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審判番号(事件番号) データベース 権利
判定2011600009 審決 特許

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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) A23L
管理番号 1197063
判定請求番号 判定2009-600006  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2009-06-26 
種別 判定 
判定請求日 2009-01-27 
確定日 2009-05-22 
事件の表示 上記当事者間の特許第4111382号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びイ号物件の説明書に示す「餅」は、特許第4111382号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨・手続の経緯
本件判定請求は、平成21年1月27日になされ、平成21年2月25日付け回答書において、判定請求書の補正を行ったものである。その請求の趣旨は、平成21年2月25日付け回答書に添付された判定請求書の記載からみて、同回答書に添付されたイ号図面及びイ号物件の説明書に示す「餅」(以下「イ号物件」という。)は、特許第4111382号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。
当審は、平成21年3月3日付けで、判定請求書副本及び回答書副本を被請求人に送付したところ、被請求人より、平成21年4月3日に答弁書が提出された。

第2 本件発明
本件発明は、願書に添付した明細書及び図面(以下、「特許明細書」という。)の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、これを構成要件に分説すると、次のとおりである。

A.焼き網に載置して焼き上げて食する輪郭形状が方形の小片餅体である切餅の
B.載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に、この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設け、
C.この切り込み部又は溝部は、この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に一周連続させて角環状とした若しくは前記立直側面である側周表面の対向二側面に形成した切り込み部又は溝部として、
D.焼き上げるに際して前記切り込み部又は溝部の上側が下側に対して持ち上がり、最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態に膨化変形することで膨化による外部への噴き出しを抑制するように構成したことを特徴とする
E.餅。
(以下、順に「構成要件A」?「構成要件E」という。)

第3 イ号物件の特定
イ号物件は、平成21年2月25日付け回答書に添付されたイ号物件の説明書に記載されたとおりの次のものと認める。

「(a)焼き網に載置して焼き上げて食する輪郭形状が方形の小片餅体(1)である切餅の
(b)載置底面(3)及び平坦上面(2)に十字の切り込み(7),(7'),(5),(5')を設けるとともに、この小片餅体(1)の上側表面部の立直側面である側周表面(8),(8')に、この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する複数の切り込み部(9),(9')を設け、
(c)この切り込み部(9),(9')は、前記立直側面である側周表面(8),(8')の対向二側面に形成した切り込み部(9),(9')として
(d)焼き上げるに際して前記十字の切り込み(7),(7'),(5),(5')と前記切り込み部(9),(9')とが開き、ほぼ直方体の形を保持した状態に膨化変形することで膨化による外部への噴き出しを抑制するように構成したことを特徴とする
(e)餅。」

(以下、順に、「構成a」?「構成e」という。)

第4 対比・判断
1 構成要件A,Eの充足性について
イ号物件の構成aは本件発明の構成要件Aを充足し、イ号物件の構成eは本件発明の構成要件Eを充足することは明らかである。

2 構成要件Bの充足性について
イ号物件の構成bが本件発明の構成要件Bを充足するか否かについて、以下に検討する。

(1)本件発明の構成要件Bの技術的意義について
本件発明の構成要件Bの「載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に、…切り込み部又は溝部を設け」ることについて、特許明細書をみると、次の記載がある。

a「一方、米菓では餅表面に数条の切り込み(スジ溝)を入れ、膨化による噴き出しを制御しているが、同じ考えの下切餅や丸餅の表面に数条の切り込みや交差させた切り込みを入れると、この切り込みのため膨化部位が特定されると共に、切り込みが長さを有するため噴き出し力も弱くなり焼き網へ落ちて付着する程の突発噴き出しを抑制することはできるけれども、焼き上がった後その切り込み部位が人肌での傷跡のような焼き上がりとなり、実に忌避すべき状態となってしまい、生のつき立て餅をパックした切餅や丸餅への実用化はためらわれる。」(段落【0007】)
b「本発明は、このような現状から餅を焼いた時の膨化による噴き出しはやむを得ないものとされていた固定観念を打破し、切り込みの設定によって焼き途中での膨化による噴き出しを制御できると共に、焼いた後の焼き餅の美感も損なわず実用化でき、しかも切り込みの設定によっては、焼き上がった餅が単にこの切り込みによって美感を損なわないだけでなく、逆に自動的に従来にない非常に食べ易く、また食欲をそそり、また現に美味しく食することができる画期的な焼き上がり形状となり、また今まで難しいとされていた焼き餅を容易に均一に焼くことができ餅の消費量を飛躍的に増大させることも期待できる極めて画期的な餅を提供することを目的としている。」(段落【0008】)
c「しかも本発明は、この切り込み3を単に餅の平坦上面(平坦頂面)に直線状に数本形成したり、X状や+状に交差形成したり、あるいは格子状に多数形成したりするのではなく、周方向に形成、例えば周方向に連続して形成してほぼ環状としたり、あるいは側周表面2Aに周方向に沿って形成するため、この切り込み3の設定によって焼いた時の膨化による噴き出しが抑制されると共に、焼き上がった後の焼き餅の美感も損なわない。しかも焼き上がった餅が単にこの切り込み3によって美感を損なわないだけでなく、逆に自動的に従来にない非常に食べ易く、また食欲をそそり、また美味しく食することができる焼き上がり形状となり、それ故今まで難しいとされていた焼き餅を容易に均一に焼くことができることとなる。」(段落【0015】)
d「即ち、例えば、側周表面2Aに切り込み3を周方向に沿って形成することで、この切り込み部位が焼き上がり時に平坦頂面に形成する場合に比べて見えにくい部位にあるというだけでなく、オーブン天火による火力が弱い位置に切り込み3が位置するため忌避すべき焼き形状とならない場合が多い。」(段落【0016】)
e「また、この側周表面2Aに形成することで、膨化によってこの切り込み3の上側が下側に対して持ち上がり、この切り込み部位はこの持ち上がりによって忌避すべき焼き上がり状態とならないという画期的な作用・効果を生じる。」(段落【0017】)
f「【発明の効果】
本発明は上述のように構成したから、切り込みの設定によって焼き途中での膨化による噴き出しを制御できると共に、焼いた後の焼き餅の美感も損なわず実用化でき、しかも切り込みの設定によっては、焼き上がった餅が単にこの切り込みによって美感を損なわないだけでなく、逆に自動的に従来にない非常に食べ易く、また食欲をそそり、また現に美味しく食することができる画期的な焼き上がり形状となり、また今まで難しいとされていた焼き餅を容易に均一に焼くことができ餅の消費量を飛躍的に増大させることも期待できる極めて画期的な餅となる。」(段落【0032】)
g「しかも本発明は、この切り込みを単なる餅の平坦上面に直線状に数本形成したり、X状や+状に交差形成したり、あるいは格子状に多数形成したりするのではなく、周方向に形成、例えば周方向に連続して形成してほぼ環状としたり、あるいは側周表面に周方向に沿って対向位置に形成すれば一層この切り込みよって焼いた時の膨化による噴き出しが抑制されると共に、焼き上がった後の焼き餅の美感も損なわず、しかも確実に焼き上がった餅は自動的に従来にない非常に食べ易く、また食欲をそそり、また美味しく食することができる焼き上がり形状となり、それ故今まで難しいとされていた焼き餅を容易に均一に焼くことができこととなる画期的な餅となる。」(段落【0033】)
h「また、切り込み部位が焼き上がり時に平坦頂面に形成する場合に比べて見えにくい部位にあるというだけでなく、オーブン天火による火力が弱い位置に切り込みが位置するため忌避すべき焼き形状とならない場合が多く、膨化によってこの切り込みの上側が下側に対して持ち上がり、この切り込み部位はこの持ち上がりによって忌避すべき焼き上がり状態とならないという画期的な作用・効果を生じる。」(段落【0034】)
i「特に本発明においては、方形(直方形)の切餅の場合で、立直側面たる側周表面に切り込みをこの立直側面に沿って形成することで、たとえ側周面の周面全てに連続して角環状に切り込みを形成しなくても、少なくとも対向側面に所定長さ以上連続して切り込みを形成することで、この切り込みに対して上側が膨化によって流れ落ちる程噴き出すことなく持ち上がり、しかも完全に側面に切り込みは位置し、オーブン天火の火力が弱いことなどもあり、忌避すべき形状とはならず、また前述のように最中やサンドウィッチのような上下の焼板状部で膨化した中身がサンドされている状態、あるいは焼きはまぐりができあがったようなやや片持ち状態に開いた貝のような形状となり、自動的に従来にない非常に食べ易く、また食欲をそそり、また美味しく食することができる焼き上がり形状となる。」(段落【0035】)

これらの記載事項によると、従来、切り餅の表面に数条の切り込みや交差させた切り込みを入れることにより、噴き出しを抑制することはできるけれども、焼き上がった後その切り込み部位が人肌での傷跡のような焼き上がりとなり、実に忌避すべき状態となってしまい、生のつき立て餅をパックした切餅や丸餅への実用化はためらわれるという問題(摘記a)があったところ、本件発明は、切り込みの設定によって焼き途中での膨化による噴き出しを制御できると共に、焼いた後の焼き餅の美感も損なわず実用化できることを目的に含むものである(摘記b)。
具体的には、本件発明は、切り込みを周方向、例えば、側周表面に周方向に沿って形成するため、この切り込みの設定によって焼いた時の膨化による噴き出しが抑制されると共に、焼き上がった後の焼き餅の美感も損なわないものである(摘記c及びg)。このように、側周表面に切り込みを周方向に沿って形成することで、この切り込み部位が焼き上がり時に平坦頂面に形成する場合に比べて見えにくい部位にあるというだけでなく、オーブン天火による火力が弱い位置に切り込みが位置するため忌避すべき焼き形状とならない場合が多く(摘記d,h及びi)、側周表面に形成することで、膨化によってこの切り込みの上側が下側に対して持ち上がり、この切り込み部位はこの持ち上がりによって忌避すべき焼き上がり状態とならないという作用効果を生じるとされている(摘記e,h及びi)。
してみると、本件発明は、従来、切り餅の表面、すなわち平坦頂面に入れていた切り込みを側周表面の周方向に沿って形成することにより、忌避すべき焼き上がり状態とならないようにしたものであるといえるから、本件発明の構成要件Bの「載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に、…切り込み部又は溝部を設け」るとは、載置底面又は平坦上面に切り込み部又は溝部を設けず、上側表面部の立直側面である側周表面に、切り込み部又は溝部を設けることを意味すると解される。

(2)出願経過の参酌
出願人(被請求人)は、答弁書「(3)出願経過からの解釈」の項において、次のような主張をしている。
「本件特許の出願経過では、平成17年11月25日付意見書、平成18年3月29日付け手続補正書及び平成19年1月4日付け回答書において、本件特許発明では切餅の上下面である載置底面及び平坦上面に切り込みがあってもなくてもよいことを積極的に主張し、その結果、特許すべき旨の審決がなされている。
このように、本件特許発明では載置底面又は平坦上面に切り込み部を設けても設けなくてもよいことを前提に、特許登録に至っているのである。
…(略)…
さらにいえば、被請求人は、平成17年8月1日付手続補正書(乙4の2)において、一旦、「小片餅体の載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の側周表面のみに、周辺縁あるいは輪郭縁に沿う周方向に長さを有する一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設け」との補正を試みたところ、平成17年9月21日付拒絶理由通知書(乙5)において、「『小片餅体の上側表面部の側周表面のみに、』(補正後の請求項1)は願書に最初に添付した明細書又は図面…に記載されていない。…記載された事項から『のみ』であることが自明な事項であるとも認められない。」とされた。
そこで、請求人(判定注:「被請求人」の誤りと考えられる)は、平成17年11月25日付意見書(乙6の1)において、「切り込みが側周表面にのみ存するとの点については、審査官の要旨変更とのご指摘を踏まえて、元通り『のみ』を削除し、この『のみ』であるか否かは出願当初どおり請求項には特定せず、本発明の必須の構成要件でなく出願当初通り『のみ』かどうかは本発明とは無関係と致しました。」と述べている。
つまり、本件特許の出願経過の当初から、本件特許発明においては、側周表面のみに切り込みを設けるという構成には限定出来ないことを審査官より指摘された上、請求人(判定注:「被請求人」の誤りと考えられる)としても限定しないことを前提に本件特許発明の審査がなされているのである。」

しかしながら、上記「(1)」で述べたように、特許明細書の記載からみて、本件発明の構成要件Bの「載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に、…切り込み部又は溝部を設け」るとは、載置底面又は平坦上面に切り込み部又は溝部を設けず、上側表面部の立直側面である側周表面に、切り込み部又は溝部を設けることを意味するのであるから、平成17年9月21日付け拒絶理由通知書においてなされた、「『小片餅体の上側表面部の側周表面のみに、』(補正後の請求項1)は願書に最初に添付した明細書又は図面…に記載されていない。…記載された事項から『のみ』であることが自明な事項であるとも認められない。」との判断は誤りであることが明らかである。
したがって、平成17年9月21日付け拒絶理由通知書以降の出願経過における、本件発明の構成要件Bの「載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に、…切り込み部又は溝部を設け」に関して被請求人が指摘する事項は、前提において誤りであるので、参酌することはできない。

(3)イ号物件の構成bについて
一方、イ号物件の「載置底面(3)及び平坦上面(2)に十字の切り込み(7),(7'),(5),(5')を設けるとともに、この小片餅体(1)の上側表面部の立直側面である側周表面(8),(8')に、この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する複数の切り込み部(9),(9')を設け」とは、小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面とともに、載置底面(3)及び平坦上面(2)に切り込みを設けていることは明らかである。

(4)まとめ
そうすると、イ号物件の構成bは、本件発明の構成要件Bを充足しない。

3 構成要件Cの充足性について
イ号物件の「切り込み部(9),(9')」は、「立直側面である側周表面(8),(8')の対向二側面に形成した」ものであり、本件発明の「切り込み部」も、「立直側面である側周表面の対向二側面に形成した」ものである。
したがって、イ号物件の構成cは、本件発明の構成要件Cを充足する。

4 構成要件Dの充足性について
平成21年2月12日付け「検証結果報告書」(乙第1号証)によると、イ号物件は、焼き上げるに際して十字の切り込み(7),(7'),(5),(5')はほとんど開かず、実質的には、周方向に長さを有する複数の切り込み部(9),(9')が開き、「焼き上げるに際して…外部への噴き出しを抑制する」ものであると認められる。
したがって、イ号物件の構成dは、本件発明の構成要件Dを充足する。

なお、請求人は、判定請求書において、「なお、イ号物件において、切り餅1の短辺6と平行な2つの側面10,10'に切り込みが設けられていないため、最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態にはなり得ないことは明らかである。」として、イ号物件の構成dは本件発明の構成要件Dと相異する旨主張するが、切り餅1の短辺6と平行な2つの側面10,10'に切り込みが設けられていなければ、最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態にはなり得ないとする技術的根拠が明らかではなく、しかも、被請求人が提出した上記「検証結果報告書」(乙第1号証)によれば、先に述べるように、イ号物件は、焼き上げるに際して十字の切り込み(7),(7'),(5),(5')はほとんど開かず、実質的には、周方向に長さを有する複数の切り込み部(9),(9')が開き、「焼き上げるに際して…外部への噴き出しを抑制する」ものであると認められるのであるから、現時点では請求人の主張は採用できない。

第5 まとめ
以上のとおり、イ号物件は、本件発明の構成要件Bを充足しないから、本件発明の技術的範囲に属しないものである。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2009-05-12 
出願番号 特願2002-318601(P2002-318601)
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (A23L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 村上 騎見高  
特許庁審判長 唐木 以知良
特許庁審判官 坂崎 恵美子
橋本 栄和
登録日 2008-04-18 
登録番号 特許第4111382号(P4111382)
発明の名称 餅  
代理人 西元 勝一  
代理人 加藤 和詳  
代理人 中島 淳  
代理人 坂手 英博  
代理人 清武 史郎  
代理人 牛木 護  
代理人 福田 浩志  
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