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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1198027 |
審判番号 | 不服2007-14659 |
総通号数 | 115 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-05-22 |
確定日 | 2009-05-28 |
事件の表示 | 特願2002-45699「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年9月2日出願公開、特開2003-245432〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成14年2月22日に出願されたものであって、平成18年8月3日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年10月4日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成19年4月23日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年5月22日付けで本件拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成19年5月22日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲は、 「【請求項1】 普通図柄表示装置にて図柄を変動表示し、当たり図柄を表示した際に普通電動役物を開放すると共に、 特別図柄表示装置にて図柄を変動表示し、大当たり図柄を確定表示した際に大入賞口を開放し、更に大当たり図柄が特定図柄の際に、該大入賞口の開放を終了した後に、所定条件下で前記特別図柄表示装置での図柄変動の時間を短縮する遊技機において、 前記普通電動役物を前記大入賞口の直上に設け、 前記大当たり図柄が前記特定図柄の際のみに、前記大当たり図柄を確定表示した直後で大入賞口の開放を終了する前から、前記普通図柄表示装置の変動時間を既に変動中のものを含めて短縮することを特徴とする遊技機。」 と補正された。 そして、本件補正前の特許請求の範囲は、平成18年10月4日付けの手続補正書に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 普通図柄表示装置にて図柄を変動表示し、当たり図柄を表示した際に普通電動役物を開放すると共に、 特別図柄表示装置にて図柄を変動表示し、大当たり図柄を確定表示した際に大入賞口を開放し、更に大当たり図柄が特定図柄の際に、該大入賞口の開放を終了した後に、所定条件下で次大当たり発生の確率を高める遊技機において、 前記普通電動役物を前記大入賞口の直上に設け、 前記大当たり図柄が前記特定図柄の際には、前記大当たり図柄を確定表示した直後から、前記普通電動役物の開放時間を延長することを特徴とする遊技機。 【請求項2】 普通図柄表示装置にて図柄を変動表示し、当たり図柄を表示した際に普通電動役物を開放すると共に、 特別図柄表示装置にて図柄を変動表示し、大当たり図柄を確定表示した際に大入賞口を開放し、更に大当たり図柄が特定図柄の際に、該大入賞口の開放を終了した後に、所定条件下で前記特別図柄表示装置での図柄変動の時間を短縮する遊技機において、 前記普通電動役物を前記大入賞口の直上に設け、 前記大当たり図柄が前記特定図柄の際には、前記大当たり図柄を確定表示した直後から、前記普通電動役物の開放時間を延長することを特徴とする遊技機。 【請求項3】 普通図柄表示装置にて図柄を変動表示し、当たり図柄を表示した際に普通電動役物を開放すると共に、 特別図柄表示装置にて図柄を変動表示し、大当たり図柄を確定表示した際に大入賞口を開放し、更に大当たり図柄が特定図柄の際に、該大入賞口の開放を終了した後に、所定条件下で次大当たり発生の確率を高める遊技機において、 前記普通電動役物を前記大入賞口の直上に設け、 前記大当たり図柄が前記特定図柄の際には、前記大当たり図柄を確定表示した直後から、前記普通図柄表示装置の変動時間を短縮することを特徴とする遊技機。 【請求項4】 普通図柄表示装置にて図柄を変動表示し、当たり図柄を表示した際に普通電動役物を開放すると共に、 特別図柄表示装置にて図柄を変動表示し、大当たり図柄を確定表示した際に大入賞口を開放し、更に大当たり図柄が特定図柄の際に、該大入賞口の開放を終了した後に、所定条件下で前記特別図柄表示装置での図柄変動の時間を短縮する遊技機において、 前記普通電動役物を前記大入賞口の直上に設け、 前記大当たり図柄が前記特定図柄の際には、前記大当たり図柄を確定表示した直後から、前記普通図柄表示装置の変動時間を短縮することを特徴とする遊技機。 【請求項5】 普通図柄表示装置にて図柄を変動表示し、当たり図柄を表示した際に普通電動役物を開放すると共に、 特別図柄表示装置にて図柄を変動表示し、大当たり図柄を確定表示した際に大入賞口を開放し、更に大当たり図柄が特定図柄の際に、該大入賞口の開放を終了した後に、所定条件下で次大当たり発生の確率を高める遊技機において、 前記普通電動役物を前記大入賞口の直上に設け、 前記大当たり図柄が前記特定図柄の際には、前記大当たり図柄を確定表示した直後から、前記普通電動役物の開放回数を増加させることを特徴とする遊技機。 【請求項6】 普通図柄表示装置にて図柄を変動表示し、当たり図柄を表示した際に普通電動役物を開放すると共に、 特別図柄表示装置にて図柄を変動表示し、大当たり図柄を確定表示した際に大入賞口を開放し、更に大当たり図柄が特定図柄の際に、該大入賞口の開放を終了した後に、所定条件下で前記特別図柄表示装置での図柄変動の時間を短縮する遊技機において、 前記普通電動役物を前記大入賞口の直上に設け、 前記大当たり図柄が前記特定図柄の際には、前記大当たり図柄を確定表示した直後から、前記普通電動役物の開放回数を増加させることを特徴とする遊技機。」 すなわち、本件補正は、補正前の請求項1乃至3、5及び6を削除するとともに、補正前の請求項4に記載した「普通図柄表示装置の変動時間を短縮すること」について、「前記大当たり図柄が前記特定図柄の際」を「前記大当たり図柄が前記特定図柄の際のみに」と、「前記大当たり図柄を確定表示した直後から」を「前記大当たり図柄を確定表示した直後で大入賞口の開放を終了する前から」(下線部はいずれも当審で付加)と限定を付し、更に「既に変動中のものを含めて」との限定事項を追加したものであるので、平成18年法律第55号による改正前の特許法17条の2第4項第1号の請求項の削除及び第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるか検討する。 2.引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-33177号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。 (ア)「パチンコ遊技機の遊技盤1の前面には、遊技領域3が形成されている。」(段落【0013】) (イ)「遊技領域3の中央には、複数種類の識別情報としての特別図柄を可変表示して表示状態が変化可能な可変表示装置4が設けられている。可変表示装置4の下方には、可変入賞球装置10が設けられている。この可変入賞球装置10は、ソレノイド27が励磁状態にされることにより開閉板12が開成して打玉が入賞可能な遊技者にとって有利となる第1の状態と、ソレノイド27が非励磁状態にされることにより開閉板12が閉成して打玉が入賞不可能な遊技者にとって不利な第2の状態とに変化可能に構成されている。遊技領域3内に打込まれた打玉が通過口17に進入すれば、その通過玉が通過玉検出器20により検出され、その検出出力に基づいて普通図柄表示器14が可変開始される。」(段落【0014】) (ウ)「普通図柄表示器14はたとえば7セグメント表示器で構成されており、普通図柄と呼ばれる識別情報が可変表示される。この普通図柄表示器14の表示結果が予め定められた特定の識別情報(たとえば7)となれば、ソレノイド28が励磁されて、左右1対の可動片24が所定期間だけ開成して始動口9が開成状態となり、打玉がより入賞しやすい状態(小当り)となる。」(段落【0015】) (エ)「この可変表示装置4は、たとえば液晶表示装置等で構成されており、可変表示部5が設けられている。この可変表示部5は、図1に示すように、左可変表示部と中可変表示部と右可変表示部とに3分割されており、すべての可変表示部が一斉に可変開始することにより複数種類の特別図柄からなる識別情報が上から下に向かってスクロール表示され、まず左可変表示部が停止制御され、次に右可変表示部が停止制御され、最後に中可変表示部が停止制御される。」(段落【0016】) (オ)「この可変表示装置4が可変停止された状態で、特別図柄が、予め定められた特定の特別図柄の組合せ(たとえば777)となることにより、表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合には、特定遊技状態(大当り状態)が発生して可変入賞球装置10が第1の状態に制御されて遊技者にとって有利な状態となる。」(段落【0017】) (カ)「この遊技機では、所定の条件が成立した場合に、特定遊技状態と異なる遊技者に有利な特別遊技状態として、普通図柄表示器14における普通図柄(第1の図柄)の変動時間を短縮する制御(以下、変動時間短縮制御という)が行なわれる。この変動時間短縮制御は、略して時短制御とも呼ばれる。この変動時間短縮制御においては、たとえば、通常時に30秒間であった普通図柄の変動時間が5秒間に短縮される。・・・なお、この変動時間短縮制御中においては、特別図柄の変動時間も短縮される。」(段落【0053】) (キ)「大当りが発生すると、条件装置の状態が作動状態になる。この大当りの発生時における可変表示装置4の表示結果が予め定められた特別図柄の組合せ(111、333、555、777、または、999)となっていれば、大当り状態の終了後に特別遊技状態の制御が行なわれる。その特別遊技状態においては、大当り状態の終了時以後に、可変表示装置4で所定変動数(700回)の可変表示が行なわれるまで変動時間短縮制御が実行される。」(段落【0058】) (ク)「第1実施形態および第2実施形態では特別遊技状態(変動時間短縮制御)の開始時期を大当り状態の終了直後のタイミングとしたが、特別遊技状態の開始時期は、大当りの発生と同時のタイミングであってもよい。」(段落【0085】) また、引用文献1の【図1】より、「左右1対の可動片24」が「可変入賞球装置10」の直上に設けられていることが分かる。 以上の記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「普通図柄表示器14にて普通図柄と呼ばれる識別情報が可変表示され、この普通図柄表示器14の表示結果が予め定められた特定の識別情報となれば左右1対の可動片24が所定期間だけ開成し、 可変表示装置4にて複数種類の特別図柄からなる識別情報が可変表示され、この可変表示装置4の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に大当りが発生し、前記可変表示装置4の下方に設けられた可変入賞球装置10の開閉板12が開成するよう構成され、 前記左右1対の可動片24を前記可変入賞球装置10の直上に設け、 大当りの発生時における前記可変表示装置4の表示結果が予め定められた特別図柄の組合せとなっていれば、前記普通図柄表示器14における普通図柄の変動時間を短縮する制御が、大当りの発生と同時のタイミングで開始され、この普通図柄の変動時間を短縮する制御中においては、特別図柄の変動時間も短縮されるパチンコ遊技機。」 次に、当審で発見した特開平11-216239号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。 (ケ)「遊技領域3の中央には、識別情報の一例となる特別図柄を可変表示させることが可能な可変表示装置4が設けられている。可変表示装置4の表示結果が予め定められた特別の識別情報の組み合わせとなれば、いわゆる大当りが発生して遊技状態が遊技者にとって有利な遊技状態に制御可能となる。可変表示装置4での可変表示は、可変表示装置4下方に設けられた電動役物14に打玉が始動入賞してその入賞玉が始動センサー34により検出されることを条件に行なわれる。可変表示装置4の可変表示中に始動入賞があった場合には、その始動入賞が記憶され、可変表示装置4が可変停止した後、再度可変開始可能な状態になってからその始動記憶に基づいて可変表示装置4が再度可変開始される。この始動記憶の上限は、たとえば「4」と定められており、始動記憶個数は始動記憶表示器6に表示される。」(段落【0020】) (コ)「可変表示装置4は、たとえば液晶表示可能なCRT表示機53(図3参照)で構成されており、特別図柄や所定のメッセージ、その他の画像を表示可能な可変表示部5が設けられている。この可変表示部5には、左特別図柄が可変表示される左図柄表示領域と、中特別図柄が可変表示される中図柄表示領域と、右特別図柄が可変表示される右図柄表示領域とが構成されており、各図柄表示領域の特別図柄が一斉に可変開始することにより、各図柄表示領域の上から下に向かって複数種類の特別図柄からなる識別情報がスクロール表示される。なお、以降、左特別図柄、中特別図柄、右特別図柄を、それぞれ、左図柄、中図柄、右図柄と呼ぶ。」(段落【0026】) (サ)「可変表示部5で左図柄、中図柄、右図柄の可変表示が一斉に開始した後、パチンコ遊技機1内部の制御によって定められる所定の順序で所定の可変表示時間内に各図柄が順次停止制御される。すべての図柄表示領域の図柄が完全に停止して可変表示装置4の表示結果が導出表示された段階で、その表示結果がいわゆるはずれとなった場合、始動記憶があれば直ちに次の可変表示制御が開始され、始動記憶が消化される。始動記憶が消化されることにより、たとえば始動記憶数がそれまで上限数の「4」であった場合には、さらに始動入賞を記憶可能となる。しかしながら始動記憶数が上限数である場合には、始動入賞が発生してもその始動入賞を記憶することができずオーバーフローしてしまい、せっかくの始動入賞が無効になってしまう。特に電動役物14が前記拡開状態にある場合には、始動入賞がある程度の長時間、集中的に発生する可能性があり、かかる場合には多くの始動入賞が無効となるおそれがある。始動入賞が無効となることは遊技者にとって望ましい遊技状態ではなく、これを極力回避するにはたとえば可変表示開始時の始動記憶数が所定数以上であれば可変表示時間を短縮するようにすることが考えられる。可変表示時間を短縮することで、次々と始動記憶を消化して始動入賞を有効に可変表示に使用することができるためである。しかしながら、可変表示時間の短縮後、なおも継続して始動入賞が頻発するとは限らない。たとえば、電動役物14が前記閉成状態にある場合であってもたまたま瞬間的にごく短時間だけ始動入賞が頻発する状況もあり、かかる場合に可変表示開始時の始動記憶状態のみで可変表示時間を短縮するか否かを決定すると、その後、始動入賞があまり発生しなくなった場合には、可変表示時間を短縮した分だけ可変表示装置4で可変表示が行なわれているトータル時間が短くなり、遊技者本人あるいはその周辺を通行して遊技機の様子を伺う遊技客にあまり可変表示装置4が回っていないような印象を与えてしまうためである。」(段落【0027】) (シ)「このパチンコ遊技機1では、たとえば始動記憶に基づいた可変表示が開始される一時点のみならず、その始動記憶が行なわれた始動入賞時点の始動記憶状況をも考慮して可変表示時間を短縮するか否かを始動記憶ごとに判定できるように構成されている。具体的には、ある始動入賞発生時点での始動記憶数がすでに「2」以上であるという第1の条件が成立しており、かつ、前記「2」以上の始動記憶が消化された後、前記ある始動入賞に基づいて可変表示が開始される時点で始動記憶数が「4」となっている(つまり、前記ある始動入賞が始動記憶された後に3つの始動入賞がすでに記憶されている場合)という第2の条件が成立している場合に前記ある始動入賞に基づく可変表示の可変表示時間を短縮する。(段落【0028】) (ス)「したがって、たとえば、前記第1の条件が成立しているが前記第2の条件が成立していない場合には、可変表示時間を短縮する制御は開始されないままに可変表示制御が実行される。ただし、そのような場合であっても、前記第1の条件が成立していた際に発生し記憶された始動入賞に基づいて行なわれる可変表示制御の実行途中に新たに始動入賞が発生した結果、始動記憶数が「3」以上になるという第3の条件が成立した場合には、可変表示制御の実行途中から可変表示時間を短縮する制御が実行される。」(段落【0029】) 以上の記載事項より、引用文献2には、「可変表示装置4」(特別図柄表示装置)における可変表示制御ではあるものの、所定の条件を満たした場合に、可変表示制御の実行途中で可変表示時間を短縮する、つまり、既に変動中の図柄の変動時間を短縮する技術事項が開示されているといえる。 3.本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定 本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「普通図柄表示器14」は、本願補正発明の「普通図柄表示装置」に相当し、以下同様に、 「表示結果が予め定められた特定の識別情報となれば」は「当たり図柄を表示した際に」に、 「左右1対の可動片24」は「普通電動役物」に、 「開成」は「開放」に、 「可変表示装置4」は「特別図柄表示装置」に、 「表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に」は「大当たり図柄を確定表示した際に」に、 「可変入賞球装置10」は「大入賞口」に、 「パチンコ遊技機」は「遊技機」に、 それぞれ相当する。また、引用文献1全体の記載等からみて、以下のことが言える。 a.普通図柄表示装置の変動時間を短縮する制御(以下、「普図時短制御」という)の条件に関し、引用発明における「大当りの発生時における可変表示装置4の表示結果が予め定められた特別図柄の組合せとなっていれば」は、本願補正発明における「前記大当たり図柄が前記特定図柄の際のみに」に対応する。また、引用発明における普図時短制御の開始時期は「大当りの発生と同時のタイミング」であり、本願補正発明の「大当たり図柄を確定表示した直後」と相違はない。更に、「大当たり図柄を確定した直後」の時期が「大入賞口の開放を終了する前」であることは例示するまでもなく技術常識にすぎないので、引用発明の「大当りの発生と同時のタイミングで」は、本願補正発明の「前記大当たり図柄を確定表示した直後で大入賞口の開放を終了する前から」に対応する。 b.特別図柄表示装置での図柄変動の時間を短縮する制御(以下、「特図時短制御」という。)の条件に関し、引用発明における特図時短制御は、普図時短制御の期間中において行われ、普図時短制御の発生条件は「大当りの発生時における前記可変表示装置4の表示結果が予め定められた特別図柄の組合せ」となることであるから、引用発明は、本願補正発明の「大当たり図柄が特定図柄の際に」「前記特別図柄表示装置での図柄変動の時間を短縮する」に相当する構成を備える。また、引用発明における普図時短制御が所定条件下で実行されることは、上記(カ)、(キ)の記載及び技術常識に照らせば明らかであり、この普図時短制御の期間中に行われる特図時短制御についても、所定条件下で実行されるといえる。よって、「更に大当たり図柄が特定図柄の際に、所定条件下で前記特別図柄表示装置での図柄変動の時間を短縮する」点は、本願補正発明と引用発明の一致点となる。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、 「普通図柄表示装置にて図柄を変動表示し、当たり図柄を表示した際に普通電動役物を開放すると共に、 特別図柄表示装置にて図柄を変動表示し、大当たり図柄を確定表示した際に大入賞口を開放し、更に大当たり図柄が特定図柄の際に、所定条件下で前記特別図柄表示装置での図柄変動の時間を短縮する遊技機において、 前記普通電動役物を前記大入賞口の直上に設け、 前記大当たり図柄が前記特定図柄の際のみに、前記大当たり図柄を確定表示した直後で大入賞口の開放を終了する前から、前記普通図柄表示装置の変動時間を短縮する遊技機。」である点で一致し、以下の各点で相違する。 <相違点1> 特図時短制御を実行するのが、本願補正発明が「大入賞口の開放を終了した後」であるのに対し、引用発明は「普通図柄の変動時間を短縮する制御中」であるものの、その開始時期が明らかでない点。 <相違点2> 普図時短制御を、本願補正発明が「既に変動中のものを含めて」行うとしているのに対し、引用発明はこのような限定がない点。 4.相違点の判断及び本願補正発明の独立特許要件の判断 <相違点1>について 大当りの期間中は、特別図柄表示装置にて、大当り用のデモ表示を行うことが一般的であるため、引用発明において、特図時短制御を開始する時期は、大当り期間の終了つまり大入賞口の開放を終了した後と解するのが自然である。よって、相違点1は実質的な相違点とはいえない。仮に、引用発明が、大当りの期間中に特別図柄表示装置にて特別図柄の変動表示を行うものだとしても、パチンコ遊技機の技術分野において、普図時短制御と特図時短制御を各々独立して実行する点は、例えば特開平11-226206号公報(特に、段落【0036】参照)、特開2001-104558号公報(特に、段落【0230】参照)に示すとおり、従来周知の技術(以下、「周知技術A」という。)であり、同じく、特図時短制御を大入賞口の開放が終了した後に開始させる点も、例を挙げるまでもなく従来周知の技術(以下、「周知技術B」という。)である。よって、引用発明において、当該周知技術A及び周知技術Bを採用し、特図時短制御を普図時短制御とは独立させ、その開始時期を大入賞口の開放が終了した後とすること、つまり、相違点1に係る本願補正発明のように構成することは、当業者にとって想到容易である。 <相違点2>について 引用発明と引用文献2に記載の技術事項は、共にパチンコ遊技機の技術分野に属し、しかも、両者は、可変表示の変動時間を短縮する制御を行う点でも共通するので、引用発明に引用文献2に記載の技術事項を適用し、大当たり発生と同時に普図時短制御を開始させるにあたり、大当たり発生後に変動を開始する可変表示に限らず、大当たり発生時既に変動中の可変表示も含めて変動時間を短縮する制御を行う、つまり、相違点2に係る本願補正発明のように構成することは、当業者にとって想到容易である。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2に記載の技術事項、周知技術A及び周知技術Bから容易に予測し得る範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2に記載の技術事項、周知技術A及び周知技術Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 [補正の却下の決定のむすび] 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明の認定 本件補正が却下されたから、本願の請求項4に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年10月4日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の【請求項4】に記載された以下のとおりのものである(前記「第2[理由]1.」にも記載したが再掲する)。 「普通図柄表示装置にて図柄を変動表示し、当たり図柄を表示した際に普通電動役物を開放すると共に、 特別図柄表示装置にて図柄を変動表示し、大当たり図柄を確定表示した際に大入賞口を開放し、更に大当たり図柄が特定図柄の際に、該大入賞口の開放を終了した後に、所定条件下で前記特別図柄表示装置での図柄変動の時間を短縮する遊技機において、 前記普通電動役物を前記大入賞口の直上に設け、 前記大当たり図柄が前記特定図柄の際には、前記大当たり図柄を確定表示した直後から、前記普通図柄表示装置の変動時間を短縮することを特徴とする遊技機。」 2.引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及びその記載事項は、前記「第2[理由]2.」に記載したとおりである。 3.本願発明の進歩性の判断 本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明における「普通図柄表示装置の変動時間を短縮すること」について、「前記大当たり図柄が前記特定図柄の際のみに」及び「前記大当たり図柄を確定表示した直後で大入賞口の開放を終了する前から」より下線部の限定を省き、更に「既に変動中のものを含めて」との限定事項を省いたものに実質的に相当する。そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに上記限定事項を付加したものに実質的に相当する本願補正発明が、引用発明、引用文献2に記載の技術事項、周知技術A及び周知技術Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることは前記「第2[理由]4.」に述べたとおりであり、更に、引用文献2に記載の技術事項は、既に変動中の図柄の変動時間を短縮することに関するものであるので、本願発明は、引用発明、周知技術A及び周知技術Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そして、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-03-27 |
結審通知日 | 2009-03-31 |
審決日 | 2009-04-13 |
出願番号 | 特願2002-45699(P2002-45699) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 伊藤 陽、高橋 三成 |
特許庁審判長 |
小原 博生 |
特許庁審判官 |
森 雅之 河本 明彦 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 田下 明人 |