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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1195921
審判番号 不服2007-28366  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-17 
確定日 2009-04-15 
事件の表示 特願2002-320337「パチンコ遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月 3日出願公開、特開2004-154180〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成14年11月1日の出願であって、平成19年9月7日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年10月17日付けで本件審判請求がされたものである。
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年8月28日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「遊技者により操作可能な操作手段を備え、該操作手段を遊技者が操作することによって遊技内容に関する種々の選択事項を遊技者が任意に選択決定し得るパチンコ遊技機において、
前記選択事項は、カーソルが順番に移動表示される選択画面上の複数の画像からなり、該画像の周囲に枠状のカーソルが表示可能な領域が設けられ、かつ、
遊技実行中であるか否かを判断するためのハンドル感度センサを設け、
通常は前記操作手段の機能をオフしておき、前記ハンドル感度センサがオンして現在遊技実行中であると判断したときにのみ、前記操作手段の機能をオンして、前記操作手段の作動を許可し、前記操作手段が操作された時点で前記カーソルが表示されている画像が選択され、該画像及び前記カーソルが拡大表示されるよう構成されることを特徴とするパチンコ遊技機。」

第2 当審の判断
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-47147号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?オの記載が図示とともにある。
ア.「複数種の図柄キャラクタの遊技表示データを有する図柄データ記憶手段と、遊技条件にしたがい図柄データ記憶手段の遊技表示データに基づく遊技図柄を変動表示する映像表示装置と、この遊技図柄の停止態様が所定の態様かどうかを判定する判定手段と、これが所定の態様のときに特別の遊技を行う特別遊技発生手段とを備えると共に、遊技者の操作に基づき図柄キャラクタの選択信号を出力する選択信号出力手段と、この選択信号に基づき該当図柄キャラクタの遊技図柄を映像表示装置に表示するように、図柄データ記憶手段から該当遊技表示データを選択する図柄キャラクタ選択手段とを設けたことを特徴とする遊技機。」(【請求項1】)
イ.「所定の遊技態様つまり通常表示中に図柄キャラクタを切替可能に、これ以外は切替不可とすることで、遊技に影響せずに図柄キャラクタを変えられる。」(段落【0014】)
ウ.「図柄選択スイッチ91は、映像表示器44に表示する遊技映像の図柄キャラクタ(各遊技用表示データを記憶したフォントROM85a,85b)を選択するもので、図1のようにパチンコ遊技機1の前面部に設けられ、スイッチ91を押す毎に表示要求信号(選択信号)を出力する。」(段落【0051】)
エ.「異なる図柄キャラクタの例を図33?図35に示す。図33は数字の1グループの図柄で、図34は大当たり状態を示す。図35はマージャンの図柄で、可変表示中を示す。」(段落【0098】)
オ.「情報選択スイッチ94を押せば、大当たり動作中にないときに、遊技の説明、遊技店情報、天気予報、交通情報、ニュース、ギャンブル情報、コマーシャル、ラッキーナンバ、大当たり発生回数、特別大当たり発生回数等が切替表示される。このため、遊技者は知りたい情報を望むときに知ることができ、新しい機種でも、遊技説明を選択することにより、誰でも簡単に遊技が可能になる。」(段落【0171】)

2.引用例1記載の発明の認定
記載ア?オを含む引用例1の全記載及び図示によれば、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「複数種の図柄キャラクタの遊技表示データを有する図柄データ記憶手段と、遊技条件にしたがい図柄データ記憶手段の遊技表示データに基づく遊技図柄を変動表示する映像表示装置と、この遊技図柄の停止態様が所定の態様かどうかを判定する判定手段と、これが所定の態様のときに特別の遊技を行う特別遊技発生手段とを備えたパチンコ遊技機であって、
図柄選択スイッチ及び情報選択スイッチを有し、
通常表示中に限り、図柄選択スイッチが押される毎に表示要求信号を出力し、図柄キャラクタを選択するように構成され、
大当たり動作中にないときに、情報選択スイッチを押されると、遊技の説明、遊技店情報、天気予報、交通情報、ニュース、ギャンブル情報、コマーシャル、ラッキーナンバ、大当たり発生回数、特別大当たり発生回数等が切替表示されるパチンコ遊技機。」(以下「引用発明1」という。)

3.本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1の「図柄キャラクタ」並びに「遊技の説明」、「ラッキーナンバ」、「大当たり発生回数」及び「特別大当たり発生回数」は、本願発明の「遊技内容に関する種々の選択事項」に相当するから、引用発明1の「図柄選択スイッチ」及び「情報選択スイッチ」の何れもが本願発明の「遊技者により操作可能な操作手段」に相当し、「該操作手段を遊技者が操作することによって遊技内容に関する種々の選択事項を遊技者が任意に選択決定し得るパチンコ遊技機」であることは本願発明と引用発明1の一致点であり、この限度で両者は一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉選択に関し、本願発明が「前記選択事項は、カーソルが順番に移動表示される選択画面上の複数の画像からなり、該画像の周囲に枠状のカーソルが表示可能な領域が設けられ」及び「前記操作手段が操作された時点で前記カーソルが表示されている画像が選択され、該画像及び前記カーソルが拡大表示される」との各構成を採用したのに対し、引用発明1は「図柄選択スイッチが押される毎に表示要求信号を出力し、図柄キャラクタを選択」及び「情報選択スイッチを押されると切替表示」との構成を採用している点。
〈相違点2〉本願発明には「遊技実行中であるか否かを判断するためのハンドル感度センサを設け」てあり、「通常は前記操作手段の機能をオフしておき、前記ハンドル感度センサがオンして現在遊技実行中であると判断したときにのみ、前記操作手段の機能をオンして、前記操作手段の作動を許可」するのに対し、引用発明1では通常表示中に限り図柄選択スイッチの機能がオンとなり、また大当たり動作中にないときに情報選択スイッチの機能がオンとなる点。

4.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-323447号公報(以下「引用例2」という。)には、「図19は、確率変動図柄の選択動作モード時における図柄選択動作状態での特別図柄表示装置上の表示内容を示す。確率変動図柄の選択動作モードに入ると、初期設定されていた確率変動図柄の反転表示や強調表示を解除し、「1」から「16」までの数字に対応する16図柄を昇順に一定時間間隔でカーソル移動を行う。そして、確率変動図柄として設定したい図柄上にカーソルが位置するときに汎用ボタン211を押下すると、その図柄を確率変動図柄として設定し、反転表示や強調表示を行う。図19では、「3」と「7」とを確率変動図柄として設定した状態を示している。このようにして、8つの確率変動図柄を決定すると、図20に示すように、確率変動図柄の選択結果の良否を確認する。」(段落【0062】)との記載があり、「「1」から「16」までの数字に対応する16図柄を昇順に一定時間間隔でカーソル移動を行う」ことは、本願発明の「カーソルが順番に移動表示される選択画面上の複数の画像からな」ることと異ならず、引用例2【図19】には「画像の周囲に枠状のカーソルが表示可能な領域が設けられ」ることも図示されている。
引用発明1において、選択手法を引用例1記載の手法に拘泥しなければならない理由はないから、引用例2記載の技術を採用し「前記選択事項は、カーソルが順番に移動表示される選択画面上の複数の画像からなり、該画像の周囲に枠状のカーソルが表示可能な領域が設けられ」及び「前記操作手段が操作された時点で前記カーソルが表示されている画像が選択」との構成に至ることは当業者にとって想到容易である。
残る検討項目は、選択された画像及びカーソルを拡大表示することである。強調表示の一形態としてとして拡大表示が周知であることは論を待たないものの、引用例2記載の技術では「8つの確率変動図柄を決定」する関係上、拡大表示したのでは他の確率変動図柄を表示できないおそれがあるから、引用例2記載の「強調表示」が「拡大表示」を含むとまでは認めることができない。
しかしながら、引用発明1では、図柄選択スイッチの操作によってであれ、情報選択スイッチの操作によってであれ、選択される事項は1つであり、選択されない事項が選択された事項によって隠されても一向に差し支えないから、引用例2記載の技術を採用する際に「該画像及び前記カーソルが拡大表示されるよう構成」することは設計事項というべきである。
念のため、表示された複数の画像から1つの画像が選択された際に、選択された画像を拡大表示する例として、特開2001-67160号公報をあげておく。拡大表示に際し、拡大前に「画像の周囲に枠状のカーソル」がある場合、カーソルも含めて拡大することは設計事項というよりなく、前掲特開2001-67160号公報【図10】においても、そのように拡大されている。
以上のとおりであるから、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(2)相違点2について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-165570号公報(以下「引用例3」という。)には、「請求項2記載の弾球遊技機は、請求項1記載の弾球遊技機において、映像生成のための映像データを格納している映像データ格納手段と、該映像データを使用するためのプログラムを格納しているプログラム格納手段と、映像を表示する映像表示手段と、映像を操作するための操作信号を入力する映像操作手段と、前記プログラムに基づいて動作し前記映像データを使用して前記操作信号に応じた映像を前記映像表示手段に表示させる映像制御手段とを設けている。」(段落【0010】)及び「遊技者は、弾球遊技と同時に、このような映像を見たりゲームを行うことができるから、例えば長時間にわたって大当たりが出なくても退屈することはなくなる。ところで、映像表示手段に表示される映像、例えばビデオゲームばかりを利用されたのでは、遊技店が困る。そのような不都合を回避するには、弾球遊技が実行されているとみなせるときに限って前記操作信号を有効とする操作許可手段を設ければよい。上述の映像制御手段としてCPUを採用するならば、このCPUを操作許可手段としても機能させることができる。遊技実行中か否かは、遊技球の発射が行われているかいないかで判断できる。遊技球の発射を検出するには、遊技領域に撃ち込まれる遊技球を検出するセンサの信号、発射装置の稼働を示す信号等を用いればよい。」(段落【0014】)との各記載があり、弾球遊技機(本願発明の「パチンコ遊技機」に相当)において、遊技実行中か否かを判断する手段(本願発明の「ハンドル感度センサ」はそのような手段の1つである。)が現在遊技実行中であると判断したときにのみ、映像操作手段の操作を許可することが記載されている。
引用例3記載の弾球遊技機は、弾球遊技(パチンコ遊技)とは別の映像利用ばかりされる不都合を回避するために、上記のような構成を採用したものであるが、引用発明1の図柄選択及び情報選択も、パチンコ遊技そのものではない。もっとも、図柄選択及び情報選択が引用例3記載の「ビデオゲーム」ほど長期間実行されるとは思えないものの、遊技者に対するサービスであり、パチンコ遊技そのものではない点では、引用例3記載の映像操作と異ならない。
そうである以上、引用発明1において、引用例3記載の技術を採用、すなわち、遊技実行中か否かを判断する手段を備え、同手段が現在遊技実行中であると判断したときにのみ、図柄選択スイッチ及び情報選択スイッチの操作を許可し、そうでないときには許可しないことは当業者にとって想到容易である。そして、操作を許可する状態と許可しない状態のどちらを通常状態とするかは設計事項であるから、「通常は前記操作手段の機能をオフしておき、現在遊技実行中であると判断したときにのみ、前記操作手段の機能をオンして、前記操作手段の作動を許可」することは当業者にとって想到容易である。
ところで、引用例3には「発射装置の発射力を設定する発射力設定手段と、前記発射装置の発射動作をオン/オフするスイッチ手段とを前記発射装置操作手段として設けている。」(段落【0006】)との記載があり、「発射装置操作手段」と本願発明の「ハンドル」を同視することは困難であるばかりか、同視できたとしても、「遊技者は、発射力設定手段操作して所望の発射力を設定し、スイッチ手段を操作して発射装置の発射動作をオンすれば、以後は特に操作をする必要はない。もちろん、発射力設定手段を再操作して発射力の設定を変更することもできる。したがって、遊技者は、遊技中に両手を自由にできる。」(段落【0009】)のであるから、「ハンドル感度センサ」なる手段によって「遊技実行中であるか否かを判断」することはできない。
そうではあるが、それは引用例3特有の事情によるものであって、引用例1の「パチンコ球を1個ずつ打ち出す打球発射装置の操作部8が配設される。」(段落【0018】)及び【図1】によれば、「操作部8」は「ハンドル」と称し得るものであり、通常のパチンコ遊技機同様、遊技実行中には「操作部8」を操作することが予定されている。また、原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-308746号公報(以下「引用例4」という。)に「客待ちデモのコマンドは、前記電源投入のデモ画面が終了した後、又は遊技者が所定時間(通常約3分間)発射ハンドル24に触れていないと判断されたときに送信されるコマンドであり、・・・遊技者が発射ハンドル24に触れているか否かはタッチスイッチ24aの入力により検知することができる。」(段落【0037】)と記載されているように、ハンドルに触れているか否かのセンサにより、遊技中かどうかを実質的に判断することが記載されている(遊技中に客待ちデモをしないことは当然である。)。さらに、本願明細書の「遊技者が発射ハンドルを操作していないために上記遊技動作認識手段が現在遊技停止中と判断した場合には、操作手段6の機能が無効である旨を遊技者に報知する(ステップS16)。例えば、図7に示すように、「無効です。ハンドルを握ったまま押しボタンを押して下さい」という文字42が表示され」(段落【0023】)との記載によれば、ハンドルを握ったまま押しボタンを押せば、遊技実行中と判断されるのだから、「ハンドル感度センサ」は、ハンドルを握っているかどうかを判断できるセンサであればよく、引用例4記載の「タッチスイッチ24a」と実質的に相違しない。そして、引用発明1に引用例3記載の技術を採用するに当たり、遊技実行中であるか否かを判断する手段として、「ハンドル感度センサ」を採用することには何の困難性もない。
以上のとおりであるから、引用発明1を出発点として、引用例3及び引用例4記載の技術を採用して相違点2に係る本願発明の構成に至ることは当業者にとって想到容易である。

(3)本願発明の進歩性の判断
相違点1,2に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1、引用例2?4記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-02 
結審通知日 2009-02-10 
審決日 2009-02-23 
出願番号 特願2002-320337(P2002-320337)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲吉▼川 康史  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 有家 秀郎
森 雅之
発明の名称 パチンコ遊技機  
代理人 飯田 昭夫  
代理人 江間 路子  

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