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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1198481
審判番号 不服2006-25020  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-02 
確定日 2009-06-11 
事件の表示 特願2001-206078「遊技設備のロックシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月21日出願公開、特開2003-19329〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成13年7月6日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成18年8月14日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、平成18年11月2日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第二.本願発明
平成18年11月2日付の手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は以下のように補正された。
「ネットワーク上に制御コンピュータが設けられ、前記ネットワークに接続される遊技設備のロックシステムであって、
前記遊技設備が、
開閉可能な扉と、
前記扉毎に設けられ当該扉を閉状態でロックするロック手段と、
前記ロック手段によるロックの解除を要求するための複数の鍵体と、
前記複数の鍵体のそれぞれに設けられ、第1コードおよび鍵体の所持者を特定するための第2コードを含むコード情報を記憶する記憶手段とを有し、
前記制御コンピュータが、
前記ロック手段のロック解除を許可するコード情報を複数記憶し得る情報管理手段と、
前記鍵体を用いたロック解除要求があると、当該鍵体が有する記憶手段内のコード情報が前記情報管理手段内の少なくとも一のコード情報と関連付けられていることを条件に、前記ロック解除要求の対象となるロック手段に対してロックの解除を指示する制御手段と、
当該ロック解除要求に応じた前記ロック手段がロック解除されたタイミングで、前記記憶手段内の前記コード情報のうち第2コードを変更せず、第1コードおよびこれに対応する前記情報管理手段内の第1コードを定期的に更新するコード更新手段と
を備えることを特徴とする遊技設備のロックシステム。」(以下「本願発明」という。)

第三.補正要件(目的)の検討
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、「コード更新手段」が行う更新時期について、「ロック解除されてから当該鍵体が抜去されるまでの間に」を、「ロック解除されたタイミングで」とする補正であり、当該補正は、拒絶査定時における不明瞭な記載である旨の指摘に対応する補正であるから、明りようでない記載の釈明に相当する。
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号による改正前の特許法第17条の2第4項第4号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

第四.特許法第29条第2項の検討
1.引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-720号公報及び周知技術であることを例示するための特開平10-99512号公報、特開平7-194823号公報、特開平11-239661号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(A)特開平9-720号公報(以下「刊行物A」という。)
(A-1)「【0004】本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、パチンコ遊技台が不正に開けられるのを有効に防止しうるパチンコ遊技台の施錠装置を提供することを目的とする。」
(A-2)「【0005】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、内蔵メモリにIDコードを記憶したトランスポンダ素子と、パチンコ遊技台の開閉部を電気的にロックするロック手段と、前記トランスポンダ素子とアクセスし、そのトランスポンダ素子に記憶されているIDコードを読み込む読込手段と、前記読込手段によって読み込まれたIDコードを照合用のIDコードと照合する照合手段と、前記照合手段による照合の結果として前記読み込まれたIDコードが前記照合用のIDコードと一致するときに、前記ロック手段を解錠する信号を出力する解錠信号出力手段とを有することを特徴とする。」
(A-3)「【0006】請求項2記載の発明は、上記請求項1記載のパチンコ遊技台の施錠装置において、前記トランスポンダ素子は鍵穴に差し込まれるキーに埋め込まれていることを特徴とする。」
(A-4)「【0008】請求項4記載の発明は、上記請求項1記載のパチンコ遊技台の施錠装置において、パチンコ遊技台が複数の開閉部を有する場合には、当該複数の開閉部をそれぞれ電気的にロックする複数のロック手段と、当該複数のロック手段の中から解錠の対象となるロック手段を選択する選択手段とを有することを特徴とする。」
(A-5)「【0025】図2はトランスポンダ素子の使い方を示す図である。トランスポンダ素子6をパチンコ台のキーシステムに取り込む場合、キー7に対する装着の仕方によって二つの使い方がある。すなわち、図2(A)に示すように、スティック型のトランスポンダ素子6aをキー7のグリップ部8に埋め込んで使う場合(キーグリップタイプ)と、図2(B)に示すように、コイン型のトランスポンダ素子6bをキーホルダーのようにして連結部材9によりキー7に吊り下げて使う場合(キーホルダータイプ)とである。どちらの使い方をするかによって、好ましいアンテナの設置場所や操作の仕方などが若干違ってくる。本実施例では、アンテナ5を鍵穴1の周囲に装着しているので(図1参照)、この場合により適合するものとして、ここでは、図2(A)に示すキーグリップタイプのものを例にとって説明する。アンテナ5を鍵穴1と一体に形成した場合、単にキー7を鍵穴1に差し込むだけで、キー7の中のトランスポンダ素子6はアンテナ5との通信が可能な領域内にくることになる。」
(A-6)「【0026】図3は本実施例におけるパチンコ台の電気的キーシステムの構成を示すブロック図である。この電気的キーシステムは、トランスポンダ素子6を埋め込んだキー7(キーグリップタイプ)と、トランスポンダ素子6のIDコードを読み取るための読込手段としてのアンテナ5と、アンテナ5を介してトランスポンダ素子6に磁気エネルギーを供給するとともにデータの送受信を行う送受信回路10と、鍵穴1にキー7が差し込まれどちらの方向に回されたかを検出する選択手段としてのキー差し込み検出スイッチ11と、パチンコ台の盤面(ガラス面)2を電気的にロックする第1ロック手段としての盤面電磁ロック機構12と、パチンコ台の枠面(遊技台全面)3を電気的にロックする第2ロック手段としての枠面電磁ロック機構13と、外部電源14とから構成されている。キー差し込み検出スイッチ11は鍵穴1の内部に装着されている。また、各電磁ロック機構12、13は電磁ソレノイドを有しており、電気的信号により電磁ソレノイドを励磁させることによってロック状態が解除されるように構成されている。外部電源は、たとえば、通常の家庭用AC100V電源である。」
(A-7)「【0028】図4は上記のように構成されたパチンコ台キーシステムの動作を示すフローチャートである。キー7が鍵穴1に差し込まれ左右のどちらか一方に回されると、CPU15は、キー差し込み検出スイッチ11からの信号により、鍵穴1に差し込まれたキー7が左右のどちら側に回されたかを判断する(ステップS1)。」
(A-8)「【0029】ステップS1の判断の結果としてキー7が右に回された場合は、CPU15は、盤面(ガラス面)2が解錠の対象となっているものと認識し(ステップS2)、送信回路17を介してアンテナ5から磁界(たとえば、125kHz)を発生させ(ステップS3)、キー7の中に設置されたトランスポンダ素子6からキーIDコードを読み込む(ステップS4)。すなわち、アンテナ5から磁界(125kHz)が発生すると、その磁界のエネルギーを受けてキー7の中のトランスポンダ素子6が起動し、メモリに記憶されているキーIDコードのデータをコイルを介して外部へ送信する。このキーIDコードのデータはアンテナ5で受信されて電気信号に変換された後、受信回路18においてその受信信号の増幅や整形などの処理を経て、CPU15に送られる。」
(A-9)「【0030】ステップS4でCPU15にキーIDコードが読み取られると、CPU15は、EEPROM16から照合用のIDコードを読み出して、IDコードの解析を行い、トランスポンダ素子6のキーIDコードが照合用のIDコードと一致するかどうかを判断する(ステップS5)。この判断の結果としてIDコードが一致すれば、盤面電磁ロック機構12を解錠する信号をそれを構成する電磁ソレノイドに出力し、盤面電磁ロック機構12を解錠させる(ステップS6)。これにより、盤面2を開けることが可能となる。これに対し、ステップS5の判断の結果としてIDコードが一致しなければ、処理を終了し、盤面2のロック状態はそのまま維持される。」
(A-10)「【0035】なお、上記の各実施例では、IDコードはあらかじめ設定されたままとなっているが、これに限定されるわけではない。たとえば、通信しIDコードの照合を行うたびに、その都度、CPU15で新しいIDコードを乱数により作成し、ローリングIDコードとしてトランスポンダ素子6のメモリ(EEPROM)のデータおよび送受信回路10内のEEPROM16のデータをその新IDコードに書き替え、登録するようにしてもよい。その都度書き替えられるローリングIDコードを使用することにより、パチンコ台に対する不正行為をさらにより一層有効に防止することができる。」
(A-11)上記記載及び図面に基づけば、刊行物Aには以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「 送受信回路10が設けられたパチンコ台のキーシステムであって、
前記パチンコ台が、
複数の開閉部と、
前記開閉部をそれぞれ電気的にロックする複数のロック機構と、
前記パチンコ台の鍵穴1に差し込まれて回転されることにより前記ロック機構を解錠するキー7と、
前記キー7に埋め込まれ、キーIDコードを記憶するトランスポンダ素子6とを有し、
前記送受信回路10が、
照合用のIDコードを記憶するEEPROM16と、
前記鍵穴1に差し込まれた前記キー7が回転されると、前記キー7の中に設置された前記トランスポンダ素子6から前記キーIDコードを読み込み、前記EEPROM16から前記照合用のIDコードを読み出して、読み込んだ前記キーIDコードと読み出した照合用のIDコードの照合を行い、それらが一致すれば前記ロック機構を解錠する信号を前記ロック機構に対して出力するCPU15と、
前記キーIDコードと前記照合用のIDコードの照合を行うたびに、その都度、前記トランスポンダ素子6の前記キーIDコードおよび前記EEPROM16の前記照合用のIDコードを新キーIDコードおよび照合用の新IDコードに書き替え登録する手段とを備える
パチンコ台のキーシステム。」

(B)特開平10-99512号公報(以下「刊行物B」という。)
(B-1)「【要約】【課題】 遊技機前面に取り付けられた扉部材を開放することでなされる不正行為関係者を発見することを容易にすることができる遊技機を提供する。
【解決手段】 携帯可能なキーと、このキーによる扉開閉操作に応じて、遊技機の前面側に開閉可能に取り付けられた扉部材を施錠あるいは解錠する第1ロック機構とを有する遊技機の施錠システムにおいて、キーに、店員毎に付与された個別IDを無線で発信するトランスポンダ46を設け、第1ロック機構は、前記扉部材の開閉操作を行う際にトランスポンダ46が発信した個別IDを受信する受信ユニット23を備えており、扉開閉操作に応じて受信ユニット23が受信した個人IDを記録する外部記憶装置65を設けた。」
(B-2)「【0004】【発明が解決しようとする課題】ところで、最近、コピーキーなど、不当に入手したキーを用いて前面枠や透明部材保持枠を開き、ROM交換や遊技領域に対する細工を行って不当に利益を得ようとする者がいる。このような不正行為は、複数人のグループで行われることが多く、監視カメラの死角を作り出して行われるので、監視カメラでは発見が困難となっていた。さらに、遊技店の店員を一員とするグループもあり、この場合には、発見が極めて困難となっていた。」
(B-3)「【0014】図1は、パチンコ遊技機の設置状態を示した斜視図である。まず、同図を参照して設備の概略について説明する。パチンコホール(遊技店)の島設備1には、複数台のパチンコ遊技機2が並設されている。そして、各パチンコ遊技機2の左側には、球貸機3が配置されると共に、各パチンコ遊技機2の上方の幕板4には、パチンコ遊技機1台に対し1個宛て呼出表示装置5が配設されている。この呼出表示装置5内には、異常があった場合などに点灯あるいは点滅し、異常報知手段の一部を構成する警告ランプ6が配設されている。また、呼出表示装置5の背面側には、呼出表示装置5などを制御するための呼出制御装置7が設けられている。この呼出制御装置7は、本発明における遊技機側施錠手段、識別情報受信手段、操作情報記録手段、識別情報発信要求手段、識別情報判定手段、開動作阻止手段、対象者限定手段、及び異常報知手段の一部あるいは全部として機能するものであり、その構成については後述する。」
(B-4)「【0019】送受ユニット23は、左側に位置するパチンコ遊技機2の前面枠10あるいは透明部材保持枠13をキーにより開放する際、キーの接近により、キーに設けられたトランスポンダ(後述)が発信した個別ID(識別情報)を受信する機構である。そして、この送受ユニット23は、呼出制御装置7と電気的に接続されており、識別情報受信手段、及び識別情報発信要求手段の一部として機能する。第2ロック機構24は、上述した第1ロック機構とは独立して設けられており、呼出制御装置7から制御可能とされたロック機構で開動作阻止手段として機能する。そして、呼出制御装置7からの制御に応じて、左側に位置するパチンコ遊技機2の前面枠10に対し、この前面枠10の開放を阻止する。」
(B-5)「【0045】なお、このステップS3の判定は、管理装置55により行うこともできる。例えば、呼出制御装置7には、管理装置55に対して受信したキーIDを送出することにより問い合わせを行わせ、管理装置55には、問い合わせに対する結果を送出させる。さらに、呼出制御装置7に、管理装置55からの結果に基づく判定を行わせる。このように、トランスポンダ46からのキーID(識別情報)を判定するためのテーブル情報(判定情報)を複数の遊技機を一括管理する管理装置55(遊技機管理手段)に設けることにより、CPU57の負担が減るとともに、各呼出制御装置7が有するROM56(記憶手段)のサイズを小さくできるので、常に、高レベルの電磁ノイズが発生している島設備1の設置環境において、CPU57の暴走に基づく誤判定を低減させることができる。」

(C)特開平7-194823号公報(以下「刊行物C」という。)
(C-1)「【0005】この発明は、上記問題に着目してなされたもので、遊戯機に電気ロック機構を搭載して遠隔操作によって解錠可能となすことにより、操作性を大幅に向上させた遊戯機制御装置を提供することを目的とする。またこの発明が他に目的とするところは、電気ロック機構を非接触で解錠するのに用いるコードの有効性を時間管理することにより、犯罪の発生を未然に防止できる遊戯機制御装置を提供する点にある。さらにこの発明が他に目的とするところは、解錠に関する情報を貯えて収集するこにより、犯罪の発生を判別し得、併せて機械状態の管理も適切に行い得る遊戯機管理システムを提供する点にある。」
(C-2)「【0017】図2は、各遊戯機2に搭載された遊戯機搭載部20の構成を示す。図中31は、ロック制御部であり、光リモコン4から解錠番号に相当するIDコードを受け取る受信部32や光リモコン4へ応答するための送信部33を備えている。制御用IC34は送受信動作を制御すると共に、送信されてきたIDコードとメモリ35に書き込まれているIDコードとを比較し、両者が一致した場合には、駆動回路36を駆動して電気ロック機構21を解錠動作させる。」
(C-3)「【0019】メモリ46は、解錠番号に相当するIDコードをおよび前記電気ロック機構21の解錠に関するデータを記憶する。このIDコードは、所定の時刻になると、時計47から時刻を読み取った制御用IC44の指令によって消去され、メモリ46のIDコード記憶領域は次のデータが入るまでは空白となる。光リモコン4は、外部コネクター48および充電器7を介してマスターサーバー6とデータのやり取りを行い、IDコードの再書き込みや解錠に関するデータの送出を行う。なお解錠に関するデータの詳細については後述する。」
(C-4)「【0021】次に、この遊戯機管理システムの始業時から終業時までの管理手順を図4に従って説明する。ステップ1(図中「ST1」で示す)は始業時の処理を示すもので、光リモコン4が各店員に配布される。各光リモコン4のバッテリー49は夜間に充電器7により充電され、また始業時までにIDコードやマスターサーバー6により設定されたその日の店員コードがメモリ46内に書き込まれる。」

(D)特開平11-239661号公報(以下「刊行物D」という。)
(D-1)「【0010】前記管理装置2には、前記指令機3に対するコード番号NXを書き込む書込手段としての指令機登録部2aが設けられている。このときに、前記コード番号NXは、前記指令機3が用意されている数だけの数列、文字列が管理装置2によりランダムに発生されるものとされ、また、例えば1日など所定の時限で変更される。
【0011】よって、例えば開店前に従業員は自分が貸与された指令機3を指令機登録部2aに対峙させ、例えば自分の社員番号を入力すれば、指令機登録部2aはその指令機3に対応する当日のコード番号NXを書き込む。このときに、前記指令機3には後にも説明する金枠の施錠の解錠、木枠の施錠の解錠など、必要となる機能に対応する押しボタン3aなどが設けられている。またこのときに、従業員にはコード番号NXは知らされることはない。」
(D-2)「【0025】図2に示すものは、上記の構成とした本発明の呼出システム1の作用を基本部分で示すフローチャートであり、先ず、従業員は開店に先立ち、管理装置2の指令機登録部2aにより自己に貸与された指令機3の登録(ST01)を行う。この登録に先立ち従業員は自己の社員番号などを入力するので、管理装置2は、どの指令機3を誰が使用するかを明確に認知するものとなる。」
(D-3)「【0028】ここで、ある遊技機70に障害が発生し、遊技者が呼出表示器4を通じて従業員の呼び出しを行い、従業員が障害を確認すると遊技機70の解錠のために、例えば赤外線などによる解錠指令が呼出表示器4に向けて発信され、呼出表示器4はこれを受信し、この解錠指令が本日使用するコード番号NXとして通知されている番号群中に存在するか否かを判定(ST08)する。」
(D-4)「【0029】存在すれば錠71、72の解錠を行(ST09)い同時に使用された指令機3のコード番号NXと自己の遊技機番号Tを管理装置2に向けて送信(ST10)し、受信した管理装置2は、このコード番号NX、遊技機の台番号Tを使用された時間などと共に記憶(ST11)する。そして、補修が終了すれば再び施錠が行われ、呼出表示器4は再び待機と監視(ST05?ST07)状態に戻る。」
(D-5)「【0035】【発明の効果】以上に説明したように、本発明により呼出表示器に遊技機の施錠、解錠を受け持つ機能を持たせると共に、その解錠は管理装置により管理され毎日が異なるコード番号を与えられる指令機で行う呼出システムとしたことで、第一には指令機も持たずコード番号も知る術もない部外者が解錠を行うことは不可能となり、電子部品の差し替えなどは不可能となる。
【0036】また、例え不法手段により指令機を入手したとしても、当日使用されているコード番号を与えることは不可能であるので、セキュリテイは確保できるものとなる。更に、部内者による背任行為もそのコード番号を書き込まれた指令機が当日誰に貸与されていたのかを管理装置は認識しているので、指摘できるものとなる。加えて、監視モードが設けられたことで夜間の不法進入による電子部品の差し替えなども不可能とする。」

2.引用発明と本願発明との対比
(1)発明特定事項の対応関係
(1-1)引用発明における「パチンコ台」は、本願発明における「遊技設備」に対応し、以下同様に、
「キーシステム」は「ロックシステム」に、
「複数の開閉部」は「開閉可能な扉」に、
「前記開閉部をそれぞれ電気的にロックする」は「前記扉毎に設けられ当該扉を閉状態でロックする」に、
「ロック機構」は「ロック手段」に、
「キー7」は「鍵体」に、
「埋め込まれ」は「設けられ」に、
「キーIDコード」は「記憶手段内のコード情報」に、
「トランスポンダ素子6」は「記憶手段」に、
「照合用のIDコード」は「ロック手段のロック解除を許可するコード情報」に、
「記憶する」は「記憶し得る」に、
「EEPROM16」は「情報管理手段」に、
「前記鍵穴1に差し込まれた前記キー7が回転されると」は「前記鍵体を用いたロック解除要求があると」に、
「前記ロック機構を解錠する信号を前記ロック機構に対して出力する」は「前記ロック解錠要求の対象となるロック手段に対してロックの解錠を指示する」に、
「CPU15」は「制御手段」に、
「書き替え登録する手段」は「更新するコード更新手段」に、各々相当する。
(1-2)引用発明においては、「キー7」が鍵穴1に差し込まれて回転されることによってロック機構が解錠されるようになっているから、該「キー7」はロック機構が解錠されること(本願発明の「前記ロック手段によるロックの解除」に相当)を要求するためのものであるといえる。
(1-3)引用発明の「前記キー7の中に設置された前記トランスポンダ素子6」から読み込まれた「キーIDコード」は、本願発明の「当該鍵体が有する記憶手段内のコード情報」に相当し、引用発明の「前記EEPROM16」から読み出された「照合用のIDコード」は、本願発明の「前記情報管理手段内の少なくとも一のコード情報」に相当する。
よって、引用発明において「読み込んだ前記キーIDコードと読み出した照合用のIDコードの照合を行い、それらが一致すれば前記ロック機構を解錠する信号を前記ロック機構に対して出力する」ことは、本願発明において「当該鍵体が有する記憶手段内のコード情報が前記情報管理手段内の少なくとも一のコード情報と関連付けられていることを条件に、前記ロック解除要求の対象となるロック手段に対してロックの解除を指示する」ことに相当するものといえる。
(1-4)引用発明における「前記キーIDコードと前記照合用のIDコードの照合を行うたびに、その都度」は、以下に記載のように本願発明の「前記ロック解除要求に応じた前記ロック手段がロック解除されたタイミングで」に相当する。
すなわち、
当該「前記キーIDコードと前記照合用のIDコードの照合を行うたびに、その都度」との表現は、当該照合結果が一致する場合と、一致しない場合の双方を含む表現となっている。
そこで、当該「前記キーIDコードと前記照合用のIDコードの照合を行うたびに、その都度」行われる「新キーIDコードおよび照合用の新IDコード」への「書き替え登録」を加味してその表現が意図するところを検討する。
キーIDコードと照合用のIDコードの照合を行い、それらが一致しないとき、すなわち当該キーIDコードが不正なときに、当該不正なキーIDコードと照合用IDコードを各々新IDコードに書き替え、両者のコードが一致するように登録すると、次回の照合においては、両コードは一致することになってしまうので、不正なキーIDコードを記憶したトランスポンダ素子を有するキーによっても結局は解錠されることとなる。
しかし、引用発明において、キーIDコードと照合用のIDコードを書き替え登録することは、上記(A-1)に記載されるようにパチンコ台が不正に開けられるのを有効に防止するためであるから、不正なキーIDコードを記憶したトランスポンダ素子を有するキーによって解錠されることは、引用発明の目的、効果と矛盾することとなる。
してみると、「新IDコードに書き替え登録する」ときは、キーIDコードと照合用のIDコードとの照合結果が一致したときと解するのが相当と認められる。
そして、当該両コードの照合結果が一致すると、ロック機構が解錠されるものであることを考慮すれば、引用発明の「前記キーIDコードと前記照合用のIDコードの照合を行うたびに、その都度」は、本願発明の「ロック手段がロック解除されたタイミング」に相当するものということができる。
(1-5)引用発明における「送受信回路10」は、照合用のIDコードを記憶するEEPROM16と、キーIDコードと照合用のIDコードの照合を行い、それらが一致すればロック機構を解錠する信号を該ロック機構に対して出力するCPU15と、新キーIDコードおよび照合用の新IDコードに書き替え登録する手段とを備え、当該EEPROM16、CPU15、書き替え登録する手段が、上記のように各々、情報管理手段、制御手段、コード更新手段に相当するから、当該「送受信回路10」は、本願発明における「制御コンピュータ」に相当する。

(2)本願発明と引用発明との一致点
制御コンピュータが設けられた遊技設備のロックシステムであって、
前記遊技設備が、
開閉可能な扉と、
前記扉毎に設けられ当該扉を閉状態でロックするロック手段と、
前記ロック手段によるロックの解除を要求するための鍵体と、
前記鍵体に設けられ、コード情報を記憶する記憶手段とを有し、
前記制御コンピュータが、
前記ロック手段のロック解除を許可するコード情報を記憶し得る情報管理手段と、
前記鍵体を用いたロック解除要求があると、当該鍵体が有する記憶手段内のコード情報が前記情報管理手段内の少なくとも一のコード情報と関連付けられていることを条件に、前記ロック解除要求の対象となるロック手段に対してロックの解除を指示する制御手段と、
当該ロック解除要求に応じた前記ロック手段がロック解除されたタイミングで、前記記憶手段内の前記コード情報およびこれに対応する前記情報管理手段内のコード情報を更新するコード更新手段と
を備えることを特徴とする遊技設備のロックシステム。

(3)相違点(山括弧内の記載は、相当する本願発明の構成を示す。)
(3-1)制御コンピュータに関して、本願発明は「ネットワーク上に制御コンピュータが設けられ、前記ネットワークに接続される」のに対し、引用発明は送受信回路10<制御コンピュータ>がパチンコ台に設けられ、ネットワークに接続されるか否か不明である点。
(3-2)鍵体に関して、本願発明は「鍵体」を複数有するのに対し、引用発明は「キー7」<鍵体>を複数有するか否か不明である点。
(3-3)情報管理手段に関して、本願発明は、ロック解除を許可するコード情報を複数記憶しているのに対し、引用発明は複数の「照合用のIDコード」<ロック解除を許可するコード情報>を記憶するものではない点。
(3-4)鍵体及び情報管理手段に各々記憶されるコード情報に関して、本願発明は、第1コードおよび鍵体の所持者を特定するための第2コードを含むのに対し、引用発明は、キー7<鍵体>の所持者を特定するためのコードを含んでいない点。
(3-5)コード更新手段が行うIDコードの書き換えに関して、本願発明は、記憶手段内の前記コード情報のうち第2コードを変更せず、第1コードおよびこれに対応する前記情報管理手段内の第1コードを定期的に更新するのに対し、引用発明は、キーIDコード及びこれに対応する照合用のIDコードを書き換えるものの、上記のようにキー7<鍵体>の所持者を特定するための第2コードを含まないものであって、変更しないコード情報を有していない点、及びコード情報が定期的に更新されるか否か不明である点。

(4)相違点の検討
(4-1)相違点(3-1)について、
上記(B-5)に、施錠システムにおけるキーIDを管理装置55が一括管理することによりパチンコ遊技機2に設けられた呼出制御装置7のCPU57の負担を軽減することが記載されているように、各CPU57の処理をネットワークなどのライン接続を介して管理装置が一括管理する集中処理は従来周知のコンピュータ処理であるから、本願発明の制御コンピュータに相当する引用発明の送受信回路10をネットワーク上に設けて集中制御とすることは、遊技設備の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が適宜採用し得る設計的事項である。

(4-2)相違点(3-2)及び(3-3)について、
鍵体を複数とすることは、上記(B-1)に、鍵体に相当する「キー」に店員毎に付与された個別IDを無線で発信するトランスポンダ46を設ける旨、上記(C-4)に、鍵体に相当する「光リモコン」が各店員に配布される旨、上記(D-2)に、鍵体に相当する「指令機3」を誰が使用するかを明確に認知する旨記載されているように従来周知の事項であり、鍵体を複数にすると、上記(B-4)に「個別ID(識別情報)」、上記(C-4)に「店員コード」、上記(D-1)に「前記コード番号NXは、指令機3が用意されている数だけの数列、文字列が管理装置によりランダムに発生」と記載されているように、各鍵体を特定するコードも各々に設定されるので、コード情報が複数存在することとなることは明らかである。
したがって、引用発明において、鍵体に相当するキー7を複数にすることは単なる設計変更であり、当該設計変更に伴ってキー7のキーIDコードと照合を行うための照合用のIDコードがEEPROM16に複数記憶されることとなるのは、当該複数化に伴って生じる当然の技術事項である。

(4-3)相違点(3-4)及び(3-5)について、
ロックを解錠する際に、解錠用コードと店員識別用コード等の複数のコードを用いることは、上記(C-3)、(C-4)に記載される「解錠番号に相当するIDコード」、「店員コード」、また、上記(D-1)に記載される「コード番号NX」、「社員番号」に示されるように店員による不正解錠対策として従来周知の事項である。
したがって、引用発明におけるロックの解錠に際して、解錠用コード、すなわち、キーIDコードの他に店員識別用コードを付加することは、店員の不正解錠対策を講ずるか否かに応じて当業者が適宜なし得る程度の事項である。
しかも、当該付加に際して、店員識別用コードを変更しないコードとすることは、刊行物B及び刊行物Dにおける店員識別用コードである、「個別ID(識別情報)」及び「社員番号」を変更しないコードとしていることからみて、IDコードを書き替え登録する効果、すなわち「パチンコ台に対する不正行為をさらにより一層有効に防止することができる」効果(上記(A-10)参照)の要求程度に応じて当業者が適宜設定する単なる設計的事項である。
また、「定期的」については、本願発明における定義が、本願明細書段落【0050】に「以上のように・・・例えばシステム稼働開始時、鍵体4a、4b、4c・・・を用いたロック解除要求がある都度、またはシステム稼働終了時といったように、それぞれ定期的に更新されるようになっている。」と記載され、当該記載中の「鍵体4a、4b、4c・・・を用いたロック解除要求がある都度」は、引用発明における「前記キーIDコードと前記照合用のIDコードの照合を行うたびに、その都度」に相当するものであるから、定期的に更新する点は引用発明と実質的には相違しないものということができる。

(5)まとめ
引用発明において、制御コンピュータに相当する送受信回路10をネットワーク上に設けて集中制御とすることは上記のように単なる設計的事項であり、また、キー7を複数化して当該複数化に伴う技術事項を施すことは上記のように単なる設計的事項であり、さらにロックの解錠に際して職員識別用コードを含む複数のコードを用いること、その際に職員識別用コードを変更しないコードとすることも上記のように単なる設計的事項であって、しかも、これら単なる設計的事項と認定した点を総合的に勘案しても、格別の効果が奏せられるものとは認められない。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物B、C、Dに記載されるような従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、他の請求項(請求項2?10)に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-06 
結審通知日 2009-04-07 
審決日 2009-04-21 
出願番号 特願2001-206078(P2001-206078)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 納口 慶太  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 川島 陵司
河本 明彦
発明の名称 遊技設備のロックシステム  
代理人 船橋 國則  

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