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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1198508
審判番号 不服2007-22204  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-09 
確定日 2009-06-11 
事件の表示 特願2002-18096「放電灯装置」拒絶査定不服審判事件 〔平成14年11月15日出願公開、特開2002-329593〕 について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年1月28日(国内優先権主張:平成13年2月28日)の出願であって、平成19年7月11日付けで拒絶査定がなされ、この査定を不服として、同年8月9日に本件の審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の各請求項に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものと認められるが、そのうちの請求項1を引用する請求項4に係る発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりである。
【請求項1】
電源から放電灯に印加する電圧を制御する放電灯制御回路と、
前記放電灯制御回路の前記電源側に設置され、前記放電灯または前記放電灯制御回路で発生し、前記電源側に伝導するノイズを除去するフィルタ回路と、
前記放電灯制御回路および前記フィルタ回路を覆う第1のシールドケースと、
前記フィルタ回路を覆わず前記放電灯制御回路を覆う第2のシールドケースとを備える放電灯装置であって、
前記フィルタ回路と前記電源とを電気的に接続している配線のうち前記第1のシールドケースの出口に位置している接地側の配線と前記第1のシールドケースとを電気的に接続していることを特徴とする放電灯装置。
【請求項4】
前記第1のシールドケースの一部は前記第2のシールドケースを構成していることを特徴とする請求項1記載の放電灯装置。


3.引用例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用した本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-251895公報(以下「引用例」という)には、「車輌用放電灯の点灯回路」に関する発明であって、以下の事項が記載されている。
なお、下記記載中における下線は、いずれも当審で加入したものである。

【図1】(a)と【図3】には、本発明に係る車輌用放電灯の点灯回路と従来の車輌用放電灯の点灯回路の要部が示されている。
「1…電源スイッチ、2…フィルタ回路、3…メイン回路、4…放電灯、5…ノイズシールド、L1,L2…インダクタンス、C1,C2…コンデンサ、LN3…リード線。」
【0004】には、従来技術として、
「メイン回路3は、DC-DCコンバータ3-1と、ブリッジ回路3-2と、スタータ回路3-3とを備えている。DC-DCコンバータ3-1は、フィルタ回路2を介して供給される直流電圧を所要の電圧に変換し、この直流電圧をブリッジ回路3-2へ供給する。ブリッジ回路3-2は、DC-DCコンバータ3-1からの直流電圧を矩形波状の交流電圧に変換し、スタータ回路3-3へ供給する。スタータ回路3-3はブリッジ回路3-2からの交流電圧に始動用パルスを重畳させて放電灯4を点灯させる。」と記載され、
【0003】後段には、従来技術として、
「このフィルタ回路2によって、入力電源側からメイン回路3側へのノイズ(ノーマルモードノイズ)の進入、およびメイン回路3側から入力電源側へのノイズ(コモンモードノイズ)の流出が防止される。」と記載され、
【0010】には、
「【発明の実施の形態】以下、本発明を実施の形態に基づき詳細に説明する。
〔実施の形態1:第1発明〕図1(a)は本発明に係る車輌用放電灯の点灯回路の要部を示す図である。同図において、図3と同一符号は同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。この実施の形態においては、ノイズシールド5をボディアースするのではなく、インダクタンスL2の一端と入力電源の負極性側との接続ラインに電気的に接続している。すなわち、インダクタンスL2の一端と入力電源の負極性側との接続点P1とノイズシールド5との間をリード線LN3で接続することにより、放電灯4の点灯中に発生するバルブノイズを吸収するようにしている。《以下略》」と記載されている。

従来のメイン回路3は「放電灯4に印加する電圧を制御する」ものということができる。(【0004】)
従来のフィルタ回路2は「メイン回路3で発生し、前記電源側に伝導するノイズを除去する」ものということができる。(【0003】)
【図1】(a)は、図3と同一符号は同一或いは同等構成要素を示したものである。(【0010】)
よって、【図1】(a)のメイン回路3は「放電灯4に印加する電圧を制御する放電灯制御回路」ということができ、「メイン回路3で発生し、前記電源側に伝導するノイズを除去する」ものということができる。(【図1】(a))
また、フィルタ回路2は「メイン回路3の前記電源側に設置され」ている。(【図1】(a))
接続点P1は、フィルタ回路2と前記電源とを電気的に接続している配線のうち前記ノイズシールド5の出口に位置している接地側の配線と前記ノイズシールド5とを電気的に接続するものである。(【図1】(a))

そこで、【図1】(a)とともに上記記載事項並びに上記検討事項を総合すると、引用例には、
「電源から放電灯4に印加する電圧を制御するメイン回路3と、
前記メイン回路3の前記電源側に設置され、前記メイン回路3で発生し、前記電源側に伝導するノイズを除去するフィルタ回路2と、
前記メイン回路3および前記フィルタ回路2を覆うノイズシールド5を備える放電灯装置であって、
前記フィルタ回路2と前記電源とを電気的に接続している配線のうち前記ノイズシールド5の出口に位置している接地側の配線と前記ノイズシールド5とを電気的に接続している放電灯装置」
に関する発明(以下「引用発明」という)が記載されているものと認められる。

また、本願出願前の周知技術として、以下の周知例1,2を挙げることができる。

[周知例1]特開平6-5375号公報
外部へ漏れる高周波ノイズを低減することを目的とする技術であって、
第1の実施例の無電極放電灯点灯装置の構成を示す概略図【図1】と【符号の説明】において、金属シールドケース7と金属シールドケース10を一つにして「第1のシールドケース」とし、金属シールドケース7を「第2のシールドケース」とすれば、【図1】から本願発明の第3実施例に相当する「フィルタ回路を覆わず前記放電灯制御回路を覆う第2のシールドケースを備え」しかも「前記第1のシールドケースの一部は前記第2のシールドケースを構成している」構成を看取できる。

[周知例2]特開平7-272875号公報
電源装置及び無電極放電灯点灯装置並びに照明装置に関する技術であって、【図28】と【0086】には、本願の請求項3の限定事項である「第1のシールドケース(シールドケース95)は第2のシールドケース(シールドケース90,91)を収容している」構成が示されている。

4.発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ノイズシールド5」は本願発明の「第1のシールドケース」に相当し、以下「放電灯4」は「放電灯」に、「メイン回路3」は「放電灯制御回路」に、「フィルタ回路2」は「フィルタ回路」に、それぞれ相当する。

そうすると、両発明は、
「電源から放電灯に印加する電圧を制御する放電灯制御回路と、
前記放電灯制御回路の前記電源側に設置され、前記放電灯または前記放電灯制御回路で発生し、前記電源側に伝導するノイズを除去するフィルタ回路と、
前記放電灯制御回路および前記フィルタ回路を覆う第1のシールドケースを備える放電灯装置であって、
前記フィルタ回路と前記電源とを電気的に接続している配線のうち前記第1のシールドケースの出口に位置している接地側の配線と前記第1のシールドケースとを電気的に接続している放電灯装置。」
の発明である点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。

<相違点>
本願発明では、「フィルタ回路を覆わず前記放電灯制御回路を覆う第2のシールドケースを備え」しかも「第1のシールドケースの一部は第2のシールドケースを構成している」のに対して、引用発明では、第2のシールドケースがなく、第1のシールドケースだけである点

5.相違点の検討
「フィルタ回路を覆わず放電灯制御回路を覆う第2のシールドケースを備え」しかも「第1のシールドケースの一部は第2のシールドケースを構成している」例としては、周知例1に示したとおりであり、この周知例1に開示の周知技術を引用発明に採用することは当業者にとって容易なことである。

そして、本願発明が奏する作用効果について検討しても、引用発明及び周知例1に記載の上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものであって、格別なものではない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知例1に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。
なお、請求人は、審判請求書において「放電灯制御回路から直接放射されるノイズを2重にシールドできる」という効果があるから、本願発明を当業者が容易になし得たとはいえないと主張している。
しかしながら、このような効果は【請求項3】の「第1のシールドケースは第2のシールドケースを収容している」構成に基づくものと推定される。
ところで、このような「第1のシールドケースは第2のシールドケースを収容している」構成と上記主張に係る効果は、周知例2に示されているように当該分野では周知の構成と効果であって、この周知例2に開示された周知技術を引用発明に採用することも当業者なら容易なことである。
よって、上記請求人の主張を採用することはできない。

6.むすび
以上によると、本願発明(本願の請求項4に係る発明)は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の請求項2,3に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-10 
結審通知日 2009-04-14 
審決日 2009-04-28 
出願番号 特願2002-18096(P2002-18096)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀川 一郎  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 横溝 顕範
中川 真一
発明の名称 放電灯装置  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 久保 貴則  
代理人 永井 聡  
代理人 伊藤 高順  

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