体がナイロンエラストマ、ポリウレタン系エラストマ、オレフィン系エラストマから選択される一種であることを特徴とする制御パネルの押ボタン。
5.6. ・・・(省略)・・・。」(特許請求の範囲)
(iii)「この押ボタンの製造方法は、前記ボタン本体を射出成型金型内に入れ、この射出成型金型内に入れた前記ボタン本体に前記ボタン支持体の加工熱溶融した合成樹脂材料を前記射出成型金型内のキャビテイ部に圧入し、前記ボタン本体と前記ボタン支持体とを前記合成樹脂自身の溶融熱で一体に融着接合し、前記ボタン本体と前記ボタン支持体を一体に成型して前記熱融着面を形成したことを特徴とする押ボタンの製造方法である。」(3頁右下欄15行?4頁左上欄3行)
(iv)「(発明の効果)
・・・この発明の制御パネルの押ボタンは、製造工程が少なくて済む。比較的硬い樹脂であるモールドフレームと軟らかい樹脂である熱可塑性弾性体であるシートを熱融着させているので、防水性、防塵性、耐衝撃性が高いなどの効果がある。」(6頁右上欄10行?15行)

(m)甲第12号証:実願昭61-15544号 (実開昭62-128242号)のマイクロフィルム(昭和62年8月14 日公開)
本件出願前に頒布された甲第12号証には、甲第1号証の6頁に記載のある刊行物で、甲第1号証第5図発明の構成を開示する先行技術の「防振装置」についてのもので、以下の記載がある。
(i)「本考案に係る防振装置は、互いに振動する一方の部材を支持する内部中空の装置本体と、他方の部材を支持する可撓支持部とを備え、上記装置本体の中空内部を上記可撓支持部により密閉して密封室を構成すると共に該密封室内にゲルを封入したものである。」(3頁16行?4頁2行)
(ii)「第2図には本考案の他の実施例が示されており、上記実施例と同一の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。本実施例にあっては、蓋体11’が金属あるいは樹脂板により構成されており、装置本体3の開口部3a内周の溝3bに嵌着されている。このような構成とすれば蓋体11’を嵌着するだけで組付けることができ取付作業が極めて容易となる。」(8頁4?11行)

(2)無効理由1(進歩性欠如その1)
本件発明1と甲第1号証第5図発明について
〔対比〕
本件発明1に係る発明の「複数の中空の筒状部」における「複数の」は、減衰材が収容された部材が複数で「減衰手段」を構成することを意味し、これは甲第1号証第5図発明にも記載があることは第3図から明らかである。 甲第1号証第5図発明の「支持部材1」「コイルスプリング6」「複数のダンパー70」「粘性液体G」「支持軸76」及び「蓋体72」は、それぞれ、本件発明1の「筐体」「弾性支持具」「減衰手段」「減衰材」「突起」及び「第2密封部材」に相当する。
甲第1号証第5図発明における「容器部71」の「底部71a」は、「支持部材1」の内方に「支持軸76を支持するための凹部」を有しており、これは本件発明1に係る発明における「中空の筒状部」に「第1密封部材」が一体化された少なくとも減衰材収容時の容器部材に相当する。
甲第1号証第5図発明の「コンパクトディスクプレーヤ」は、本件発明1の「記録再生装置」の一種である。
甲第1号証第5図発明における「防振支持装置」は、本件発明1における「防振装置」の機能を詳細に記載したものであるから、
結局両者は、
「内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置であって、
前記減衰手段は、
a.前記筐体に設けられ複数の中空の筒状部と、
b.この筒状部内に収容された減衰材と、
c.前記筒状部の端部に一体に軟質からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と、
d.前記筒状部の他端部に固着された第2密封部材とを有する記録再生装置の防振装置。」
で一致し、以下の点で相違する。

-相違点-
本件発明1の減衰手段を構成する「複数の中空の筒状部」は、筐体に「その内方を向くように設けられた、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる」と、筒状部の端部構成は「前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体」からなり、第1密封部材と第2密封部材とを別体としたうえで、第1密封部材の成形とエンジニアリングプラスチックによる筒状部都の接合を熱融着により同時に実現しているのに対して、甲第1号証第5図発明における「容器部材(容器部71)」は、前記筐体の内側を向くように設けられているのは容器71の底部71aであって、「底部71aを薄肉に、筒状の周囲部71bを厚肉に形成するとともに、底部71aと周囲部71bが、軟質の同一材料で一体にされている」点。

〔判断〕
甲第1号証第5図発明は、一体成形の底部71aを有する容器部71と蓋体72からなる二体構成で、一体成形の底部71aは容器部71に比較して薄肉部にして軟質を得て支持軸76を支持する構成を有し、容器部71には支持部材1への結合溝を形成し、密閉室に粘性流体Gを注入した後、容器部71の開口部を蓋体72で密閉する構成である。
これを前提に上記各相違点について、甲第1号証第5図発明に、甲第2?3号証、及び甲第4?5号証に記載の発明を適用することで本件特許発明を容易に想到できるかを、以下に検討する。

甲第1号証第5図発明(第3図、第5図に記載された発明)は、同じ従来例として記載のある第4図を参酌して「袋体61内に・・・流体65を注入する際、支持軸66部が邪魔になり、流体65の注入作業に時間を要すると共に、気泡が残り易く減衰特性も損なう」(5頁17?6頁2行)乃至「ダンパー70は、容器部7lの底部71aを薄肉に形成し、周囲部7lb を厚肉に形成したものであり、且つこれ等は同一材料で一体に形成されている。
従って、支持軸76を支持する底部71aを軟らかくするために軟質になされている。
従って、周囲部71bを厚肉に形成しても、十分な振動減衰効果が得られない」(6頁10?18行)という問題を有していると記載する。そして、これらの問題は、支持部材に支持される容器部と被支持部材に設けられた支持軸を支持する部材とを硬度の異なる材料を接着して密閉室を形成するとともに、容器部を、支持軸を支持する部材より硬質として、支持軸の変位に伴う粘性液体の流動抵抗を高めることにより、解決できるとして、甲第1号証には第2図の発明が記載されている。即ち、上記甲第1号証の第2図の発明は支持軸を支持する部分を容器部71の底部71aより蓋部23に移し、容器部22と別体になっている蓋部23を容器部22と比較して(材質を変える意味での)軟質の材料で形成している。
しかしながら、ダンパ構成としては第2図の発明も第5図発明と同様、容器部と容器部の底部とは一体に成形され、別構成の蓋とで二体構成(第2図:容器部22と蓋部23,第5図:容器部71と蓋72)である。そして、第5図発明は軟質といっても同一材料で厚肉との比較で薄肉にすることで軟質を得ている。第2図の発明のように材料を異ならせて軟質を得る手段は、容器部の底部を別体構成にする技術的思想を適用しないと不可能であるが、その必要性は見いだせない。

ところで、ポリスチレン,ポリプロピレン重合体樹脂等の硬質のプラスチックに、熱可塑性エラストマーを射出成形により融解させ接合させて一体に接合して防振装置を形成することは、例えば、甲第2号証(甲第2号証における「振動絶縁体」が防振装置を意味することは、同刊行物全体の記載から明らかである。)、及び、甲第3号証に示されている。
さらに、熱可塑性のエンジニアリングプラスチック(本件訂正明細書には「ブラケット6は筒状部11を含めて、周知の射出成形法により一体成形される。ブラケットの材質は、…ポリプロピレン(PP)、…など、機械的強度、成形性が良いもの、いわゆるエンジニアリングプラスチックと呼ばれるものであればどんな合成樹脂でも良い。」(乙第1号証の2:19頁36?38行)と記載されている。)からなる部材に、熱可塑性弾性体(熱可塑性エラストマーも弾性体であるといえる。)を特定の温度での射出成形により融着させる複合成形体も多くの分野で利用されていることは、プラスチック成形技術の分野において周知(例えば、甲第4号証及び甲第5号証)の事項である。
しかしながら、甲第1号証第5図発明のもつ課題は、甲第1号証の第2図の発明のように支持軸を支持する部分を容器部底部から蓋に移動させることで解消できるものである。それをあえて、減衰手段を構成する「容器部材」の筒状の周囲部(胴部)と支持軸を支持する部材(底部)を、「同一材料で一体に成形」するものから、相対的に硬度の高い材料からなる筒状の周囲部と、相対的に軟質の材料からなる、支持軸を支持する部材とで構成して、わざわざ部品数を多くすること、さらに異なる部材構成と接着させて一体にするといった、作業工程を増大していく構成の採用は、そもそも甲第1号証第5図発明及び甲第1号証の第2図の発明において本来熱融着を予定していない以上、甲第1号証の第2図の発明を参酌しても、二体構成から三体構成(第5図:容器部70と蓋体72と底部71a)となし熱融着を採用する必然性がなく、当業者が容易に想到し得ることは困難というよりあり得ない。

また、上記甲第1号証の第2図の発明は、甲第1号証第5図発明を先行技術とする別発明である。甲第1号証第5図の課題は甲第1号証の第2図の発明によれば、容器の底部にあった一体成形の支持軸挿入部を蓋部23に移動させ、容器部22と、支持軸を支持する部材として軟質の材料を用い粘性流体の注入作業後に密封することで達成可能となるものである。
容器部22の開口端22cに蓋部23の端部23b(蓋部の外周部)を後から密封することでの該部分の接着構成に注目して、甲第1号証第5図発明に、三体構成(第5図:容器部71と蓋体72と底部71a)を採用し、容器部71に相対的に硬度の高い材料としてのエンジニアリングプラスチックの採用、底部71aに相対的に軟質の材料として熱可塑性弾性体を特定すること、さらに、上記材料の限定を前提として、特定の温度での射出成形により融着させて接合し、一体に熱融着すること、要するに、甲第1号証第5図発明の容器部71に甲第2号証?甲第5号証に記載された技術の組み合わせは、本件発明1のものにおいて、エンジニアリングプラスチックを採用は、この採用により弾性変形し難くなる故に、内部に収納した粘性体/減衰体による振動を減衰させる機能において堅牢で格別な支持部材を不要として筒状部で十分な振動減衰効果が得られる作用効果の新たな達成ができるようになることも含め、そもそも起因乃至動機付けがなく、当業者が容易に想到し得た事項でない。

以上、甲第1号証第5図発明は容器部71と底部71aとは一体成形であり容器部の厚肉に対して薄肉の形状で軟質といっているだけで、材料を変えて軟質とする着想は甲第1号証第5図発明に全くない。また、底部71aは容器部71と一体成形されているもので、甲第1号証の第2図の発明を考慮しても底部22bは一体成形であり容器部71/容器22と、底部71a/22bとを分割する構成は無く、示唆もない。支持軸76を支持する部材が、甲第1号証第5図では蓋体72ではなく容器部の底部71aであり、甲第1号証の第2図の発明は容器22の底部22bでなく蓋部23に移したにすぎないもので、甲第1号証の第2図の発明を参酌しても困難である。
また、蓋体72であるが、甲第1号証第5図発明では粘性流体Gを封入する為、甲第1号証第2図ではさらに蓋体23で支持軸76を支持する部材として使う為に固着手段でより確実にしているものであって、この甲第1号証第2図の発明を参酌しても、甲第1号証第5図発明にわざわざ作業工程を増大させる三体構成と、射出成形により一体形成する固着手段の採用はそもそも不要である。
また、材料を選択するとして甲第1号証全体においての実施例はゴム材ないしブチルゴム等のゴム材との記載があるものの、かかる構成から熱可塑性のエンジニアリングプラスチックと熱可塑性弾性体の組み合わせを選択していく示唆はない。
仮に、甲第1号証第5図発明において容器部71を底部71aと周囲部71bとに分け、容器部71をエンジニアリングプラスチックと底部71aを熱可塑性弾性体と三体構成とするにしても、ここでは「この袋体61内に支持軸66部が突出しているので、流体65を注入する際、支持軸66が邪魔になり」との課題を無視しなくてはならないものとなり、筒状部の端部のみに射出成形により一体に熱融していく着想は、「容器部内に突起がないので粘性流体の注入が容易」とする課題達成の阻害要因となる。

したがって、本件特許請求項1に係る発明は、甲第1号証第5図発明において、第1号証の第2図の発明を参酌して、さらに甲第2?3号証、及び甲第4?5号証に記載された「熱融着」の公知技術の採用は、容易想到の論理を重ねて適用することになるのに加え、上記阻害要因を無視する等格別の要因を導入しないと達成は困難であり、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

そして、本件特許請求項1に係る発明は、第1密封部材が型成形により一体に筒状部に金型内で熱融着されて同時に実現でき、また筒状部としてエンジニアリングプラスチックを採用していることで軟質ゴムの場合に比し、弾性変形がし難いが故に、内部に収容したオイルダンパーによる振動を減衰でき、且つ支持部材での支持構成が不要との作用効果を有するもので、これらは、甲第1号証?甲第5号証に記載された事項から予測できる効果以上のものである。

-補足-
請求人は無効審判の請求理由、乃至、口頭審理陳述要領書で、縷々主張している点は以下のとおりである。
『以上、無効理由1についてまとめれば、請求人は、甲第1号証には、甲第1号証第5図発明と、その課題である減衰効果を高めるために、硬度の異なる容器部と支持部材を接着することが記載されているのであるから、甲第2号証から第5号証を考慮して、当業者が容易に本件請求項1に係る発明を発明することができるとしている。・・・(後略)・・・。』(口頭審理陳述要領書10頁)であるが、上記したようにそもそも甲第1号証第5図発明において、甲第1号証の第2図の発明を考慮しても、第5図発明と同様第2図の発明も容器部71と底部71aを別体として構成しようとする発想はなく、第5図発明とは支持軸を支持する部分を蓋部に移したに過ぎない。また、甲第1号証第5図発明は底部71aを物理的に薄肉で形成して軟質として減衰効果を得ようとするもので、材料を変えての別の材料から構成することを示唆する技術思想は想定していない。
ただ、甲第1号証の第2図の発明は、第5図発明に対応してみていけば蓋体23で支持軸76を支持する発想で容器部71とは別構成であるから材料を変えて軟質とすることができるものであるが、第2図発明でも容器部22と底部22bは一体成形である。
要するに、甲第1号証に三体構成とすること、材料を種々選択できる中から熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックと熱可塑性弾性体とすること、三体構成を前提として射出成形により一体に熱融着して筒状部と筒状部の記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた部材側を固着することは当業者が容易に想到できるものでなく請求人の主張は採用できない。

本件発明2と甲第1号証第5図発明について
甲第6?8号証は「2つの部品相互の取付けのために一方の部品にブラケットを設けること自体は、機械技術における慣用手段であり、光学ディスクプレーヤ等の記録再生装置に使用されるダンパーであって、内部に粘性流体が封入された容器の周囲にフランジ(ブラケット)を備えるダンパーについて」の記載があるとして、本件特許発明2と甲第1号証第5図発明とを対比しての相違点の判断に対して提示されたものである。
しかしながら、本件発明1が甲第1号証第5図発明と対比して、当業者が容易に発明をすることができないことは上記で判断したとおりであるから、請求項1の発明を引用し、さらに限定事項を加えた発明である本件発明2は、甲第6?8号証をさらに参酌しても、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

したがって、本件特許の請求項2に係る発明も、甲第1号証第5図発明に、甲第2,3号証、及び甲第4,5号証に記載の発明、及び当該技術分野における慣用技術(甲第6?8号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(3)無効理由2(進歩性欠如その2)
本件発明1と甲第1号証第2図発明について
〔対比〕
本件発明1の「複数の中空の筒状部」における「複数の」は、減衰材が収容された部材が複数で「減衰手段」を構成することを意味するから、これは甲第1号証第2図発明に記載があることは第3図から明らかである。甲第1号証第2図発明の「支持部材1」「コイルスプリング6」及び「複数のダンパー20」は、それぞれ、本件発明1の「筐体」「弾性支持具」及び「減衰手段」に相当する。
甲第1号証第2図発明の「コンパクトディスクプレーヤ」は、本件発明1の「記録再生装置」の一種で、甲第1号証第2図発明における「防振支持装置」は、本件発明1に係る発明における「防振装置」の機能を詳細に記載したものである。甲第1号証第2図発明の「容器部22の筒状の胴部22a」「収容空間14」「粘性流体14a」「蓋部23」及び「底部22b」は、それぞれ、本件発明1の「中空の筒状部」「筒状部内」「減衰材」「第1密封部材」及び「第2密封部材」に相当するから、
結局両者は、
「内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置であって、
前記減衰手段は、
a.前記筐体にその内方を向くように設けられた、複数の中空の筒状部と、
b.この筒状部内に収容された減衰材と、
c.前記筒状部の前記筐体の端部に、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と、
d.前記筒状部の他端部に第2密封部材とを有する記録再生装置の防振装置。」
で一致し、以下の点で相違する。

-相違点1-
本件発明1の構成aの複数の中空の筒状部(11)と、甲第1号証第2図発明の構成a’の複数の中空の容器部22の筒状の胴部22aに関し、本件発明1の複数の中空の筒状部(11)は「熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチック」からなるのに対し、甲第1号証第2図発明の複数の中空の容器部22の筒状の胴部22aはそのような特定がされておらず、それに関連して、本件発明1の構成cの第1密封部材(14)と甲第1号証第2図発明の構成c’の蓋部23に関し、本件発明1では「筒状部の筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体」からなるのに対し、甲第1号証第2図発明では「射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体」の特定がされてない点。

-相違点2-
本件発明1の構成d.の第2密封部材(16)と甲第1号証第2図発明の構成d’の第2密封部材(底部22b)に関し、第2密封部材(16)は「筒状部の他端部に固着された」部材であるのに対し、第2密封部材(底部22b)は「筒状部の他端部に一体成形されて設けられた」部材である点。

〔判断〕
甲第1号証第2図発明は、「ダンパー20の容器部22は筒状の胴部22aの一端に開口端22cを有し、その間口端22cの近辺の外周には支持部材の取付孔1aに嵌入させる溝22dが設けられている。胴部22aの一端には底部22bを有し、容器部22は一体成形されている。さらに、蓋部23は胴部22aの開口端を覆うとともに、容易に弾性変形するように容器部22より軟質に成形されている。蓋部23の中央部に支持軸挿入部23aを有し、この支持軸挿入部23aの周囲に連結して断面がV字状に内側に折曲げられた環状の薄肉部23cを有し、さらにこの薄肉部23cの外周に上記容器部23の開口端22cに対して接着できるように端部23bを有し、蓋部23は一体成形されている。その他は第1実施例と同様のものは第1実施例と同一符号を附して説明を省略するものである。」そして、第1実施例には、「収容空間内14に封入された粘性流体14a」を有し、「容器部12はブチルゴム等のゴム材にて厚肉に形成され」「蓋部13はブチルゴム等のゴム材料にて容器部12 より軟らかく弾性体に成形されている。」との記載がある。
要するに、一体成形の底部22bを有する容器部22と蓋部23とからなる二体構成のダンパー20の構成で、これを前提に上記各相違点について、甲第1号証第2図発明に甲第9号証に記載の発明(甲第3号証、甲第10,11号証を参酌)、及び甲第12号証に記載の発明を適用することで本件発明1が容易に想到できるかを、以下に検討する。

[相違点1について]
(a)甲第9号証に記載の発明
甲第9号証に記載の発明をみると、防水性が高い操作ボタンの複合成形体が記載され、硬質部位(枠体25)と軟質部位(薄肉部15,肉厚部16)を有する操作ボタンの複合成形体の製造に際し、硬質部位(ボタン本体)を硬質のエンジニアリングプラスチックで構成し、軟質部位(ボタン支持体)を軟質の熱可塑性弾性体で構成して、硬質部位(ボタン本体)と軟質部位(ボタン支持体)とを直接固着することが記載されている。
また、甲第9号証には、かかる硬質部位と軟質部位を有する複合成形体の製造に関し、硬質の熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックで構成された部位と軟質の熱可塑性弾性体で構成された部位とを有する複合成形体を、金型を用いた射出成形により一体に熱融着する方法及びそれによって成型された操作ボタンが記載されている。

(b)甲第1号証第2図発明と甲第9号証に記載の発明の共通点
共通点1:甲第1号証第2図発明と甲第9号証に記載の発明には、それぞれ「軟質の部材と硬質の部材を接着する」という「材料の軟質/硬質」及び「接着すること」に関する点で共通する。

共通点2:甲第1号証第2図発明の防振装置では、蓋部が容器部を密封することが記載され、甲第9号証に記載の発明の操作ボタンは、従来から防水性が要求されており、甲第1号証第2図発明の防振装置と甲第9号証に記載の発明の操作ボタンには密封性を高めるという点に限定して共通する。

共通点3:一般的に2つの部材をくっつける場合には、通常接着力を必要とし、その技術分野での課題を達成していく意味において接着力を必要な強固なものにしていく点で共通する。

共通点4:今回訂正明細書には、「工数が少なくて済み、製造コストを安価なものとすることができる」との記載がされ、甲第9号証に記載の発明には、「製造工程が少なくて済む効果がある」(7頁右下欄5?6行)と記載されている。防振装置であれ、操作ボタンであれ、製造工程を減らしてコストダウンを図るという点で共通の課題が内在する。

(c)上記各共通点を踏まえ甲第1号証第2図発明への甲第9号証に記載の発明の適用する点について、
甲第1号証第2図発明の筒状の胴部(22a)は硬質部位で、第1密封部材(蓋部23)は軟質部位で、これらは接着されている。具体的には、甲第1号証第2図発明の筒状の胴部(22a)は硬質部位であるブチルゴム等のゴム材、第1密封部材(蓋部23)は軟質部位としてブチルゴム等のゴム材で、これらは接着である。そして、上記各共通点を踏まえ、操作ボタンと技術分野の相違はあるとしても、甲第9号証に記載の発明の上記硬質部位の材料をエンジニアリングプラスチック(ABSなど)と、軟質部位の材料に熱可塑性弾性体としてこれらを接着するところまでは容易に想到し得るものと認められる。
また、射出成形により一体に熱融着することは接着手段として周知であることも認められる。
しかしながら、『射出成形により一体に熱融着』する手段の採用は、甲第1号証第2図発明では『射出成形により一体に熱融着』するのは容器部22と蓋部23との端部23bの開口端22cの箇所となる。その為には容器部22と一体成形している底部22bを分けて、容器部22と蓋部23と底部22bの3体構成を採用することとなり、粘性体14aの注入は、必然的に容器22と蓋部23を熱融着すると底部22b側からする成形工程が必要になる。
すると、『甲第1号証2図発明が、従来のダンパーが「袋体61内に流体65を注入する必要があり、この袋体61内に支持軸66部が突出しているので、流体65を注入する際、支持軸66部が邪魔になり、」(5頁17行?20行)との欠点、及び、「このダンパー70は、容器部71の底部71aを薄肉に形成し、周囲部71bを厚肉に形成したものであり。且つ、これ等は同一材で一体に形成されている。・・・したがって、周囲部71bを厚肉に形成しても、十分な振動減衰効果が得られないという問題を有していた。」(6頁10行?18行)との欠点を克服するためになされたものであり、支持軸76を支持するダンパーの容器として適するように硬質材料からなる容器部22と、ダンパーの支持軸挿入部として適するように軟質の材料を用いると共に、粘性流体の注入作業が容易となるように、従来のダンパー(第5図参照)では容器の底部にあった一体成形の支持軸挿入部を蓋部に移動させたものであると認められる。そのために、唯一の密封部である容器部22の開口端22cと蓋部23の端部23b(蓋部の外周部)を後から密封するために、該部分を接着する構成にしたものと認められるが、三体構成(第2図:容器部22と蓋部23と底部22bとの三体)にして、上記「射出成形により一体に熱融着」する手段の採用は上記の課題を達成し得なくなり、甲第1号証第2図発明において相容れない技術事項』(以下「相容れない技術事項」という。)となり、射出成形による熱融着を想定してないところに採用することは困難である。
したがって、『甲第1号証第2図発明の硬質部位の材料を硬質のエンジニアリングプラスチックで構成し、軟質部位の材料を軟質の熱可塑性弾性体で構成し、射出成形により一体に熱融着すること』、その為に後記する第2密封部材を『筒状部の他端に固着された』部材と別体構成は、『接着するという共通点』を前提に、『材質の硬/軟の組み合わせてのものとの共通点』があるとしても、甲第9号証に記載の発明に基づき、上記相違点1のようにしていくことは当業者が適宜容易に想到し得ることはできない。
また、本件発明1は、上記筒状部にエンジニアリングプラスチックを採用することで、甲第1号証第2図発明のゴム材料である場合に採用していた支持部材1への胴部22aの取付を不要とすることができるものである。

そして、本件発明1の効果は、第1密封部材が型成形により一体に筒状部に金型内で熱融着されて同時に実現でき、また筒状部としてエンジニアリングプラスチックを採用していることで軟質ゴムの場合に比し、弾性変形がし難いが故に、内部に収容したオイルダンパーによる振動を減衰でき、且つ支持部材での支持構成が不要との作用効果を有するもので、これらは甲第1号証,甲第9号証(甲第3号証、甲第10,11号証を参酌)、及び甲第12号証に記載された事項から予測できる効果以上のものである。

-補足-
請求人は、上記相違点1の容易性について審判請求の理由ないし口頭審理陳述要領書で縷々主張している点は以下のとおりである。
a.「第2の共通点から、甲第1号証第2図発明の防振装置の胴部と蓋部が接着している部分は、甲第1号証の実用新案登録請求の範囲にも「該容器部に接着されて該容器部を密封する蓋部」と記載されていて、甲第1号証第2図発明において、密封がすでに具体的に達成されていることが示されている。そして、それは換言すれば、甲第1号証第2図発明の胴部と蓋部の接着は接着手段がいかなるものであれ、粘性流体を封入する以上、密封は当然必要なものであり、かつ、防水性、密着性をさらに高めることが望ましいことを示唆するものである。」からとしても、上記『相容れない技術事項』から甲第1号証第2図発明の接着に甲第9号証に記載の発明の熱融着による接着手段を用いる動機付けにはならない。

b.「甲第9号証では、操作ボタンにおいて、ボタン支持体とボタン本体を熱融着を用いて密封性、防水性を高めて成型している。この点から、甲第1号証第2図発明の防振装置の密封をよりハイレベルに実現するために、甲第9号証の操作ボタンにおいて採用された熱融着による接着を甲第1号証第2図発明に用いる」ことも、上記『相容れない技術事項』から甲第1号証第2図発明の目的を考えれば容易でなく、かつ不自然な発想である。

c.「上記のように甲第1号証第2図発明に甲第9号証の操作ボタンにおける熱融着を用いることは、甲第9号証に記載された、硬質の合成樹脂であるエンジニアリングプラスチックと軟質の熱可塑性のエラストマーの熱融着を甲第1号証第2図発明に用いることであるから、甲第1号証第2図発明に記載の硬質部位である胴部と軟質部位である蓋部をそれぞれ硬質であるエンジニアリングプラスチックと軟質である熱可塑性のエラストマーにすること」を意味することもできないし、必然的でもないし、かつ、上記『相容れない技術事項』に記載の阻害事由がある。

d.「この点は、接着という技術の本質である、第3の共通点である接着力を強化するという内在的な課題を考えた場合も同様である。・・・、当然に製品の品質を高めるために、甲第1号証第2図発明の防振装置に甲第9号証に記載された熱融着を用いること」が自然な発想でないことは、上記『相容れない技術事項』から明らかである。

e.「さらに、第4の共通点からみても、甲第1号証第2図発明には、当然、その製造工程を簡略化したいという要請があり、かつ、そうするように射出成形による熱融着を用い、製造工程を簡略化することで製造コストを下げることが甲第9号証に記載の発明ですでに具体的に示されているのであるから、これをもっても、甲第1号証第2図発明に甲第9号証の熱融着を用いることは容易になしうることといえる」ことも上記『相容れない技術事項』から無理である。

さらに、請求人は相違点1に対する補足的検討として
防振装置と操作ボタンの相違について、
f.「よって、最終製品としての防振装置と操作ボタンとが異なる技術分野に属するものであるとしても、技術原理の共通性に鑑みれば、甲第1号証第2図発明に甲第9号証発明を適用することを阻害する事由はない。それどころか、(防振装置における減衰効果に対応する)弾性による戻り力の効果を、甲第9号証では操作ボタンに熱融着を用いることで達成していることが開示されているのであるから、(この減衰に対応する)弾性による戻り力という技術的特長からも、甲第1号証 第2図発明の防振装置に甲第9号証の操作ボタンの熱融着を用いることが極めて容易に想到できるのである。」と補足するが、基本的には「操作ボタン」の技術分野の相違による適用の予測の困難性があるのに加え、単に硬質の合成樹脂であるエンジニアリングプラスチックと軟質の熱可塑性のエラストマーとを採用するにとどまらず、さらに熱融着による接着手段の採用は容易想到の論理を重ねて適用することであるし、上記『相容れない技術事項』の阻害要因がある。

g.「甲第3号証には、硬い熱可塑性プラスチックと弾性材のTPEとの射出成形による接合を「防振装置」へ適用することの記載が有るから、この甲第3号証の記載を踏まえれば、甲第1号証第2図発明の減衰手段における硬質部材と軟質部材の構成に、硬質の熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックで構成された部位と軟質の熱可塑性弾性体で構成された部位とを有する複合成形体を射出成形により一体に熱融着する甲第9号証に記載の方法を用いることを想到することは何の困難もないことが、さらに裏付けられる。」と補足する。確かに、甲第3号証には防振装置への適用があるとしても、甲第1号証に記載のある筒状ダンパの具体的な構成の記載は一切なく、甲第3号証を参酌しても甲第9号証に記載の発明から甲第1号証第2図発明の減衰手段に採用して本件発明1を導き出すことは、複合成形体を射出成形により一体に熱融着を適用することに上記『相容れない技術事項』の阻害要因があるので困難である。
「甲第10号証」や「甲第11号証」の記載を考慮しても、硬質の熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックで構成された部位と軟質の熱可塑性弾性体で構成された部位とを有する複合成形体を射出成形により一体に熱融着する方法を種々の分野へ応用することが導き出されるわけでなく困難である。

[相違点2について]
上記相違点1の検討でも触れたが、相違点2の第2密封部材(16)は「筒状部の他端部に固着された」部材は、上記『相容れない技術事項』の理由から、甲第1号証第2発明において、甲第9号証に記載の発明に基づき上記相違点2のようにすることはできない。

-補足-
請求人は、上記相違点2の容易性について審判請求理由ないし口頭審理陳述要領書で以下のとおり縷々主張している。
a.本件発明1のように、第2密封部材(16)が「筒状部(11)の他端部に固着された」部材であることについては、格別の効果があるわけではなく、筒状部内部に減衰材を収容して密封しなければならないがゆえに単に、第2密封部材(16)を筒状部(11)と別体にしておいて、第2密封部材(16)で筒状部(11)の端部を塞ぐということを示しているにすぎない。(筒状部の両端部を塞ぐ必要があることはいうまでもないことである。)

b.特に、本件発明1は物の構造の発明であり、第2密封部材を固着する方法自体を権利化したものでもなく、固着される構成自体は何ら本件特許発明1の防振装置を格別に特徴付けるものでもない。

c.第2密封部材を固着する構成は、「従来のものは組立てための工数が多く、しかも取付け作業が面倒であるという問題点」とは無関係なものである。

d.甲第1号証第2図発明の防振装置に甲第9号証発明に基づき熱融着の適用を実現するために、製造工程において金型を取り出す必要があれば、そのために甲第12号証記載のように第2密封部材を別に成型にすることを想到するのが自然な当業者の発想といえる。

等々、本件発明は「記録再生装置の防振装置」に係る「物」の発明であって、その製造方法の発明ではなく、本件発明には「製造工程」「金型を取り外す工程」について記載がない旨も主張する。

しかしながら、本件発明1は「c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と」の構成において、防振装置という物の構成で製造手段は間接的に表現されているといえるものである。また、甲第1号証第2発明に「射出成形により一体に熱融着」する構成を採用するには必ず三体構成(第2図:容器部22と蓋体23と底部22b)を前提とする。そして、容器部22と蓋部23を先ず熱融着することは工程上、収納空間に14aに金型が存在し、粘性流体14aを注入後に底部22bを固着することになるが、これは上記『相容れない技術事項』の理由から採用することは困難である。

したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証第2図発明との各相違について、甲第1号証第2図発明に甲第9号証記載の発明(甲第3,10?11号証を参酌)及び甲第12号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

本件発明2と甲第1号証第2図発明について
甲第6?8号証は「2つの部品相互の取付けのために一方の部品にブラケットを設けること自体は、機械技術における慣用手段であり、光学ディスクプレーヤ等の記録再生装置に使用されるダンパーであって、内部に粘性流体が封入された容器の周囲にフランジ(ブラケット)を備えるダンパーについて」の記載があるとして、本件特許発明2と甲第1号証第5図発明との対比しての相違点の判断に対して提示されたものである。
しかしながら、本件請求項1に係る発明(本件特許発明1)が甲第1号証第2図発明と対比して、当業者が容易に発明をすることができないことは上記で判断したとりであるから、請求項1の発明を引用し、さらに限定を加えたものである請求項2に係る発明も、甲第6?8号証をさらに参酌しても、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

したがって、本件特許の請求項2に係る発明も、甲第1号第2図発明に、甲第9号証に記載の発明(甲第3,10?11号証を参酌)及び甲第12号証に記載の発明、及び当該技術分野における慣用技術(甲第6?8号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。


VII.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する特許無効理由及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1乃至本件特許の請求項2に係る発明を無効とすることはできない。
又、他に本件特許の請求項1乃至本件特許の請求項2に係る発明を無効とする理由を発見しない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
記録再生装置の防振装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置であって、
前記減衰手段は、
a.前記筐体にその内方を向くように設けられた、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部と、
b.この筒状部内に収容された減衰材と、
c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と、
d.前記筒状部の他端部に固着された第2密封部材とを有する記録再生装置の防振装置。
【請求項2】請求項1において、
前記減衰手段は、前記筐体に着脱自在に取付けられ、かつ熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなるブラケットを有し、このブラケットに前記筒状部が形成されていることを特徴とする記録再生装置の防振装置。
【請求項3】請求項1において、
前記筐体と前記筒状部とが、一体に型成形された熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなることを特徴とする記録再生装置の防振装置。
【請求項4】請求項1ないし3のいずれか1において、
前記第2密封部材は熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなり、略中央部に熱融着可能な前記減衰材の注入口が形成されていることを特徴とする記録再生装置の防振装置。
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
この発明は、記録再生装置の防振装置に関する。更に詳しくは、CD(コンパクトディスク)、フロッピーディスク等の記録媒体を再生するための再生装置の衝撃等により発生する振動を緩らげ、かつ減衰させるための防振装置に関する。
[従来技術]
CDはデジタル符号化されたオーディオ信号をピット(凹部)の列として記録した小径のディスクである。このディスクに記録された事項は、再生装置においてレーザ光により再生される。再生装置に振動が発生すると、レーザ光が所定のピットに照射されない。従って、このような振動は極力避けなければならない。
従来、再生装置の防振装置として次のようなものが知られている。
すなわち、防振装置は筐体を有している。この筐体内に再生装置が収容され、再生装置は筐体に弾性吊具を介して懸吊されている。筐体に再生装置を支持するとともに、振動を減衰するための減衰手段が設けられている。
この減衰手段は、第6図に示すようなものである。減衰手段71はブラケット72を有し、その上端に設けたねじ孔73に装着されるねじを介して筐体に取付けられる。ブラケット72には、シリコンなどの粘性を有する減衰材12を収容するための中空の筒状部74が形成されている。この筒状部74の両端は、軟質のゴム材料からなる筒状の密封部材75と、密閉板76とによって密封されている。
密封部材75は一端に密封部77を有し、その中央部に再生装置に設けられた突起を受け入れるための凹部78が設けられている。密封部材75の周囲に、その軸線方向に間隔を置いて2つのフランジ79、80が設けられている。
上記減衰手段71は次のように組立てられる。ブラケット72の筒状部74内に、フランジ80側の端部をすぼめた密封部材75を挿通させる。そして、両フランジ79、80を筒状部74の両端面に係合させ、このようにして密封部材75をブラケット72に取付ける。
次に筒状部74内すなわち密封部材75内に減衰材12を注入して、キャップ76をフランジ80に固着する。
[発明が解決しようとする課題]
しかし、上記減衰手段71にあっては、ブラケット72と密封部材75はそれぞれ個別に成形される。このため、ブラケット72に密封部材75を前記のようにして取付けなければならない。したがって従来のものは組立てのための工数が多く、しかも取付け作業が面倒であるという問題点があった。
この発明は、上述のような技術的背景のもとになされたものである。
この発明の目的は、減衰手段の組立て工数が少なく、製作が簡単な防振装置を提供することにある。
[課題を解決するための手段]
この発明は、上記目的を達成するために次のような手段を採る。
すなわちこの発明は、内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置であって、
前記減衰手段は、
a.前記筐体にその内方を向くように設けられた、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部と、
b.この筒状部内に収容された減衰材と、
c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と、
d.前記筒状部の他端部に固着された第2密封部材とを有する記録再生装置の防振装置にある。
前記減衰手段は、前記筐体に着脱自在に取付けられ、かつ熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなるブラケットを有し、このブラケットに前記筒状部が形成されている。
前記筐体と前記筒状部とが、一体に型成形された熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる。
前記第2密封部材は熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなり、略中央部に熱融着可能な前記減衰材の注入口が形成されている。
[作用]
前記第1密封部材は、型成形により一体に筒状部に熱融着される。このため、従来のような密封部材を筒状部に取付けるための作業が省略される。
[実施例]
この発明の実施例を図面にしたがって説明する。第1図はこの発明による防振装置の全体を示す正面図である。
防振装置は再生装置1を収容するための筐体2を有している。筐体2は上板3と、その周縁に垂下して設けられた互いに対向する1対の側板4とからなっている。再生装置3は上板3の内面にコイルスプリングからなる複数の弾性吊具5を介して懸吊されている。
側板4の下端に減衰手段6が複数(実施例では各側板4に対して2つ)設けられている。減衰手段6は再生装置1の側部に設けた突起7を介して、再生装置1を支持するとともに、再生装置1からの振動が伝達される。
第2図は減衰手段6の詳細を示す断面図である。減衰手段6はブラケット8を有している。ブラケット8は射出成形された熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなっている。ブラケット8はねじ9を介して側板4に取付けられ(第1図)、ねじ9のための取付孔10がブラケットの端部に形成されている。ブラケット10には中空の筒状部11が形成され、その内部に減衰材12が封入されている。減衰材としては例えば、10000?50000センチポアズ程度の粘性を有するシリコンが使用される。
筒状部11の端部内周面には、環状段部13が形成されている。この環状段部13に、軟質の熱可塑性弾性体からなる第1密封部材14が射出成形により一体に熱融着されている。第1密封部材14は、その中央部に再生装置1の突起7を受け入れるために凹部15が設けられている。
凹部15は射出成形時には、第2図に鎖線で示すように、凹部15の内周面が外部に露出した状態で成形される。そして成形後実線で示す状態にされる。
筒状部11の他端部は第2密封鎖部材16によって密封されている。この第2密封部材16はブラケット11と同一材料で射出成形により成形される。第2密封部材16は筒状の取付部17を有し、この取付部17の外周面に環状突起18が形成されている。環状突起18に対応して、筒状部11の他端部内周面に環状溝19が設けられている。
第2密封部材16の取付部17が筒状部11に圧入され、かつ環状突起18が環状溝19に係合することにより、第2密封部材16は筒状部11に固着される。
第2密封部材16は、その中央部に減衰材12の注入口20が設けられている。この注入口20は、筒状部11内に減衰材12を注入した後、実線で示すように熱融着により閉じられる。
上記防振装置によれば、再生装置1に衝撃が加わると弾性吊具5が振動することにより衝撃を緩和する。そして再生装置1の振動は突起7を介して減衰手段6に伝達され、減衰材12の粘性抵抗により減衰される。
製造法
上記防振装置は次のようにして製造される。
筐体2は通常エンジニアリングプラスチックを射出成形して作られるが、金属等の薄板を曲げ加工してもよい。ブラケット6は筒状部11を含めて、周知の射出成形法により一体成形される。ブラケットの材質は、ABS、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、PBT、ナイロン6、11、12など、機械的強度、成形性が良いもの、いわゆるエンジニアリングプラスチックと呼ばれるものであればどんな合成樹脂でも良い。
ブラケットの射出成形後、このブラケットを次の射出成形金型に入れる。ここで使う金型は、射出成形でよく用いられる周知の金型構造を用いる図示せず)。金型内のキャビティ部は、環状段部13などであり、成形前はこれらの部分は空間である。この状態で、スプルーから加熱溶融した熱可塑性の弾性体を流入させる。この熱可塑性の弾性体は、例えば、ナイロンエラストマ、ポリウレタン系エラストマ、オレフィン系エラストマ、ポリエステルエラストマなどから選択する。
流入された樹脂は、スプルー、ランナを通ってゲートを通りキャビティ部を満たす。キャビティ部に流入した熱可塑性弾性体は、それ自身の溶融熱で環状段部13の表面部分を一部溶かして、両者は一体となって熱融着面を作る。このようにして第1密封部材14が熱融着されたブラケットを金型から取出し、他の必要な処理を行なう。
この後、第2密封部材16を筒状部11に取り付ける。さらに、第1密封部材14の凹部15をその内外面が反転するように筒状部11内に押し込む。そして注入口20から減衰材を注入し、注入後この注入口20を熱融着して閉鎖する。
なお、この製造方法は、射出成形法であるが、筒状部11に第1密封部材14を熱融着する方法は、他の公知の手段でも良い。例えば、射出成形、ブロー成形、カレンダ成形、圧縮成形、トランスファ成形など成形と同時に融着する条件であれば、他の方法でも良い。また、凹部15が最初から筒状部11内に位置する形状に、成形してもよい。
[その他の熱可塑性弾性体]
ブラケットに高い耐熱性および機械的強度が要求される場合は、ポリカーボネート、ナイロンなどの熱可塑性のエンジニアリングプラスチックを使用する。しかし、従来用いられている熱可塑性エラストマーをこれらのエンジニアリングプラスチックに接合するには、比較的硬い熱可塑性弾性体(エラストマ)に限られている。この場合には、本出願人が特願昭62-300036号(特開昭1-139240号公報)および特願平1-235620号において提案した方法にしたがい、熱可塑性弾性体組成物を選択すればよい
[第2実施例]
第3図は、防振装置の第2実施例を示す正面図である。前記第1実施例では減衰手段6が側板4に垂下して設けられている。この第2実施例では、側板4の下端に横向きの張出部34が形成されている。減衰手段36は、この張出部34に凹部15の開口端が上方を向くように取付けられている。また再生装置1の底部に突起47が設けられ、この突起47が凹部15に受け入れられている。その他の構成は第1実施例と同様である。
[第3実施例]
第4図はこの発明の第3実施例を示す正面図である。前記第1実施例では弾性吊具5がコイルスプリングからなっている。この実施例では、弾性吊具55はスリ割り56を有する2つの係止部57と、両係止部57、57を連結する弾性材料からなる連結部58とからなっている。両係止部57、57は、筐体2の上板3および再生装置1の本体1aにそれぞれ設けた取付孔に係合し、これにより再生装置1が筐体2に懸吊されている。その他の構成は第1実施例と同様である。
[第4実施例]
第5図はこの発明の第4実施例の一部を示す正面図である。第1ないし第3実施例では、減衰手段がブラケットを有している。この実施例では、減衰手段はブラケットを有することなく、筐体2の側板64に筒状部11が一体的に形成されている。この実施例では、筒状部11を含む筐体2全体が、前述した各種材料から選択される熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなり、射出成形により成形される。筐体2の成形後、熱可塑性弾性体からなる第1密封部材14が、射出成形により成形されると同時に筒状部11に熱融着される。
[発明の効果]
以上のようにこの発明によれば、第1密封部材が型成形により一体に筒状部に金型内で熱融着される。したがって、この密封部材の組付作業が自動化できるので、工数が少くて済み、製造コストを安価なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の第1実施例を示す一部破断した正面図、第2図は減衰手段の詳細を示す断面図、第3、4図はそれぞれ第2、第3実施例を示す第1図と同様な図面、第5図は第4実施例の要部のみを示す一部破断した正面図、第6図は従来例を示す断面図である。
1……再生装置、2……筐体
5……弾性支持具、6……減衰手段
7……突起、8……ブラケット
11……筒状部、12……減衰材
14……第1密封部材、15……凹部
16……第2密封部材、20……注入口
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-04-25 
結審通知日 2008-05-07 
審決日 2008-05-30 
出願番号 特願平2-281847
審決分類 P 1 123・ 532- YA (G11B)
P 1 123・ 533- YA (G11B)
P 1 123・ 121- YA (G11B)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 山田 洋一
横尾 俊一
登録日 1998-10-09 
登録番号 特許第2138602号(P2138602)
発明の名称 記録再生装置の防振装置  
代理人 赤尾 直人  
代理人 赤尾 直人  
代理人 富崎 元成  
代理人 宮崎 元成  
代理人 橋本 公秀  
代理人 高松 猛  
代理人 小栗 昌平  
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