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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) B65H
管理番号 1198753
判定請求番号 判定2009-600016  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2009-07-31 
種別 判定 
判定請求日 2009-03-24 
確定日 2009-06-10 
事件の表示 上記当事者間の特許第4118911号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号物件の、イ号説明書に示す「粘着テープカッター」は、特許第4118911号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1.手続の経緯
本件判定に係る出願(以下、「本件出願」という。)は、平成17年12月27日に出願されたものであって、その特許権の設定登録は平成20年5月2日になされ、その後の平成21年3月24日に、請求人ニチバン株式会社から本件判定が請求されたものである。

2.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号説明書に示すテープカッターは、特許第4118911号の請求項1?4に係る発明(以下、「本件特許発明1?4」という。)の技術的範囲に属さない、との判定を求めるものと認める。

3.当事者の主張
請求人は、イ号説明書に示すテープカッターは、本件特許発明1?4の技術的範囲に属さないと主張し、以下の甲第1?10号証を提出し、また、被請求人は、上記テープカッターは、本件特許発明1の技術的範囲に属すると主張し、以下の乙第1?3、5号証及び検乙第4号証を提出していると認める。

甲第1号証;本件出願に係る平成19年10月24日付け手続補正書
甲第2号証;本件出願に係る平成19年10月24日付け意見書
甲第3号証;本件出願に係る平成19年12月21日付け手続補正書
甲第4号証;本件出願に係る平成19年12月21日付け意見書
甲第5号証;特開2005-119845号公報
甲第6号証;特開平11-263518号公報
甲第7号証;実願昭57-147257号(実開昭59-54451号)のマイクロフィルム
甲第8号証;実願昭49-126530号(実開昭51-51585号)のマイクロフィルム
甲第9号証;実用新案登録第3073039号公報
甲第10号証;特開2000-42975号公報
乙第1号証;特開2007-176612号公報
乙第2号証;「イ号の商品外箱の写真」と称する書面
乙第3号証;「イ号の宣伝用チラシ」と称する書面
検乙第4号証;被請求人が販売を予定するテープカッター
乙第5号証;検乙第4号証の説明カタログ

4.本件に係る特許発明
特許第4118911号の請求項1?4に係る発明は、判定請求書に添付された特許第4118911号公報(以下、「本件公報」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものであると認める。
なお、本件特許発明1?4については、その構成をAからHに分説して記載している。(以下、「構成要件A」などという。)

本件特許発明1;
A 粘着テープの粘着面を粘着/仮留めする仮留め部を兼ねた第1の面と、
B 該第1の面の端部に連続する第2の面と、
C その刃先線によって前記粘着テープを切断する切断刃とを有するテープカッターであって、
D 前記切断刃は、前記第1の面と前記第2の面とがなす直線状の稜線と、該第1の面と該第2の面との双方に対して所定の切り込み長さをもって形成されることにより該稜線を分断する複数のスリットとを備え、
E 前記分断された稜線が、前記切断刃の唯一の刃先線をなすことを特徴とするテープカッター。

本件特許発明2;
F 前記スリットの開口幅を0.3mm?1.0mmとしたことを特徴とする、請求項1に記載のテープカッター。

本件特許発明3;
G 前記第1の面と前記第2の面とが略直交することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のテープカッター。

本件特許発明4;
H 前記切断刃が板材であり、該板材の端面が前記第2の面の一部を構成することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のテープカッター。

5.イ号物件
イ号物件は、判定請求書に添付されたイ号説明書の記載によれば、次のとおりのものと認める。
なお、イ号物件については、その構成をaからeに分説して記載している。(以下、「構成a」などという。)

a 左右方向、左から順に、粘着テープの粘着面を粘着し、左右方向にある程度の長さを有する、仮留め部を構成する面、この面の右側縁辺(以下「仮留縁辺」という。)に連続する、段差を構成する面、及び、この面の右側縁辺(以下「段差縁辺」という。)に連続する第1の面を有し、更に、第1の面は、右側縁辺(以下「第1縁辺」という。)を有し、仮留縁辺、段差縁辺及び第1縁辺が、大凡、平行に配され、第1の面と、仮留縁辺と第1縁辺とを含む面、とのなす角度が、大凡、5°であり、段差縁辺から第1縁辺までの左右方向の距離、即ち、第1の面の左右方向の距離が12.5mmをやや超える程度である、上記第1の面と、
b 第1縁辺の右側に、第1の面と、大凡、直交して存在する第2の面と、
c その刃先線によって前記粘着テープを切断する切断刃とを有する粘着テープカッターであって、
d 前記切断刃は、前記第1縁辺から立ち上がる面と前記第2の面とがなす直線状の稜線と、該立ち上がる面と該第2の面との双方に対して所定の切り込み長さをもって形成されることにより該稜線を分断する複数のスリットとを備え、稜線の高さが、第1の面から0.06mm?0.1mmであり、スリットにより分断された、その長さ0.5mmの稜線部分が0.5mmの等間隔に配され、更に、第1縁辺から、第1の面を右方に延長して第2の面と交差するまでの距離が、第1の面の左右方向の距離と比して、きわめて小さく、

e 前記分断された稜線が、前記切断刃の唯一の刃先線をなす粘着テープカッター。

6.イ号物件と本件特許発明1についての判断

6-1.構成要件Aと構成aについて

1)本件公報の段落【0017】には、「なお、仮留め部5は、切断の際に粘着テープを制動すると共に、粘着テープのテープロール2から引き出した部分11の切断後の端末を次回の使用に備えて粘着/仮留めするためのものでもある。」との記載が認められ、構成要件Aの仮留め部5は、ここに粘着テープを粘着して切断の際に粘着テープを制動する機能と共に、切断後の、粘着テープのテープロールから引き出した部分の端末を、留めおく機能を有するものと認められる。

2)そこで、まずは、イ号物件の粘着テープカッターにつき、粘着テープをカット、即ち、切断する際の態様について検討することにする。
上記態様は、イ号説明書の「3.イ号の使用方法の説明」によれば、人手により、粘着テープをテープロールから引き出し、粘着テープを、仮留め部を構成する面に粘着させ、仮留縁辺から切断刃にかけて、張力を掛け、架け渡たすと共に、切断刃の右方にも位置させ、この右方に位置させた粘着テープを切断刃で下方に屈曲させ、屈曲状態で下方にひねることにより切り離すものであることが窺える。また、この粘着テープを切断した後においても、特に【写真1】によれば、仮留縁辺から切断刃にかけて架け渡たされていた粘着テープは、依然として、架け渡たされていた部位と同じか或いは大差ない部位に位置していることが見て取れる。

3)そこで、イ号物件の第1の面が、構成要件Aの仮留め部5の機能を有するかについて、検討する。
まず、仮留縁辺から切断刃に架け渡された粘着テープは、人手により架け渡されたものであるから、張力は付与されてるものの、それ程に強い張力ではなく、粘着テープ自体の持つ可撓性及び自重によって、下方、即ち、第1の面の方向へのたるみを有していると解せる。
また、切断刃は、その長さ0.5mmの稜線部分が0.5mmの等間隔に配されたものから構成されており、切断刃の右方に位置させた粘着テープを切断刃で下方に屈曲させ、屈曲状態で下方にひねることにより切り離す際には、上記架け渡された粘着テープ及び切断刃の右方に位置させた粘着テープは、全体として、第1の面の方向へ移動すると解せる。 そして、第1の面と、仮留縁辺と第1縁辺とを含む面、との為す角度が、大凡、5°であり、更に、切断刃の稜線の高さが第1の面から0.06mm?0.1mmと、低いものであることを踏まえると、粘着テープ切断の際には、第1の面の第1縁辺近傍領域に、粘着テープが接触し、粘着していると認められるものの、その粘着領域は狭いものであり、粘着テープの第1の面に対する粘着力は、粘着テープ切断の際に該粘着テープを制動するほどのものとはいえず、むしろ、粘着テープの制動は、イ号物件の仮留め部や、稜線部分が等間隔に配された切断刃によって果たされていると認められる。
してみると、イ号物件の第1の面は、切断の際に粘着テープを制動する機能を有しているとはいえない。
その一方で、粘着テープを切断した後においても、仮留縁辺から切断刃にかけて架け渡たされていた粘着テープは、依然として、架け渡たされていた部位と同じか或いは大差ない部位に位置しているものであり、これは、粘着テープが切断されたために、仮留縁辺から切断刃に架け渡された粘着テープが、その架け渡たし時に掛けられていた張力によって、全体的に仮留め部側に引き寄せられ、切断刃の支持から外れ、その自重によって第1の面に落下接触し、その結果、第1の面の比較的広い領域に粘着テープが接触し粘着することにより、上述したように位置しているものと認められる。
してみると、イ号物件の第1の面は、切断後の、粘着テープのテープロールから引き出した部分の端末を、留めおく機能は有しているといえる。

4)以上の検討によれば、イ号物件の第1の面は、切断後の、粘着テープのテープロールから引き出した部分の端末を、留めおく機能を有するものの、粘着テープを粘着して切断の際に粘着テープを制動する機能を有するとはいえず、仮留め部を兼ねたものということができないから、構成aは、構成要件Aを充足するとはいえない。

6-2.構成要件B及びDと構成b及びdについて

1)イ号物件の第2の面は、第1縁辺の右側に、第1の面と、大凡、直交して存在するものの、第1の面の端部、即ち、第1縁辺で連続してはおらず、また、切断刃は、第1縁辺から立ち上がる面と第2の面とがなす直線状の稜線と、該立ち上がる面と該第2の面との双方に対して所定の切り込み長さをもって形成されることにより該稜線を分断する複数のスリットとを備えているのであって、第1の面と第2の面とがなす直線状の稜線と、該第1の面と該第2の面との双方に対して所定の切り込み長さをもって形成されることにより該稜線を分断する複数のスリットとを備えているものではないから、構成bは、構成要件Bを、また、構成dは、構成要件Dを充足するとはいえない。

2)これに対し、被請求人は、要するに、イ号物件の切断刃は、その通常使用による摩耗によって、構成要件B及びDを有するものとなると主張するが、イ号物件は、先に「5」で認定したとおりの粘着テープカッターであって、その使用による摩耗後のものでないから、被請求人の主張は、イ号物件でないものに対しての主張であって、そもそも、失当であるが、被請求人の主張に対して簡単に触れておく。
イ号物件の切断刃は、構成dのとおりであって、「稜線の高さが、第1の面から0.06mm?0.1mmであり、スリットにより分断された、その長さ0.5mmの稜線部分が0.5mmの等間隔に配され、更に、第1縁辺から、第1の面を右方に延長して第2の面と交差するまでの距離が、第1の面の左右方向の距離と比して、きわめて小さ」いもので、切断刃を構成する材質にもよるが、テープカッターとしての通常使用により摩耗する場合が想定できる。
しかしながら、その摩耗によっては、イ号物件は、第1の面と第2の面とが丸みを帯びた曲面を介して連続した構成をとると解するのが自然であって、第1の面に端部はなく、したがって、これに連続する第2の面を有する構成をとらず、本件特許発明1の構成要件Bである、第1の面の端部に連続する第2の面を有する構成をとるとはいえない。更に、摩耗によっては、上述した構成をとると解せるから、本件特許発明1の構成要件Dである、切断刃が、少なくとも、第1の面と第2の面とがなす直線状の稜線からなるという構成を備えず、そもそも、粘着テープを有効に切断する切断刃すら備えないものとなっているといえる。
したがって、被請求人の主張するように、イ号物件の切断刃がその通常使用による摩耗によって、構成要件B及びDを有するものになるということはできない。

6-3.まとめ
イ号物件の構成a、b及びdが、本件特許発明1の構成要件A、B及びDを充足するといえない以上、イ号物件は、本件特許発明1の技術的範囲に属するということはできない。

7.イ号物件と本件特許発明2?4についての判断
本件特許発明2?4は、本件特許発明1の全ての構成要件を有するもので、イ号物件が、先に「5」で述べたように、本件特許発明1の技術的範囲に属するといえない以上、イ号物件は、本件特許発明2?4の技術的範囲に属するといえない。

8.むすび
イ号物件は、本件特許発明1?4の技術的範囲に属するということはできない。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2009-05-29 
出願番号 特願2005-374063(P2005-374063)
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (B65H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高島 壮基  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 栗林 敏彦
佐野 健治
登録日 2008-05-02 
登録番号 特許第4118911号(P4118911)
発明の名称 粘着テープカッター  
代理人 小野塚 薫  
代理人 木村 政彦  
代理人 ▲高▼ 昌宏  
代理人 大島 陽一  
代理人 萼 経夫  
代理人 宮崎 嘉夫  
代理人 田上 明夫  
代理人 立川 幸男  

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