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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1198613
審判番号 不服2008-16551  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-30 
確定日 2009-06-11 
事件の表示 特願2004-233213「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月18日出願公開、特開2004-321833〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯

本願は平成14年4月19日(以下、「本願出願日」という。)に出願された特願2002-117096号の一部を特許法44条1項の規定により新たな特許出願としたものであって、平成20年5月26日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年6月30日付けで本件審判請求がされたものである。


2.本願発明の認定

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年5月8日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の【請求項1】に記載された、次のとおりのものと認める。

「仮想3次元空間に配置された識別情報を有する複数の図柄オブジェクトを、当該図柄オブジェクトと相対的な位置関係が変化する視点に基づいて可変表示装置の変動表示領域に立体的に表示させるとともに、当該図柄オブジェクトを変動表示して変動表示ゲームを行う表示制御手段を備え、前記変動表示ゲームの結果態様に関連して特定の遊技価値を付与可能な遊技機において、
前記表示制御手段は、
前記識別情報としての識別性を有する識別要素テクスチャと、前記識別要素テクスチャの背景となるベーステクスチャとを各々複数記憶するテクスチャ記憶手段と、
前記テクスチャ記憶手段に記憶されるベーステクスチャを、遊技状態に関連して選択するベーステクスチャ選択手段と、
前記テクスチャ記憶手段に記憶される識別要素テクスチャを、前記変動表示ゲームの進行における識別情報の変動表示に関連して選択する識別要素テクスチャ選択手段と、
前記ベーステクスチャ選択手段により選択されたベーステクスチャを、オブジェクトベースに貼り付けた後、前記識別要素テクスチャ選択手段により選択された識別要素テクスチャを、前記ベーステクスチャが貼り付けられたオブジェクトベースに貼り付けるテクスチャマッピング手段と、
前記図柄オブジェクトに対して照光する光源と、他のオブジェクトに対して照光する光源とを、仮想3次元空間に別個独立に設定して、該設定された光源に基づいてライティング処理を行うライティング手段と、を備え、
前記テクスチャマッピング手段は、前記視点位置から見て前記図柄オブジェクトに隠される位置に貼り付けられている前記識別要素テクスチャを取り除いて前記識別要素テクスチャ選択手段が新たに選択した識別要素テクスチャを貼り付けることで前記識別要素テクスチャを更新することを特徴とする遊技機。」


3.引用刊行物に記載される事項の認定

本願出願日より前に頒布された刊行物であり、原査定の理由に引用された特開平9-140882号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の記載がされている。

ア.「表示順序が決まっている識別情報を表示する画像可変表示装置を有し、前記画像可変表示装置の表示結果が所定の表示結果となる場合に所定の遊技価値を付与可能な遊技機において、三次元空間内における多面体として表現される移動体をモデリングし、前記移動体の表示結果として有効な面に前記識別情報のうち表示結果として有効となる複数の有効識別情報がマッピングして表示されている前記移動体の画像表示にたいして、前記移動体を三次元座標変換して移動することにより有効表示となる面に対してすでに表示されている識別情報に続く表示順序の識別情報をマッピングし、前記移動体を三次元座標変換により移動させる手段を備えたことを特徴とする遊技機。」(【請求項1】)
イ.「本発明の課題は、より豊富な、かつ臨場感のある画像表示によってゲーム性を高めることにある。そのために、背景画や当たりを決定する識別情報の新しい表現方法と表現手段を開発することにある。もちろん本発明の課題はパチンコ遊技機が中心ではあるが、他の画像可変表示装置を使用した遊技機にも応用できることも念頭に置いている。」(段落【0027】)
ウ.「本発明では、画像表示に立体図形も扱えるようにするために三次元仮想空間内において多面体すなわちポリゴンとして表現する。モデリングされた立体図形は各頂点の(X,Y,Z)座標で表現される。仮想空間内でモデリングされた立体図形は、画像表示空間(具体的には可変画像可変表示装置の画面)に対応付けることによって画面表示することができる。物体を移動させるには、三次元座標変換を行う。この“物体移動”には、回転や平行移動などが含まれる。」(段落【0030】)
エ.「これだけでは識別情報を表す立体図形の図柄は表現できない。立体図形に図柄も一緒にポリゴンとして表現することもできるが、これでは頂点の座標が多くなるし、また三次元座標変換計算に時間が掛かってしまい、現実的でない。そこで本発明では、識別情報としての図柄をテクスチャとして別個に用意しておき、画像表示空間に立体図形を表示するときにテクスチャを張り付けるようにする。」(段落【0031】)
オ.「【発明の実施の形態】本発明の実施の態様を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施例におけるパチンコ遊技機の遊技面の構成を示す正面図である。画像可変表示装置は、LCD(液晶)、CRT(ブラウン管)、ドットマトリクスLED、プラズマディスプレイ等が適宜選択され用いられる。パチンコ遊技機の遊技盤1の前面には遊技領域3が形成されている。パチンコ遊技機には、図示されていない打球操作ハンドルが設けられており、この打球操作ハンドルを遊技者が操作することにより、パチンコ玉を1個ずつ発射することができる。」(段落【0034】)
カ.「画像可変表示装置40の中央の画像表示部53は液晶表示器(LCD)により構成される。この表示部に複数種類の識別情報としての図柄が可変表示される。いわゆるスロットマシンにおけるスロット回転図柄が表示される部分であり、本発明ともっとも関わりの深い部分であり、具体的な表示方法等に関しての詳細は後述する。一般に同じ図柄が横あるいは縦に3個揃ったときに大当たりとなり、特定の遊技者に有利な条件が与えられる。」(段落【0039】)
キ.「【実施例】本発明の実施例について説明する。図10に図柄の配列と大当たりのラインを示す。図柄は3×3に配列し、各コマはルービックキューブの小区画(ルービックキューブを構成する立方体の1つの面)になっている。図では(A1)?(A3)、(B1)?(B3)、(C1)?(C3)で示してある。横および斜め((1)?(5)のライン)に星印以外の同じ図柄が3つ揃ったときに大当たりとなる。」(段落【0067】)
ク.「本実施例ではルービックキューブを模倣しているから、コマは縦または横の3コマが一単位になって同時に移動する。図11は縦回転リーチの例である。図は、イ列とロ列が停止して左斜めに“7”が2つ揃ったときのリーチである。このときハ列はスロー回転となり、3コマずつすなわち縦1列が立体回転する。通常のルービックキューブの各面は色情報だけであるが、本実施例では図柄となっており、その図柄の一覧表が表1である。」(段落【0068】)
ケ.「3コマ1セットのルービックキューブ面に図柄(テクスチャ)をマッピングするには、表1の並びに対してインデックスを1つインクルメントまたはデクリメントとしていけば良いようになっている。ただし、サイクリックに移動するから19の次は00、または00の次は19である。」(段落【0070】)
コ.「たとえば図11の例では、ハ列は奥から手前に回転しているから、(1)→(2)→(3)の順で図柄が移動する。これは表1で示すソフト上の右図柄シンボル(03,02,01)→(02,01,00)→(01,19,18)に対応した図柄をマッピングしていることになる。これによって、遊技者は図柄の変化が1コマずつ移動して見え、次に表示される図柄の予想がつくために、安心感を得ることができる。プログラム上は(1)→(2)→(3)順序に変動表示するために、裏面には(3)を回転前にマッピングさせる。裏面の(3)が正面に来たときに停止すれば、図10の形の大当たりとなる。」(段落【0071】)
サ.「最初の1.002秒間は全図柄が低速縦変動から始まり、徐々に変動速度を増し、やがて高速縦変動に移行する。・・・左列は5.200秒高速変動ののち、0.154秒おいて低速回転になり、1.000秒後に停止する。低速回転では図柄の区別がわかる速さであるために、ポリゴンにテクスチャをマッピングする必要がある。」(段落【0080】)
シ.「表4は動作種別を示している。種別Bでは1図柄0.5秒表示であるから、低速回転(図14のBの部分)の1秒間に2図柄を表示することになるため、側面と裏面の2図柄もあらかじめマッピングする。その準備を高速から低速に移行する0.154秒間に完了する。中図柄列は左図柄列よりも1秒遅れて停止する。右列はリーチ時や大当たり時などによってその停止のタイミングが異なる。まず(a)は通常のハズレ時で、中列が停止してから、さらに1秒後に停止する。(b)?(d)はリーチ(大当たりも含む)時のタイミングチャートである。(b)は種別Cの速い変動ののちに種別Dの、1図柄0.3秒のゆったりとした回転になり、最後は1図柄0.6秒の低速回転になって停止するノーマルリーチである。種別Dでの変動時間は0.006?6.300秒と可変であるが、比較的短いためにショートリーチともいう。一方、(C)では種別Dの部分が6.600?12.300秒と、リーチが比較的長いロングリーチである。」(段落【0082】-【0084】)


4.引用例1に記載される発明の認定

記載事項ア.にあるとおり、引用例1は「遊技機」に関する発明であり、記載事項オ.によると具体的には「パチンコ遊技機」に関する発明である。この「パチンコ遊技機」は、記載事項カ.にあるとおり「画像可変表示装置40」を有しており、その「表示部」に「複数種類の識別情報としての図柄」を「可変表示」し、記載事項ア.に戻れば「表示結果が所定の表示結果となる場合に所定の遊技価値を付与可能」なものである。
画像表示について見ると、記載事項ウ.によれば「立体図形」も扱うものであり、「三次元仮想空間内」に「ポリゴン」としてモデリングした「立体図形」を「画像表示空間に対応付けることによって画面表示」するものである。また、記載事項エ.によると、「識別情報としての図柄をテクスチャとして別個に用意」しておき、「立体図形」に「テクスチャを張り付ける」ことで、「識別情報を表す立体図形」を表現するものである。
「立体図形」としては、記載事項キ.及びク.によれば、一面が「3×3」で「小区画」を有する「ルービックキューブ」が用いられており、「縦1列」が「一単位」になって「立体回転」する。
ここまでを整理すると、引用例1には、
「三次元仮想空間内にポリゴンとしてモデリングした立体図形を、画像表示空間に対応付けることによって画面表示し、画像可変表示装置40の表示部に複数種類の識別情報としての図柄を可変表示して、表示結果が所定の表示結果となる場合に所定の遊技価値を付与可能なパチンコ遊技機において、
立体図形は一面が3×3で小区画を有するルービックキューブであり、識別情報としての図柄をテクスチャとして別個に用意しておき、テクスチャを張り付けることで、識別情報を表す立体図形とし、縦1列が一単位になって立体回転する」
という発明事項が開示されている。

次に、回転に伴うポリゴン上の図柄表示について見ると、記載事項ケ.及びコ.によれば、「図柄シンボル」は20個の並びで「サイクリック」に移動させられる。また、ルービックキューブの一面の1列に3図柄並び、該1列が回転した次の面では「1コマずつ」移動させられた3図柄が並んでいる。また、「裏面」には「回転前にマッピング」を行い、該マッピングがされた「裏面」の列が「正面」に来るまでの回転表示を含んでいる。
このようなポリゴンに対するテクスチャのマッピングは、記載事項サ.によれば、「図柄の区別がわかる速さ」である「低速回転」では必要とされている。そして、同記載事項サ.及び記載事項シ.によれば、回転は「低速縦変動」から始まり、「高速縦変動」に移行した後、「低速回転」となって停止する。停止前の「低速回転」は、種別Bとして2図柄分行っている。また、「ゆったりとした回転」を経て「低速回転」に至り停止する「ロングリーチ」も用意されている。
これを整理すると、引用例1には、
「図柄シンボルは20個の並びでサイクリックに移動させるとともに、ルービックキューブの一面の1列に3図柄が並び、該1列が回転した次の面では1コマずつ移動した3図柄が並ぶように表示し、
ルービックキューブの列の裏面には回転前にテクスチャのマッピングを行うとともに、該マッピングがされた裏面の列が正面に来るまでの回転表示を含み、テクスチャのポリゴンへのマッピングは図柄の区別がわかる速さの低速回転では必要であり、
回転は低速縦変動から始まり、高速縦変動に移行した後、低速回転となって停止し、
ゆったりとした回転を経て低速回転に至り停止するロングリーチも用意している、パチンコ遊技機。」
という発明事項が開示されている。

以上をまとめると、引用例1には、
「三次元仮想空間内にポリゴンとしてモデリングした立体図形を、画像表示空間に対応付けることによって画面表示し、画像可変表示装置40の表示部に複数種類の識別情報としての図柄を可変表示して、表示結果が所定の表示結果となる場合に所定の遊技価値を付与可能なパチンコ遊技機において、
立体図形は一面が3×3で小区画を有するルービックキューブであり、識別情報としての図柄をテクスチャとして別個に用意しておき、テクスチャを張り付けることで、識別情報を表す立体図形とし、縦1列が一単位になって立体回転するものであり、
図柄シンボルは20個の並びでサイクリックに移動させるとともに、ルービックキューブの一面の1列に3図柄が並び、該1列が回転した次の面では1コマずつ移動した3図柄が並ぶように表示し、
ルービックキューブの列の裏面には回転前にテクスチャのマッピングを行うとともに、該マッピングがされた裏面の列が正面に来るまでの回転表示を含み、テクスチャのポリゴンへのマッピングは図柄の区別がわかる速さの低速回転では必要であり、
回転は低速縦変動から始まり、高速縦変動に移行した後、低速回転となって停止し、
ゆったりとした回転を経て低速回転に至り停止するロングリーチも用意している、パチンコ遊技機。」
なる発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。


5.本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定

引用発明1における「パチンコ遊技機」、「画像可変表示装置40」、「変動表示領域」は、それぞれ本願発明における「遊技機」、「可変表示装置」、「変動表示領域」に相当する。引用発明1において「複数種類の識別情報としての図柄を可変表示」することは、本願発明における「変動表示ゲーム」に相当する。また、引用発明1が前述のような「可変表示」を行うからには、そのための表示制御手段を当然に備えており、該表示制御手段の中にどういう手段を備えているかはひとまず措くとして、これは本願発明における「表示制御手段」に相当する。
引用発明1が「表示結果が所定の表示結果となる場合に所定の遊技価値を付与可能なパチンコ遊技機」であることは、本願発明が「前記変動表示ゲームの結果態様に関連して特定の遊技価値を付与可能な遊技機」であることに相当する。
引用発明1における「識別情報としての図柄」及び「図柄シンボル」は、本願発明における「識別情報」に相当する。引用発明1において、「テクスチャ」を張り付けることで「識別情報を表す立体図形」とした「ルービックキューブ」の、「立体回転」の単位である「縦1列」は、本願発明における「識別情報を有する図柄オブジェクト」に相当する。引用発明1の「ルービックキューブ」は、該「立体回転」する3つの「縦1列」を備えているから、これらは本願発明における「複数の図柄オブジェクト」に相当する。
引用発明1において「図柄を可変表示」する「縦1列」の「立体回転」は、本願発明において「立体的に表示させるとともに、当該図柄オブジェクトを変動表示して」変動表示ゲームを行うことに相当する。引用発明1の「三次元仮想空間」は本願発明の「仮想3次元空間」に相当し、「立体図形」がそこに配置されたうえで表示装置への表示処理が行われることも、引用発明1と本願発明との一致点である。
ここまでを整理すると、引用発明1と本願発明とは、
「仮想3次元空間に配置された識別情報を有する複数の図柄オブジェクトを、可変表示装置の変動表示領域に立体的に表示させるとともに、当該図柄オブジェクトを変動表示して変動表示ゲームを行う表示制御手段を備え、前記変動表示ゲームの結果態様に関連して特定の遊技価値を付与可能な遊技機」
である点で一致している。

続いて、表示制御に関して検討する。
引用発明1における「識別情報としての図柄」の「テクスチャ」は、本願発明における「識別情報としての識別性を有する識別要素テクスチャ」に相当する。そして、引用発明1において、識別情報としての図柄は複数種類あるから、そのテクスチャも複数存在し、引用発明1はその記憶手段も当然に備えている。すなわち、「識別情報としての識別性を有する識別要素テクスチャを複数記憶するテクスチャ記憶手段」を備えることは、引用発明1と本願発明との一致点である。
また、引用発明1では、図柄シンボルが「20個の並び」で「1コマずつ、サイクリックに移動」するよう、3コマ単位で並んだ識別情報としての図柄のテクスチャを張り付けているから、引用発明1は、識別情報の変動表示に関連して、そのように3コマ単位で並んだ識別情報としての図柄のテクスチャを選択する手段も、有している。すなわち、「前記テクスチャ記憶手段に記憶される識別要素テクスチャを、前記変動表示ゲームの進行における識別情報の変動表示に関連して選択する識別要素テクスチャ選択手段」を備えることは、引用発明1と本願発明との一致点である。
さらに、引用発明1において上記「テクスチャ」を張り付ける「ルービックキューブ」の各「立体回転」の単位は、本願発明における「オブジェクトベース」に相当する。そして、引用発明1がそのような「テクスチャのマッピング」を行うからには、「前記識別要素テクスチャ選択手段により選択された識別要素テクスチャを、オブジェクトベースに貼り付けるテクスチャマッピング手段」を備えることも、引用発明1と本願発明との一致点である。
また、引用発明1では「ルービックキューブの列の裏面」に「回転前にテクスチャのマッピング」を行っており、ここにおける「列の裏面」は本願発明における「視点位置から見て図柄オブジェクトに隠される位置」に相当するから、「テクスチャマッピング手段」が「視点位置から見て前記図柄オブジェクトに隠される位置に、識別要素テクスチャを貼り付ける」ことも、引用発明1と本願発明との一致点である。
ここで言及した各手段は、いずれも表示制御のための手段の一部であるから、「表示制御手段」が上記の各手段を備えることも、引用発明1と本願発明との一致点である。
すなわち、表示制御に関してまとめると、引用発明1と本願発明とは、
「前記表示制御手段は、
前記識別情報としての識別性を有する識別要素テクスチャを複数記憶するテクスチャ記憶手段と、
前記テクスチャ記憶手段に記憶される識別要素テクスチャを、前記変動表示ゲームの進行における識別情報の変動表示に関連して選択する識別要素テクスチャ選択手段と、
前記識別要素テクスチャ選択手段により選択された識別要素テクスチャを、オブジェクトベースに貼り付けるテクスチャマッピング手段と、を備え、
前記テクスチャマッピング手段は、視点位置から見て前記図柄オブジェクトに隠される位置に前記識別要素テクスチャ選択手段が選択した識別要素テクスチャを貼り付ける」
という点で一致している。

以上をまとめると、引用発明1と本願発明とは、

「仮想3次元空間に配置された識別情報を有する複数の図柄オブジェクトを、可変表示装置の変動表示領域に立体的に表示させるとともに、当該図柄オブジェクトを変動表示して変動表示ゲームを行う表示制御手段を備え、前記変動表示ゲームの結果態様に関連して特定の遊技価値を付与可能な遊技機において、
前記表示制御手段は、
前記識別情報としての識別性を有する識別要素テクスチャを複数記憶するテクスチャ記憶手段と、
前記テクスチャ記憶手段に記憶される識別要素テクスチャを、前記変動表示ゲームの進行における識別情報の変動表示に関連して選択する識別要素テクスチャ選択手段と、
前記識別要素テクスチャ選択手段により選択された識別要素テクスチャを、オブジェクトベースに貼り付けるテクスチャマッピング手段と、を備え、
前記テクスチャマッピング手段は、視点位置から見て前記図柄オブジェクトに隠される位置に前記識別要素テクスチャ選択手段が選択した識別要素テクスチャを貼り付けることを特徴とする遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違または一応のところ相違する。

<相違点1>
本願発明においては、表示を「当該図柄オブジェクトと相対的な位置関係が変化する視点に基づいて」行うのに対して、引用発明1では表示を行うための視点がどのようになっているか明らかでない点。
なお、本願発明の当該記載については、仮想3次元空間で図柄オブジェクトが回転する形態で、視点と図柄オブジェクトとの相対的位置関係が変化する態様、すなわち図柄オブジェクト固定座標系から見た視点位置が円軌道を描いて移動する相対的な位置関係の変化態様を含む趣旨とも、そのような態様を含まず、図柄オブジェクトの重心位置座標と視点位置座標との相対位置が変化するという趣旨とも解し得るところ、前者であれば、引用発明1においても立体的表示の視点は当然に存在するとともに、「ルービックキューブ」の「立体回転」はこのような相対位置の変化に該当するから、この点はそもそも相違点とならない。しかしながら、ここでは一応の相違点として挙げたうえで、後者の趣旨である場合についても検討を行うこととする。

<相違点2>
本願発明では「識別要素テクスチャの背景となるベーステクスチャ」を複数「テクスチャ記憶手段」に記憶し、該「ベーステクスチャ」を「遊技状態に応じて選択するベーステクスチャ選択手段」を備えるとともに、「ベーステクスチャ選択手段により選択されたベーステクスチャを、オブジェクトベースに貼り付けた後」に、その上に「識別要素テクスチャ」を貼り付けるのに対して、引用発明1ではそうなっていない点。

<相違点3>
本願発明では「図柄オブジェクトに対して照光する光源と、他のオブジェクトに対して照光する光源とを、仮想3次元空間に別個独立に設定して、該設定された光源に基づいてライティング処理を行うライティング手段」を備えるのに対して、引用発明1ではそうなっていない点。

<相違点4>
本願発明では、「テクスチャマッピング手段は、前記視点位置から見て前記図柄オブジェクトに隠される位置に貼り付けられている前記識別要素テクスチャを取り除いて前記識別要素テクスチャ選択手段が新たに選択した識別要素テクスチャを貼り付けることで前記識別要素テクスチャを更新する」のに対して、引用発明1では、テクスチャを裏面に貼り付けた列が正面に来るまでの回転表示は行っているものの、図柄の区別がわかる速さとしてそれ以上の回転表示を行わせる記載がなく、貼り付けられたテクスチャを裏面で取り除いて新しいテクスチャに更新していない点。


6.相違点の判断及び本願発明の進歩性

(1)相違点1について
まず、引用発明1においても立体表示の「視点」は当然に存在しているとともに、引用発明1が「三次元仮想空間内にポリゴンとしてモデリングした立体図形を、画像表示空間に対応付けることによって画面表示」するからには、たとえば特開2002-92654号公報の段落【0003】にも「ところで、2次元平面である表示装置の画面上に3次元画像を表示する場合、オブジェクト座標系によって記述されているオブジェクトの形状を定義する座標(オブジェクトを構成するポリゴンの頂点の座標)を、仮想3次元空間を規定するワールド座標系の座標へ変換することによって当該オブジェクトを3次元空間に配置し、その配置されたオブジェクトを3次元空間に設定された視点を原点とする視点座標系の座標へ変換し、さらに視点座標系の所定位置に配置された仮想スクリーン上に各オブジェクトを投影して当該スクリーン座標系における各オブジェクトの頂点座標を演算する処理が必要となる。」と記載されているように、視点位置を設定したうえでの画像表示空間への対応付け計算を行っていることは当然である。そうであれば、当然に設定しなければならない視点位置のパラメータをいかように変更しても用いる演算式に変更はないうえに、たとえ視点位置自体を固定的に設定して動かさないとしても、引用発明1における立体図形ポリゴンの重心位置を視点に対して固定しなければならないという技術的な制約があるわけではないから、引用発明1において、当然に存在する視点と「ルービックキューブ」の「縦1列」の「単位」との相対的な位置関係は、重心位置座標の相対的な位置関係としても、もともと変化可能なものである。この点については、引用発明1と同様にポリゴンを用いた立体表示を行うパチンコ機について、たとえば特開平11-70229号公報の段落【0014】に「視野演算手段が演算する視野は固定的である必要はなく、例えば、視点を移動させて三次元映像を演算しても良いし、立体物を移動させて三次元映像を演算しても良い。」と記載され、また特開2000-84181号公報の段落【0024】に「前記位置関係の設定は、視点の移動によって行うものでもよい。」と記載されていることからも、明らかである。
そのうえで、該相対的な位置関係を実際に「変化」させるか否かについて検討すると、先に示した引用例1の記載事項イ.に記載されているように、引用発明1は「より豊富な、かつ臨場感のある画像表示によってゲーム性を高めること」を意図したものであるのだから、画像表示の「豊富」化と「臨場感」のために視点位置自体を移動させる演出を併せて含めることは、設計事項程度というほかはない。
すなわち、その認定において述べたように、相違点1は、図柄オブジェクトの回転による視点との相対的位置関係の変化を含む趣旨と解すれば、もともと相違点ではないし、含まない趣旨と解しても、引用発明1において相違点1に係る本願発明の構成とすることは設計事項である。

(2)相違点2について
(a)引用例2の記載事項
原査定の理由に引用された特開2001-231987号公報(以下、「引用例2」という。なお、平成20年3月11日付けの拒絶理由通知には引用例2の公報番号に誤記があるが、請求人による平成20年5月8日付け意見書では、引用例2の正しい公報番号を記載したうえで、本願発明の特許性が主張されている。)には、以下の記載がある。
い.「【発明の属する技術分野】本発明は、パチンコ機等の遊技機の分野において利用され、3次元等の多次元画像を表示可能な可変画像表示装置およびその画像表示方法に関する。」(段落【0001】)
ろ.「【発明が解決しようとする課題】上述したような特別図柄表示装置において、3次元画像で表現された図柄には、遊技者の興味を一層高めて、さらなる演出を行うため、3Dポリゴンに対してシェーディングやテクスチャマッピング等の画像処理が施される。しかし、従来のテクスチャマッピング等の画像処理において、テクスチャの貼り替えやシェーディングの切替えは、図柄変動中には何ら行われていない。その結果、テクスチャに変化がなく、面白味に欠けたものとなり、高精細で高度な画像処理や表示等の様々な演出効果を高めることができない。」(段落【0006】-【0007】)
は.「上述したような3D図柄の変動中において、各色のテクスチャデータ121を貼り替えることによって、当たり・はずれの予告や期待感を表現することができ、演出効果を高めることができる。また、このようなテクスチャデータ121の貼り替えの処理は、図柄変動中の当たり・はずれの予告に用いる他に、遊技状態(高確率、低確率)や抽選結果(当たり、はずれ)等、遊技形態の変化時にも適用できる。」(段落【0065】-【0066】)
に.「上記各例では、3次元画像を構成する少なくとも3D図柄の表示形態を切り替える例について述べたが、3D図柄等の背景等の3次元画像に対しても同様な画像処理を行うことができる。」(段落【0086】)

(b)引用発明2の認定・相違点2に係る構成の容易想到性
先に示した記載事項から、引用例2には、
「3次元画像を表示可能なパチンコ機において、
3Dポリゴンに対するテクスチャの貼り替えやシェーディングの切替えが、図柄変動中には行われない従来技術に比較して、面白味と演出効果を高めるために、
3D図柄の変動中において、各色のテクスチャデータを貼り替えることによって、当たり・はずれの予告あるいは遊技状態等、遊技形態の変化時に演出効果を高める、
あるいは、3D図柄の表示形態を切り替える例と同様の画像処理を、3D図柄等の背景等の3次元画像に対して行う、画像表示方法」
なる発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認めることができる。

引用発明1は、ポリゴンへのテクスチャマッピングにより3次元画像を表示するパチンコ遊技機であるとともに、相違点1の検討でも示したとおり、「より豊富な、かつ臨場感のある画像表示によってゲーム性を高めること」を意図したものであるところ、パチンコ遊技機である以上は、当たりとはずれ及びその直前状態を含め、演出効果を高めるべき局面は遊技状態に関連して当然に存在するものである。そうであれば、まず、「遊技状態等」との関連で「各色のテクスチャデータを貼り替える」ことにより、演出効果を高めるという、引用発明2における手法を採用することは、引用発明1を出発点とする当業者が、十分に想到し得た事項である。
ここで、引用発明2では「3D図柄等」から「背景等の3次元画像」まで、演出上色を変更する箇所は幅を有して示唆されているところ、テクスチャマッピングに関しては、たとえば特開2001-184524号公報に「このような環境テクスチャ80とボスキャラクタ70の下地テクスチャ(元テクスチャ)とをボスキャラクタ70にマルチテクスチャマッピングすることで、図5に示すような画像を生成できる。」(段落【0050】)と記載され、特開2001-266166号公報に「プレーヤは、下地の異なる種々のオブジェクトを操作できるようになり、長期にわたって飽きの来ないゲームを供給できる。また、プレーヤの編集対象を下地のテクスチャに限定することで、他のテクスチャがマッピングされた最終的なオブジェクトのデザインが不自然になることもない。」(段落【0018】)と記載されているように、下地側のテクスチャとその上に重ねるテクスチャとを用意して独立に変更するマルチテクスチャマッピングの手法が、周知技術である。また、パチンコ遊技機において、画像表示の色変更をどの箇所で行うかという演出選択について見ると、たとえば特開2001-212314号公報の【図18】(c)から(d)において「7」の数字部分の背景にあたる箇所の色が「青」から「白」に変更される様子が示され、特開2002-102472号公報に「抽選図柄の背景色を特定色に変更させたりする構成とすることができる。」と記載されているように、識別情報に該当する数字等の背景に該当する箇所を、色の変更箇所とすることは、パチンコ遊技機において従来から適宜行われている演出上の選択というべきである。
そうであれば、引用発明1を出発点として、上述の如く、異なる色のテクスチャを用意して、遊技状態との関連で貼り替えるという、引用発明2の演出手法を採用するに際して、色の変更箇所としてはパチンコ遊技機における従来からの前述選択肢であった識別情報該当部分の背景箇所を選択し、それに適した周知のマルチテクスチャマッピングの手法を併せて採用すること、すなわち、ルービックキューブのポリゴンに貼り付けるテクスチャとして、下地側のテクスチャと識別情報部分のテクスチャとを分離して用意するとともに、下地側のテクスチャとしては複数色を用意し、遊技状態に関連して選択した下地側テクスチャをポリゴンに貼り付け、その上に識別情報部分のテクスチャを貼り付けるようにすることも、パチンコ遊技機における従来からの演出の選択肢を知りつつ、選択した演出のために好適な周知技術を適宜採用する程度の能力を有する当業者であれば、容易に想到できた事項と言わざるを得ない。その際、遊技状態との関連で下地側のテクスチャを選択する手段を設けること、テクスチャの記憶手段とマッピング手段とは下地側と識別情報該当部分側とで同じものを用いることは、設計事項である。
すなわち、相違点2に係る本願発明の構成は、引用発明1が属するパチンコ遊技機の分野、及び、引用発明1でも使用している3次元画像表示の分野について、通常程度の知見を有する者であれば、容易に得ることができたものである。

(3)相違点3について
(a)「他のオブジェクト」に関して
まず、「他のオブジェクト」について検討する。
引用発明1には「他のオブジェクト」がないが、識別情報を備える立体に対して「背景等の3次元画像」を設けることは、先に示した引用発明2でも想定されており、また特開2001-112985号公報にも「ポリゴンで構成した図柄33(ポリゴン表示モデル)を3列に並べると共に、各図柄33の背後に、それぞれ二次元又は三次元画像で形成された木34を背景画像として配置した三次元的な画像を画像表示部14に表示する。」(段落【0027】)と記載されているように、画像の豊富化を意図する場合には慣用される演出上の選択に過ぎない。引用発明1でも、ルービックキューブがただ虚空に浮かんでいたり、背景が全て2次元的表示であるよりは、ルービックキューブの邪魔にならない程度の遠方に背景たる立体オブジェクトを別途配置して、画像を豊富化することは、何ら格別の事項ではない。

(b)光源とライティング処理に関して
次に、光源とライティング処理とについて検討する。
たとえば、特開2002-24853号公報の段落【0003】に、「このような3次元CGを描画する際に、3Dモデル表面の輝度値を求める方法としては、グーローシェーディングという手法が一般的に使用されている。」と記載され、また特開2001-70634号公報の段落【0036】に、「このようなシェーディング処理は、一般的にジオメトリエンジンと呼ばれる前記3次元演算処理手段6にて、記憶手段2の環境光や光源等の情報を使用し演算された輝度計算結果に基づいて行われる陰影表現に係わる処理であり、一般的にはフォンシェーデング、グローシェーデングが良く知られている。」と記載されていることからも明らかなように、3次元画像演算において、光源を設定するとともに光源の情報を使用してオブジェクトの輝度計算を行うシェーディングは、きわめて一般的な処理である。そのため引用発明1においても、光源を設定してオブジェクトの輝度を計算する処理を行う手段は、明記がなくとも備えているか、仮に備えていないとしても、かような手段を備える設計変更は当然に想定された事項というべきである。この処理を行うに際しては、光源を三次元仮想空間上に置いて計算することは当然である。
ここで、識別情報を備えたオブジェクトに対するライティング処理について見ると、先に触れた特開2001-112985号公報、また特開2001-231955号公報、及び特開2001-231956号公報の、いずれもフロントページの図面に示されるように、該識別情報を備えたオブジェクトを強調演出するために、点光源を当該オブジェクトのごく近傍に置いたり、移動させたり、該オブジェクトを照らすための光源を複数設けたりすることは、周知技術である。
すなわち、引用発明1においても、識別情報を備えた立体的ルービックキューブに対して、これを特に強調するために前記周知技術を採用し、立体的ルービックキューブのごく近傍を移動し、あるいは立体的ルービックキューブを複数方向から照射する光源を設定して、ライティング処理を行うことは、「臨場感のある画像表示」という引用発明1の意図に従って、当業者が十分に想到し得た事項である。
その際、先に述べたように、画像の豊富化を意図して、ルービックキューブの遠方に背景となる3次元オブジェクトを配置していた場合、ルービックキューブを強調演出するため近傍に配置した光源のみによって照明を行うならば、遠方のオブジェクトも十分に照らすだけ強力な光源とすればルービックキューブが強く照らされ過ぎて不自然となる。また一方で、遠方を照らすには弱い光源とすれば、背景のオブジェクトについては、懐中電灯の灯りで世界を照らすかの如く不自然な状態となり、不都合が生じる。そうであるからといって、主として遠方のオブジェクトを照らす光源と、主としてルービックキューブを照らす光源との、複数の光源を設けつつ、各オブジェクトについてのライティング演算を、全ての光源に基づいて行わせることとすると、影響の小さい光源については、処理負担の面で効率が悪いという不都合が生じる。
しかしながら、たとえば特開2001-283244号公報に「ゲームキャラクタオブジェクト42のレンダリングに影響の大きい光源だけを実際に用いて、その他の影響の少ない光源については計算を省略することができる。」(段落【0033】)と記載されているように、3次元画像処理の技術分野においては、オブジェクトに対して影響の小さい光源についての計算を省略することは周知技術である。

(c)相違点3に係る本願発明の構成の容易想到性
以上のとおり、パチンコ遊技機の画像の豊富化という観点から、背景に3次元オブジェクトを配することは格別の事項ではない。そして、識別情報を備えた3次元オブジェクトを強調するため、近傍に移動光源を配置してライティング処理を行うことも、3次元画像表示を行うパチンコ遊技機における周知技術であり、引用発明1に採用することには、困難性がない。そして、この両者を同時に採用する場合に生じ得る問題点についても、これに対処するライティング処理手法は周知技術である。
そうであれば、引用発明1を出発点として、ルービックキューブとは別の背景3次元オブジェクトを置き、また、ルービックキューブの近傍にこれを強調する移動光源を配置するとともに、ルービックキューブのライティング処理を行う光源と、背景3次元オブジェクトのライティング処理を行う光源とを、それぞれ別途独立に設定することは、パチンコ遊技機と3次元画像処理との両技術分野に通常程度の知見を有する者であれば、容易に想到できたものと言わざるを得ない。
すなわち、相違点3に係る本願発明の構成を得ることは当業者にとって想到容易である。

(4)相違点4について
引用発明1において、ルービックキューブの立体回転する縦1列全12コマ上で、識別情報のテクスチャを貼り替えることなく、立体回転に伴い20個の並びの図柄がサイクリックに一巡する表示を行うことは不可能であり、図柄の区別をわからせながら、正面の列が再び正面に戻るまでの1回転を行う途中には、識別情報のテクスチャの途中貼り替えが必要である。すなわち、4つの面を視認させる3回の図柄移動表示を行うには、識別情報テクスチャの貼り替えを行わなければならない。
ここで、引用発明1は、「裏面」にマッピングしたテクスチャが「正面」に来るまでの可視回転表示、すなわち2回の図柄移動表示を超えて、図柄の区別をわからせた回転を継続する動作は含んでいない。
しかしながら、まず、引用発明1ではロングリーチも用意しているところ、「ゆったりとした回転」を長期間続けるロングリーチにおいて、通常停止時と同様に停止直前の2回の図柄移動のみしか識別情報を区別させない「ゆったりとした回転」を延々と続けることは遊技者の興趣を削ぐ。そうであれば、引用発明1において、図柄を区別させながら3回以上図柄が移動する立体回転を少なくとも設けるとともに、当該処理が可能な程度に、画像の細かさや書き換え頻度等を適宜調整することは、パチンコ遊技機の演出を考える者であれば十分に想到し得る選択肢と言わざるを得ない。また、そのようにする場合には、もともと引用発明1で回転前にテクスチャを貼り付けている裏面において、古いテクスチャを取り除いて新たなテクスチャへと更新することが、演出上の自然さに配慮すれば自然な選択である。なお、先に引用発明2で見たように、変動中のポリゴン上でのテクスチャ更新処理は、従来から行われている事項である。
さらに、引用発明1の図柄の可変表示はパチンコ遊技機の演出であり、変動表示の速度、及び期間のいずれも、演出意図に応じて適宜に設定できるものであるから、「立体回転」を組み込んだ演出特徴を最大限に用いるよう、回転速度や回転期間を適宜に変更して、変動表示の全期間に渡ってテクスチャの貼り付けと更新を行うようにすることも、想到容易と言わざるを得ない。
すなわち、相違点4に係る本願発明の構成を得ることは、パチンコ遊技機と3次元画像処理との両技術分野に通常程度の知見を有する者にとって想到容易である。

(5)本願発明の進歩性
以上のとおり、相違点1-4に係る本願発明の構成を得ることは、引用発明1を出発点として、引用発明1が属するパチンコ遊技機、及び引用発明1が採用している3次元画像表示の、両方の分野について、通常程度の知見を有する者にとっては困難ではない。また、そのようにして本願発明の構成を採用したことによる効果も、格別のものとは認められない。

したがって、本願発明は引用発明1、引用発明2、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


7.むすび

よって、結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2009-04-01 
結審通知日 2009-04-07 
審決日 2009-04-21 
出願番号 特願2004-233213(P2004-233213)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池谷 香次郎  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 有家 秀郎
川島 陵司
発明の名称 遊技機  
代理人 飯田 雅昭  
代理人 藤井 正弘  
代理人 後藤 政喜  

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