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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1195750
審判番号 不服2008-8145  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-03 
確定日 2009-04-09 
事件の表示 特願2003- 41015「異方性光拡散粘着層及びその積層体、並びに照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月29日出願公開、特開2004-212916〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年(2003年)年2月19日(国内優先権主張、平成14年11月14日)の出願(特願2003-41015号)であって、平成20年2月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成20年4月3日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成20年4月30日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成20年4月30日付けの手続補正についての補正の却下の決定について

[補正の却下の決定の結論]
平成20年4月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

1 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成20年1月9日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載の、

「粘着剤と、前記粘着剤と屈折率の異なる針状フィラーとを含有すると共に、前記針状フィラーが略同一方向に配向して分散されており、針状フィラーが、酸化亜鉛、ベーマイト、ホウ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、塩基性硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウムのいずれかを含むことを特徴とする異方性光拡散粘着層。」が

「粘着剤と、前記粘着剤と屈折率の異なる針状フィラーとを含有すると共に、前記針状フィラーが略同一方向に配向して分散されており、針状フィラーが、ホウ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、塩基性硫酸マグネシウムのいずれかを含むことを特徴とする異方性光拡散粘着層。」と補正された。

そして、この補正は、針状フィラーの材質について、その材質名の例示を、より限定して特定するものであるから、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とするものに該当する。
すなわち、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものを含む。

2 独立特許要件違反についての検討
そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明1は、平成20年4月30日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されるものである。(上記「1 本件補正について」の記載参照。)

(2)引用例
ア 引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-347006号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下記の「イ 引用例1に記載された発明の認定」において直接引用した記載に下線を付した。)

「【0001】
【発明の技術分野】本発明は、光の透過率と拡散性のバランスに優れて明るさ等の視認性に優れる液晶表示装置の形成などに好適な拡散粘着層及びその光学部材に関する。」

「【0006】
【発明の実施形態】本発明による拡散粘着層は、光透過性の無着色粒子を分散含有して光拡散性を示す光透過性の粘着層からなり、その光拡散性が、垂直入射光の垂直透過方向に対し10度又は30度傾斜した方向における透過光の強度を前者I10、後者I30としたとき100×I30/I10で定義される光拡散率に基づいて10%以下であるものからなる。
【0007】拡散粘着層の形成には、光透過性を示す適宜な粘着性物質を用いることができ、その種類について特に限定はない。ちなみに前記粘着性物質の例としては、ゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤やビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤やポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤やセルロース系粘着剤などがあげられる。
【0008】粘着層を形成する粘着性物質は、光透過性に優れるものが好ましく耐候性等も加味した場合、特にアクリル系粘着剤が好ましく用いうる。なお拡散粘着層は必要に応じて、接着力の調節などを目的に無着色粒子を含有しない透明粘着層と重畳形態に形成されていてもよい。
【0009】拡散粘着層に分散含有させる光透過性の無着色粒子としては、無色透明性の適宜なものを用いうる。ちなみにその例としては、シリカやアルミナ、チタニアやジルコニア、酸化錫や酸化インジウム、酸化カドミウムや酸化アンチモン等の導電性のこともある無機系粒子、架橋又は未架橋の各種ポリマー等からなる有機系粒子などがあげられる。
【0010】拡散粘着層の形成は、例えば粘着性物質と光透過性の無着色粒子の混合物をカレンダーロール法等による圧延方式、ドクターブレード法やグラビアロールコータ法等による塗工方式などの適宜な方式で光学素子等からなる支持基材に付設する方式、あるいはその支持基材にセパレータを用いてそのセパレータ上に前記に準じ拡散粘着層を形成してそれを光学素子等からなる他の支持基材に移着する方式などの適宜な方式で行うことができる。
【0011】前記において本発明においては、無着色粒子の含有により光拡散率が10%以下の光拡散性を示す拡散粘着層として形成することが必要である。その光拡散率が10%を超えると光の拡散度が過大となり、反射型液晶表示装置を照明下に視認する場合の正面(垂直)方向の明るさに乏しくなる。光の拡散性による良視認の視野角の拡大と前記正面方向の明るさとのバランスなどの点より好ましい光拡散率は、1?9%、就中1.5?8%、特に2?7%である。
【0012】なお前記の光拡散率は、図1に例示した如く拡散粘着層1に垂直光Hを入射させた場合に、その垂直入射光Hの垂直透過方向I_(0)に対し1_(0)度傾斜した方向における透過光の強度をI_(10)、前記I_(0)に対し30度傾斜した方向における透過光の強度をI_(30)としたとき、1_(00)×I_(30)/I_(10)(%)にて定義される。
【0013】前記した光拡散率の達成性と接着力の制御性などの点より好ましく用いうる無着色粒子は、その平均粒径が1?10μm、就中9μm以下、特に2?8μmのものである。また後方散乱を抑制して透過方向に良好な拡散性をもたせる点などよりは無着色粒子の屈折率をn^(1)、粘着層の屈折率をn^(2)としたとき、式:0.01<┃n^(1)-n^(2)┃<0.1、就中┃n^(1)-n^(2)┃<0.09、特に-0.08<n^(1)-n^(2)<-0.01を満足する組合せとしたものが好ましい。
【0014】なお拡散粘着層に分散含有させる光透過性の無着色粒子の量は、上記した光拡散率などに基づいて適宜に決定されるが一般には、接着力を確保する点などより粘着層(固形分)100重量部あたり、5?200重量部、就中10?150重量部、特に15?100重量部の無着色粒子が用いられる。また拡散粘着層の厚さは、目的とする光拡散率や接着力などに応じて決定しうるが一般には、300μm以下、就中1?200μm、特に5?100μmの厚さとされる。」

イ 引用例1に記載された発明の認定
上記記載事項の記載からみて、引用例1には、拡散粘着層に関し、
「光の透過率と拡散性のバランスに優れて明るさ等の視認性に優れる液晶表示装置の形成などに好適な拡散粘着層であって、光透過性の無着色粒子を分散含有して光拡散性を示す光透過性の粘着層からなり、無着色粒子の屈折率をn^(1)、粘着層の屈折率をn^(2)としたとき、特に-0.08<n^(1)-n^(2)<-0.01を満足する組合せとした拡散粘着層。」の発明(以下、「引用発明」という。)の記載が認められる。

ウ 引用例2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平8-327805号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。(下記の「(4)判断」において参照する記載に下線を付した。)

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液晶パネルなどの映像を光学系により拡大映写してスクリーン上に重ね合わせ、前面からカラー画像として観察する画像投写装置に用いる透過型投写スクリーン用光拡散板、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】投写管、液晶パネルなどを用いた背面投写型の画像投写装置、いわゆるプロジェクションテレビにおいては、赤、緑、青の発光面を持つ3つの投写管(あるいは液晶パネル)の画像を3本の拡大光学系が水平方向一列に並べられている構成が一般的だが、最近、3つの投写管(液晶パネル)もしくは1つの投写管(液晶パネル)の画像を1本の拡大光学系によって拡大投写される構成のプロジェクションテレビが開発、発売されている。このような構成(以後、単レンズ式と記す)のプロジェクションテレビでは従来、図2に示すような構成の透過型投写スクリーンが用いられてきた。すなわち、投写器側より断面鋸歯状となるように、同心的にレンズ10を形成し、発散する投写光を観察者側に集光する作用を持つフレネルレンズシート5、次に投写光を水平方向に広い視野角を得られるように配向する作用を持つ為に表裏両面にシリンドリカルなレンズ6を形成したレンチキュラレンズシート11で構成されている。
【0003】この構成においては垂直方向に投写光を配向する手段としてはレンチキュラレンズシート11中に分散された拡散材料7による投写光の屈折、拡散を用いている一方、水平方向の投写光の配向手段としてはレンチキュラレンズ6を用いており、その拡散性は図3に示すとおり水平方向が垂直方向に比べてかなり大きくなっている。これはプロジェクションテレビの特性として、多人数で観察できるように水平方向の視野角が垂直より広いことが望まれることによる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような構成では従来、特に原画像形成装置として液晶パネルをもちいた場合、パネルの画素ピッチとレンチキュラレンズ6のピッチとの干渉により生じるモアレ妨害とよばれる画像劣化要因が生じ、これを生じさせないための各ピッチの最適化が必要であったが、それによれば例えば最適なレンチキュラレンズピッ
チは約0.5(mm)以下となり、このようなレンチキュラレンズを精度良く作成することはコスト的、工法的に大変難しいという問題があった。
【0005】そこで本発明では発明者らは従来と全く異なった構成にてレンチキュラレンズと同等の異方性を持つ配向特性を、モアレ妨害の発生無く実現できる透過型投写スクリーン用光拡散板、及びその製造方法を発明したので以下に詳細に説明する。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は基材中に光拡散要素である針状粒子が分散され、かつ当該針状粒子が略一方向に配向されたことにより、その拡散性に異方性を有することを特徴とする透過型投写スクリーン用光拡散板を提供する。」

(3)対比
ア ここで、本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「光透過性の無着色粒子を分散含有して光拡散性を示す光透過性の粘着層」と、本願補正発明の「粘着剤と、前記粘着剤と屈折率の異なる針状フィラーとを含有する・・・異方性光拡散粘着層」とは、「粘着剤と、フィラーとを含有する光拡散粘着層」である点で一致する。

引用発明の「無着色粒子の屈折率をn^(1)、粘着層の屈折率をn^(2)としたとき、特に-0.08<n^(1)-n^(2)<-0.01を満足する組合せとした」ことと、本願補正発明の「粘着剤と、前記粘着剤と屈折率の異なる針状フィラーとを含有する」こととは、「粘着剤と、前記粘着剤と屈折率の異なるフィラーとを含有する」ことで一致する。

イ 一致点
したがって、本願補正発明と引用発明は、
「粘着剤と、前記粘着剤と屈折率の異なるフィラーとを含有する光拡散粘着層。」の発明である点で一致し、次の各点で相違する。

ウ 相違点
(ア)相違点1
粘着剤に含有されているフィラーについて、本願補正発明においては、フィラーが「針状フィラー」であって「針状フィラーが略同一方向に配向して分散され」ることにより光拡散層が「異方性」を有するのに対して、引用発明においてはその点が特定されていない点。

(イ)相違点2
フィラーの材質が、本願補正発明においては「ホウ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、塩基性硫酸マグネシウムのいずれかを含む」のに対して、引用発明においてはその点が特定されていない点。

(4)当審の判断
ア 次に、上記相違点について検討する。
(ア)相違点1について
引用例2には、液晶装置において、異方性を持つ配向特性の実現を技術課題として、基材中に針状フィラーが略同一方向に配向して分散されることにより光拡散層が異方性を有するようにすることが記載されており(下線部参照)、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項は引用例2に記載されているといえる。
一方、引用発明は液晶装置の視認性の改善を課題としており、そして、液晶装置の視認性において視野特性を勘案して光拡散性に異方性を与えることは自明の課題であるといえるから、引用発明と引用例2に記載された発明は、技術分野及び技術課題で共通しているといえる。
したがって、引用発明に上記引用例2に記載された発明を適用し、「フィラーが針状フィラーであって、針状フィラーが略同一方向に配向して分散されることにより光拡散層が異方性を有する」ようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)相違点2について
基材に含有させる針状フィラーの材質について、針状フィラーをホウ酸アルミニウムとすることは、例えば、特開2001-2955号公報(【0012】)、特開2002-265769号公報(【0098】)にも記載されているように周知であり、また、針状フィラーをケイ酸カルシウムとすることは、例えば、特開2002-265769号公報(【0060】)にも記載されているように周知であり、また、針状フィラーを塩基性硫酸マグネシウムとすることは、例えば、特開2002-265769号公報(【0098】)、特開平10-12023号公報(【0026】)にも記載されているように周知である。
引用発明のフィラーの材質に、上記周知技術を適用し、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得た事項である。

イ そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明、引用例2に記載された発明及び上記の周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ したがって、本願補正発明1は、引用発明、引用例2に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用1に記載された発明、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成20年4月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年1月9日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成20年4月30日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成20年4月30日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(2)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、上記「第2 平成20年4月30日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」で述べた、針状フィラーの材質について、その材質名の例示を、より限定して特定する限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成20年4月30日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」において記載したとおり、引用1に記載された発明、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用1に記載された発明、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用1に記載された発明、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-04 
結審通知日 2009-02-10 
審決日 2009-02-24 
出願番号 特願2003-41015(P2003-41015)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森口 良子  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 森林 克郎
安田 明央
発明の名称 異方性光拡散粘着層及びその積層体、並びに照明装置  
代理人 鈴木 三義  
代理人 渡邊 隆  
代理人 西 和哉  
代理人 高橋 詔男  
代理人 村山 靖彦  
代理人 志賀 正武  

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