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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q |
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管理番号 | 1195850 |
審判番号 | 不服2006-22129 |
総通号数 | 114 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-10-02 |
確定日 | 2009-04-14 |
事件の表示 | 特願2002-267886「オープンネットワーク販売システム及び取引トランザクションのリアルタイムでの承認を行う方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月30日出願公開、特開2003-157402〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は,1994年12月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1993年12月16日,米国)を国際出願日とする出願である特願平7-516906号の一部を平成14年9月13日に新たな特許出願としたものであって,平成18年6月26日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年10月2日に拒絶査定不服審判がされたものである。 そして,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成18年4月11日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 送付人から受取人に資金を移転し,外部の金融承認ネットワークによって支払トランザクションのリアルタイムでの承認を行うネットワークペイメントシステムであって, 複数のクライエントコンピュータと, 少なくとも一つの支払コンピュータと,を含み, 前記クライエントコンピュータと支払コンピュータとは,公衆パケット交換通信ネットワークによって相互接続されており, 前記クライエントコンピュータの各コンピュータは,送付人から受取人に移転されるべき支払金額を特定するペイメントオーダーを構成し,インターネット通信プロトコルを使用して前記ペイメントオーダーを前記支払コンピュータに送信するようにプログラムされており, 前記支払コンピュータは,前記送付人が適当な資金またはクレジットを有していることを確認するために,メッセージを前記ネットワークペイメントシステムの外部の前記金融承認ネットワークにデータリンク上で送信し,前記メッセージに応答して前記金融承認ネットワークからの承認を受取り,インターネット通信プロトコルを使用して承認メッセージを前記クライエントコンピュータに送り,前記ペイメントオーダーと承認を決済データベース内に記録し,前記送付人に有効である適当なクレジットまたは資金を有する外部クレジットカード口座または外部資金口座に基づいて,前記金融承認ネットワークによって前記ペイメントオーダーがリアルタイムで承認された状態で,かつ前記資金の移転に関して前記公衆パケット交換通信ネットワークで送信された少なくとも一つのペイメントオーダーが,前記公衆パケット交換通信ネットワークで先に送信されたペイメントオーダーのリプレーではない状態で,資金を前記送付人から前記受取人に移転するようにプログラムされており, 前記支払コンピュータは,先に提示されたペイメントオーダーのインデックスをチェックすることによって前記ペイメントオーダーのリプレーチェックを実施し,同一のペイメントオーダーが先に前記支払コンピュータに送信されたかどうかを判定するようにプログラムされている, ことを特徴とするネットワークペイメントシステム。 」 2.引用例 これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-95405号公報(以下「引用例」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。 (a)「【0014】まず,以下の記載事項を適切に理解するために重要な術語の定義を行なう。 【0015】"通信システム"という術語は,含まれているノードが単にデータを内部のロケーション宛に送出する以上のことをするようなあらゆる種類の通信システムを意味している。この種の通信システムの一例は,ワールドワイドな交換システムで接続された電話を介してPBXによって接続された電話よりなるシステムである。他の例は,ネットワークノードがセッションを開始することが可能であるようなデータネットワークや,ネットワークとユーザとの間の相互作用があるようなビデオネットワークである。」 (b)「【0023】クレジットカードトランザクションシステムにおける隠ぺいの利用:第4図システム303のようなシステムの有している,情報をトランザクション参加者から隠ぺいするという機能は,このトランザクションが電話クレジットカードトランザクションである場合に特に有効である。この種のトランザクションは,例えば以下のように実行される:まず,利用者が(しばしば800番号を用いて)ベンダに電話をかける。利用者とベンダとが接続されると,利用者はトランザクションがクレジットカードトランザクションであるか否かを決定する。その後,ベンダは利用者に対して価格を知らせ,このトランザクションがクレジットカードトランザクションである場合は,ベンダは利用者に対してクレジットカード番号を尋ねる。利用者はここで電話を切り,ベンダはクレジットカード会社の確認システムを用いて利用者のクレジットカードを確認する。このことを行なった後,ベンダはクレジットカードトランザクションを完了し,利用者に対して商品を郵送する。このようなトランザクション実行モードに関してはいくつかの問題点がある。利用者の観点からの最も重要な問題点は,利用者が自らの知らない他人にクレジットカード番号を知らせなければならないということである。ベンダの観点での問題点は,ベンダが実際に知りたいのが利用者が支払い可能であるか否かということだけである場合にクレジットカードシステムを取り扱うということである。 【0024】図4は,上記問題点を考慮し解決するシステム401を示した図である。トランザクションを開始するに際して,利用者C403はベンダ405に電話をかけるために通信システム303を利用する。ベンダに電話をかけるために用いられた番号は,トランザクションの種類とベンダの双方を識別するようトランザクション識別子409及びベンダ識別子410として機能する。交換機107がトランザクション識別子409を受信すると,それに応答してトランザクションマネージャ407を起動しそれに対してベンダ識別子410を供給する。トランザクションマネージャ407はベンダ識別子410を保持しつつ交換機107に対して交換機107と利用者403との間のメッセージ経路421を設定させ,さらにデジタル音声メッセージを利用者403に対して提供して利用者403のクレジットカード番号を尋ねさせる。利用者は電話のタッチトーンTMを用いてクレジットカード番号411を入力する。交換機107はボタンが押された場合に生成されるタッチトーン信号を受信し,これをデジタルデータに変換してトランザクションマネージャ407へ提供する。トランザクションマネージャ407箱のクレジットカード番号を保持して交換機107に対してメッセージ経路423を設定させ,利用者をメッセージ経路421及び423を介してベンダに接続させる。利用者及びベンダはこのトランザクションにおいて話合いを行ない,価格に関する合意を成立させる。その後,ベンダ405は電話のタッチトーンボタンを用いてその価格(P413)を入力する。交換機107はタッチトーン信号を受信するとそれをトランザクションマネージャ407に供給する。トランザクションマネージャ407はベンダ識別子410,クレジットカード番号411及び価格413をクレジットマネージャ415に供給する。クレジットマネージャ415はクレジットカードデータベース中の情報から利用者403が購入可能であるか否かを決定する。利用者403が購入可能である場合には,クレジットマネージャ415はトランザクション確認メッセージ419をトランザクションマネージャ407に対して供給し,トランザクションマネージャ407はこのメッセージ419をベンダ405に対して供給する。ベンダ405はこのインタラクションを必要に応じて終了あるいは継続する。クレジットカードデータベース417中の情報がトランザクションが生じ得ることを示した場合は,クレジットマネージャ415はこのトランザクションに係る金額を利用者403の口座から借方記入し,トランザクションマネージャ407に対してトランザクション確認信号419を送出した後に前記金額をベンダ405の口座に対して貸方記入する。トランザクションに関して必要とされる他の情報,例えば利用者の宛先,は,利用者403から直接あるいは利用者403に関するクレジットカードデータベース417中の情報から得られる。」 (c)「【0028】トランザクションを取り次ぐための一般的なシステム:第5図 従来技術に係るクラウス,エンテンマン,及びメダマナによるシステム及び本発明に係るシステムは,通信システムがトランザクションを取り次ぐシステムの範疇に含まれるものである。図5は,通信システム503が任意数だけ供給することを可能にするシステム501を記述した図である。システム501においては,トランザクションマネージャ505がトランザクションアルゴリズム507(0..n)のリスト509を含んでいる。リストに示されている各々のアルゴリズムは,システム501が取り次ぐ相異なったタイプのトランザクションを規定している。 【0029】通信システム503によって到達可能なエンティティ105の内の一つがトランザクションを開始しようと欲する場合には,そのエンティティは交換機107に対して自ら実行しようと欲しているトランザクションのタイプに対するトランザクション識別子511を供給する。ここではそのエンティティがエンティティ105(i)であるとする。既に示されているように,トランザクション識別子511は特別の電話番号である。あるいは特定の電話番号への接尾辞であり,あるいはさらにトランザクションマネージャ505によって導出されるもので,エンティティ105(i)がトランザクションタイプのクラスに属するトランザクションタイプから選択することを欲していることを示している。 【0030】既に示されているように,交換機107はトランザクション識別子511をトランザクションマネージャ505に対して供給する。以下の記述においては,トランザクション識別子511はトランザクションアルゴリズム507(b)を識別しているものと仮定されている。トランザクション識別子511に応答して,トランザクションマネージャ505はトランザクションアルゴリズム(TALG)507(b)の実行を開始する。トランザクションアルゴリズム507(b)によって要求されているように,トランザクションマネージャ505は,交換機107に,トランザクションに関与しているエンティティを相互にあるいはトランザクションマネージャ505に対して接続させる及びトランザクションに対して必要とされている情報をエンティティから受信させるあるいはエンティティに供給させる信号を供給する。加えて,トランザクションに関与しているエンティティの内のあるものは,交換機107を介することなくトランザクションマネージャ505によって直接にアクセスされ得る。 【0031】図5において,トランザクションアルゴリズム507(b)は,トランザクションを開始するエンティティE105(i),E105(j)及びE105(k)の3つのエンティティが関与しているトランザクションを規定するために用いられる。アルゴリズム507(b)によって要求されているように,トランザクションマネージャ505は通信システム503にエンティティからのトランザクション情報を要求させ,このトランザクション情報をトランザクションによって要求されているようにエンティティ及びトランザクションマネージャ505に対して供給する。すなわち,トランザクション情報519はエンティティ105(i)に係り,トランザクション情報515はエンティティ105(k)に係り,トランザクション情報517はエンティティ105(j)に係る。図5に示されているように,トランザクションマネージャは505はトランザクション情報に関して信号経路あるいはメッセージ経路の内のいずれかを用い,トランザクションアルゴリズム507(b)によって要求されているようにエンティティを互いにあるいはトランザクションマネージャ505自体に対して接続する。トランザクションアルゴリズム507(b)における制御の流れは,もちろんトランザクションマネージャ505がエンティティから得られたトランザクション情報において受信した値に依存する。さらに,トランザクションアルゴリズム507(b)はトランザクションの一部を実行するためにトランザクションリスト509中の他のトランザクションアルゴリズムも使用する。 【0032】アルゴリズムリスト509中のアルゴリズムはすべて通信システム503のオペレータによって供給される。他の実施例においては,通信システム503のオペレータは通信システムのあるユーザに対してトランザクションアルゴリズムリスト509に係るトランザクションアルゴリズムを供給することを許可している。実際,通信システム503によって取り次がれるトランザクションの内の一つは,リスト509内のトランザクションアルゴリズム507のインストーレーションである。このようなトランザクションにおいては,トランザクションマネージャ505はこのトランザクションを識別するトランザクション識別子に応答して新たなアルゴリズム507をトランザクションを開始したエンティティ105に対して要求し,新たなアルゴリズム507をその正確さを確認するためにたのエンティティに対してサブミットし,確認が完了するとこの新たなアルゴリズムをリスト509にインストールする。アルゴリズムが正確ではないことが見いだされた場合には,トランザクションマネージャ505はエラーメッセージをこのトランザクションを開始したエンティティに対して返送する。もちろん,これらアルゴリズムはすべて前記トランザクションレコードを用いている。」 (d)「【0042】システム601及びトランザクションアルゴリズム636における様々な変更が可能である。例えば,ベンダ405,利用者403,あるいはその双方が統合サービスデジタルネットワーク(ISDN)サービスを有している場合がある。この場合には,電話603あるいは643がデジタル端末及びキーボードによって置換される。このような実施例においては,NSC621は入力促進音声信号の代わりに端末に対して入力促進信号を供給する。さらに,NSC621は音声認識プリミティブを含み得る;このような場合には利用者403はクレジットカード番号を音声で入力し,ベンダ405は同様に価格を入力する。また,クレジットマネージャ415はシステム601の他の部分といくつかの相異なった関連を持ち得る。システム601はネットワークコントロールポイントとしても実現され得るものであり,図6に示されているようにデータ回線によって,あるいは電話603及び643と同様に交換回路によって接続され得る。」 電話と交換機とは電話回線網で相互接続されていることは自明である。 そうすると,上記引用例記載事項及び図面から,引用例には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「トランザクション金額を利用者の口座から借方記入し,前記金額をベンダの口座に対して貸方記入し,クレジットマネージャによってクレジットカードの確認を行うことで購入可能であるか否かを決定するシステムであって, 利用者又はベンダの利用する電話と, 交換機とトランザクションマネージャと,を含み, 前記電話と交換機は電話回線網によって相互接続されており, 前記電話は,ベンダ識別子として機能するベンダに電話をかけるために用いられた番号,利用者のクレジットカード番号,利用者からベンダに移転されるべき価格を入力し,前記交換機を通してベンダ識別子,クレジットカード番号及び価格をトランザクションマネージャに送信し, 前記トランザクションマネージャは,クレジットカード番号の確認を行うことで利用者が購入可能か否かを決定するために,ベンダ識別子,クレジットカード番号及び価格をクレジットマネージャに供給し,前記クレジットマネージャはクレジットカードデータベースの中の情報から利用者のクレジットカードの確認を行うことで購入可能か否かを決定し,利用者が購入可能である場合には,前記トランザクションマネージャは,クレジットマネージャからトランザクション確認メッセージを受取り,このメッセージをベンダに対して供給し, 前記クレジットマネージャは,利用者のクレジットカードの確認を行うことで購入可能であると決定し,クレジットカードデータベース中の情報がトランザクションを生じ得ることを示した場合は,このトランザクション金額を利用者の口座から借方記入し,前記金額をベンダの口座に対して貸方記入することを特徴とする通信システム」 3.対比 そこで,本願発明と引用発明とを比較する。 引用発明のシステムは,利用者とベンダとのやり取り時に利用者のクレジットカードの確認をするものであることから,その処理が「リアルタイム」であることは,自明である。 引用発明の「利用者」は,本願発明の「送付人」に相当する。 引用発明の「ベンダ」は,本願発明の「受取人」に相当する。 引用発明の「クレジットマネージャ」は,本願発明の「外部の金融ネットワーク」に相当する。 引用発明の「トランザクション金額を利用者の口座から借方記入し,前記金額をベンダの口座に対して貸方記入し,クレジットマネージャによってクレジットカードの確認を行うことで購入可能か否かを決定するシステム」は,本願発明の「送付人から受取人に資金を移転し,外部の金融承認ネットワークによって支払トランザクションのリアルタイムでの承認を行うネットワークペイメントシステム」に相当する。 引用発明の,交換機を通してトランザクションマネージャに送信される「ベンダ識別子,クレジットカード番号及び価格」は,本願発明の,インターネット通信プロトコルを使用して支払コンピュータに送信される「ペイメントオーダー」に相当する。 引用発明の,「クレジットカード番号の確認を行うことで利用者が購入可能か否かを決定するために,ベンダ識別子,クレジットカード番号及び価格をクレジットマネージャに供給」することは,本願発明の,「前記送付人が適当な資金またはクレジットを有していることを確認するために,メッセージを前記ネットワークペイメントシステムの外部の前記金融承認ネットワークに」「送信」することに相当する。 引用発明の「クレジットカードデータベースの中の情報から利用者のクレジットカードの確認を行うことで購入可能か否かを決定し,利用者が購入可能である場合には,クレジットマネージャからトランザクション確認メッセージを受取り,このメッセージをベンダに対して供給し」は,本願発明の「前記メッセージに応答して前記金融承認ネットワークからの承認を受取り」,「承認メッセージを前記クライエントコンピュータに送り」に相当する。 引用発明の「利用者のクレジットカードの確認を行うことで購入可能であると決定し,クレジットカードデータベース中の情報がトランザクションを生じ得ることを示した場合は,このトランザクション金額を利用者の口座から借方記入し,前記金額をベンダの口座に対して貸方記入する」ことは,本願発明の「前記送付人に有効である適当なクレジットまたは資金を有する外部クレジットカード口座または外部資金口座に基づいて,前記金融承認ネットワークによって前記ペイメントオーダーがリアルタイムで承認された状態で」,「資金を前記送付人から前記受取人に移転する」ことに相当する。 引用発明の「利用者又はベンダの利用する電話」と,本願発明の「複数のクライエントコンピュータ」は,「複数のクライエントの端末」であるで点で共通する。 引用発明の「交換機」と「トランザクションマネージャ」からなるものと,本願発明の「支払コンピュータ」は,以下の相違点で相違するものの,「支払のための手段」である点で共通する。 引用発明の「電話回線網」と,本願発明の「公衆パケット交換通信ネットワーク」は,「通信網」で共通する。 そうすると,本願発明と,引用発明とは,次の点で一致する。 <一致点> 「送付人から受取人に資金を移転し,外部の金融承認ネットワークによって支払トランザクションのリアルタイムでの承認を行うネットワークペイメントシステムであって, 複数のクライエントの端末と, 支払のための手段と,を含み, 複数のクライエントの端末と支払のための手段とは,通信網によって相互に接続され, 前記クライエントの端末は,送付人から受取人に移転されるべき支払金額を特定するペイメントオーダーを構成し,前記ペイメントオーダーを前記支払のための手段に送信し, 前記支払のための手段は,前記送付人が適当なクレジットを有していることを確認するために,メッセージを前記ネットワークペイメントシステムの外部の前記金融承認ネットワークに送信し,前記メッセージに応答して前記金融承認ネットワークからの承認を受取り,承認メッセージを前記クライエントの端末に送り, 送付人に有効である適当なクレジットによってペイメントオーダーがリアルタイムで承認された状態で,資金を前記送付人から前記受取人に移転する ことを特徴とするネットワークペイメントシステム」 一方で,両者は,次の点で相違する。 <相違点> [相違点1] 本願発明では,クライエントの端末が「クライエントコンピュータ」であり,支払のための手段が「支払コンピュータ」であり,クライエントの端末と支払のための手段との間の通信網が「公衆パケット交換通信ネットワーク」であり,情報の送受信は「インターネット通信プロトコル」又は「データリンク」を使用して行われるのに対し,引用発明では,クライエントの端末が「電話」であり,支払のための手段が「交換機」及び「トランザクションマネージャ」からなるものであり,クライエントの端末と支払のための手段との間の通信網が「電話回線網」であり,情報の送受信のためのインターネット通信プロトコル,データリンクは記載されていない点。 [相違点2] 本願発明では,支払のための手段が,資金を送付人から受取人に移転するための処理をするのに対し,引用発明では,外部の金融ネットワークが,資金を送付人から受取人に移転するための処理をする点。 [相違点3] 本願発明では,支払のための手段が,「前記ペイメントオーダーと承認を決済データベース内に記録」し,「ペイメントオーダーのリプレーではない状態」の判定を行い,「先に提示されたペイメントオーダーのインデックスをチェックすることによって前記ペイメントオーダーのリプレーチェックを実施し,同一のペイメントオーダーが先に前記支払コンピュータに送信されたかどうかを判定」する処理を実行するのに対し,引用発明では,支払のための手段が上記処理を実行しない点。 [相違点4] 本願発明では,クライエントの端末及び支払のための手段が所定の処理を実行するようにプログラムされているのに対し,引用発明では,クライエントの端末及び支払のための手段が所定の処理を実行するようにプログラムされているか明記されていない点。 4.判断 上記相違点について検討する。 [相違点1]について 引用例の上記摘記事項(a)には「他の例は,ネットワークノードがセッションを開始することが可能であるようなデータネットワーク」,上記摘記事項(d)には「ベンダ405,利用者403,あるいはその双方が統合サービスデジタルネットワーク(ISDN)サービスを有している場合がある」と記載されていることから,引用発明の通信網が電話回線網以外のネットワークに転用可能であることは,自明である。 そして,システムを複数のコンピュータで構成することは一般的に行われていることであり,ネットワークの一形態として,インターネット技術は,齋藤正史 他,"インターネットの情報サービス"情報処理,社団法人情報処理学会,1993年12月15日,第34巻,第12号,p1415?1421,吉村伸,"インターネットの利用と仕組み(8)-Gopher,WWW,WAIS",UNIX MAGAZINE,株式会社アスキー,1993年12月1日,第8巻,第12号,p71?79にあるように周知技術に過ぎず,どのようなネットワーク技術を採用するかは,当業者が適宜選択し得た事項に過ぎないことから,引用発明において,システムの構成について,クライエントの端末を「クライエントコンピュータ」,支払のための手段を「支払コンピュータ」とし,電話回線網をインターネット技術に置き換え,「公衆パケット交換通信ネットワーク」により相互接続し,情報の送受信を「インターネット通信プロトコル」,「データリンク」で行う構成とすることは,当業者が適宜なし得た事項に過ぎない。 したがって,相違点1に係る本願発明の構成は,引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。 [相違点2]について 引用発明は上記摘記事項(b)には,資金の移転の処理について,「クレジットカードデータベース417中の情報がトランザクションが生じ得ることを示した場合は,クレジットマネージャ415はこのトランザクションに係る金額を利用者403の口座から借方記入し,トランザクションマネージャ407に対してトランザクション確認信号419を送出した後に前記金額をベンダ405の口座に対して貸方記入する。」と記載されており,外部の金融承認ネットワークが支払コンピュータに対して「確認信号」を送出するものであるから,資金の移転の主体を「外部の金融機関ネットワーク」とするか「支払のための手段」とすることは,当業者が適宜選択し得た事項に過ぎず,「支払のための手段」が資金の移転に関する処理を実行するようにすることは,当業者が容易になし得た事項に過ぎない。 したがって,相違点2に係る本願発明の構成は,引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。 [相違点3]について 一般に,利用者に対して何らかのサービス等を提供した場合,サービス利用料請求等の業務上の理由により,提供したサービス等の結果を記録することは通常行われていることであるので,引用発明の支払のための手段に,行った業務の記録を保存する処理をさせることは,当業者が適宜なし得た事項に過ぎない。 また,「リプレーチェック」について,なりすましの防止のために,所定の事項をチェックすることで再送(なりすまし)をチェックする技術的思想は,特開平4-297156号公報(第1の実施例等の記載参照),特開平3-128541号公報(特に,第13頁左上欄-同頁右下欄等の記載),特開平5-316099号公報(実施例2等の記載参照)にあるように周知技術であることから,なりすましの防止のために,引用発明にリプレーチェックの技術を付加することは,当業者が容易に想到し得たものに過ぎず,このとき,リプレーチェックの具体的な手法として,インデックスをチェックするようにすることは,当業者が適宜なし得た事項に過ぎない。 したがって,相違点3に係る本願発明の構成は,引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。 [相違点4]について [相違点1]で検討したとおり,クライエントの端末を「クライエントコンピュータ」とし,支払のための手段を「支払コンピュータ」とすることは,当業者が適宜なし得た事項に過ぎず,コンピュータが所定の処理を実行するようにプログラムされていることは,コンピュータを用いた場合に当然に行う当業者にとって自明な事項であり,クライエントの端末及び支払のための手段が所定の処理を実行するようにプログラムされるとすることは,当業者が適宜なし得た事項に過ぎない。 したがって,相違点4に係る本願発明の構成は,引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。 以上より,本願発明の構成は,引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づき,当業者が容易に想到し得たものである。 そして,本願発明の作用効果も,引用例及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 ゆえに,本願発明は,引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび したがって,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-11-10 |
結審通知日 | 2008-11-17 |
審決日 | 2008-11-28 |
出願番号 | 特願2002-267886(P2002-267886) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 須田 勝巳、伊藤 健太郎 |
特許庁審判長 |
赤穂 隆雄 |
特許庁審判官 |
松田 直也 久保田 健 |
発明の名称 | オープンネットワーク販売システム及び取引トランザクションのリアルタイムでの承認を行う方法 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 宍戸 嘉一 |
代理人 | 小川 信夫 |