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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1197780
審判番号 不服2006-8632  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-01 
確定日 2009-05-21 
事件の表示 特願2001-250353「通信遊技システム、送信制御サーバ、端末機の表示画面における遊技画面の表示方法及び外部記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月25日出願公開、特開2003- 53043〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成13年8月21日に出願された特願2001-250353号であって、平成18年3月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成18年5月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成18年5月22日付けで手続補正がなされたものである。
その後、当審において、平成20年7月14日付けの補正の却下の決定により、平成18年5月22日付けの手続補正を却下するとともに、同日付けで拒絶の理由を通知したところ、平成20年9月11日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成20年9月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)

「画像が表示される表示装置を備えた複数の端末機と、遊技を提供する遊技サーバと、当該遊技サーバを制御する送信制御サーバとから構成され、互いに通信回線を介して接続された通信制御システムであって、
前記送信制御サーバは、前記遊技サーバが、前記遊技サーバに記憶された特定遊技プログラムに従って、前記複数の端末機に提供する複数種類の遊技のうち前記複数の端末機から選択された一の遊技を実行する端末機に対して、特定の遊技に移行するかの抽選及び前記一の遊技を実行する端末機のうちから特定の遊技に移行させる二以上の端末機を決定する抽選を行ったことに応じて、前記遊技サーバから前記二以上の端末機へ、特定の遊技に移行させるコマンド情報を送信することを許可する決定を行い、
前記送信制御サーバは、前記決定した二以上の端末機を特定の遊技に移行させるために、前記特定の遊技に移行したことを前記二以上の端末機に表示させるための特定遊技情報である前記コマンド情報を、前記複数種類の遊技の中で一の遊技を実行している端末機のうち、抽選により決定した前記二以上の端末機に対して一括して送信させることを許可するデータを、前記遊技サーバに対して送信し、
前記遊技サーバは、前記コマンド情報を、前記複数種類の遊技の中で一の遊技を実行している端末機のうち、抽選により決定した前記二以上の端末機に対して一括して送信し、
前記二以上の端末機は、前記コマンド情報を受信して、前記コマンド情報に基づく特定遊技画面を表示する、通信制御システム。」

3 引用例及びその記載事項
当審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平9-155062号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定のプログラムに基づいて電子的にゲームを行う複数のゲーム端末装置と、これらの各ゲーム端末装置に通信回線で接続されてゲームの進行を管理するゲーム管理装置とを備え、
前記各ゲーム端末装置は、前記プログラムの実行と装置各部の制御を行う制御手段と、ゲーム内容を画像表示する画像表示手段と、ゲーム遂行上の操作データを入力するデータ入力手段と、前記ゲーム管理装置との通信を制御する通信制御手段とを備え、
前記ゲーム管理装置は、前記各ゲーム端末装置との通信を制御する通信制御手段と、前記通信制御手段を介して各ゲーム端末装置にて行われるゲームの進行を逐次監視するゲーム進行監視手段と、このゲーム進行監視手段の監視に基づいて各ゲーム端末装置にて行われるそれぞれのゲームの動作環境を変動させるための変数を制御する変数制御手段とを備えたことを特徴とするネットワークゲーム装置。
・・・
【請求項3】 前記各ゲーム端末装置にて行われるゲームはパチンコゲームであり、前記ゲームの動作環境を変動させるための変数はパチンコゲームにおけるフィーバーする確率であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のネットワークゲーム装置。」

(2)「【0007】
【発明の実施の形態】本発明の実施の一形態を図面を参照して説明する。図1は本発明に係るネットワークゲーム装置の一例としてのネットワークパチンコゲーム装置の全体構成図であり、図2はゲーム管理装置としてのホストコンピュータ(以下、単にホストと称することがある)の構成図、図3は各ゲーム端末装置の構成図である。図1において、このネットワークパチンコゲーム装置1は、ホストコンピュータ2と利用者の家庭等に設置されるゲーム端末装置3,3?とが、通信制御サーバー4を介して電話線やCATV(ケーブルテレビ)回線等の一般家庭に引き込まれている通信回線5にて接続される。この通信回線5は前記電話線やCATV線以外にも、前記ホストコンピュータ2と各ゲーム端末装置3,3?とを接続可能なものであればよく、例えばPHS(パーソナルハンディホンシステム)等の無線回線による接続や、衛星通信を利用して接続するようにしてもよい。
【0008】図2は前記ホストコンピュータ2の構成を示す図である。図において、このホストコンピュータ2は、装置本体200内に、CPU201と、装置制御用の各種プログラムやデータを記憶する装置メモリ202、予め登録されたゲーム会員のデータを記憶する会員データメモリ203、前記ゲーム端末装置3,3?との間で行われる通信を制御する通信制御部204を備えている。前記ゲーム会員は予め所定の入会金を支払って登録され、この登録により会員データメモリ203に、会員の氏名,会員ナンバー,過去のフィーバー回数やフィーバー確率等の利用履歴データが記憶される。また、前記通信制御部204は、複数のゲーム端末装置3,3?との同時通信を行うための前記通信制御サーバー4を制御する。
・・・
【0010】次に、ゲーム端末装置3の構成を図3を参照して説明する。このゲーム端末装置3は、装置本体300と、CPU301、装置制御用のプログラム及び各種データを記憶するとともにパチンコゲーム用プログラムを装置本体内にロードするための装置メモリ302、後述する表示装置に表示する画像表示の制御を行う画像制御部303、モデム305を介して行う前記ホストコンピュータ2との通信を制御する通信制御部304を備えている。
【0011】また、パチンコ台の画像を表示するための表示装置としてのCRT306と、パチンコゲーム遂行上における所要の操作を行うための前記データ入力手段としてのキーボード307及びマウス308、パチンコのゲームプログラムをロードするための外部記憶装置としてのCD-ROM駆動装置309が装置本体300に接続されている。符号310は、ゲームプログラムを記憶する記憶媒体としてのCD-ROMである。・・・
・・・
【0013】前記フィーバー窓306dは、前記中央カップ306bに打球が入る毎に各数字が変化し、横3段のいずれかの段に、あるいは斜め方向に同一の数字が3個並ぶとフィーバーとなる。この数字表示以外にも例えば花や動物の図案,記号,符号等のいずれを表示するようにしてもよい。フィーバーの際には、前記大当たり306eの細長い蓋が手前に開いて受け皿となる。従って、フィーバーとなると、打球が連続的にカップインすることになり、出玉の数が一挙に増える。大当たり306eは、打球が10発入る毎に蓋が数秒間にわたって閉じ、また開くというサイクルを数分間続ける。この間、フィーバーランプ306i,306iが点滅を繰り返すとともに前記スピーカ部311から所定のフィーバー音が発音されてパチンコ遊技場としての雰囲気を盛り上げるようになっている。フィーバーの際には盤面全体を所定間隔にて、また所定色にて発光させるようにしてもよい。
・・・
【0016】以上のように構成されるネットワークパチンコゲーム装置1の作動を図5及び図6のフローチャートに基づいて説明する。先ず、ゲームを行うための起動操作について説明する。以下の作動においては、ホストコンピュータ2及びゲーム端末装置3のいずれにおいても、装置メモリ202(図2参照)及び302(図3参照)に記憶されたシステムプログラムに基づき、CPU201,301が装置各部の作動制御を行うものである。
【0017】先ず、図示しない電源スイッチのON操作により、CD-ROM310を格納したCD-ROM駆動装置309が駆動され、起動に必要なプログラムが装置本体300の装置メモリ302にロードされる(ステップS1)。以下、CD-ROM310からのゲームプログラムのロードは、必要なプログラムのみが選択的にロードされる。これらのゲームプログラムのロードにより、CRT306にはゲームの通信回線接続画面(図示せず)が表示され、この画面上において所定の手順にてホストコンピュータ2との回線接続操作を行う。この操作により、ホストコンピュータ2とゲーム端末装置3とが通信回線5(図1参照)にて接続される(ステップS2)。
【0018】この接続が終了すると、ゲーム端末装置3側のCRT306は、会員ナンバーの入力画面を表示し、この画面上においてキーボード307から会員ナンバーを入力する(ステップS3)。この入力された会員ナンバーはホストコンピュータ2に送信される。ホストコンピュータ2においては、会員データメモリ203をサーチし、当該会員ナンバーの過去の利用履歴等を調べ、ゲームの開始を許可するか否かを判断する(ステップS4)。ゲーム開始を許可する場合には過去の利用履歴等から割り出された所定のフィーバー確率のデータとともにゲーム開始の許可信号をゲーム端末装置3に送信する。ゲーム開始不許可と判断された場合には許可信号が送信されないことからゲームはできない。
【0019】前記許可信号を受けたゲーム端末装置3においては、CRT306に、図4に示すような(図4はゲーム中の画面である)パチンコ台が表示されたスタート画面を表示する(ステップS5)。次いで、ハンドル強さ選択アイコン306m(図4参照)を操作して所望のハンドルの強さを選択し(ステップS6)、スタートアイコン306nの操作により、前記送信されたフィーバー確率と所定の持ち玉数にてゲームスタートとなる(ステップS7)。ゲームスタート時の持ち玉数は持ち玉数表示部306qに表示される。また、ゲームがスタートすると同時にタイマ205(図2参照)がゲーム時間のカウントを行う。
【0020】前記スタートアイコン306nのクリックによりゲームがスタートすると、打撃部306fからパチンコ玉が所定間隔にて連続的に飛びだして盤面上部から落下する。この落下したパチンコ玉が、いずれかのカップ306a,306a?や中央カップまたは蓋が開いた大当たり306eに入ると、出玉受け306jに所定数のパチンコ玉が表示される。また、前記のように中央カップ306bに入る毎にフィーバー窓306dに表示された数字が変化し、所定のフィーバー確率にてフィーバーとなると、大当たり306eの蓋が開いて打球が入り易くなる。出玉受け306jが満杯になるとプール箱306kが一箱表示され、これにつれて出玉受け306jのパチンコ玉が0となる。増減する現在の持ち玉数は持ち玉数表示部306qに表示される。
【0021】これらゲームの進行状況はリアルタイムにてホストコンピュータ2に送信される。ホストコンピュータ2においては、ゲームの出玉とゲーム時間の監視を行う(ステップS8)。持ち玉数が0になると(ステップS9)、ゲーム端末装置3のCRT306画面にゲームを継続するか否かの選択アイコン(図示せず)を表示する。ここでゲーム継続が選択されると、前記ステップS5以下の手順にて再びゲームが開始される(ステップS10)。ゲーム終了が選択されると後述するステップS14に進む。
【0022】前記ステップS9において、持ち玉数が0でない場合には、従来のフィーバー確率を変動させるか否かが判断される(ステップS11)。このフィーバー確率は、過去の利用履歴データや、それまでのフィーバー数,出玉総数,ゲーム時間等を勘案した所定の基準にて変更される。フィーバー確率の変更が必要と判断された場合にはフィーバー確率が変更される(ステップS12)。フィーバー確率の変更の必要がないと判断されると、終了アイコン306oがクリックされたか否かが判断され(ステップS13)、終了アイコン306oのクリックがない場合には前記ステップS8に戻る。」

(3)段落【0022】及び【図6】から、ステップS12のフィーバー確率(フィーバー率)の変更(変動)は、ステップS11でフィーバー確率(フィーバー率)の変動が必要と判断された(Y)場合に行われることが、看取できる。

上記記載事項(1)乃至(3)によれば、引用例には次の発明が記載されていると認められる。(以下、「引用発明」という。)

「パチンコ台の画像を表示するための表示装置としてのCRT306を備えた複数のゲーム端末装置3,3?と、複数のゲーム端末装置3,3?との同時通信を行うための通信制御サーバー4と、前記通信制御サーバー4を制御するホストコンピュータ2とから構成され、ホストコンピュータ2とゲーム端末装置3,3?とが、通信制御サーバー4を介して通信回線5にて接続されるネットワークパチンコゲーム装置であって、
ゲーム端末装置3では、パチンコ玉が、中央カップ306bに入る毎に、ホストコンピュータ2から送信された所定のフィーバー確率にて、大当たり306eの蓋が開いて打球が入り易くなるフィーバーとなるパチンコゲームを遂行し、
ホストコンピュータ2は、リアルタイムに送信されたゲームの進行状況で、ゲームの出玉を監視し、持ち玉数が0でない場合には、従来のフィーバー確率を変動させるか否かが判断され、変動させると判断された場合に、フィーバー確率を所定の基準にて変動させる、
ネットワークパチンコゲーム装置。」

4 対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

・対応関係1
引用発明の「パチンコ台の画像を表示するための表示装置としてのCRT306を備えた複数のゲーム端末装置3,3?」は、本願発明の「画像が表示される表示装置を備えた複数の端末機」に相当する。
引用発明の「複数のゲーム端末装置3,3?との同時通信を行うための通信制御サーバー4」と、本願発明の「遊技を提供する遊技サーバ」とは、第1の「サーバ」である点で一致する。
引用発明の「前記通信制御サーバー4を制御するホストコンピュータ2」と、本願発明の「当該遊技サーバを制御する送信制御サーバ」とは、「第1のサーバを制御する」第2の「サーバ」である点で一致する。
引用発明の、ホストコンピュータ2とゲーム端末装置3,3?とが、通信制御サーバー4を介して「通信回線5にて接続され」たことは、本願発明の、複数の端末機と遊技サーバと送信制御サーバとから構成され、「互いに通信回線を介して接続された」ことに相当する。
引用発明の「ネットワークパチンコゲーム装置」は、本願発明の「通信制御システム」に相当する。

・対応関係2
引用発明の「パチンコゲームを遂行」する「ゲーム端末装置3」は、本願発明の「遊技を実行する端末機」に相当する。

引用発明では、大当たりとなるフィーバー確率を変動させることにより、変動前のフィーバー確率でのパチンコゲーム(遊技)から、変動後の「特定」されたフィーバー確率でのパチンコゲーム(「遊技」)に「移行する」といえる。また、パチンコゲームにおいて、大当たりとなる(フィーバー)確率を変動させた状態を「特定遊技」状態と呼称することは、周知である(例えば、特開2001-170263号公報の段落【0032】や特開2001-218916号公報の段落【0002】-【0005】を参照。)ことからも、引用発明のフィーバー確率を変動させることは、本願発明の「特定の遊技に移行」することに相当する、といえる。

引用発明では、フィーバー確率がホストコンピュータ2からゲーム端末装置3に送信されるので、引用発明では、変動されたフィーバー確率もホストコンピュータ2からゲーム端末装置3に送信されることは、明らかである。
引用発明では、変動されたフィーバー確率は、特定の遊技に移行した後に用いられる確率であるので、引用発明の送信される「フィーバー確率」と、本願発明の送信される「特定の遊技に移行させるコマンド情報」とは、「特定の遊技の移行に関する情報」である点で一致する。
引用発明では、ホストコンピュータ2が制御する通信制御サーバー4を介して、ホストコンピュータ2からゲーム端末装置3にフィーバー確率が送信されるので、ホストコンピュータ2からのフィーバー確率を、介する通信制御サーバー4からゲーム端末装置3に送信するために、通信制御サーバー4を制御するホストコンピュータ2では、通信制御サーバー4からフィーバー確率をゲーム端末装置3に、送信する決定が行われていることは、明らかである。

してみれば、引用発明の、従来のフィーバー確率を変動させるか否かが判断されて、フィーバー確率を変動させるための構成と、
本願発明の、「前記送信制御サーバは、前記遊技サーバが、前記遊技サーバに記憶された特定遊技プログラムに従って、前記複数の端末機に提供する複数種類の遊技のうち前記複数の端末機から選択された一の遊技を実行する端末機に対して、特定の遊技に移行するかの抽選及び前記一の遊技を実行する端末機のうちから特定の遊技に移行させる二以上の端末機を決定する抽選を行ったことに応じて、前記遊技サーバから前記二以上の端末機へ、特定の遊技に移行させるコマンド情報を送信することを許可する決定を行い、
前記送信制御サーバは、前記決定した二以上の端末機を特定の遊技に移行させるために、前記特定の遊技に移行したことを前記二以上の端末機に表示させるための特定遊技情報である前記コマンド情報を、前記複数種類の遊技の中で一の遊技を実行している端末機のうち、抽選により決定した前記二以上の端末機に対して一括して送信させることを許可するデータを、前記遊技サーバに対して送信し、
前記遊技サーバは、前記コマンド情報を、前記複数種類の遊技の中で一の遊技を実行している端末機のうち、抽選により決定した前記二以上の端末機に対して一括して送信」することとは、
「前記第2のサーバは、前記第1のサーバが、遊技を実行する端末機に対して、特定の遊技に移行するかに応じて、前記第1のサーバから端末機へ、特定の遊技の移行に関する情報を送信する決定を行い、
前記第1のサーバは、前記特定の遊技の移行に関する情報を、端末機に対して送信」する点で一致する。

・対応関係3
引用発明の、「ゲーム端末装置3」は、「ホストコンピュータ2から送信された所定のフィーバー確率」でパチンコゲームを行うことと、本願発明の、「前記二以上の端末機は、前記コマンド情報を受信して、前記コマンド情報に基づく特定遊技画面を表示する」こととは、「前記端末機は、前記特定の遊技の移行に関する情報を受信する」ことで一致する。

したがって、本願発明と引用発明とは、

「画像が表示される表示装置を備えた複数の端末機と、第1のサーバと、第1のサーバを制御する第2のサーバとから構成され、互いに通信回線を介して接続された通信制御システムであって、
前記第2のサーバは、前記第1のサーバが、遊技を実行する端末機に対して、特定の遊技に移行するかに応じて、前記第1のサーバから端末機へ、特定の遊技の移行に関する情報を送信する決定を行い、
前記第1のサーバは、前記特定の遊技の移行に関する情報を、端末機に対して送信し、
前記端末機は、前記特定の遊技の移行に関する情報を受信する、通信制御システム。」

である点で一致し、以下の各点で相違している。

・相違点1
「第1のサーバ」と「第2のサーバ」が、本願発明では「遊技を提供する遊技サーバ」と「送信制御サーバ」であるのに対し、引用発明では「通信制御サーバー4」と「ホストコンピュータ2」である点。

・相違点2
特定の遊技に移行するかの判断を、本願発明では、「前記遊技サーバが、前記遊技サーバに記憶された特定遊技プログラムに従って、前記複数の端末機に提供する複数種類の遊技のうち前記複数の端末機から選択された一の遊技を実行する端末機に対して」「特定の遊技に移行するかの抽選」及び「前記一の遊技を実行する端末機のうちから特定の遊技に移行させる二以上の端末機を決定する抽選」を行うのに対し、引用発明では、そのような事項は特定されていない点。

・相違点3
特定の遊技に移行するかに応じて、
本願発明では、「前記送信制御サーバは」「前記遊技サーバから前記二以上の端末機へ、特定の遊技に移行させるコマンド情報を送信することを許可する決定を行い、
前記送信制御サーバは、前記決定した二以上の端末機を特定の遊技に移行させるために、前記特定の遊技に移行したことを前記二以上の端末機に表示させるための特定遊技情報である前記コマンド情報を、前記複数種類の遊技の中で一の遊技を実行している端末機のうち、抽選により決定した前記二以上の端末機に対して一括して送信させることを許可するデータを、前記遊技サーバに対して送信し」
「前記遊技サーバは、前記コマンド情報を、前記複数種類の遊技の中で一の遊技を実行している端末機のうち、抽選により決定した前記二以上の端末機に対して一括して送信し」
「前記二以上の端末機は、前記コマンド情報を受信して、前記コマンド情報に基づく特定遊技画面を表示する」のに対し、
引用発明では、そのような事項は特定されていない点。

5 当審の判断
以下、相違点1乃至相違点3について、まず、相違点2,相違点3を検討し、その後、相違点1を検討する。

(1)相違点2について
本願出願前において、サーバが、端末機に複数種類の遊技を提供するものであり、端末機が、複数種類の遊技から選択された一の遊技を実行するものは、いわゆるゲーム用のポータルサイト等を実現する、サーバとパソコン等の端末に見られるように、周知技術であるので、引用発明に前記周知技術を適用して、提供されるパチンコゲームを含めた複数種類の遊技から、選択されたパチンコゲームを実行するゲーム端末装置とすることは、容易に推考し得るものである。
その際に、引用発明において、パチンコゲーム(一の遊技)が選択されて実行しているゲーム端末装置(端末機)に対してのみ、フィーバー確率を変動させるか否かを判断するようにすることは、他の種類の遊技はパチンコ以外の種類の遊技であってフィーバーとは無関係であることに鑑みれば、適宜選択し得た設計事項である。また、複数種類の遊技の提供及びフィーバー確率を変動させるか否かの判断を、引用発明のホストコンピュータ2で行うか、通信制御サーバー4で行うかは、2つのコンピュータ(サーバー)間で機能を具体的にどのように割り振るかに関して、当業者が適宜選択し得た設計事項であり、サーバが、サーバに記憶された特定のプログラムに従って動作することは、自明である。

本願出願前において、パチンコゲームにおける確率変動させるための判断を含め、あらゆるゲーム中の判断に、抽選を行うことは、周知技術である。(一例として、前記特開2001-170263号公報の段落【0032】における「確変判定用乱数値」に関する記載を参照。)
してみれば、引用発明に前記周知技術を適用するにより、フィーバー確率を変動させるか否かの判断を抽選により行うことは、容易に推考し得たことである。
その際には、引用発明の複数のゲーム端末装置3,3?のそれぞれについて、抽選によりフィーバー確率を変動させるか否かを判断することにより、複数のゲーム端末装置3,3?のうち、変更させるゲーム端末装置を(0台を含めて)決定することとなるが、そのような決定を、フィーバー確率を変動させるか否か(特定の遊技に移行するか)の抽選、及び変動させるゲーム端末装置を決定する(特定の遊技に移行させる、端末機を決定する)抽選により得るようにすることは、前記決定のための具体的な演算手順に関して、当業者が適宜選択、設計し得た設計事項である。また、変動させるゲーム端末装置(端末機)を二以上とすることも設計事項である。

なお、審判請求人は、平成20年9月11日付け意見書において、「本願補正発明(審判請求時の請求項1に記載された発明)では、フィーバー確率を変動させるか否かを判断するために抽選を行っている、との認定がなされていますが、本願の詳細な説明中には、抽選によりフィーバー確率を変動させるか否かを判断する旨の記載は無く、抽選については、例えば、段落[0142]に『この内部抽選処理を実行することにより、遊技結果を「外れ」とするか「大当たり」とするかが、定められるのである。』との記載があるにとどまります。そうすると、この相違点の抽出は妥当ではなく、この相違点の認定は誤りであることは明らかです。」と主張しているが、
(前記本願補正発明と同じ記載である)本願発明における「特定の遊技」が、フィーバー確率を変動させた後の遊技を含むことは、上記4の「・対応関係2」で述べたとおり、明らかであるので、本願発明の「特定の遊技に移行するかの抽選」は、フィーバー確率を変動させるか否かを判断するために抽選を行っていることでもあるので、「本願補正発明(審判請求時の請求項1に記載された発明)では、フィーバー確率を変動させるか否かを判断するために抽選を行っている、との認定」は適切である。
加えて、平成20年7月14日付けの補正の却下の決定において「相違点ア」では、「してみれば、・・・フィーバー確率を変動させる(特定の遊技に移行する)か否かを判断(決定)するために、抽選を行うことは」と記載されており、上記の認定を含めて、「相違点ア」では、フィーバー確率を変動させることと、特定の遊技に移行することが対応する関係にあることを前提に対比、判断していることは、その記載から明らかである。

(2)相違点3について
引用発明では、フィーバー確率を送信することにより、送信されたフィーバー確率を用いた特定の遊技に移行しているが、フィーバー確率のみならず、(特定の遊技に)移行させるための情報である「コマンド情報」を送信することは、送信される情報の内容と特定の遊技への移行する動作をどのように関連付けて行うかに関して、当業者が適宜選択、設計し得た設計事項である。
ゲーム機において状態等を表示することは、例を挙げるまでもない周知技術であるので、引用発明に前記周知技術を適用することにより、フィーバー確率が変動された特定の遊技に移行したことを表示するようにすることは、当業者が容易に推考し得るものである。その際には、前記「コマンド情報」により、特定の遊技に移行して、その結果、特定の遊技に移行したことが表示されるので、前記「コマンド情報」は、本願発明の「前記特定の遊技に移行したことを」「端末機に表示させるための特定遊技情報である前記コマンド情報」に相当することは、明らかであり、ゲーム端末装置(端末機)では、前記「コマンド情報」を受信して、コマンド情報に基いて、前記特定の遊技に移行したことを表示する、即ち、特定遊技画面を表示することも、明らかである。

上記(1)で述べたように、当業者が容易に想到できた、フィーバー確率を変動させる(特定の遊技へ移行する)ための情報を、抽選により決定した二以上のゲーム端末装置(端末機)に送信する際には、前記「コマンド情報」も二以上のゲーム端末装置(端末機)へ送信することは、明らかであって、具体的に複数の端末機に一括して送信するようにすることは、平成17年12月14日付けの拒絶理由通知書の引用文献3に例示されるIPマルチキャストに見られる周知技術を、適宜採用した設計事項にすぎない。

本願出願前において、通信制御に許可データを用いることは、周知技術である(一例として、特開平2-271744号公報における許可信号であるACK信号を参照。)ので、引用発明に前記周知技術を適用して、前記「コマンド情報」の送信を、「許可する決定」に基づく「許可するデータ」が送信されたことを受けて行うようにすることは、容易に想到し得たことである。
その際に、前記「許可する決定」に基づく「許可するデータ」の送信をホストコンピュータで行い、前記「許可するデータ」を受信して、前記「コマンド情報」を送信することを、通信制御サーバーで行うようにすることは、2つのコンピュータ(サーバー)間で機能を具体的にどのように割り振るかに関して、当業者が適宜選択し得た設計事項である。

(3)相違点1について
引用発明において、上記(1)(2)で述べた当業者が容易に想到できた、ホストコンピュータと通信制御サーバーの機能とした際には、引用発明の「通信制御サーバー4」と「ホストコンピュータ2」を、本願発明のように「遊技を提供する遊技サーバ」と「送信制御サーバ」と呼称することは、機能に基づいて装置をどのような呼称とするかに関して、当業者が適宜選択し得た設計事項である。

(4)まとめ
以上のとおり、引用発明に、周知技術を適用し、適宜選択、設計を行うことにより、相違点1乃至相違点3に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到できたといえる。

そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術から予測できる範囲内のものであって、格別のものということができない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-17 
結審通知日 2009-03-24 
審決日 2009-04-06 
出願番号 特願2001-250353(P2001-250353)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 森林 克郎
武田 悟
発明の名称 通信遊技システム、送信制御サーバ、端末機の表示画面における遊技画面の表示方法及び外部記憶媒体  
代理人 正林 真之  

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