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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) G01N
管理番号 1197060
判定請求番号 判定2008-600046  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2009-06-26 
種別 判定 
判定請求日 2008-11-11 
確定日 2009-05-13 
事件の表示 上記当事者間の特許第3892892号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号製品説明書に示す「ボトルチェッカー(製品型式 SENCION Ω-AS)」は,特許第3892892号発明の技術的範囲に属さない。  
理由 1 請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は,イ号製品説明書に示す「ボトルチェッカー(製品型式 SENCION Ω-AS)」(以下,「イ号物件」という。)が特許第3892892号(以下,「本件特許」という。)の請求項1記載の特許発明の技術的範囲に属する,との判定を求めたものである。

2 本件特許発明
(1)手続の経緯
本件特許の手続の経緯の概要は,次のとおりである。
国際出願 平成16年12月22日
(優先権主張 平成15年12月26日,平成16年3月16日 日本国)
国内書面提出 平成18年4月10日(差出日)
拒絶理由通知 平成18年8月7日(起案日)
意見書・補正書 平成18年10月13日(差出日)
(分割出願 平成18年10月13日 特願2006-279762号)
設定登録 平成18年12月15日

(2)本件特許発明
特許第3892892号の請求項1に係る発明(以下,「本件特許発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ,構成要件毎に符号を付して分説すると次のとおりである。

「A 容器の外部に配置する熱源と、
B 前記熱源の近傍に配置され、前記容器の外壁温度を電圧または電流に変換する温度センサと、
C 前記容器の内容物が危険である旨の警報を発することができる報知手段と、
D 前記熱源への電力の供給を制御し、前記熱源に電力を供給する前または供給した時の時刻t1における前記温度センサの出力の値と前記時刻t1から所定の経過時間t2を経過した時刻t1+t2における前記温度センサの出力の値との差を、所定の閾値と比較し、前記報知手段に警報信号を出力する制御判定回路と、
E を含む容器内の液体種別を判別する装置。」

3 イ号物件
イ号製品説明書の記載からみて,イ号物件は,構成毎に符号を付して分説すると,次のとおりのものと認める。なお,この認定は,請求人が,判定請求書(第3頁下から5行目から第4頁第5行目)において認定するイ号物件の構成に準じたものである。

「a 缶検知部にアルミ缶を置くとアルミ缶の側部に接近するように配置するヒーターと,
b 前記ヒーターの近傍に配置された缶センサーと,
c 前記缶検知部に置かれたアルミ缶の内容物が危険である旨の警報を発するNO SAFEランプ及びアラームと,
d アルミ缶が缶検知部に置かれたことを光電センサーが検知した後,前記ヒーターへの電力の供給が開始され,その後,電力の供給が終了し,また,アルミ缶の内容物が可燃性液体であれば,その旨前記NO SAFEランプ及びアラームにより警報させる手段と,
e を含むアルミ缶内の液体種別を判別する装置。」

4 対比及び判断
イ号物件の各構成が,本件特許発明の各構成要件を充足するか否かについて検討する。

(1)構成要件A
イ号物件の構成aの「アルミ缶」及び「ヒーター」は,本件特許発明の構成要件Aの「容器」及び「熱源」にそれぞれ相当する。また,イ号物件の構成aの「ヒーター」は,「缶検知部にアルミ缶を置くとアルミ缶の側部に接近するように配置」されているのであるから,「アルミ缶」の外部に配置されていることは明らかである。そうすると,イ号物件の構成aは,本件特許発明の構成要件Aを充足する。

(2)構成要件B
イ号物件の構成bの「缶センサー」について,甲第3号証(「実験報告書」)の第2頁第23行目から第3頁第14行目の記載によると,「缶センサーは、白金測温抵抗体Pt100であると言える」とされ,被請求人の答弁書に添付された「本審判に関する意見書」の第4行目に「センサは、PTセンサであり0?60°Cの範囲の絶対温度で缶測定を行う」と記載されていることから,イ号物件の構成bの「缶センサー」は白金測温抵抗体による温度センサであると認められる。また,測温抵抗体を用いる際,測温抵抗体に通電し,温度を電圧または電流に変換して測定することで,温度を測定することは,通常のことである。そして,イ号物件の構成bの「缶センサー」は,「前記ヒーターの近傍に配置され」ている。してみると,イ号物件の構成bは,本件特許発明の構成要件Bを充足する。

(3)構成要件C
イ号物件の構成cの「NO SAFEランプ及びアラーム」は,「警報を発する」ことができるのであるから,本件特許発明の構成要件Cの「報知手段」に相当する。そうすると,イ号物件の構成cは,本件特許発明の構成要件Cを充足する。

(4)構成要件E
イ号物件の構成eの「アルミ缶」は,本件特許発明の構成要件Eの「容器」に相当するから,イ号物件の構成eは,本件特許発明の構成要件Eを充足する。

(5)構成要件D
イ号物件の構成dの「手段」が行う機能又は動作について,「前記ヒーターへの電力の供給が開始され,その後,電力の供給が終了し」とすること,及び「アルミ缶の内容物が可燃性液体であれば,その旨前記NO SAFEランプ及びアラームにより警報させる」ことは,本件特許発明の構成要件Dの「制御判定回路」が行う機能又は動作である「前記熱源への電力の供給を制御」すること,及び「前記報知手段に警報信号を出力する」ことに,それぞれ相当する。
また,イ号物件の構成dの「手段」が行う機能又は動作について,「アルミ缶の内容物が可燃性液体であれば」・・・「警報させる」という動作を行うために,アルミ缶の内容物が可燃性液体であるかどうかを判断していることは明らかである。そして,その判断のために,甲第3号証の第7頁第5行目から第17頁第9行目の記載(「4.測定タイミングの調査」及び「5.測定タイミングの確認」)によれば,「ヒーターに電力の供給が開始されてから0.3秒より後かつ0.4秒より前と,3.2秒より後かつ3.3秒より前の少なくとも2つの時点で缶センサーによって温度測定が行われていた」ものと認められる。この2つの時点で缶センサーによって温度測定が行われていることは,本件特許発明の構成要件Dの「制御判定回路」が行う機能又は動作である「前記熱源に電力を供給する前または供給した時の時刻t1における前記温度センサの出力の値と前記時刻t1から所定の経過時間t2を経過した時刻t1+t2における前記温度センサの出力」を求めることに相当する。
そして,これらの機能又は動作を行うイ号物件の構成dの「手段」は,制御判定を行い,ヒーターへの電力の供給を制御し,缶センサからの電気入力に応じて,警報を電気出力するものであるから,電気回路として構成されていることは明らかであり,本件特許発明の構成要件Dの「制御判定回路」に相当する。
以上のとおりであるが,イ号物件の構成dの「手段」が,アルミ缶の内容物が可燃性液体であるかどうかを判断するために,2つの時点で缶センサーによって温度測定を行い,「その出力の値の差を,所定の閾値と比較して」いるか,の点について,さらに検討する。

ア 請求人の主張
(ア)判定請求書の第5頁第27行目から第6頁第9行目の記載及び甲第3号証第5頁第5行目から第7頁第4行目の記載(「3.閾値の調査」)によれば,イ号物件の缶センサーの代わりに,缶センサーを摸した抵抗を接続し,初期抵抗値を109.0Ω,112.8Ω及び115.0Ω(それぞれ約23°C,約33°C及び約38°Cに相当する)としたいずれの場合にも,抵抗増加分が0.2Ω以下であれば内容物が水であり,抵抗増加分が0.4Ω以上であれば内容物は水ではないと判断しており,このような動作から,抵抗増加の前後の2回の測定による温度センサの出力の値の差を,所定の閾値と比較していることは明らかである。

(イ)本件特許発明の「温度センサの出力の値との差を、所定の閾値と比較し」との構成要件についてのイ号物件の充足性を回答するよう,請求人に求めた,平成21年3月11日付けの審尋に対して,請求人は回答書にて次のように主張している。すなわち,被請求人が言う「熱伝達係数」とは,ある経過時間「△T」における温度センサの出力変化「△V」を係数化したものであるとして,温度センサの出力変化「△V」は,缶センサで温度測定が行われる2つの時点における出力の差であり,経過時間「△T」は,この2つの時点の間隔であって,缶の初期温度などによらず一定であるから,「△V/△T」に基づいて,被請求人の言う「熱伝達係数」を測定して判定しているのだとしても,実質的に出力差「△V」を,閾値にかかる所定の出力差と比較しているのと同じであるから,本件特許発明の上記の構成要件を充足する。

(ウ)請求人は回答書にて,次の各点についても主張している。「(2)「△V1-△V2/△T temp」について
・・・
このように、缶の温度に応じて赤熱するまでの時間を変える理由としては、缶の温度に缶センサ(白金測温抵抗体)の温度をなじませて、安定したセンサ出力を得ることが考えられます(この点は、本件特許発明においても、本件特許公報(甲第1号証)の段落0107?0110に記載がありますように考慮されていることです。)。
・・・
仮にそうだとしましても、本件特許発明は、このような前処理を実施例として含みますし、また、除外するものではありませんから、上記1.で充足するとしたことに影響を与えるものではありません。」(回答書第2頁下から2行目から第3頁第16行目。)、「(4)テーブルデータの内蔵・判定について
・・・
これを予め実験等により確認し、缶の温度と缶センサの初期温度と安定時間とを関連させたテーブルデータとしておくことは常套手段といえますし、本件特許発明においても、同段落0110に後述する補正テーブルの記述がありますように、テーブルデータとしておくことは必要に応じて適宜考慮されることといえます。
・・・
そして、仮に、このようなテーブルデータを内蔵し、これを判定に利用しているのだとしても、本件特許発明においてもテーブルデータを用いることは必要に応じて適宜考慮されることですし、また、このようなテーブルデータの内蔵・判定を除外するものではありませんから、上記1.で充足するとしたことに影響を与えるものではありません。」(回答書第3頁下から5行目から第4頁第18行目。)、「(5)非線形の特性を有する判定について
答弁書の「本審判に関する意見書」の記載では、「非線形」が具体的にどのようなことであるのか不明なところはありますが、本件特許発明の範囲で考えますに、本件特許公報の段落0107?0112などにも示しましたように、出力差あるいは係数なるものについて缶温度を考慮していることを言っているのではないかと推測されます。
・・・
すなわち、本件特許発明における出力差は、本件特許公報の段落0109にありますように、缶温度を無視しないときには缶温度に基づく補正を行った出力差を含むものであり、かつ、このことは、段落0106?0107にありますように、本件特許発明の要旨を逸脱しない範囲内のことということがいえます。
・・・
したがいまして、被請求人の言う「非線形」が上述したようなことであるとするならば、本件特許発明もまさにそのような実施例を含むものですから、上記1.で充足するとしたことに影響を与えるものではありません。」(回答書第4頁第19行目から第5頁第13行目。)。

イ 被請求人の主張
(ア)被請求人の答弁書に添付された「本審判に関する意見書」の第7行目に,「数secの短パルス熱で,△V/△Tの熱伝達変化を測る」と記載され,第15行目から第22行目に「また、△V/△Tの熱伝達係数を測定しているが、熱インパルスの印加時間のオフセット変化を判定に考慮している。 △V1-△V2/△T tempとして、缶温度の条件で判定を変えている。 印加時間と△V2 及び、 缶温度と△T tempは、CPUの内部テーブルデータを内臓・判定している。 熱伝達係数として評価しないと、5?55°Cの飲料ボトルの測定に対応できず結露にも対応できない。また、判定は非線形の特性を有する。そして、判定係数は飲料・危険物によりそれぞれほぼ固有の設定係数となる。」と記載されている。

(イ)上記(ア)の主張における「△V1-△V2/△T tempとして、缶温度の条件で判定を変えている。」,「印加時間と△V2 及び、 缶温度と△T tempは、CPUの内部テーブルデータを内臓・判定している。」及び「判定は非線形の特性を有する。」などの点について,どのような意味であるのか明らかにするよう,被請求人に回答を求めた,平成21年3月11日付けの審尋に対して,被請求人は回答書に,次のように記載している。「通常温度センサは、常温の付近で待機し缶の挿入でセンサが接触する。このとき缶が低温ならセンサは冷やされ、高温なら暖められることは容易にわかります。ですが、センサの形状や缶との接触状況等の影響と温度環境の高低の違いで起こる熱輻射の有無から、センサの感じる温度変化の傾斜が常温に対して低温なら中ぐらいの傾き、高温なら大きい傾き、常温付近なら小さい傾きを持つ温度変化にさらされます。(これは、温度の異なる検体を測定するのですからあたりまえです。)従って、この温度の違いによる影響を考慮した測定法が必要となりますが、これが△V1缶温度の変化と熱インパルスによる温度の変化量 △V2は缶温度の変化量 △T tempは測定してる温度条件からの判定する条件を整えることが必要となるファクター。」(回答書第2頁第10行目から第20行目。)、「Al缶
0°C?15°C ?25°C ?60°C
△V1 V1aa V1ab V1ac
△V2 V2aa V2ab V2ac
△T temp t1wait t2wait t3wait
t1inpuls t2inpuls t3inpuls
・・・
但し、△V1・△V2は測定値 △T temp は、設定値」(回答書第3頁第4行目から第16行目。)、「このとき、△V2測定時間と熱インパルス印加時間が温度により設定されます。 例 t1wait 缶温度測定時間 t1inpuls 熱印加時間」(回答書第3頁第19行目から第20行目。)、「つまり、熱インパルス印加している間にも缶温度は変化します。 ですから、熱インパルスを印加する直前の温度±缶温度変化量(△V/△t)を求め熱インパルス印加時間分の変化を補正します
熱印加の変化量=△V1-((△V/△t)*tinpuls±△V2)
但し、△V1は、最終値 △V2は熱印加時直前の値
△V/△tは、△V2測定時の変化量
±は、缶温度が高い低いによる補正となる。」(回答書第3頁第25行目から第4頁第1行目。)、「そして、求めたい変化率は (ほぼ、安定した評価値となる)
変化率(熱伝導率)=熱印加の変化量/熱印加時間
として、評価します。
これらは、現象論として実験解析によるデータより求め適用したものであります。 可燃物と、飲料の変化率の差は1.35?1.5の差として正規化でき評価されるものとなります。」(回答書第4頁第3行目から第8行目。)。

ウ 当審の判断
(ア)イ号物件のアルミ缶の内容物の判断について
上記イ(イ)によれば,イ号物件のアルミ缶の内容物の判断は,次のように行われていると認められる。まず,缶温度測定時間△t(例えば0°C?15°Cであればt1wait)の間の缶温度の変化△Vを求める。次に,熱印加時直前の値△V2を求める。そして,熱印加時間tinpuls(例えば0°C?15°Cであればt1inpuls)だけ熱インパルスが印加され,その後の最終値である△V1を求める。この△V1及び△V2は,「センサの形状や缶との接触状況などの影響と温度環境の高低の違いで起こる熱輻射の有無から」缶温度の変化の影響を受けている。そこで,「△V1-((△V/△t)*tinpuls±△V2)」により熱印加の変化量を求め,熱インパルス印加時間分における缶温度の変化を補正している。この式の意味は,缶温度測定時間△tの間の缶温度の変化△Vが,熱インパルス印加時間においても同様に変化するとして,直線外挿し,熱インパルス印加時間における缶温度の変化が(△V/△t)*tinpulsとなるから,最終値である△V1から,熱印加時直前の値△V2と上記熱インパルス印加時間における缶温度の変化を差し引くことで,熱印加のみによる変化量を求めようとしているものである。そして,このようにして求められた熱印加の変化量に基づいて,「熱印加の変化量/熱印加時間」によって「変化率(熱伝導率)」を求めると,缶温度の変化の影響を受けずに,缶の内容物に依存する値として評価できる,というものである。
ここで,上記ア(ア)の請求人の主張によれば,イ号物件は少なくとも何らかの閾値動作をしているものと認められる。また,上記のとおり,イ号物件は,上記のようにして求めた「変化率(熱伝導率)」を缶の内容物に依存する値として評価しているのであるから,「変化率(熱伝導率)」を何らかの閾値と比較して,缶の内容物を判断していると言える。
してみると,イ号物件の構成dは,「最終値である△V1から,熱印加時直前の値△V2と熱インパルス印加時間における缶温度の変化を差し引くことで,熱印加の変化量を求め,該熱印加の変化量を熱印加時間で除することにより変化率(熱伝導率)を求め,該変化率(熱伝導率)を何らかの閾値と比較して,缶の内容物を判断している」という動作も行う「手段」であると認められる。
そして,イ号物件の構成dの上記動作を,本件特許発明の構成要件Dにおける「前記熱源に電力を供給する前または供給した時の時刻t1における前記温度センサの出力の値と前記時刻t1から所定の経過時間t2を経過した時刻t1+t2における前記温度センサの出力の値との差を、所定の閾値と比較し」と対比すると,イ号物件の「熱印加時直前の値△V2」及び「最終値である△V1」は,それぞれ本件特許発明の「前記熱源に電力を供給する前または供給した時の時刻t1における前記温度センサの出力の値」及び「前記時刻t1から所定の経過時間t2を経過した時刻t1+t2における前記温度センサの出力の値」に相当すると言える。しかし,イ号物件において,何らかの閾値と比較されるのは,最終値である△V1と熱印加時直前の値△V2との差から,さらに熱インパルス印加時間における缶温度の変化を差し引いたものを,熱印加時間で除することによって得られる「変化率(熱伝導率)」であり,最終値である△V1と熱印加時直前の値△V2との差を閾値と比較するものではないから,この点において,温度センサの出力の値の差を所定の閾値と比較するという,本件特許発明の構成要件Dを充足すると言うことはできない。

(イ)請求人の主張について
上記ア(イ)に示した請求人の主張について,被請求人が言う「熱伝達係数」とは,上記ウ(ア)で示したように,「熱印加の変化量/熱印加時間」によって求められるものであり,請求人の言うような,ある経過時間「△T」における温度センサの出力変化「△V」を係数化したものではなく,そうすると請求人の上記主張は前提を欠くこととなり,採用することができない。
上記ア(ウ)に示した請求人の主張は,要するに,本件特許発明でも,缶温度に基づく補正を行うことが,本件特許公報の特に【0106】段落から【0110】段落に,実施例として記載されるように,考慮されていたことからして,イ号物件が缶温度に基づく補正を行うものであるとしても,イ号物件は本件特許発明の構成要件Dにおける「温度センサの出力の値との差を、所定の閾値と比較し」という構成要件を充足する,というものである。この点について,以下検討する。
本件特許の発明の詳細な説明を参照すると,課題を解決するための手段に,発明1及び2として,本件特許の請求項1乃至13に対応する記載が【0009】段落から【0025】段落にあると共に,「本明細書では他の発明をも開示する。」として,発明3及び4としての記載が【0026】段落から【0050】段落にある。また,発明の効果を記載する【0051】段落には,発明1及び2による効果と,発明3あるいは4による効果が,別のものとして記載されている。そして,発明を実施するための最良の形態として,発明1または2に対応する実施の形態1及び変更した例が【0052】段落から【0073】段落に,発明3または4に対応する実施の形態2及び変更した例が【0074】段落から【0113】段落に,それぞれ記載されている。
本件特許の審査手続きにおいて,平成18年8月7日付けの拒絶理由通知にて,出願当初の請求項1乃至13に係る発明と,請求項14乃至34に係る発明は,発明の単一性の要件を満たさないから,特許法第37条に規定する要件を満たしていないとして,拒絶理由が通知された。この当初明細書における請求項14乃至34に対応する発明の詳細な説明の記載は,上記の発明3及び4並びに実施の形態2に関する記載である。そして,本件特許の出願人は平成18年10月13日付けの手続補正書により,請求項14乃至34を削除することにより,当該拒絶の理由を回避し,削除した請求項14乃至34については,同日付でした分割出願の請求項1乃至21として出願することにより特許を受けようとした。ここで,特許法第36条第5項に規定されるとおり,特許請求の範囲の記載は,特許出願人が自らの判断で特許を受けることによって保護を求めようとする発明について記載するのであって,発明の詳細な説明に記載した発明の一部についてのみ特許請求の範囲に記載することを妨げるものではない。この点を踏まえ,上記本件特許の審査手続きからすると,本件特許として特許を受けた発明は,発明の詳細な説明において,発明1及び2として開示されたものに関する発明であり,発明3及び4として開示されたものに関する発明については,本件特許の出願人は特許を受けようとしなかった(分割出願において特許を受けようとした)ものである。そして,発明の詳細な説明の記載における,実施の形態1が発明1及び2に対応し,実施の形態2が発明3及び4に対応することは,本件特許の出願人が平成18年10月13日付けの意見書において,「なお、補足説明を致しますが、本願明細書中に記載の発明1,2に対応する明細書箇所(段落0009?0025まで、および、段落0052?0073の実施の形態1)におけるt2は上記しますようにt1からの経過時間、すなわちΔtを示しています。一方、本願明細書中に記載の発明3,4に対応する明細書箇所(段落0026?0050まで、および、段落0074?0113の実施の形態2)におけるt2は、例えば段落0037や段落0093及び図15に記載がありますように、時刻t1より後の時刻t2を意味しており、t1からの経過時間(Δt)とは相違するものです。」(下線部は当審による。)と記載しているように,出願人自ら認めているところである。
そうすると,上記ア(ウ)に示した請求人の主張は,すべて本件特許の発明の詳細な説明の実施の形態2についての記載を根拠とするものであって,本件特許が特許を受けた発明ではないものについての記載に由来するものであるから,本件特許発明に関する主張としては採用できない。

(ウ)構成要件Dについてのまとめ
以上のとおり,イ号物件の構成dの「手段」が,本件特許発明の構成要件Dを充足すると言うことはできない。

(6)まとめ
以上のことから,イ号物件は,本件特許発明の構成要件の全てを充足すると言うことはできない。

5 むすび
したがって,イ号物件は,本件特許発明の技術的範囲に属さない。
よって,結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2009-04-28 
出願番号 特願2005-516610(P2005-516610)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠藤 孝徳  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 後藤 時男
田邉 英治
登録日 2006-12-15 
登録番号 特許第3892892号(P3892892)
発明の名称 容器内の液体種別を判別する装置およびその制御方法  
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