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審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1195818
審判番号 不服2006-10209  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-18 
確定日 2009-04-15 
事件の表示 特願2001-343689「パチンコ遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月13日出願公開、特開2003-135740〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年11月8日の出願であって、平成17年11月18日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成18年1月13日付けで手続補正がなされ、同年4月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年5月18日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。
また、当審において、平成20年6月23日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から同年8月19日に回答書が提出されている。

2.本願発明
平成18年5月18日付けの手続補正は、請求項の削除を目的とする補正であり、補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 入賞開閉口により外部と連通する閉鎖作動領域内に一般領域と特定領域とを具備し、かつ入賞開閉口を開閉する開閉駆動装置を具備する入賞装置を備え、遊技盤面に設けられた始動領域を遊技球が通過すると、開閉駆動装置を所定時間開放駆動して、入賞開閉口を開放し、入賞開閉口から閉鎖作動領域内に入った遊技球が特定領域を通過すると、開閉駆動装置が連続開閉駆動して、入賞開閉口の所定制限開閉回数の開閉満了、又はこの入賞開閉口からの規定個数の入賞満了により一旦終了する大当りラウンドを予め定められた制限ラウンド回数以内で繰り返し実行可能とする大当り遊技を実行するパチンコ遊技機において、
前記大当り遊技中にあって、各大当りラウンドでの入賞開閉口の開閉作動が所定回数実行される間に、閉鎖作動領域に流入する遊技球の個数が所定範囲数であった場合に、入賞開閉口を開閉する開閉駆動装置の開放作動及び/又は閉鎖作動の作動タイミングを変更する開閉タイミング是正手段を備え、
前記開閉タイミング是正手段が、大当り遊技中の連続開閉作動中の、少なくとも1開閉サイクル中の閉口時間を、延長又は短縮することにより、その後の入賞開閉口の連続開閉作動の作動タイミングを変更するものであることを特徴とするパチンコ遊技機。」

3.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-300043号公報(以下「引用文献」という。)には、図面とともに、
【請求項1】開閉片により開閉制御される可変入賞口が左右位置に配設され、かつ該左右の可変入賞口と連通する作動領域内に普通入賞領域と特定入賞領域とを具備する変動入賞装置を備え、遊技盤面に設けられた始動領域に球が流入すると、開閉片が開放して左右の可変入賞口を開放すると共に、該可変入賞口から流入した遊技球が作動領域内の特定入賞領域に球が流入すると、開閉片が往復開閉駆動を行ない、開閉片の所定制限開閉回数の開閉満了、または可変入賞口からの規定個数の入賞満了により、往復開閉駆動を停止する開閉ラウンドを、1回又は複数回繰り返してなる特別遊技作動を実行するようにしたパチンコ機において、
特別遊技作動中の開閉ラウンドにあって、左可変入賞口と右可変入賞口の入賞球数比又は入賞球数差等の入賞球数比較値を、遊技者の利得と関係付けられた所定有利形態の決定条件としたことを特徴とするパチンコ機。
【請求項3】所定有利形態が、次の開閉ラウンドへの更新作動であり、開閉ラウンドの満了時における左可変入賞口と右可変入賞口の入賞球数比較値が所定閾値内であることを条件として、次の開閉ラウンドに更新可能とした請求項1記載のパチンコ機。
【0006】【課題を解決するための手段】本発明は、開閉片により開閉制御される可変入賞口が左右位置に配設され、かつ該左右の可変入賞口と連通する作動領域内に普通入賞領域と特定入賞領域とを具備する変動入賞装置を備え、遊技盤面に設けられた始動領域に球が流入すると、開閉片が開放して可変入賞口を開放すると共に、該可変入賞口から流入した遊技球が作動領域内の特定入賞領域に球が流入すると、開閉片が往復開閉駆動を行ない、開閉片の所定制限開閉回数の開閉満了、または可変入賞口からの規定個数の入賞満了により、往復開閉駆動を停止する開閉ラウンドを、1回又は複数回繰り返してなる特別遊技作動を実行するようにしたパチンコ機において、特別遊技作動中の開閉ラウンドにあって、左可変入賞口と右可変入賞口の入賞球数比又は入賞球数差等の入賞球数比較値を、遊技者の利得と関係付けられた所定有利形態の決定条件としたものである。・・・
【0014】【発明の実施の態様】本発明の実施例を図面に従って説明する。図1はパチンコ遊技機1の遊技盤4の正面図であって、その盤面中央には、変動入賞装置10が配設される。また、変動入賞装置10の下方には表示装置6を備える始動領域5,5が配設されている。この始動領域5,5は、その球流入に伴って表示装置6が変動し、所定図柄を表示すると、開閉駆動装置7(図3,4参照)を駆動して、後述する開閉片16,16を1回又は2回作動して、可変入賞口15を開閉する。その他、遊技盤4には種々の一般入賞口が設けられている。
【0015】次に変動入賞装置10について説明する。入賞ケース11の中央部には、周壁12に囲繞されて閉鎖され、かつ奥に深い作動領域13が配設されている。該作動領域13上には天井部14により直上を遮蔽された左右の可変入賞口15a,15bが設けられ、さらに天井部14と可変入賞口15との間に、左右方向へ移動する開閉片16,16が両側に配設されている。・・・
【0017】この作動領域13内にあって、図中ホッケー選手形の係止作動片20,20が左右に配設され、そのホッケーからなる係止片21,21を係止駆動装置9により上下方向へ傾動可能とし、その上部停止位置で、該係止片21,21間に遊技球を滞留可能としている。また、その作動領域13の下部には、中央に特定入賞領域25がその左右に普通入賞領域26,26が夫々配設され、入賞口25,26間上に係止片21,21により係止された遊技球が通過する案内台27,27が配設されている。
【0018】かかる構成にあって、始動領域5,5の球流入にともない、開閉片16,16が開放作動し、その開放中に左右の可変入賞口15a,15bから作動領域13内に入った遊技球が、特定入賞領域25に流入すると、特別遊技作動が開始され、開閉ラウンドとして開閉片16,16の往復回動を生ずる。そして、左右の可変入賞口15a,15bから流入した入賞球は、一旦係止片21,21により係止され、かつ係止不能の球は、案内台27の突起が前方に駆動して、特定入賞領域25を塞ぐ位置にあるため、前方へこぼれても殆どが普通入賞領域26に流入する。また、規定個数10個が流入するか、所定制限開閉回数18回が消化されると、開閉ラウンドが終了し、その終了時に、係止駆動装置9が駆動して、前記係止片21,21が下方へ傾動し、同時に案内台27が回転して突起が側方(左右)に位置するため、特定入賞領域25に流入し易くなって、該特定入賞領域25に流入した場合には、開閉ラウンドが再開される。尚、本発明にあっては、この開閉ラウンドが継続しない場合がある。
【0021】また中央制御装置CPUには入力ポートを介して始動領域5,5に設けられた始動スイッチS1 、特定入賞領域25に設けられた特定領域スイッチS2 、及び左可変入賞口15aからの入賞個数を検知する入賞球検知スイッチ(カウントスイッチ)Sx と、右可変入賞口15bからの入賞個数を検知する入賞球検知スイッチ(カウントスイッチ)Sy 等の各種スイッチが接続される。・・・
【0027】この場合に、最多継続ラウンドを定めて、このラウンド以上は継続しないこととすることができる。・・・
【0030】その他の、所定有利形態としては、1開閉ラウンド当たりの、開閉片16の作動回数を増加させたり、開閉可動時間を延長する等が提案される。すなわち、入賞球数比x/y又は入賞球数差(x-y)が所定閾値以内であると、通常1開閉ラウンド当たりの所定制限開閉回数18回であるのを、次の開閉ラウンドでは所定制限開閉回数を19回にしたり、または、その開閉時間を緩徐として、入り易くしたり、さらには、1開閉ラウンド当たりの入賞制限個数10個を増やすようにする等が考えられる。
との記載が認められる。

摘記した上記の記載及び認定によれば、引用文献には、
「 可変入賞口15と連通する周壁12に囲繞されて閉鎖される作動領域13内に普通入賞領域26と特定入賞領域25とを具備する変動入賞装置10を備え、開閉駆動装置7を駆動して前記可変入賞口15を開閉し、
遊技盤4に配設されている始動領域5への球流入に伴って表示装置6が変動し、所定図柄を表示すると、前記開閉駆動装置7を駆動して、開閉片16を1回又は2回作動して、前記可変入賞口15を開閉し、
前記可変入賞口15から前記作動領域13内に入った遊技球が、特定入賞領域25に流入すると、特別遊技作動が開始され、開閉ラウンドとして開閉片16の往復回動を生じ、所定制限開閉回数18回の消化、又は規定個数10個の流入により開閉ラウンドが終了し、その終了時に入賞球が特定入賞領域25に流入した場合には、開閉ラウンドが再開され、最多継続ラウンドを定めて、このラウンド以上は継続しないこととするパチンコ遊技機1において、
前記特別遊技作動中の開閉ラウンドにあって、左可変入賞口15aと右可変入賞口15bの入賞球数比又は入賞球数差等の入賞球数比較値が所定閾値以内であると、次の開閉ラウンドでは開閉時間を緩徐とするパチンコ遊技機1。」
の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「可変入賞口15」は、本願発明の「入賞開閉口」に相当し、以下同様に、
「可変入賞口15と連通する」は「入賞開閉口により外部と連通する」に、
「周壁12に囲繞されて閉鎖される作動領域13」は「閉鎖作動領域」に、
「普通入賞領域26」は「一般領域」に、
「特定入賞領域25」は「特定領域」に、
「変動入賞装置10」は「入賞装置」に、
「開閉駆動装置7」は、「開閉駆動装置」に、
「遊技盤4に配設されている始動領域5」は「遊技盤面に設けられた始動領域」に、
「始動領域5への球流入に伴って」は「始動領域を遊技球が通過すると」に、
「開閉駆動装置7を駆動して、開閉片16を1回又は2回作動して」は「開閉駆動装置を所定時間開放駆動して」に、
「可変入賞口15を開閉し」は「入賞開閉口を開放し」に、
「特定入賞領域25に流入すると」は「特定領域を通過すると」に、
「特別遊技作動が開始され、開閉ラウンドとして開閉片16の往復回動を生じ」は「開閉駆動装置が連続開閉駆動して」に、
「所定制限開閉回数18回の消化」は「入賞開閉口の所定制限開閉回数の開閉満了」に、
「規定個数10個の流入」は「この入賞開閉口からの規定個数の入賞満了」に、
「開閉ラウンド」は「大当りラウンド」に、
「最多継続ラウンド」は「制限ラウンド回数」に、
「特別遊技作動」は「大当り遊技」に、
「パチンコ遊技機1」は「パチンコ遊技機」に、
「前記特別遊技作動中の開閉ラウンドにあって」は「前記大当り遊技中にあって」に、
「所定閾値以内であると」は「所定範囲数であった場合に」に、それぞれ相当する。
さらに、引用文献の記載等からみて、以下のことが言える。

a.引用発明において「開閉駆動装置7を駆動して前記可変入賞口15を開閉」することは、引用発明の「変動入賞装置10」が、可変入賞口15を開閉する開閉駆動装置7を具備するものであることにほかならない。
よって、引用発明は本願発明の「閉鎖作動領域内に一般領域と特定領域とを具備し、かつ入賞開閉口を開閉する開閉駆動装置を具備する入賞装置を備え」に相当する構成を有するものであるということができる。

b.本願発明の「始動領域を遊技球が通過すると」と引用発明の「始動領域5への球流入に伴って表示装置6が変動し、所定図柄を表示すると」とは、「始動領域を遊技球が通過することを一つの条件として」いる点で共通している。

c.引用発明において「開閉ラウンドが終了し、その終了時に入賞球が特定入賞領域25に流入した場合には、開閉ラウンドが再開され」ることは、本願発明において「一旦終了する大当りラウンドを繰り返し実行可能とする」ことに相当し、引用発明が「最多継続ラウンドを定めて、このラウンド以上は継続しないこと」は本願発明における「予め定められた制限ラウンド回数以内で繰り返し実行可能とする」に相当する。
また、引用発明において「特別遊技作動が開始され」ることは、本願発明において「大当り遊技を実行する」ことにほかならないから、引用発明は、本願発明の「一旦終了する大当りラウンドを予め定められた制限ラウンド回数以内で繰り返し実行可能とする大当り遊技を実行する」に相当する構成を有するものであるということができる。

d.引用発明の「左可変入賞口15aと右可変入賞口15bの入賞球数比又は入賞球数差等の入賞球数比較値」と本願発明の「各大当りラウンドでの入賞開閉口の開閉作動が所定回数実行される間に、閉鎖作動領域に流入する遊技球の個数」は、引用発明における「入賞球数」も各開閉ラウンド(本願発明の「各大当りラウンド」に相当)における入賞球数であることが発明全体の構成から明らかであるから、両者は「各大当りラウンドにおける入賞球数に基づく判定値」である点で共通している。

e.「緩徐」とは「ゆるやかでおもむろなこと」(広辞苑第5版)であるから、引用発明の「開閉時間を緩徐とする」は開閉片16の往復回動の速度が遅くなることを意味するものと認められ、「開閉片16の往復回動」は、本願発明の「入賞開閉口を開閉する開閉駆動装置の開放作動及び閉鎖作動」に相当するから、その速度が遅くなれば、偶然累積した周期が合致したとき以外は可変入賞口15の開閉タイミングが異なり続けることとなるから、引用発明における「開閉時間を緩徐とする」ことは実質的に、本願発明における「大当り遊技中の連続開閉作動中の、少なくとも1開閉サイクル中の閉口時間を延長することにより、その後の入賞開閉口の連続開閉作動の作動タイミングを変更する」ことに相当する。
そうしてみると、引用発明は、本願発明の「入賞開閉口を開閉する開閉駆動装置の開放作動及び/又は閉鎖作動の作動タイミングを変更する開閉タイミング是正手段を備え、前記開閉タイミング是正手段が、大当り遊技中の連続開閉作動中の、少なくとも1開閉サイクル中の閉口時間を、延長することにより、その後の入賞開閉口の連続開閉作動の作動タイミングを変更する」に相当する構成及び機能を有するものである。
なお、請求人は平成18年5月18日の審判請求書の(3)1.で、手続補正書の意義として「本発明が、入賞開閉口の開口時間を延長することにより、遊技者に利益を与えることを本旨とするものではないことを明瞭とするものである。」と主張しているが、入賞開閉口の開口時間については補正後の請求項1には限定がなく、閉口時間のみを延長又は短縮するものとしているわけでもない。また、発明の詳細な説明の段落【0055】には「また、実施例1にあって、一回の開閉タイミング是正手段で、開口時間と開閉時間との両者を変更するようにしても良い。これにより、開放作動するタイミングを大きく変化させて、遊技球の到達タイミングと合う可能性を一層高くするよにすることもできる。」と記載され、明細書全体の記載から「開閉時間」は「閉口時間」の誤記と認められるので、本願発明は「閉口時間及び開口時間を、延長又は短縮することにより、その後の入賞開閉口の連続開閉作動の作動タイミングを変更する」ものをその技術的範囲に含むものということができる。よって、請求人の上記主張は当を得ない。

以上を総合すると、両者は、
「 入賞開閉口により外部と連通する閉鎖作動領域内に一般領域と特定領域とを具備し、かつ入賞開閉口を開閉する開閉駆動装置を具備する入賞装置を備え、遊技盤面に設けられた始動領域を遊技球が通過することを一つの条件として、開閉駆動装置を所定時間開放駆動して、入賞開閉口を開放し、入賞開閉口から閉鎖作動領域内に入った遊技球が特定領域を通過すると、開閉駆動装置が連続開閉駆動して、入賞開閉口の所定制限開閉回数の開閉満了、又はこの入賞開閉口からの規定個数の入賞満了により一旦終了する大当りラウンドを予め定められた制限ラウンド回数以内で繰り返し実行可能とする大当り遊技を実行するパチンコ遊技機において、
前記大当り遊技中にあって、各大当りラウンドにおける入賞球数に基づく判定値が所定範囲数であった場合に、入賞開閉口を開閉する開閉駆動装置の開放作動及び閉鎖作動の作動タイミングを変更する開閉タイミング是正手段を備え、
前記開閉タイミング是正手段が、大当り遊技中の連続開閉作動中の、少なくとも1開閉サイクル中の閉口時間を、延長することにより、その後の入賞開閉口の連続開閉作動の作動タイミングを変更するパチンコ遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明は「始動領域を遊技球が通過すると、・・・入賞開閉口を開放」するものであるのに対し、引用発明は「始動領域5への球流入に伴って表示装置6が変動し、所定図柄を表示すると、・・・可変入賞口15を開閉」するものである点。

[相違点2]
「各大当りラウンドにおける入賞球数に基づく判定値」に関して、本願発明は「各大当りラウンドでの入賞開閉口の開閉作動が所定回数実行される間に、閉鎖作動領域に流入する遊技球の個数」としているのに対し、引用発明では「左可変入賞口15aと右可変入賞口15bの入賞球数比又は入賞球数差等の入賞球数比較値」としており、引用発明は、入賞球数について可変入賞口15の開閉回数を所定回数に限っていない点及び判定値について入賞球数比較値を採用している点で本願発明と相違している。

5.判断
[相違点1について]
本願発明のように、始動領域を球が通過すると、所定時間入賞開閉口を開放し、
「入賞開閉口から閉鎖作動領域内に入った遊技球が特定領域を通過すると、開閉駆動装置が連続開閉駆動して、入賞開閉口の所定制限開閉回数の開閉満了、又はこの入賞開閉口からの規定個数の入賞満了により一旦終了する大当りラウンドを予め定められた制限ラウンド回数以内で繰り返し実行可能とする大当り遊技を実行するパチンコ遊技機」は、例えば、特開平6-165850号公報(特に段落【0002】)、特開平6-134094号公報(特に段落【0002】)に記載されているように、従来周知のもの(以下「周知技術1」という。)である。
そして、始動領域を球が通過すると表示装置を変動させ所定図柄を表示した時に入賞開閉口を開放させる構成に代えて、始動領域を球が通過すると無条件で入賞開閉口を開放させる構成とすることに、格別な困難性を認めることもできない。
よって、引用発明に周知技術1を適用し、上記相違点1に係る本願発明のような構成を採用することは、パチンコ遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)にとって容易に想到し得ることである。

[相違点2について]
本願発明においては、閉鎖作動領域に流入する遊技球の個数を「各大当りラウンドでの入賞開閉口の開閉作動が所定回数実行される間」に限っているが、引用発明においても、各大当りラウンドにおける入賞球数は、1回の大当りラウンドが所定制限開閉回数18回の消化によって終了することを考えると、開閉片16が18回開閉する間に入賞した球数となるから、この点は実質的な相違点とは言えない。
なお、引用発明において1回の大当りラウンドが規定個数10個の流入により終了する点について考慮する必要があるとすれば、本願発明においても大当りラウンドが入賞開閉口からの規定個数の入賞満了により一旦終了することを考慮する必要が生じることとなり、その関係は同様であるから、条件として格別異なるものということはできない。
次に、判定値自体に関する相違点について検討する。
拒絶査定において審査官が指摘したように「遊技球の入賞個数に応じて遊技者にとって有利な態様とするか否かを変化させること」は従来周知の技術であり、「大当たり遊技中の入賞開閉口を備える入賞装置への遊技球の入賞個数に応じて遊技者にとって有利な態様とするか否かを変化させること」に特化しても、例えば、特開平5-84345号公報(特に段落【0005】、【0025】及び【0051】)、特開2001-120744号公報(特に【請求項3】、段落【0185】?【0186】及び【0218】)並びに特開2001-190757号公報(特に段落【0022】?【0023】及び【0055】?【0060】)に記載されているように、遊技機の分野において従来周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。
そうしてみると、引用発明に周知技術2を適用して、引用発明における「入賞球数比較値」に代えて、入賞開閉口を備える入賞装置への遊技球の入賞個数を採用し、上記相違点2に係る本願発明のような構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得ることである。
請求人は、審判請求書や回答書において、本願発明は「作動タイミングの変更により、遊技の平準化を図るものであって、遊技者に与える利得態様を提案しているものではない。」(審判請求書2.)、「作動タイミングを変化させて、バランスのとれた入賞態様となることを期待しているものであり、確定的に有利形態を提供するものではない。」(審判請求書3.)、「遊技者に有利な状態を与えることを目的とするものではない。」(審判請求書4.)及び「1開閉サイクル中の閉口時間を変化させて、作動タイミングを変更するものであり、それ自体は、遊技者に利得を与えるものではありません。」(回答書)と繰り返し主張しているが、これらの主張は上記4.eで述べたように、特許請求の範囲の記載に基づかない主張であり、「遊技の力量による利益差を小さくする」、「遊技の平準化を図る」及び「バランスのとれた入賞態様」といった課題も、上記特開平5-84345号公報(特に段落【0005】)や特開2001-190757号公報(特に段落【0074】)に記載されているように、遊技機の分野において良く知られている課題であるから、上記審判請求書や回答書における請求人の主張は採用できない。

さらに、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術1、2から当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本願発明は、引用発明及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、請求項2に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-17 
結審通知日 2009-02-19 
審決日 2009-03-04 
出願番号 特願2001-343689(P2001-343689)
審決分類 P 1 8・ 571- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 深田 高義
川島 陵司
発明の名称 パチンコ遊技機  
代理人 松浦 喜多男  

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