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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  E06B
審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  E06B
管理番号 1195705
審判番号 無効2007-800162  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-08-08 
確定日 2009-03-26 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3944001号「シャッター」の特許無効審判事件についてされた平成20年 2月29日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成20年(行ケ)第10133号 平成20年8月29日決定)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
1.本件特許第3944001号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、平成14年6月13日(特願2002-172305号)に出願され、平成19年4月13日に特許権の設定の登録(発明の名称:シャッター、請求項の数:2)がなされるとともに同年7月11日に本件特許掲載公報が発行された。

2.平成19年8月8日に請求人であるYKK AP株式会社より本件特許無効審判の請求がなされ、同年10月30日付けで被請求人であるトステム株式会社より答弁書及び訂正請求書が提出され、平成20年2月8日付けで「訂正を認める。 特許第3944001号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決(以下、「第1次審決という。」)がなされた。

3.これに対し、被請求人は、知的財産高等裁判所に平成20年4月10日付けで上記第1次審決の取消を求める訴え(平成20年(行ケ)第10133号)を提起するとともに、同年7月4日に本件特許についての訂正審判〔訂正2008-390075〕を請求した。

4.そこで、知的財産高等裁判所は、「当裁判所は、当事者の意見を聴いた上、本件特許を無効にすることについて特許無効審判においてさらに審理させることが相当であると認め、事件を審判官に差し戻すため、特許法第181条第2項により、審決を取り消す」ことを内容とする決定が、同年8月29日付けでなされ、確定した。

5.特許法第134条の3第5項の規定により、上記訂正審判の審判請求書に添付した訂正明細書、図面を援用した、みなされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)が、平成20年9月22日になされた。(本件訂正請求により、上記平成19年10月30日付けでされた訂正の請求は、同法第134条の2第4項の規定により、取り下げられたものとみなされた。)

6.これに対して、平成20年10月29日付けで請求人より弁駁書が提出された。

以下、本件訂正請求前の請求項1及び請求項2に係る発明を、「本件発明1」及び「本件発明2」と、本件訂正請求後の請求項1及び請求項2に係る発明を「訂正発明1」及び「訂正発明2」という。

第2.本件訂正請求についての当審の判断
1.本件訂正請求の内容
本件訂正請求は、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)について、上記訂正審判の審判請求書に添付し、援用される訂正明細書(以下、「訂正明細書」という。)のとおりに訂正することを請求するものであって、次の事項をその訂正内容とするものである。(下線は、訂正箇所。)
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1について、
訂正前の、
「建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備え、前記シャッター本体の近傍には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、この縦枠の中空部に前記伝達部材を挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、前記操作部材を一方の縦枠における室内側の内側面に設けたことを特徴とするシャッター。」を、
「建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、その上枠の下面の内レールの一側に設けられる内障子用のストッパーと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備え、前記シャッター本体における電動モータを内蔵したモータチューブの端部に連結される支持枠には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴とを設け、この縦枠の中空部に前記伝達部材を上下方向に挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、回動により切替え操作する前記操作部材を、前記ストッパーと同じ側であって、一方の縦枠における外障子よりも室内側の内側面に、前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け、前記伝達部材は回動を伝達できるワイヤ等の部材であることを特徴とするシャッター。」と、訂正する。

(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2について、
訂正前の、
「建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備え、前記シャッター本体の近傍には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、この縦枠の中空部に前記伝達部材を挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、前記操作部材を一方の縦枠における室内側の内側面に設け、前記伝達部材は回動軸と方向転換用のギヤ機構部からなることを特徴とするシャッター。」を、
「建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、その上枠の下面の内レールの一側に設けられる内障子用のストッパーと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備え、前記シャッター本体における電動モータを内蔵したモータチューブの端部に連結される支持枠には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴とを設け、この縦枠の中空部に前記伝達部材を上下方向に挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、回動により切替え操作する前記操作部材を、前記ストッパーと同じ側であって、一方の縦枠における外障子よりも室内側の内側面に、前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け、前記伝達部材は回動軸と方向転換用のギヤ機構部からなることを特徴とするシャッター。」と、訂正する。

(3)訂正事項c
特許明細書の段落【0005】について、
訂正前の、
「【課題を解決するための手段】 本発明のうち、請求項1に係る発明は、建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備え、前記シャッター本体の近傍には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、この縦枠の中空部に前記伝達部材を挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、前記操作部材を一方の縦枠における室内側の内側面に設けたことを特徴とする。
請求項2に係る発明は、建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備え、前記シャッター本体の近傍には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、この縦枠の中空部に前記伝達部材を挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、前記操作部材を一方の縦枠における室内側の内側面に設け、前記伝達部材は回動軸と方向転換用のギヤ機構部からなることを特徴とする。」を、
「【課題を解決するための手段】 本発明のうち、請求項1に係る発明は、建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、その上枠の下面の内レールの一側に設けられる内障子用のストッパーと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備え、前記シャッター本体における電動モータを内蔵したモータチューブの端部に連結される支持枠には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴とを設け、この縦枠の中空部に前記伝達部材を上下方向に挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、回動により切替え操作する前記操作部材を、前記ストッパーと同じ側であって、一方の縦枠における外障子よりも室内側の内側面に、前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け、前記伝達部材は回動を伝達できるワイヤ等の部材であることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、その上枠の下面の内レールの一側に設けられる内障子用のストッパーと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備え、前記シャッター本体における電動モータを内蔵したモータチューブの端部に連結される支持枠には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴とを設け、この縦枠の中空部に前記伝達部材を上下方向に挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、回動により切替え操作する前記操作部材を、前記ストッパーと同じ側であって、一方の縦枠における外障子よりも室内側の内側面に、前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け、前記伝達部材は回動軸と方向転換用のギヤ機構部からなることを特徴とする。」と、訂正する。

(4)訂正事項d
特許明細書の段落【0021】について、
訂正前の、
「【発明の効果】 以上要するに請求項1に係る発明によれば、建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備え、前記シャッター本体の近傍には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、この縦枠の中空部に前記伝達部材を挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、前記操作部材を一方の縦枠における室内側の内側面に設けているため、室内側の操作部材から回動操作力を伝えてシャッター本体近傍のスイッチの切替え操作を容易に行うことが可能となり、従来の電動式シャッターと異なり壁スイッチを要しないので、壁スイッチの取付工事が不要となり、施工性の向上及び工期の短縮が図れる。
請求項2に係る発明によれば、建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備え、前記シャッター本体の近傍には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、この縦枠の中空部に前記伝達部材を挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、前記操作部材を一方の縦枠における室内側の内側面に設け、前記伝達部材は回動軸と方向転換用のギヤ機構部からなるため、室内側の操作部材から回動操作力を正確に伝えてシャッター本体近傍のスイッチの切替え操作を容易に行うことが可能となり、従来の電動式シャッターと異なり壁スイッチを要しないので、壁スイッチの取付工事が不要となり、施工性の向上及び工期の短縮が図れる。」を、
「【発明の効果】 以上要するに請求項1に係る発明によれば、建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、その上枠の下面の内レールの一側に設けられる内障子用のストッパーと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備え、前記シャッター本体における電動モータを内蔵したモータチューブの端部に連結される支持枠には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴とを設け、この縦枠の中空部に前記伝達部材を上下方向に挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、回動により切替え操作する前記操作部材を、前記ストッパーと同じ側であって、一方の縦枠における外障子よりも室内側の内側面に、前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け、前記伝達部材は回動を伝達できるワイヤ等の部材であるため、室内側の操作部材から回動操作力を伝えてシャッター本体近傍のスイッチの切替え操作を容易に行うことが可能となり、従来の電動式シャッターと異なり壁スイッチを要しないので、壁スイッチの取付工事が不要となり、施工性の向上及び工期の短縮が図れる。
請求項2に係る発明によれば、建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、その上枠の下面の内レールの一側に設けられる内障子用のストッパーと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備え、前記シャッター本体における電動モータを内蔵したモータチューブの端部に連結される支持枠には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴とを設け、この縦枠の中空部に前記伝達部材を上下方向に挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、回動により切替え操作する前記操作部材を、前記ストッパーと同じ側であって、一方の縦枠における外障子よりも室内側の内側面に、前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け、前記伝達部材は回動軸と方向転換用のギヤ機構部からなるため、室内側の操作部材から回動操作力を正確に伝えてシャッター本体近傍のスイッチの切替え操作を容易に行うことが可能となり、従来の電動式シャッターと異なり壁スイッチを要しないので、壁スイッチの取付工事が不要となり、施工性の向上及び工期の短縮が図れる。」と、訂正する。

2.訂正の適否について
(1)本件訂正の目的の適否、新規事項の有無、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
1)訂正事項aについて
この訂正は、請求項1に対して、内障子用のストッパーを設けることによる上枠の限定、開閉切替え用のスイッチが設けられる位置の限定、第1の貫通穴と第2の貫通穴を設けることによる縦枠の限定、伝達部材の挿通方向の限定、操作部材の限定、操作部材を設ける位置、操作部材の構成を限定したものである。
内障子用のストッパーを設けることによる上枠について、「その上枠の下面の内レールの一側に設けられる内障子用のストッパーと、」との限定事項を加入することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、当該事項は本件特許明細書の段落【0015】、及び図1、図3の記載から導き出されるものである。
開閉切替え用のスイッチについて、「シャッター本体における電動モータを内蔵したモータチューブの端部に連結される支持枠には開閉切替え用のスイッチが設けられ」との限定事項を加入することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、当該事項は本件特許明細書の段落【0010】、及び図4の記載から導き出されるものである。
縦枠の構成について、「前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴とを設け、」との限定事項を加入することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、当該事項は本件特許明細書の段落【0013】、及び図2、図5の記載から導き出されるものである。 伝達部材の挿通方向について、「伝達部材を上下方向に挿通させる」との限定事項を加入することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、当該事項は本件特許明細書の段落【0009】、【0013】、及び図1、図3、図5の記載から導き出されるものである。
操作部材について、「回動により切替え操作する前記操作部材」との限定事項を加入することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、当該事項は本件特許明細書の段落【0014】、及び図1、図3、図5の記載から導き出されるものである。
操作部材を設ける位置について、「前記ストッパーと同じ側であって、一方の縦枠における外障子よりも室内側の内側面に」との限定事項を加入することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、当該事項は本件特許明細書の段落【0015】、及び図1、図3の記載から導き出されるものである。
操作部材の構成について、「前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け」との限定事項を加入することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、当該事項は本件特許明細書の段落【0014】、及び図1、図2、図3、図5の記載から導き出されるものである。
伝達部材について、「前記伝達部材は回動を伝達できるワイヤ等の部材である」との限定事項を加入することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、当該事項は本件特許明細書の段落【0019】の記載から導き出されるものである。
したがって、この訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項aは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2)訂正事項bについて
この訂正は、請求項2に対して、内障子用のストッパーを設けることによる上枠の限定、開閉切替え用のスイッチが設けられる位置の限定、第1の貫通穴と第2の貫通穴を設けることによる縦枠の限定、伝達部材の挿通方向の限定、操作部材の限定、操作部材を設ける位置、操作部材の構成を限定したものである。
内障子用のストッパーを設けることによる上枠について、「その上枠の下面の内レールの一側に設けられる内障子用のストッパーと、」との限定事項を加入することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、当該事項は本件特許明細書の段落【0015】、及び図1、図3の記載から導き出されるものである。
開閉切替え用のスイッチについて、「シャッター本体における電動モータを内蔵したモータチューブの端部に連結される支持枠には開閉切替え用のスイッチが設けられ」との限定事項を加入することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、当該事項は本件特許明細書の段落【0010】、及び図4の記載から導き出されるものである。
縦枠の構成について、「前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴とを設け、」との限定事項を加入することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、当該事項は本件特許明細書の段落【0013】、及び図2、図5の記載から導き出されるものである。 伝達部材の挿通方向について、「伝達部材を上下方向に挿通させる」との限定事項を加入することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、当該事項は本件特許明細書の段落【0009】、【0013】、及び図1、図3、図5の記載から導き出されるものである。
操作部材について、「回動により切替え操作する前記操作部材」との限定事項を加入することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、当該事項は本件特許明細書の段落【0014】、及び図1、図3、図5の記載から導き出されるものである。
操作部材を設ける位置について、「前記ストッパーと同じ側であって、一方の縦枠における外障子よりも室内側の内側面に」との限定事項を加入することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、当該事項は本件特許明細書の段落【0015】、及び図1、図3の記載から導き出されるものである。
操作部材の構成について、「前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け」との限定事項を加入することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、当該事項は本件特許明細書の段落【0014】、及び図1、図2、図3、図5の記載から導き出されるものである。
したがって、この訂正事項bは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項bは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3)訂正事項c、訂正事項dは、請求項1及び請求項2を訂正することに(訂正事項a、訂正事項b)伴って、発明の詳細な説明の段落【0005】、段落【0021】の記載を、請求項1及び請求項2の記載と整合させるためのものであるから、それぞれ明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上述したように、訂正事項a及び訂正事項bは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、訂正事項c、訂正事項dも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

上記のとおり、上記訂正事項a、訂正事項bは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、訂正事項c、訂正事項dは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。
そして、上記訂正事項aないし訂正事項dは、いずれも願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)むすび
よって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び、同条第5項の規定により準用する特許法第126条第3項、第4項の規定に適合する適法な訂正と認める。

第3.請求人の主張の概要
1.請求人は、平成19年8月8日付け審判請求書において、下記の甲第1号証ないし甲第13号証を提出して、特許第3944001号の請求項1及び請求項2に係る特許を無効とする、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めることを請求の趣旨とし、以下のように主張している。
本件発明1及び本件発明2は、いずれも甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明に基づき、或いは更に従来周知の事項に基づき当業者が容易に発明できたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1及び本件発明2の特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により、いずれも無効とされるべきである。
甲第1号証:特開平9-32437号公報
甲第2号証:特開平10-96383号公報
甲第3号証:米国特許第519354号明細書
甲第4号証:特開平11-210359号公報
甲第5号証:実願昭60-96180号(実開昭62-2797号)のマイクロフィルム
甲第6号証:実願昭60-197921号(実開昭62-105276号)のマイクロフィルム
甲第7号証:実公平1-19745号公報
甲第8号証:実開平4-113683号公報
甲第9号証:特開昭53-38141号公報
甲第10号証:特開平5-86788号公報
甲第11号証:特開平10-266742号公報
甲第12号証:特開平8-303152号公報
甲第13号証:特開平5-302482号公報

2.請求人は、平成20年10月29日付けの弁駁書において、同年7月4日付けの訂正請求書による訂正後における本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明の特許は、依然として無効理由を有するから取消を免れないと主張し、甲第14号証ないし甲第19号証を提出した。
甲第14号証:実用新案登録第2529459号公報
甲第15号証:実願昭56-8674号(実開昭57-120668号)のマイクロフィルム
甲第16号証:実願昭59-88782号(実開昭61-8271号)のマイクロフィルム
甲第17号証:特許第2515241号公報
甲第18号証:特開平7-127351号公報
甲第19号証:特開昭59-158873号公報

第4.甲号各証の記載内容
1.甲第1号証に記載の発明
(1)甲第1号証に記載の事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証〔特開平9-32437号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 躯体壁に形成された開口部の内周に間隔をあけて取り付けられるサッシ枠と、開口部の周面とサッシ枠外周の間に配置されるシャッター枠とを備え、シャッター枠はシャッターボックス、左右のシャッター縦枠及びシャッター下枠が四角形に組み立てられて成り、開口部上端とサッシ枠上端の間にシャッターボックスの屋内側部が挿入されると共に、シャッターボックスの屋内側面に防火板が装着され、シャッター縦枠及びシャッター下枠は、屋内側面が躯体壁の屋外側面より没入しないように取り付けられ、シャッター縦枠及びシャッター下枠の屋内側において開口部周面とサッシ枠外周の間に形成された空間にモルタルが充填されていることを特徴とするシャッター付きサッシ。 」

「【請求項5】 シャッター縦枠の室内側面にシャッターを操作するための電装ケースが一体に設けられていることを特徴とした請求項1?請求項4のいずれか一つに記載のシャッター付きサッシ。 」

「【0008】【発明の実施の形態】 図1はシャッター付きサッシAを示し、RC造の躯体壁1に形成された開口部2にアルミ押し出し型材で構成されたサッシ枠3が配設され、その内周に図示しないガラス障子及び網戸が開閉自在に嵌合されている。サッシ枠3はサッシ上枠4、サッシ下枠5及び左右のサッシ縦枠6が四角形に組み立てられて成り、開口部2の周面からやや間隔をあけて嵌合される。
【0009】 開口部2の周面とサッシ枠3の外周との間において躯体壁1の屋外側にシャッター枠7が取付けられる。シャッター枠7はシャッターボックス8とシャッター下枠9と左右のシャッター縦枠10が四角形に組み立てられて構成され、シャッターボックス8の内部に巻き上げられたスラット11が収納されるようになっている。
このシャッター枠7とサッシ枠3は、数種類の規格品の中から開口部2の大きさ及びサッシの形式に合うものが選択されて予め工場で組み立てられ、これが現場に搬送されて開口部2に嵌め込まれる。
【0010】シャッターボックス8は、図2に示すように、巻き上げられたスラット11の上面、下面及び背面を囲む断面コ字状の収納枠12と、収納枠12の前面に着脱自在に取り付けられるカバー13を備え、カバー13の下端と収納枠12の屋外側下端との間にスラット11が昇降するスラット摺動口14が形成されている。従って、屋外からカバー13を外してスラット11の巻芯部分を簡単に点検補修することができる。また、収納枠12の屋内側下面にサッシ上枠4の上半部が嵌め込まれる嵌合凹部15が形成され、収納枠12の上面に張り出しフィン16が上方に向けて形成されている。
【0011】収納枠12の屋内側面に鋼製の防火板17が全面に亘って重合される。防火板17の上端から第1の連結部18が屋内方向に屈曲して形成されると共に、下端から第2の連結部19が屋外方向に屈曲して形成される。そして、嵌合凹部15にサッシ上枠4を嵌合すると共に、サッシ上枠4の屋外側面を嵌合凹部15の屋外側面に当接して位置決めし、サッシ上枠4の上面に第2の連結部19を重合してネジ止めすることにより、シャッターボックス8とサッシ上枠4が接合される。」

「【0014】 シャッター縦枠10は、その見込み寸法(屋内外方向の寸法)がシャッターボックス8の見込み寸法より小さく形成されており、図4に示すように、断面中空の縦枠本体25と、その屋外側面に着脱可能に取り付けられる屋外側枠26から構成される。縦枠本体25の内周面の屋外寄りに高さ方向に沿って屋内側ガイド片27が一体に形成され、屋外側枠26内周面の屋外寄りに高さ方向に沿って屋外側ガイド片28が形成され、屋内側ガイド片27と屋外側ガイド片28によってスラット11の両側端を案内するガイドレール29が形成される。図2に示すように、ガイドレール29の上端はシャッターボックス8のスラット摺動口14に合致している。
このガイドレール29は屋内側ガイド片27と屋外側ガイド片28に分離可能であるため、火災発生時等の緊急時にシャッターが閉じていても、屋内側からスラット11を押すと、屋外側枠26が縦枠本体25から外れてスラット11を簡単に屋外方向に開けることができる。」

「【0017】 図5に示すように、左右のシャッター縦枠10の一方にシャッターを操作するための電装ケース32が取付けられる。電装ケース32は縦枠本体25の屋内側面において操作しやすい高さに装着され、その内部にシャッターのスラット11を昇降させる制御装置が収納されている。これらの制御装置はコントローラーボックス32に引き込まれたコード33を介して電源と接続される。
また、電装ケース32の内周側面に着脱自在の点検用カバー34が装着され、この点検用カバー34の外面に制御装置を作動させる操作スイッチ35が設けられている。そして、図4に示すように、シャッター縦枠10及びサッシ縦枠6を開口部2に取付けたとき、点検用カバー34及び操作スイッチ35が額縁材40の屋内側面に露出され、必要に応じて点検用カバー34を開け、電装ケース32の内部を点検することが出来るようになっている。」

「【0024】・・・請求項5に記載の構成によれば、シャッターを駆動するための電装関係もサッシと一体に移動できるので、現場で格別な配線工事はなく、サッシの施工に電気工事関係者を必要としない。また、施工時間を短縮することができる。」

(2)引用発明1
まず、甲第1号証の段落【0010】には、シャッターボックス8の内部に巻き上げられたスラット11が収納されるようになっている旨記載されており、また、段落【0017】の記載を参酌するに、シャッター縦枠10の一方にシャッターのスラット11を昇降させる制御装置が収納された電装ケース32が取付けられていることから、シャッターボックス8には、電動機によりスラット11を昇降させる駆動機構が収容されていることは明らかである。
そうすると、摘示した各記載及び図面によれば、甲第1号証には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「躯体壁1に形成された開口部2に配設されるサッシ上枠4、サッシ下枠5及び左右のサッシ縦枠6により組み立てられたサッシ枠3と、
該サッシ枠3の外周に取り付けられるシャッターボックス8、シャッター下枠9及び左右のシャッター縦枠10により組み立てられたシャッター枠7と、
前記シャッターボックス8は、前記サッシ上枠4の上面に接合されスラット11を昇降させる電動式の駆動機構を収容してなり、
前記シャッター縦枠10の前部に設けられ、前記スラット11を開閉自在に案内するガイドレール29とを備え、
前記シャッター縦枠10は断面中空の縦枠本体25により構成され、該シャッター縦枠10の一方にシャッターのスラット11を昇降させる制御装置が収納された電装ケース32が取付けられ、該電装ケース32は、縦枠本体25の屋内側面に装着され、操作しやすい高さに操作スイッチ35が設けられているシャッター。」

2.甲第2号証に記載の発明
(1)甲第2号証に記載の事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証〔特開平10-96383号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「【0005】 【発明の実施の形態】 次に、本発明の実施の形態を図1?図14の図面に基づいて説明する。
図面において、1は建築物の開口部等に配される電動シヤッターのシヤッターカーテンであって、該シヤッターカーテン1は、躯体上方に回動自在に支架される巻取り軸2に巻装されており、電動モータ3の正逆駆動に基づいて巻取り軸2が巻取り、巻出し回動することによって開口部の開閉を行う構成となっていること等は従来通りの構成となっている。
尚、4はシヤッターカーテン1の両側部を案内するべく開口部両側に設けられるガイドレールであり、5は巻取り軸2を収納すべく躯体側に配されるシヤッターケースである。
【0006】 前記巻取り軸2は、本実施の形態では筒状の巻取りホイールに形成されており、シヤッターケース5内に支持される左右一対の取付けブラケット6、7にそれぞれ一体的に支持される支軸2aおよび電動モータ3に対して回動自在に外嵌されている。そして、巻取りホイール2は、電動モータ3の出力軸3aに連動連結されており、これによって、電動モータ2の正逆駆動に基づいて巻取り、巻出し回動を行う設定となっている。」

「【0010】 さらに、前記ボックス状の取付けブラケット7内には、前記電動モータ3を開閉駆動せしめるための開閉駆動用のスイッチ13、14が配設されているが、これら開閉駆動用スイッチ13、14は、本実施の形態ではそれぞれ同様のマイクロスイッチが用いられている。そうして各スイッチ13、14は、矩形のスイッチボックス13a、14aからスイッチ接点13b、14bが突出するが、該スイッチ接点13b、14bを押し操作してON作動(感知作動)するためのスイッチレバー13c、14cが位置ずれする配置構成で配されている。つまり、これら両スイッチ13、14は第二板材7bの上部に配設されたスイッチ用支持板15に止着されているが、これら開閉駆動用スイッチ13、14はスイッチレバー13c、14cの他端部が後方に向けて突出し、かつ互いに対向する姿勢で左右方向に並列され、さらに開放駆動用スイッチ13が上側に、閉鎖駆動用スイッチ14が下側に位置ずれしている。そしてこれによって、スイッチレバー13c、14cは、これらに対設される後述する作動ピン18aの上下変位に伴って、開放駆動用スイッチ13のみがON作動する開放駆動状態と、開閉駆動用スイッチ13、14共にOFF作動する停止状態と、閉鎖駆動用スイッチ14のみがON作動する閉鎖駆動状態の都合三種類のスイッチ切換えがなされるように設定されている。
【0011】 16は本発明の施錠操作具に相当するスライダーであって、該スライダー16は、前記施錠具後辺9eに対向する状態で取付けブラケット7内の後側辺7eに設けられている。そしてスライダー16は、上下部位に穿設された長孔16aを介してピン16bにより後側辺7eに止着することで、後側辺7eに対して長孔ストローク分だけ上下摺動自在となるように設定されている。このライダー16の中央部には、前記施錠具9の左右揺動をガイドする施錠具ガイド17が止着され、施錠具ガイド17の第二板材7b側に切欠き形成されたガイド面17aに、施錠具9の後方に突出したガイドピン9fが第二板材7b側から係合する設定となっている。ここで、前記ガイド面17aは二段に切欠かれており、ガイドピン9fが下側の第一段部17bに係合した状態では、施錠具9は、ロック部9dが前記姿勢復帰弾機11の付勢力に抗する状態で取付けブラケット7のボックス内に退避する解錠姿勢に変姿する設定となっている。これに対し、スライドガイド17が下側にスライドして、ガイドピン9fが中間部から上側に至る第二段部17cに係合した状態では、施錠具9は、姿勢復帰弾機11の付勢力を受けてロック部9dが取付けブラケット7のボックス内から突出する前記施錠姿勢となるように設定されている。
一方、スライダー16の上部からは略L字形の作動アーム18が延設されており、該作動アーム18の先端に前述の作動ピン18aが支持されるようになっている。そして、スライダー16が施錠具9を変姿させるべく上下摺動することに伴い、前記開閉駆動用スイッチ13、14を前記三種類にスイッチ切換えするように設定されている。
尚、16cは、スライダー16の上部と取付けブラケット7とのあいだに弾装される復帰弾機であって、該復帰弾機16cはスライダー16を上方位置に復帰させるのもので、本実施の形態ではコイル弾機が採用されている。
【0012】 さらに前記スライダー16の下部には、連結材取付け辺16dが一体形成されており、ここに連結材(本実施の形態においてはワイヤが採用されている)19の一端部が連結されるが、該連結材19の他端部は、前記取付けブラケット7の下方に位置する開閉操作用の操作具20に連結されており、後述する操作具20の操作に基づいて連結材19が上下移動した場合に、スライダー16は、連結材19の変位に基づいて上下変位がなされるように設定されている。尚、10cは操作具20から伸長される連結材19をスライダー16側へ案内するためのガイド片である。
【0013】 前記操作具20は、躯体側に止着されたスイッチパネル20aに操作具用ブラケット21を止着し、該操作具用ブラケット21に操作摘み22が上下移動自在に嵌合する構成となっている。そして操作摘み22の後面には、左右側面にそれぞれ上下方向に三つの凹部23a、23b、23cが形成されたカム体23が一体的に止着されている。一方、操作具用ブラケット21の下部には、左右一対の支持アーム24の基端部が揺動自在にそれぞれ枢支され、該支持アーム24の先端にそれぞれ枢支された規制ローラ24aが、前記カム体凹部23a、23b、23cの何れかに両側から係合するように構成されている。そして両支持アーム24は、中間部同志を弾持すべく介装された保持弾機(本実施の形態ではコイル弾機が採用されている)24bの付勢力によって規制ローラ24aが各凹部23a、23b、23cに対して軽弾圧状に係合保持するよう付勢されている。そして、操作摘み22を上下変位操作させることで、規制ローラ24aが保持弾機24bの付勢力に抗して隣接する凹部23a、23b、23cのあいだの山越えをすることになり、これによって、操作摘み22は、規制ローラ24aが下側凹部23cに係合する開放姿勢と、中間凹部23bに係合する停止姿勢と、上側凹部23aに係合する閉鎖姿勢との何れか一つの姿勢位置に位置決め保持されるように設定されている。
そして、このカム体23の上部に前記連結材19の他端部が連結されており、而して操作摘み22の開放、停止、閉鎖姿勢位置への変位に連動する連結材19の移動に基づき、前述したようにスライダー16が、上方に位置する開放位置、中間部に位置する停止位置、下方に位置する閉鎖位置に変位する設定となっている。
ここで、前記操作摘み22を各姿勢に保持するに当り、スライダー16側の復帰弾機16cの付勢力は、支持アーム24側の保持弾機24bの付勢力よりも小さいものに設定されている。
【0017】 さらに、本発明が実施されたものでは、電動モータ3の開閉駆動用スイッチ13、14を、電動モータ3の近傍である躯体の上部に位置する取付けブラケット7に設け、躯体側に設けられる操作具20と取付けブラケット7とのあいだを、操作摘み22に連動して移動する連結材19を介して連結する構成にしたので、電動シヤッターは、電気的な配線工事が全てなされたものとして工場出荷できることになって、操作スイッチを開口部側方の躯体側に設けるもののように、建付け現場での配線工事が必要になることがない。この結果、現場での建付け工事が簡略化できて、作業性の向上を計ることができるうえ、低コスト化にも寄与することができる。」

(2)引用発明2
摘示した各記載及び図面によれば、甲第2号証には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「建築物の開口部等に配される電動シャッター装置であって、
シャッターカーテン1を巻き上げ下げする電動モータ3に外嵌された巻取り軸2を収容したシャッターケース5と、シャッターカーテン1を開閉自在に案内するガイドレール4とを備え、
前記電動モータ3及び巻取り軸2の端部の取付けブラケット7には開閉駆動用のスイッチ13、14が上下に設けられ、該スイッチ13、14には上下変位操作させることによりスイッチ切換えするための操作摘み22が連結材19を介して連結され、
前記操作摘み22を躯体側に設け、前記連結材19は上下移動を伝達できるワイヤである電動シャッター装置。」

3.甲第3号証に記載の発明
(1)甲第3号証に記載の事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第3号証〔米国特許第519354号明細書〕には、以下の事項が記載されている。
「The letter a,represents the handle of the implement,and b is the jaw,preferably made box-shaped and adapted to grasp the cock A of a gas or electric light. That is to say the jaw constitutes a rectangular soket,closed at the four sides and open at the top(Fig.3). Between the jaw or jaws and the handle,I interpose a spiral spring c,so that the handle and jaw may be brought out of line. The spring c,must be sufficiently stiff,to permit the revolving motion of the handle to be transmitted to the jaw.」
「文字aは、器具のハンドルを示し、そしてbは、はさみ口であって、好ましくは箱形に製造され、ガス灯又は電灯のコックAを掴むのに適したものである。すなわち、はさみ口は、4つの側部で閉じ先端が開いた長方形のソケットを構成している(図3)。はさみ口とハンドルの間に渦巻きばねcを介在させる結果、ハンドルとはさみ口が一列をなさないで配置されてもよい。ばねcはハンドルの回動をはさみ口に伝達可能にするため、十分に堅くなければならない。」(同号証明細書28?39行:訳文)

(2)引用発明3
摘示の記載及び図面によれば、甲第3号証には、以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「ガス灯又は電灯のコックAを掴むためのソケット形状のはさみ口bに、これを回動するためのハンドルaが渦巻きばねcを介在させて連結される機構。」

4.甲第4号証に記載の発明
(1)甲第4号証に記載の事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第4号証〔特開平11-210359号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 建物躯体よりも室外側に巻取りシャフトを設け、その巻取りシャフトに巻掛けたシャッターカーテンをサッシ窓の障子よりも室外側に上下動自在とした手動式シャッター雨戸において、
前記巻取りシャフトを回転する操作部材を、サッシ窓の縦枠中空部を通して縦枠内面に突出したことを特徴とする手動式シャッター雨戸の開閉装置。」

「【0009】【発明の実施の形態】 図1と図2に示すように、建物躯体1の開口部2にサッシ枠3が室外側に突出して取付けてある。このサッシ枠3は左右の縦枠4間に亘って上枠5と下枠6を連結した方形枠形状で、そのサッシ枠3内に内障子7と外障子8が面内方向に引き違いに装着されて引き違いのサッシ窓9としてある。
【0010】 前記建物躯体1の室外面1aにおけるサッシ枠3よりも上部にシャッターケース10が取付けてあり、このシャッターケース10内に巻取りシャフト11が回転自在に設けてあり、その巻取りシャフト11は回転機構12で正転、逆転される。
【0011】 複数のスラット13を連結したシャッターカーテン14の最上部が巻取りシャフト11に固着され、このシャッターカーテン14は左右の縦枠4の室外寄りに設けた一対のガイドレール15に沿って上下動自在で、これによってシャッター雨戸を形成している。
【0012】 前記回転機構12は図3に示すように、ボックス20内に駆動ギヤ21と従動ギヤ22を設け、この従動ギヤ22の軸23にプーリ24を固着してある。このプーリ24に紐などの無端状の索条25、つまり操作部材を巻掛けてある。
【0013】 前記索条25は図1,図2,図4に示すように、内障子7の開放側の縦枠4の中空部26内に垂れ下り、縦枠4の内壁4aに形成した穴27からサッシ枠3内に垂れ下っている。
【0014】 前記索条25は内障子7と面外方向に同一位置であり、サッシ枠3の室内側に取付けたカーテンと索条25が接触することがないし、室内から索条25が見えずらい。しかも、外障子8を閉じた時に外障子8と索条25が干渉しないから外障子8を完全に閉じることができる。
【0015】 次に本発明の第2の実施の形態を図5ないし図8に基づいて説明する。回転機構12は図7に示すように、従動ギヤ22の軸23にウォームホイール30を固着し、このウォームホイール30にウォーム31を噛合してあり、そのウォーム31の回転軸32が縦枠4の中空部26内に突出している。
【0016】 この回転軸32はユニバーサルジョイントで縦枠4の内壁4aにおける内障子7と面外方向に同一位置に取付けた操作ハンドル33に連結している。この操作ハンドル33は図8に示すように軸34に握手35を真直ぐに下向き姿勢と室内側にずれた位置に変位可能に連結してあり、この操作ハンドル33と回転軸32が操作部材となる。
【0017】【発明の効果】 請求項1に係る発明によれば、障子を開放せずに操作部材を操作して巻取りシャフトを回転することでシャッターカーテンを巻取り、繰り出して開閉できる。また、操作部材は縦枠の中空部を通して縦枠の内面に突出しているから、縦枠に加工するだけで建物躯体には操作部材を通すための加工が不要である。」

(2)引用発明4
摘示した各記載及び図面によれば、甲第4号証には、以下の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されているものと認められる。
「建物躯体1の開口部2に設けられる左右の縦枠4、上枠5及び下枠6とからなるサッシ枠3と、
その上枠5上に設けられシャッターカーテン14を巻き上げ下げする巻取りシャフト11及び回転機構12を収容したシャッターケース10と、
前記縦枠4の室外寄りに設けられシャッターカーテン14を開閉自在に案内するガイドレール15とを備え、
前記回転機構12は、駆動ギヤ21と従動ギヤ22とウォームホイール30とウォーム31とが順次結合して構成され、前記ウォーム31の回転軸32が縦枠4の中空部26内に突出し、ユニバーサルジョイントで縦枠4の内障子と面外方向同一位置の内壁4aに取付けた操作ハンドル33に連結している手動式シャッター。」

5.甲第5号証に記載の事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第5号証〔実願昭60-96180号(実開昭62-2797号)のマイクロフィルム〕には、サッシに装着するシャッター装置において、遠隔操作するための操作部材をサッシ近傍に配置して、これに伝達部材を介して回転力を伝達する動力伝達機構が、記載されている。

6.甲第6号証に記載の事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第6号証〔実願昭60-197921号(実開昭62-105276号)のマイクロフィルム〕には、サッシに装着するシャッター装置において、遠隔操作するための操作部材をサッシ近傍に配置して、これに伝達部材を介して回転力を伝達する動力伝達機構が、記載されている。

7.甲第7号証に記載の事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第7号証〔実公平1-19745号公報〕には、サッシに装着するシャッター装置において、遠隔操作するための操作部材をサッシ近傍に配置して、これに伝達部材を介して回転力を伝達する動力伝達機構が、記載されている。

8.甲第8号証に記載の事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第8号証〔実開平4-113683号公報〕には、サッシに装着するシャッター装置において、遠隔操作するための操作部材をサッシ近傍に配置して、これに伝達部材を介して回転力を伝達する動力伝達機構が、記載されている。

9.甲第9号証に記載の事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第9号証〔特開昭53-38141号公報〕には、サッシに装着するシャッター装置において、遠隔操作するための操作部材をサッシ近傍に配置して、これに回転軸とギヤ機構部とからなる伝達部材を介して回転力を伝達する動力伝達機構が、記載されている。

10.甲第10号証に記載の事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第10号証〔特開平5-86788号公報〕には、サッシに装着するシャッター装置において、遠隔操作するための操作部材をサッシ近傍に配置して、これに回転軸とギヤ機構部とからなる伝達部材を介して回転力を伝達する動力伝達機構が、記載されている。

11.甲第11号証に記載の事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第11号証〔特開平10-266742号公報〕には、サッシに装着するシャッター装置において、遠隔操作するための操作部材をサッシ近傍に配置して、これに回転軸とギヤ機構部とからなる伝達部材を介して回転力を伝達する動力伝達機構が、記載されている。

12.甲第12号証に記載の事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第12号証〔特開平8-303152号公報〕には、サッシに装着するシャッター装置において、遠隔操作するための操作部材をサッシ近傍に配置して、これに回転軸とギヤ機構部とからなる伝達部材を介して回転力を伝達する動力伝達機構が、記載されている。

13.甲第13号証に記載の事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第13号証〔特開平5-302482号公報〕には、サッシに装着するシャッター装置において、遠隔操作するための操作部材をサッシ近傍に配置して、これに回転軸とギヤ機構部とからなる伝達部材を介して回転力を伝達する動力伝達機構が、記載されている。

14.甲第14号証に記載の事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第14号証〔実用新案登録第2529459号公報〕には、上枠材F1に取り付けられる案内体7が障子のストッパーを兼ねることが、記載されている。

15.甲第15号証に記載の事項
本件特許の出願前に頒布された行物である甲第15号証〔実願昭56-8674号(実開昭57-120668号)のマイクロフィルム〕には、第5?7図に「ストッパ部(11)」が、記載されている。

16.甲第16号証に記載の事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第16号証〔実願昭59-88782号(実開昭61-8271号)のマイクロフィルム〕には、内障子の上枠用ストッパーが、記載されている。

17.甲第17号証に記載の事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第17号証〔特許第2515241号公報〕には、縦枠に、該縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴を設けること、及び、穴を塞ぐためにその上に取り付けるケースを用いることが、記載されている。

18.甲第18号証に記載の事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第18号証〔特開平7-127351号公報〕には、穴を塞ぐためにその上に取り付けるケースを用いることが、記載されている。

19.甲第19号証に記載の事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第19号証〔特開昭59-158873号公報〕には、穴を塞ぐためにその上に取り付けるケースを用いることが、記載されている。

第5.被請求人の主張の概要
1.被請求人は、平成19年8月8日付け審判請求書における請求人の主張に対して同年10月30日付けで答弁書及び訂正請求書を提出して、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、以下のように反論している。
甲第1号証乃至甲第4号証の何れにも、本件発明1の特徴である「シャッター本体の近傍に回動式の開閉切替え用のスイッチ」を備えるとともに、「縦枠の中空部に、回動を伝達できるワイヤ等の伝達部材を挿通させた」構成は全く記載されていない。
甲第1号証乃至甲第4号証の何れにも、本件発明2の特徴である「シャッター本体の近傍に回動式の開閉切替え用のスイッチ」を備えるとともに、「縦枠の中空部に、回動軸と方向転換用のギヤ機構部からなる伝達部材を挿通させた」構成は全く記載されていない。
よって、本件発明1及び本件発明2は、何れも特許法第29条第2項の規定に該当することがなく、特許法第123条に規定する無効理由を有しないものである。

2.被請求人は、平成20年9月22日に請求がされたものとみなされた訂正の請求をすると共に、訂正発明1及び訂正発明2は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであることは明らかであり、訂正事項a及び訂正事項bにおける訂正は、特許法126条第3項?第5項の規定に違反するものではないと主張している。

第6.第1次審決の無効理由
本件発明1は、引用発明1、引用発明2及び引用発明4並びに前記周知技術A(甲第3号証、甲第6号証、甲第7号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本件発明2は、引用発明1、引用発明2及び引用発明4並びに前記周知技術A(甲第3号証、甲第6号証、甲第7号証)及びC(甲第5号証、甲第9号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上のとおり、本件発明1及び2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号の規定に該当するから、本件特許は無効にすべきものである。

第7.無効理由に対する当審の判断
1.本件発明
本件特許第3944001号の請求項1及び請求項2に係る発明は、本件訂正が認められるから、本件の訂正明細書及び図面の記載からみて、訂正された特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】 建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、その上枠の下面の内レールの一側に設けられる内障子用のストッパーと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備え、前記シャッター本体における電動モータを内蔵したモータチューブの端部に連結される支持枠には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴とを設け、この縦枠の中空部に前記伝達部材を上下方向に挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、回動により切替え操作する前記操作部材を、前記ストッパーと同じ側であって、一方の縦枠における外障子よりも室内側の内側面に、前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け、前記伝達部材は回動を伝達できるワイヤ等の部材であることを特徴とするシャッター。」
「【請求項2】 建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、その上枠の下面の内レールの一側に設けられる内障子用のストッパーと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備え、前記シャッター本体における電動モータを内蔵したモータチューブの端部に連結される支持枠には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴とを設け、この縦枠の中空部に前記伝達部材を上下方向に挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、回動により切替え操作する前記操作部材を、前記ストッパーと同じ側であって、一方の縦枠における外障子よりも室内側の内側面に、前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け、前記伝達部材は回動軸と方向転換用のギヤ機構部からなることを特徴とするシャッター。」

2.訂正発明1について
(1-1)訂正発明1と引用発明1との対比
訂正発明1と引用発明1とを対比すると、両者はいずれも「シャッター」の発明であって、引用発明1の「躯体壁1に形成された開口部2」は、訂正発明1の「建物の開口」に相当し、以下同様に、「サッシ上枠4」は「上枠」に、「サッシ下枠5」は「下枠」に、「左右のサッシ縦枠6」は「左右の縦枠」に、「サッシ枠3」は「枠体」に、「シャッターボックス8」は「シャッターボックス」に、「スラット11」は「シャッターカーテン」に、「ガイドレール29」は「ガイドレール」に、それぞれ相当する。
また、引用発明1の「操作スイッチ35」は、訂正発明1の「操作部材」と、シャッターカーテンの開閉を制御する操作のための部材であるとの限りにおいて一致する。
してみると、訂正発明1と引用発明1とは、以下の点で一致し、相違点Aないし相違点Cの点で相違する。

<一致点>
「建物の開口に設けられる上枠と、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールと操作部材とを備えたシャッター。」

<相違点A>
訂正発明1では、「上枠の下面の内レールの一側に設けられる内障子用のストッパー」を備えているのに対して、引用発明1では、そのように限定されていない点。

<相違点B>
訂正発明1では、「シャッター本体における電動モータを内蔵したモータチューブの端部に連結される支持枠には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され」、また「回動により切替え操作する前記操作部材を、前記ストッパーと同じ側であって、一方の縦枠における外障子よりも室内側の内側面に、前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け、前記伝達部材は回動を伝達できるワイヤ等の部材である」のに対して、引用発明1では、そのように限定されていない点。

<相違点C>
訂正発明1では、「前記縦枠は中空構造とされ、前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴とを設け、この縦枠の中空部に前記伝達部材を上下方向に挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導」くのに対して、引用発明1では、そのように限定されていない点。

(1-2)相違点の検討
1)相違点Aについて
甲第14号証ないし甲第16号証に示されているように、上枠の下面の内レールの一側に設けられる内障子用のストッパーを備え、内障子を開放する際に、内障子が縦枠に衝突してクレセント又は引寄ハンドル等の金具の破損を防止する技術は、当該技術分野において周知の技術にすぎず、上記相違点Aに係る訂正発明1の発明特定事項は、該周知の技術を引用発明1において採用することにより当業者が容易に想到し得たものである。

2)相違点Bについて
引用発明1は、躯体壁1に形成された開口部2に配設されるサッシ上枠4、サッシ下枠5及び左右のサッシ縦枠6からなるサッシ枠3と、該サッシ枠3の外周に取り付けられるシャッターボックス8、シャッター下枠9及び左右のシャッター縦枠10からなるシャッター枠7と、前記シャッターボックス8は、前記サッシ上枠4の上面に接合されスラット11を昇降させる電動式のシャッター本体を収容してなり、前記シャッター縦枠10の前部に設けられ、前記スラット11を開閉自在に案内するガイドレール29とを備え、前記シャッター縦枠10は断面中空の縦枠本体25により構成され、該シャッター縦枠10の一方にシャッターのスラット11を昇降させる制御装置が収納された電装ケース32が取付けられ、該電装ケース32は、縦枠本体25の屋内側面において操作しやすい高さに装着され、その側面に前記制御装置と接続される操作スイッチ35が設けられた構造である。また、引用発明1は、スラット11を昇降させる電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックス8を有した構造であるから、シャッターボックス8内に電動モータを有した構造であると認められる。
甲第2号証には、上述したように引用発明2である、「建築物の開口部等に配される電動シャッター装置であって、シャッターカーテン1を巻き上げ下げする電動モータ3に外嵌された巻取り軸2を収容したシャッターケース5と、シャッターカーテン1を開閉自在に案内するガイドレール4とを備え、前記電動モータ3及び巻取り軸2の端部の取付けブラケット7には開閉駆動用のスイッチ13、14が上下に設けられ、該スイッチ13、14には上下変位操作させることによりスイッチ切換えするための操作摘み22が連結材19を介して連結され、前記操作摘み22を躯体側に設け、前記連結材19は上下移動を伝達できるワイヤである電動シャッター装置。」が、示されている。
してみると、引用発明2は、「シャッター本体における電動モータを内蔵したモータチューブの端部に連結される支持枠には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチには切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記伝達部材は操作を伝達できるワイヤ等の部材である」といえる構造を有していると認められる。
甲第3号証には、上述したように引用発明3である、「ガス灯又は電灯のコックAを掴むためのソケット形状のはさみ口bに、これを回動するためのハンドルaが渦巻きばねcを介在させて連結される機構。」が示されており、即ち、回動によるスイッチと該スイッチを操作するために回動を伝達できるワイヤ等の部材を用いた機構が、示されている。
甲第4号証には、上述したように引用発明4である、「建物躯体1の開口部2に設けられる左右の縦枠4、上枠5及び下枠6とからなるサッシ枠3と、その上枠5上に設けられシャッターカーテン14を巻き上げ下げする巻取りシャフト11及び回転機構12を収容したシャッターケース10と、前記縦枠4の室外寄りに設けられシャッターカーテン14を開閉自在に案内するガイドレール15とを備え、前記回転機構12は、駆動ギヤ21と従動ギヤ22とウォームホイール30とウォーム31とが順次結合して構成され、前記ウォーム31の回転軸32が縦枠4の中空部26内に突出し、ユニバーサルジョイントで縦枠4の内障子と面外方向同一位置の内壁4aに取付けた操作ハンドル33に連結している手動式シャッター」が、示されている。
引用発明4及び甲第17号証ないし甲第19号証には、穴を塞ぐためにその上に取り付けるケースを用いることに関して示されている。
引用発明1も引用発明4も共に屋内側にサッシ(障子)を有するシャッターに関する発明であることから、引用発明1において、引用発明4の構造を採用し、シャッターのスラット11を昇降させる操作スイッチ35を、縦枠4の内障子と面外方向同一位置の内壁4a、即ち、一方の縦枠における外障子よりも室内側の内側面に設けた構造とすることに特段の困難性は認められない。しかし、該引用発明4の構造を採用したのみでは、上記相違点Bに係る訂正発明1の発明特定事項と、引用発明1及び引用発明4から推考される事項とは、「シャッター本体における電動モータを内蔵したモータチューブの端部に連結される支持枠には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され」る点、及び「前記伝達部材は回動を伝達できるワイヤ等の部材である」点において、依然として相違する。
その相違を解消するためには、引用発明4において、引用発明2の「電動モータ3及び巻取り軸2の端部の取付けブラケット7には開閉駆動用のスイッチ13、14が上下に設けられ」との構造を採用する必要があるが、該引用発明2の構造を採用したのみでは、上記相違点Bに係る訂正発明1の発明特定事項と、引用発明1及び引用発明4、引用発明2から推考される事項とは、「該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され」る点、及び「前記伝達部材は回動を伝達できるワイヤ等の部材である」点において、依然として相違する。
その相違を解消するためには、引用発明2において、引用発明3の回動によるスイッチと該スイッチを操作するために回動を伝達できるワイヤ等の部材の構造を採用する必要がある。確かに、引用発明3に示されているような、ガス灯又は電灯のコックAを掴むためのソケット形状のはさみ口bに、これを回動するためのハンドルaが渦巻きばねcを介在させて連結される機構、即ち、回動によるスイッチと該スイッチを操作するために回動を伝達できるワイヤ等の部材を用いた機構は、本願出願前に周知の機構であると考えられるが、しかしながら、引用発明2における、上下変位する部材により操作されるスイッチと該スイッチを操作するために上下変位を伝達できるワイヤ等の部材を用いた機構に代えて、引用発明3に示された回動動作を含む機構を採用するに当たって、その契機となる動機付けがなく、また、採用した際に具体的にどのような構造を取ることになるのかも不明であることから、引用発明2において引用発明3に示された上記回動動作を含む機構を採用することは困難なことである。
その上、引用発明2において引用発明3に示された上記回動動作を含む機構を採用し得たとしても、上記相違点Bに係る本件発明の発明特定事項を想到するためには、引用発明2において引用発明3の構造を採用し、さらに、引用発明3の構造を採用した引用発明2を引用発明4において採用し、引用発明3の構造を採用した引用発明2を引用発明4において採用した上で、該引用発明4を引用発明1に適用する必要があると認められるが、そのようなことは、当業者といえども容易に想到し得るものとはいえない。
また、相違点Bに係る訂正発明1の発明特定事項は、モータチューブ、開閉切替え用のスイッチ、操作部材、伝達部材、貫通穴、ケース本体等からなるが、個々の事項が有機的に結合してはじめて、室内側の操作部材から回動操作力を伝えてシャッター本体近傍のスイッチの切替え操作を容易に行うことが可能となり、従来の電動式シャッターと異なり壁スイッチを要しないので、壁スイッチの取付工事が不要となり、施工性の向上及び工期の短縮が図れるとの機能を実現することができるから、個々の構成要素に分解して容易想到の判断をしてよいものともいえない。
よって、上記相違点Bに係る訂正発明1の発明特定事項は、当業者といえども容易に想到できたものではない。

3)相違点Cについて
引用発明1は、電装ケース32の外面に設けられた操作スイッチ35を操作して制御装置によりシャッターのスラット11を昇降させる構造ではあるが、該操作スイッチからの信号を如何にしてシャッターボックス8内に伝送しているのか不明である。しかるに、引用発明1の図5の記載などを参酌するに、該引用発明1においても、縦枠本体25の内に形成されている中空部に信号ケーブルを設けることで上記信号の伝送を行っていると解するのが妥当であると考えられる。
しかるに、引用発明1が信号の伝送を行うために使用している縦枠本体25の内に形成されている中空部は、サッシ枠3の外周に取り付けられたシャッター枠7に設けられたものであり、上記相違点Cに係る訂正発明1の発明特定事項と、基本的な構造において相違している。
甲第4号証には、上述したように引用発明4である、「建物躯体1の開口部2に設けられる左右の縦枠4、上枠5及び下枠6とからなるサッシ枠3と、その上枠5上に設けられシャッターカーテン14を巻き上げ下げする巻取りシャフト11及び回転機構12を収容したシャッターケース10と、前記縦枠4の室外寄りに設けられシャッターカーテン14を開閉自在に案内するガイドレール15とを備え、前記回転機構12は、駆動ギヤ21と従動ギヤ22とウォームホイール30とウォーム31とが順次結合して構成され、前記ウォーム31の回転軸32が縦枠4の中空部26内に突出し、ユニバーサルジョイントで縦枠4の内障子と面外方向同一位置の内壁4aに取付けた操作ハンドル33に連結している手動式シャッター」が、示されている。
してみると、引用発明4は、「前記縦枠は中空構造とされ、前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第2の貫通穴を設け、この縦枠の中空部に前記伝達部材を上下方向に挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、前記伝達部材は機械的動力を伝達できる部材である」といえる構造を有していると認められる。
しかしながら、引用発明4は、操作ハンドル33による回転運動をシャッターカーテン14を巻き上げ下げする巻取りシャフト11に伝達するものであることから、あくまで回転運動を伝達しているのであって、訂正発明1の伝達部材が、回動に伴って生じる上下運動を伝達していることとは、その伝達運動の形態を異にするものである。
さらに、引用発明4においては、縦枠4の上部開口を用いて回転を回転機構12に伝達する構造であり、訂正発明1の縦枠の途中に設けられた中空部と連通する第1の貫通穴を用いて回動をスイッチに伝達する構造と、この点において相違している。
確かに、引用発明1と引用発明4は共にシャッターに関する発明であり、縦枠に形成された中空部を用いてシャッターの開閉操作を行っている点で共通しており、また、電気式の操作も機械式の操作も共に慣用されている操作にすぎないから、引用発明1のサッシ枠3の外周に取り付けられたシャッター枠7に設けられた縦枠本体25に形成された中空部を用いて信号の伝送を行う構成に代えて、引用発明4の上記構造を採用することは、特段の困難性を有することであるとまではいえない。
しかし、引用発明1において、引用発明4の構造を採用したとしても、上記相違点Cに係る訂正発明1の発明特定事項と、引用発明1及び引用発明4から推考される事項とは、「前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴」の点、伝達部材が伝達する運動が回動に伴って生じる上下運動であるか回転運動であるかの点において、依然として相違する。
なお、甲第17号証には、縦枠に、該縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴を設けることが示されてはいるが、該貫通穴を介して伝達されているのは、電気的な信号であり、訂正発明1のような機械的な運動ではなく、引用発明4において、上記甲第17号証に示された事項を採用することは、困難なことである。
よって、上記相違点Cに係る訂正発明1の発明特定事項は、当業者といえども容易に想到できたものではない。

そして、訂正発明1は、当業者が容易に想到できたものではない上記相違点B及び相違点Cに係る訂正発明1の発明特定事項を含むことで、明細書に記載されたところの「室内側の操作部材から回動操作力を伝えてシャッター本体近傍のスイッチの切替え操作を容易に行うことが可能となり、従来の電動式シャッターと異なり壁スイッチを要しないので、壁スイッチの取付工事が不要となり、施工性の向上及び工期の短縮が図れる」という作用効果を奏するものである。
したがって、訂正発明1は、引用発明1と引用発明2ないし引用発明4及び甲第5号証ないし甲第19号証に記載の従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2-1)訂正発明1と引用発明2との対比
訂正発明1と引用発明2とを対比すると、両者はいずれも「シャッター」の発明であって、引用発明1の「建築物の開口部等に配される」は、訂正発明1の「建物の開口」に相当し、以下同様に、「シャッターカーテン1」は「シャッターカーテン」に、「電動モータ3に外嵌された巻取り軸2」は「電動モータを内蔵したモータチューブ」に、「シャッターケース5」は「シャッター本を収容したシャッターボックス」に、「ガイドレール4」は「ガイドレール」に、「ブラケット7」は「支持枠」に、「開閉駆動用のスイッチ13,14」は「開閉切替え用のスイッチ」に、「電動シャッター装置」は「シャッター」に、それぞれ相当する。
また、引用発明1の「操作摘み22」は、訂正発明1の「操作部材」と、シャッターカーテンの開閉を制御する操作のための部材であるとの限りにおいて一致し、引用発明1の「連結材19」」は、訂正発明1の「伝達部材」と、操作に基づく運動を伝達するための部材との限りにおいて一致する。
してみると、訂正発明1と引用発明2とは、以下の点で一致し、相違点Dないし相違点Gの点で相違する。

<一致点>
「建物の開口に設けられ、シャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、シャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備え、前記シャッター本体における電動モータを内蔵したモータチューブの端部に連結される支持枠には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチには操作部材が伝達部材を介して連結され、前記伝達部材は運動を伝達できるワイヤ等の部材であるシャッター。」

<相違点D>
訂正発明1では、建物の開口に「上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックス」を備えているのに対して、引用発明2では、そのように限定されていない点。

<相違点E>
訂正発明1では、「上枠の下面の内レールの一側に設けられる内障子用のストッパー」を備えているのに対して、引用発明2では、そのように限定されていない点。

<相違点F>
訂正発明1では、シャッターカーテンが「縦枠の前部に設けられ」ているのに対して、引用発明2では、そのように限定されていない点。

<相違点G>
訂正発明1では、「該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴とを設け、この縦枠の中空部に前記伝達部材を上下方向に挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、回動により切替え操作する前記操作部材を、前記ストッパーと同じ側であって、一方の縦枠における外障子よりも室内側の内側面に、前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け、前記伝達部材は回動を伝達できる部材である」のに対して、引用発明2では、そのように限定されていない点。

(2-2)相違点の検討
1)相違点D、相違点Fについて
引用発明1又は引用発明4に示されているように、建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げするシャッター本体を収容したシャッターボックスからなる構造は、本件特許の出願前に公知の構造である。
してみると、引用発明2と同一の技術分野に属する引用発明1又は引用発明4に示された上記構造を引用発明2において採用し、上記相違点Dに係る訂正発明1の発明特定事項を想到することは、当業者が容易になし得た程度のものである。
また、枠体に関する上記構造を採用した際には、シャッターカーテンが縦枠の前部に設けられるような構成となることは、技術的に明白であるから、上記相違点Fに係る訂正発明1の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得た程度のものである。

2)相違点Eについて
甲第14号証ないし甲第16号証に示されているように、上枠の下面の内レールの一側に設けられる内障子用のストッパーを備え、内障子を開放する際に、内障子が縦枠に衝突してクレセント又は引寄ハンドル等の金具の破損を防止する技術は、当該技術分野において周知の技術にすぎない。
そして、引用発明1又は引用発明4に示された上記構造を引用発明2において採用した際には、上記周知技術は当然に採用されてしかるべき技術であり、採用の妨げとなる特段の事項も存在しない。
してみると、上記相違点Eに係る訂正発明1の発明特定事項は、引用発明1又は引用発明3に示された上記構造を引用発明2において採用した際に、合わせて当然に採用されてしかるべき周知の技術の技術であると認められることから、よって、上記相違点Eに係る訂正発明1の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得たものである。

3)相違点Gについて
引用発明2も引用発明4も共にシャッターに関する発明であるから、引用発明2において、引用発明4の構造を採用し、シャッターカーテン1を開閉させる操作摘み22を、縦枠4の内障子と面外方向同一位置の内壁4a、即ち、一方の縦枠における外障子よりも室内側の内側面に設けた構造とすることは、特段の困難性を有することであるとまではいえない。しかしながら、該引用発明4の構造を採用したのみでは、上記相違点Gに係る訂正発明1の発明特定事項と、引用発明2及び引用発明4から推考される事項とは、「該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴」を設けた点、「回動により切替え操作する前記操作部材」の点、及び「前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け、前記伝達部材は回動を伝達できる部材である」点において、依然として相違する。
その相違を解消するためには、引用発明4の構造を採用した引用発明2において、引用発明3の回動によるスイッチと該スイッチを操作するために回動を伝達できるワイヤ等の部材の構造を採用する必要がある。確かに、引用発明3に示されているような、ガス灯又は電灯のコックAを掴むためのソケット形状のはさみ口bに、これを回動するためのハンドルaが渦巻きばねcを介在させて連結される機構、即ち、回動によるスイッチと該スイッチを操作するために回動を伝達できるワイヤ等の部材を用いた機構は、本願出願前に周知の機構であると考えられるが、しかしながら、引用発明2における、上下変位する部材により操作されるスイッチと該スイッチを操作するために上下変位を伝達できるワイヤ等の部材を用いた機構に代えて、引用発明3に示された回動動作を含む機構を採用するに当たって、その契機となる動機付けがなく、また、採用した際に具体的にどのような構造を取ることになるのかも不明であることから、引用発明2において引用発明3に示された上記回動動作を含む機構を採用することは困難なことである。
その上、引用発明4の構造を採用した引用発明2において引用発明3に示された上記回動動作を含む機構を採用し得たとしても、依然として、「前記縦枠は中空構造とされ、前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴」を設けた点において、相違する。なお、甲第17号証には、縦枠に、該縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴を設けることが示されてはいるが、該貫通穴を介して伝達されているのは、電気的な信号であり、訂正発明1のような機械的な運動ではなく、引用発明2又は引用発明4において、上記甲第17号証に示された事項を採用することは、困難なことである。
さらに、上記相違点Gに係る本件発明の発明特定事項を想到するためには、引用発明2において引用発明4の構造を採用し、さらに、引用発明4の構造を採用した引用発明2において引用発明3の機構を採用する必要があると認められるが、そのようなことは、当業者といえども容易に想到し得るものとはいえない。
また、相違点Gに係る訂正発明1の発明特定事項は、操作部材、伝達部材、中空構造とされた縦枠、第1の貫通穴、第2の貫通穴、ケース本体等からなるが、個々の事項が有機的に結合してはじめて、室内側の操作部材から回動操作力を伝えてシャッター本体近傍のスイッチの切替え操作を容易に行うことが可能となり、従来の電動式シャッターとは異なり壁スイッチを要しないので、壁スイッチの取付工事が不要となり、施工性の向上及び工期の短縮が図れるとの機能を実現することができるから、個々の構成要素に分解して容易想到の判断をしてよいものともいえない。
よって、上記相違点Gに係る訂正発明1の発明特定事項は、当業者といえども容易に想到できたものではない。

そして、訂正発明1は、当業者が容易に想到できたものではない上記相違点Gに係る訂正発明1の発明特定事項を含むことで、明細書に記載されたところの「室内側の操作部材から回動操作力を伝えてシャッター本体近傍のスイッチの切替え操作を容易に行うことが可能となり、従来の電動式シャッターと異なり壁スイッチを要しないので、壁スイッチの取付工事が不要となり、施工性の向上及び工期の短縮が図れる」という作用効果を奏するものである。
したがって、訂正発明1は、引用発明2と引用発明1、引用発明3及び引用発明4並びに甲第5号証ないし甲第19号証に記載の従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)訂正発明1と引用発明3との対比・検討
引用発明3は、「第4.甲号各証の記載内容 3.甲第3号証に記載の発明」で認定したように、「ガス灯又は電灯のコックAを掴むためのソケット形状のはさみ口bに、これを回動するためのハンドルaが渦巻きばねcを介在させて連結される機構。」に関するものであり、そもそも訂正発明1と技術分野においてさえ相違している。
してみると、訂正発明1と、引用発明3と引用発明1、引用発明2及び引用発明4並びに甲第5号証ないし甲第19号証に記載の従来周知の事項から推考される発明とを詳細に比較・検討するまでもなく、訂正発明1は、引用発明3と引用発明1、引用発明2、引用発明4、甲第5号証ないし甲第19号証に記載の従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)訂正発明1と引用発明4との対比・検討
引用発明4は、「第4.甲号各証の記載内容 4.甲第4号証に記載の発明」で認定したように、操作ハンドル33を用いてシャッターカーテン14を巻き上げ下げする手動式シャッターに関するものであり、電動モータを用いてシャッターカーテンを開閉する訂正発明1と、技術的な本質を異にするものである。
してみると、訂正発明1と、引用発明4と引用発明1ないし引用発明3及び甲第5号証ないし甲第19号証に記載の従来周知の事項から推考される発明とを詳細に比較・検討するまでもなく、訂正発明1は、引用発明4と引用発明1ないし引用発明3及び甲第5号証ないし甲第19号証に記載の従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)訂正発明1と甲第5号証ないし甲第19号証に記載の事項との対比・検討
甲第5号証ないし甲第19号証に記載の事項は、「第4.甲号各証の記載内容 5.甲第5号証に記載の事項ないし19.甲第19号証に記載の事項」で認定したように、単に従来周知の事項を示す程度の証拠にすぎず、訂正発明1の発明特定事項の一部をそれぞれ例示している程度のものにすぎない。
してみると、訂正発明1と、引用発明1ないし引用発明4及び甲第5号証ないし甲第19号証に記載の従来周知の事項から推考される発明とを詳細に比較・検討するまでもなく、訂正発明1は、引用発明1ないし引用発明4及び甲第5号証ないし甲第19号証に記載の従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.訂正発明2について
訂正発明2は、訂正発明1の「前記伝達部材は回動を伝達できるワイヤ等の部材である」との事項を、「前記伝達部材は回動軸と方向転換用のギヤ機構部からなる」と具体的に限定したものである。してみると、訂正発明2と引用発明1とを対比すると、少なくとも上記「2.訂正発明1について」の相違点Aないし相違点Cにおいて相違し、訂正発明1が上記のとおり引用発明1ないし引用発明4及び甲第5号証ないし甲第19号証に記載の従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、訂正発明2も同様に、引用発明1ないし引用発明4及び甲第5号証ないし甲第19号証に記載の従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4.請求人の主張について
請求人は、平成19年8月8日付け審判請求書において、
「また、本件特許発明1についてみると、その具体的構成のうち、構成A1、B1、C1は、後述のように同号証に記載されていることが明らかである。
してみると、本件特許発明1の特徴となるべき構成は上記D1とE1となるが、構成D1については、後述のように特開平10-9683号公報(甲第2号証)に、開閉切換え用のスイッチの切換操作が回動によることを除き全て記載されており、また、開閉切換え用のスイッチを回動により切換操作するものは、後述のように既に100年も前に開示されており[米国特許第519354号明細書(甲第3号証)]現在では一般常識に属する技術である。
それだけでなく、後述のように、サッシに装着するシャッター装置において、遠隔操作するための操作部材をサッシ近傍に配置して、これに伝達部材を介して回転力を伝達する動力伝達機構は、例えば甲第5号証?甲第12号証に示すように、ごく普通に知られた機構であるから、その機構を用いて開閉切換え用スイッチを構成することは、単なる周知技術の転用にすぎない。したがって。それを以て本件特許発明1の特徴構成ということはできない。
結局、本件特許発明1の特徴構成は上記構成E1に求めざるを得ないが、この構成E1自体、後述のように特開平11-210359号公報(甲第4号証)により既に知られた構成である。
このように、本件特許発明1の各構成要件又は要素はいずれも公知又は周知であり、それらを組み合わせたところで、その作用効果も既に述べたとおり解決済みの範囲を超えるものではない。」旨主張している。
また、平成20年10月29日付け弁駁書において、
「そこで、請求人は、今回の訂正請求に係る上記相違点イ、ロについて詳細に反論すると共に、上記イ、ロ以外の構成については、甲第2?4号証に記載されているか或いは記載されていないとしてもそれらが従来周知か単なる構成の変更にすぎないものであることを指摘しておく。
即ち、訂正に係る構成のうち、上記相違点イ、ロに係る構成以外についてみると、
(ア)「シャッター本体における電動モータを内蔵したモータチューブの端部に連結される支持枠には開閉切替スイッチが設けられ」と訂正した構成は、甲第2号証に記載のもの(例えばその図1,図2,図3参照)と格別相違しない。
(イ)「縦枠の中空部に前記伝達部材を上下方向に挿通させる」は、甲第4号証に既に記載されている。
(ウ)「回動により切替え操作する前記操作部材」自体は、甲第3号証に既に記載されており、また「回動により切替え操作する前記操作部材を、・・・前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け」は、甲第4号証の第2実施例及び図8に記載されている。また、その他の訂正に係る構成は、当業者が適宜採用する単なる構成の変更であって格別の技術的意義はない。
・・・・・。
(ア)まず、上記相違点ロに係る構成中「縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴を設け」については、例えば、特許2515241号公報(甲第17号証、例えば図1参照)に記載されている。また、「回動のより切替え操作する前記操作部材を、・・・前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け」る点については、甲第4号証の例えば図8に記載されている。また、そもそも、単に穴を塞ぐのにその上に取り付けるケースを用いる程度のことは、例えば、甲第17号証(例えば図4、5参照)、特開平7-127351号公報(甲第18号証、例えば図5参照)、特開昭59-158873号公報(甲第19号証、第1図の操作押し釦(23)と押釦取付孔(22)、その他の図面参照)に示すように周知である。」旨、主張している。

そこで請求人の主張を検討するに、訂正発明1を特定する「開閉切替え用のスイッチ」や「該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され」、「前記縦枠は中空構造とされ、前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴とを設け、この縦枠の中空部に前記伝達部材を上下方向に挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き」、「回動により切替え操作する前記操作部材を、前記ストッパーと同じ側であって、一方の縦枠における外障子よりも室内側の内側面に」、「前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け」、「前記伝達部材は回動を伝達できるワイヤ等の部材」などの各事項が、たとえ従来公知又は周知のものであったとしても、訂正発明1は、上記各事項を含む請求項1に記載した発明を特定する各事項が互いに関連し合って明細書記載の課題を解決するものであるから、必要以上に個々の事項に分解して、訂正発明1の進歩性を判断してよいものとはいえない。
また、訂正発明1は、請求項1に記載した各事項を具備することにより、明細書に記載されたところの「室内側の操作部材から回動操作力を伝えてシャッター本体近傍のスイッチの切替え操作を容易に行うことが可能となり、従来の電動式シャッターと異なり壁スイッチを要しないので、壁スイッチの取付工事が不要となり、施工性の向上及び工期の短縮が図れる」という作用効果を奏するものであるから、出願人の主張は採用できない。
したがって、訂正発明1は、引用発明1ないし引用発明4及び甲第5号証ないし甲第19号証に記載の従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

5.まとめ
したがって、訂正発明1及び訂正発明2は、引用発明1ないし引用発明4及び甲第5号証ないし甲第19号証に記載の従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第8.第1次審決の無効理由について
上記「第7.無効理由に対する当審の判断」の「5.まとめ」で説示したように、訂正発明1は、引用発明1ないし引用発明4及び甲第5号証ないし甲第19号証に記載の従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、引用発明1、引用発明2及び引用発明4並びに周知技術A(甲第3号証、甲第6号証、甲第7号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができないというべきである。
同様に、訂正発明2は、引用発明1ないし引用発明4及び甲第5号証ないし甲第19号証に記載の従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、引用発明1、引用発明2及び引用発明4並びに周知技術A(甲第3号証、甲第6号証、甲第7号証)及びC(甲第5号証、甲第9号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができないというべきである。
以上のとおり、訂正発明1及び訂正発明2は、第1次審決の理由によっては無効とすべきものとすることはできない。

第9.むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由はいずれも理由のないものであり、請求人の主張及び証拠方法によっては、訂正発明1、訂正発明2についての本件特許を無効とすることができず、また、第1次審決の理由によっても本件特許を無効とすることもできない。
また、本件審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
シャッター
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、その上枠の下面の内レールの一側に設けられる内障子用のストッパーと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備え、前記シャッター本体における電動モータを内蔵したモータチューブの端部に連結される支持枠には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴とを設け、この縦枠の中空部に前記伝達部材を上下方向に挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、回動により切替え操作する前記操作部材を、前記ストッパーと同じ側であって、一方の縦枠における外障子よりも室内側の内側面に、前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け、前記伝達部材は回動を伝達できるワイヤ等の部材であることを特徴とするシャッター。
【請求項2】
建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、その上枠の下面の内レールの一側に設けられる内障子用のストッパーと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備え、前記シャッター本体における電動モータを内蔵したモータチューブの端部に連結される支持枠には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴とを設け、この縦枠の中空部に前記伝達部材を上下方向に挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、回動により切替え操作する前記操作部材を、前記ストッパーと同じ側であって、一方の縦枠における外障子よりも室内側の内側面に、前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け、前記伝達部材は回動軸と方向転換用のギヤ機構部からなることを特徴とするシャッター。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シャッターに係り、特に壁スイッチの取付工事を不要にしたシャッターに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のシャッターとしては、建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備えた電動式のシャッターが知られている。この種のシャッターは、前記シャッター本体から電源ケーブルを介して引き出された開閉切替え用の壁スイッチを室内の壁に取付けるように構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記シャッターにおいては、壁スイッチを有している構造上、建物の内装工事を仕上げてからでないと壁スイッチの取付工事を行うことできず、また、壁スイッチの取付けには壁内部への電源ケーブルの挿通作業や壁に穴を開けて壁スイッチを取付ける作業等を要し、施工が大変で工期もかかるという問題があった。
【0004】
本発明は、前記事情を考慮してなされたもので、壁スイッチの取付工事が不要で施工性の向上及び工期の短縮が図れるシャッターを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち、請求項1に係る発明は、建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、その上枠の下面の内レールの一側に設けられる内障子用のストッパーと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備え、前記シャッター本体における電動モータを内蔵したモータチューブの端部に連結される支持枠には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴とを設け、この縦枠の中空部に前記伝達部材を上下方向に挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、回動により切替え操作する前記操作部材を、前記ストッパーと同じ側であって、一方の縦枠における外障子よりも室内側の内側面に、前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け、前記伝達部材は回動を伝達できるワイヤ等の部材であることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、その上枠の下面の内レールの一側に設けられる内障子用のストッパーと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備え、前記シャッター本体における電動モータを内蔵したモータチューブの端部に連結される支持枠には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴とを設け、この縦枠の中空部に前記伝達部材を上下方向に挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、回動により切替え操作する前記操作部材を、前記ストッパーと同じ側であって、一方の縦枠における外障子よりも室内側の内側面に、前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け、前記伝達部材は回動軸と方向転換用のギヤ機構部からなることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を添付図面に基いて詳述する。図1は本発明の実施の形態を示すシャッターの要部断面図、図2は同シャターの概略的分解斜視図、図3は図1のA-A矢視概略的断面図、図4はシャッター本体の駆動部の一例を示す斜視図、図5は伝達部材の構成を示す分解斜視図である。
【0007】
図1、図2ないし図3において、1は電動式のシャッターで、建物の開口に設けられる上枠2a、下枠2b及び左右の縦枠2c,2cからなる枠体2と、その上枠2a上に設けられシャッターカーテン(スラットとも言う)3を巻き上げ下げ(巻上げ、巻降ろし)する電動式のシャッター本体4を収容したシャッターボックス5と、前記縦枠2c、2cの前部に設けられシャッターカーテン3を開閉自在に案内するガイドレール6,6とを備えている。
【0008】
前記枠体2は、シャッター枠と共にサッシ枠を構成しており、この枠体2内には内外の障子7a,7bが引違い状に開閉自在に取付けられている。すなわち、図示例のシャッター1はサッシと一体に構成されている。また、前記左右の縦枠2c,2cは、上枠2aよりも上方に延長されており、左右の縦枠2c,2cの上端部間にはシャッターボックス5の頂部を構成する頂部枠2dが掛け渡されている。
【0009】
前記シャッター本体4の近傍には、開閉切替え用のスイッチ8が設けられ、このスイッチ8にはこれを切替え操作するための操作部材9が伝達部材10を介して連結されている。この場合、前記縦枠2cは中空構造(ホロー構造)とされ、この縦枠2cの上下方向に連通した中空部(ホロー部)27に前記伝達部材10を挿通させることにより室外側のシャッターボックス5内から室内側の枠体(サッシ枠)2内に導き、前記操作部材9を室内側に設けている。操作部材9は、一方の縦枠2cにおける外障子7bよりも室内側の内側面に配置されている。
【0010】
シャッター本体4は、例えば図4に示すように、電動モータを内蔵したモータチューブ11を有し、このモータチューブ11の一端から突出したモータ出力軸(回転軸)12にアダプタ13を介してシャッターカーテン3の筒状の巻取りシャフト14が嵌合連結されている。通常動作時には、アダプタ13が回転することにより巻取りシャフト14が回転し、シャッターカーテン3の巻上げ、巻降ろしが行われる。前記モータチューブ11の他端は支持枠15に連結され、例えばこの支持枠に15に前記スイッチ8が設けられている。なお、シャッター本体4の構成はこれに限定されるものではなく、スイッチ8はシャッター本体4の近傍に設けられていれば良い。
【0011】
図1ないし図5に示すように、前記伝達部材10として、本実施例では回動を正確に伝えるために第1,第2,第3の回動軸20,21,22と方向転換用の第1,第2,第3,第4のギヤ機構部23,24,25,26が用いられている。第1,第2,第3,第4のギヤ機構部23,14,25、26は方向を略90度転換するための傘歯車をL字状のギヤケース内に内蔵したものからなっている。
【0012】
前記シャッター本体4近傍の開閉切替え用のスイッチ8にはこれを切替え操作する垂直の第1の回動軸20の一端(上端)が連結され、この第1の回動軸20の他端(下端)と水平の第2の回動軸21の一端とが第1のギヤ機構部23を介して連結されている。この第2の回動軸21の他端が第2,第3のギヤ機構部24,25を介して垂直の第3の回動軸22の一端(上端)に連結され、この第3の回動軸22の他端(下端)が第4のギヤ機構部26を介して操作部材9の出力軸部9cに連結されている。なお、第1の回動軸20は、ワイヤなどにすることにより、第1のギヤ機構部23を介さずに、直接第2のギヤ機構部24に連結されていても良い。また、回動軸20または21のギヤ機構部23または24への連結は、シャッター本体4の枠体2への取付けと同時に自動的に連結されるようになっていることが好ましい。
【0013】
縦枠2cの内側面には上枠2aよりも上方に中空部27と連通する第1の貫通穴28が、上枠2aよりも下方に中空部27と連通する第2の貫通穴29がそれぞれ設けられている。第2及び第3のギヤ機構部24,25は、向きを横方向に変え更に下方向に変えるべく連結されており、これらの中間部に設けられた取付板30が前記第1の貫通穴28を塞ぐべく縦枠2cの内側面にネジ31で固定されている。すなわち、前記第3のギヤ機構部25は第1の貫通穴28から縦枠2cの中空部27内に挿入されており、第3の回動軸22が縦枠2cの中空部27内を上下方向に挿通されている。
【0014】
前記操作部材9は、ケース本体9aの正面に操作ダイヤル9bを回動自在に設けてなり、操作ダイヤル9bの裏面部から第2の貫通穴29を通って縦枠2cの中空部27内に臨むように出力軸部9cが延出されている。この出力部9cには第4のギヤ機構部26を介して前記第3の回動軸22の下端部が連結されている。前記操作部材9のケース本体9aは前記第2の貫通穴29を塞ぐべく縦枠2cの内側面にネジ32で固定されている。
【0015】
上枠2aの下面には内障子用と外障子用の内外のレール33a,33bが設けられ、その内レール33a側の一側(図3の図示例で左側)には、内障子用のストッパー34が設けられている。前記操作部材9は内障子用のストッパー34と同じ側に配置され、内障子7aの開移動がストッパー34で規制されることにより内障子7aと操作部材9とが干渉しないようになっている。また、操作部材9は閉鎖時の外障子7bよりも室内側に外障子7bと干渉しないように設けられている。なお、縦枠2cの内側面には第2の回動軸21の中間部を回動自在に支持する支持部材35が取付けられている。
【0016】
以上の構成からなるシャッター1においては、シャッター1を建物の躯体に取付けたなら、モータヘッド15から引き出されている電源ケーブル(図示省略)を建物の躯体側に導いておけば、電気工事の際に電源ケーブルを電源に接続するだけで良く、壁スイッチの工事を一切必要としない。すなわち、壁スイッチを備えていないため、内装の仕上げを待つ必要が無く、シャッター1を取付けるだけでシャッター1の取付工事が完了し、壁スイッチの工事を要しないので、施工性の向上及び工期の短縮が図れる。
【0017】
すなわち、前記シャッター1によれば、建物の開口に設けられる上枠2a、下枠2b及び左右の縦枠2c,2cからなる枠体2と、その上枠2a上に設けられシャッターカーテン3を巻き上げ下げする電動式のシャッター本体4を収容したシャッターボックス5と、前記縦枠2c,2cの前部に設けられシャッターカーテン3を開閉自在に案内するガイドレール6,6とを備え、前記シャッター本体4の近傍には開閉切替え用のスイッチ8が設けられ、該スイッチ8にはこれを切替え操作するための操作部材例えば操作棒9が伝達部材10を介して連結され、前記縦枠2cは中空構造とされ、この縦枠2cの中空部27に前記伝達部材10を挿通させて前記操作部材9を室内側に設けているため、室内側からシャッター本体4近傍のスイッチ8の切替え操作を容易に行うことが可能となり、従来の電動式シャッターと異なり壁スイッチを要しないので、壁スイッチの取付工事が不要となり、施工性の向上及び工期の短縮が図れる。
【0018】
また、伝達部材10として、第1,第2,第3の回動軸20,21,22と方向転換用の第1,第2,第3,第4のギヤ機構部23,24,25,26が用いられているため、回動操作力を正確且つ容易に伝えることができ、操作性の向上が図れる。
【0019】
以上、本発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の設計変更等が可能である。例えば、前記実施例では、サッシ枠とシャッター枠が一体のシャッターが例示されているが、本発明のシャッターとしては、サッシ枠とシャッター枠が別体に構成されていても良い。また、伝達部材としては、可撓性を有し、曲線状に曲げても回動ないし回転を伝達できるワイヤ等であっても良い。
【0020】
操作部材9として、前記実施例では操作ダイヤルを有するものが例示されているが、操作部材としてはこれに限定されるものではなく、例えば図6に示すように操作棒9dを有するもの、或いは操作棒からなるものであっても良い。本体ケース9aには第4のギヤ機構部26と連結される第5のギヤ機構部36が設けられ、この第5のギヤ機構部36に操作棒9dの上端部が連結されている。操作棒9dは簡単に取外せるように着脱自在に取付けられていても良い。前記操作棒9dを回動することにより伝達部材及び切替え部材を介してスイッチを切替え操作することができる。
【0021】
【発明の効果】
以上要するに請求項1に係る発明によれば、建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、その上枠の下面の内レールの一側に設けられる内障子用のストッパーと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備え、前記シャッター本体における電動モータを内蔵したモータチューブの端部に連結される支持枠には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴とを設け、この縦枠の中空部に前記伝達部材を上下方向に挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、回動により切替え操作する前記操作部材を、前記ストッパーと同じ側であって、一方の縦枠における外障子よりも室内側の内側面に、前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け、前記伝達部材は回動を伝達できるワイヤ等の部材であるため、室内側の操作部材から回動操作力を伝えてシャッター本体近傍のスイッチの切替え操作を容易に行うことが可能となり、従来の電動式シャッターと異なり壁スイッチを要しないので、壁スイッチの取付工事が不要となり、施工性の向上及び工期の短縮が図れる。
請求項2に係る発明によれば、建物の開口に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠上に設けられシャッターカーテンを巻き上げ下げする電動式のシャッター本体を収容したシャッターボックスと、その上枠の下面の内レールの一側に設けられる内障子用のストッパーと、前記縦枠の前部に設けられシャッターカーテンを開閉自在に案内するガイドレールとを備え、前記シャッター本体における電動モータを内蔵したモータチューブの端部に連結される支持枠には開閉切替え用のスイッチが設けられ、該スイッチにはこれを回動により切替え操作するための操作部材が伝達部材を介して連結され、前記縦枠は中空構造とされ、前記縦枠には前記縦枠の中空部と連通する第1の貫通穴と第2の貫通穴とを設け、この縦枠の中空部に前記伝達部材を上下方向に挿通させることにより室外側から室内側の枠体内に導き、回動により切替え操作する前記操作部材を、前記ストッパーと同じ側であって、一方の縦枠における外障子よりも室内側の内側面に、前記貫通穴の一つを塞ぐべく固定されたケース本体の正面に回動自在に設け、前記伝達部材は回動軸と方向転換用のギヤ機構部からなるため、室内側の操作部材から回動操作力を正確に伝えてシャッター本体近傍のスイッチの切替え操作を容易に行うことが可能となり、従来の電動式シャッターと異なり壁スイッチを要しないので、壁スイッチの取付工事が不要となり、施工性の向上及び工期の短縮が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示すシャッターの要部断面図である。
【図2】同シャターの概略的分解斜視図である。
【図3】図1のA-A矢視概略的断面図である。
【図4】シャッター本体の駆動部の一例を示す斜視図である。
【図5】伝達部材の構成を示す分解斜視図である。
【図6】操作部材の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 シャッター
2 枠体
2a 上枠
2b 下枠
2c 縦枠
3 シャッターカーテン
4 シャッター本体
5 シャッターボックス
6 ガイドレール
8 スイッチ
9 操作部材
10 伝達部材
27 中空部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-02-13 
結審通知日 2009-01-28 
審決日 2008-02-29 
出願番号 特願2002-172305(P2002-172305)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (E06B)
P 1 113・ 832- YA (E06B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 江成 克己  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 西島 篤宏
飯野 茂
登録日 2007-04-13 
登録番号 特許第3944001号(P3944001)
発明の名称 シャッター  
代理人 河野 哲  
代理人 根本 恵司  
代理人 中村 誠  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 石川 真一  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 河野 哲  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 石川 真一  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 中村 誠  

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