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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1198509
審判番号 不服2007-22226  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-09 
確定日 2009-06-11 
事件の表示 特願2000-305164「電子写真感光体用円筒状基体の洗浄方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月19日出願公開、特開2002-116559〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1.手続の経緯
本願は、本願は、平成12年10月4日の出願であって、平成19年7月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされた後、当審において平成21年1月19日付けで、拒絶理由通知がなされ、それに対して、同年3月18日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2.記載要件に関して(特許法第36条第6項第2号)
1.当審の拒絶理由の内容
当審の記載不備(第36条第6項第2号違反)に関する拒絶の理由(理由2)は次のとおりである。


<理由2>
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



請求項1の記載において、「電子写真感光体用円筒状基体の洗浄方法において、クリーン度クラス10000以下の環境にて円筒状基体を洗浄液から引き上げながら、エアーナイフによりクリーン度クラス100以下のエアーを円筒状基体の表内面にブローすることを特徴とする電子写真感光体用円筒状基体の洗浄方法。」とあるとおり、請求項1?12に係る発明は、「クリーン度クラス100以下のエアー」を用いるものである。
一方、本願明細書の発明の詳細な説明には、実施例1として、「外径30mm、長さ340mmのアルミニウム製の円筒状基体を図1で示した構造の洗浄装置により洗浄した。まず純水を満たした洗浄槽に10秒間浸漬洗浄し、その後、リフターにより引き上げ速度20mm/秒で引き上げた。表面用のエアーナイフは、エアーが表面全体に均一にスリット状に当たるように配置した。内面用のエアーナイフも表面用と同様に配置した。エアーナイフは表面、内面とも-20度(下向き20度)とした。また表面、内面ともリング状のものを使用した。エアーはクリーン度クラス100以上1000未満、湿度50%RH、圧力0.3MPaのものを使用した。洗浄はクリーン度クラス10000の雰囲気で行い、ワークを1000本洗浄した。」(段落【0027】)とあるとおり、「エアーはクリーン度クラス100以上1000未満」のものを使用したとしている。
したがって、請求項の記載と、発明の詳細な説明の記載とが対応しておらず、請求項1?12に係る発明が不明確である。


2.当審の判断
上記の拒絶理由は妥当なものであって、これに対して、請求人は何ら応答していないから、該拒絶理由は解消していない。
したがって、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


第3.進歩性に関して(特許法第29条第2項)
上記第2.で検討したとおり、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていないものの、請求項1の記載それ自体は明確であるから、予備的に本願の請求項1に係る発明の進歩性についても検討しておく。

1.本願発明
本願の特許請求の範囲には、記載不備の点が存在するものの、本願に係る発明は、平成21年3月18日付けの手続補正書にて補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載されたものと一応認める。
そして、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「 洗浄液からの引き上げ工程を有する電子写真感光体用円筒状基体の洗浄方法において、温純水引き上げ乾燥または純水引き上げ乾燥工程においてクリーン度クラス10000以下の環境にて円筒状基体を洗浄液から引き上げながら、エアーナイフによりクリーン度クラス100以下のエアーを円筒状基体の表内面にブローすることを特徴とする電子写真感光体用円筒状基体の洗浄方法。」

2.刊行物に記載された発明
(刊行物1について)
原審の拒絶理由通知に引用され、当審の拒絶理由にも引用された、刊行物1(特開平6-11847号公報:平成6年1月21日出願公開)には以下の記載がある。(下線は、当審にて付与した。)

(a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】電子写真用導電性支持体の洗浄方法において、被洗浄物を洗浄液より引き上げた後、エアナイフで被洗浄物をブローすることを特徴とする電子写真用導電性支持体の洗浄方法。
【請求項2】電子写真用導電性支持体の洗浄方法において、少なくとも被洗浄物を水洗浄し、次いで被洗浄物をフィンガーワーク搬送する工程を有することを特徴とする電子写真用導電性支持体の洗浄方法。
【請求項3】水洗浄に用いる水が、比抵抗0.1MΩcm以上の水である請求項1及び2記載の電子写真用導電性支持体の洗浄方法。
【請求項4】水洗浄を行うのに際し、超音波を用いて洗浄を行う請求項1及び2記載の電子写真用導電性支持体の洗浄方法。
【請求項5】超音波洗浄を界面活性剤を含む水を用いて行う請求項1及び2記載の電子写真用導電性支持体の洗浄方法。」

(b)「【0009】本発明において用いるエアナイフは、スリット状の幅の狭い隙間より気体を高速で噴出し、被洗浄物に付着した洗浄液を吹き飛ばすものである。エアナイフの形状は被洗浄物の形状にあわせて直線状、リング状などを選択できる。被洗浄物がシリンダー状の場合は、外側と内側の両方からエアナイフを用いることもできる。噴出する気体は空気、窒素、アルゴン、不活性ガスなどが挙げられるが洗浄液、被洗浄物を変質させないものが選定される。」

(c)「【0024】水洗槽上にはエアナイフ2があり、シリンダー引き上げ時に高圧空気入口8より高圧空気(例えば5気圧)を入れ、シリンダーに付着した洗浄水を吹き飛ばす。
【0025】エアナイフとしては、例えば図3に示す形状のものが挙げられる。エアナイフの形状はドーナツ状で、被洗浄物であるシリンダーが中空部分を通かするように設置される。エアナイフの内側には、リング状のスリットノズル17が設けてある。スリットの幅は1mmであり、シリンダーとスリットノズルの距離は5mm(つまり、エアナイフの内径は40mm)である。また、エアナイフと洗浄液の液面との距離は50mmである。」


(d)「【0027】
【実施例】
(実施例1)切削加工したアルミニウムシリンダー(30mmφ×260mm)を図1と同様の洗浄装置を用いて洗浄した。
【0028】フィンガーワークにより、シリンダーを洗浄液として非イオン系界面活性剤であるポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル(HO-(CH_(2) CH_(2) O_(2) )_(n) ・C_(6) H_(4 )C_(9) H_(19)、常盤化学(株)製)の1wt%水溶液で満たされた洗浄槽上に搬送し、シリンダー全体を洗浄液に浸漬し、超音波発振器により30秒間超音波(600W、28KH_(Z) )を印加して洗浄した。洗浄後、シリンダーを800mm/mimの速度で引き上げながらエアナイフの高圧空気入口より高圧空気(5Kg/cm^(2) )を注入し、シリンダーに付着した洗浄液を吹き飛ばした。シリンダーがエアナイフを通過した後、高圧空気の注入を停止する。
【0029】次に、シリンダーを水洗液として1.0MΩcmの比抵抗値を有する脱イオン水(50l)で満たされた水洗槽上に搬送し、シリンダー全体を水洗液に浸漬した。水洗液中に浸漬した状態で30秒停止した後、300mm/minの速度で引き上げ、水洗槽上で風乾した。
【0030】この工程を繰り返し、1000本のアルミシリンダーを洗浄したところ、洗浄液の損失量は50mlであった。
【0031】また、アルミニウムシリンダーの洗浄度を水滴噴霧法によってシリンダー表面上の水滴の付着状態で評価したが、いずれのシリンダーも非常に良好な洗浄度であった。」

(e)「【0046】(実施例5)実施例1で用いた洗浄装置を図2に示すようなものに変更した。すなわちエアナイフを図3に示すようなシリンダー1の外側のみに配置したものからシリンダーの外側(2-1)及び内側(2-2)の両側よりブローするものに変更した。外側のエアナイフの形状は、実施例1と同様ドーナッツ状で内側にスリットノズルがあり中心をシリンダーが通過するものである。内側のものは円盤状で外円部に空気を吹き出すスリットノズルがある。高圧空気は洗浄槽下部より供給される。なお、アルミニウムシリンダーは切削加工した(80mmφ/×360mm)ものを用意したので、エアナイフのサイズは外側は内径90mmのものに変更し、内側は外径70mmのものを用いた。」

上記(a)?(e)の事項を総合すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。(以下、「刊行物発明」という。)
「洗浄液からの引き上げ工程を有する電子写真用導電性支持体の洗浄方法において、被洗浄物を洗浄液より引き上げながら、エアナイフで被洗浄物の外側及び内側の両側より高圧空気をブローする、電子写真用導電性支持体の洗浄方法。」

3.対比
まず、刊行物発明における「電子写真用導電性支持体」は、シリンダーであって、円筒状であることは明らかであるから、本願発明1における「電子写真感光体用円筒状基体」に相当する。
また、刊行物発明における「被洗浄物」、「エアナイフ」、「高圧空気」は、それぞれ、本願発明1における「円筒状基体」、「エアーナイフ」、「エアー」に相当する。
そして、刊行物1発明における「被洗浄物の外側及び内側の両側より高圧空気をブローする」構成は、本願発明1における「エアーを円筒状基体の表内面にブローする」構成に相当する。
したがって、両者は、
「洗浄液からの引き上げ工程を有する電子写真感光体用円筒状基体の洗浄方法において、円筒状基体を洗浄液から引き上げながら、エアーナイフによりエアーを円筒状基体の表内面にブローする、電子写真感光体用円筒状基体の洗浄方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:本願発明1は「温純水引き上げ乾燥または純水引き上げ乾燥工程において」エアーをブローするのに対して、刊行物1発明には、そのような特定がない点。

相違点2:本願発明1は「クリーン度クラス10000以下の環境」にて洗浄が行われるのに対して、刊行物1発明には、その特定がない点。

相違点3:「エアー」に関して、本願発明1は、「クリーン度クラス100以下」であるのに対して、刊行物発明には、その特定がない点。

4.判断
(相違点1について)
まず、相違点1について検討する。
刊行物1には、「シリンダーを水洗液として1.0MΩcmの比抵抗値を有する脱イオン水(50l)で満たされた水洗槽上に搬送し、シリンダー全体を水洗液に浸漬した。水洗液中に浸漬した状態で30秒停止した後、300mm/minの速度で引き上げ、水洗槽上で風乾した。」(上記摘記事項(d))とあり、「純水」に相当すると認められる「脱イオン水」を洗浄液とした工程においてはエアーをブローする構成がないため、「温純水引き上げ乾燥または純水引き上げ乾燥工程において」エアーをブローする点は記載がない。
しかしながら、電子写真感光体の製造において、「脱イオン水」による洗浄時においても、エアーをブローすれば乾燥工程の効率化につながることは当業者にとって明らかであるから、「温純水引き上げ乾燥または純水引き上げ乾燥工程」においてエアーをブローする程度のことは、当業者が適宜採用できる設計的事項である。

(相違点2及び3について)
次に、相違点2,3については、刊行物1には、洗浄を行う環境及びブローするエアーに関し、クリーン度についての記載はない。
しかしながら、電子写真感光体の製造において、感光層の塗布ムラやそれに伴う画像欠陥を防止するために、クリーンルーム雰囲気を採用することは技術常識である。
また、当審の拒絶理由において提示した刊行物2?6(刊行物2:特開平8-15875号公報、刊行物3:特開平5-158268号公報、刊行物4:特開平6-130679号公報、刊行物5:特開平6-75383号公報、刊行物6:特開平9-179320号公報)にも示されるとおり、電子写真感光体用円筒状基体の洗浄方法において、適宜のクリーン度の環境やブローするエアーを採用することは、周知の技術的手段である。
そして、クリーン度のクラスをどのように設定するかは、当業者が費用対効果などを考慮して適宜設定できる設計的事項に過ぎない。
したがって、相違点1ないし3は、当業者が周知技術に基づいて容易に為し得たことである。

(本願発明が奏する効果について)
そして、上記相違点1ないし3によって本願発明が奏する、「感光層に塗布ムラを発生させない」といった効果も、適宜のクリーン度の環境やエアーを採用することによって当然達成できると予測できる程度のもので、格別のものとはいえない。

5.まとめ
以上のとおり、本願発明は刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


第4.むすび
以上のとおり、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、かつ、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-31 
結審通知日 2009-04-07 
審決日 2009-04-20 
出願番号 特願2000-305164(P2000-305164)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
P 1 8・ 537- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅野 芳男  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 木村 史郎
大森 伸一
発明の名称 電子写真感光体用円筒状基体の洗浄方法  
代理人 廣田 浩一  
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