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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1196227
審判番号 不服2007-18899  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-05 
確定日 2009-04-23 
事件の表示 特願2005-126926「トナー貯留装置及び画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月15日出願公開、特開2005-250508〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成8年9月19日に出願した特願平8-248237号の一部を平成17年4月25日に新たな特許出願としたものであって、平成18年12月20日付けで通知した拒絶理由に対して、平成19年2月26日付けで手続補正書が提出された後、同年5月28日付けで拒絶査定がなされたものであり、これに対し、同年7月5日付けで審判請求がなされるとともに、同年8月3日付けで手続補正書が提出され、その後、平成20年11月10日付けで、当審の審尋に対する回答書が提出されたものである。


第2 平成19年8月3日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年8月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正には、特許請求の範囲の請求項1を次のように補正しようとする事項が含まれている。

(補正前)
「【請求項1】像担持体上に形成された静電潜像を現像手段のトナーで現像して可視像化する画像形成装置に用いるトナー貯留装置において、
前記現像手段とは独立に別体で構成されており、前記現像手段に供給されるトナーを貯留するトナー貯留手段と、該トナー貯留手段に連結され、トナーを拡散させた状態で流動させる空気供給手段と、画像形成時に残留して回収される回収トナーを収納する回収トナー収納容器を有する回収トナー収納手段とを備え、
前記現像手段に供給されるトナーは、前記空気供給手段によって、空気と混合気状態にされてトナー供給部材を介して前記現像手段に移送され、
前記回収トナーは、画像形成時に前記画像形成装置に備えられたクリーニング手段によって回収され、該クリーニング手段によって回収されたトナーは前記画像形成装置の回収トナー移送手段によって空気との混合気状態にされて回収トナー移送部材を介して前記回収トナー収納手段に移送され、
前記回収トナー収納手段の前記回収トナー収納容器の上部には、前記回収トナー移送部材が接続する回収トナー捕集手段が取り付けられており、該回収トナー捕集手段でトナーと空気を分離し、トナーを捕集することを特徴とするトナー貯留装置。」

(補正後)
「【請求項1】像担持体上に形成された静電潜像を現像手段のトナーで現像して可視像化する画像形成装置に用いるトナー貯留装置において、
前記現像手段とは独立に別体で構成されており、前記現像手段に供給されるトナーを貯留するトナー貯留手段と、該トナー貯留手段に連結され、トナーを拡散させた状態で流動させる空気供給手段と、画像形成時に残留して回収される回収トナーを収納する回収トナー収納容器を有する回収トナー収納手段とを備え、
前記現像手段に供給されるトナーは、前記空気供給手段によって、空気と混合気状態にされてトナー供給部材を介して前記現像手段に移送され、
前記回収トナーは、画像形成時に前記画像形成装置に備えられたクリーニング手段によって回収され、該クリーニング手段によって回収されたトナーは前記画像形成装置の回収トナー移送手段によって空気との混合気状態にされて回収トナー移送部材を介して前記回収トナー収納手段に移送され、
前記回収トナー収納手段の前記回収トナー収納容器の上部には、前記回収トナー移送部材が接続する回収トナー捕集手段が取り付けられており、該回収トナー捕集手段でトナーと空気を分離し、トナーを捕集する構成であり、
前記空気供給手段はスクリューポンプとエアーポンプからなり、前記スクリューポンプの作動を開始あるいは停止した場合、作動開始に先立ち前記エアーポンプを作動させ、また作動停止後、所定の時間前記エアーポンプの作動を継続させることを特徴とするトナー貯留装置。」

この補正事項は、請求項1において、補正前の「トナーを拡散させた状態で流動させる空気供給手段」について、「前記空気供給手段はスクリューポンプとエアーポンプからなり、前記スクリューポンプの作動を開始あるいは停止した場合、作動開始に先立ち前記エアーポンプを作動させ、また作動停止後、所定の時間前記エアーポンプの作動を継続させる」との限定を付加したものである。
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。

そこで、補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

2.引用例の記載事項
(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前(すなわち原出願の出願日前)に頒布された特開平5-204244号公報には、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(1a)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、潜像担持体に形成された静電潜像をトナー像として可視像化する現像装置を備えた画像形成装置に関するものである。」

(1b)「【0029】ベルト状の感光体11は矢印方向に走行駆動され、その表面は、帯電チャージャー12により予め一様に帯電させられていて、この後、上述の結像投影が行われる。このようにして、同表面には静電潜像が形成される。
【0030】この静電潜像は現像装置13によってトナー像として可視像化され、そのトナー像は、給紙部14からレジストローラ対15を経て送られる転写紙に、転写チャージャー10によるコロナ放電によって転写される。かかるトナー像の転写後、転写紙は定着装置16を通って、複写機本体100の上部のトレイ17に排出される。
【0031】一方、感光体11の表面はクリーニング装置20によってクリーニングされて、その表面の残留トナーなどが除去される。」

(1c)「【0036】現像が継続されるのに伴って、現像剤容器18内のトナーは徐々に消費され、現像剤D中のトナーの濃度が漸次低下する。これを放置すれば現像されたトナー像の画質が劣化する。これに対処すべく、現像装置13の現像剤容器18への補給トナーT_(1)を収容した第1トナー容器36が設けられ、この例では第1トナー容器36が現像装置13の現像剤容器18に一体に連結されていて、複写機本体100に内設されている。トナーはトナー粒子のみ又はこれに補助剤を加えた粉体より成る。
【0037】前述のトナー濃度センサ119によって、現像剤Dのトナー濃度低下が検出されたとき、その信号により、図5及び図6に示したトナー補給用の駆動モータM_(1)(以下、第1駆動モータと記す)が所定時間作動してトナー補給ローラ32aが回転し、第1トナー容器36内のトナーT_(1)が現像剤容器18に補給され、該容器18内の現像剤Dのトナー濃度が所定の範囲に保たれるように構成されている。
【0038】図3及び図5に示すように、第1トナー容器36にはトナーT_(1)を撹拌する第1撹拌部材32が回転自在に支持され、トナー補給ローラ32aが上述のように回転したとき、これに同期して第1撹拌部材32も回転し、第1トナー容器36内のトナーT1を撹拌する。」

(1d)「【0040】そこで図1、図2、図4及び図5に示すように、第1トナー容器36への補給トナーT_(2)を収容した第2トナー容器90が設けられていて、このトナー容器90と第1トナー容器36は、トナー搬送導管51と、その内部に全長に亘って設けられたトナー送り部材52とから成るトナー搬送手段50によって連結され、後述するように第1トナー容器36内のトナー残量が所定量以下となったことが検出されたとき、トナー搬送手段50によって第2トナー容器90内のトナーT_(2)が第1トナー容器36に搬送されるように構成されている。
【0041】トナー送り部材52としては、図示した実施例のようにコイルを用いることができるほか、螺旋状の羽根を備えたスクリュー部材や、一般にオーガと称せられている各種のトナー送り部材を適宜採用することができる。かかるトナー送り部材52は、図5に示すようにその一端側が第2トナー容器90の底部に入り込み、該容器90の長手方向に長く延びている。
【0042】また第2トナー容器90にも、その内部のトナーT_(2)を撹拌する第2撹拌部材91が付設され、該撹拌部材91は、その各端部が図5に示すように第2トナー容器90の各端壁に回転自在に支持され、その一方の端部が第2トナー容器90の端壁に支持された駆動モータ(以下、第2駆動モータと記す)M_(2)に連結され、該モータM_(2)によって回転駆動されるようになっている。
【0043】また第2撹拌部材91の他方の端部には、タイミングプーリ94が固設され、該プーリ94は、第2トナー容器90の端壁に回転自在に支持され、かつ上述の如くコイルより成るトナー送り部材52の端部に固定された他のタイミングプーリ95に、タイミングベルト96を介して駆動連結されている。
【0044】このような構成により、第2駆動モータM_(2)が作動を開始すると、第2撹拌部材91が回転してトナーT_(2)を撹拌すると共に、該撹拌部材91の回転が、タイミングプーリ94、タイミングベルト96及び他のタイミングプーリ95を介して、コイルより成るトナー送り部材52に伝えられ、該送り部材52が回転する。これにより、第2トナー容器90内のトナーT2が、トナー搬送導管51に案内されつつ搬送され、後述する案内管85を通して第1トナー容器36に補給される。
【0045】第2トナー容器90は、図1、図2及び図4に示すように複写機本体100とは別体のトナー補給ケース53に内設され、該容器90に接続されたトナー搬送導管51はトナー補給ケース53を出たあと、複写機本体100にその裏側から入り込み、図5に示す如く複写機本体100の後側のフレーム101を貫通して案内管85に突入している。このように第2トナー容器90から送られてくるトナーを、案内管85を通して第1トナー容器36に搬送できるように構成されているのである。
【0046】トナー補給ケース53を複写機本体100とは独立して自由に動かすことができるように、トナー搬送導管51は軟質の樹脂やゴムなどの可撓性チューブにより構成されている。」

(1e)「【0050】なお、図示した例ではトナー補給ケース53内に、第2トナー容器90のほか、ボトルなどから成る廃トナー回収容器92(図2)が配置され、図1に示したクリーニング装置20で回収した廃トナーを、可撓性の廃トナー導管93と、これに内設された、例えば回転駆動されるコイルより成る廃トナー送り部材(図示せず)とによって、廃トナー回収容器92に搬送し、廃トナーをここに収容しておくことができるように構成されている。」

(1f)また、上記で摘記した事項や図面から、上記の第2トナー容器90や廃トナー回収容器92等を包含する概念的な手段として、補給トナーを収容して現像装置に搬送し、クリーニング装置で回収し搬送された廃トナーを収容する手段、を把握することができる。

以上のことから、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「潜像担持体に形成された静電潜像をトナー像として可視像化する現像装置を備えた画像形成装置に用いる、補給トナーを収容して現像装置に搬送し、クリーニング装置で回収し搬送された廃トナーを収容する手段において、
画像形成装置本体100とは別体のトナー補給ケース53に、現像装置13に供給される補給トナーを収容する第2トナー容器90と、廃トナー回収容器92が内設されており、
第2トナー容器90と、現像装置13の現像剤容器18に一体に連結された第1トナー容器36とは、トナー搬送導管51と、その内部に全長に亘って設けられたコイル、スクリュー部材、オーガなどのトナー送り部材52とから成るトナー搬送手段50によって連結され、
第1トナー容器36内のトナー補給ローラ32aが回転して、第1トナー容器36内のトナーが現像装置13の現像剤容器18に補給され、
感光体11(潜像担持体)の表面の残留トナーなどがクリーニング装置20によって除去されて回収された廃トナーが、可撓性の廃トナー導管93と、これに内設された、例えば回転駆動されるコイルより成る廃トナー送り部材とによって、廃トナー回収容器92に搬送されて、収容される、
補給トナーを収容して現像装置に搬送し、クリーニング装置で回収し搬送された廃トナーを収容する手段。」

(2)刊行物2
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前(すなわち原出願の出願日前)に頒布された特開平8-211714号公報(公開日:平成8年8月20日)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(2a)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、電子写真方式の画像形成装置、特に、2成分現像剤を用いたプリンタ、ファクシミリ、あるいは複写機等の画像形成装置、及び、この画像形成装置に使用される現像装置に関する。」

(2b)「【0025】回収管121などの現像剤移送循環手段により剤収納容器223内に導かれた現像剤は、上述の撹拌スクリュー221及びトナー補給ユニット230により、現像剤帯電量及び現像剤濃度の適正化が行なわれる。そして、この適正化された現像剤は、現像剤移送・循環手段としての粉体ポンプユニット200に送られる。
【0026】本実施例における粉体ポンプユニット200には、スクリューポンプ(通称モーノポンプ;従来公知)を用いている。この粉体ポンプユニット200は、駆動モータ222に連結されたローター201と、ゴム材料などの弾性体で形成されたステイター202と、このステイター202を固定するポンプホルダー203とで構成されている。また、上部ホルダー203u及び下部ホルダー203dからなるポンプホルダー203には、上部空気供給口204、下部空気供給口205、現像剤吐出口206、及び、前述の剤濃度検知部材240が、それぞれ設けられている。
【0027】また、この粉体ポンプユニット200には、駆動モータ222の上部に取付けられたファン207が、駆動モータ222の駆動により回転することによって、そのファンケースの一部に設けられた空気吐出口208から、上部空気供給口204及び下部空気供給口205に向けてエアーが供給される。このエアーの供給により、現像剤がより流動化され、スクリューポンプでの現像剤移送がより確実なものとなる。この粉体ポンプユニット200を通過した現像剤は、このポンプ部の剤濃度検知部材240によって、その現像剤濃度のチェックを受けた後、現像剤吐出口206より排出され、現像剤の供給管111を通して、前述の現像手段10に送られる。 」

(2c)「【0035】一方、本実施例で用いるスクリューポンプ(モーノポンプ)は、回転容積式構造により粉体を移送するポンプであり、また、圧送式の粉体移送ポンプであるので、このポンプによれば、極僅かな空気による高い固気比で粉体を移送でき、粉体(現像剤)は、配管内に充満した状態で連続的に流動(移送)される。従って、本実施例では、連続移送される現像剤に対して、高い定量性の維持と、高精度な流量コントロールができ、且つ、粉体移送に使用されるエアーも、粉体の流動化と移送ライン全長に均一の流動状態を保持するための極少量の空気量でよい。更に、本実施例における粉体移送は、低速・高濃度移送であるので、移送時の粉体の破砕も無く、また、粉体移送用の配管も小径のもので済み、且つ、この粉体移送管の摩耗によるトラブルや騒音も少ない。更に、この構成によれば、その構造が簡易であり、経済性、信頼性、メンテナンス性に優れるなどの利点がある。
【0036】なお、本実施例では、駆動モータ222の駆動軸に取付けられたファン207によってモーノポンプにエアーを供給しているが、このモーノポンプへのエアーの供給は、独立して配設した別体のエアーポンプ等によって行ってもよい。」

(3)刊行物3
当審において新たに発見された、本願出願前(すなわち原出願の出願日前)に頒布された特開平8-123199号公報(公開日:平成8年5月17日)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】潜像坦持体上に形成された静電潜像を顕像化するための現像装置であって、トナーとキャリアを混合した現像剤を該潜像坦持体に付与する現像手段と、現像剤を適正化するための該現像手段と異なる箇所に別体で配置される現像剤適正化手段と、該現像手段及び現像剤適正化手段に現像剤を移送する現像剤移送・循環手段とを具備した現像装置において、上記現像剤移送・循環手段は、現像剤と空気との混合気を供給するためのスクリューポンプと、該スクリューポンプに空気を供給する空気供給器と、該スクリューポンプと空気供給器の動作を制御する制御手段とを具備し、該制御手段により、上記現像装置の運転開始時には、該空気供給器のみを一定時間作動させた後、該スクリューポンプと該空気供給器とを同時に作動させるように、該スクリューポンプ及び空気供給器を制御することを特徴とする現像装置。
【請求項2】潜像坦持体上に形成された静電潜像を顕像化するための現像装置であって、トナーとキャリアを混合した現像剤を該潜像坦持体に付与する現像手段と、現像剤を適正化するための該現像手段と異なる箇所に別体で配置される現像剤適正化手段と、該現像手段及び現像剤適正化手段に現像剤を移送する現像剤移送・循環手段とを具備した現像装置において、上記現像剤移送・循環手段は、現像剤と空気との混合気を供給するためのスクリューポンプと、該スクリューポンプに空気を供給する空気供給器と、該スクリューポンプと空気供給器の動作を制御する制御手段とを具備し、該制御手段により、上記現像装置の運転停止時には、先に該スクリューポンプのみを停止させ、該空気供給器のみを一定時間作動させた後にこの空気供給器を停止させるように、該スクリューポンプ及び空気供給器を制御することを特徴とする現像装置。
【請求項3】潜像坦持体上に形成された静電潜像を顕像化するための現像装置であって、現像剤を該潜像坦持体に付与する現像手段と、該現像手段と異なる箇所に別体に設けられたトナー貯留手段と、該トナー貯留手段に供給されたトナーを撹拌・搬送するトナー供給手段と、該トナー供給手段より該現像手段にトナーを移送するトナー移送手段とを具備した現像装置において、上記トナー移送手段は、現像剤と空気との混合気を供給するためのスクリューポンプと、該スクリューポンプに空気を供給する空気供給器と、該スクリューポンプと空気供給器の動作を制御する制御手段とを具備し、該制御手段により、上記現像装置の運転開始時には、該空気供給器のみを一定時間作動させた後、該スクリューポンプと該空気供給器とを同時に作動させるように、該スクリューポンプ及び空気供給器を制御することを特徴とする現像装置。
【請求項4】潜像坦持体上に形成された静電潜像を顕像化するための現像装置であって、現像剤を該潜像坦持体に付与する現像手段と、該現像手段と異なる箇所に別体に設けられたトナー貯留手段と、該トナー貯留手段に供給されたトナーを撹拌・搬送するトナー供給手段と、該トナー供給手段より該現像手段にトナーを移送するトナー移送手段とを具備した現像装置において、上記トナー移送手段は、現像剤と空気との混合気を供給するためのスクリューポンプと、該スクリューポンプに空気を供給する空気供給器と、該スクリューポンプと空気供給器の動作を制御する制御手段とを具備し、該制御手段により、上記現像装置の運転停止時には、先に該スクリューポンプのみを停止させ、該空気供給器のみを一定時間作動させた後にこの空気供給器を停止させるように、該スクリューポンプ及び空気供給器を制御することを特徴とする現像装置。」

(3b)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、電子写真方式の画像形成装置、特に、2成分現像剤を用いたプリンタ、ファクシミリ、あるいは複写機等に使用される現像装置に関する。」

(3c)「【0032】本実施例における粉体ポンプユニット200は、通称モーノポンプ(従来公知)と呼ばれているスクリューポンプを以って構成され、現像剤を下向きに送るように縦型に配置されている。この粉体ポンプユニット200は、前述の駆動モータ222と撹拌スクリュー221を介して連結されたローター201と、このローター201を包囲するように配設されたゴム材料等の弾性体からなるステーター202と、このステーター202を保持する上ポンプホルダー203u、及び、下ポンプホルダー203d等を具備している。」

(3d)「【0036】次に、本実施例の現像装置の運転開始時と停止時における、粉体ポンプユニット200の駆動モータ222とエアーポンプ207との動作の制御方法について、図4により説明する。
【0037】駆動モータ222及びエアーポンプ207は、それらの駆動を制御する制御手段の制御回路(図示せず)により、図3に示すそれぞれの電源コード226,209を介して、電源供給(オン/オフ)が制御される。
【0038】すなわち、本実施例における現像装置の駆動モータ222及びエアーポンプ207は、図4(a)に示すように、現像装置の運転開始時Aでは、先ず、エアーポンプ207のみの電源をオンし、その後、数秒が経た時点Bで駆動モータ222の電源をオンするように制御される。一方、図4(b)に示すように、現像装置の停止時Cでは、先ず、駆動モータ222のみの電源をオフし、その後、エアーポンプ207のみを所定時間だけ継続運転させ、この所定の継続運転時間が経過した時点Dでエアーポンプの電源をオフするように制御される。
【0039】本実施例における現像装置の駆動モータ222及びエアーポンプ207の動作を上述のように制御することにより、以下のような効果がある。すなわち、この現像装置において、粉体ポンプユニット200が作動している間は、図5(a)に示すように、現像剤が、エアーポンプ207から供給されるエアーと略均一に混合された混合気となって、供給管111の略全域に充満している。しかしながら、この状態で、現像装置全体を一度に停止、つまり、粉体ポンプユニット200の駆動モータ222とエアーポンプ207とを同時に停止すると、図5(b)から図5(c)に示すように、供給管111内に充満していた混合気状態の現像剤から空気のみが現像手段10の方に抜け、この混合気から現像剤のみが自重により下方に沈殿するために、この供給管111内での現像剤の嵩密度が増大する。
【0040】従って、この図5(c)に示すような状態にある現像装置を再運転すべく、その駆動モータ222を始動させた場合には、粉体ポンプユニット200により供給管111に向けて送りこまれる現像剤の移送が、装置の停止時において供給管111内に沈殿された残存現像剤により堰き止められるため、この供給管111内で現像剤の詰まりが発生することがあり、その結果、粉体ポンプユニット200の作動がロックしたり、焼付けを起こす(過度の温度上昇により、現像在中のトナーがローター201に固着し、この固着したトナーがステーター202を削ってしまう)ことがある。
【0041】そこで、この現像装置の運転開始時においては、図4(a)に示したように、エアーポンプ207のみを先に作動させ、その一定時間後に駆動モータ222を作動させることにより、供給管111内への現像剤の移送に先立って、エアーポンプ207から供給されるエアーのみにより、上述の供給管111内の残存現像剤を現像手段10内に排出させることができる。また、この現像装置の運転停止時においては、図4(b)に示したように、駆動モータ222のみの作動を先に停止させ、その一定時間後にエアーポンプ207の作動を停止させることにより、供給管111内で現像剤の沈殿化が発生する前に、エアーポンプ207から供給されるエアーのみにより、上述の供給管111内の現像剤を現像手段10内に事前に排出させて、この供給管111内をほぼ空にすることができる。
【0042】従って、本実施例の現像装置によれば、上述したような供給管111内での残存現像剤による剤詰まりの発生を解消して、現像剤の移送をより確実なものとすることができる。」

3.対比・判断
そこで、本願補正発明と刊行物1記載の発明とを対比する。

なお、本願補正発明は「トナー貯留装置」に係る発明であるが、本願補正発明の解釈について、本件補正後の請求項5における「画像形成装置本体」「トナー貯留装置」についての記載や発明の詳細な説明の記載も勘案して、本願補正発明の「トナー貯留装置」は、「トナー貯留手段」「回収トナー収納手段」だけでなく「空気供給手段」「回収トナー捕集手段」を含む概念として理解し、本願補正発明に記載される他の構成である「回収トナー移送部材」「トナー供給部材」「回収トナー移送手段」は、「画像生成装置本体」に属するか、あるいは「画像形成装置本体」と「トナー貯留装置」の間に介在するか、のいずれかであり、「トナー貯留装置」とは別のものであるとして一応ここでは理解しておく。ただし、以下の対比、相違点の認定等においては、「トナー貯留装置」とは別のものである「回収トナー移送部材」「トナー供給部材」「回収トナー移送手段」についても言及する。

刊行物1記載の発明の「潜像担持体に形成された静電潜像をトナー像として可視像化する現像装置を備えた画像形成装置」は、本願補正発明の「像担持体上に形成された静電潜像を現像手段のトナーで現像して可視像化する画像形成装置」に相当する。
刊行物1記載の発明の「現像装置13に供給される補給トナーを収容する第2トナー容器90」「廃トナー回収容器92」は、それぞれ、本願補正発明の「前記現像手段に供給されるトナーを貯留するトナー貯留手段」「画像形成時に残留して回収される回収トナーを収納する回収トナー収納容器」に相当する。
刊行物1記載の発明の「トナー搬送導管51と、その内部に全長に亘って設けられたコイル、スクリュー部材、オーガなどのトナー送り部材52とから成るトナー搬送手段50」と、本願補正発明のスクリューポンプとエアーポンプからなる「トナーを拡散させた状態で流動させる空気供給手段」とは、広い意味で「トナーを搬送するトナー搬送手段」の点で共通する。
刊行物1記載の発明の「クリーニング装置20」「廃トナー」は、それぞれ、本願補正発明の「クリーニング手段」「回収トナー」に相当する。
刊行物1記載の発明の「可撓性の廃トナー導管93」及び「例えば回転駆動されるコイルより成る廃トナー送り部材」からなるものは、概念的には、本願補正発明の「回収トナー移送部材」及び「前記画像形成装置の回収トナー移送手段」からなるものに相当する。
また、刊行物1記載の発明の「補給トナーを収容して現像装置に搬送し、クリーニング装置で回収し搬送された廃トナーを収容する手段」は、実質的に、本願補正発明の「トナー貯留装置」に相当するということができる。

そうすると、両者の一致点、相違点は、実質的に以下のとおりと認められる。

[一致点]
「像担持体上に形成された静電潜像を現像手段のトナーで現像して可視像化する画像形成装置に用いるトナー貯留装置において、
現像手段とは独立に別体で構成されており、現像手段に供給されるトナーを貯留するトナー貯留手段と、トナー貯留手段に連結されて、トナーを搬送するトナー搬送手段と、画像形成時に残留して回収される回収トナーを収納する回収トナー収納容器を有する回収トナー収納手段とを備え、
現像手段に供給されるトナーは、トナー搬送手段によって、現像手段に移送され、
回収トナーは、画像形成時に画像形成装置に備えられたクリーニング手段によって回収され、クリーニング手段によって回収されたトナーは回収トナー移送手段によって回収トナー移送部材を介して回収トナー収納手段に移送される、
トナー貯留装置。」

[相違点1]
トナーを搬送する手段に関して、
本願補正発明では、
トナーを拡散させた状態で流動させる空気供給手段を備え、
現像手段に供給されるトナーは、空気供給手段によって、空気と混合気状態にされてトナー供給部材を介して現像手段に移送され、
クリーニング手段によって回収されたトナーは画像形成装置の回収トナー移送手段によって空気との混合気状態にされて回収トナー移送部材を介して回収トナー収納手段に移送され、
加えて、空気供給手段はスクリューポンプとエアーポンプからなり、スクリューポンプの作動を開始あるいは停止した場合、作動開始に先立ちエアーポンプを作動させ、また作動停止後、所定の時間エアーポンプの作動を継続させるものであるのに対し、
刊行物1記載の発明では、
トナー補給における搬送手段は、「トナー搬送導管51と、その内部に全長に亘って設けられたコイル、スクリュー部材、オーガなどのトナー送り部材52とから成るトナー搬送手段50」であり、
トナー回収における搬送手段は、「可撓性の廃トナー導管93と、これに内設された、例えば回転駆動されるコイルより成る廃トナー送り部材」である点。

[相違点2]
回収トナーの捕集に関して、
本願補正発明では、
回収トナー収納手段の回収トナー収納容器の上部には、回収トナー移送部材が接続する回収トナー捕集手段が取り付けられており、回収トナー捕集手段でトナーと空気を分離し、トナーを捕集する構成であるのに対し、
刊行物1記載の発明では、そのような回収トナー捕集手段は明示されていない点。

上記相違点について検討する。

トナーを拡散させた状態で流動させる空気供給手段によって、トナーと空気の混合気状態でトナーを移送することは、周知の技術である。例えば、刊行物2,刊行物3、特開平7-219329号公報、特開平8-123198号公報、原審の拒絶査定で例示された特開昭56-9766号公報(第1頁右下欄第11?15行、第2頁右上欄第16?20行)を参照。
そして、本件補正で付加された「空気供給手段はスクリューポンプとエアーポンプからなり、スクリューポンプの作動を開始あるいは停止した場合、作動開始に先立ちエアーポンプを作動させ、また作動停止後、所定の時間エアーポンプの作動を継続させる」制御は、刊行物3(これは、本願と同じ出願人でかつ発明者も同じである出願の公開公報である。)に記載されており、公知の技術である。
さらに、トナーと空気の混合気状態でトナーを移送する場合、必要な箇所で、トナーと空気を分離しトナーを捕集することは、周知の技術である。例えば、上記の特開平7-219329号公報(【0027】)、上記の特開平8-123198号公報(【0019】)、特開昭58-102271号公報(第3図のフィルター12a)、上記の特開昭56-9766号公報(フィルタ6、フィルタ25)、原審の拒絶査定で例示された特開昭59-155864号公報(サイクロンフィルター集塵装置6)を参照。
そうすると、刊行物1記載の発明において、上記の周知及び公知の、トナーを搬送する手段とその制御、及びトナーと空気を分離しトナーを捕集する手段を採用して、相違点1,2に係る本願補正発明のごとくなすことは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、全体として、本願補正発明によってもたらされる効果も、刊行物1?3に記載された事項及び周知技術から当業者であれば当然に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1?3記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願の請求項1に係る発明
平成19年8月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?7に係る発明は、平成19年2月26日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】像担持体上に形成された静電潜像を現像手段のトナーで現像して可視像化する画像形成装置に用いるトナー貯留装置において、
前記現像手段とは独立に別体で構成されており、前記現像手段に供給されるトナーを貯留するトナー貯留手段と、該トナー貯留手段に連結され、トナーを拡散させた状態で流動させる空気供給手段と、画像形成時に残留して回収される回収トナーを収納する回収トナー収納容器を有する回収トナー収納手段とを備え、
前記現像手段に供給されるトナーは、前記空気供給手段によって、空気と混合気状態にされてトナー供給部材を介して前記現像手段に移送され、
前記回収トナーは、画像形成時に前記画像形成装置に備えられたクリーニング手段によって回収され、該クリーニング手段によって回収されたトナーは前記画像形成装置の回収トナー移送手段によって空気との混合気状態にされて回収トナー移送部材を介して前記回収トナー収納手段に移送され、
前記回収トナー収納手段の前記回収トナー収納容器の上部には、前記回収トナー移送部材が接続する回収トナー捕集手段が取り付けられており、該回収トナー捕集手段でトナーと空気を分離し、トナーを捕集することを特徴とするトナー貯留装置。」

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平5-204244号公報(上記「刊行物1」)、特開平8-211714号公報(上記「刊行物2」)の記載事項は、上記「第2 2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明1は、本願補正発明から「前記空気供給手段はスクリューポンプとエアーポンプからなり、前記スクリューポンプの作動を開始あるいは停止した場合、作動開始に先立ち前記エアーポンプを作動させ、また作動停止後、所定の時間前記エアーポンプの作動を継続させる」との限定事項を省いたものに実質的に相当する。
そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 3.」に記載したとおり、刊行物1?3記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、そして、刊行物3は、本願補正発明の上記限定事項に対応する引用例であり、上記限定事項がない本願発明1においては、刊行物3を用いる必要がないから、
本願発明1は、刊行物1,2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということになる。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-18 
結審通知日 2009-02-24 
審決日 2009-03-09 
出願番号 特願2005-126926(P2005-126926)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G03G)
P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅藤 政明  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 伊藤 裕美
山下 喜代治
発明の名称 トナー貯留装置及び画像形成装置  
代理人 本多 章悟  
代理人 樺山 亨  

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