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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01T
管理番号 1198047
審判番号 不服2008-5697  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-06 
確定日 2009-05-28 
事件の表示 特願2002-186043「シンチレータブロックとその製造方法ならびにX線検出器およびX線CT装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月29日出願公開、特開2004- 28815〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成14年6月26日の出願であって、平成19年11月9日付けで拒絶理由が通知され、平成20年1月9日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年1月31日付けで拒絶査定がされたため、これを不服として同年3月6日付けで本件審判請求がされるとともに、同年4月2日付けで手続補正書が提出されたものである。
そして、当審においてこれを審理した結果、平成21年1月19日付けの補正の却下の決定により平成20年4月2日付けの手続補正を却下するとともに、平成21年1月19日付けで拒絶理由を通知したところ、平成21年3月23日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで明細書について手続補正がされたものである。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年3月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「X線CT装置用X線検出器であって、チャンネル方向及びスライス方向に配列して構成され、前記X線検出器はX線を受光するためのシンチレータ部材を隔壁板をはさんでスライス方向とチャンネル方向にアレイ状に配置して構成された2次元のシンチレータブロックと前記シンチレータブロックに接合されたフォトダイオードからなり、前記各シンチレータブロックの相互の前記スライス方向に隣接する端面は、コーン角と略平行となる傾斜角に形成され、前記隔壁板は、各シンチレータブロック毎に、前記端面と平行に前記端面の傾斜角と同一の傾斜角で傾斜して形成されたものであることを特徴とするX線CT装置用X線検出器。」


第2 当審の判断
1 引用刊行物の記載事項
(1)当審で通知した拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-242253号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下のアないしエの記載が図示とともにある。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、X線等の放射線を電気信号として検出する複数の検出素子がマトリクス状に配列された2次元アレイ型の放射線検出器およびX線CT装置に関する。」

イ 「【0006】上記マルチスライス型検出器よりもチャンネル数が多く、さらに縦方向(スライス方向)の素子ピッチが横方向(チャンネル方向)のそれとほぼ同一の2次元アレイ型検出器が、次世代の検出器として注目されている。」

ウ 「【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、非常に多くの検出素子のマトリクス状のタイリングを実現する放射線検出器を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の放射線検出器は、配列された複数の素子ブロックを有し、前記素子ブロック各々は単一基板上にm×nのマトリクスで形成された複数の放射線検出素子を有することを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)図3は、第1の実施形態におけるX線CT装置のシステム図である。
【0015】X線管131は、放射線検出器127と共に被検体132の周囲を回転可能に支持されている。X線管131は、チャンネル方向Cとスライス方向A(回転軸に平行な方向(紙面に垂直な方向))との2方向に広がるいわゆるコーンビームX線を発生する。被検体132を透過したX線は、放射線検出器127で検出される。この放射線検出器127により検出された信号は、データ収集回路134を介して補正処理などを行うデータ処理装置135に送られ、所定の信号処理を受け、そして記憶装置136に一時的に記憶される。ホストコントローラ138には、X線管131へ電力を供給する高電圧発生装置139、X線管131等を回転させる回転架台の架台駆動部140、データを再構成する再構成装置137、再構成装置137により再構成された画像を表示する表示装置141、表示装置141を操作する操作部142、操作部142からホストコントローラ138に制御信号を送る入力装置143などが接続されている。
【0016】図4には、放射線検出器127の構造を概略的に示している。放射線検出器127は、チャンネル方向Cに沿って配列された複数、例えば38個の検出器モジュール34から構成される。X線CTの場合には、38個の検出器モジュール34は、平面的ではなく、X線管131の焦点を中心とした円弧上に配列される。1つの検出器モジュール34は、1つの素子モジュール26と、1つのコリメータモジュール33とから構成される。さらに素子モジュール26は、スライス方向Aに沿って配列された複数、例えば4個の素子ブロック15から構成されている。1つの素子ブロック15は、単一の基板上に周辺回路とともにマトリクス状に形成されたm×n個の検出素子を備えている。なお、ここでは1つの検出素子を1つのチャンネルとして扱うが、もちろん、近隣の所定数の検出素子を1つのチャンネルとして扱うものであってもよい。1つのブロックあたりのチャンネル数は、半導体デバイス製造上、比較的歩留まりの良好な例えば24×64のマトリクスサイズで製造される。
【0017】ブロック製造段階において、素子ブロック15は個々に検品され不良品は排除される。そして、複数、例えば4つの素子ブロック15がスライス方向Aに沿って配列され、モジュールベース(図10(a)のエレメント18)の上に固定される。なお、連結された4つの素子ブロック15を素子モジュール26と称する。この素子モジュール26の上にコリメータモジュール33が取り付けられる。これにより検出器モジュール34が完成する。素子ブロック15は、基本的に分解不能に組み立てられるが、検出器の組み立て、試験、修理及び交換は、素子ブロック15ではなく、検出器モジュール34の単位で行われるこが好ましい。
【0018】38個の検出器モジュール34が、湾曲した検出器ベース28(図10(a))上に配列される。これにより放射線検出器127が完成する。これら38個の検出器モジュール34は、検出器ベース28に対して個々に着脱自在である。これは、ある1つの検出器モジュール34が動作不良を起こしたとき、その検出器モジュール34だけを正常な検出器モジュール34に交換することにより、安価且つ迅速に放射線検出器127を故障から回復させることを実現する。
【0019】なお、素子モジュール26を用いることなく、素子ブロック15を方向Aと方向Cとの互いに直交する2つの方向に配列することにより、放射線検出器127を構成しても良いが、モジュール34単位で扱う方が、作業効率及び歩留まり等の面から好ましい。
【0020】図5は、素子ブロック15の分解斜視図、図6は断面図である。基板14の表面にm×nマトリクス状に形成されたフォトダイオード17がマウントされている。フォトダイオード17上に、シンチレータブロック16が取り付けられる。シンチレータブロック16は、フォトダイオード17のマトリクスと同じm×n個のシンチレータピース11から構成される。
【0021】シンチレータピース11の側面とX線入射面には光反射材がコートされている。光反射材は、外乱光の入射を防止するとともに、各シンチレータピース11で発生した光のリークを防止する。光反射材のコートは、白色のプラスチック板をシンチレータピース11の側面とX線入射面に貼り付けることで代用され得る。
【0022】大部分のシンチレータピース11は、直方体、典型的には立方体であるが、スライス方向Aの両端に位置するn個のシンチレータピース11は、図6に示すように、その端面が略中央付近から底面にかけて内側に斜めに切り欠かれており、略5角形の断面形状を有している。この切り欠き部分30のスペースに、フォトダイオード17を基板14に接続するためのボンディングワイヤ13が収められる。この構造により、図9(a)、図9(b)に示すように、素子モジュール28を構成するために4つの素子ブロック15をスライス方向Aに沿ってジョイントする際、素子ブロック15の間でシンチレータピース11どうしを密着させて、ブロック間のギャップを解消することができる。また、ボンディングワイヤ13をスライス方向の端部から引き出したので、図9(c)に示すように、検出器モジュール34をチャンネル方向Cに配列する際、モジュール間のギャップを解消することができる。」

エ 「【0038】例えば、従来例では、スライス方向Aに4チャンネルしか配列できなかったが、図15に示すように、本発明では、スライス方向Aにm(例えば64個)のフォトダイオードを持つ素子ブロック15を4個並べることで、スライス方向のチャンネル数256を達成できる。素子ブロック15の配列数を増やし、又は複数個の素子モジュール26をスライス方向Aに沿って配列することでさらに多くのチャンネル数を実現することができる。
【0039】検出器全体では、m×n(64×24)個のフォトダイオードを備える素子ブロック15をスライス方向Aに4個、チャンネル方向Cに38個配列することで、M×N(256×912)のチャンネルマトリクスを実現できる。mは偶数個、例えば、m=64であっても良いし、奇数個m=65であっても良い。なお、mの数は限定されない。またさらに、チャンネル方向も偶数個、例えば、n=24であっても良いし、奇数個n=25であっても良い。なお、mと同様、nの数は限定されない。また同様に、検出器モジュールの個数も、偶数、奇数などに限定されない。」

(2)また、当審で通知した拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-214036号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下のオないしキの記載が図示とともにある。

オ 「【特許請求の範囲】
【請求項1】入射したX線管からのX線の強度に応じた強さの可視光を発光するシンチレータと受光面に入射した可視光を電気信号に変換する光電変換素子とを組み合わせてなるX線検出素子アレイを複数配列して構成された多素子X線検出器において、前記X線検出素子アレイが同一平面上に直線状に配列され、かつ各X線検出素子が前記X線管の焦点方向に向けられてなる多素子X線検出器。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は骨塩定量測定装置や手荷物検査装置などの平面スキャン方式のX線撮影装置のX線検出器に好適な多素子X線検出器に関するものである。」

カ 「【0014】しかし、従来の円弧型多素子X線検出器に搭載していたX線検出素子アレイ10をそのまま用いて直線状に配列し、直線型多素子X線検出器を構成したのでは、各X線検出素子がX線受光面に対して垂直な隔壁板4によって隣チャンネルと分離されるよう作られているため、検出器100の端付近のチャンネルでは斜入射するX線が隔壁板4によって遮断されて検出出力が低下したり、また入射X線が強い場合は隔壁板4を介してクロストークを起こすという問題が生じる。このため入射X線がほぼ直入射する検出器中央付近のチャンネルと、入射角が大きく斜入射になる検出器端付近のチャンネルとでは、X線検出特性に大きな違いが生じるという問題があった。
【0015】本発明の目的は、平面スキャン方式のX線撮影装置に用いた場合において、小形化,低価格化が図れ、また、各X線検出素子(チャンネル)間のX線検出特性の差、特に、検出器中央付近のチャンネルと検出器端付近のチャンネルとの間のX線検出特性の差を大幅になくすことのできる多素子X線検出器を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記目的は、X線検出素子アレイを同一平面上に直線状に配列し、かつ各X線検出素子をX線管の焦点方向に向けることにより達成される。
【0017】
【作用】X線検出素子アレイを同一平面上に直線状に配列したことにより、平面スキャン方式のX線撮影装置に好適であり、加工精度,組立精度も十分に得られ、小形化,低価格化が図れることになる。また、各X線検出素子(チャンネル)をX線管の焦点方向に向けたことにより、X線の斜入射やクロストークがなくなり、平面スキャン方式のX線撮影装置に用いた場合に、各X線検出素子(チャンネル)間のX線検出特性の差、特に、検出器中央付近のチャンネルと検出器端付近のチャンネルとの間のX線検出特性の差が大幅になくなることになる。」

キ 「【0019】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1は、本発明による多素子X線検出器の一実施例を示す断面図、図2は図1の一部を拡大して示す図である。
【0020】これらの図において、1はX線ビーム、2はシンチレータ、3は光電変換素子(シリコンフォトダイオード)、4は隔壁板、5は接着剤、7は基板、8は光反射板、9は検出器ケース、10はX線検出素子アレイ、11はコリメータ、12はコネクタ、13は押さえ板、14はパッキング、15は被検体、16はX線管である。なお、200は本発明の多素子X線検出器を示す。
【0021】図1に示すように、X線管16からファン状に放射されたX線ビーム1は被検体15を透過した後、X線検出器200に入射される。X線検出器200の内部には、複数チャンネルのX線検出素子からなるX線検出素子アレイ10が同一平面上に直線状に配列されている。
【0022】図2において、各X線検出素子アレイ10では、入射してきたX線をシンチレータ2によってその強度に応じた強さの光に変換し、更にその光を光電変換素子(シリコンフォトダイオード)3に入射させて電流に変換することによって、入射X線強度に対応した電気信号を得ている。
【0023】多素子X線検出器200の1素子(X線検出素子)は、所定の寸法に加工されたシンチレータ2と、そのシンチレータ2と受光面を接するようにして透明な接着剤5により貼り付け、組み合わされた光電変換素子3によって構成される。
【0024】ここで、シンチレータ材は、後に溝加工してチャンネル分離し、X線検出素子アレイ10を配列する際に端チャンネル同士の素子ピッチを合わせ込むことを考慮して、シリコンフォトダイオード3の配列(シリコンフォトダイオードアレイ)よりも約1mm程度大きなものを用いる。
【0025】各チャンネル間はシリコンフォトダイオード3に達する溝で分離される。この溝は、それぞれX線管16の焦点方向に向けて(X線管16の焦点方向に放射状に)加工されている。この放射状の溝加工は、簡単化のため、1つのX線検出素子アレイ10中の溝加工は斜めに全て平行等間隔に行ってもよい。これは、X線管16の焦点からX線検出素子アレイ10までの距離はX線検出素子アレイ10のチャンネル毎のピッチより非常に長いため、隣り合うチャンネルに入射するX線は平行であると見なしてよいとしたことによる。
【0026】また、X線検出素子アレイ10の端チャンネルについては、X線検出素子アレイ10を直線状に配置したとき、隣り合う2つのX線検出素子アレイ10,10の接し合う端チャンネル同士の素子ピッチがほぼ等しくなるように、2つのX線検出素子アレイ10,10にそれぞれ溝加工した斜角度の平均斜角度で端チャンネルの加工を行う。
【0027】このように分離された構造になったシンチレータ2の両端面、すなわち前記溝には隔壁板4が挿入される。この隔壁板4は、各X線検出素子のシンチレータ2での発光が隣チャンネルに漏れ込むこと、シンチレータ2に入射したX線によって発生するシンチレータ2での散乱X線が隣チャンネルに漏れ込むことを防止し、シンチレータ2内での発光をそのチャンネルの出力として有効に利用するためのものである。この隔壁板4としては、X線吸収係数の高い材料であるタングステンあるいはモリブデン板の表面を研磨し、更に表面にアルミニウムを蒸着し光反射率を高めたものを用いる。
【0028】以上により、X線検出素子アレイ10が同一平面上に直線状に配列され、かつ各X線検出素子がX線管16の焦点方向に向けられた多素子X線検出器200が構成されるもので、平面スキャン方式のX線撮影装置に用いた場合、小形化,低価格化が図れ、また、各X線検出素子(チャンネル)間のX線検出特性の差、特に、検出器中央付近のチャンネルと検出器端付近のチャンネルとの間のX線検出特性の差を大幅になくすことができる。
【0029】図3は、本発明の他の実施例の要部拡大断面図である。この実施例では、上述実施例においてシンチレータ2の両端面に設けた隔壁板4の代わりに、不透明な樹脂による光遮蔽層6を設けたものである。ここでは、光遮蔽層6は、溝加工により分離された構造になったシンチレータ2表面にも設けられる。
【0030】この光遮蔽層6は、内部のシンチレータ2の発光が外部に漏れ出さないように設けるものであるが、シンチレータ2表面部分については直接入射X線に当たる部分であるため、X線曝射による材質劣化の少ないものを用いる。
【0031】この光遮蔽層6の材料としてはエポキシなどの樹脂に色素を添加したものが適当である。光遮蔽層6は、その目的から不透明色の材料でありシンチレータ2内部での発光を効率良く利用するため光反射率の高いものが用いられ、また添加色素は白色系のものを樹脂に均一に混入して各X線検出素子の特性のばらつきが抑えられるようにされる。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、X線検出素子アレイを同一平面上に直線状に配列したことにより、平面スキャン方式のX線撮影装置に好適であり、従来の円弧型配列の多素子X線検出器に比べて製作が容易になり、加工精度,組立精度も十分に得られ、小形化,低価格化が図れるという効果がある。また、各X線検出素子(チャンネル)をX線管の焦点方向に向けたことにより、平面スキャン方式のX線撮影装置に用いた場合に、各X線検出素子間のX線検出特性の差、特に、検出器中央付近のチャンネルと検出器端付近のチャンネルとの間のX線検出特性の差を大幅になくすことができるという効果もある。」

2 引用例1,2に記載の発明の認定
(1)引用例1の上記記載事項ウの段落【0016】には「放射線検出器127は、チャンネル方向Cに沿って配列された複数、例えば38個の検出器モジュール34から構成される。X線CTの場合には、38個の検出器モジュール34は、平面的ではなく、X線管131の焦点を中心とした円弧上に配列される。1つの検出器モジュール34は、1つの素子モジュール26と、1つのコリメータモジュール33とから構成される。さらに素子モジュール26は、スライス方向Aに沿って配列された複数、例えば4個の素子ブロック15から構成されている。」と記載されていること、及び、引用例1の図9(c)から、引用例1には、放射線検出器を構成する複数の素子ブロックをチャンネル方向に円弧状に配列する旨記載されていると認めることができる。これに対し、引用例1には、放射線検出器を構成する複数の素子ブロックをスライス方向に円弧状に配列することは記載されていないこと、及び、引用例1の図9(c)から、引用例1には、放射線検出器を構成する複数の素子ブロックをスライス方向に平面状に配列する旨記載されていると認めることができる。
したがって、引用例1の上記記載事項アないしエから、引用例1には、次のような発明が記載されていると認めることができる。

「X線管から発生されるチャンネル方向及びスライス方向の2方向に広がるコーンビームX線を検出するX線CT装置用放射線検出器において、
前記放射線検出器は、複数の素子ブロックが、前記チャンネル方向には円弧状に、前記スライス方向には平面状に配列されたものであり、
前記各素子ブロックは、前記スライス方向にm個、前記チャンネル方向にn個マトリクス状に形成されたフォトダイオード上に、前記フォトダイオードのマトリクスと同じm×n個のシンチレータピースから構成されたシンチレータブロックが取り付けられたものであり、
前記各シンチレータピース間には光反射材が形成された、
X線CT装置用放射線検出器。」(以下、「引用発明1」という。)

(2)引用例2の上記記載事項キの段落【0027】には、「このように分離された構造になったシンチレータ2の両端面、すなわち前記溝には隔壁板4が挿入される。」と記載されていること、及び、引用例2の図2,3から、引用例2の隔壁板の向きは引用例2の溝の向きと同じであることは明らかである。そして、引用例2の上記記載事項キの段落【0025】には、前記溝の形成態様について、「各チャンネル間はシリコンフォトダイオード3に達する溝で分離される。この溝は、それぞれX線管16の焦点方向に向けて(X線管16の焦点方向に放射状に)加工されている。この放射状の溝加工は、簡単化のため、1つのX線検出素子アレイ10中の溝加工は斜めに全て平行等間隔に行ってもよい。」と記載されている。したがって、引用例2の前記隔壁板も、前記溝と同様に、前記X線管の焦点方向に向けられ、かつ、前記各X線素子アレイの中では斜めに平行等間隔となるように形成されていることは明らかである。
また、引用例2の図1、及び、引用例2の上記記載事項キの段落【0025】には、「各チャンネル間はシリコンフォトダイオード3に達する溝で分離される。」と記載されていることから、引用例2の「多素子X線検出器」は、「X線検出素子アレイ」をチャンネル方向に複数配列して構成されたものであることは明らかである。
すると、引用例2の上記記載事項オないしキから、引用例2には、次のような発明が記載されていると認めることができる。

「入射したX線管からのX線の強度に応じた強さの可視光を発光するシンチレータと受光面に入射した可視光を電気信号に変換する光電変換素子とを組み合わせてなるX線検出素子アレイをチャンネル方向に複数配列して構成された多素子X線検出器において、
前記シンチレータには各X線検出素子毎に分離するための溝が形成され、
前記溝に隔壁板が形成され、
前記隔壁板は、前記X線管の焦点方向に向けられ、かつ、前記各X線素子アレイの中では斜めに平行等間隔となるように形成されており、
前記X線検出素子アレイが同一平面上に形成された、
多素子X線検出器。」(以下、「引用発明2」という。)

3 本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
(1)引用発明1の「X線CT装置用放射線検出器」の「素子ブロック」は、本願発明の「X線CT装置用X線検出器」に相当する(なお、引用発明1の「X線CT装置用放射線検出器」は、本願の明細書の「検出器ユニット」に相当する。)。
したがって、引用発明1の「X線CT装置用放射線検出器」の「複数の素子ブロックが、前記チャンネル方向には円弧状に、前記スライス方向には平面状に配列された」ことは、本願発明の「X線CT装置用X線検出器」が「チャンネル方向及びスライス方向に配列して構成され」ることに相当する。

(2)引用発明1の「シンチレータピース」、「光反射材」、「シンチレータブロック」は、それぞれ、本願発明の「X線を受光するためのシンチレータ部材」、「隔壁板」、「シンチレータブロック」に相当する。したがって、引用発明1の「前記各シンチレータピース間には光反射材が形成され」、「前記スライス方向にm個、前記チャンネル方向にn個マトリクス状に形成された」「シンチレータピースから構成されたシンチレータブロック」は、本願発明の「X線を受光するためのシンチレータ部材を隔壁板をはさんでスライス方向とチャンネル方向にアレイ状に配置して構成された2次元のシンチレータブロック」に相当する。
また、引用発明1の「シンチレータブロックが取り付けられた」「フォトダイオード」は、本願発明の「前記シンチレータブロックに接合されたフォトダイオード」に相当する。
さらに、上記第2の3(1)で述べたとおり、引用発明1の「X線CT装置用放射線検出器」の「素子ブロック」は、本願発明の「X線CT装置用X線検出器」に相当する。
すると、引用発明1の「X線CT装置用放射線検出器」の「前記各素子ブロックは、前記スライス方向にm個、前記チャンネル方向にn個マトリクス状に形成されたフォトダイオード上に、前記フォトダイオードのマトリクスと同じm×n個のシンチレータピースから構成されたシンチレータブロックが取り付けられたものであり、」「前記各シンチレータピース間には光反射材が形成された」ことは、本願発明の「前記X線検出器はX線を受光するためのシンチレータ部材を隔壁板をはさんでスライス方向とチャンネル方向にアレイ状に配置して構成された2次元のシンチレータブロックと前記シンチレータブロックに接合されたフォトダイオードからな」ることに相当する。

(3)以上から、本願発明と引用発明1とは、

「X線CT装置用X線検出器であって、チャンネル方向及びスライス方向に配列して構成され、前記X線検出器はX線を受光するためのシンチレータ部材を隔壁板をはさんでスライス方向とチャンネル方向にアレイ状に配置して構成された2次元のシンチレータブロックと前記シンチレータブロックに接合されたフォトダイオードからなることを特徴とするX線CT装置用X線検出器。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点〉
本願発明では、「前記各シンチレータブロックの相互の前記スライス方向に隣接する端面は、コーン角と略平行となる傾斜角に形成され、前記隔壁板は、各シンチレータブロック毎に、前記端面と平行に前記端面の傾斜角と同一の傾斜角で傾斜して形成されたものである」のに対し、引用発明1の「シンチレータブロック」及び「光反射材」にはこのような限定がない点。

4 相違点についての判断
(1)引用発明2の「各X線検出素子アレイ」の「シンチレータ」と本願発明の「2次元のシンチレータブロック」とは、「シンチレータブロック」である点で一致する。
また、引用発明2の「前記隔壁板は、前記X線管の焦点方向に向けられ、かつ、前記各X線素子アレイの中では斜めに平行等間隔となるように形成され」ると、引用発明2の「各X線検出素子アレイ」の「シンチレータ」の相互の隣接する端面は、X線管の焦点方向に向くように(すなわち、X線の広がり角と略平行となる傾斜角に)形成され、引用発明2の「隔壁板」は「各X線検出素子アレイ」の「シンチレータ」毎に、前記端面と平行に前記端面の傾斜角と同一の傾斜角で傾斜して形成されたものとなることは明らかである。
したがって、引用発明2の「前記隔壁板は、前記X線管の焦点方向に向けられ、かつ、前記各X線素子アレイの中では斜めに平行等間隔となるように形成され」ることと、本願発明の「前記各シンチレータブロックの相互の前記スライス方向に隣接する端面は、コーン角と略平行となる傾斜角に形成され、前記隔壁板は、各シンチレータブロック毎に、前記端面と平行に前記端面の傾斜角と同一の傾斜角で傾斜して形成され」ることとは、「前記各シンチレータブロックの相互の隣接する端面は、X線の広がり角と略平行となる傾斜角に形成され、前記隔壁板は、各シンチレータブロック毎に、前記端面と平行に前記端面の傾斜角と同一の傾斜角で傾斜して形成される」点で一致する。

(2)そして、X線管からチャンネル方向及びスライス方向に二次元的に広がるX線を検出するために、X線検出素子が前記チャンネル方向及び前記スライス方向に二次元的に配列されたX線CT装置用X線検出器の分野では、X線が前記チャンネル方向のみならず前記スライス方向にも広がるため前記チャンネル方向と同様に前記スライス方向においても前記X線検出素子間でクロストークの問題が存在すること、及び、前記問題を解決するために、前記チャンネル方向及び前記スライス方向に二次元的に広がるX線を前記X線検出素子の各々に対応させるべく前記チャンネル方向及び前記スライス方向に二次元的に広がる前記X線を前記チャンネル方向及び前記スライス方向に二次元的に分離する部材の向きが前記スライス方向においてX線のコーン角と平行になるように、前記部材を傾けて配置することは、本願出願時において当業者に周知の技術的事項である(例えば、特開平7-148148公報(段落【0001】?【0004】、【0007】?【0008】、図1?4など。)、特開平11-276469号公報(請求項1、段落【0001】、【0003】?【0007】、【0010】?【0015】、【0032】、図1?4など。)、特開平10-5207号公報(段落【0001】?【0003】、【0013】、【0016】?【0017】、【0019】、【0045】?【0051】、図1,6など。)を参照。なお、特開平7-148148公報の「スライス方向」を仕切る「仕切板」、特開平11-276469号公報の「スライス方向遮蔽プレート」、特開平10-5207号公報の「スライス方向コリメータ」が、上記記載における「前記チャンネル方向及び前記スライス方向に二次元的に広がるX線を前記X線検出素子の各々に対応させるべく前記チャンネル方向及び前記スライス方向に二次元的に広がる前記X線を前記チャンネル方向及び前記スライス方向に二次元的に分離する部材」に相当する。)。
かかる周知の技術的事項に照らすと、引用発明1の「X線管から発生されるチャンネル方向及びスライス方向の2方向に広がるコーンビームX線を検出するX線CT装置用放射線検出器」にも、前記スライス方向において「シンチレータピース」間でクロストークの問題が存在することは、当業者にとって自明である。すると、引用発明1の「X線管から発生されるチャンネル方向及びスライス方向の2方向に広がるコーンビームX線を検出するX線CT装置用放射線検出器」のスライス方向と引用発明2の「多素子X線検出器」のチャンネル方向とは、複数のX線検出素子が平面状に配列され、かつ、前記X線検出素子の配列方向にX線が広がるために、前記X線検出素子間でクロストークの問題が生じる点で共通する。
また、かかる周知の技術的事項に照らすと、すると、引用発明1の「X線管から発生されるチャンネル方向及びスライス方向の2方向に広がるコーンビームX線を検出するX線CT装置用放射線検出器」の前記スライス方向におけるクロストークの問題を解決するために、引用発明1の「X線管から発生されるチャンネル方向及びスライス方向の2方向に広がるコーンビームX線」を「シンチレータピース」の各々に対応させるべく前記「X線管から発生されるチャンネル方向及びスライス方向の2方向に広がるコーンビームX線」を前記チャンネル方向及び前記スライス方向に二次元的に分離する部材である「各シンチレータピース間」の「光反射材」の向きが前記スライス方向においてX線のコーン角と平行になるように、前記「光反射材」を傾けて配置する必要があることも、当業者にとって自明である。

(3)以上より、引用発明2の「前記隔壁板は、前記X線管の焦点方向に向けられ、かつ、前記各X線素子アレイの中では斜めに平行等間隔となるように形成され」るという技術的事項を引用発明1の「スライス方向」における「各シンチレータピース間」の「光反射材」に適用して、引用発明1の「スライス方向」における「各シンチレータピース間」の「光反射材」の向きを、「X線管」の焦点方向に向けられ、かつ、各「シンチレータブロック」の中では斜めに平行等間隔となるように形成するようにすること、すなわち、引用発明1の各「シンチレータブロック」の相互の隣接する端面は、「コーンビームX線」のコーン角の略平行となる傾斜角に形成され、引用発明1の「光反射材」は各「シンチレータブロック」毎に、前記端面と平行に前記端面の傾斜角と同一の傾斜角で傾斜して形成されたものとすることは、当業者にとって容易に想到し得る。
したがって、引用発明1に上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

5 本願発明の進歩性の判断
以上検討したとおり、引用発明1に上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。
また、本願発明の効果も、引用例1,2に記載された発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものに過ぎない。
したがって、本願発明は引用例1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は引用例1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-27 
結審通知日 2009-03-31 
審決日 2009-04-16 
出願番号 特願2002-186043(P2002-186043)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中塚 直樹  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 小松 徹三
日夏 貴史
発明の名称 シンチレータブロックとその製造方法ならびにX線検出器およびX線CT装置  
代理人 竹花 喜久男  

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