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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1197422
審判番号 不服2006-11747  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-08 
確定日 2009-05-15 
事件の表示 特願2002-105758「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月21日出願公開、特開2003-299801〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成14年4月8日の出願であって、平成18年4月25日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年6月8日付けで本件審判請求がされるとともに、同年7月6日付けで明細書についての手続補正がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成18年7月6日付けの手続補正を却下するとともに、新たな拒絶の理由を通知したところ、請求人は平成21年2月2日付けで意見書及び手続補正書を提出した。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年2月2日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「遊技盤に図柄変動表示器、始動口、および、可変入賞装置が設けられ、該始動口に打球が入賞し始動条件が成立することにより図柄変動表示器の図柄が変動を開始し、予め定められた所定図柄にて停止すると大当たりとなりその大当たり作動によって可変入賞装置を継続的に開成状態とするパチンコ遊技機において、図柄変動表示器の図柄が変動中に始動条件が成立すると所定の記憶可能回数を限度に始動を約定する第1の始動約定回数記憶手段を設け、該第1始動約定回数記憶手段に記憶された始動約定回数だけが順次自動的に図柄変動表示器の図柄の変動を開始させるようにするとともに、前記大当たり作動中に始動条件が成立した場合にその始動条件成立回数を記憶する第2の始動約定回数記憶手段を設け、該第2始動約定回数記憶手段に記憶された始動約定回数を表示する表示装置を設け、さらに遊技者が任意の時期に操作し得る操作手段を設け、該操作手段を操作することにより前記第1始動約定回数記憶手段に始動約定回数を記憶する空き領域がある場合に限って前記第2始動約定回数記憶手段に記憶された始動約定回数を第1始動約定回数記憶手段に移動し得るようにしたことを特徴とする遊技機。」

第2 当審の判断
1.引用刊行物記載の発明の認定
当審の拒絶理由に引用した特開平10-234958号公報(以下「引用例1」という。)には、「遊技盤面上に始動入賞口と、各種図柄の表示が可能な可変表示手段と、可変入賞口とを具備し、前記始動入賞口へのパチンコ球1個の入賞毎に発生する1回の抽選権利に基づいて抽選を行い、前記可変表示手段が表示図柄を変化させた後に抽選結果を表示する抽選結果表示動作を行い、抽選結果が当たりの場合には、前記可変入賞口が遊技者に有利な付加価値状態を発生させ、前記抽選結果表示動作中に発生した抽選権利は所定数まで保留可能なパチンコ機において、
保留した抽選権利が前記所定数を満たしている場合に、更に前記始動入賞口へのパチンコ球の入賞が有ったときに、準権利としてその数を表示する準権利数表示部を有し、
前記保留された抽選権利数が特定数以下になったときに準権利がある場合は、前記準権利数表示部に表示された準権利数を、前記所定数を越えない範囲で抽選権利数に変えることを特徴とするパチンコ機。」(【請求項1】)との発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

2.本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1の「始動入賞口」、「可変表示手段」及び「可変入賞口」は、本願発明の「始動口」、「図柄変動表示器」及び「可変入賞装置」にそれぞれ相当し、これらが遊技盤に設けられていることは、本願発明と引用発明1の一致点である。
本願発明は「該始動口に打球が入賞し始動条件が成立することにより図柄変動表示器の図柄が変動を開始」としているが、他方、「図柄変動表示器の図柄が変動中に始動条件が成立すると所定の記憶可能回数を限度に始動を約定する第1の始動約定回数記憶手段」及び「前記大当たり作動中に始動条件が成立した場合にその始動条件成立回数を記憶する第2の始動約定回数記憶手段」を設けているから、「始動条件が成立」しても直ちに「図柄変動表示器の図柄が変動を開始」するとは限らず、それは約定の場合を含んでいる。引用発明1も「前記始動入賞口へのパチンコ球1個の入賞毎に発生する1回の抽選権利に基づいて抽選を行い、前記可変表示手段が表示図柄を変化させた後に抽選結果を表示する抽選結果表示動作を行」うのであるから、約定の意味を含む以上、「該始動口に打球が入賞し始動条件が成立することにより図柄変動表示器の図柄が変動を開始」は本願発明と引用発明1の一致点である。また、引用発明1では、「前記可変表示手段が表示図柄を変化させた後に抽選結果を表示する抽選結果表示動作を行」うところ、「抽選結果が当たり」であれば、抽選結果表示は当たりに対応した図柄(本願発明の「予め定められた所定図柄」に相当)でなければならない。また、可変入賞口が開成する状態が「遊技者に有利な付加価値状態」であることは自明であり、「パチンコ機」(引用発明1)と「パチンコ遊技機」(本願発明)には表現上の相違しかないから、「予め定められた所定図柄にて停止すると大当たりとなりその大当たり作動によって可変入賞装置を継続的に開成状態とするパチンコ遊技機」であることは、本願発明と引用発明1の一致点である。
引用発明1の「抽選権利」は「所定数まで保留可能」であって、保留する以上記憶する必要があることは当然であり、その「所定数」及び記憶する手段が、本願発明の「所定の記憶可能回数」及び「第1の始動約定回数記憶手段」にそれぞれ相当する。引用例1に明記はないものの、抽選権利を保留した状態で、可変表示手段の抽選結果表示が当たりでなければ、「順次自動的に図柄変動表示器の図柄の変動を開始させる」こと、及び「図柄変動表示器の図柄が変動中に始動条件が成立すると所定の記憶可能回数を限度に始動を約定する」ことは技術常識に属し、この点は一致点とすべきである。
引用発明1は「準権利数表示部」を有しており、当然準権利数を記憶し、そのための記憶手段を有するものと認めることができ、その記憶手段は本願発明の「第2の始動約定回数記憶手段」に相当する。
そして、引用発明1では「準権利数を、前記所定数を越えない範囲で抽選権利数に変える」ところ、「所定数を越えない範囲」と「前記第1始動約定回数記憶手段に始動約定回数を記憶する空き領域がある場合」には表現上の相違しかないから、「前記第1始動約定回数記憶手段に始動約定回数を記憶する空き領域がある場合に限って前記第2始動約定回数記憶手段に記憶された始動約定回数を第1始動約定回数記憶手段に移動し得るようにした」点も、本願発明と引用発明1の一致点である。なお、引用発明1の「準権利数表示部」が本願発明の「第2始動約定回数記憶手段に記憶された始動約定回数を表示する表示装置」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明1の一致点及び相違点は次のとおりである。
〈一致点〉
「遊技盤に図柄変動表示器、始動口、および、可変入賞装置が設けられ、該始動口に打球が入賞し始動条件が成立することにより図柄変動表示器の図柄が変動を開始し、予め定められた所定図柄にて停止すると大当たりとなりその大当たり作動によって可変入賞装置を継続的に開成状態とするパチンコ遊技機において、図柄変動表示器の図柄が変動中に始動条件が成立すると所定の記憶可能回数を限度に始動を約定する第1の始動約定回数記憶手段を設け、該第1始動約定回数記憶手段に記憶された始動約定回数が順次自動的に図柄変動表示器の図柄の変動を開始させるようにするとともに、始動条件成立回数を記憶する第2の始動約定回数記憶手段を設け、該第2始動約定回数記憶手段に記憶された始動約定回数を表示する表示装置を設け、前記第1始動約定回数記憶手段に始動約定回数を記憶する空き領域がある場合に限って前記第2始動約定回数記憶手段に記憶された始動約定回数を第1始動約定回数記憶手段に移動し得るようにした遊技機。」
〈相違点1〉第2の始動約定回数記憶手段に始動条件成立回数を記憶するに当たり、本願発明が「前記大当たり作動中に始動条件が成立した場合にその始動条件成立回数を記憶する」としているのに対し、引用発明1にはかかる限定がなく、「保留した抽選権利が前記所定数を満たしている場合」に準権利とする点。
〈相違点2〉第2始動約定回数記憶手段に記憶された始動約定回数を第1始動約定回数記憶手段に移動することに関して、本願発明が「遊技者が任意の時期に操作し得る操作手段を設け、該操作手段を操作することにより」移動し得ると限定し、それと関連して「第1始動約定回数記憶手段に記憶された始動約定回数だけが順次自動的に図柄変動表示器の図柄の変動を開始させる」と限定するのに対し、引用発明1では「前記保留された抽選権利数が特定数以下になったときに準権利がある場合」、すなわち、第1始動約定回数記憶手段に記憶された始動約定回数が特定数以下である場合に始動約定回数の移動が行われ、そのため、第2始動約定回数記憶手段に記憶された始動約定回数も、結果的に順次自動的に図柄変動表示器の図柄の変動を開始することになる点。

3.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
引用発明1では、抽選権利の保留数が所定数に達していてもいなくても、結局のところ、始動入賞口への入賞があれば、抽選権利又は準権利となり、最終的に抽選権利に結びつくから、所定数を定めることの意味がさほどない。換言すれば、準権利分だけ、抽選権利の保留数が実質的に大きくなっている。
当審の拒絶理由に引用した特開平8-196701号公報(以下「引用例2」という。)には、「特定入賞信号記憶手段の記憶上限値を予め定められた条件の達成に基づいて可変制御する特定入賞信号記憶可変制御手段を有する」(【請求項1】)及び「上記予め定められた条件が、上記特別遊技状態の発生である」(【請求項2】)との各記載があり、ここでいう「特別遊技状態」は本願発明の「大当たり作動」と異ならない。すなわち、引用例2には「大当たり作動中に始動条件が成立した場合」に、抽選を行う権利の保留数の上限値を大きくすることが記載されている。
そうであれば、引用発明1においても、準権利の発生条件を「大当たり作動中に始動条件が成立した場合」に限ることは、当業者が容易に想到できることである。
ここで、大当たり作動中かつ保留した抽選権利が所定数を満たしていない場合の始動入賞を、抽選権利として記憶(本願発明では「第1始動約定回数記憶手段に記憶」)するか準権利として記憶(本願発明では「第2始動約定回数記憶手段に記憶」)するかにより、遊技者の利益に格別の相違があるわけではない(本願明細書においても、出願当初では前者を採用した実施例が記載されていた(段落【0015】の「上記実施形態では、第1始動約定回数記憶手段の記憶可能回数が限度に達している状態で新たに始動条件が成立した場合に第2始動約定回数記憶手段に始動条件成立回数を記憶させるようにした」との記載を参照。)し、添付図面も前者採用を前提としている。)から、後者を採用することは設計事項というべきである。
したがって、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(2)相違点2について
引用発明1の準権利が抽選権利に変換されれば、図柄変動表示器の図柄の変動に結びつくことはいうまでもなく、変換を自動的に行うか、遊技者の操作により行うかによって、遊技者の利益や遊技の進行が格別変化するわけではない。
そればかりか、当審の拒絶理由に引用した特開2000-140246号公報(以下「引用例3」という。)に、「大当たり特別乱数値を選択するタイミングをCPU任せではなく、遊技者が自ら行うスイッチング操作によって決定することができるため、遊技者に遊技に参加している意識を持たせることができる。」(【要約】の【解決手段】欄)とあるところ、「大当たり特別乱数値」は図柄変動表示器の図柄変動結果を定めるものであり、図柄変動に対して遊技者が関与することの技術的意義が引用例3に記載されている。
引用例1には、引用発明1として認定した発明以外にも「図2に示したように始動入賞口13に一対の可動羽体13a、13aを設けたものの場合、準権利数を抽選権利の保留数へ変えるために、可動羽体13a、13aを開いて変えるだけの数のパチンコ球を入賞させることで行ってもよい。」(段落【0051】)との記載があり、準権利を抽選権利に変換する手法としては、さまざまの手法が採用可能なことは明らかであり、同段落記載の手法では、「変えるだけの数のパチンコ球を入賞させる」という遊技者の操作が介在している。
引用例3記載の技術は、準権利から抽選権利への変換に関するものではないが、図柄変動に関係したタイミングを遊技者の操作により決定する点では本願発明と共通しており、引用発明1においても、図柄変動に関係したタイミングを遊技者の操作に委ねることには意義が認められるから、図柄変動に関係したタイミングの1つである準権利から抽選権利への変換タイミングを遊技者の操作により決定することに困難性があるとはいえない。
加えて、引用例1には、「可変表示手段20が抽選結果表示動作を行っている間にパチンコ球が更に始動入賞口13へ入賞した場合には、CPU61は所定数まで抽選の権利を保留するが、その保留数は一旦RAM62に記憶されるとともに、保留表示手段40に表示させる。可変表示手段20が抽選結果表示動作を終了したときに抽選の権利が保留されていればそれに基づいて抽選が行われる。」(段落【0047】)との記載があり、実施例では抽選権利を獲得した時点では抽選を行っていないから、準権利についても当然抽選を行っていない。もっとも、パチンコ機においては、始動入賞により抽選権利を獲得した時点で抽選することが周知であるから、引用発明1において、抽選時点を「抽選結果表示動作を終了」よりも以前の時点とすることには何の困難性もない。他方、抽選タイミングを遊技者が選択することの利点が引用例3に記載されているのだから、準権利について遊技者の操作により抽選することに困難性はなく、抽選が終了しておれば、準権利と抽選権利の差はなくなるから、操作時点をもって準権利から抽選権利への変換することには十分な合理性があり、当業者にとって想到容易である。
そして、準権利から抽選権利への変換を遊技者の操作により行うのであれば、「遊技者が任意の時期に操作し得る操作手段を設け、該操作手段を操作することにより」移動し得る構成を採用することは当然であるし、「順次自動的に図柄変動表示器の図柄の変動を開始させる」原因となるのは「第1始動約定回数記憶手段に記憶された始動約定回数だけ」である。
以上のとおりであるから、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(3)本願発明の進歩性の判断
相違点1,2に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1、引用例2,3記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-27 
結審通知日 2009-03-10 
審決日 2009-03-25 
出願番号 特願2002-105758(P2002-105758)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 河本 明彦
川島 陵司
発明の名称 遊技機  
代理人 伊藤 浩二  

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