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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61C 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 A61C 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 A61C 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 A61C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61C |
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管理番号 | 1196729 |
審判番号 | 不服2005-21194 |
総通号数 | 114 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-11-02 |
確定日 | 2009-05-01 |
事件の表示 | 特願2002-306586号「光硬化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年5月20日出願公開、特開2003-144462号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年10月22日(パリ条約による優先権主張2001年11月9日、ドイツ)の出願であって、平成17年8月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。 2.平成17年11月2日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年11月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。 「それぞれ異なった放射スペクトル最大を有する少なくとも2つの発光 ダイオードおよび/または発光ダイオード群を備える歯科用の光硬化装置と少なくとも一つの光重合開始剤を備える光重合性材料からなるシステムであり、この光硬化装置は感度スペクトル最大点を含んだ感度スペクトルを有する少なくとも1つの光重合開始剤からなる光重合性材料を重合するためのものであり、この光重合開始剤の感度スペクトル最大点が第1の発光ダイオードの放射最大点と異なるように設定されているシステムにおいて、 前記光重合性材料は唯一つの光重合開始剤(20)からなり、且つ 第1の発光ダイオード(12)の放射スペクトルは光重合開始剤(20)の感度スペクトルとの間で部分的な重複領域のみを有し、これに対して第2の発光ダイオード(14)の放射スペクトルは光重合開始剤(20)の感度最大点を備えたより大きな重複領域を有することを特徴とするシステム。」(下線部は、補正箇所を示す。) (2)補正の目的の適否 本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「光硬化装置」を「システム」に変更し、「光重合開始剤」と「光重合性材料」について、「少なくとも一つの光重合開始剤を備える光重合性材料」と補正するものであるが、上記変更は、発明のカテゴリを装置からシステムに変更するものであるから、特許請求の範囲を変更するものであり、また、上記補正は、2つ以上の光重合開始剤を備える光重合性材料を含むことになるから、特許請求の範囲を拡張するものであって、本件補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものとは認められない。 また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、あるいは明りょうでない記載の釈明の、いずれを目的としたものとも認められない。 したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。 3.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、拒絶査定時の明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「それぞれ異なった放射スペクトル最大を有する少なくとも2つの発光ダイオードおよび/または発光ダイオード群を備え、感度スペクトル最大点を含んだ感度スペクトルを有する唯1つの光重合開始剤を含んだ光重合性材料を重合するためのものであり、この光重合開始剤の感度スペクトル最大点が第1の発光ダイオードの放射最大点と異なるように設定されている、歯科用の光硬化装置において、第1の発光ダイオード(12)の放射スペクトルは光重合開始剤(20)の感度スペクトルとの間で部分的な重複領域のみを有し、これに対して第2の発光ダイオード(14)の放射スペクトルは光重合開始剤(20)の感度スペクトルとの間でより大きな重複領域を有することを特徴とする光硬化装置。」 4.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、特開平2-1401号公報(以下、「引用例」という)には、次の事項が記載されている。 ア.「本発明による歯科材料は二段階において硬化させ得る。第一硬化工程においては450nmより小の波長域遮断フィルターによって、あるいは光源を選択することによって光重合開始剤IIだけが励起される。この場合長波長の弱エネルギー光によって比較的弱い活性ラジカルが生し、これによってアミンのような活性剤の不存在下に、エチレン系の不飽和の重合性モノマーが部分的に硬化される。本発明によれば、光重合開始剤IIによって物質は、光重合開始剤I単独使用下に低波長(450nm以下)光線によって得られる硬さの70%まで、望ましくは50%まで硬化される。 第二硬化工程においては450nm以下の波長域の光源を使用することによって物質は最終の硬さまで硬化される。これは例えば第一硬化工程において採用した光学面フィルターを省いて露光することによって達成される。」(第5ページ左上欄第17行?右上欄第14行) イ.「このような歯科材料を使用することによって、充填時に第一硬化工程において実質的に470nm以上の波長の光源を用いて物質を最終硬さの70%まで、好ましくは50%まで硬化させて固定することができるという特長が得られる。特に支歯-合成物の場合、上記のように相応の硬さが得られるので、切削器械によって加工することができ、さらに研摩加工及び仕上加工においては材料の損失を著しく抑えることができる。これらの加工終了後、450nm以下の波長の光線を用いて(あるいはこの波長域を分離した光線を用いて)上記歯科材料を最終硬さまで硬化させる。このようにして得られた充填物は、口内において加えられる噛み砕きにおける力に十分耐え得る。」(第5ページ左下欄第1?14行) 上記ア及びイの記載から、光の波長が470nm以上の光源と光の波長が450nm以下の光源を備えた歯科用の光硬化装置が記載されているものと認められる。 これら記載事項を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。 「光の波長が470nm以上の光源と光の波長が450nm以下の光源を備え、2つの光重合開始剤を含んだ歯科材料を硬化するためのものである歯科用の光硬化装置おいて、光の波長が470nm以上の光源によって光重合開始剤IIが励起され、光の波長が450nm以下の光源によって光重合開始剤Iが励起される光硬化装置。」 5.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「硬化する」は、本願発明の「重合する」に相当する。 また、引用発明の「光の波長が470nm以上の光源と光の波長が450nm以下の光源」と本願発明の「発光ダイオードおよび/または発光ダイオード群」とは、それぞれ異なった放射スペクトル最大を有する少なくとも2つの光源という点で共通しており、引用発明の「歯科材料」と本願発明の「光重合性材料」とは、感度スペクトル最大点を含んだ感度スペクトルを有する光重合開始剤を含んだ光重合性材料という点で共通している。 そこで、本願発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。 (一致点) 「それぞれ異なった放射スペクトル最大を有する少なくとも2つの光源を備え、感度スペクトル最大点を含んだ感度スペクトルを有する光重合開始剤を含んだ光重合性材料を重合するためのものである歯科用の光硬化装置。」 そして、両者は次の相違点で相違する。 (相違点) 本願発明は、光源が発光ダイオードおよび/または発光ダイオード群であり、光重合性材料が唯1つの光重合開始剤を含んでおり、この光重合開始剤の感度スペクトル最大点が第1の発光ダイオードの放射最大点と異なるように設定されており、第1の発光ダイオードの放射スペクトルは光重合開始剤の感度スペクトルとの間で部分的な重複領域のみを有し、これに対して第2の発光ダイオードの放射スペクトルは光重合開始剤の感度スペクトルとの間でより大きな重複領域を有するのに対し、引用発明は、光源が発光ダイオードであるか不明であり、光重合性材料が2つの光重合開始剤を含んでおり、光の波長が470nm以上の光源によって光重合開始剤IIが励起され、光の波長が450nm以下の光源によって光重合開始剤Iが励起される点。 6.判断 上記相違点について検討する。 歯科用の光硬化装置において、光源を発光ダイオードとすることは、例えば、特開平9-28719号公報、特開2000-316874号公報、特開2000-245747号公報等に示されるように、本願の優先日前の周知技術に過ぎず、光硬化を途中まで行うために、光重合開始剤の感度スペクトル最大点と異なる波長領域の光を当てることは、技術常識(例えば、特開平7-9573号公報等参照)に過ぎないことを考慮すると、引用発明において、2つの光源を発光ダイオードとし、上記技術常識を適用して、歯科材料(光重合材料)に含まれる光重合開始剤を1つとし、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明による効果も、引用発明、上記周知技術及び上記技術常識から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。 7.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、上記周知技術及び上記技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-12-27 |
結審通知日 | 2008-01-09 |
審決日 | 2008-01-22 |
出願番号 | 特願2002-306586(P2002-306586) |
審決分類 |
P
1
8・
571-
Z
(A61C)
P 1 8・ 121- Z (A61C) P 1 8・ 572- Z (A61C) P 1 8・ 573- Z (A61C) P 1 8・ 574- Z (A61C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 寺澤 忠司 |
特許庁審判長 |
阿部 寛 |
特許庁審判官 |
八木 誠 鏡 宣宏 |
発明の名称 | 光硬化装置 |
代理人 | 浜田 治雄 |