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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1199572
審判番号 不服2007-29826  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-01 
確定日 2009-06-22 
事件の表示 特願2005-173437「メディカル・オートフィットネス装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月28日出願公開,特開2006-345973〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 本願の手続経緯
本願は,平成17年6月14日の特許出願であって,平成19年10月3日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成19年11月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされた後,当審において,平成21年2月18日付けで拒絶理由通知がなされ,その応答期間中の平成21年3月5日付けで手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1?2に係る発明は,平成21年3月5日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ,そのうち請求項2に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。

「【請求項2】
特定トレーニーTについて医師の診断処方した運動種類、運動負荷値など当該トレーニーが運動量を実行消化するために必要な運動処方データがフィットネス機器制御信号として記録蓄積されている制御コンピュータ5と;この制御コンピュータ5と医師Dとの間でデータ通信可能に連携されており、前記電子測定器4によって測定された運動中の特定トレーニーTの生理変動量が前記制御コンピュータ5を介し送信されて当該トレーニーTのカルテ情報として記録蓄積可能であると共に、この生理変動量を医師Dが既に制御コンピュータ5に記録蓄積されている当該トレーニーTの前記処方データに照らして診断し、当該制御コンピュータの処方データを書換え更新する医師端末パソコン6と;特定のトレーニーTを識別するためのIDコードが記録されたコンパクト記録媒体1と;この記録媒体1に記録された特定トレーニーTのIDコードを読み出して、読み出したIDコードを前記制御コンピュータ5に送るリーダ手段2と;このリーダ手段2から送られた特定トレーニーTのIDコードに基いて制御コンピュータ5が該当するトレーニーTの記録を検出し、当該トレーニーTに対する医師処方の運動処方に基づくフィットネス機器制御信号を出力して当該トレーニーに適合した負荷値にて指定種類の運動を所定の時間分だけ実行支援する少なくとも一種類のフィットネス機器3と;この運動中のトレーニーの呼吸数、心拍数、血圧値、心筋電圧のごとき生理的変動量を計測する電子測定器4と;この電子測定器4の出力する測定値を受信して記録すると共に、当該測定値が正常範囲を超えたときに前記制御コンピュータ5が当該フィットネス機器3に停止信号を発して停止せしめることを特徴とするメディカル・オートフィットネス装置。」

3 引用刊行物の記載事項
(1)これに対して,本願特許出願前に頒布された刊行物である,特開平10-216268号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面の図示とともに次の事項が記載されている(下線は,当審が付与したもの)。

(1-ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 トレーニングをするエクセサイザを識別する識別データがストアされた複数の識別カードと、
識別カードを読取る第1読取り手段と、
各識別データに個別的に対応したエクセサイザの(a)健康状態に関する第1データと、(b)体の形態に関する第2データと、(c)体力測定結果に関する第3データと、(d)トレーニング経過に関する第4データとをストアするメモリと、
表示手段と、
エクセサイザがトレーニングをする複数のトレーニングマシンと、
第1読取り手段の出力に応答し、読取られた識別カードの識別データに対応するメモリにストアされている第1?第4データのうちの少なくとも一部と、これらの第1?第4データに基づいて、エクセサイザがトレーニングを行うべきトレーニングマシンの指示とを、表示手段に表示させるとともに、そのエクセサイザがトレーニングを行うべきトレーニングマシンを指定するトレーニングマシン指定信号を発生する第1制御手段と、
各トレーニングマシンの近傍にそれぞれ設けられ、識別カードを読取る第2読取り手段と、
各トレーニングマシン毎に設けられる第2制御手段であって、第1制御手段からのトレーニングマシン指定信号と第2読取り手段によって読取られた識別データとに応答し、指定されたトレーニングマシンに対応する識別データが、第2読取り手段によって読取られたとき、前記メモリの第1?第4データの少なくとも一部を読出して、トレーニングマシンのエクセサイザのための負荷を、その読出した第1?第4データに対応する予め定める負荷値に設定する第2制御手段と、
トレーニングマシンに関連して設けられ、エクセサイザの体の形態に関する第2データを測定する第1センサと、
トレーニングマシンに関連して設けられ、エクセサイザのための負荷に関するデータを測定する第2センサと、
第1センサの出力を第2データとして、ならびに第2センサの出力を第3および第4データとして、メモリにストアする第3制御手段とを含むことを特徴とするトレーニングシステム。
【請求項2】 第2制御手段は、第1センサの出力に応答し、前記体の形態が悪くなる予め定めるレベル未満になったとき、負荷を予め定める値だけ軽減して設定することを特徴とする請求項1記載のトレーニングシステム。
【請求項3】 設定される負荷が予め定める下限値になったとき、トレーニングの中止を表す情報を、前記表示手段に表示することを特徴とする請求項2記載のトレーニングシステム。
……
【請求項7】 第1制御手段は、メモリにストアされている第1?第4データを演算して、次回のトレーニングメニューを作成し、識別データに対応して前記次回のトレーニングメニューを前記メモリにストアすることを特徴とする請求項1記載のトレーニングシステム。
……
【請求項14】 トレーニングをするエクセサイザを識別する識別データがストアされた複数の識別カードと、
識別カードを読取る読取り手段と、
各識別データに個別的に対応したエクセサイザに関するデータをストアするメモリと、
エクセサイザがトレーニングをするトレーニングマシンと、
読取り手段の出力に応答し、読取られた識別カードの識別データに対応するメモリにストアされているデータを読出して、トレーニングマシンのエクセサイザのための負荷を、その読出したデータに対応する予め定める負荷値に設定する制御手段とを含むことを特徴とするトレーニングシステム。」

(1-イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フィットネスクラブ、スポーツクラブおよびジムなどで、運動を行うエクセサイザが利用するトレーニングシステムおよびフィットネス機器、運動器具などのトレーニングマシンに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、フィットネスクラブなどでは、ウエイトトレーニングマシンが設置してあり、指導者であるトレーナの指導に従い、運動を行うエクセサイザは、ウエイトスタックマシンまたはフリーウエイトの道具を用い、腕または足などを動かし、エクセサイザの筋に刺激を与え、これによって筋をきたえ、また筋を太くし、さらにはエクセサイザの体形を細くするなどして、健康維持を行うとともに、一般的な体力づくりを行い、また老人、身障者の運動を行うとともに、成人病のリハビリテーションなどを行っている。
……
【0006】エクセサイザを指導するトレーナは、複数の各エクセサイザ毎のトレーニング経過などを記録紙に筆記して記録しておき、エクセサイザがフィットネスクラブを訪れたときに、その記録紙の内容を読んで、トレーニングマシンの椅子の高さを調整し、またエクセサイザの腕によって変位するレバーの長さなどを調整する。このような作業は、トレーナにとって面倒な作業である。このようにトレーナがトレーニングマシンの調整を行った後、エクセサイザの指導を行うので、トレーナが指導のためのみに労力と時間を費やすことができず、このことは特に、エクセサイザが多数人、いるときには、大きな問題になる。
【0007】また上述の面倒な作業を行わずに、エクセサイザがトレーニングを行うこともある。トレーニングマシンの椅子およびレバーなどが、複数の各エクセサイザ毎に適切に調整されないままで、運動が行われると、エクセサイザの腕および足などの関節の怪我が多くなるという問題があるとともに、その運動の効果があがらず、きたえようとしている筋に負荷が適切に作用せず、トレーニングの効果が不充分になってしまう。
【0008】他の先行技術では、ウエイトによるエクセサイザへの負荷を作用する構成の代わりに、トルクモータを用いる構成を有する。このトルクモータによれば、負荷を微調整して連続的に変化することができ、また負荷の作用中において、腕または足などの移動中に負荷を変化させることも可能である。…
【0009】このトルクモータを用いる先行技術でもまた、トレーニングマシンの各エクセサイザ毎の調整などの問題は存在し、トレーナに大きな負担がかかる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、複数の各エクセサイザに適切な負荷を作用させることができるようにするとともに、トレーナの負担を軽減することができるようにしたトレーニングシステムおよびトレーニングマシンを提供することである。」

(1-ウ)「【0012】請求項1の本発明に従えば、フィットネスクラブなどのたとえば受付を訪れたエクセサイザは、識別(略称ID)カードを提示し、第1読取り手段によってその識別カードを読取る。メモリには、各エクセサイザを表す識別データに個別的に対応して、第1?第4データがストアされている。第1データは、健康状態に関するものであって、病歴、栄養摂取状況、日常生活状況、仕事の状況、余暇の過ごし方などが、数値化されて評価されたデータである。第2データは、体の寸法を含む形態に関するものであって、たとえば、身長、体重、体脂肪率、血圧および脈拍などのデータを含む。第3データは、体力測定結果に関するものであって、筋力、握力、座位体前屈の柔軟性、全身反応時間である敏捷性、閉眼片足立ち平衡性、自転車に乗った状態に類似した負荷を発生するいわゆるエアロバイク(商品名)による心肺持久力、上体おこし筋持久力などの数値化されたデータである。第4データはトレーニング経過に関するものであって、トレーニングを行った日時、エクセサイザが行っているトレーニングメニュー、すなわちトレーニングプログラム、フィットネスクラブを訪れた各回毎のトレーニング運動の種類、トレーニングを中止したときには、その中止した理由などのデータである。トレーニングメニューは、エクセサイザのきたえようとする筋または太くしようとする筋に負荷が適切に作用するためのトレーニングマシンを用いるトレーニング手順であって、たとえばエクセサイザの腕によってレバーを引張り、押し、持上げ、また足で押したり引張ったりする各種の運動を含む。第1制御手段は、第1読取り手段によって識別カードの内容が読取られたとき、メモリにストアされている第1?第4データのうちの全部またはその一部を用い、エクセサイザがトレーニングを行うべきトレーニングマシンの種類および識別番号などを指示して表示手段に表示させる。エクセサイザは、この表示手段に表示されたトレーニングマシンの指示を見て、そのトレーニングマシンが設置している場所に歩いて移動する。エクセサイザが、前記指示されたトレーニングマシンに到達したとき、エクセサイザは再び前記識別カードを提示して第2読取り手段によってその識別カードを読取らせる。これによって第2制御手段は、第1制御手段から与えられるトレーニングマシンを指定する信号と、そのトレーニングマシンを使おうとするエクセサイザの第1制御手段からの識別信号が、トレーニングマシンの近傍に設けられている第2読取り手段によって読取られた識別データと一致すれば、そのエクセサイザに対応する前記第1?第4データの少なくとも一部を読出し、そのエクセサイザに最適な負荷値をトレーニングマシンに設定する。エクセサイザは、このトレーニングマシンを用いてトレーニングを行う。このエクセサイザによるトレーニング中において、第1センサは、前記体の形態に関する第2データを測定する。この体の形態に関する第2データというのは、たとえば血圧および脈拍などであってもよい。この第1センサは、エクセサイザの人体に接触して設けられる。たとえば脈拍を検出するために、そのエクセサイザの耳たぶに赤外線を照射し、透過する光の強度をレベル弁別することによって、光の耳たぶを透過する強度が周期的に変化し、その光の強度の周期に対応した脈拍を演算して求めることができる。このような脈拍を検出する第1センサは、耳たぶの一方面に設けられる赤外線発光素子と、耳たぶの他方面に設けられる受光素子と、その受光素子の出力をレベル弁別して受光強度の周期を検出し、脈拍を演算して求める演算手段とを含んで構成される。これと同時に、エクセサイザの負荷に関するデータが、第2センサによって検出される。この第2センサは、負荷の大きさ、したがって筋力、握力、そのトレーニングの引張ったり持上げたりした繰返し回数、さらにトレーニングを中止したかどうかを表す情報などを含む。第3制御手段は、第1および第2センサの出力を受信し、第1センサの出力に対応する形態に関する第2データを前記メモリに、各エクセサイザに対応してストアする。またこの第3制御手段は、第2センサの出力によって得られた体力測定結果およびトレーニング経過に関する第3および第4データとして、各エクセサイザに対応してメモリにストアする。こうしてメモリのストア内容が更新され、次回のトレーニングの準備状態となる。これによって前述の先行技術におけるトレーナの負担が大幅に軽減され、エクセサイザは、特別なトレーニングを誤りなく正確に行うことが可能になる。
【0013】また本発明は、第2制御手段は、第1センサの出力に応答し、前記体の形態が悪くなる予め定めるレベル未満になったとき、負荷を予め定める値だけ軽減して設定することを特徴とする。請求項2の本発明に従えば、エクセサイザがトレーニングマシンを用いてトレーニングを行っている途中で、たとえば第1センサによって検出される血圧が予め定める血圧値を超えるなどし、換言すると体の形態が悪くなる予め定めるレべル未満になったとき、負荷を予め定める1段階だけ軽減して設定する。これによってエクセサイザの血圧がさらに上昇することを防ぎ、安全にトレーニングを続行することができる。このように負荷を軽減した状態でトレーニングを行っている途中で、エクセサイザの血圧が再び予め定める値を超えるなどして体の形態が悪くなる予め定めるレベル未満になると、負荷をさらにもう1段階だけ軽減する。このようにしてエクセサイザの運動中に血圧が異常に上昇し、エクセサイザが危険な状態になることを防ぐことができる。血圧のほかに、脈拍などであってもよい。
【0014】また本発明は、設定される負荷が予め定める下限値になったとき、トレーニングの中止を表す情報を、前記表示手段に表示することを特徴とする。請求項3の本発明に従えば、前述の請求項2において負荷が段階的に軽減されてゆき、その設定される負荷が、予め定める下限値になったとき、たとえばエクセサイザに負荷がほとんど作用されない程度に負荷が零に近い値に設定されたときには、トレーニングの中止を表す情報を、第2制御手段によって表示手段に表示させる。これによってたとえば受付などに設置されている表示手段の表示内容を、トレーナが見て、トレーニングマシンを使用しているエクセサイザの指導を行い、またはエクセサイザに充分な注意をはらうことができるようになる。」

(1-エ)「【0018】また本発明は、第1制御手段は、メモリにストアされている第1?第4データを演算して、次回のトレーニングメニューを作成し、識別データに対応して前記次回のトレーニングメニューを前記メモリにストアすることを特徴とする。請求項7の本発明に従えば、第1制御手段は、エクセサイザが提示した識別カードの内容を読取る第1読取り手段の出力に応答して、そのときにメモリにストアされている第1?第4データを演算して、いまから行おうとする次回のトレーニングメニューを作成する。…」

(1-オ)「【0027】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施の一形態の電気的構成を示すブロック図である。フィットネスクラブ、スポーツクラブおよびジムなどの受付には、ユニット1が設けられ、エクササイザが運動トレーニングを行う場所には複数種類の各種運動を行うためのユニット2が設けられ、さらに運動するエクセサイザの健康状態および体の形態に関するデータを観察、測定して診察するユニット3が1または複数、設けられる。これらのユニット1,2,3は、通信ライン4を介して接続される。各エクセサイザは、そのエクセサイザを識別する識別データがストアされた識別カード5を所持している。この識別カード5の識別データは、たとえば磁気によって記録されている。識別カード5は、ユニット1に備えられている第1読取り手段6によって読取られ、第1制御手段であり、ホストコンピュータである処理回路7に与えられる。この第1読取り手段6ではまた、新入会員に、識別データを記録して識別カードを与えることができるようにするために、その識別カード5に識別データを記録するための機能を有している。ユニット3は、たとえばフィットネスクラブ、スポーツクラブおよびジムなどの診察室に設けられる。このユニット3には診察手段111が備えられ、マイクロコンピュータなどによって実現される処理回路112に接続される。読取り手段113によって識別カードを読取らせると、診察手段111は、エクセサイザの健康状態および体の形態に関するデータを観察、測定して診察し、その結果を処理回路112に出力する。処理回路112は、前記診察手段111による診察結果をユニット3の通信装置は、ライン4およびユニット1の通信装置12を介して、読取り手段113による識別カード5の識別データに対応させて、メモリ8にストアする。またたとえば新入会員は、トレーニングを行う前にユニット3の診察手段111によって診察を受け、その結果に応じて適切なトレーニングから始める。
【0028】ユニット1には、メモリ8が備えられ、処理回路7に接続される。このメモリ8には、第1表に示されるように、複数の各識別データに対応して、第1?第4データがそれぞれストアされる。
……
【0031】処理回路7は、第1読取り手段6の出力に応答し、読取られた識別カード5の識別データに対応するメモリ8にストアされている第1?第4データのうちの少なくとも一部をプリンタ9の記録紙に印字するとともに、表示手段10に表示し、さらにこれらの第1?第4データに基づいてエクセサイザがトレーニングを行うべきトレーニングマシン13(次に述べる図2参照)の種類および識別番号などの指示を、プリンタ9によって記録紙に印字し、また表示手段10によって表示する。処理回路7はまた、エクセサイザがトレーニングを行うべきトレーニングマシン13を指定するトレーニングマシン指定信号を発生して通信ライン4に導出する。」

(1-カ)「【0032】図2は、トレーニングマシン13毎に個別的に設けられるユニット2の電気的構成を示すブロック図である。なお、図2では通信装置は参照符16および17で示してあるが、これらを総括して図1では参照符12で示す。トレーニングマシン13の近傍には、識別カード5を読取るための第2読取り手段14が備えられ、その識別データは第2および第3制御手段であり、マイクロコンピュータなどによって実現される処理回路15に与えられる。この処理回路15は、通信装置16を介して、通信ライン4aからユニット1の通信装置12(図1参照)に接続され、またもう1つの通信装置17を介して通信ライン4bから、次のユニット2およびユニット3などに接続される。参照符4a,4bを総括的に参照符4で示すことにする。トレーニングマシン13には、運動を行うエクセサイザ18が見ることができるように個別表示手段19が設けられる。この個別表示手段19は、たとえば前述のように陰極線管によって実現されてもよく、または液晶表示素子によって実現されてもよい。個別表示手段19の表示画面上には、いわゆるタッチパネルと称される入力手段20が備えられ、データを入力することができる。トレーニングマシン13には、エクセサイザ18が着座する着座部21と、背もたれ部22とが設けられる。着座部21は駆動手段23によって上下の高さが調整される。駆動手段24は、背もたれ部22の水平軸線まわりの傾斜角度を調整することができるように駆動する。エクセサイザ18は、腕25によってレバー26を矢符27の方向およびその逆方向に揺動駆動し、このとき負荷発生源110のトルクモータ28は、レバー26に負荷を与える。この負荷というのは、エクセサイザ18の腕25の力に抗する抗力である。このトルクモータ28の出力は減速機29を介してレバー26に伝達される。トルクモータ28の出力軸の角変位位置、したがってレバー26の角変位位置は、第2センサであるロータリエンコーダ31によって検出され、その出力は、処理回路15に与えられる。処理回路15は、トルクモータ28を駆動制御する。駆動手段23,24は、処理回路15によって駆動制御される。
【0033】エクセサイザ18の人体の形態に関するデータは、第1センサであるセンサ32によって検出される。このセンサ32は、血圧、脈拍および筋電などを検出し、処理回路15に与える。
【0034】処理回路15は、通信ライン4aを介するトレーニングマシン指定信号と第2読取り手段14によって読取られた識別データとに応答し、通信ライン4aを介して与えられるエクセサイザを識別する識別データが、第2読取り手段14によって読取られた識別データと一致したとき、メモリ8にストアされている第1?第4データの少なくとも一部を読出して、トレーニングマシン13のエクセサイザ18のための負荷を、その読出した第1?第4データに対応する予め定める負荷値に設定し、すなわちトルクモータ28の電圧を制御する。ロータリエンコーダ31は、このエクセサイザ18のための負荷に関するデータである角変位位置を検出するセンサである。また処理回路15は、センサ32の出力を、前記第2データとして通信ライン4aを介してユニット1の処理回路7に与え、またロータリエンコーダ31の出力を前記第3および第4データとして通信ライン4aを介して処理回路7に与え、メモリ8に、対応する識別データ毎に、ストアして、それらのデータを追加または更新する。このようなセンサ32の出力をメモリ8にストアし、またロータリエンコーダ31の出力をメモリ8にストアする制御動作を行う手段が、処理回路15に備えられている。」

(1-キ)「【0040】図7は、ユニット1の処理回路7の動作を説明するためのフローチャートである。ステップa1からステップa2に移り、識別カード5を第1読取り手段6によって読取られると、その識別データは処理回路7に与えられ、この識別データに対応してメモリ8からは、ステップa3において第1?第4データが読取られる。ステップa4では、これらの第1?第4データの少なくとも一部を用いて演算を行い、エクセサイザがトレーニングを行うべきユニット2、したがってトレーニングマシン13の種類および/または識別番号をステップa5において表示手段10によって表示する。さらに前述のステップa4では、第1?第4データに基づいて、トレーニングマシン13の負荷値を表す信号を導出してユニット2に与える。」

(1-ク)「【0043】図8は、ユニット2の処理回路15の動作を説明するためのフローチャートである。ステップb1からステップb2に移り、ユニット1から通信ライン4を介して与えられる信号が表すトレーニングマシン13の種類または識別番号などのトレーニング指定信号を受信し、またそのトレーニングマシン13における予め定める負荷値がユニット2に与えられ、さらにユニット1における第1読取り手段6によって読取られた識別カードの識別データもまた、ユニット2に与えられる。ステップb3では、そのユニット2に備えられている第2読取り手段14によって読取られた識別カードの識別データを受信する。ステップb4では、ユニット1から与えられた識別データと、第2読取り手段14によって読取られた識別データとが一致しているかどうかを判断し、一致しているときに、そのトレーニングマシン13の使用が可能になるように、次のステップb5に移る。
【0044】ステップb5では、ユニット1のメモリ8にストアされている前述の第1?第4データの少なくとも一部を読出し、その読出した第1?第4データに対応する予め定める負荷値を、ステップb6において演算してステップb7で、トルクモータ28に与える電圧として設定する。
……
【0047】トレーニングマシン13の負荷値は、図8のステップb8におけるセンサ32の測定値によってもまた、変化される。」

(1-ケ)「【0048】図9は、このセンサ32の出力によってトレーニングマシン13の負荷値を変化するための処理回路15の動作を説明するためのフローチャートである。ステップc1からステップc2に移り、センサ32の出力を処理回路15において受信する。センサ32の出力は、たとえばこの実施の形態では脈拍を表す信号である。単位時間あたりの脈拍数HRの最大値MHRは、式2で示される。
【0049】
MHR = (220 - Y)・R …(2)
式2におけるYは、エクセサイザ18の年令であり、Rは、第1?第4データに基づいて演算して得られた前記第1負荷値に対する%割合を示し、たとえば前述のようにトレーニングコース、トレーニングメニューまたはトレーニングプログラムなどに対応して定められる値であって、たとえばR=80%またはR=60%であってもよい。
【0050】図9のステップc3においてセンサ32によって検出されたエクセサイザ18の脈拍HRが、前記最大脈拍MHRを超えたとき、すなわち健康状態が悪くなる予め定めるレベル未満になったとき、トレーニングマシン13に設定されているトルクモータ28の電圧を、予め定める電圧ΔVだけ減少して負荷を予め定める値ΔLだけ、ステップc4にいて軽減する。
【0051】こうしてエクセサイザ18の健康状態が悪くなる方向になったときには、ステップc5からステップc2に移り、ステップc3,ステップc4が順次的に行われて、負荷がさらに、予め定める値ΔLずつ低下してゆく。この負荷Lが、予め定める下限値L0以下になったときには、ステップc5からステップc6に移り、トレーニングの中止を表す情報を、処理回路15が発生して通信ライン4からユニット1の処理回路7に与える。これによって処理回路7は表示手段10に、トレーニングの中止を行うべきユニット2の識別情報と、そのトレーニングの中止を表す情報とが表示される。こうしてステップc7では、処理回路15の一連の動作を終了する。このようにしてエクセサイザ18の健康が悪化するときには、トレーニングが中止されるので、安全性が確保される。」

(1-コ)「【0060】
【発明の効果】請求項1の本発明によれば、エクセサイザに最適の負荷を微調整して作用させることができるとともに、その負荷には、慣性が作用することはなく、また大きな騒音が生じることはなく、快適なトレーニング環境を保つことができる。さらに本発明によれば、インストラクタの負担が軽減される。インストラクタは、前述の先行技術のように各個別のエクセサイザ毎のトレーニングに関する情報を記録紙に記録する必要はなく、またトレーニングマシンを、各エクセサイザ毎に調整する必要はなく、したがってトレーナは、エクセサイザを指導するためにのみ、努力を傾けることができ、効率的なトレーニングを達成することができる。
【0061】さらにエクセサイザは、比較的短い時間に効率よく、筋の増強を行うことができる。さらにまたいわゆるダイエットを目的として痩身のための体重低減を短期間に行うことができ、これによってもまたトレーニングを効率よく行うことができる。さらにまた成人病のリハビリテーションなどの健康回復を、短期間で行い、トレーニングの高い効果を得ることができる。
【0062】さらにエクセサイザは、一連のトレーニングメニューを、表示手段および個別表示手段を見ながら誤りなくトレーニングを順次的に行うことができる。
【0063】請求項2の本発明によれば、トレーニング中に血圧が異状に高くなるなどの危険な状態を回避することができ、エクセサイザを安全な状態に保ちつつ、トレーニングを行わせることができる。
【0064】請求項3の本発明によれば、エクセサイザに作用する負荷が下限値、たとえばほぼ零になったときには、そのトレーニングの中止を表す情報を表示手段に表示する。これによって表示手段の情報を見たトレーナは、対応するトレーニングマシンを用いているエクセサイザに、最適な指導を行なわせることができる。
……
【0068】請求項7の本発明によれば、エクセサイザがフィットネスクラブを訪れて行うべき次回のトレーニングメニューを、メモリにストアされている第1?第4データに基づいて演算して求め、したがってエクセサイザは、誤りなく正確にトレーニングを行うことができるようになり、このことは多数のエクセサイザがいるフィットネスクラブにおいてトレーナの負担を軽減するのに大きな効果が達成される。」

以上の記載事項(1-ア)?(1-コ)および図面を総合すると,引用例1には,
「トレーニングをするエクセサイザ18を識別する識別データがストアされた識別カード5と,
識別カード5を読取る第1読取り手段6と,
各識別データに個別的に対応したエクセサイザ18の健康状態に関する第1データと,体の形態に関する第2データと,体力測定結果に関する第3データと,トレーニング経過に関する第4データとをストアするメモリ8と,
前記第1読取り手段6の出力に応答し,読取られた識別カード5の識別データに対応する前記メモリ8にストアされている前記第1?第4データに基づいて,エクセサイザ18がトレーニングを行うべきトレーニングマシン13を指定するトレーニングマシン指定信号とそのトレーニングマシン13における予め定める負荷値を出力する第1制御手段7と,
エクセサイザ18がトレーニングをする複数のトレーニングマシン13と,
前記トレーニングマシン13の近傍にそれぞれ設けられ,識別カード5を読取る第2読取り手段14と,
前記トレーニングマシン13に関連して設けられ,運動中のエクセサイザ18の血圧,脈拍および筋電などの体の形態に関する第2データを測定するセンサ32と,
前記トレーニングマシン13毎に設けられ,前記第1制御手段7からの出力である前記トレーニングマシン指定信号及び前記予め定める負荷値と前記第2読取り手段14によって読取られた識別データとに応答し,前記第1読取り手段6によって読取られた識別データと前記第2読取り手段14によって読取られた識別データとが一致したとき,その識別データに対応する前記メモリ8にストアされている前記第1?第4データに基づいて,トレーニングマシン13のエクセサイザ18のための負荷を設定する第2制御手段15と,
前記第1制御手段7及び第2制御手段15と通信ライン4によって接続され,診察室に設けられたマイクロコンピュータ等の処理回路112とを含み,
前記第2制御手段15は,前記センサ32の出力を通信回線ライン4を介して前記メモリ8に前記第2データとしてストアするとともに,前記センサ32の出力に応答し,エクササイザ18の健康状態が悪くなる予め定めるレベル未満になったとき,前記トレーニングマシン13に設定される負荷を段階的に軽減し,前記トレーニングマシン13に設定される負荷がさらに予め定める下限値L0以下になったときにはトレーニングを中止するよう制御するトレーニングシステム。」の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

(2)また,本願特許出願前に頒布された刊行物である,特開2004-355617号公報(以下,「引用例2」という。)には,図面の図示とともに次の事項が記載されている。

(2-ア)「【技術分野】
【0001】
本発明はフィットネスにおいて、医科学検査に基づき身体的リスクを判定し医師・管理栄養士・トレーナー連携のもと運動プログラム,栄養プログラムを処方し、定量的な効果分析による身体的リスク改善を行う「総合健康管理フィットネスシステム」であるメディフィットシステムに関する。」

(2-イ)「【背景技術】
【0002】
従来、フィットネスクラブにおいてはエクササイズと呼ばれるトレーニングを中心とした運動プログラムの提供が一般的に行われており、最近では運動記録機能付きトレーニングマシンや体成分分析装置を導入し、測定結果から運動メニューを提供するフィットネスクラブもできている。
【0003】
従来のフィットネスクラブの方法は、単に会員に運動プログラムを提供をしているに過ぎず、トレーナーからのアドバイスはあるにせよトレーニングの実施は各会員任せにより実施される傾向があるため、トレーニングの実施方法及び内容にバラツキがあり、継続的な運動プログラムによるトレーニングが行われない。
【0004】
また、運動記録付きトレーニングマシンや体成分分析装置等の導入により、従来よりも定量的効果分析に基づく運動プログラムの提供が可能となってきているが、運動プログラムの作成はその都度トレーナーの経験と技量により行われるため、内容にバラツキがある。」

(2-ウ)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明が解決しようとする課題は、定量的・統計的に会員の身体的リスクを判定し、医師・管理栄養士・トレーナーによるカウンセリングの実施と意見を反映させた最適な運動プログラム,栄養プログラムを自動的に抽出・作成し、会員に身体的リスク改善の目的とトレーニングの実施を継続的に行うことができるシステムを提供することにある。」

(2-エ)「【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、フィットネスクラブにおける会員の身体的情報を登録、照会する複数のコンピュータからなる端末を備え、上記端末がサーバーに接続されたネットワークシステムにおいて、上記会員の身体的情報をリスク判定し、運動プログラムを提供することにより身体的リスクを改善するメディフィットシステムであり、会員は会員個別に付された会員IDに基づいてデータが処理管理され、年齢、性別、職業等と栄養摂取を含むメディカルチェックアンケートによる身体的データを基礎データとして入力する入力手段と、上記基礎データに基づいて医科学検査の項目が選定される選定手段と、上記医科学検査の結果データを入力する入力手段と、測定器具より得た該会員の体成分分析結果データを入力する入力手段と、上記各入力手段により得られたデータをリスク判定手段によって身体的リスク判定を行う判定手段と、上記リスク判定の結果に基づいて運動プログラム及び栄養プログラムを作成する運動プログラム,栄養プログラムの作成手段と、上記運動プログラムを基に該会員を交えて医師・管理栄養士・トレーナーによるカウンセリングを実施し、上記カウンセリングの結果をリスク判定ファイル及び運動プログラムファイル,栄養プログラムファイルに反映格納する手段と、上記カウンセリングの結果を反映した運動プログラムファイル,栄養プログラムファイルより該会員が実施する運動プログラム,栄養プログラムを自動作成する作成手段と、上記運動プログラムに従い該会員がトレーニングを行い、上記トレーニング時の運動記録データを入力する入力手段と、上記各手段によって得られたデータから効果分析手段により効果分析結果データを作成する作成手段と、上記効果分析結果を確認する手段とを有し、該会員の身体的リスク改善を行うことを特徴とする。
【0007】
請求項2では、請求項1に記載のメディフィットシステムにおいて、インターネット、VPN、専用回線等を含むネットワークとサーバーを接続して、複数のフィットネスクラブのデータを統合管理し、一元的に運動プログラム及び効果分析データを提供する手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項3では、請求項1のメディフィットシステムにおいて、医師・管理栄養士・トレーナーによるカウンセリングは、フィットネスクラブ施設内に限ることなく、請求項2記載のネットワークとサーバーを接続することにより、WebTV等を介して医師・トレーナーと会員の自宅等からも対面によるカウンセリングを実施することができる手段を備えたことを特徴とする。」

(2-オ)「【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、メディカルチェック、医科学検査、体成分分析結果より判定された身体的リスクと自動作成された運動プログラムに対し、医師・管理栄養士・トレーナーとのカウンセリングを行うことにより医療と栄養とフィットネス分野のプロのチェックのもとに運動および栄養プログラムが提供され、且つメディフィット会員自身でトレーニング後の効果分析結果を確認しながら適切な運動および栄養プログラムを実施することができ、身体的リスク改善を図ることができる。」

(2-カ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
メディフィットシステム会員入会手続きを行う入会時会員情報入力と、検査カウンセリング予約と、医科学検査と、体成分分析と、医師・管理栄養士・トレーナーとのカウンセリングと、トレーニング予約と、運動プログラムによるトレーニングと、効果分析結果の確認とからなる一連の手段にて実現した。
【実施例】
【0011】
以下、本発明における実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のメディフィットシステムの概略フローを示しており、メディフィットシステム会員入会手続きを行う入会時会員情報入力2と、検査カウンセリング予約3と、医科学検査4と、体成分分析5と、医師・管理栄養士・トレーナーとのカウンセリング6と、トレーニング予約7と、図4の一例に示す様な運動プログラムによるトレーニング8と、図3の一例に示す様な効果分析結果の確認9とからなる手段を有している。
【0012】
図2はネットワーク環境におけるメディフィットシステム全体の概略構成図である。複数のメディフィット端末103が、ネットワークによりサーバー101に接続されている。上記メディフィット端末103はタブレットやタッチパネル等のコンピュータ端末装置であり、メディフィットシステムのデータ入力、照会を行う。
【0013】
メディフィットシステムを利用するためには、はじめにメディフィット会員入会手続きを行い、同時にメディカルチェックアンケートを行う。…
……
【0015】
上記より入会したメディフィット会員は、メディフィット端末103より検査カウンセリング予約3を選択し、医科学検査4、体成分分析5(フィットネスチェック)の予約、医師・管理栄養士・トレーナーとのカウンセリング6の予約を行う。…
……
【0019】
次に、医師・管理栄養士・トレーナーによるカウンセリング6を予約した日時に従い実施する。メディフィット端末103より医師・管理栄養士・トレーナーとのカウンセリング6の処理により、「会員ID」に基づいて医科学検査結果DB14と運動処方DB15と体成分分析DB16よりリスク判定DB17を参照しリスク判定が行われ、リスク判定の結果に従って運動プログラム及び栄養プログラムDB18より運動プログラムを自動作成する。上記作成された運動プログラムは、メディフィット端末103に表示され、上記運動プログラムを基にメディフィット会員を交えて、医師・管理栄養士・トレーナーとの栄養相談等生活習慣にまで及んだ3者によるカウンセリングを実施し、カウンセリングの結果をメディフィット端末103の医師・管理栄養士・トレーナーとのカウンセリング6の処理を選択し、入力し登録を行う。サーバー101は上記情報を「会員ID」に基づいて、リスク判定DB17、運動プログラム及び栄養プログラムDB18に反映格納し、その結果から運動プログラム及び栄養プログラムDB18よりメディフィット会員の運動プログラムが作り直され、運動プログラム19を印刷してメディフィット会員に提供される。上記リスク判定DB17、運動プログラム及び栄養プログラムDB18はデータが蓄積されることにより、知識データベースとして学習されることにより、作成される運動プログラム19の精度が向上し、運動プログラムの調整作業が短縮される。
【0020】
医師・トレーナーとのカウンセリング6を実施後、メディフィット端末103よりトレーニングの予約7の処理を選択実行し、メディフィット端末103内蔵のシステムタイマーに従い、現在の日時に基づいてサーバー101にトレーニングマシンの予約情報を照会する。サーバー101は上記メディフィット端末103の現在の日時に基づいて、現在の日時を含む日付以降のトレーニングマシンの予約情報をトレーニング予約DB20より抽出し、上記抽出した情報をメディフィット端末103に表示する。上記表示したトレーニング予約状況よりメディフィット会員は、予約の空き状況を考慮して担当トレーナー、トレーニングマシンの予約を登録し、上記登録した情報はサーバー101に送信される。サーバー101は上記情報をトレーニング予約DB20に格納する。
【0021】
上記予約後、医師・管理栄養士・トレーナーとのカウンセリング6で処方された運動プログラム19に従って、担当トレーナーの指導のもとにトレーニング8を実施する。トレーニングの運動記録は自動記録付きトレーニングマシンの場合は、開始前に会員IDを記憶させ、運動記録は「会員ID」に基づいてサーバー101に送信される。サーバー101は上記送信された運動記録を「会員ID」に基づいて運動記録DB21に格納する。また、自動記録機能の無いトレーニングマシンの場合は、メディフィット端末103よりトレーニング8の処理を選択し、「会員ID」に基づいて運動記録の登録を行い、上記運動記録データをサーバー101に送信する。サーバー101は上記運動記録データを「会員ID」に従って運動記録DB21に格納する。
【0022】
処方された運動プログラム19はおよそ3ヶ月程度の期間実施し、その後検査カウンセリング予約3より再び行い、医科学検査4、体成分分析5、医師・管理栄養士・トレーナーとのカウンセリング6を実施し、また新たに運動プログラム19が処方されてトレーニングを行うサイクルにより、メディフィット会員の身体的リスク改善を行う。」

(2-キ)「【産業上の利用可能性】
【0030】
リハビリテーションシステムにも適用させることが可能である。」

以上の記載事項(2-ア)?(2-キ)および図面を総合すると,引用例2には,
「フィットネスシステムにおいて,医科学検査に基づき会員の身体的リスクを判定し,医師・管理栄養士・トレーナー連携のもと会員毎に運動プログラム,栄養プログラムを処方し,前記運動プログラムに従い当該会員がトレーニングを行い,定量的な効果分析による身体的リスクの改善を行う,フィットネスと医療とを融合させた総合健康管理フィットネスシステム」の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

4 対比・判断
本願発明と引用発明1とを対比すると,その構造および機能からみて,引用発明1の「トレーニングをするエクセサイザ18」,「エクセサイザ18を識別する識別データ」,「識別データがストアされた識別カード5」,「エクセサイザ18がトレーニングを行うべきトレーニングマシン13を指定するトレーニングマシン指定信号とそのトレーニングマシン13における予め定める負荷値」及び「前記トレーニングマシン13に関連して設けられ,運動中のエクセサイザ18の血圧,脈拍および筋電などの体の形態に関する第2データを測定するセンサ32」は,それぞれ,本願発明の「トレーニーT」,「特定のトレーニーを識別するためのIDコード」,「IDコードが記録されたコンパクト記録媒体1」,「運動種類、運動負荷値など当該トレーニーが運動量を実行消化するために必要な運動処方データ」及び「この運動中のトレーニーの呼吸数、心拍数、血圧値、心筋電圧のごとき生理的変動量を計測する電子測定器4」に相当する。

また,本願発明の「特定トレーニーについて医師の診断処方した運動種類、運動負荷値など当該トレーニーが運動量を実行消化するために必要な運動処方データがフィットネス機器制御信号として記録蓄積されている制御コンピュータ5」は「該当するトレーニーTの記録を検出し、当該トレーニーTに対する医師処方の運動処方に基づくフィットネス機器制御信号を出力」するものであるところ,引用発明1の「第1制御手段7」は,「エクセサイザ18がトレーニングを行うべきトレーニングマシン13を指定するトレーニングマシン指定信号とそのトレーニングマシン13における予め定める負荷値」(運動処方データ)を出力するものであるから,引用発明1の「第1制御手段7」及び「メモリ8」は,本願発明の「制御コンピュータ」と,「特定トレーニーについて運動種類、運動負荷値などの該トレーニーが運動量を実行消化するために必要な運動処方データを出力する制御コンピュータ」の点で共通するといえる。

また,引用発明1の「識別カード5を読取る第1読取り手段6」は,「識別カード5」から読取った「識別コード」をこの「第1制御手段7」(制御コンピュータ)に対して出力するものであるから,本願発明の「この記録媒体に記録された特定トレーニーのIDコードを読み出して、読み出したIDコードを前記制御コンピュータに送るリーダ手段2」に相当するといえる。

また,引用発明1の「エクセサイザ18がトレーニングをする複数のトレーニングマシン13」は,「前記第1制御手段7からの出力である前記トレーニングマシン指定信号及び前記予め定める負荷値」,つまり,運動処方データに応答して,「前記第1読取り手段6によって読取られた識別データと前記第2読取り手段14によって読取られた識別データとが一致したとき,この識別データに対応する前記メモリ8にストアされている前記第1?第4データに基づいて」「第2制御手段15」によって「エクセサイザ18のための負荷」が設定されるものであって,これを用いた運動が「所定の時間」かけて行われることは明らかであるから,本願発明の「このリーダ手段から送られた特定トレーニーのIDコードに基いて制御コンピュータが該当するトレーニーの記録を検出し、当該トレーニーに対する医師処方の運動処方に基づくフィットネス機器制御信号を出力して当該トレーニーに適合した負荷値にて指定種類の運動を所定の時間分だけ実行支援する少なくとも一種類のフィットネス機器3」と,「前記リーダ手段から送られた特定トレーニーのIDコードに対応した前記制御コンピュータからの運動処方データの出力に基づいて,特定トレーニーに適合した負荷値にて指定種類の運動を所定の時間分だけ実行支援する少なくとも一種類のフィットネス機器」の点で共通し,引用発明1の「トレーニングシステム」は本願発明の「メディカル・オートフィットネス装置」と「オートフィットネス装置」の点で共通するといえる。

また,引用発明1の「前記第2制御手段15は,前記センサ32の出力を通信回線ライン4を介して前記メモリ8に前記第2データとしてストアするとともに,前記センサ32の出力に応答し,エクササイザ18の健康状態が悪くなる予め定めるレベル未満になったとき,前記トレーニングマシン13に設定される負荷を段階的に軽減し,前記トレーニングマシン13に設定される負荷がさらに予め定める下限値L0以下になったときにはトレーニングを中止するよう制御する」は,本願発明の「この電子測定器の出力する測定値を受信して記録するとともに、当該測定値が正常範囲を超えたときに前記制御コンピュータ5が当該フィットネス機器3に停止信号を発して停止せしめる」と,「この電子測定器の出力する測定値が受信されて記録されるとともに,当該測定値が正常範囲を超えたときに当該フィットネス機器が停止せしめられる」点で共通する。

してみると,本願発明と引用発明1とは,

[一致点]
「特定トレーニーについて運動種類,運動負荷値などの該トレーニーが運動量を実行消化するために必要な運動処方データを出力する制御コンピュータと,
特定のトレーニーを識別するためのIDコードが記録されたコンパクト記録媒体と,
この記録媒体に記録された特定トレーニーのIDコードを読み出して,読み出したIDコードを前記制御コンピュータに送るリーダ手段と,
前記リーダ手段から送られた特定トレーニーのIDコードに対応した前記制御コンピュータからの運動処方データの出力に基づいて,特定トレーニーに適合した負荷値にて指定種類の運動を所定の時間分だけ実行支援する少なくとも一種類のフィットネス機器と,
この運動中のトレーニーの呼吸数,心拍数,血圧値,心筋電圧のごとき生理的変動量を計測する電子測定器と,
この電子測定器の出力する測定値が受信されて記録されるとともに,当該測定値が正常範囲を超えたときに当該フィットネス機器が停止せしめられるオートフィットネス装置。」

の点で一致し,次の点で相違する。

[相違点1]
運動種類,運動負荷値などトレーニーが運動量を実行消化するために必要な運動処方データが,本願発明においては,「医師の診断処方した」ものであり,これが制御コンピュータに「フィットネス機器制御信号として」記録蓄積され,制御コンピュータからリーダ手段から送られた特定トレーニーのIDコードに応じて「当該トレーニーに対する医師処方の運動処方に基づくフィットネス機器制御信号」としてフィットネス機器に出力されるものであって,全体として「メディカル・オートフィットネス装置」と称されるものであるのに対して,引用発明1においては,エクセサイザ18の識別データに応じて「前記メモリ8にストアされている前記第1?第4データ」に基づいて,「第1制御手段7」によって「エクセサイザ18がトレーニングを行うべきトレーニングマシン13を指定するトレーニングマシン指定信号とそのトレーニングマシン13における予め定める負荷値」(運動処方データ)が出力され,各トレーニングマシン毎に設けられた「第2制御手段15」によって「トレーニングマシン13のエクセサイザ18のための負荷」に設定される点。

[相違点2]
電子測定器の出力する測定値が正常範囲を超えたときに,本願発明においては,「前記制御コンピュータが当該フィットネス機器に停止信号を発して」停止せしめるのに対して,引用発明1においては,ホスト側の第1制御手段7(制御コンピュータ)ではなく,トレーニングマシン13毎に設けられた第2制御手段15によって停止せしめられる点。

[相違点3]
本願発明においては,「この制御コンピュータ5と医師Dとの間でデータ通信可能に連携されており、前記電子測定器4によって測定された運動中の特定トレーニーTの生理変動量が前記制御コンピュータ5を介し送信されて当該トレーニーTのカルテ情報として記録蓄積可能であると共に、この生理変動量を医師Dが既に制御コンピュータ5に記録蓄積されている当該トレーニーTの前記処方データに照らして診断し、当該制御コンピュータの処方データを書換え更新する医師端末パソコン6」をも備えるものであるのに対して,引用発明1では,「前記第1制御手段7及び第2制御手段15と通信ライン4によって接続され,診察室に設けられたマイクロコンピュータ等の処理回路112」を備えるものの,この処理回路112が本願発明の上記「医師端末パソコン6」に相当するものといえるものであるのか明らかではない点。

以下,上記相違点について検討する。

[相違点1について]
引用発明1と引用発明2は,ともにフィットネスシステムという技術分野に属し,また両発明は,エクササイザ又は会員に適したトレーニングメニュー又は運動プログラムを提供し,これに従い各エクササイザ又は会員がトレーニングを行うという作用・機能の面でも共通するから,引用発明1において,フィットネスと医療との融合を目的として,引用発明2を適用すること,すなわち「医師の診断処方した」運動処方データを用いることは,当業者にとって格別の技術的困難性がなく,容易になし得る事項であるといえる。
そして,引用発明1におけるトレーニングマシン13は,第1制御回路7及び第2制御回路15により各エクササイザに適した負荷値を自動的に与えられるものであるから,「医師の診断処方した」運動処方データを用いるにあたり,運動処方データをメモリ8に「フィットネス機器制御信号として」予め記録蓄積の上,エクセサイザ18の識別データに応じて出力するように構成することは,当業者が適宜なし得る設計的事項に過ぎない。
そうしてみると,引用発明1において相違点1に係る本願発明の構成を採用することは,当業者にとって格別の技術的困難性がなく,容易になし得る事項であるといえる。

[相違点2について]
複数のトレーニングマシンが通信ラインを介して接続されたホスト側の制御手段によって,トレーニングマシン利用者の異常を検知したときに当該トレーニングマシンを停止制御することは,例えば,特開2004-16738号公報(【0038】?【0040】),特開昭63-11177号公報(2頁左上欄14行?3頁右上欄16行)等に記載されているように,従前周知の技術的手段であるから,引用発明1において,トレーニングマシン13毎に設けられた第2制御手段15による停止制御に代えて,ホスト側の第1制御手段7による停止制御を採用することは,当業者が適宜なし得る設計変更程度のことに過ぎない。
そうしてみると,引用発明1において,相違点2に係る本願発明の構成のようになすことは,当業者にとって格別の技術的困難性がなく,容易になし得る事項であるといえる。

[相違点3について]
引用発明1に対して,医師等の関与の下での総合的な運動・健康の管理を行う,引用発明2を適用するにあたり,引用発明1においても,センサ32によって運動中のエクセサイザ18の血圧,脈拍および筋電などの体の形態に関する第2データ(運動中の特定トレーニーの生理変動量)が測定され,ホスト側の第1制御手段7のメモリ8に記録されるものであって,第1制御手段7と診察室に設けられたマイクロコンピュータ等の処理回路112とが通信ライン4を介して相互に接続されるものであるところ,こうした運動時の生理的変動情報が医師のカルテ情報として価値のあるものであることは自明であるから,例えば,特開2003-132150号公報(【0008】,【0014】?【0015】,【0019】?【0020】,【0022】?【0024】,【0029】?【0040】,図1?5)等に記載されているような病院等に設置された医師端末パソコンに送信・記録蓄積可能な構成とすると共に,引用発明2においても,医師等の処方による運動プログラムは随時見直されるべきものである(上記記載事項(2-カ)(特に【0022】)参照)から,ホスト側の第1制御手段7のメモリ8に記録する運動処方データを医師端末パソコンにより書換え更新可能に構成することは,当業者が容易に想到しうることである。
そうしてみると,引用発明1において本願発明の相違点3に係る構成を採用することは,当業者にとって格別の技術的困難性がなく,容易になし得る事項であるといえる。

そして,本願明細書に記載された本願発明の効果も,引用例1及び2に記載された発明並びに従来周知の事項から予測される程度のものにすぎず,格別顕著なものとはいえない。

5 付言
なお,請求人は,平成21年3月5日付けの意見書において,「本願発明…は、上記発明特定要件…を巧みに選択して連関統合することによって、従来期待することのできなかった次の作用効果を達成し得たのである。」として,(1)「医師管理によるメディカル・オートフィットネス効果」,(2)「電子管理フィットネス安全効果」,(3)「通信ネット化運営効果」,(4)「最新カルテ情報の書換え更新効果」の4つの効果を掲げ,本願発明の進歩性を主張している。
しかしながら,(1)に関し,医師の関与の下で運動プログラム(運動処方データ)を処方する点は,引用例2に記載されていることであって,また,運動処方データに基づき適切にフィットネス機器を自動駆動することによって,指導要員の労力を低減できる点は,引用例1に記載されており(上記記載事項(1-ケ)参照),さらに従前必要とされた指導要員が不要にさえなることは,当業者が予測しうる程度のもの(必要があれば,例えば,前述の特開2004-16738号公報(【0006】?【0010】)等も参照のこと。)に過ぎず,格別顕著なものとはいえない。
また,(2)に関し,運動中のトレーニーの生理的変動量を電子測定器によって測定し,これを随時監視することによって,トレーニーの安全性が確保される点は,引用例1(上記記載事項(1-ケ),(1-コ)参照)や前述の特開2003-132150号公報(特に【0038】?【0040】)等の記載に照らし,当業者が予測しうる程度のものに過ぎず,格別顕著なものとはいえない。
次に,(3)に関し,フィットネスシステムに用いられる各種装置を通信ライン・ネットワークを介して連関統合することによって,医師端末パソコンとデータ通信可能に連繋させたり,必要に応じて各種機能を付加していくことが可能である点は,引用例1や前述の特開2003-132150号公報のほか,特開2002-329111号公報や特開2004-229913号公報等の記載にも照らし,当業者が予測しうる程度のものに過ぎず,格別顕著なものとはいえない。
最後に,(4)に関し,生理的変動量等の電子情報を自動蓄積の上,必要な端末に送信可能に構成することは,引用例1や特開2003-132150号公報に記載されており,運動処方データが医師の関与の下でこうした電子情報を基に更新しうる点は,引用例1及び引用例2や特開2003-132150号公報等の記載に照らし,当業者が予測しうる程度のものに過ぎず,格別顕著なものとはいえない。
(なお,ここで挙げた文献はいずれも平成21年2月18日付け拒絶理由通知において列挙した文献である。)
そうすると,請求人の主張する本願発明による効果は,いずれも,引用例1及び2に記載された発明並びに従来周知の事項から当業者が予測しうる程度のものに過ぎず,格別顕著なものとはいえないから,上記請求人の主張は採用することができない。

また,平成21年4月28日に提出された上申書の内容を考慮しても,上記判断(特に,「4 対比・判断」における各相違点に対する判断,及び「5 付言」における請求人主張の本願発明による効果に対する判断参照。)のとおりであって,本願発明の解決しようとする課題(本願明細書【0002】?【0011】参照。)が引用例1及び2に記載された発明並びに従来周知の事項に比して格別の異なるものであるともいえないから,請求人の主張は採用することができない。

6 結び
以上のとおり,本願発明は,引用例1及び2に記載された発明並びに従来周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-21 
結審通知日 2009-04-22 
審決日 2009-05-12 
出願番号 特願2005-173437(P2005-173437)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上田 正樹  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 福田 聡
秋月 美紀子
発明の名称 メディカル・オートフィットネス装置  
代理人 戸川 公二  

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