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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1197800 |
審判番号 | 不服2007-3861 |
総通号数 | 115 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-02-08 |
確定日 | 2009-05-21 |
事件の表示 | 特願2001-346279「遊技媒体貸出システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月20日出願公開、特開2003-144737〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第一.手続の経緯 本願は、平成13年11月12日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成18年10月19日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、平成19年2月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月9日に手続補正がなされたものである。 また、当審において、平成20年9月17日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から同年10月27日に回答書が提出されている。 第二.平成19年3月9日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年3月9日付の手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1(以下「本願補正発明」という。)は以下のように補正された。 「デビット決済による入金を受け付けた場合に、該入金の金額に応じて遊技媒体の貸し出し基準となる有価価値を遊技用記録媒体毎に関連付けて管理する遊技媒体貸出システムであって、 デビット決済による入金依頼を受け付けた場合に、デビット決済用記録媒体から取得した記録情報の一部であって、当該デビット決済用記録媒体を特定する識別情報のみを暗号化するとともに、この暗号化した記録情報と当該デビット決済用記録媒体によるデビット決済の利用状況とを互いに対応付けて順次格納し、 該格納したデビット決済の利用状況が、新たなデビット決済要求の受け付けによって予め設定した期間内に使用可能な上限金額を超える場合には当該新たなデビット決済要求を制限し、かつ利用可能な金額を表示させることを特徴とする遊技媒体貸出システム。」 (下線部は補正によって変更又は追加された箇所) 2.補正要件(目的)の検討 請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である、「予め設定した利用制限を超える場合には当該新たなデビット決済要求を制限する」について、「予め設定した期間内に使用可能な上限金額を超える場合には当該新たなデビット決済要求を制限し、かつ利用可能な金額を表示させる」と当該利用制限を超える場合の条件を具体化(下位概念化)するとともに、その場合の動作を具体的に限定したものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に該当する。 3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討 (1)引用刊行物記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、特開2000-237434号公報(以下「刊行物A」という。)には、図面とともに、 【請求項3】 各遊技台には記録読書手段に代えて記録読取手段が設置され、遊技媒体貸出用記録媒体および景品交換用記録媒体には遊技によって変動する残金、返却された遊技媒体の個数などの情報は記録せず、これらの情報は前記記録媒体に関連付けられた管理装置などの情報記録部に記録し、この情報記録部に記録された情報に基づいて遊技媒体の貸し出し、景品交換が行われることを特徴とする請求項2記載の遊技装置。 【0008】【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態をパチンコ装置を例に挙げて説明する。図中10は遊技媒体であるパチンコ玉を借りるときに使用する携帯可能な、例えば磁気カードを記録媒体として発券する発券機、20はパチンコ台、40は清算機、50は管理装置であり、これらは通信線60によって接続されている。 【0009】発券機10は、パチンコ台20で使用するパチンコ玉を遊技客が借りるときに使用する図示しない従来周知の磁気カード式のプリペイドカードを現金、デビットカードなどを用いて遊技客が購入する装置であり、複数の販売ボタン11が発券機制御器12などと共に設けられて、所望の金額のプリペイドカードが販売できるようになっている。 【0010】そして、発券機10はプリペイドカードを販売する度に、カード売上情報を管理装置50に通信線60を介して送信し、さらに管理装置50を介してカード販売会社にもそのカード売上情報が送信通知されるように構成されている。 【0013】このパチンコ台20は、発券機10で発券されたプリペイドカードがカード挿入/排出口21に挿入されると、挿入されたプリペイドカードに記録されているカードの識別符号と残金をカード読書機32が読み取り、その読み取った情報を管理装置50に通信線60を介して送信する。 【0035】また、カード読書機32に代えて読み取り機能のみを備えたカード読取機を各パチンコ台20に設置し、プリペイドカードと景品交換カードには予め識別符号を記録しておき、プリペイドカードを販売したときの金額、プリペイドカードをカード挿入/排出口21に挿入してパチンコ玉を払い戻す度に減額する金額、景品交換や台移動のために返却したパチンコ玉の個数などの遊技によって変動する情報は、管理装置50のメモリー部に記録して管理するようにしても良い。 と記載されており、摘記した上記の記載や図面等によれば、刊行物Aには、 「 デビットカードを用いて遊技客が所望の金額のプリペイドカードを購入する装置である発券機10と、発券機10で発券されたプリペイドカードが挿入されると、該プリペイドカードに記録されているカードの識別符号をカード読取機が読み取り、その読み取った情報を管理装置50に送信するパチンコ台20と、管理装置50とを有し、前記プリペイドカードを販売したときの金額と遊技によって変動する情報は前記プリペイドカードに関連付けられた前記管理装置50のメモリー部に記録して管理する遊技装置であって、 前記発券機10はプリペイドカードを販売する度に、カード売上情報を管理装置50に送信する遊技装置。」 の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認められる。 (2)引用発明と本願補正発明との対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、 引用発明の「遊技装置」は、本願補正発明の「遊技媒体貸出システム」に相当し、以下同様に、 「プリペイドカード」は「遊技用記録媒体」に、 「デビットカード」は「デビット決済用記録媒体」に、各々相当する。 さらに、刊行物Aの記載等からみて、以下のことが言える。 a.引用発明において、発券機10でデビットカードを用いて遊技客が所望の金額のプリペイドカードを購入する際に、発券機10がデビット決済による入金を受け付けるのは明らかであり、引用発明の「プリペイドカードを販売したときの金額」は本願補正発明の「遊技媒体の貸し出し基準となる有価価値」に相当し、その金額がデビット決済による入金の金額に応じていることは当然である。 そうしてみると、引用発明において「前記プリペイドカードを販売したときの金額」を「前記プリペイドカードに関連付けられた前記管理装置50のメモリー部に記録して管理する」ことは、本願補正発明において「該入金の金額に応じて遊技媒体の貸し出し基準となる有価価値を遊技用記録媒体毎に関連付けて管理する」ことに相当するものであるということができる。 b.引用発明の「発券機10」がプリペイドカードを販売するに際して、デビット決済による入金を受け付けていることは明らかであるから、引用発明における「発券機10はプリペイドカードを販売する度に」は本願補正発明における「デビット決済による入金依頼を受け付けた場合に」に相当するものということができる。 c.引用発明の「カード売上情報」は、本願補正発明の「デビット決済用記録媒体によるデビット決済の利用状況」に相当するものといえるから、本願補正発明の「デビット決済用記録媒体によるデビット決済の利用状況とを互いに対応付けて順次格納」することと、引用発明の「カード売上情報を管理装置50に送信する」こととは、“デビット決済用記録媒体によるデビット決済の利用状況を処理”する点で共通している。 以上を総合すると、両者は、 「 デビット決済による入金を受け付けた場合に、該入金の金額に応じて遊技媒体の貸し出し基準となる有価価値を遊技用記録媒体毎に関連付けて管理する遊技媒体貸出システムであって、 デビット決済による入金依頼を受け付けた場合に、当該デビット決済用記録媒体によるデビット決済の利用状況を処理する遊技媒体貸出システム。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1]本願補正発明は「デビット決済用記録媒体から取得した記録情報の一部であって、当該デビット決済用記録媒体を特定する識別情報のみを暗号化するとともに、この暗号化した記録情報と当該デビット決済用記録媒体によるデビット決済の利用状況とを互いに対応付けて順次格納」するのに対し、引用発明はデビットカード(本願補正発明の「デビット決済用記録媒体」に相当)に記録されている情報やカード売上情報(本願補正発明の「デビット決済用記録媒体によるデビット決済の利用状況」に相当)をどのように処理しているか不明である点。 [相違点2]本願補正発明は「格納したデビット決済の利用状況が、新たなデビット決済要求の受け付けによって予め設定した期間内に使用可能な上限金額を超える場合には当該新たなデビット決済要求を制限し、かつ利用可能な金額を表示させる」のに対し、引用発明はそのようなことを行っていない点。 (3)相違点の検討及び判断 [相違点1について] データ通信に際して、セキュリテイ確保のためにデータを暗号化すること、及び、当該データの内一部のみを暗号化することは、特開平9-162858号公報(特に段落【0034】参照)にも記載されるように、データ通信における周知技術(以下「周知技術1」という。)である。 また、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平10-15228号公報(以下「刊行物B」という。)には、「遊技客が球貸機2に挿入されたクレジットカードの所有者本人と確認され、また、不正行為の前歴も無く、しかも、クレジットカードが有効なものである場合には、端末装置22は球貸機2に貸出許可信号を出力し、遊技球の貸し出しを許可する。」(段落【0020】)及び「本実施形態による遊技媒体貸出機構においては、端末装置22にリミッタが設けられており、クレジットカードの使用金額が一定金額例えば10万円を越えた場合には、端末装置22は球貸機2へ貸出禁止信号を出力し、遊技球の貸し出しを制限する。」(段落【0023】)と記載されており、遊技媒体貸出機構の端末装置22で、クレジットカード毎に使用金額を管理しているから、刊行物Bには、クレジットカードを特定する識別情報と使用金額とを対応付けて順次格納する技術(以下「刊行物B記載の技術1」という。)が示されているものと認められる。 さらに、デビットカードとして用いられる銀行のキャッシュカードに、口座番号等のカードを特定する識別情報以外にキャッシュカードの発行年月日やセキュリティコード等が記録されていることは、特開平4-352978号公報(特に、段落【0057】)にも記載されるように技術常識であるから、引用発明のデビットカードにも該デビットカードを特定する識別情報以外の情報が記録されていることは明らかである。 そして、引用発明及び刊行物Bの遊技媒体貸出機構ともに、遊技媒体を管理する装置である点で共通しているから、引用発明に刊行物B記載の技術1を適用するとともに周知技術1を採用し、クレジットカードを特定する識別情報をデビットカードを特定する識別情報に置き換え、「デビットカードから取得した記録情報の一部であって、当該デビットカードを特定する識別情報のみを暗号化するとともに、この暗号化した識別情報と使用金額(本願補正発明の「デビットカード決済用記録媒体によるデビット決済の利用状況」に相当)とを互いに対応付けて順次格納」するようにして、相違点1に係る本願補正発明のような構成とすることは、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)であれば容易に想到できることである。 [相違点2について] 刊行物Bには、さらに「端末装置22のリミッタ機能により、知らないうちに多額の金銭を使ってしまい、経済的な破滅に陥りやすい危険から遊技客を保護することが可能となる。」(段落【0023】)及び「このリミッタ機能は、1台のパチンコ機1についての総使用金額の上限を制限するものであってもよいし、また、その遊技場21内におけるその日のその遊技客のクレジットカード総使用金額の上限を制限するものであってもよい。」(段落【0024】)と記載されており、遊技媒体貸出機構の端末装置22によって、知らないうちに多額の金銭を使ってしまう危険から遊技客を保護するために、クレジット総使用金額の上限をその日、すなわち、予め設定した期間内に限定する技術(以下「刊行物B記載の技術2」という。)が示されているものと認められる。 また、カードを用いた決済において、カード利用可能金額を表示することは、例えば、特開平9-90861号公報(特に、段落【0031】)や特開平11-156036号公報(特に、段落【0009】及び【0010】)に記載されるように周知の技術(以下「周知技術2」という。)であり、カード決済が不可能なときにカード利用可能金額を表示させる程度のことは当然行われる事項である。 そして、デビットカードにて玉貸しのときに使用するプリペイドカードを購入すると、刊行物Bに記載されたと同様の知らないうちに多額の金銭を使ってしまう危険が存在することは明らかであるから、プリペイドカードをデビットカードで購入する引用発明に刊行物B記載の技術2を適用するとともに周知技術2を採用し、「その日のデビットカード総使用金額の上限を制限し、該総使用金額が上限を超える場合に利用可能金額を表示させる」ようにして、相違点2に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者であれば容易に想到できることである。 さらに、本願補正発明の作用効果も、引用発明、刊行物B記載の技術1、2及び周知技術1、2に基づき、当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物B記載の技術1、2及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.むすび 以上のとおりであるので、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第三.本願発明について 1.本願発明 平成19年3月9日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年10月19日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「 デビット決済による入金を受け付けた場合に、該入金の金額に応じて遊技媒体の貸し出し基準となる有価価値を遊技用記録媒体毎に関連付けて管理する遊技媒体貸出システムであって、 デビット決済による入金依頼を受け付けた場合に、デビット決済用記録媒体から取得した記録情報の一部であって、当該デビット決済用記録媒体を特定する識別情報のみを暗号化するとともに、この暗号化した記録情報と当該デビット決済用記録媒体によるデビット決済の利用状況とを互いに対応付けて順次格納し、該格納したデビット決済の利用状況が、新たなデビット決済要求の受け付けによって予め設定した利用制限を超える場合には当該新たなデビット決済要求を制限することを特徴とする遊技媒体貸出システム。」 2.特許法第29条第2項の検討 (1)引用刊行物記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物A及びその記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。 (2)引用発明と本願発明との対比 本願発明は、前記「第二」で検討した本願補正発明の「予め設定した期間内に使用可能な上限金額を超える場合には当該新たなデビット決済要求を制限し、かつ利用可能な金額を表示させる」を「予め設定した利用制限を超える場合には当該新たなデビット決済要求を制限する」として、本願補正発明の「上限金額を超える場合」の条件を上位概念化するとともに、その場合の動作を簡略化するものである。 そうすると、本願発明の構成要件の一部を下位概念化するとともに複雑化したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(3)」に記載したとおり、引用発明、刊行物B記載の技術1、2及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、刊行物B記載の技術1、2及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明、刊行物B記載の技術1、2及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3.むすび 本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-03-18 |
結審通知日 | 2009-03-24 |
審決日 | 2009-04-07 |
出願番号 | 特願2001-346279(P2001-346279) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 澤田 真治 |
特許庁審判長 |
小原 博生 |
特許庁審判官 |
池谷 香次郎 森 雅之 |
発明の名称 | 遊技媒体貸出システム |
代理人 | 中辻 史郎 |