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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200580364 審決 特許
無効200680265 審決 特許
無効200335136 審決 特許
無効200335239 審決 特許
無効200480218 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部無効 産業上利用性  A61K
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部無効 2項進歩性  A61K
管理番号 1195703
審判番号 無効2004-80238  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-11-26 
確定日 2009-04-14 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3479780号発明「骨吸収を抑制する方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3479780号の請求項1ないし8に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由
1.手続の経緯

特許第3479780号(以下「本件特許」という。)に係る発明についての出願は、平成10年7月17日(パリ条約による優先権主張1997年7月22日(米国)、1997年7月23日(米国)、1997年8月20日(英国)、1997年8月22日(英国))に国際出願され、平成15年10月10日にその発明について特許権の設定の登録がされた。
これに対して、平成16年11月26日に請求人により本件特許無効審判が請求され、被請求人は平成17年3月15日付けで答弁書と訂正請求書を提出した。

2.訂正請求について

(1)訂正の内容

ア.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、
「アレンドロネート、薬剤として許容できるその塩およびこれらの混合物より成る群の中から選択されるビスホスホネートを、アレンドロン酸活性体基準で約35?約70mg含み、週一回の投与間隔を有する連続スケジュールに従う経口投与に用いるための、哺乳動物における過度の骨吸収を治療または予防する薬剤組成物。」とあるのを、
「アレンドロネート、薬剤として許容できるその塩およびこれらの混合物より成る群の中から選択されるビスホスホネートを、アレンドロン酸活性体基準で約35?約70mg含み、週一回の投与間隔を有する連続スケジュールに従う経口投与に用いるための、哺乳動物における骨粗鬆症を治療または予防する薬剤組成物。」と訂正する。

イ.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6について、
「哺乳動物における過度の骨吸収を治療または予防するためのキットであって、週一回の投与間隔を有する連続スケジュールに従う経口投与により使用すべき旨の指示を含み、単位用量としてアレンドロネート、薬剤として許容できるその塩およびこれらの混合物より成る群の中から選択されるビスホスホネートをアレンドロン酸活性体基準で約35?約70mg含み、かかる単位用量を少なくとも1回分収容する、キット。」とあるのを、
「哺乳動物における骨粗鬆症を治療または予防するためのキットであって、週一回の投与間隔を有する連続スケジュールに従う経口投与により使用すべき旨の指示を含み、単位用量としてアレンドロネート、薬剤として許容できるその塩およびこれらの混合物より成る群の中から選択されるビスホスホネートをアレンドロン酸活性体基準で約35?約70mg含み、かかる単位用量を少なくとも1回分収容する、キット。」と訂正する。

ウ.訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5及び請求項10を削除し、請求項6ないし9の番号を1つずつ繰り上げる。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項1及び2は、特許請求の範囲に記載された治療又は予防の対象疾患である「哺乳動物における過度の骨吸収」を「哺乳動物における骨粗鬆症」に訂正するものである。そして、本件特許明細書に「ヒトその他の哺乳動物におけるさまざまな疾患・障害は、異常な骨吸収を含んでいるか、または伴っている。そのような疾患としては、限定されるわけではないが、骨粗鬆症、パジェット病、前立腺周囲骨損失・・・または骨溶解、および悪性の高カルシュウム血症がある。」と記載されている(本件特許公報の2頁左欄27?32行を参照)ことからみて、上記訂正事項はいずれも、対象疾患を下位概念に限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、しかも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
訂正事項3のうち、請求項5及び請求項10を削除する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。またこれに伴い、請求項6ないし9の番号を1つずつ繰り上げる訂正は、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記訂正は、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(3)訂正の適否のむすび
以上のとおりであるから、訂正事項1ないし3に係る訂正は、特許法第134条の2第1項及び同条第5項で準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、訂正を認める。

3.請求人の主張の概要

請求人は、本件特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、発明として未完成のものであって、特許法(以下、「法」という。)第2条第1項にいう発明とはいえないものであり、法第29条第1項柱書にいう発明ではないので、法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきであると主張し(以下、「理由1」という。)、
本件特許の請求項1及び6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、本件特許明細書の特許請求の範囲の記載は、法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないので、本件特許は法第123条第1項第4号に該当し、無効にすべきであると主張し(以下、「理由2」という。)、
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件特許の請求項1及び6に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、法第36条第4項に規定する要件を満たしていないので、本件特許は法第123条第1項第4号に該当し、無効にすべきであると主張し(以下、「理由3」という。)、
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて、また本件特許の請求項6ないし10に係る発明は、甲第1号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて、いずれも当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、法第123条第1項第2号に該当し無効にすべきであると主張し(以下、「理由4」という。)、証拠方法として甲第1ないし6号証の各刊行物及び参考資料1ないし11を提出している。

甲第1号証:国際公開第95/30421号パンフレット
甲第2号証:1996年7月発行「LUNAR NEWS」
甲第3号証:1997年4月発行「LUNAR NEWS」
甲第4号証:米国特許第5366965号明細書
甲第5号証:カナダ連邦裁判所における訴訟(裁判ファイル第T-541-04)において、リチャード・ブルーズ・マゼス博士が提出した宣誓供述書と同じ内容の公証人による認証を得ていない書面
(その後平成18年2月2日付け上申書で、認証を受けた宣誓供述書が提出された。)
甲第6号証:米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC)の判決CAFC04-1005の認証付真正謄本
参考資料1:産業別審査基準「無機化合物」
参考資料2:United States Court of Appeals for the Federal Circuit 04-1005 MERCK & CO., INC (Plaintiff-Appellee) v. TEVA PHARMACEUTICALS USA, INC., (Defendant-Appellant)
参考資料3:米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC)の領収書
参考資料4:Ostrolenk, Farber, Gerb & Soffen, LLP. 宛私信
参考資料5:Ostrolenk, Farber, Gerb & Soffen, LLP. からの回答
参考資料6:GE Lunar Corporation 宛私信
参考資料7:GE, Mr. Kenneth G. Faulknerからの回答
参考資料8:Ostrolenk, Farber, Gerb & Soffen, LLP. 宛私信
参考資料9:Ostrolenk, Farber, Gerb & Soffen, LLP. からの回答
参考資料10:Ostrolenk, Farber, Gerb & Soffen, LLP. への返書
参考資料11:米国特許第4812311号明細書

4.被請求人の主張の概要

一方、被請求人は、理由1ないし4はいずれも理由がないと主張し、以下の書証を提出している。

乙第1号証:H. Fleisch, Bisphosphonates In Bone Disease, From The Laboratory To The Patient, 2nd Edition, Parthenon Publishing(1995) pp.147-154
乙第2号証:Chesnut, C. H., Harris, S. T., Singer, F. R., Stock, J. L. Yood, R. A., Delmas, P. D., Kher, U., Pryor-Tillotsan, S., and Santora, A. C., II, Alendronate Treatment of the Postmenopausal Osteoporotic Woman: Effect of Multiple Dosages on Bone Mass and Bone Remodeling, The American Journal of Medicine, vol.99, 144-152(1995)
乙第3号証:Liberman UA, Weiss SR, Broll J, et al., Effect of oral alendronate on bone mineral density and the incidence of fractures in postmenopausal osteoporosis, New England Journal Of Medicine, vol.333, 1437-1443(1995)
乙第4号証:Adachi, J. D., Osteoporosis - Its Diagnosis, Management and Treatment with a New Oral Bisphosphonate Agent, Etidronate, Today’s Therapeutic Trends, vol.14, No.1, 13-24(1996)
乙第5号証:DeGroen, P. C., Lubbe, D. F., Hirsch, L. J., Daifotis, A., Stephenson, W., Freedholm, D., Pryor-Tillotson, S., Seleznick, M. J., Pinkas, H., and Wang, K. K., Esophagitis Associated with The Use Of Alendronate, New England Journal Of Medicine, vol. 335, No.124, pp.1016-1021(1996)
乙第6号証:Norman H. Bell and Ralph H. Johnson, Bisphosphonates in the Treatment of Osteoporosis, Endocrine, vol.6, no.2, 203-206(April 1997)
乙第7号証:Carlo M. Girelli, Giorgio Reguzzoni, and Francesco Rocca, Esophagitis from Alendronate Description of Two Cases, Vol.88, No.5, 223-225(May 1997)
乙第8号証:裁判例(平成13年3月13日東高民一八判・平成10年(行ケ)393)
乙第9号証:LUNAR NEWSの検索結果報告書
乙第10号証:Webster’s Third New International Dictionary(1986) p.765
乙第11号証:Black DM et al, Lancet, Vol.348, 1535-41(1996)
乙第12号証:産業医科大学整形外科教授の中村利孝氏の見解書

5.本件特許発明

上記2.(3)のとおり訂正が認容されるので、本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる(以下、本件特許発明1ないし8という)。

「【請求項1】アレンドロネート、薬剤として許容できるその塩およびこれらの混合物より成る群の中から選択されるビスホスホネートを、アレンドロン酸活性体基準で約35?約70mg含み、週一回の投与間隔を有する連続スケジュールに従う経口投与に用いるための、哺乳動物における骨粗鬆症を治療または予防する薬剤組成物。
【請求項2】前記薬剤として許容できるその塩が、アレンドロネート一ナトリウム三水和物である、請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項3】前記ビスホスホネートを、アレンドロン酸活性体基準で約35mg含む、請求項1または2記載の薬剤組成物。
【請求項4】前記ビスホスホネートを、アレンドロン酸活性体基準で約70mg含む、請求項1または2記載の薬剤組成物。
【請求項5】哺乳動物における骨粗鬆症を治療または予防するためのキットであって、週一回の投与間隔を有する連続スケジュールに従う経口投与により使用すべき旨の指示を含み、単位用量としてアレンドロネート、薬剤として許容できるその塩およびこれらの混合物より成る群の中から選択されるビスホスホネートをアレンドロン酸活性体基準で約35?約70mg含み、かかる単位用量を少なくとも1回分収容する、キット。
【請求項6】前記薬剤として許容できるその塩が、アレンドロネート一ナトリウム三水和物である、請求項5記載のキット。
【請求項7】前記単位用量が、アレンドロン酸活性体基準で約35mgである、請求項5または6記載のキット。
【請求項8】前記単位用量が、アレンドロン酸活性体基準で約70mgである、請求項5または6記載のキット。」

6.当審の判断

(1)理由1(法第29条第1項柱書)

請求人は、訂正前の請求項1ないし10に係る発明(本件特許発明1ないし8に対応)は、当業者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度まで具体的・客観的なものとして構成されていないので、発明未完成であると主張し、その根拠として、下記の事項を挙げている。

ア.明細書中に、薬物の主作用(骨粗鬆症の治療・予防効果)と副作用(胃腸への悪影響)に関する薬理データの記載がなく、主作用を奏することと副作用を低減することを包括的に説明する作用機序等の記載もないこと、
イ.明細書には副作用を最小限に抑えることは第一義的な目的として記載されておらず、また、当業者であれば、疾患治癒の目的で投与する薬剤の主作用の効果を確認せずに、副作用の軽減化を第一義的に考えることは通常あり得ないこと、
ウ.実施例2には約70mgで治療、約35mgで予防と記載され、実施例1には副作用の抑制効果を40mgのわずか1例で確認したことが記載されているが、請求項に記載された「約35?約70mg」の全範囲において主作用の奏効と副作用の低減をもたらすことについて、明細書中に十分な裏付けの記載がなく、さらに上記約70mg及び約35mgという数値限定の臨界性も裏付けられていないこと。

本件訂正明細書の従来技術に関する以下の記載、及び本願発明の目的に関する記載(本件訂正明細書の5頁最下行?6頁1行、6頁11?12行、6頁15?16行)によれば、本件特許発明1ないし8の本質は、アレンドロネートを経口投与する骨粗鬆症の治療又は予防において、胃腸に対する悪影響の生起又は可能性(副作用)を最小限にする用法用量の薬剤およびキットの提供にあると認められる。
すなわち、本件訂正明細書(2頁14行?5頁4行)には、発明の背景として、アレンドロネートをはじめとするビスホスホネート類は破骨細胞による骨吸収の選択的な阻害剤であり、それによりこれらの化合物は異常な骨吸収によって生起するか又は異常な骨吸収を伴う全身性又は局在性の各種骨疾患、例えば骨粗鬆症やパジェット病等の治療又は予防における重要な治療剤であることがよく知られていること、治療上の問題点として連続した毎日投与ではビスホスホネート類の胃腸に対する悪影響があり、患者の負担が大きいこと、周期的な処置と休止期間を利用した療法では、連続的、規則的でないという欠点があることなどが多くの文献を参照して記載され、本件発明の目的がこの問題の解決手段の提供であることが明記されている。
このように、本件発明は、本件特許の優先日当時、ビスホスホネート類の経口投与による骨粗鬆症の治療・予防への適用が医療の現場で実際に行われ、毎日の投与あるいは休止期間をおいた周期的投与で主作用が得られていたことを前提として出発しているのであるから、本件訂正明細書中に改めてアレンドロネートの主作用を確認した薬理データの記載を要するものではない。

そして、アレンドロネートの副作用の軽減については、実施例1に記載されたイヌモデルを用いたインビボ薬理試験で以下のように確認されている。
○グループ2において、0.20mg/mlアレンドロネートを含有する疑似胃酸を50ml(アレンドロネート約10mg)を毎日一回5日間投与した直後に観察すると、食道組織に上皮面の深部潰瘍化並びに粘膜下の顕著な炎症及び空胞化を引き起こすことが確認された。
○グループ3において、アレンドロネートの量を4倍に増やして約40mgを投与しても、投与後24時間経って観察すると、上皮面は正常に回復し粘膜下も炎症と空胞化が非常に少なくなっていた。
○グループ4において、同じく約40mgを投与し、投与7日後に観察すると、上皮面が正常に回復しただけでなく粘膜下の空胞化は完全に回復すると共に粘膜下の炎症も半数以上で回復していた。
○グループ5において、これを4回繰り返した場合、すなわち約40mgの投与量で毎週一回計4回投与したのち7日後に観察すると、さらに粘膜下の炎症についても全ての個体で正常に回復していた。
この結果は、アレンドロネートの投与量を4倍に増やしても、投与後時間が経過するほど食道組織の回復は進行し、週一回の投与サイクルを採用した場合には約40mgの投与量であれば完全に正常に回復するという事実を示している。
確かに本件訂正明細書には、40mgより多い投与量での実験は行われていない。しかし、イヌモデル実験において、毎日投与量の4倍量を週一回投与した場合に副作用の問題が生じなかったのであるから、本件優先日当時にヒトの毎日投与量として周知の5mg?20mg(甲第3号証の記載(3a)(3b)(後述)、及び乙第1?3、11号証を参照)を、その4倍の20mg?80mg程度に増加させ週一回の投与サイクルとすれば、該投与サイクルを遵守する限り食道組織の経時的回復は同様に期待できることは当業者にとって十分に理解できることである。また上記投与量が約35?約70mgであっても同じことが言えるのは明らかである。

本件特許発明における副作用抑制効果の達成は、設定された投与量の範囲内の薬剤を週1回の投与間隔を有する連続スケジュールで経口投与した場合に副作用のリスクが小さいことが具体的に理解できれば、それで十分に確認できたと言えるのであり、そもそも「約35?約70mg」は週一回投与量の目安として示された範囲であって、「約35mg」や「約70mg」という数値そのものに境界値としての臨界的意義が特に必要とされないことは、上述した本件特許発明の本質からみて明らかである。

したがって、上記ア?ウを根拠として本件特許発明1ないし8は未完成であるとすることはできない。

(2)理由2(法第36条第6項第1号)、

請求人は、実施例2の「治療として約70mg、予防として約35mg」の記載、及び実施例1の40mgのみにおけるインビボ薬理試験の結果だけでは、本件特許発明の「約35?約70mg」という数値範囲全体にまで拡張又は一般化できないことを理由として、訂正前の請求項1及び6に係る発明(本件特許発明1及び5に対応)は発明の詳細な説明に記載したものでないと主張している。

しかしながら、上記6.(1)で述べたとおり、アレンドロネートを経口投与したときの副作用の抑制が、イヌモデルを用いたインビボ薬理試験で具体的に裏付けられているのであるから、当業者であればヒトの場合は20mg?80mg週一回の投与サイクルで同様に副作用抑制効果が期待されることは十分に理解できることである。さらに上記投与量範囲を約35?約70mgにしても同じことが言えるのは明らかである。

したがって、上記理由によって本件訂正明細書の特許請求の範囲の記載が法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。

(3)理由3(法第36条第4項)

請求人は、訂正前の請求項1及び6に係る発明(本件特許発明1及び5に対応)の「約35?約70mg」の数値限定について、明細書にその臨界的意義を含め当該数値範囲全体にわたって当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないことを主張する。

しかしながら、本件特許発明における副作用抑制効果の達成は、設定された経口投与量の範囲内にわたって薬剤を投与した場合に副作用のリスクが小さいことが具体的に理解できれば、それで十分に確認できたと言えるのであり、そもそも「約35?約70mg」は週一回投与量の目安として示された範囲であって、「約35mg」や「約70mg」という数値そのものに境界値としての臨界的意義が特に必要とされないことは、上記6.(1)で述べたとおりである。

したがって、上記理由によって本件訂正明細書の発明の詳細な説明の記載が法第36条第4項に規定する要件を満たさないとすることはできない。

(4)理由4(法第29条第2項)

(4-1)本件特許発明1について

(4-1-1)甲第1ないし3号証の記載事項

<甲第1号証>国際公開第95/30421号パンフレット

(1a)「プロテーゼのゆるみ及びプロテーゼの移動の防止又は治療のための医薬組成物であって、以下の;・・・4-アミノ-1-ヒドロキシブタン-1,1-ジホスホン酸・・・から選ばれたメタンビスホスホン酸誘導体、あるいは医薬として許容されるその塩、又はいずれかのその水和物を;医薬として許容される担体と共に含んで成る医薬組成物。」
(クレーム17)

(1b)「それ故、本発明は、ヒトを含む哺乳類におけるプロテーゼのゆるみ及びプロテーゼの移動の防止及び治療のための(医薬組成物の製造のため)メタンビスホスホン酸誘導体であって、以下の:・・・4-アミノ-1-ヒドロキシブタン-1,1-ジホスホン酸(アレンドロン酸)、例えば、アレンドロネート;・・・から選ばれるもの又は医薬として許容されるその塩、又はそのいずれかの水和物の使用に関する。」
(3頁14行?4頁2行)

(1c)「医薬組成物は・・・例えば経口・・・のための組成物・・・であることができる。」
(6頁10?13行)

(1d)「特定の投与方法及び投与量は、患者の特性、特に年齢、体重、ライフスタイル、活動レベル、ホルモン状態(例えば、閉経後)、骨鉱物密度及び移植されるべきプロテーゼのタイプを考慮して、担当内科医により選ばれるであろう。
活性成分の投与量は、さまざまな要因、例えば、その活性成分の効果及び作用、継続時間、投与方法、温血種、及び/又は性、年齢、体重及びその温血動物の個体の状態に依存することができる。
通常、その投与量は、0.002 ?3.40mg/kg、特に0.01?2.40mg/kgの単一投薬が、約75kgの体重の温血動物に投与されるようなものである。所望により、この投薬は、いくつかの、場合により等しい、部分的な投薬においてとられることもできる。
“mg/kg”は、処置されるべき-ヒトを含む-哺乳類の体重1kg当りの薬物のmg数を意味する。」
(6頁下から7行?7頁5行)

(1e)「上述の投薬は、-単一投薬(これが好ましい)として又はいくつかの部分投与において投与されるかのいずれにおいても-、例えば、毎日1回、1週間に1回、1月に1回、3ケ月に1回、6ケ月に1回又は1年に1回、において繰り返されることができる。換言すれば、本医薬組成物は、連続的な毎日の治療から断続的な周期的な治療までのレンジにある養生法において投与されることができる。」
(7頁6?10行)

(1f)「好ましくは、メタンビスホスホン酸誘導体は、メタンビスホスホン酸誘導体により伝統的に処置されてきた疾患、例えば、パジェット病、腫瘍誘発高カルシウム血症又は骨粗しょう症の治療において使用されるものと同じオーダーの大きさにある投薬で投与される。換言すれば、好ましくは、メタンビスホスホン酸誘導体は、同様にパジェット病、腫瘍誘発高カルシウム血症又は骨粗しょう症の治療において治療的に有効であろう投薬において投与され、すなわち、好ましくは、それらは、同様に骨吸収を有効に阻止するであろう投薬において投与される。」
(7頁11?18行)

<甲第2号証:1996年7月発行「LUNAR NEWS」>

(2a)ビスホスホネートは、骨粗鬆症を扱う研究者たちの興味の大きな焦点である・・・ビスホスホネートは、破骨細胞に直接働きかけることによって骨の再吸収を阻害するが、阻害は部分的に、骨芽細胞によって媒介されている可能性がある。先例のないマーケティングのおかげで、ビスホスホネートは、アメリカの骨粗鬆症市場において、エストロゲンの浸透の約30-40%を急速に達成した;売り上げはカルシトニンの2倍である。アレンドロネート(Merck製Fosamax)は現在、数カ国におけるビスホスホネートの中で首位にあり、より低コストのエチドロネート・・・に取って代わりつつある。
(23頁左欄1?16行)

(2b)アメリカ合衆国外の治療者たちも同様に、アレンドロネートの使用に傾いている・・・アメリカ合衆国の治療者の中には、(a)副作用、(b)服用の難しさ、(c)高コスト・・・を理由に、使用をためらう者もいる。第一に、MERCKは最近、治療者に、食道炎を警告する手紙を送った。ある治療者たちは、5ないし15%の患者が胃および/または食道の苦痛を経験すると報告しているが、しかし多くの治療者は副作用をまったく観察していない。潰瘍化や狭窄といった深刻な副作用はまれであることは明白である。第二に、ある患者たちはまた、服用の難しさのために、アレンドロネートの服用を中止する。アレンドロネートは、その生物学的利用能が限定されている(0.8%)ために、覚醒時、空腹状態で、コップ1杯の水(紅茶、コーヒー、ジュースは不可)とともに服用する必要があり、患者は30ないし60分間、直立していなければならない。1週間あるいは2週間だけでも、この様式に耐えられる高齢の女性は少ない。
(23頁左欄45行?中欄13行)

(2c)経口ビスホスホネートの難しさのために、時たまの(週1回)あるいは周期的な(毎月の内の1週間)の投与が好まれるだろう。(注:原文では The difficulties with oral bisphosphonates may favor their episodic(once/week), or cyclical(one week each month) administration. と記載されている。)経口アレンドロネートでも、服用の問題を避け、コストを下げるために、週1回40あるいは80mgの投与をできる可能性がある。
(23頁中欄36?43行)

<甲第3号証:1997年4月発行「LUNAR NEWS」>

(3a) この10年は、骨粗鬆症の治療におけるビスホスホネートの時代であった。・・・アレンドロネートの低量投与(1日あたり2ないし5mg)は、中軸のBMDの増加をもたらし、断続的なエチドロネート投与と同様だったが、標準的な投与量である1日あたり10mgでは、この増加の大きさは倍加した。例えば、1日あたり5mgのアレンドロネートを投与した場合、脊椎のBMDは2年間で5%、大腿骨頚部のBMDは2%、全身のBMDは1%増加した。1日あたり10あるいは20mgのアレンドロネートを投与した場合には、脊椎のBMDは2年間で6ないし7%、大腿骨頚部のBMDは2ないし4%増加した
(30頁左欄1?34行)

(3b) 組織学的な骨軟化や骨折は、高投与量のビスホスホネートによる治療を受けた患者に明白であった。今までに、断続的なエチドロネート、あるいは継続的なアレンドロネートによる治療(1日あたり20mgの高投与量であっても)のいずれについてもこの証拠はない。
(30頁右欄19?26行)

(3c)効力の強い経口ビスホスホネートの、相対的に高いコストと潜在的な副作用を引き下げるためのひとつの方法は、毎日ではなく、1週間に2回または3回しか投与しないことだろう。ブタにおいては、ビスホスホネートの投与は、標準の“1日分の投与”を4日ごとに行うか、あるいは20日のうち5日間に行うことにより、骨格の反応に対する有害な効果なしに投与量を減少させることができる。ヒトにおいては、アレンドロネートを1日あたり5mgと10mg投与した場合でほとんど違いがなく、従って理論的には、10mgの投与を1週間に3回、あるいは40mgの投与を1週間に1回行えばよいことになる。血清中の生化学的マーカーは、投与量を低く調整するのに用い得るだろう。3ヶ月間、1週あたり3回投与した後、代謝が低く維持される場合には、投与量は1週あたり2回に減らすことができるだろう。投与量についてのこれらの新しい臨床的な方法は、少なくとも短期的な試験により検証される必要がある。
(31頁左欄33?55行)

(4-1-2)対比・判断

甲第3号証には、骨粗鬆症治療薬として使用されるアレンドロネートの標準的投与量は1日あたり10mg(低投与量は2?5mg、高投与量は20mg)であることが記載され(記載(3a)(3b))、また経口ビスホスホネートによる治療の副作用に関連しアレンドロネートの一日あたり5mg、10mgの投与量に言及していることからみて(記載(3c))、上記標準的投与量は経口投与量と解される。また同号証には骨粗鬆症の治療対象としてヒトやブタが記載されている(記載(3c))。つまり甲第3号証には、アレンドロネートを10mg含み、毎日経口投与に用いるための、哺乳動物における骨粗鬆症を治療する薬剤組成物が記載されているといえる。
本件特許発明1と甲第3号証に記載された発明を対比すると、両者は、アレンドロネートを含み、経口投与に用いるための、哺乳動物における骨粗鬆症を治療する薬剤組成物である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
アレンドロネートの投与量及び投与間隔に関し、前者がアレンドロン酸活性体基準で約35?約70mgを、週一回の投与間隔を有する連続スケジュールに従って投与するのに対し、後者が10mgを毎日投与する点。

<相違点の検討>(投与量及び投与間隔の点)

甲第3号証には、アレンドロネートの経口投与によるヒトの骨粗鬆症の治療において、相対的に高いコストと潜在的な副作用を引き下げるために、毎日でなく、40mgの投与を週一回行えばよいことが記載され、投与量についてのこの新しい臨床的な方法は、少なくとも短期的な試験により検証される必要があることが記載されている(記載(3c))。
また甲第2号証においても、ヒトの骨粗鬆症を治療する目的でアレンドロネートを経口投与するに際し、服用の問題を避け、コストを下げるために、週一回40mg又は80mgの投与をできる可能性があることが記載されている(記載(2a)(2b)(2c))。
そうすると、本件優先日当時にアレンドロネート10mgを毎日経口投与する骨粗鬆症治療薬について、服用の問題を避け、コストを下げるために、毎日10mgの投与に代えて、週一回40mg又は80mgの投与を採用することは、当業者が上記甲第2及び3号証の記載に基づき容易に試みることである。
ところで、アレンドロネートの経口投与に関し、甲第2号証に記載された週一回40mg又は80mgの投与は、従来公知の毎日10mg投与を改良した投与形式であると解され(記載(2a)(2b)(2c))、また甲第3号証に記載された週一回40mgの投与も、毎日5mg又は10mgの投与を改良した投与形式として記載されている(記載(3c))。してみると、甲第2及び3号証に記載されたアレンドロネートの週一回の経口投与とは、投与を毎日繰り返す従来の投与形式を前提とし、その延長線上に位置するものである以上、所望の治療効果が達成されるまで週一回の投与を繰り返すもの、すなわち週一回の連続スケジュールに従って投与するもの(本件訂正明細書9頁6?8行)を意味することは当然である。
また、医薬の投与量は患者や症状に応じてある程度増減させるのが普通であるから、上記40mg又は80mgという投与量を約35mg又は約70mgとする程度のことは、当業者が適宜設定可能な範囲内の事項であり、塩の形態をとる薬剤の有効成分の量を遊離の酸の重量に換算して特定すること(酸活性体基準で投与量を定めること)も通常よく行われることであり、格別のことではない。

したがって、本件特許発明1は、甲第2及び3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、被請求人は、甲第2号証の「episodic」との用語(記載(2c))は、ウェブスターの英英辞典(乙第10号証)によれば、「事象が、通常不規則な間隔で、起こり、現れ、又は変化すること」を意味し、この意味とその用語に続く「(once/week)」とで示す意味が全く不明であり、少なくとも本件特許発明の連続スケジュールに従う週一回の経口投与を意味するものではないと主張する。
しかしながら、甲第2号証では「episodic(once/week), or cyclical(one week each month) administration」の「episodic」「cyclical」という抽象的な用語の意味を括弧内の「once/week」「one week each month」で説明したものと解されるから、何ら不明確なところはない。また、甲第2号証に記載されたアレンドロネートの週一回40mg又は80mgの経口投与とは、従来の毎日投与を繰り返す投与形式を改良したものである以上、週一回の連続スケジュールに従って投与するものを意味することも上述のとおりである。したがって、被請求人の上記主張は採用できない。

また、被請求人は、甲第2及び3号証(LUNAR NEWS)は医薬・医療分野で有名な3種のデータベースによっても検索できず、同刊行物が頒布されていた事実を確認できないことを主張する。
しかしながら、検索データベースには世界中のあらゆる刊行物が漏れなく収載されるわけではないから、検索の結果で頒布の事実が直ちに否定されるものではない。
かえって、甲第2及び3号証の1頁右欄の囲み枠内の目次の下方には、いずれにも、LUNAR NEWSは年に3回発行され、購読料は無料であり、購読に関する情報を得るために Lunar Corporation に問合せができる旨、及び、Lunar Corporation が著作権を有する旨が記載されている。したがって、LUNAR NEWSは Lunar Corporation が発行する定期刊行物であって希望者に対して無料で頒布される刊行物であると認められる。また、甲第2及び3号証の頒布時期は、甲第2号証の1頁に「July 1996」の表示が、甲第3号証の1頁に「April 1997」の表示があることからみて、少なくとも本件特許の優先日より前であることは明白である。そしてこれらのことは、請求人が提出した甲第5号証(及び平成18年2月2日付け上申書)に係る、LUNAR NEWSの著者兼編集者であるリチャード・ブルーズ・マゼス博士の宣誓供述書の内容とも整合する。したがって、被請求人の上記主張も採用できない。

(4-2)本件特許発明2について

甲第1号証には、アレンドロネートを経口投与する、哺乳動物における骨粗鬆症の治療に用いる医薬組成物において、アレンドロネートの塩の水和物を用いてよいことが記載されているから(記載(1a)(1b)(1c)(1f))、甲第3号証に記載された経口投与用骨粗鬆症治療薬の有効成分であるアレンドロネートについて、アレンドロネート一ナトリウム三水和物という形態を選択することは、当業者が適宜なし得ることである。
したがって、本件特許発明2は、甲第1ないし3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4-3)本件特許発明3、4について

甲第2及び3号証に記載された40mg、80mgの投与量をそれぞれ約35mg、約70mgに調節することは、上記(4-1)で検討したとおり当業者が適宜なし得ることである。
したがって、本件特許発明3、4は、甲第1ないし3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4-4)本件特許発明5について

(4-4-1)甲第4号証の記載事項

<甲第4号証>米国特許第5366965号明細書

(4a)本発明は、骨粗鬆症の治療または防止法に関する。さらに特に、本発明は、特定の骨吸収抑制ポリホスホネート化合物の間欠投与のための明確な治療法に関する。本発明は、該治療法に従った治療のために患者が使用すべきキットにも関する。
(1欄4?10行)

(4b) 骨粗鬆症の治療は、典型的には長時間、時には長期の治療を必要とし、患者のコンプライアンス(服薬状況)が大きな問題である。骨粗鬆症を発症した患者には、有効で、投与が容易で、および/または、投与回数が少なく、胃腸障害(例、経口投与時、クロドロネートおよびパミドロネートなどのビスホスホネートによって引き起こされる)などの副作用を回避する、または、最小限に抑える新規治療法が大いに有益であると思われる。前記患者には、より多様な形態で投与できる新規治療法も有益であると思われる。
(2欄34?44行)

(4c)本発明は、前記の新規治療法を提供する。本発明は、本発明人が実施した実験に基づいており、この実験は驚くべき結果を示した。その実験では、各種卵巣摘出ラット群に、生理食塩水溶媒中、指示量(遊離酸として計算)の1-ヒドロキシ-3-(N-メチル-N-ペンチルアミノ)-プロパン-1,1-ジホスホン酸ナトリウム塩(BM 21,0955)を以下のとおりに投与した:
(1)1μg/kgのBM 21,0955を1日1回18週間投与
(2)3μg/kgのBM 21,0955を1日1回14日間投与に続いて、4週間の休薬期間を設けた後、3μg/kgのBM 21,0955を1日1回さらに14日間投与した後、さらに4週間の休薬期間を設け、次に、3μg/kgのBM 21,0955を1日1回さらに14日間投与し、その後、さらに4週間の休薬期間を設けた。
(3)14日間の治療期間中、BM 21,0955を6μg/kgの用量で1日おきのみに投与した点を除いて、(2)と同一の治療。
(4)14日間の治療期間中、初日に21μg/kgを投与し、8日目に別に21μg/kgを投与した点を除いて、(2)と同一の治療。
(3)および(4)で間欠投与を用いているにもかかわらず、各ラット群で、卵巣摘出によって誘発された骨損失は完全に防止された。
(2欄48行?3欄7行)

(4d)本発明に従った使用に適したビスホスホネートの好ましい具体例は、以下の化合物を含む・・・4-アミノ-1,1-ヒドロキシブタン-1,1-ジホスホン酸 (アレンドロネート)
(4欄31?37行)

(4e)「本明細書で使用する場合の「休薬期間」とは、患者が骨吸収抑制ポリホスホネートを投与されず、患者が骨細胞活性化量の骨細胞活性化化合物を受けておらず、あるいは、患者が新規骨再形成単位の有意な活性化や抑制をきたす他の条件下にない期間を意味する。しかし、これは、該休薬期間中、患者に化学物質を投与してはならない、と言っているわけではない。カルシウム、ビタミンD(骨細胞活性化量の骨細胞活性化ビタミンD代謝物と区別する)、鉄、ナイアシン、ビタミンCおよび他のビタミンまたはミネラルサプリメント(BRUに有意な影響を与えない)のような栄養補給を休薬期間中に与えることができ、有益である。例えばカルシトニンおよび副腎皮質ステロイドなどのBRUに有意な影響を与えない特定の薬剤は、休薬期間中投与できない。特に、休薬期間中、毎日のサプリメントが投与されていない場合、本発明の治療法に従って、間欠期間および/または休薬期間中にプラセボー(砂糖丸薬シュガーピル)を投与し、補助することもできる。」
(5欄44?65行)

(4f)本発明に記載の方法は、あらゆる種類の哺乳類、特にヒトの治療に適用できる。
(6欄22?24行)

(4g)本発明は、さらに、本発明に記載の治療法を簡便、有効に実施するためのキットに関する。前記キットは、好ましくは、上記のとおり、本発明に記載の治療法において、製剤(dosage)の正しい投与を簡便化する多数の単位製剤を含む。例えば、各7日間の間欠期間3回から成る抑制期間をそれぞれ含む周期から成る治療法では、製剤を3組に分け、各抑制期間中の3回の間欠期間のそれぞれに1組を用い、その製剤を投与しなければならない日を各製剤のそばに表示するのが適切であると思われる。別法として、もしくは、追加的に、ポリホスホネートを投与しない日数と等しい多数のプラセボー製剤・・・を含むのが適切であると思われる。
(6欄25?43行)

(4h)本発明に記載の新規治療スケジュールによれば、投薬期間中は、患者に投薬しなければならないのは、例えば1週間に1回だけである。これは、患者のコンプライアンスを高めることができる(骨粗鬆症の治療は、長期治療であるのが典型的である)。ビスホスホネートは、特に高齢患者では、(食事と共に摂取すると、吸収が非常に低いので)少なくとも食後2時間後と食前1時間前に服用しなければならないので、毎日の正しい摂取が困難である。例えば1週間に1回だけの正しい薬剤摂取に集中することの方が容易である。さらに、ビスホスホネートは、腸不快を引き起こす可能性がある。これらの問題をできるかぎり少なくするのが重要である。
(10欄58行?11欄2行)

(4i)骨粗鬆症の治療を必要とする患者への胃腸障害の発生を最小限に抑えながら行なう骨粗鬆症の治療法であって、前記方法が、前記患者への有効量の骨吸収抑制ポリホスホネート化合物または生理学的に受容可能なその塩またはエステルの投与を含み、前記ポリホスホネート化合物を、少なくとも2回の周期を含むスケジュールに従って投与し、前記周期のそれぞれが、
(a)前記ポリホスホネートを前記患者に間欠的に投与する約4?約90日の抑制期間で、前記抑制期間が、2日?約14日から成る少なくとも2回の間欠的周期の薬剤投与期間に分けられており、前記薬剤を各間欠的周期の薬剤投与期間の1日だけに投与する抑制期間と、その後の
(b)約20日?約120日の休薬期間を含む周期である
ことを特徴とする骨粗鬆症の治療法。
(クレーム1)

(4-4-2)対比・判断

甲第4号証には、骨粗鬆症の治療を必要とする患者への胃腸障害の発生を最小限に抑えながら行なう骨粗鬆症の治療法であって、前記治療法が、前記患者へ有効量の骨吸収抑制ポリホスホネート化合物を、少なくとも2回の周期を含むスケジュールに従って投与するものであり、前記周期のそれぞれが、(a)前記ポリホスホネートを前記患者に間欠的に投与する約4?約90日の抑制期間で、前記抑制期間が、2日?約14日からなる少なくとも2回の間欠的周期の薬剤投与期間に分けられており、前記薬剤を各間欠的周期の薬剤投与期間の1日だけに投与する抑制期間と、その後の(b)約20日?約120日の休薬期間を含む周期である、骨粗鬆症の治療法が記載され(記載(4i))、前記胃腸障害はビスホスホネートの経口投与によって引き起こされる副作用であり(記載(4b))、前記治療法は、あらゆる種類の哺乳類、特にヒトの治療に適用できるものであり(記載(4f))、該治療法に従った治療のために患者が使用すべきキットについても言及され(記載(4a))、該キットは多数の単位製剤を含むものである(記載(4g))。

してみると、甲第4号証には、「哺乳動物における骨粗鬆症の治療法に使用するためのキットであって、前記治療法は、胃腸障害の副作用を最小限に抑えながらビスホスホネートを少なくとも2回の周期を含むスケジュールに従って経口投与するものであり、前記周期のそれぞれが、(a)ビスホスホネートを間欠的に投与する約4?約90日の抑制期間と、その後の(b)約20日?約120日の休薬期間とを含み、前記抑制期間が、2日?約14日からなる少なくとも2回の間欠的周期の薬剤投与期間に分けられ、前記薬剤投与期間における1日だけにビスホスホネートが投与され、前記キットは多数の単位製剤を含む、キット」の発明が記載されているといえる。

そこで本件特許発明5と甲第4号証に記載されたキットの発明とを対比すると、後者の各単位製剤は当然に所定の単位用量が決められているものであるから、両者は、「哺乳動物における骨粗鬆症を治療するためのキットであって、所定のスケジュールに従う経口投与により使用するビスホスホネートの単位用量を少なくとも1回分収容する、キット」である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>

<相違点1>
本件特許発明5がビスホスホネートとしてアレンドロネートを使用するのに対し、甲第4号証に記載された発明がこのように限定していない点。

<相違点2>
ビスホスホネートの投与スケジュール及び単位用量に関し、本件特許発明5が週一回の投与間隔を有する連続スケジュールに従って投与するという指示を含み、単位用量が酸活性体基準で約35?約70mgであるのに対し、甲第4号証に記載された発明が、2日?約14日からなる少なくとも2回の間欠的周期の薬剤投与期間に分けられる約4?約90日の抑制期間(a)と、その後の約20日?約120日の休薬期間(b)とを含む周期を少なくとも2回繰り返すスケジュールに従って投与し、単位用量が具体的に記載されていない点。

<相違点の検討>
上記相違点について以下に検討する。

<相違点1の検討>(アレンドロネート)
甲第4号証には、ビスホスホネートの好ましい具体例としてアレンドロネートが挙げられ(記載(4d))、甲第1号証にも骨粗鬆症治療薬におけるメタンビスホスホン酸誘導体の例としてアレンドロネートが記載されている(記載(1a)(1b)(1f))。また本件特許の優先日当時、骨粗鬆症治療用のビスホスホネートとしてアレンドロネートが広く臨床使用されていたことは周知である(甲第2?3号証及び乙第1?3、11号証参照)。
したがって、甲第4号証に記載された骨粗鬆症治療用キットで経口投与するビスホスホネートとして、アレンドロネートは当業者がまず選択するものであり、これを使用することに特段の困難性は存在しない。

<相違点2の検討>(投与スケジュール及び単位用量)
甲第4号証には、薬剤投与期間中は治療スケジュールとしてビスホスホネートの週一回の経口投与を採用することにより、特に高齢の患者を正しい薬剤摂取に集中させ、患者のコンプライアンスを高めることができること(記載(4h))、つまり週一回投与とする積極的利点が示されていることから、同号証に記載された間欠的周期の薬剤投与期間の2日?約14日という投与間隔として7日を選択すること、すなわち週一回の投与間隔を採用することは当業者が容易に行い得ることである。
ところで、甲第4号証には、同号証記載の発明の基礎となる実験として、アレンドロネートと同じくビスホスホネートの一種であるBM 21,0955を、卵巣を摘出して骨損失を起こりやすくさせたラット群に対して様々な投与量・投与間隔で投与する治療を行ったことが記載されており、該ラット群の中には、(2)3μg/kgのBM 21,0955を毎日14日間投与する治療を行ったラットと、(4)14日間の治療期間中、初日に21μg/kgを投与し、8日目に21μg/kgを投与した点を除くほか(2)と同一の治療を行ったラットとが含まれ、いずれのラットでも骨損失は完全に防止されたことが記載されている(記載(4c))。すなわち、後者の週一回投与のラットは、前者の毎日投与のラットに比して、1回当たりの投与量が7倍に設定されている。
そうすると、ビスホスホネートの投与による骨粗鬆症の治療において、毎日投与を週一回投与に変更したときに同程度の治療効果を得ようとすれば、当業者は1回当たりの投与量を7倍に増やすことが甲第4号証には示唆されているということができる。
そして、本件優先日当時、アレンドロネートを毎日経口投与して骨粗鬆症を治療する場合の有効且つ安全な単位用量は、5?20mg程度であることは周知(甲第3号証の記載(3a)(3b)、及び乙第1?3、11号証を参照)であるから、甲第4号証に記載のキットにおいて週一回の経口投与間隔で使用するアレンドロネートの単位用量を具体的に設定するにあたっては、上記5?20mgという毎日投与量を、7倍に増やして設定することは、当業者がごく自然に行うことである。また甲第4号証では塩の形態のBM 21,0955の指示量を遊離酸として計算していることからみて(記載(4c))、アレンドロネートにおいても当業者は同様にその用量を遊離酸すなわちアレンドロン酸活性体基準で定めるものと認められる。
また、連続スケジュールに従って投与すること、すなわち所望の治療効果が達成されるまで投与を繰り返すこと(本件訂正明細書9頁6?8行)については、甲第1号証に週一回の投与を繰り返すことが記載されている(記載(1e))だけでなく、一般に、ビスホスホネートを経口投与する骨粗鬆症の治療において、休薬期間を置く「間欠的」又は「周期的」投与法を採用しなければならないのは、エチドロネートのように骨吸収の抑制作用のみならず骨石灰化の抑制作用も大きい薬剤の場合に限られ、アレンドロネートの場合には骨石灰化の抑制作用が相対的に小さく連続投与が可能であったこと(Gibbs,C.J.,Aaron,J.E.;Peacock,M., Br.Med.J.292,pp.1227-1229(1986)、1990年11月販売開始の大日本住友製薬製ダイドロネル錠(エチドロネート)の添付文書、E. Siris et al., J. Clin. Endocrinol. Metab., 81,961-967 (1996)、及び甲第3号証の記載(3b)を参照)を考慮すれば、アレンドロネートを選択した際には、当業者は休薬期間(記載(4e)(4i))を設けず、連続スケジュールに従った投与を行うのがむしろ普通であると認められる。
さらに、甲第4号証に記載のキットにも投与日に関する指示が含まれていることにみられるように(記載(4g))、投与に関する指示を含ませることはキットにおいて普通のことである。
したがって、甲第4号証に記載されたキットの発明において、週一回の投与間隔を有する連続スケジュールに従う投与により使用すべき旨の指示を付加するとともに、単位用量をアレンドロン酸活性体基準で例えば約35?約70mgと設定することは、当業者が甲第1及び4号証に記載された事項に基づいて容易になし得ることである。

(4-5)本件特許発明6について

甲第1号証には、アレンドロネートを経口投与する、哺乳動物における骨粗鬆症の治療に用いる医薬組成物において、アレンドロネートの塩の水和物を用いてよいことが記載されているから(記載(1a)(1b)(1c)(1f))、甲第4号証に記載されたキットで用いるアレンドロネートについて、アレンドロネート一ナトリウム三水和物という形態を選択することは、当業者が適宜なし得ることである。
したがって、本件特許発明6は、甲第1及び4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4-6)本件特許発明7、8について

甲第4号証に記載されたキットの発明において、週一回の経口投与に用いるアレンドロネートの単位用量を約35mg又は約70mgと設定することは、上記(4-4)に記載した理由により当業者が容易になし得ることである。
したがって、本件特許発明7,8は、甲第1及び4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.むすび

以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし4は甲第1ないし3号証に記載された発明に基づいて、本件特許発明5ないし8は甲第1及び4号証に記載された発明に基づいて、いずれも当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、本件請求項1?8に係る発明の特許は、法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

審判に関する費用については、法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定を適用して、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
骨吸収を抑制する方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】アレンドロネート、薬剤として許容できるその塩およびこれらの混合物より成る群の中から選択されるビスホスホネートを、アレンドロン酸活性体基準で約35?約70mg含み、週一回の投与間隔を有する連続スケジュールに従う経口投与に用いるための、哺乳動物における骨粗鬆症を治療または予防する薬剤組成物。
【請求項2】前記薬剤として許容できるその塩が、アレンドロネート一ナトリウム三水和物である、請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項3】前記ビスホスホネートを、アレンドロン酸活性体基準で約35mg含む、請求項1または2記載の薬剤組成物。
【請求項4】前記ビスホスホネートを、アレンドロン酸活性体基準で約70mg含む、請求項1または2記載の薬剤組成物。
【請求項5】哺乳動物における骨粗鬆症を治療または予防するためのキットであって、週一回の投与間隔を有する連続スケジュールに従う経口投与により使用すべき旨の指示を含み、単位用量としてアレンドロネート、薬剤として許容できるその塩およびこれらの混合物より成る群の中から選択されるビスホスホネートをアレンドロン酸活性体基準で約35?約70mg含み、かかる単位用量を少なくとも1回分収容する、キット。
【請求項6】前記薬剤として許容できるその塩が、アレンドロネート一ナトリウム三水和物である、請求項5記載のキット。
【請求項7】前記単位用量が、アレンドロン酸活性体基準で約35mgである、請求項5または6記載のキット。
【請求項8】前記単位用量が、アレンドロン酸活性体基準で約70mgである、請求項5または6記載のキット。
【発明の詳細な説明】
関連出願の相互参照
本発明は、1998年4月15日に出願された米国特許出願第09/060,419号ならびに1997年7月23日に出願された米国特許仮出願第60/053,535号および1997年7月22日に出願された同第60/053,351号に関連しており、これら出願の内容は引用により本明細書に含まれているものとする。
発明の分野
本発明は、胃腸に対する悪影響の生起または可能性を最小限に抑えながら、哺乳動物の骨吸収を抑制する経口方法に係る。これらの方法は、毎週一回の投与、毎週二回の投与、隔週一回の投与および毎月二回の投与より成る群の中から選択される投与間隔を有する連続スケジュールに従う単位用量により、薬剤上有効量のビスホスホネートを必要とする哺乳動物に経口投与することからなる。また本発明は、これらの方法を実施するのに有用な薬剤組成物およびキットにも係る。
発明の背景
ヒトその他の哺乳動物におけるさまざまな疾患・障害は、異常な骨吸収を含んでいるか、または伴っている。そのような疾患としては、限定されるわけではないが、骨粗鬆症、パジェット病、前立腺周囲骨損失(periprosthetic bone loss)または骨溶解、および悪性の高カルシュウム血症がある。これらの疾患のうち最も一般的なものは骨粗鬆症であり、これは閉経後の女性に最もよく見られる。骨粗鬆症は、骨組織の骨質量が低く、微細構造が崩壊して、骨の脆化および骨折の危険性の増大を特徴とする全身性の骨の病気である。骨粗鬆症およびその他の骨の損失を伴う病気は慢性の症状であるので、適当な療法は一般に長期の治療を要すると考えられる。
破骨細胞といわれる多核細胞は、骨吸収として知られている過程を通して骨の損失を起こす。ビスホスホネート類が破骨細胞による骨吸収の選択的な阻害剤であり、それによりこれらの化合物が異常な骨吸収によって生起するかまたは異常な骨吸収を伴う全身性または局在性の各種骨疾患の治療または予防における重要な治療剤であることはよく知られている。H.Fleisch,Biophosphonates In Bone Disease,From The Laboratory To The Patient,2nd Edition,Parthenon Publishing(1995)参照。この文献は引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする。
現在、強力なビスホスホネート化合物であるアレンドロネート(alendronate)に関する前臨床データおよび臨床データはたくさんある。リセドロネート(risedronate)、チルドロネート(tiludronate)、イバンドロネート(ibandronate)およびゾレンドロネート(zolendronate)のような他のビスホスホネート類が、破骨細胞による骨吸収の阻害剤としての高い効果を含めてアレンドロネートと共通するたくさんの特性をもっていることを示す証拠がある。もっと古いビスホスホネート化合物であるエチドロネート(etidronate)も骨吸収を阻害する。しかし、エチドロネートは、上記のより強力なビスホスホネート類とは違って、臨床的に使用される用量で無機化を損ない、骨の無機化(石灰化)の望ましくない低下に至る症状である骨軟化症を生起し得る。Boyce,B.F.,Fogelman,I.,Ralston,S.et al.(1984)Lancetl(8381),pp821-824(1984)およびGibbs,C.J.,Aaron,J.E.;Peacock,M.(1986)Br.Med.J.292,pp.1227-1229(1986)参照。これらの文献はいずれも引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする。
ビスホスホネート類はその治療上の有益性にもかかわらず、胃腸管からの吸収が悪い。B.J.Gertz et al,Clinical Pharmacology of Alendronate Sodium,Osteoporosis Int.Suppl.3:Sl3-16(1993)およびB.J.Gertz et al,Studies of the oral bioavailability of alendronate,Clinical Pharmacology & Therapeutics,vol.58,number 3,pp288-298(September 1995)参照。これらの文献は引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする。この生体利用性の問題を克服するために静脈内投与が用いられている。しかし、静脈内投与は、特に患者が数時間もかかる静脈内注入を繰り返し受けなければならない場合には、費用がかかり、しかも不便である。
ビスホスホネートの経口投与が望まれる場合には、胃腸管からの生体利用性の低さを補うために比較的高い用量を投与しなければならない。この生体利用性の低さを補うために、患者が胃を空にしてビスホスホネートを摂取し、その後少なくとも30分は絶食することが一般に推奨されている。しかし、多くの患者はそのような絶食を毎日しなければならないことを不便と感じる。さらに、経口投与は、胃腸に対する悪影響、特に食道に対する悪影響を伴っている。Fleisch前掲参照。これらの影響は、逆流する胃酸の存在によって悪化する、食道内におけるビスホスホネートの刺激性に関連していると思われる。たとえば、ビスホスホネートのパミドロネート(pamidronate)は食道潰瘍を伴う。E.G.Lufkin et al,Pamidronate:An Unrecognized Problem in Gastrointestinal Tolerability,Osteoporosis International,4:320-322(1994)参照。この文献は引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする。必ずではないが、アレンドロネートの使用には食道炎および/または食道潰瘍が伴う。P.C.De Groen,et al,Esophagitis Associated with The Use Of Alendronate,New England Journal of Medicine,vol.335,no.124,pp.1016-1021(1996)、D.O.Castell,Pill Esophagitis-The Case of Alendronate,New England Journal of Medicine,vol.335,no.124,pp1058-1059(1996)およびU.A.Liberman et al,Esophagitis and Alendronate,New England Journal of Medicine,vol.335,no.124,pp1069-1070(1996)参照。これらの文献は引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする。ビスホスホネート類の胃腸に対する悪影響の程度は、用量を増すと増大することが示されている。C.H.Chestnut et al,“Alendronate Treatment of the Postmenopausal Osteoporotic Woman:Effect of Multiple Dosages on Bone Mass and Bone Remodeling,The American Journal of Medicine,vol 99,pp.144-152,(August 1995)参照。この文献は引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする。また、食道に対するこれらの悪影響は、適量の液体と共にビスホスホネートを摂得しない息者、または投与後まもなく横になり、そのため食道逆流の機会が増大する患者ではより重大であるようである。
現在のビスホスホネートの経口療法は、一般に2つのカテゴリー、すなわち、(1)連続した毎日の処置を利用する療法、および(2)周期的な処置と休止期間を利用する療法に分けられる。
連続して毎日処置する療法は、通常、処置期間を通して所望の積算治療用量が送達されるように、ビスホスホネート化合物を比較的低用量で長期にわたり投与するものである。しかし、連続した毎日の投与には、胃腸管に対する連続して繰り返して追加される刺激のために、胃腸に対する悪影響を引き起こすという不利な可能性がある。また、ビスホスホネート類はからの胃に摂取した後、少なくとも30分絶食すると共に縦姿勢を維持しなければならないため、多くの患者は毎日の投与を負担に思う。したがって、これらの要因により患者の協力が得られ難く、ひどい場合には処置を中止する必要さえある。
エチドロネートなどのいくつかのビスホスホネート類は、数日を超えて毎日投与すると、骨の無機化の低下、すなわち骨軟化を現実に引き起こす欠点があるため、周期的な処置療法が開発された。1988年8月2日に発行されたフローラ(Flora)らの米国特許第4,761,406号(引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする)には、抗-吸収治療効果を提供しながらも骨無機化の低下を最小限に抑える目的で開発された周期療法が記載されている。一般に、周期療法は、連続処置療法とは違って間欠的であることを特徴とし、ビスホスホネートを投与する処置期間と非処置期間との両方を設けて、ビスホスホネートの全身レベルを基底量に戻すことができる。しかし、周期療法は、連続投与と比べて、抗-吸収治療効果が低いようである。リセドロネートについてのデータによると、周期投与は実際に抗-骨吸収効果を大きくする効果が毎日連続投与より小さいことが示唆されている。L.Mortensen et al,Prevention Of Early Postmenopausal Bone Loss By Risedronate,Journal of Bone and Mineral Research,vol.10,supp.1,p.s140(1995)参照。この文献は引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする。さらに、これらの周期療法は、通常毎日投与の期間を何回も用いるので、胃腸に対する悪影響を排除または最小化しない。また、周期療法は投与が面倒であり、患者の協力が得られ難いという欠点があり、したがって治療効果が限られている。1994年11月22日に発行されたストレイン(Strein)の米国特許第5,366,965号(引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする)では、骨吸収阻害期間と非処置休止期間との両方を有する間欠的投与スケジュールに従い経口、皮下または静脈内にポリホスホネート化合物を投与することによって、胃腸に対する悪影響の問題に対処しようとしている。しかし、この療法は連続的・規則的でないという欠点をもっており、20?120日という非処置期間を必要とする。1995年11月16日に公開されたグッドシップ(Goodship)らの国際公開第95/30421号(引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする)には、いろいろなビスホスホネート化合物を用いて、補てつ緩み(prosthetic loosening)およびずれ(migration)を防止する方法が開示されている。ビスホスホネートの用量の一部を毎週一回投与することが開示されている。しかし、この文献は特に、胃腸に対する悪影響に対処していないし、より高いまたは多回の用量の投与を開示していない。
これらの教示から分かるように、毎日の処置と周期的な処置のいずれの療法も欠点があり、これらの欠点を克服する投与法の開発が望まれている。
本発明において、毎日または周期的な投与療法に伴い得る胃腸に対する悪影響が、週一回の投与、週二回の投与、隔週の投与および月二回の投与より成る群の中から選択された投与間隔を有する連続スケジュールに従い比較的高い単位用量でビスホスホネートを投与することによって、最低限に抑えることができるということが判明した。言い換えると、ビスホスホネートを高い相対用量で低い相対投与頻度で投与すると、高い相対投与頻度で低い相対用量を投与する場合と比べて、胃腸、特に食道に対する悪影響が低くなることが判明した。この結果は、胃腸に対する悪影響がビスホスホネートの用量増大に伴って増大するだろうことを示唆する教示に鑑みると、驚くべきことである。本発明のこのような投与法は、上部胃腸障害(upper gastrointestinal disorder)、たとえば胃腸逆流疾患(gastrointestinal reflux disease)(すなわち「GERD」)、食道炎、消化不良(すなわち胸焼け)、潰瘍、その他の関連疾患に罹患しているか、または罹り得るとされた息者の治療に特に有益であろう。このような患者の場合、従来のビスホスホネート治療では、上記の上部胃腸障害を悪化させたり誘発したりする可能性がある。
患者のライフスタイルの観点から見ても、本発明の方法は毎日または周期的投与療法により便利であろう。患者は、からの胃に薬を飲み込み、その投与の後少なくとも30分間食べないでいるという不自由をこうむる頻度が低くなる。また、患者は複雑な投与規則に留意する必要がなくなる。本発明の方法は患者の協力が得られ易いという利点があり、その結果治療効果が上がることになる。
本発明のひとつの目的は、骨吸収およびそれに関連する状態を抑制する方法を提供することである。
本発明のもうひとつの目的は、異常な骨吸収およびそれに関連する状態を治療する方法を提供することである。
本発明の別の目的は、異常な骨吸収およびそれに関連する状態を予防する方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、経口方法である方法を提供することである。
また本発明の別の目的は、ヒトにおける上記のような方法を提供することである。
本発明の別の目的は、上部胃腸障害、たとえば胃腸逆流疾患(すなわち「GERD」)、食道炎、消化不良(すなわち胸焼け)、潰瘍、その他の関連疾患に罹患しているか、または罹り得るとされた患者における上記のような方法を提供することである。
さらに本発明の別の目的は、胃腸に対する悪影響の生起または可能性を最小限にする上記のような方法を提供することである。
本発明の別の目的は、週一回の投与、週二回の投与、二週に一回の投与および月に二回の投与より成る群の中から選択される投与間隔を有する連続投与スケジュールからなる、上記のような方法を提供することである。
本発明の別の目的は、約3日毎ないし約16日毎に一回の範囲の投与周期を有する連続投与スケジュールからなる、上記のような方法を提供することである。
また本発明の別の目的は、所望の治療効果が達成されるまで連続投与スケジュールを維持する上記のような方法を提供することである。
本発明のもうひとつ別の目的は、骨粗鬆症の哺乳動物、好ましくは骨粗鬆症のヒトにおいて異常な骨吸収を治療または予防することである。
本発明のさらに別の目的は、本発明の方法に有用な薬剤組成物およびキットを提供することである。
これらの目的およびその他の目的は以下の詳細な説明から容易に明らかとなるであろう。
発明の概要
本発明は、胃腸に対する悪影響の生起または可能性を最小限に抑えながら、処置を必要とする哺乳動物の骨吸収を抑制する方法に係り、この方法は、週一回の投与、週二回の投与、二週に一回の投与および月二回の投与より成る群の中から選択される投与間隔を有する連続スケジュールに従う単位容量により、薬剤上有効量のビスホスホネートを前記哺乳動物に経口投与することからなり、前記哺乳動物に対して所望の治療効果が達成されるまで前記連続スケジュールを維持する。
他の態様において、本発明は、約3日毎ないし約16日毎に一回の範囲の投与周期を有する連続投与スケジュールからなる方法に係る。
他の態様において、本発明は、異常な骨吸収の治療が必要な哺乳動物を治療する方法に係る。
他の態様において、本発明は、異常な骨吸収の予防が必要な哺乳動物を予防する方法に係る。
他の態様において、本発明は、ヒトに有用な上記のような方法に係る。
他の態様において、本発明は、上部胃腸障害に罹患しているか、または罹り得るとされたヒトに有用な上記のような方法に係る。
他の態様において、本発明は、哺乳動物において骨粗鬆症を治療または予防する方法に係る。
他の態様において、本発明は、ヒトにおいて骨粗鬆症を治療または予防する方法に係る。
他の態様において、本発明は、ヒトにおいて骨吸収を抑制するかまたは異常な骨吸収を治療もしくは予防する方法であって、アレンドロネート、薬剤として許容可能なその塩およびこれらの混合物より成る群の中から選択されるビスホスホネートを、アレンドロン酸(alendronic acid)活性成分を基準として約8.75?約140mg、前記ヒトに投与することからなる方法に係る。
他の態様において、本発明は、アレンドロネート、薬剤として許容可能なその塩およびこれらの混合物より成る群の中から選択されるビスホスホネートを、アレンドロン酸活性成分を基準として約8.75?約140mg含む薬剤組成物に係る。
本明細書においてパーセントおよび比率は、特に断らない限りすべて重量基準である。本発明は、本明細書に記載した必須のものに加えて任意の成分、要素ならびに方法を含み得、それらで構成され得、または本質的にそれらで構成され得る。
図面の簡単な説明.
図1は、5日間連続して疑似胃酸50mLの5つの別々の用量を投与し、最後の注入直後に屠殺した動物から得た、イヌ食道組織(パラフィン包埋、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色)の顕微鏡写真(合計倍率270倍)である。
図2は、5日問連続して疑似胃酸中0.20mg/mLアレンドロネート50mLを5つの別々の用量として投与し最後の注入直後に屠殺した動物から得た、イヌ食道組織(パラフィン包埋、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色)の顕微鏡写真(合計倍率270倍)である。
図3は、疑似胃酸中0.80mg/mLアレンドロネート50mLを一回用量の注入後24時間で屠殺した動物から得たイヌ食道組織(パラフィン包埋、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色)の顕微鏡写真(合計倍率270倍)である。
図4は、疑似胃酸中の0.80mg/mLアレンドロネート50mLの一回用量として注入後7日で屠殺した動物から得た、イヌ食道組織(パラフィン包埋、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色)の顕微鏡写真(合計倍率270倍)である。
図5は、毎週一回、すなわち7日毎に投与した疑似胃酸中0.80mg/mLアレンドロネート50mLを4つの別々の用量として投与し、最後の注入後7日で屠殺した動物から得たイヌ食道組織(パラフィン包埋、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色)の顕微鏡写真(合計倍率270倍)である。
図6は、毎週二回、すなわち3?4日毎に疑似胃酸中0.40mg/mLアレンドロネート50mLを8つの別々の用量として投与し、最後の注入後4日で屠殺した動物から得た、イヌ食道組織(パラフィン包埋、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色)の顕微鏡写真(合計倍率270倍)である。
図7は、5日間連続して疑似胃酸中の0.20mg/mLリセドロネート50mLを5つの別々の用量として投与し、最後の注入直後に屠殺した動物から得た、イヌ食道組織(パラフィン包埋、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色)の顕微鏡写真(合計倍率270倍)である。
図8は、5日間連続して疑似胃酸中の4.0mg/mLチルドロネート50mLを5つの別々の用量として投与し、最後の注入直後に屠殺した動物から得た、イヌ食道組織(パラフィン包埋、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色)の顕微鏡写真(合計倍率270倍)である。
発明の説明
本発明は、胃腸に対する悪影響の発生または可能性を最小限に抑えつつ、骨吸収の抑制を必要とする哺乳動物において骨吸収を抑制する方法、好ましくは経口法に係る。本発明は、異常な骨吸収の治療または予防を必要とする哺乳動物において異常な骨吸収を治療または予防する方法に係る。本発明の方法は、薬剤として有効な量のビスホスホネートを単位用量として哺乳動物に経口投与することからなり、前記用量は週一回の投与、週二回の投与、二週に一回の投与および月に二回の投与より成る群の中から選択される投与間隔を有する連続スケジュールに従って投与する。他の態様において、本発明は、約3日毎?約16日毎に一回の範囲の投与周期を有する連続投与スケジュールからなる方法に係る。適常、この連続投与スケジュールは、哺乳動物に対して所望の治療効果が達成されるまで維持する。
本発明は各投与時点で従来一般に付与されていたよりも高い単位用量のビスホスホネートを使用するが、選択した投与スケジュールのために、胃腸に対する悪影響が最小限に抑えられる。さらにまた、この方法は、毎日投与の際の欠点が最小に抑えられるのでより便利である。
本発明の方法では、一般に、ビスホスホネート療法を必要とする哺乳動物に投与する。好ましくは哺乳動物がヒトの患者であり、特に異常な骨吸収の治療または予防が必要とされる患者のような、骨吸収の抑制が必要なヒトの患者である。
本発明の投与方法は、上部胃腸障害、たとえばGERD、食道炎、消化不良、潰瘍などに罹患しているか、または罹り得るとされたヒトの患者にビスホスホネート療法を施す際に特に有用である。そのような患者では、従来のビスホスホネトート療法はそれらの上部胃腸障害を悪化させるかまたは誘発する可能性があった。
本明細書で使用する「薬剤上(薬剤として)有効な量」という用語は、所望の治療計画に従って投与したときに、所望の治療効果または応答を引き出すビスホスホネート化合物の量を意味する。ビスホスホネートの好ましい薬剤上有効な量は骨吸収を抑制する量である。
本明細書で使用する「胃腸に対する悪影響の生起(発生)または可能性を最小限に抑える」という用語は、胃腸管、すなわち食道、胃、腸および直腸、特に上部胃腸管、すなわち食道および胃における望ましくない副作用の発生またはそのような副作用を来たす可能性を低減、防止、低下または頻度減することを意味する。胃腸に対する悪影響の非限定例としては、GERD、食道炎、消化不良、潰瘍、食道過敏(esophageal irritation)、食道穿孔(esophageal perforation)、腹痛および便秘があるが、これらに限られることはない。
本明細書で使用する「異常な骨吸収」という用語は、局所的に、または骨格全体で、骨形成の程度を超える程度の骨吸収を意味する。あるいは、「異常な骨吸収」は異常な構造を有する骨の形成と関連し得る。
本明細書で使用する「骨吸収を抑制する」という用語は、破骨細胞の形成または活性を直接または間接に変化させることによって、骨吸収を処置・治療または予防することを意味する。骨吸収の抑制とは、骨の損失の治療または予防をいい、特に、破骨細胞の形成または活性を直接または間接に変化させることによって、無機質相および/または有機マトリックス相からの現存する骨の除去(喪失)を抑制することをいう。
本明細書で使用する「連続スケジュール」または「連続投与スケジュール」という用語は、投与計画を、所望の治療効果が達成されるまで繰り返すことを意味する。連続スケジュールまたは連続投与スケジュールは周期的または間欠的投与とは区別される。
本明細書で使用する「所望の治療効果が達成されるまで」という用語は、疾患または症状に対して目的とする臨床または医療効果が臨床医または研究者によって観察される時まで、選択した投与スケジュールに従ってビスホスホネート化合物を連続的に投与することを意味する。本発明の治療法の場合、骨質量または構造に所望の変化が観察されるまでビスホスホネート化合物を連続的に投与する。このような場合、骨質量の増大、または異常な骨構造がより正常な骨構造に代わることが所望の目的である。本発明の予防法の場合、ビスホスホネート化合物は、所望の状態を予防する必要がある限り連続的に投与する。このような場合、骨質量密度の維持が目的であることが多い。投与期間の非限定例は約2週間から哺乳動物の残存寿命までにわたり得る。ヒトの場合、投与期間は約2週間からそのヒトの残存寿命まで、好ましくは約2週間から約20年まで、より好ましくは約1か月から約20年まで、さらに好ましくは約6か月から約10年まで、最も好ましくは約1年から約10年までにわたり得る。
本発明の方法
本発明は哺乳動物において骨吸収を抑制する方法を含む。本発明はまた哺乳動物において異常な骨吸収を治療することも含む。さらに本発明は哺乳動物において異常な骨吸収を予防する方法も含む。本発明の好ましい態様において哺乳動物はヒトである。
本発明の方法は、現在の治療法に伴う、胃腸に対する悪影響の可能性を引き起こし得るか増大させ得、または面倒な、不規則な、もしくは複雑な投与計画を必要とする欠点をもたない。
本発明は連続投与スケジュールを含み、それにより、週一回の投与、週二回の投与、二週に一回の投与および月に二回の投与より成る群の中から選択される投与間隔に従って、単位用量のビスホスホネートを規則的に投与する。
週一回の投与とは、単位用量のビスホスホネートを週に一回、すなわち7日の期間のうちに1回、好ましくは各週の同じ日に投与することを意味する。週一回の投与計画の場合、通常は約7日毎に単位用量を投与する。週一回の投与計画の非限定例は毎週日曜日に単位用量のビスホスホネートを投与するものである。連続した日に単位用量を投与するのは好ましくないが、週一回の投与計画には異なる2週の期間に入る連続した2日に単位用量を投与する投与計画が包含され得る。
週二回の投与とは、単位用量のビスホスホネートを一週間に二回、すなわち7日の期間のうちにニ回、好ましくは各週の期間の同じ2つの曜日に投与することを意味する。過二回の投与計画の場合、通常は約3?4日毎に各単位用量を投与する。週二回の投与計画の非限定例は、日曜日と水曜日毎に単位用量のビスホスホネートを投与するものである。同じ日または連続した日には単位用量を投与しないのが好ましいが、週二回の投与計画には1週問の期間内または異なる週の期間内の連続した2日に単位用量を投与する投与計画も包含され得る。
二週に(隔週)一回の投与とは、単位用量のビスホスホネートを2週間の期間中、すなわち14日の期間中に1回、好ましくは各2週間の期間の同じ曜日に投与することを意味する。この二週に一回の投与計画の場合、通常は各単位用量を約14日毎に投与する。二週に一回の投与計画の非限定例は、単位用量のビスホスホネートを隔週の日曜日毎に投与するものである。連続した日には単位用量を投与しないのが好ましいが、二週に一回の投与計画には異なる2週の期間内の連続した2日に単位用量を投与する投与計画も包含され得る。
月二回の投与とは、単位用量のビスホスホネートを暦月の期間中に二回、すなわち2つの時に投与することを意味する。月二回の投与計画の場合、投与は各月の同じ2つの時点で行なうのが好ましい。月二回の投与計画では通常各単位用量を約14?16日毎に投与する。月二回の投与計画の非限定例は、月の1日頃と15日頃、すなわちその月の中頃に投与するものである。同じ日または連続した日には単位用量を投与しないのが好ましいが、月に二回の投与計画には1月の期間内または異なる月の期間内の連続した2つの日に単位用量を投与する投与計画が包含され得る。月二回の投与計画は本明細書では二週に一回の投与計画とは区別され、包含しないものとして定義されている。というのは、これら2つの計画は周期が異なっており、したがって長期には異なる回数の投与になるからである。たとえぱ、1年間を通して見ると、月二回の投与計画では(1年は12か月であるから)合計で約24回の投与となるが、二週に一回の投与計画では(1年は約52週であるから)合計で約26回の投与となる。
本発明の別の態様または具体例では、単位用量を約3日毎から約16日毎の範囲の周期で投与する。
本発明の方法と組成物は、骨吸収を抑制し、異常な骨吸収およびそれに関連する状態を治療・予防するのに有用である。そのような状態としては全身性および局在性の骨の損失がある。また、異常な構造を有する骨の創製はパジェット病の場合と同様に異常な骨吸収を伴い得る。「全身性の骨の損失」という用語は、多数の骨格部位におけるまたは骨格系全体を通じた骨の損失を意味する。「局在性の骨の損失」という用語は、1つ以上の特定の決まった骨格部位における骨の損失を意味する。
全身性の骨の損失は、骨粗鬆症を伴うことが多い。骨粗鬆症は、エストロゲンの産生が大幅に低下した閉経後の女性に最も一般的である。しかし、骨粗鬆症はまた、ステロイドによっても誘発され得、加齢により男性にも観察されている。骨粗鬆症は疾患、たとえば慢性関節リウマチによって誘発され得、二次的な原因、たとえばグルココルチコイド療法によっても誘発され得、または同定できない原因でも起こり得る(すなわち特発性骨粗鬆症)。本発明において好ましい方法は、骨粗鬆症のヒトにおいて異常な骨吸収を治療または予防することを包含する。
局在性の骨の損失は歯周病、骨折、および前立腺周囲の骨溶解(換言すると、骨吸収が補てつ植込組織に近接して起こる場合)を伴う。
全身性または局在性の骨の損失は、寝たきりのヒトや車いすを使うヒトまたはギブスや牽引で手足を固定しているヒトの場合に問題となることが多い、動かさないでいることによって生じ得る。
本発明の方法と組成物は、以下の症状または疾患を治療または予防するのに有用である。骨粗鬆症(閉経後の骨粗鬆症、ステロイドによって誘発される骨粗鬆症、男性骨粗鬆症、病気によって誘発される骨粗鬆症、特発性骨粗鬆症を含み得る)、パジェット病、異常に増大した骨の代謝、歯周病、前立腺周囲骨溶解を伴う局在性骨損失、および骨折。
本発明の方法は、1995年11月16日に公開されたグッドシップ(Goodship)らの国際公開第95/30421号(引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする)に記載されている、補てつ緩みおよび補てつずれの治療および/または予防の方法は、特に除外するものである。
ビスホスホネート
本発明の方法と組成物はビスホスホネートを含む。本発明のビスホスホネートは次の化学式に対応する。

ここで、AとXは、それぞれ独立して、H、OH、ハロゲン、NH_(2)、SH、フェニル、C1-C30アルキル、C1-C30置換アルキル、C1-C10アルキルまたはジアルキル置換NH_(2)、C1-C10アルコキシ、C1-C10アルキルまたはフェニル置換チオ、Cl-C10アルキル置換フェニル、ピリジル、フラニル、ピロリジニル、イミダゾリルおよびベンジルより成る群の中から選択される。
上記化学式で、アルキル基は、化学式を満足する原子が選択される限り、直鎖でも分枝鎖でも環式でもよい。C1-C30置換アルキルは広範囲の置換基を含み得、置換基の非限定例としては、フェニル、ピリジル、フラニル、ピロリジニル、イミダゾニル、NH_(2)、C1-Cl0アルキルまたはジアルキル置換NH_(2)、OH、SHおよびC1?Cl0アルコキシより成る群の中から選択されるものがある。
上記の化学式で、AはXを含んでいることができ、またXはAを含んでいることができ、したがってこれら2つの部分が同じ環状構造の一部を形成することができる。
上記化学式はまた、Aおよび/またはX置換基として、複雑な炭素環式、芳香族およびヘテロ原子構造も含み、そのような置換基の非限定例としては、ナフチル、キノリル、イソキノリル、アダマンチルおよびクロロフェニルチオがある。
好ましい構造は、AがH、OHおよびハロゲンより成る群の中から選択され、XがCl-C30アルキル、C1-C30置換アルキル、ハロゲンおよびC1-C10アルキルまたはフェニル置換チオより成る群の中から選択されるものである。
より好ましい構造は、AがH、OHおよびClより成る群の中から選択され、XがC1-C30アルキル、C1-C30置換アルキル、Clおよびクロロフェニルチオより成る群の中から選択されるものである。
最も好ましいのは、AがOHで、Xが3-アミノプロピル残基であるものであり、したがって得られる化合物は4-アミノ-1-ヒドロキシブチリデン-1,l-ビスホスホネート、すなわちアレンドロネートである。
ビスホスホネート類の薬剤上許容可能な塩と誘導体も本発明で有用である。塩の非限定例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムならびにモノ-、ジ-、トリ-またはテトラ-C1-C30-アルキル置換アンモニウムより成る群の中から選択されるものがある。好ましい塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアンモニウム塩より成る群の中から選択されるものである。誘導体の非限定例としてはエステル、水和物およびアミドより成る群の中から選択されるものがある。
本明細書で使用する「薬剤上許容可能な」とは、ビスホスホネート類の塩および誘導体が、それらが得られた元の原料である遊離の酸形態と同じ一般的薬理学的特性を有しており、且つ毒性の観点から許容できることを意味する。
本発明の治療剤に関して本明細書で使用する「ビスホスホネート」及び「ビスホスホネート類」という用語は、ジホスホネート、ビホスホン酸およびジホスホン酸、ならびにこれら物質の塩および誘導体も包含して意味することに注意されたい。特に断らない限り、ビスホスホネートまたはビスホスホネート類に言及する際に特定の命名法を使用することは、本発明の範囲を限定する意味ではない。当業者が現在使用している命名法がいろいろあるために、本発明で特定の重量またはパーセントのビスホスホネート化合物に言及するときは、特に断らない限り酸活性体の重量基準である。たとえば、「アレンドロン酸活性体重量を基準にして約70mgのアレンドロネート、その薬剤上許容可能な塩およびこれらの混合物より成る群の中から選択された骨吸収抑制性のビスホスホネート」というときは、ビスホスホネート化合物の量が70mgのアレンドロン酸に基づいて計算されることを意味する。
本発明に有用なビスホスホネート類の非限定例を以下に挙げる。
アレンドロン酸、すなわち4-アミノ-1-ヒドロキシブチリデン-1,1-ビスホスホン酸。
アレンドロネート(アレンドロネートナトリウムまたは一ナトリウム三水和物ともいう)、すなわち4-アミノ-l-ヒドロキシブチリデン-1,l-ビスホスホン酸一ナトリウム三水和物。
アレンドロン酸とアレンドロネートは1990年5月1日に発行されたキークツィコウスキー(Kieczykowski)らの米国特許第4,922,007号および1991年5月28日に発行されたキークツィコウスキー(Kieczykowski)の米国特許第5,019,651号(いずれも引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする)に記載されている。
1990年11月13日に発行されたイソムラ(Isomura)らの米国特許第4,970,335号(引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする)に記載されている、シクロヘプチルアミノメチレンー1,l-ビスホスホン酸、YM175、山之内(シマドロネート(cimadronate))。
1,l-ジクロロメチレン-1,1-ジホスホン酸(クロドロン酸(clodronic acid))およびその二ナトリウム塩(クロドロネート(clodronate)、プロクター・アンド・ギャンブル(Procter and Gamble))は、ベルギー特許第672,205号(1966年)およびJ.Org.Chem.32,4111(1967)(いずれも引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする)に記載されている。
1-ヒドロキシ-3-(l-ピロリジニル)-プロピリデン-1,1-ビスホスホン酸(EB-1053)。
1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(エチドロン酸(etidronic acid))。
1-ヒドロキシ-3-(N-メチル-N-ペンチルアミノ)プロピリデン-1,1-ビスホスホン酸(BM-210955ともいう。ベーリンガー・マンハイム(Boehringer Mannheim)(イバンドロネート))は1990年5月22日に発行された米国特許第4,927,814号(引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする)に記載されている。
6-アミノ-l-ヒドロキシヘキシリデン-l,1-ビスホスホン酸(ネリドロネート(neridronate))。
3-(ジメチルアミノ)-1-ヒドロキシプロピリデン-1,1-ビスホスホン酸(オルパドロネート(Olpadronate))。
3-アミノ-1-ヒドロキシプロピリデン-1,l-ビスホスホン酸(パミドロネート(pamidronate))。
[2-(2-ピリジニル)エチリデン]-1,1-ビスホスホン酸(ピリドロネート(piridronate))は米国特許第4,761,406号(引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする)に記載されている。
1-ヒドロキシ-2-(3-ピリジニル)-エチリデン-1,1-ビスホスホン酸(リセドロネート(risedronate))。
1989年10月24日付のブレリール(Breliere)らの米国特許第4,876,248号(引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする)に記載されている、(4-クロロフェニル)チオメタン-1,1-ジホスホシ酸(チルドロネート(tiludronate))。
1-ヒドロキシ-2-(lH-イミダゾール-1-イル)エチリデン-1,1-ビスホスホン酸(ゾレンドロネート(zolendronate))。
アレンドロネート、シマドロネート、クロドロネート、チルドロネート、エチドロネート、イバンドロネート、リセドロネート、ピリドロネート、パミドロネート、ゾレンドロネート、これらの薬剤上許容できる塩およびこれらの混合物より成る群の中から選択されるビスホスホネート類が好ましい。
アレンドロネート、その薬剤上許容できる塩およびこれらの混合物がより好ましい。
最も好ましいのはアレンドロネート一ナトリウム三水和物である。
薬剤組成物
本発明に有用な組成物は、薬剤として有効な量のビスホスホネートを含む。ビスホスホネートは通常、経口投与により、すなわち錠剤、カプセル、エリキシル、シロップ、起泡性組成物、散剤などに関して適切に選択され通常の製薬慣習に合致した適切な製薬希釈剤、賦形剤または担体(本明細書では総じて「担体材料」という)と混和して投与される。たとえば、錠剤、カプセルまたは散剤の形態での経口投与の場合、活性成分を、経口用の薬剤上許容できる非毒性の不活性担体、たとえばラクトース、スターチ、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトール、クロスカルメロースナトリウム(croscarmellose sodium)などと組み合わせることができる。液体形態、たとえばエリキシルおよびシロップ、起泡性組成物で経口投与する場合、経口薬剤成分を、エタノール、グリセロール、水などのような経口用の薬剤上許容できる非毒性の不活性担体と組み合わせることができる。さらに、所望または必要であれば、適切なバインダー、滑剤、崩壊剤、緩衝剤、塗膜および着色剤も配合することができる。適したバインダーとしては、スターチ、ゼラチン、天然糖類、たとえばグルコース、無水ラクトース、自由流動性ラクトース、β-ラクトース、およびコーン甘味剤、天然および合成のガム、たとえばアカシアガム、グアーガム、トラガカントガムまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックス、などを挙げることができる。これらの投与形態で使用する滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどがある。アレンドロネート一ナトリウム三水和物の特に好ましい錠剤配合は、1994年10月25日に発行されたベチャード(Bechard)らの米国特許第5,358,941号(引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする)に記載されているものである。本発明の方法で使用する化合物はまた、標的化可能な薬剤担体としての可溶性ポリマーと組み合わせることもできる。そのようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドなどを挙げることができる。
ビスホスホネートの正確な用量は、投与スケジュール、選択した特定のビスホスホネートの経口有効性、哺乳動物またはヒトの年齢、体格、性別および状態、治療すべき障害の種類と重さ、その他の医療及び身体要因によって変化する。したがって、薬剤上正確な有効量は前もって特定することはできないが、保護者または臨床医によって容易に決定することができる。適当な量は動物モデルおよびヒトの臨床研究から、常法による実験によって決定することができる。一般に、骨吸収を抑制する効果を得るのに適当な量のビスホスホネートを選択する。すなわち、骨吸収を抑制する量のビスホスホネートを投与する。ヒトの場合、ビスホスホネートの有効な経口用量は、通常、体重1kg当たり約1.5?6000μg、好ましくは体重1kg当たり約10?約2000μgである。
アレンドロネート、薬剤として許容できるその塩または薬剤として許容できるその誘導体を含むヒト用の経口組成物の場合、単位用量は通常、アレンドロン酸活性体重量を基準にして約8.75?約140mgのアレンドロネート化合物を含む。
週一回の投与の場合、経口単位用量は、アレンドロン酸活性体重量を基準にして約17.5?約70mgのアレンドロネート化合物を含む。毎週経口投与するものの例としては、約35mgのアレンドロネート化合物を含む骨粗鬆症の予防に有用な単位用量、および約70mgのアレンドロネート化合物を含む骨粗鬆症の治療に有用な単位用量がある。
週二回投与の場合、経口単位用量は、アレンドロン酸活性体重量を基準にして約8.75?約35mgのアレンドロネート化合物を含む。毎週二回経口投与するものの例としては、約17.5mgのアレンドロネート化合物を含む骨粗鬆症の予防に有用な単位用量、および約35mgのアレンドロネート化合物を含む骨粗鬆症の治療に有用な単位用量がある。
隔週または毎月二回の投与の場合、経口単位用量は、アレンドロン酸活性体重量を基準にして約35?約140mgのアレンドロネート化合物を含む。隔週または月二回経口投与するものの例としては、約70mgのアレンドロネート化合物を含む骨粗鬆症の予防に有用な単位用量、および約140mgのアレンドロネート化合物を含む骨粗鬆症の治療に有用な単位用量がある。
アレンドロネートその他のビスホスホネート類を含む経口組成物の非限定例は、後記実施例に例示する。
ヒスタミンH2レセプター遮断剤および/またはプロトンポンプ阻害剤とビスホスホネート類の順次投与
別の態様において、本発明の方法と組成物は、ヒスタミンH2レセプター遮断剤(すなわちアンタゴニスト)および/またはプロトンポンプ阻害剤も含むことができる。ヒスタミンH2レセプター遮断剤とプロトンポンプ阻害剤は、胃酸のpHを増大するよく知られた治療剤である。L.J.Hixson,et al.,Current Trends in the Pharmacotherapy for Peptic Ulcer Disease,Arch.Intern.Med.,vol.152,pp726-732(April 1992)参照。この文献は引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする。本発明において、ヒスタミンH2レセプター遮断剤および/またはプロトンポンプ阻害剤の後にビスホスホネートを順次経口投与すると、胃腸に対する悪影響をさらに軽減するのに役立ち得ることが判明した。これらの態様において、ヒスタミンH2レセプター遮断剤および/またはプロトンポンプ阻害剤は、ビスホスホネートの投与前約30分?約24時間で投与する。より好ましい態様の場合、ビスホスホネートの投与の約30分?約12時間前に、ヒスタミンH2レセプター遮断剤および/またはプロトンポンプ阻害剤を投与する。
ヒスタミンH2レセプター遮断剤および/またはプロトンポンプ阻害剤の用量は、選択した個々の化合物および治療しようとする哺乳動物に関連する要因、すなわち体格、健康状態などに依存する。
ヒスタミンH2はレセプター遮断剤および/またはプロトンポンプ阻害剤の非限定例としては、シメチジン、ファモチジン、ニザチジン、ラニチジン、オンプラゾールおよびランソプラゾールがある。
治療キット
別の態様において、本発明は、本発明の方法を便利かつ有効に実施するためのキットに係る。このようなキットは、錠剤やカプセルのような固体の経口形態の送達に特に適している。このようなキットはいくつかの単位用量を含むのが好ましい。このようなキットは、その目的とする使用の順に配置された用量を有するカードを含み得る。このようなキットの一例は「ブリスターパック」である。ブリスターパックは包装産業でよく知られており、単位用量形態の薬剤を包装するのに広く用いられている。所望により、たとえば数、文字その他の目印の形態の記憶補助を備えることができ、または、その用量を投与することができる処置スケジュールの日を示す添付カレンダーを備えることができる。あるいは、ビスホスホネート用量と類似または異なった形態のプラセボ用量または補充としてのカルシウムもしくは食餌を含めて用量を毎日摂取するキットを提供することができる。ヒスタミンH2レセプターおよび/またはプロトンポンプ阻害剤を含む態様の場合、これらの薬剤はキットの一部として含ませることができる。
実施例
以下の実施例は、本発明の範囲内の具体例をさらに説明し例示するものである。
これらの実施例は、例示の目的でのみ挙げるものであり、本発明の思想と範囲から逸脱することなく多くの変更が可能であるから、本発明の限定と考えてはならない。
実施例1
食道刺激の可能性
ビスホスホネート類の食道刺激の可能性を、イヌモデルを用いて評価する。
これらの実験では、以下の投与の際の相対的刺激性を示す。プラセボ(グループ1)、低濃度のアレンドロネート一ナトリウム三水和物の単一投与(グループ2)、連続した5日間にわたる高濃度のアレンドロネート一ナトリウム三水和物の投与(グループ3および4)、週一回で4週間にわたって投与する高濃度のアレンドロネート一ナトリウム三水和物の投与(グループ5)、週二回で4週間にわたって投与する中濃度のアレンドロネート一ナトリウム三水和物の投与(グループ6)、連続した5日間にわたって投与する低用量のリセドロネート(グループ7)、および連続した5日間にわたって投与する低用量のチルドロネート二ナトリウム(グループ8)。
以下の溶液を調製する。
(1)疑似胃酸(pH約2)すなわち対照溶液。
(2)アレンドロン酸活性体基準で約0.20mg/mLのアレンドロネート一ナトリウム三水和物を含有する疑似胃酸(pH約2)。
(3)アレンドロン酸活性体基準で約0.80mg/mLのアレンドロネート一ナトリウム三水和物を含有する疑似胃酸(pH約2)。
(4)アレンドロン酸活性体基準で約0.40mg/mLのアレンドロネート一ナトリウム三水和物を含有する疑似胃酸(pH約2)。
(5)リセドロン酸活性体基準で約0.20mg/mLのリセドロネートナトリウムを含有する疑似胃酸(pH約2)。
(6)チルドロン酸活性体基準で約4.0mg/mLのチルドロネート二ナトリウムを含有する疑似胃酸(pH約2)。
疑似胃酸を調製するには、約960mgのペプシン(L一585,228000B003、Fisher Chemical)を約147mLの0.90(重量%)のNaCl(水溶液)に溶解し、約3mLの1.0MのHCl(水溶液)を加え、脱イオン水で容積を約300mLに調節する。得られる溶液のpHを測定し、必要であれば1.0MのHCl(水溶液)または1.0MのNaOH(水溶液)を用いて約2に調節する。
実験に用いた動物は、麻酔し、注入ポンブとゴムカテーテルを用いて食道に注入することによって、約30分にわたり適当な溶液約50mLを投与する。以下の処置実験を行なう。
グループ1:この対照グループは4匹の動物を含んでいる。連続した5日間の各々の日に、疑似胃酸[溶液(1)]を約50mLの用量で各動物に投与する。最後の投与の直後に動物を屠殺する。
グループ2:このグループは4匹の動物を含んでいる。連続した5日間の各々の日に、約0.20mg/mLのアレンドロネートを含有する疑似胃酸[溶液(2)]を約50mLの用量で各動物に投与する。最後の投与の直後に動物を屠殺する。
グループ3:このグループは5匹の動物を含んでいる。単一の処置日に、約0.80mg/mLのアレンドロネートを含有する疑似胃酸[溶液(3)]を約50mLの用量で各動物に投与する。投与の約24時間後に動物を屠殺する。
グループ4:このグループは5匹の動物を含んでいる。単一の処置日に、約0.80mg/mLのアレンドロネートを含有する疑似胃酸[溶液(3)]を約50mLの用量で各動物に投与する。投与の約7日後に動物を屠殺する。
グループ5:このグループは6匹の動物を含んでいる。毎週一回、すなわち7日目毎に4週間にわたって、約0.80mg/mLのアレンドロネートを含有する疑似胃酸[溶液(3)]を約50mLの用量で各動物に投与する。合計で4回分の用量を動物に投与する。最後の投与の約7日後に動物を屠殺する。
グループ6:このグループは6匹の動物を含んでいる。毎週二回、すなわち3?4日目毎に4週間にわたって、約0.40mg/mLのアレンドロネートを含有する疑似胃酸[溶液(4)]を約50mLの用量で各動物に投与する。合計で8回分の用量を動物に投与する。最後の投与の約4日後に動物を屠殺する。
グループ7:このグループは8匹の動物を含んでいる。連続した5日間の各々の日に、約0.20mg/mLのリセドロネートを含有する疑似胃酸[溶液(5)]を約50mLの用量で各動物に投与する。最後の投与の直後に動物を屠殺する。
グループ8:このグループは4匹の動物を含んでいる。連続した5日間の各々の日に、約4.0mg/mLのチルドロネートを含有する疑似胃酸[溶液(6)]を約50mLの用量で各動物に投与する。最後の投与の直後に動物を屠殺する。
屠殺した各動物から食道を摘出し、標準的な技術を用いて組織をパラフィンに包埋し、ヘマトキシリンとエオシンで染色することによって組織病理試料を調製する。切片を顕微鏡で検査する。組織病理学的結果を表1にまとめた。
グループ1の動物(対照グループ)の場合、顕微鏡写真は、食道が正常であり、上皮が完全であり、粘膜下組織に炎症細胞がないことを示している。図1は、グループ1の動物で得られた代表的な顕微鏡写真である。
グループ2の動物の場合、顕微鏡写真は、食道が上皮表面の深部潰瘍化および顕著な粘膜下炎症および空胞化を示している。図2は、グループ2の動物で得られた代表的な顕微鏡写真である。
グループ3の動物の場合、顕微鏡写真は、食道が正常な上皮面をもち、粘膜下炎症および空胞化が非常に少ないことを示している。図3は、グループ3の動物で得られた代表的な顕微鏡写真である。
グループ4の動物の場合、顕微鏡写真は、食道が正常な上皮をもち、炎症が最小である(5匹のうち2匹の動物)かまたは炎症がない(5匹のうち3匹の動物)であり、空胞化がないことを示している。図4は、最小の炎症を示すグループ4の動物で得られた代表的な顕微鏡写真である。
グループ5の動物の場合、顕微鏡写真は、食道が正常であり、上皮が正常で、粘膜下に炎症細胞がないことを示している。図5は、グルーブ5の動物で得られた代表的な顕微鏡写真である。
グループ6の動物の場合、顕微鏡写真は、食道が上皮表面の深部潰蕩化および顕著な粘膜下炎症および空胞化を示すことを示している。図6は、グルーブ6の動物で得られた代表的な顕微鏡写真である。
グループ7の動物の場合、顕微鏡写真は、食道が上皮表面の深部潰瘍化および顕著な粘膜下炎症および空胞化を示すことを示している。図7は、グループ7の動物で得られた代表的な顕微鏡写真である。
グループ8の動物の場合、顕微鏡写真は、食道が上皮表面の潰瘍化が少なく、粘膜下炎症と空胞化が少ないことを示している。図8は、グループ8の動物で得られた代表的な顕微鏡写真である。
これらの実験は、連続した日に低濃度の用量を投与した場合(グループ2)に対して、高濃度のアレンドロネートを一回投与した場合(グループ3および4)には(対照グループ1に匹敵する)かなり低い食道刺激が観察されることを実証している。またこれらの実験は、連続した日に低濃度の用量を投与した場合(グループ2)に対して、高濃度のアレンドロネートを毎週一回投与した場合(グループ5)または毎週二回投与した場合(グループ6)にはかなり低い食道刺激が観察されることを実証している。さらにこれらの実験は、リセドロネート(グループ7)やチルドロネート(グループ8)のような他のビスホスホネート類を連続した日に低用量で投与したときに食道刺激の可能性が高いことも実証している。

実施例2
週一回の投与
骨粗鬆症の治療
アレンドロン酸活性体基準で約70mgのアレンドロネートを含有するアレンドロネート錠剤または液体製剤を調製する(実施例7および8参照)。この錠剤または液体製剤を少なくとも1年にわたり、週一回(すなわち、好ましくは約7日毎に一回、たとえば日曜日毎)ヒト患者に経口投与する。この投与方法は、骨粗鬆症の治療に、そして胃腸に対する悪影響、特に食道に対する悪影響を最小化するのに有用で便利である。この方法はまた患者の受容性と協力を改善するのにも有用である。
骨粗鬆症の予防
アレンドロン酸活性体基準で約35mgのアレンドロネートを含有するアレンドロネート錠剤または液体製剤を調製する(実施例7および8参照)。この錠剤または液体製剤を少なくとも1年にわたり、週一回(すなわち、好ましくは約7日毎に一回、たとえば日曜日毎)ヒト患者に経口投与する。この投与方法は、骨粗鬆症の予防に、そして胃腸に対する悪影響、特に食道に対する悪影響を最小化するのに有用で便利である。この方法はまた患者の受容性と協力を改善するのにも有用である。
実施例3
週二回の投与
骨粗鬆症の治療
アレンドロン酸活性体基準で約35mgのアレンドロネートを含有するアレンドロネート錠剤または液体製剤を調製する(実施例7および8参照)。この錠剤または液体製剤を少なくとも1年にわたり、週二回、好ましくは約3?4日毎に一回(たとえば日曜日と水曜日毎に)ヒト患者に経口投与する。この投与方法は、骨粗鬆症の治療に、そして胃腸に対する悪影響、特に食道に対する悪影響を最小化するのに有用で便利である。この方法はまた患者の受容性と協力を改善するのにも有用である。
骨粗鬆症の予防
アレンドロン酸活性体基準で約17.5mgのアレンドロネートを含有するアレンドロネート錠剤または液体製剤を調製する(実施例7および8参照)。この錠剤または液体製剤を少なくとも1年にわたり、週二回、好ましくは約3?4日毎に一回(たとえば日曜日と水曜日毎に)ヒト患者に経口投与する。この投与方法は、骨粗鬆症の予防に、そして胃腸に対する悪影響、特に食道に対する悪影響を最小化するのに有用で便利である。この方法はまた患者の受容性と協力を改善するのにも有用である。
実施例4
隔週の投与骨粗鬆症の治療
アレンドロン酸活性体基準で約140mgのアレンドロネートを含有するアレンドロネート錠剤または液体製剤を調製する(実施例7および8参照)。この錠剤または液体製剤を少なくとも1年にわたり、隔週(すなわち、好ましくは約14日毎に一回、たとえば隔週の日曜日毎)ヒト患者に経口投与する。この投与方法は、骨粗鬆症の治療に、そして胃腸に対する悪影響、特に食道に対する悪影響を最小化するのに有用で便利である。この方法はまた患者の受容性と協力を改善するのにも有用である。
骨粗鬆症の予防
アレンドロン酸活性体基準で約70mgのアレンドロネートを含有するアレンドロネート錠剤または液体製剤を調製する(実施例7および8参照)。この錠剤または液体製剤を少なくとも1年にわたり、隔週(すなわち、好ましくは約14日毎に一回、たとえば隔週の日曜日毎)ヒト患者に経口投与する。この投与方法は、骨粗鬆症の予防に、そして胃腸に対する悪影響、特に食道に対する悪影響を最小化するのに有用で便利である。この方法はまた患者の受容性と協力を改善するのにも有用である。
実施例5
月二回の投与
骨粗鬆症の治療
アレンドロン酸活性体基準で約140mgのアレンドロネートを含有するアレンドロネート錠剤または液体製剤を調製する(実施例7および8参照)。この錠剤または液体製剤を少なくとも1年にわたり、月二回(すなわち、好ましくは約14?16日毎に一回、たとえば各月の1日頃と15日頃)ヒトに経口投与する。この投与方法は、骨粗鬆症の治療に、そして胃腸に対する悪影響、特に食道に対する悪影響を最小化するのに有用で便利である。この方法はまた患者の受容性と協力を改善するのにも有用である。
骨粗鬆症の予防
アレンドロン酸活性体基準で約70mgのアレンドロネートを含有するアレンドロネート錠剤または液体製剤を調製する(実施例7および8参照)。この錠剤、または液体製剤を少なくとも1年にわたり、月二回(すなわち、好ましくは14?16日毎に一回、たとえば各月の1日頃と15日頃)ヒト患者に経口投与する。この投与方法は、骨粗鬆症の予防に、そして胃腸に対する悪影響、特に食道に対する悪影響を最小化するのに有用で便利である。この方法はまた患者の受容性と協力を改善するのにも有用である。
実施例6
別の態様として、異常な骨吸収を伴う他の疾患の治療または予防のために、実施例2?5の投与スケジュールに従ってアレンドロネート錠剤または液体製剤を所望の用量で経口投与する。
さらに別の態様として、骨粗鬆症の治療もしくは予防、または異常な骨吸収を伴う他の症状の治療もしくは予防のために、実施例2?5の投与スケジュールに従って他のビスホスホネート化合物を所望の用量で経口投与する。
実施例7
ビスホスホネート錠剤
1994年10月25日に発行されたベチャード(Bechard)らの米国特許第5,358,941号(引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする)に記載されているような標準的な混合・成形技術を用いて、ビスホスホネート含有錠剤を調製する。
次の相対重量の成分を用いて、アレンドロン酸活性体基準で約35mgアレンドロネートを含有する錠剤を調製する。

得られる錠剤は、骨吸収を抑制する本発明の方法に従って投与するのに有用である。
同様に、アレンドロン酸活性体基準で他の相対重量、たとえば1錠当たり約8.75mg、17.5mg、70mgおよび140mgのアレンドロネートを含む錠剤を調製する。また、適当な活性体レベルで他のビスホスホネート類、たとえばシマドロネート、クロドロネート、チルドロネート、エチドロネート、イバンドロネート、リセドロネート、ピリドロネート、パミドロネート、ゾレンドロネートおよびこれらの薬剤として許容される塩を含有する錠剤を同様に調製する。さらにビスホスホネート類を組み合わせて含有する錠剤を同様に調製する。
実施例8
液体ビスホスホネート製剤
標準的な混合技術を用いて液体ビスホスホネート製剤を調製する。
次の相対重量の成分を用いて、液体約75mLあたり、アレンドロン酸活性体基準で約70mgのアレンドロネート一ナトリウム三水和物を含有する液体製剤を調製する。

得られる液体製剤は、骨吸収を抑制する本発明の方法に従って単位用量として投与するのに有用である。
同様に、単位用量に付きアレンドロン酸活性体基準で他の相対重量、たとえば容積75mL当たり約8.75mg、17.5mg、35mgおよび140mgのアレンドロネートを含む液体製剤を調製する。また、他の容量、たとえば約135mLの単位用量を提供するために液体製剤を調製する。また、適当な活性体レベルで他のビスホスホネート類、たとえばシマドロネート、クロドロネート、チルドロネート、エチドロネート、イバンドロネート、リセドロネート、ピリドロネート、パミドロネート、ゾレンドロネートおよびこれらの薬剤として許容される塩を含有する液体製剤を同様に調製する。さらにビスホスホネート類を組み合わせて含有する液体製剤を同様に調製する。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-03-28 
結審通知日 2006-03-31 
審決日 2006-04-13 
出願番号 特願平11-509914
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (A61K)
P 1 113・ 14- ZA (A61K)
P 1 113・ 536- ZA (A61K)
P 1 113・ 537- ZA (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 浩  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 横尾 俊一
中野 孝一
登録日 2003-10-10 
登録番号 特許第3479780号(P3479780)
発明の名称 骨吸収を抑制する方法  
代理人 横山 勲  
代理人 東海 裕作  
代理人 林 康司  
代理人 片山 英二  
代理人 横山 勲  
代理人 田村 恭子  
代理人 中馬 典嗣  
代理人 中村 至  
代理人 小林 純子  
代理人 長沢 幸男  
代理人 竹沢 荘一  
代理人 小林 純子  
代理人 中村 至  
代理人 東海 裕作  
代理人 田村 恭子  
代理人 長沢 幸男  
代理人 片山 英二  
代理人 林 康司  

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