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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1196813
審判番号 不服2006-23043  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-12 
確定日 2009-05-07 
事件の表示 特願2001- 87872「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月 2日出願公開、特開2002-282507〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成13年3月26日の出願であって、平成18年9月4日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年10月12日付けで本件審判請求がされるとともに、同月27日付けで明細書についての手続補正がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、新たな拒絶の理由を通知したところ、請求人は平成21年2月16日付けで意見書及び手続補正書を提出した。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年2月16日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「特定の遊技領域に遊技球が入賞した場合には、乱数発生回路から取得した抽選用乱数値に基づいて遊技者に有利な状態を発生させるか否かの抽選処理を行う弾球遊技機であって、
前記乱数発生回路は、前記抽選処理を実現するCPUのシステムクロックとは同期しないよう独立して構成され、立ち上がりエッジと立ち下がりエッジを有する基準クロック(Φ)を発生するクロック発生回路(60)と、
前記基準クロックの一方のエッジに同期して、所定の数値範囲内で計数動作を繰り返すカウンタ(61)と、
前記抽選用乱数値の取得を要求する要求信号を前記乱数発生回路の外部から受けて、前記基準クロックの他方のエッジに同期して、その時の前記要求信号を出力するフリップフロップ(62)と、
前記フロップフロップから出力される前記要求信号と、前記カウンタから出力されるカウンタ値とを直接受けて、前記フリップフロップが出力する前記要求信号のレベルが所定方向に変化することに同期して、前記カウンタ値を前記抽選用乱数値として取得して出力するラッチ回路(63)と、
で構成されていることを特徴とする弾球遊技機。」
第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
当審の拒絶理由に引用した特開2000-61120号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?ケの記載が図示とともにある。
ア.「特定入賞部への遊技媒体の入賞により特別遊技を行い、特別遊技の結果が所定の態様になったことにもとづいて遊技者に所定の遊技価値が付与可能となる遊技機であって、
所定の間隔で起動され、遊技の進行を制御するプログラムであって、前記特別遊技の結果に関する抽選処理および遊技機に設けられているスイッチの状態を検出する処理を有する遊技制御プログラムを含む遊技制御手段と、
前記所定の間隔よりも短い間隔で出力値を更新する外部乱数発生手段とを備え、
前記特定入賞部への遊技媒体の入賞を検出するスイッチの信号に応じて前記外部乱数発生手段の出力値を取得する数値取得手段を含み、
そのスイッチのオンを正常に検出したことを判定したときの前記数値取得手段の取得値を前記抽選処理に用いられる値とすることを特徴とする遊技機。」(【請求項1】)
イ.「そのような遊技機における遊技制御においては、所定の条件(例えば可変表示開始の条件となる始動入賞)が成立すると乱数を発生させ、乱数値があらかじめ決まられている所定値と一致すると「大当り」となる。また、ノイズ対策等の理由によって遊技制御を行う回路部分は、所定の時間間隔でリセットされ起動される。乱数値の発生は、遊技制御を行う回路部分において行われているので、遊技制御を行う回路部分の起動の時間間隔に同期せざるを得ない。」(段落【0004】)
ウ.「図1はパチンコ遊技機1を正面からみた正面図である。なお、ここでは、遊技機の一例としてパチンコ遊技機を示す」(段落【0011】)
エ.「主基板31には、電源投入時に基本回路53をリセットするための初期リセット回路65と、定期的(例えば、2ms毎)に基本回路53にリセットパルスを与えてゲーム制御用のプログラムを先頭から再度実行させるための定期リセット回路66と、基本回路53から与えられるアドレス信号をデコードしてI/Oポート部57のうちのいずれかのI/Oポートを選択するための信号を出力するアドレスデコード回路67とが設けられている。」(段落【0025】)
オ.「さらに、主基板31には、高速で乱数を生成する外部乱数生成手段を構成する発振回路75、16ビットカウンタ76および乱数確定レジスタ77も搭載されている。」(段落【0026】)
カ.「発振回路75の発振周波数は20MHzであるから、0.05μsで1クロックが発生する。16ビットカウンタ76は0?65535の範囲の値を出力する。よって、乱数周期は、0.05μs×65535=3.2768msである。」(段落【0029】)
キ.「図8は、始動口スイッチ17のオンにもとづく割込によって起動されるCPU56の割込処理を示すフローチャートである。始動口スイッチ17がオンすると、割込処理が起動される。割込処理では、CPU56は、まず、乱数確定レジスタ77に、ラッチパルスを出力する(ステップS21)。すると、乱数確定レジスタ77は、そのときの16ビットカウンタ76の出力をラッチする。」(段落【0037】)
ク.「ランダム1にもとになるカウンタ値を生成する16ビットカウンタ76を駆動する20MHzのクロック信号も、2ms周期とは全く非同期である。従って、始動口スイッチ17のオンにもとづいて16ビットカウンタ76のカウント値をランダム1(大当り判定用乱数)として抽出すれば、2ms周期とは同期しないランダム1の値を得ることができる。」(段落【0038】)
ケ.「この実施の形態では、基本回路53におけるCPU56に与えられる定期リセット間隔(2ms)とは同期せずに0?65535の間で循環する外部乱数の値を、定期リセット間隔とは非同期に発生する始動入賞でラッチし、ラッチされた値を、抽出された大当り判定用乱数とする。」(段落【0053】)

2.引用例1記載の発明の認定
記載アの「遊技制御手段」が、記載ケ等の「基本回路53」、とりわけ「CPU56」を主たる構成要件とすることは明らかであり、【図5】には始動口スイッチ(記載アの「特定入賞部への遊技媒体の入賞を検出するスイッチ」)からCPUに入力されること、及びCPUから「乱数確定レジスタ」にラッチ信号が出力されることが図示されている。
したがって、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「特定入賞部への遊技媒体の入賞により特別遊技を行い、特別遊技の結果が所定の態様になったことにもとづいて遊技者に所定の遊技価値が付与可能となる遊技機であって、
遊技制御手段、外部乱数発生手段及び乱数確定レジスタを備え、
前記遊技制御手段は、CPUを有するものであって、所定の間隔で起動され、遊技の進行を制御するプログラムであって、前記特別遊技の結果に関する抽選処理および遊技機に設けられているスイッチの状態を検出する処理を有する遊技制御プログラムを含み、
前記外部乱数発生手段は、前記所定の間隔よりも短い間隔で発振する発振回路及びカウンタを含み、前記発振回路の出力クロックは前記所定の間隔とは非同期になっており、
前記カウンタは、0?65535の範囲の値を出力するものであり、
前記特定入賞部への遊技媒体の入賞を検出するスイッチの信号が前記CPUに入力されると、前記CPUから前記乱数確定レジスタにラッチ信号が出力されるように構成し、
前記乱数確定レジスタは、前記カウンタの出力を前記ラッチ信号によりラッチし、ラッチした値を前記抽選処理に用いられる値とするパチンコ遊技機。」(以下「引用発明1」という。)

3.本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1の「特定入賞部」、「遊技者に所定の遊技価値」及び「外部乱数発生手段」は、本願発明の「特定の遊技領域」、「遊技者に有利な状態を発生」及び「乱数発生回路」にそれぞれ相当する。
引用発明1の「発振回路」は本願発明の「クロック発生回路(60)」に相当し、「発振回路の出力クロック」が「立ち上がりエッジと立ち下がりエッジを有する」ことは自明であるから、引用発明1の同クロックは本願発明の「基準クロック(Φ)」に相当し、「前記抽選処理を実現するCPUのシステムクロックとは同期しないよう独立して構成され、立ち上がりエッジと立ち下がりエッジを有する基準クロック(Φ)を発生する」ことは、本願発明と引用発明1の一致点である(引用発明1の「所定の間隔」(実施例では2ms周期)を規定するクロックが本願発明の「システムクロック」に相当する。)。
また、引用発明1の「カウンタ」が「前記基準クロックの一方のエッジに同期して、・・・計数動作」することは明らかであり、「0?65535の範囲」は「所定の数値範囲内」といえるから、本願発明の「カウンタ(61)」との相違はない。
引用発明1の「乱数確定レジスタ」は、「前記カウンタの出力を前記ラッチ信号によりラッチし、ラッチした値を前記抽選処理に用いられる値とする」のであるから、「ラッチ信号とカウンタから出力されるカウンタ値とを直接受けて、前記カウンタ値を前記抽選用乱数値として取得して出力するラッチ回路」と称することができ、その限度で本願発明の「ラッチ回路(63)」と共通し、その限度では、引用発明1の「ラッチ信号」が本願発明の「前記フロップフロップから出力される前記要求信号」に対応する。
引用発明1の「パチンコ遊技機」を「弾球遊技機」と称し得ることはいうまでもない。
したがって、本願発明と引用発明1の一致点及び相違点は次のとおりである。
〈一致点〉
「特定の遊技領域に遊技球が入賞した場合には、乱数発生回路から取得した抽選用乱数値に基づいて遊技者に有利な状態を発生させるか否かの抽選処理を行う弾球遊技機であって、
前記乱数発生回路は、前記抽選処理を実現するCPUのシステムクロックとは同期しないよう独立して構成され、立ち上がりエッジと立ち下がりエッジを有する基準クロック(Φ)を発生するクロック発生回路と、
前記基準クロックの一方のエッジに同期して、所定の数値範囲内で計数動作を繰り返すカウンタと、
要求信号と、前記カウンタから出力されるカウンタ値とを直接受けて、前記要求信号のレベルが所定方向に変化することに同期して、前記カウンタ値を前記抽選用乱数値として取得して出力するラッチ回路と、
で構成されている弾球遊技機。」
〈相違点〉
本願発明が「前記抽選用乱数値の取得を要求する要求信号を前記乱数発生回路の外部から受けて、前記基準クロックの他方のエッジに同期して、その時の前記要求信号を出力するフリップフロップ(62)」を有し、「前記カウンタ値を前記抽選用乱数値として取得」する際に用いられる「要求信号」は「フロップフロップから出力される」信号であるのに対し、引用発明1では、このような構成になっていない点。

4.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
当審の拒絶理由に引用した特開平6-197009号公報(以下「引用例2」という。)には、【発明が解決しようとする課題】として、「内部のカウンタで計数されるカウンタクロックはシステムクロックとは非同期である場合、カウンタクロックパルスが入力されカウンタ内部の計数値が変更されている途中の瞬間にラッチが発生する恐れがある。その場合、そのラッチされた計数値は正しい計数値である保証はなく、全くでたらめな値がラッチされてしまう可能性もあるという問題がある。」(段落【0005】)との記載があり、「全くでたらめな値がラッチされてしまう可能性もあるという問題」が引用発明1に当てはまることは明らかである。
引用例2には、上記課題を解決するために、【課題を解決するための手段】として「カウンタの前段側に配置され、カウンタクロックを所定時間遅延させてカウンタに入力する遅延回路と、システムクロックに同期するとともに上記制御信号に応答した所定のタイミング以降の最初の、遅延回路に入力される前のカウンタクロックのカウンタの計数値更新のタイミングで、カウンタの計数値をラッチに保持させるラッチ制御回路とを備えたことを特徴とする。」(段落【0007】)との記載があり、ここに記載された技術を引用発明1に採用することには何の困難性もない。
引用例2にはさらに、「所定の読取り区間RDでそのラッチされた計数値をCPUが読み取る」(段落【0012】)場合を例として、「図3は、遅延回路14およびラッチ制御回路15を表わした回路図である。遅延前のカウンタクロックC_CLK_0およびラッチ信号LATCH_0はラッチ制御回路15を構成するフリップフロップ151の、それぞれクロック入力端子,データ入力端子に入力される。またラッチ信号LATCH_0とフリップフロップ151の出力信号はオアゲート152に入力される。したがってオアゲート152の出力信号LATCH_1は、ラッチ信号LATCH_0がLレベルにあり、かつ遅延前のクロック信号C_CLK_0の立ち下がりの時点で立ち下がる信号となる。このオアゲート152の出力信号LATCH_1(ラッチ制御回路15の出力信号)をラッチ13に入力することにより、ラッチ13に保存された計数値L_OUTは、カウンタ12の、その時点の、確実に保証された計数値COUNTを表わすものとなる。」(段落【0015】)との記載がある。これら記載によれば、引用例2には、全くでたらめな値がラッチされてしまう可能性を排除することを課題として、カウンタクロックを所定時間遅延させてカウンタに入力し、遅延前のカウンタクロックC_CLK_0及びラッチ信号LATCH_0をフリップフロップの、それぞれクロック入力端子,データ入力端子に入力し、ラッチ信号LATCH_0とフリップフロップの出力信号をオアゲートに入力し、そのオアゲートの出力によりカウンタ出力をラッチする技術が記載されている。ここで、フリップフロップは、ラッチ信号LATCH_0とカウンタクロックC_CLK_0との位相関係がランダムであり、ラッチタイミングをカウンタクロックC_CLK_0に同期させるために設けられたことは明らかである。上記実施例では、フリップフロップの出力信号そのものによってラッチしていないが、それは「所定の読取り区間RDでそのラッチ」をするためであり、「認識信号R_AKNの後端の、システムクロックS_CLKの立ち上がりの時点でラッチ信号LATCH_0が立ち上がり、計数値のラッチが解除される。」(段落【0013】)と記載されているように、ラッチを解除する必要があるためであり、ラッチ解除の必要がなければフリップフロップの出力信号そのものによってラッチしてもよいことは自明である。そして、引用発明1では、次の「特定入賞部への遊技媒体の入賞を検出するスイッチの信号」により新たにラッチすれば十分であって、ラッチを解除する必要はないから、引用例2記載の技術を採用するに当たり、フリップフロップの出力信号そのものによってラッチすることは設計事項というべきである。
また、引用例2記載の技術では、カウンタクロックを所定時間遅延させてカウンタに入力しており、同技術は、「前記基準クロックの他方のエッジに同期して、その時の前記要求信号を出力するフリップフロップ」との構成とは異なる。
しかし、当審の拒絶理由に引用した特開2000-24285号公報(以下「引用例3」という。)には、「カウンタ回路14aは、Eクロックを入力して、その立ち上がり毎に1カウントずつアップする8ビットのカウンタであり、このカウンタ回路14aのカウント値は、Eクロックの立ち下がり毎にラッチ回路14bにラッチされる。」(段落【0017】)との記載があり、【図2】にはラッチ回路14bにEの反転信号が入力されることが示されている。引用例3は、基準クロックとは別の要求信号に基づいてラッチする技術を開示するものではないけれども、カウンタの計数動作とラッチ動作が、基準クロックの一方のエッジ及び他方のエッジに同期させる技術を開示しており、しかも同期すべきエッジを異ならせるために、基準クロックを反転する技術を開示している。そして、クロックを反転することは半周期遅延させることと等価である。
他方、引用例2記載の技術において、遅延量を半周期程度にすれば、最も確実にカウンタ内部の計数値が変更されている途中の瞬間にラッチが発生する可能性を排除できることは、原理的に明らかである。
そうであれば、引用発明1に引用例2記載の技術を採用するに当たり、引用例3記載の技術を併せ採用し、遅延量が半周期となるように、カウンタへ入力する基準クロックを反転することは設計事項程度というべきである。なお、引用例3では、ラッチ回路に入力する信号を反転しているが、元の基準クロックの位相など、パチンコ遊技機ではどうでもよいことだから、反転したクロックを基準クロックと見なせば、カウンタへ入力する基準クロックを反転したことになる。逆に、引用例2において、カウンタへの入力を遅延する代わりに、フリップフロップへの入力を遅延しても、カウンタ内部の計数値が変更されている途中の瞬間にラッチが発生する可能性を排除できるから、フリップフロップへ入力する基準クロックを反転することも設計事項というべきである。そして、カウンタ又はフリップフロップへ入力する基準クロックのどちらか一方だけを反転すれば、フリップフロップは、基準クロックの他方のエッジに同期して、要求信号を出力することとなる。
以上のとおりであるから、相違点に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1及び引用例2,3記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-05 
結審通知日 2009-03-10 
審決日 2009-03-24 
出願番号 特願2001-87872(P2001-87872)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 陽  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 小原 博生
有家 秀郎
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 野中 誠一  

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