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審決分類 審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  E03B
審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  E03B
審判 全部無効 2項進歩性  E03B
審判 全部無効 特許請求の範囲の実質的変更  E03B
管理番号 1199594
審判番号 無効2007-800066  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-03-30 
確定日 2009-06-11 
事件の表示 上記当事者間の特許第3710192号「水貯留用タンク」の特許無効審判事件についてされた平成19年10月22日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成20年行ケ第10097号平成20年4月25日決定)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第3710192号の請求項1乃至6に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
(1)特許第3710192号(以下「本件特許」という。また、設定登録された本件特許の請求項1乃至6に係る発明を以下「本件特許発明1乃至6」という。)の本件特許発明1乃至6は、平成8年2月9日に特願平8-48112号として特許出願され、平成17年8月19日に特許権の設定登録がされた。
(2)これに対して、請求人より平成19年3月30日に本件特許発明1乃至6について特許無効審判の請求がされ、これに対して被請求人より平成19年6月20日付けで訂正請求(以下「原訂正」という。また、原訂正に係る本件特許の請求項1乃至6に係る発明を以下「原訂正特許発明1乃至6」という。)がされるとともに答弁書が提出された。そして、平成19年10月22日付けで、原訂正特許発明1乃至6についての特許を無効とするとの審決(以下「第1次審決」という。)がされた。
(3)そこで、被請求人より知的財産高等裁判所に同審決の取消しを求める訴えの提起がされ(平成20年(行ケ)第10097号)、同訴えの提起があった日から起算して90日の期間内に、特許請求の範囲の減縮等を目的とする訂正審判(訂正2008-390021)の請求がされたところ、同裁判所は、平成20年4月25日付けで特許法第181条第2項を適用して審決を取り消す決定をし、同決定は確定した。
(4)その後、被請求人より特許法第134条の3第2項の規定により指定された期間内の平成20年5月19日に訂正請求(以下「本件訂正」という。また、本件訂正に係る本件特許の請求項1乃至5に係る発明を以下「本件訂正特許発明1乃至5」という。)がされ、これに対して請求人より平成20年6月10日付け及び平成20年6月19日付けで弁駁書が提出され、これに対して、被請求人より平成20年11月18日付けで答弁書が提出された。そして、当審における審理の結果、平成21年2月17日付けで、本件訂正に対して訂正拒絶理由(同年2月19日発送)が通知され、これに対し、被請求人より同年3月24日付けで意見書が提出されたものである。
なお、上記訂正審判(訂正2008-390021)は、特許法第134条の3第4項の規定により取り下げられたものとみなされ、また、原訂正は、特許法第134条の2第4項の規定により取り下げられたものとみなされた。


第2.当事者の求めた審判
第2-1.請求人の主張の概要
1.請求人は、審判請求書において『本件特許発明1乃至6についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。』との審決を求めることを請求の趣旨とし、下記の甲第1号証乃至甲第17号証を提出するとともに、本件特許を無効とすべき理由として、概略以下のように主張している。
甲第1号証:特許第3710192号登録原簿
甲第2号証:特許第3710192号公報(本件特許公報)
甲第3号証:特公平7-86239号公報
甲第4号証:「やってみよう雨水利用」編著グループ・レインドロップス、株式会社北斗出版発行、1995年11月25日初版第4刷、第38?39頁
甲第5号証:特開昭55-157380号公報
甲第6号証:特公平4-26648号公報
甲第7号証:特開昭60-144470号公報
甲第8号証:実願昭48-74429号(実開昭50-22506号)のマイクロフイルム
甲第9号証:特開昭55-26840号公報
甲第10号証:特公平7-119468号公報
甲第11号証:特開平6-49890号公報
甲第12号証:特開平5-346035号公報
甲第13号証:特開平3-43387号公報
甲第14号証:「雨水貯留施設の計画と設計」鹿島出版会:編者.熊谷純一郎.原田幸雄(1991.5.20:第3刷発行)第154?157頁
甲第15号証:特開昭62-111031号公報
甲第16号証:平成17年2月7日付け拒絶理由通知書
甲第17号証:平成17年3月14日付け意見書

(1-1)無効理由I-1
本件特許発明1乃至6は、甲第3号証に記載された発明と同一であり、或いは、この発明及び甲第4乃至9,12,13号証に記載された周知・慣用技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号、或いは、第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。
(1-2)無効理由I-2
本件特許発明1乃至6は、甲第11号証に記載された発明と同一であり、或いは、この発明及び甲第4乃至9,12,13号証に記載された周知・慣用技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号、或いは、第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。
(1-3)無効理由I-3
本件特許発明1乃至6は、甲第10号証に記載された発明と同一であり、或いは、この発明及び甲第4乃至9,12,13号証に記載された周知・慣用技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号、或いは、第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。
(2)無効理由II
本件特許明細書の特許請求の範囲の記載は、本件特許発明1乃至6の必須の構成要件が欠落しており、又不明瞭であり、また、発明の詳細な説明の記載も不明瞭であるから、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号乃至第3号に規定する要件を満たしていない特許出願であり、本件特許は特許法第123条第1項第4号の規定により、無効とすべきである。
(3)無効理由III
本件特許発明1乃至6は、「タンク」自体に特段の限定がないので、文言通りに広義に解釈すれば、甲第4号証(甲第5,7?9,14,15号証)に記載された発明と同一、或いは、同発明及び周知・慣用技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号或いは第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。

2.また、請求人は、平成20年6月10日付け及び平成20年6月19日付け弁駁書において、下記の甲第18号証を提出して、概略以下のように主張している。
甲第18号証:実願昭60-121472号(実開昭62-31622号)のマイクロフイルム

(1-1)本件訂正の訂正事項(a)の「階段状でない平らで垂直な周壁で囲まれたタンク」について、『周壁が垂直である』点は本件特許明細書等には記載がなく、自明な事項でもない。また、何故『周壁が垂直である』点についての作用効果が本件特許明細書等には記載がなく、自明な事項でもない。したがって、上記訂正事項(a)の「階段状でない平らで垂直な周壁で囲まれたタンク」は、本件特許明細書等に記載した事項ではなく、実質上特許請求の範囲を変更するものであり、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反する。
(1-2)本件訂正の訂正事項(a)の「ゴムシートを固着することなく内張して非透水性内張層を構成」について、『ゴムシートを固着することなく内張する』点は本件特許明細書等には記載がなく、自明な事項でもない。また、何故ゴムシートを固着してはならないのかについての理由が本件特許明細書等には記載がなく、自明な事項でもない。したがって、上記訂正事項(a)の「ゴムシートを固着することなく内張して非透水性内張層を構成」は、本件特許明細書等に記載した事項ではなく、実質上特許請求の範囲を変更するものであり、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反する。
(2)仮に本件訂正が認められたとしても、本件訂正特許発明1乃至5は甲第3号証,甲第11号証又は甲第10号証に記載された発明及び甲第4乃至9,12,13,18号証に記載された周知・慣用技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項に規定する進歩性を有しておらず、依然として無効理由I-1,I-2,I-3が妥当である。
(3)仮に本件訂正が認められたとしても、明細書の記載は不明瞭であって、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号乃至第3号に規定する要件を満たしておらず、依然として無効理由IIが妥当である。
(4)仮に本件訂正が認められたとしても、本件訂正特許発明1乃至5は周知事項に照らして特許法第29条第2項に規定する進歩性を有しておらず、依然として無効理由IIIが妥当である。


第2-2.被請求人の主張の概要
1.被請求人は、請求人の主張に対して、原訂正請求をするとともに平成19年6月20日付け答弁書を提出して、概略以下のように反論している。
(1)無効理由I-1に対して
甲第3号証では、タンクの周壁で囲まれたタンク用空間に相当する構成が記載されていない。即ち、防水層を造形するのは「所定の地山地盤の表面」であって、タンクの周壁で囲まれたタンク用空間ではない。
原訂正特許発明1乃至6は、地震等でタンクの周壁等を構成するコンクリート等に破損が生じても可変形性の非透水性内張層が容易に破損を生ぜず、水密性を保持し、かつ空間保持骨格が内部のタンク用空間を保持することができる点に特徴があるのに対して、甲第3号証では、周壁を有するタンクは形成されておらず、地震等が生じた際に、防水層だけで軽量ブロック構造層の内部空間を保持することは不可能である。
従って、原訂正特許発明1乃至6は甲第3号証に対して新規性進歩性を具備するものである。
(2)無効理由I-2に対して
甲第11号証では、タンクの周壁で囲まれたタンク用空間に相当する構成が記載されていない。即ち、甲第11号証は、浸透貯留池であって、周壁を有するタンクではなく、セメントモルタルを吹き付けて側壁の土砂の崩壊を防いでいるに過ぎない。
また、甲第11号証では、「開口部」が設けられていない。
原訂正特許発明1乃至6の効果は前述の通りであるが、甲第11号証では、地震等が生じた際に、遮水性シートでハニカムブロックの内部空間を保持することは不可能である。
従って、原訂正特許発明1乃至6は甲第11号証に対して新規性進歩性を具備するものである。
(3)無効理由I-3に対して
甲第10号証では、貯水タンクを構築するが、周壁を有していない。
また、甲第10号証では、防水層2および防水シート11は、軽量ブロック構造層3の側周面と底面を覆う構成とはなっていない。
そして、地震等が生じた際に、甲第10号証の防水層および防水シート11だけで軽量ブロック構造層の内部空間を保持することは不可能である。
従って、原訂正特許発明1乃至6は甲第10号証に対して新規性進歩性を具備するものである。
(4)無効理由IIに対して
原訂正特許発明1乃至6は、周壁を有する水貯留用タンクである。
従って、原訂正特許発明1乃至6の効果との関係でも構成は明瞭である。
また、原訂正特許発明2の「既存の防火タンクを利用した」点については、既に防火タンクとして使用している水貯留用タンクを使用することができるという意味であって、明瞭である。
(5)無効理由IIIに対して
原訂正特許発明1乃至6は、周壁を有する水貯留用タンクであるから、請求人の主張は前提を欠き、理由がないものである。

2.また、被請求人は、本件訂正請求をするとともに、平成20年11月18日付け答弁書を提出して、概略以下のように反論している。
(1)本件訂正の訂正事項(a)について、各訂正箇所についての訂正の根拠は以下に示すとおりであるから、本件訂正は適法である。
(一)『タンクが階段状でない平らで垂直な周壁で囲まれている』点については、本件特許明細書の段落【0006】,【0015】,【0031】及び図面の【図1】の記載事項を訂正の根拠とする。
(二)『非透水性内張層が可変形性および弾力性を有するゴムシートである』点については、本件特許明細書の段落【0015】及び【0032】の記載事項を訂正の根拠とする。
(三)『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを固着することなく内張する』点については、本件特許明細書の段落【0015】及び【0024】の記載事項を訂正の根拠とする。
(四)『単位骨格部材は空間率の高い』点については、本件特許明細書の段落【0011】,【0012】,【0028】及び【0034】の記載事項を訂正の根拠とする。
(五)『非透水性内張層内に単位骨格部材を上下方向及び縦横方向に相互に連結する』点については、本件特許明細書の段落【0014】,【0016】及び【0035】の記載事項を訂正の根拠とする。
(六)『非透水性内張層内にタンク用空間の形状に対応した形状の空間保持骨格を構成する』点については、本件特許明細書の段落【0034】及び【0036】の記載事項を訂正の根拠とする。
(七)『開口部がタンクの上部であり、該開口部に非透水性内張層内に延びて内部に貯留してある水を汲み出すことのできる汲み出し手段を設けた』点については、旧請求項3を新請求項1に繰り上げたものである。
(2)本件訂正の訂正事項(b)について、『前記汲み出し手段が、上下に対応する位置の単位骨格部材に形成された孔を通じて立設されると共に下端開口部がタンクの内底部に対応するゴムシートの真上付近とし上端が前記開口部から若干立ち上がった高さ位置に設定されたパイプ体と、該パイプ体の上端に取り付けられたポンプ装置とを有する汲み出し装置からなることを特徴とする請求項1または2に記載の水貯留用タンク。』の点についての訂正の根拠は、本件特許明細書の段落【0023】の記載事項であるから、本件訂正は適法である。
(3)本件訂正の訂正事項(c)は、旧請求項4を削除し、旧請求項5,6を請求項4,5に繰り上げ、従属請求項を整理した形式上のものであるから、本件訂正は適法である。
(4)本件訂正の訂正事項(d)は、上記訂正事項(a)において請求項1を訂正したため、「課題を解決するための手段」の記載を請求項1と整合させるためのものであるから、本件訂正は適法である。
(5)本件訂正の訂正事項(e)は、本件特許明細書の段落【0013】の記載事項の削除であるから、本件訂正は適法である。
(6)本件訂正特許発明1乃至5は、甲第3乃至18号証に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第3.平成21年2月17日付け訂正拒絶理由通知の概要
本件訂正は、特許法第134条の2第5項の規定により準用する同法第126条第3項の規定に違反するので、不適法な訂正として認められない。その理由は概略以下のとおりである。
1.訂正事項(a)について
(1)まず、本件訂正特許発明1乃至5に関する訂正事項(a)の『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを固着することなく内張する』点は、被請求人が本件訂正を適法とする根拠として主張した本件特許明細書の段落【0015】及び【0024】やその他本件特許明細書等の全ての記載を参酌しても、本件特許明細書等に明示的に記載されていたものとはいえない。
また、本件特許明細書の段落【0024】の記載内容である『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを内張する』に接した当業者が、技術常識に照らしてこの記載内容の意味を理解したとしても『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを固着することなく内張する』と理解することが当然であるものともいえない。
したがって、上記『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを固着することなく内張する』点は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものとは認められない。
以上から、上記『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを固着することなく内張する』点は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものではない。

(2)次に、本件訂正特許発明1乃至5に関する訂正事項(a)の『タンクが階段状でない平らで垂直な周壁で囲まれている』点は、被請求人が本件訂正を適法とする根拠として主張した本件特許明細書の段落【0015】及び本件特許図面の【図1】やその他本件特許明細書等の全ての記載を参酌しても、本件特許明細書等に明示的に記載されていたものとはいえない。
また、当業者といえども明示の記載が無い限り、タンクの周壁を階段状でない平らで垂直な形状のものに限定するという技術的思想を当然の如く導き出すことができたものともいえない。
したがって、上記『タンクが階段状でない平らで垂直な周壁で囲まれている』点は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものとは認められない。
以上から、上記『タンクが階段状でない平らで垂直な周壁で囲まれている』点は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものではない。

2.訂正事項(b)について
訂正事項(b)は訂正事項(a)と不可分の関係にある。
したがって、訂正事項(b)は訂正事項(a)と同様に認めることができない。

3.訂正事項(c)について
訂正事項(c)は訂正事項(a)と不可分の関係にある。
したがって、訂正事項(c)は訂正事項(a)と同様に認めることができない。

4.訂正事項(d)について
訂正事項(d)は、本件特許の特許請求の範囲に関する訂正事項(a)に応じて発明の詳細な説明の記載を整合させるためのものある。
したがって、訂正事項(d)は訂正事項(a)と同様に認めることができない。

5.訂正事項(e)について
訂正事項(e)は、本件特許明細書中の段落【0013】を削除するものであり、この訂正事項(e)自体は訂正の要件を満たしている。


第4.平成21年3月24日付け意見書の概要
被請求人は、上記訂正拒絶理由通知に対して、平成21年3月24日付け意見書において、概略以下のように反論している。

1.訂正事項(a)について
(1)本件特許明細書の段落【0031】には本件発明の効果として「地震等でタンクの周壁等を構成するコンクリート等に破損が生じても可変形性の非透水性内張層が容易に破損を生ぜず、水密性を保持し、かつ空間保持骨格が内部のタンク用空間を保持する。したがって地震等の際にも内部の水を確実に保持し続けることができる」点が記載されており、この効果を奏することができるのは、周壁等を構成するコンクリート等に破損が生じてもゴムシートはタンクの内底部及び内周側に固着されて一体とならずに配設され内張されているからである。
したがって、発明の効果との因果関係上、当然に『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを固着することなく内張する』点が理解される。
(2)本件特許明細書の段落【0021】,【0018】及び本件特許図面の【図1】の記載から、ゴムシートは、下から上に向かって順次に積み上げられる籠状部材とタンクの内周側との間に挟まれ、且つ籠状部材でタンクの内周側へ押し付けられて内張される点が明らかであり、このためゴムシートをタンクの内周側に対して固着する必要がない。
(3)『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを固着することなく内張する』構成は、例えば甲第11号証,甲第14号証,甲第15号証等にみられるように自明な技術であり、本件発明においても上記構成が用いられている。
(4-1)本件特許明細書の段落【0018】,【0021】等の記載から、本件発明は、タンクの内底部および内周側に配したゴムシートの内側の空間に、その空間が一杯になるまで充填される籠状部材は、内底部に対応する部位の全体にわたって敷き詰め、次に下から上へと積み上げられるものあり、このことは、タンクの内周側が内底部から垂直に立ち上がっていることを示している。
(4-2)上記訂正拒絶理由通知では、『タンクの内周側は、水平面に対してほぼ鉛直な壁面を含むものといえる』とし、「可変形性かつ弾力性のある薄い形状のゴムシートが重力に逆らって鉛直方向に単独で自立するものとは考え難い」と認定しているが、タンクの前後の壁が階段状であればゴムシートは自立可能ということができる。そうであれば、タンクの内周側の壁面を、一方では階段状の可能性を否定しておきながら、他方では階段状の可能性を認める認定をしており、それぞれの主張が食い違っている。
(4-3)既存の地下埋設型の防火タンクの典型的な形状は『タンクの内周側の壁面が階段状でない平らで垂直な形状』であり、階段状の周壁を有する地下埋設型の防火タンクは見かけたことがなく、本件発明はこの典型的な形状を採用したものである。

2.訂正事項(b)について
前述のように訂正事項(a)は適法であるから、訂正事項(b)も適法である。

3.訂正事項(c)について
前述のように訂正事項(a)は適法であるから、訂正事項(c)も適法である。

4.訂正事項(d)について
前述のように訂正事項(a)は適法であるから、訂正事項(d)も適法である。


第5.本件訂正の適否についての当審の判断
第5-1.本件訂正の内容
本件訂正の内容は、平成20年5月19日付け訂正請求書及びこれに添付された訂正明細書の記載内容から以下のとおりである。
1.訂正事項(a)
本件特許明細書における特許請求の範囲の請求項1に記載された
「一部に開口部を有するタンク用空間の少なくとも内底部及び内周側に可変形性の非透水性内張層を構成し、かつ該非透水性内張層内に複数の単位骨格部材を充填して空間保持骨格を構成した水貯留用タンク。」を
「一部に開口部を有しタンクの階段状でない平らで垂直な周壁で囲まれたタンクのタンク用空間を形成する少なくとも内底部及び内周側に可変形性および弾力性を有するゴムシートを固着することなく内張して非透水性内張層を構成し、かつ該非透水性内張層内に空間率の高い複数の単位骨格部材を上下方向及び縦横方向に相互に連結して前記非透水性内張層内にタンク用空間の形状に対応した形状の空間保持骨格を構成し、
前記開口部が前記タンクの上部であり、該開口部に非透水性内張層内に延びて内部に貯留してある水を汲み出すことのできる汲み出し手段を設けてなることを特徴とする水貯留用タンク。」とする訂正。

2.訂正事項(b)
本件特許明細書における特許請求の範囲の請求項3に記載された
「前記タンク用空間の開口部に、その非透水性内張層内に延びる汲み出し手段であって、該非透水性内張層内に貯留してある水を汲み出すための汲み出し手段を設置した請求項1の水貯留用タンク。」を
「前記汲み出し手段が、上下に対応する位置の単位骨格部材に形成された孔を通じて立設されると共に下端開口部がタンクの内底部に対応するゴムシートの真上付近とし上端が前記開口部から若干立ち上がった高さ位置に設定されたパイプ体と、該パイプ体の上端に取り付けられたポンプ装置とを有する汲み出し装置からなることを特徴とする請求項1または2に記載の水貯留用タンク。」とする訂正。

3.訂正事項(c)
本件特許明細書における特許請求の範囲の請求項4を削除し、これに伴って請求項5,請求項6をそれぞれ請求項4,請求項5と繰り上げ、請求項4,5が従属する「請求項1、2、3又は4」を「請求項1、2又は3」と整理する訂正。

4.訂正事項(d)
本件特許明細書中の段落【0005】に記載された
「本発明は、一部に開口部を有するタンク用空間の少なくとも内底部及び内周側
に可変形性の非透水性内張層を構成し、かつ該非透水性内張層内に複数の単位骨
格部材を充填して空間保持骨格を構成した水貯留用タンクである。」を
「本発明は、一部に開口部を有しタンクの階段状でない平らで垂直な周壁で囲まれたタンクのタンク用空間を形成する少なくとも内底部及び内周側に可変形性および弾力性を有するゴムシートを固着することなく内張して非透水性内張層を構成し、かつ該非透水性内張層内に空間率の高い複数の単位骨格部材を上下方向及び縦横方向に相互に連結して前記非透水性内張層内にタンク用空間の形状に対応した形状の空間保持骨格を構成し、
前記開口部が前記タンクの上部であり、該開口部に非透水性内張層内に延びて内部に貯留してある水を汲み出すことのできる汲み出し手段を設けてなることを特徴とする水貯留用タンクである。」とする訂正。

5.訂正事項(e)
本件特許明細書中の段落【0013】を削除する訂正。

第5-2.訂正の目的制限の要件(特許法第134条の2第1項ただし書)
1.訂正事項(a)
平成20年5月19日付けの訂正請求書(以下単に「訂正請求書」という。)の「3.訂正事項」の「(a)」の「…、特許請求の範囲の減縮を目的として、…」(3頁参照)という記載から判断するに、被請求人は訂正事項(a)は特許請求の範囲の減縮(特許法第134条の2第1項ただし書第1号)を目的とするものであると主張している。
この点、請求項1に記載された
「一部に開口部を有するタンク用空間の少なくとも内底部及び内周側に可変形性の非透水性内張層を構成し、かつ該非透水性内張層内に複数の単位骨格部材を充填して空間保持骨格を構成した水貯留用タンク。」は、「水貯留用タンク」に関してこれより下位概念である
「一部に開口部を有しタンクの階段状でない平らで垂直な周壁で囲まれたタンクのタンク用空間を形成する少なくとも内底部及び内周側に可変形性および弾力性を有するゴムシートを固着することなく内張して非透水性内張層を構成し、かつ該非透水性内張層内に空間率の高い複数の単位骨格部材を上下方向及び縦横方向に相互に連結して前記非透水性内張層内にタンク用空間の形状に対応した形状の空間保持骨格を構成し、
前記開口部が前記タンクの上部であり、該開口部に非透水性内張層内に延びて内部に貯留してある水を汲み出すことのできる汲み出し手段を設けてなることを特徴とする水貯留用タンク。」とされているといえ、これは特許請求の範囲の減縮に該当する。
よって、訂正事項(a)は特許請求の範囲の減縮(特許法第134条の2第1項ただし書第1号)を目的とするものと認められる。

2.訂正事項(b)
訂正請求書の「3.訂正事項」の「(b)」の「…、特許請求の範囲の減縮を目的として、…」(3頁参照)という記載から判断するに、被請求人は訂正事項(b)は特許請求の範囲の減縮(特許法第134条の2第1項ただし書第1号)を目的とするものであると主張している。
この点、請求項3に記載された
「前記タンク用空間の開口部に、その非透水性内張層内に延びる汲み出し手段であって、該非透水性内張層内に貯留してある水を汲み出すための汲み出し手段を設置した請求項1の水貯留用タンク。」は、「水貯留用タンク」に関してこれより下位概念である
「前記汲み出し手段が、上下に対応する位置の単位骨格部材に形成された孔を通じて立設されると共に下端開口部がタンクの内底部に対応するゴムシートの真上付近とし上端が前記開口部から若干立ち上がった高さ位置に設定されたパイプ体と、該パイプ体の上端に取り付けられたポンプ装置とを有する汲み出し装置からなることを特徴とする請求項1または2に記載の水貯留用タンク。」されているといえ、これは特許請求の範囲の減縮に該当する。
よって、訂正事項(b)は特許請求の範囲の減縮(特許法第134条の2第1項ただし書第1号)を目的とするものと認められる。

3.訂正事項(c)
訂正事項(c)は本件特許明細書における特許請求の範囲の請求項4を削除し、これに伴って請求項5,請求項6をそれぞれ請求項4,請求項5と繰り上げ、請求項4,5が従属する「請求項1、2、3又は4」を「請求項1、2又は3」と整理するものであり、これは請求項1を訂正する訂正事項(a)に付随するものといえる。
よって、訂正事項(c)は訂正事項(a)と同じく特許請求の範囲の減縮(特許法第134条の2第1項ただし書第1号)を目的とするものと認められる。

4.訂正事項(d)
訂正請求書の「3.訂正事項」の「(d)」の「…、特許請求の範囲の減縮を目的として、…」(4頁参照)という記載から判断するに、被請求人は訂正事項(d)は特許請求の範囲の減縮(特許法第134条の2第1項ただし書第1号)を目的とするものであると主張している。
この点、本件特許明細書中の段落【0005】に記載された
「本発明は、一部に開口部を有するタンク用空間の少なくとも内底部及び内周側に可変形性の非透水性内張層を構成し、かつ該非透水性内張層内に複数の単位骨格部材を充填して空間保持骨格を構成した水貯留用タンクである。」を
「本発明は、一部に開口部を有しタンクの階段状でない平らで垂直な周壁で囲まれたタンクのタンク用空間を形成する少なくとも内底部及び内周側に可変形性および弾力性を有するゴムシートを固着することなく内張して非透水性内張層を構成し、かつ該非透水性内張層内に空間率の高い複数の単位骨格部材を上下方向及び縦横方向に相互に連結して前記非透水性内張層内にタンク用空間の形状に対応した形状の空間保持骨格を構成し、
前記開口部が前記タンクの上部であり、該開口部に非透水性内張層内に延びて内部に貯留してある水を汲み出すことのできる汲み出し手段を設けてなることを特徴とする水貯留用タンクである。」とする訂正は、請求項1の記載内容に対して発明の詳細な説明の記載内容を対応させるためのものであるから、訂正事項(a)に付随するものといえる。
よって、訂正事項(d)は訂正事項(a)と同じく特許請求の範囲の減縮(特許法第134条の2第1項ただし書第1号)を目的とするものと認められる。

5.訂正事項(e)
訂正事項(e)は本件特許明細書の段落【0013】の
「また単位骨格部材としては、場合により砂利のような小片部材を用いることもできる。この場合は、タンク用空間の内部形状がどのようなものであれ、自在に対応できるとともに、単に所要量を所定の部位に投入するだけで構成し得るので、極めて容易にかつ安価に構成し得るものである。」を削除するものであり、これは請求項1の「水貯留用タンク」を下位概念化する訂正事項(a)に基づくものであるから、訂正事項(a)に付随するものといえる。
よって、訂正事項(e)は訂正事項(a)と同じく特許請求の範囲の減縮(特許法第134条の2第1項ただし書第1号)を目的とするものと認められる。

6.訂正事項(a)乃至(e)についてのまとめ
以上から、本件訂正は訂正の目的制限の要件(特許法第134条の2第1項ただし書)を満たしている。


第5-3.新規事項の追加の禁止の要件(特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項)
1.訂正事項(a)について
(1)本件訂正特許発明1乃至5に関する訂正事項(a)が、本件特許の願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるかどうかについて検討する。
(2-1)まず、訂正事項(a)の「…タンクのタンク用空間を形成する少なくとも内底部及び内周側に可変形性および弾力性を有するゴムシートを固着することなく内張して非透水性内張層を構成し、…」には、『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを固着することなく内張する』点が包含されている。
(2-2)また、被請求人が本件訂正を適法とする根拠として主張した本件特許明細書の段落【0015】の記載は、「この例はタンク用空間として防火タンク1を利用したものである。既存の地下埋設型の防火タンク1の内底部1a及び内周側1bに沿って非透水性内張層としてゴムシート2を配設する。」であり、同記載から『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを配設する』点は読みとれるものの、単に「配設」としか記載されていないのであるから、ゴムシートの固着の有無については明示の記載がないものといえる。
また、被請求人が本件訂正を適法とする根拠として主張する本件特許明細書の段落【0024】の記載は、「以上のように、この水貯留用タンクは、防火タンク1の内底部1a及び内周側1bにゴムシート2を内張し、かつ該ゴムシート1内に籠状部材3、3…を組立てて空間保持骨格を構成したものである。また空間保持骨格を構成する単位骨格部材である籠状部材3、3…に孔をあけてパイプ体6をその内部に立設し、これにポンプ装置7を配して汲み出し装置を構成したものである。それ故、容易かつ簡易に水貯留用タンクを構成し得るものである。」であり、同記載から『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを内張する』点は読みとれるものの、単に「内張」としか記載されていないのであるから、ゴムシートの固着の有無についてはやはり明示の記載がないものといえる。
更に、本件特許明細書等のその他全ての記載を参酌しても、ゴムシートの固着の有無については明示の記載はされていない。
そうすると、本件特許明細書等にはゴムシートの固着の有無については明示の記載が一切されていないことになる。
したがって、少なくとも上記『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを固着することなく内張する』点は、本件特許明細書等に明示的に記載されていたものとは認められない。
(2-3)また、タンクの内周側は、少なくとも本件特許図面の【図1】の「1b」で示されているように、水平面に対してほぼ鉛直な壁面を含むものといえる。また、ゴムシートは、その名のとおりのシート形状であるからある程度薄い形状であるといえ、更に本件訂正後の請求項1に係る発明において特定されているように「可変形性および弾力性」を有するものであるから、このような可変形性かつ弾力性のある薄い形状のゴムシートが重力に逆らって鉛直方向に単独で自立するものとは考え難いところである。とすれば、ゴムシートが重力の影響等によってタンクの内周側から剥がれたり撓んだりすることを防止し、ゴムシートがタンクの内周側に内張された状態を維持するためには、タンクの内周側に対してゴムシートを内張するに際して、ゴムシートをタンクの内周側に対して何らかの手段を以て固着することが必要であるものと考えられ、このように考えることが技術常識に適うものといえる。
そうすると、本件特許明細書の段落【0024】の記載内容である『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを内張する』に接した当業者が、技術常識に照らしてこの記載内容の意味を理解するのであれば、『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを何らかの手段を以て固着して内張する』と理解することが自然であり、これに対して『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを固着することなく内張する』と理解することが当然であるものとはいえない。
したがって、上記『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを固着することなく内張する』点は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるとは認められない。
(2-4)以上から、上記『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを固着することなく内張する』点は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものではない。
(2-5)なお、被請求人は平成20年11月18日付け答弁書において、甲第3号証の特公平7-86239号公報の明細書段落【0010】及び【0021】を援用して、『非透水性内張層を固着することなく設ける』構成は自明である旨を主張している。
しかしながら、上記公報の明細書段落【0010】及び【0021】の記載からは『防水層1が地山地盤Gの全表面に被服敷設される』点は読みとれるものの、固着の有無に関しては読みとることができない。また、仮に上記公報の明細書等から『非透水性内張層を固着することなく設ける』構成を読みとることができたとしても、このことから直ちに、当業者が本件特許明細書等からも『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを固着することなく内張する』点を自明な事項であって記載されているも同然であると理解し得るものとは認められない。

(2-6)また、被請求人は平成21年3月24日付け意見書において、以下のように主張している。
<主張内容>
本件特許明細書の段落【0031】には本件発明の効果として「地震等でタンクの周壁等を構成するコンクリート等に破損が生じても可変形性の非透水性内張層が容易に破損を生ぜず、水密性を保持し、かつ空間保持骨格が内部のタンク用空間を保持する。したがって地震等の際にも内部の水を確実に保持し続けることができる」点が記載されており、この効果を奏することができるのは、周壁等を構成するコンクリート等に破損が生じてもゴムシートはタンクの内底部及び内周側に固着されて一体とならずに配設され内張されているからである。
したがって、発明の効果との因果関係上、当然に『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを固着することなく内張する』点が理解される。

この主張に対して、本件特許明細書の段落【0006】の「…かつ非透水性内張層が可変形性であって周壁が壊れてもこれに穴が開く等のことも容易に生じないので、…」という記載から明らかなように、「タンクの周壁等を構成するコンクリート等に破損が生じても可変形性の非透水性内張層が容易に破損を生」じないという本件発明の効果は、「非透水性内張層が可変形性である」という構成によって奏せられるものといえ、これに対して上記効果が『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを固着することなく内張する』という構成によって奏せられる旨の記載は、本件特許明細書等に記載されていない。
そうすると、本件発明の効果に接した当業者が、技術常識に照らして本件特許明細書等のすべての記載を総合した上で、この効果を奏するための発明の構成を理解するのであれば、「非透水性内張層が可変形性」であるという構成によって奏せられると理解することが自然であり、これに対して『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを固着することなく内張する』という構成によって奏せられるものと理解することが当然であるものとはいえない。
したがって、本件発明の効果との因果関係から当然に『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを固着することなく内張する』点が理解されるものとはいえない。

(2-7)また、被請求人は平成21年3月24日付け意見書において、以下のようにも主張している。
<主張内容>
本件特許明細書の段落【0021】,【0018】及び本件特許図面の【図1】の記載から、ゴムシートは、下から上に向かって順次に積み上げられる籠状部材とタンクの内周側との間に挟まれ、且つ籠状部材でタンクの内周側へ押し付けられて内張される点が明らかであり、このためゴムシートをタンクの内周側に対して固着する必要がない。

この主張に対して、確かに本件特許明細書の段落【0021】には「防火タンク1の内底部1a及び内周側1bに配したゴムシート2の内側の空間には、その空間が一杯になるまで、籠状部材3、3…相互を結合しつつ積み上げて、空間保持骨格を構成する。」と記載されており、この状況下においては籠状部材が空間を一杯に占めることの反射的結果として、タンクの内周側,ゴムシート,籠状部材の三者が外側からこの順で近接配置されるものといえる。しかしながら、三者がこのような配置関係にあることが必ずしもゴムシートが籠状部材でタンクの内周側へ押し付けられているという技術的事項を意味するものとはいえない。すなわち、三者が押し付けられるためには三者を積極的に押し付けるための力の発生が必要であり、しかもこの力はゴムシートのタンクの内周側に対する固着を不要にするまでのものでなければならないところ、単にタンクの内周側,ゴムシート,籠状部材の三者が外側からこの順で近接配置されているだけでは三者に対してこのような力が発生しているのかどうかは明らかではなく、また仮に力が発生していたとしてもこの力がゴムシートのタンクの内周側に対する固着を不要にするまでのものであるかどうかは明らかではない。そうであるならば、必ずしもゴムシートが籠状部材でタンクの内周側へ押し付けられているものとはいえない以上、ゴムシートをタンクの内周側に対して固着する必要性がないものともいえない。
また、籠状部材がゴムシート2の内側の空間が一杯になるまで積み上げられて空間保持骨格を構成する目的は、本件特許明細書の段落【0006】の「…強大な地震等によってその周壁に破損が生じた場合であっても、単位骨格部材が完全に壊れて潰れてしまうことまではないので、これによって構成される空間保持骨格で水の保管空間が保持され、…」という記載から明らかなように、水の保管空間を保持するためであるといえ、これに対して、籠状部材がゴムシート2の内側の空間が一杯になるまで積み上げられて空間保持骨格を構成する目的が、ゴムシートを籠状部材でタンクの内周側へ押し付けることである旨の記載は、本件特許明細書等に記載されていない。
そうすると、本件特許明細書の段落【0021】の記載に接した当業者が、技術常識に照らして本件特許明細書等のすべての記載を総合した上で、籠状部材がゴムシート2の内側の空間が一杯になるまで積み上げられて空間保持骨格を構成する目的を理解するのであれば、水の保管空間を保持するためであると理解することが自然であり、これに対してゴムシートを籠状部材でタンクの内周側へ押し付けるためであると理解することが当然であるものとはいえない。
したがって、本件特許明細書等の記載から当然に『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを固着することなく内張する』点が理解されるものとまではいえない。

(2-8)また、被請求人は平成21年3月24日付け意見書において、以下のようにも主張している。
<主張内容>
『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを固着することなく内張する』構成は、例えば甲第11号証,甲第14号証,甲第15号証等にみられるように自明な技術であり、本件発明においても上記構成が用いられている。

この主張に対して、上記甲第11号証,甲第14号証,甲第15号証の記載からは、タンクの内底部及び内周側とゴムシートの固着の有無に関しては読みとることができない。
また、仮に上記甲第11号証,甲第14号証,甲第15号証から『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを固着することなく内張する』構成を読みとることができたとしても、このことから直ちに、当業者が本件特許明細書等からも『タンクの内底部及び内周側にゴムシートを固着することなく内張する』点を自明な事項であって記載されているも同然であると理解し得るものとは認められない。

(3-1)次に、訂正事項(a)の「…タンクの階段状でない平らで垂直な周壁で囲まれたタンクのタンク用空間…」には、『タンクが階段状でない平らで垂直な周壁で囲まれている』点が包含されている。
(3-2)また、被請求人が本件訂正を適法とする根拠として主張した本件特許明細書の段落【0015】には、タンクの周壁が階段状でない平らで垂直な形状である点についての明示の記載はない。
また、被請求人が本件訂正を適法とする根拠として主張する本件特許図面の【図1】にはタンクの断面図が記載されており、「防火タンク1」の両側の壁として示されている「内周側1b」はおよそ垂直に見えるように描かれてはいる。しかしながら、本件特許図面の【図1】はあくまで断面図であるから、タンクの前後の壁が、階段状でない平らで垂直な形状をしているのかどうかについては不明であるから、本件特許図面の【図1】からは、タンクの周壁を階段状でない平らで垂直な形状のものに限定するという技術的思想を窺い知ることはできない。
更に、本件特許明細書等のその他全ての記載を参酌しても、タンクの周壁が階段状でない平らで垂直な形状である点についての明示の記載はされていない。
したがって、少なくとも上記『タンクが階段状でない平らで垂直な周壁で囲まれている』点は、本件特許明細書等に明示的に記載されていたものとは認められない。
(3-3)また、一般にタンクの周壁の形状としては様々な形状(例えば曲面形状)やこれらを組み合わせたものが存在することから、当業者といえども明示の記載がない限り、タンクの周壁を階段状でない平らで垂直な形状のものに限定するという技術的思想を当然の如く導き出すことができるものとはいえない。
したがって、上記『タンクが階段状でない平らで垂直な周壁で囲まれている』点は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるとは認められない。
(3-4)以上から、上記『タンクが階段状でない平らで垂直な周壁で囲まれている』点は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものではない。
(3-5)なお、被請求人は平成21年3月24日付け意見書において、以下のように主張している。
<主張内容>
本件特許明細書の段落【0018】,【0021】等の記載から、本件発明は、タンクの内底部および内周側に配したゴムシートの内側の空間に、その空間が一杯になるまで充填される籠状部材は、内底部に対応する部位の全体にわたって敷き詰め、次に下から上へと積み上げられるものあり、このことは、タンクの内周側が内底部から垂直に立ち上がっていることを示している。

この主張に対して、タンクの周壁の形状が階段状であったとしても、一般的な階段状とは水平面と垂直面が交互に並ぶ形状であり、水平面は内底部と,垂直面は内周側とそれぞれ把握すれば、仮に、本件特許明細書等の記載から、タンクの内周側が内底部から垂直に立ち上がっていることを導き出せたとしても、このことはタンクの周壁の形状が階段状であることと何ら矛盾することはない。
また、仮に、本件特許明細書等の記載から、タンクの内周側が内底部から垂直に立ち上がっていることを導き出せたとしても、周壁が平らな形状である点は導き出せていない。すなわち水平面に対して垂直な曲面形状の周壁も想定できる以上、内周側が内底部から垂直に立ち上がっているという事実から周壁が平らな形状であるという事実を当然に導き出し得るものではない。
したがって、本件特許明細書等の記載から当然に『タンクが階段状でない平らで垂直な周壁で囲まれている』点が理解されるものとはいえない。
(3-6)また、被請求人は平成21年3月24日付け意見書において、以下のようにも主張している。
<主張内容>
上記訂正拒絶理由通知では、『タンクの内周側は、水平面に対してほぼ鉛直な壁面を含むものといえる』とし、「可変形性かつ弾力性のある薄い形状のゴムシートが重力に逆らって鉛直方向に単独で自立するものとは考え難い」と認定しているが、タンクの前後の壁が階段状であればゴムシートは自立可能ということができる。そうであれば、タンクの内周側の壁面を、一方では階段状の可能性を否定しておきながら、他方では階段状の可能性を認める認定をしており、それぞれの主張が食い違っている。

この主張に対して、本件特許明細書等には、タンクの周壁の形状について階段状であるとも階段状でないとも記載されていないのであるから、両者共に記載されていないものといえ、このことはどちらか一方に特定することはできないことを意味している。
また、タンクの前後の壁が階段状であってもやはり垂直面自体は存在するのであるから必ずしもゴムシートが自立可能であるということはできない。そうであるならば、上記訂正拒絶理由通知においてタンクの内周側の壁面について階段状の可能性を否定したことにはならない。
したがって、上記訂正拒絶理由通知における認定に誤りはない。

(3-7)また、被請求人は平成21年3月24日付け意見書において、以下のように主張している。
<主張内容>
既存の地下埋設型の防火タンクの典型的な形状は『タンクの内周側の壁面が階段状でない平らで垂直な形状』であり、階段状の周壁を有する地下埋設型の防火タンクは見かけたことがなく、本件発明はこの典型的な形状を採用したものである。

この主張に対して、『タンクが階段状でない平らで垂直な周壁で囲まれている』という訂正は特許請求の範囲の請求項1において行われているが、請求項1の「水貯留用タンク」は「既存の」とも「地下埋設型の」とも「防火タンク」とも限定されていないことから、この訂正における「タンク」には「既存の地下埋設型の防火タンク」以外の「水貯留用タンク」全般も含まれているといえる。よって、仮に既存の地下埋設型の防火タンクの典型的な形状が『タンクの内周側の壁面が階段状でない平らで垂直な形状』であったとしても、それは「既存の地下埋設型の防火タンク」以外の「水貯留用タンク」全般の場合にも当てはまるものとはいえない。
また、仮に、既存の地下埋設型の防火タンクの典型的な形状が『タンクの内周側の壁面が階段状でない平らで垂直な形状』であったとしても、このことから直ちに、本件特許明細書等において『タンクの内周側の壁面が階段状でない平らで垂直な形状』である点が記載されていたものとは認められない。
更に、例えば、実願昭52-116947号(実開昭54-42116号)のマイクロフィルム(主に明細書1頁14行?2頁2行参照。)には『タンクの内周側の壁面が階段状でない円弧状(円筒状)の形状』である点が記載されていることから考えて、地下埋設型の防火タンクの形状は『タンクの内周側の壁面が階段状でない平らで垂直な形状』に限られたものとはいえない。
したがって、本件特許明細書等において『タンクが階段状でない平らで垂直な周壁で囲まれている』点が理解されるものとはいえない。

(4)したがって、訂正事項(a)は、新規事項の追加の禁止の要件(特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項)に違反する。

2.訂正事項(b)について
本件訂正後の請求項3乃至5に係る発明に関する訂正事項(b)の「前記汲み出し手段が、…」という部分が訂正事項(a)の「汲み出し手段」を引用していることから明らかなように、訂正事項(b)は訂正事項(a)の内容に依存しているため、両者は不可分の関係にあるものといえる。
したがって、訂正事項(b)は、訂正事項(a)と同様に、新規事項の追加の禁止の要件(特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項)に違反する。

3.訂正事項(c)について
訂正事項(a)は本件訂正前の請求項1に請求項4の内容を包含させる要素を含むものである。そして、本件訂正後の請求項4,5に係る発明に関する訂正事項(c)は、訂正事項(a)が認められることを前提にして、本件訂正後の請求項1に本件訂正前の請求項4の内容が包含されるので、これと重複する請求項4を削除するものといえる。よって、訂正事項(c)は訂正事項(a)と不可分の関係にあるものといえる。
したがって、訂正事項(c)は、訂正事項(a)と同様に、新規事項の追加の禁止の要件(特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項)に違反する。

4.訂正事項(d)について
訂正事項(d)は、本件特許の特許請求の範囲に関する訂正事項(a)に応じて発明の詳細な説明の記載を整合させるためのものある。
したがって、訂正事項(d)は、訂正事項(a)と同様に、新規事項の追加の禁止の要件(特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項)に違反する。

5.訂正事項(e)について
訂正事項(e)は、本件特許明細書中の段落【0013】を削除するものであり、この訂正事項(e)自体は新規事項の追加の禁止の要件(特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項)を満たす。

6.訂正事項(a)乃至(e)についてのまとめ
以上から、本件訂正の請求項1乃至5に係る発明に関する訂正事項(a)乃至(c)及び明細書に関する訂正事項(d)は、新規事項の追加の禁止の要件(特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項)に違反するので、不適法な訂正として認められない。


第5-4.特許請求の範囲の実質的拡張・変更禁止の要件(特許法第134条の2第5項で準用する第126条第4項)
本件訂正は上記「第5-3.」で検討したとおり新規事項の追加の禁止の要件(特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項)に違反することが明らかであるから、 特許請求の範囲の実質的拡張・変更禁止の要件(特許法第134条の2第5項で準用する第126条第4項)についての判断を要することなく、不適法な訂正として認められない。


第5-5.本件訂正の適否についてのむすび
以上から、本件訂正は、特許法第134条の2第5項の規定により準用する同法第126条第3項の規定に違反するので、不適法な訂正として認められない。


第6.無効理由の有無についての当審の判断
上記「第5.本件訂正の適否についての当審の判断」で検討したとおり、本件訂正は不適法な訂正として認められない。
したがって、本件特許に係る発明は本件訂正前の本件特許発明1乃至6である。
まず、無効理由I-2(上記「第2.」の「第2-1.」の(1-2)参照)について、本件特許に係る発明が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるか否かについて、以下において検討する。


第6-1.無効理由I-2について
1.本件特許に係る発明の認定
本件特許に係る発明である本件特許発明1乃至6は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至6の記載からみて以下のとおりである。

「【請求項1】一部に開口部を有するタンク用空間の少なくとも内底部及び内周側に可変形性の非透水性内張層を構成し、かつ該非透水性内張層内に複数の単位骨格部材を充填して空間保持骨格を構成した水貯留用タンク。
【請求項2】前記タンク用空間として、既存の防火タンクを利用した請求項1の水貯留用タンク。
【請求項3】前記タンク用空間の開口部に、その非透水性内張層内に延びる汲み出し手段であって、該非透水性内張層内に貯留してある水を汲み出すための汲み出し手段を設置した請求項1の水貯留用タンク。
【請求項4】前記非透水性内張層を、前記タンク用空間の内底部及び内周側にゴムシートを内張することにより構成した請求項1、2又は3の水貯留用タンク。
【請求項5】前記単位骨格部材として籠状部材を構成し、前記タンク用空間の非透水性内張層の内側の空間内に、複数の前記籠状部材を上下方向及び縦横方向に連設配置して空間保持骨格を構成した請求項1、2、3又は4の水貯留用タンク。
【請求項6】前記単位骨格部材として四辺形枠体を用いることとし、前記タンク用空間の非透水性内張層の内側の空間内に、複数の前記四辺形枠体を上下方向及び縦横方向に連結して空間保持骨格を構成した請求項1、2、3又は4の水貯留用タンク。」

2.甲第11号証に記載の発明
本件出願前公知の刊行物である甲第11号証〔特開平6-49890号公報〕には、以下の(ア)乃至(エ)の事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】雨水の貯留部の壁面に、破壊を生じない深さで階段状に掘削した段切り部を形成し、この段切り部の底面及び壁面に複数のプラスチック製のハニカムブロックを、前記段切り部の壁面形状に対応させて積層させ、埋設材料を介して雨水集水管または雨水集水管及び排水管を設置し、その上部を埋め戻し材料により埋め戻したことを特徴とする地下貯留浸透施設の構造。」
(イ)「【0009】前記貯留部4の壁面4aには、破壊を生じない深さ、即ち、貯留部4の壁面4aの土砂が崩壊しない程度の深さで、階段状に掘削した段切り部8が形成してあり、そしてこの段切り部8には、図示しないセメントモルタルを吹き付けて側壁の崩壊を防止している。この段切り部8の底面及び壁面には、透水性または遮水性のシート10を敷設してある。即ち、雨水Wを貯留する場合には遮水性のシート10を敷設し、地中6に浸透させる場合には透水性のシート10を張り付けて敷設するものである。」
(ウ)「【0012】また、上記の透水性のシート10としては、ポリエステル,ナイロン,テトロン等を素材として織布,不織布で構成したものを使用し、また遮水性おシートとしては、ゴム,塩化ビニル,ポリエチレン等を素材としてシート状の物を使用するものである。
上記の雨水浸透施設の場合は、貯留部4に貯留した雨水Wは、貯水部4の底面6から地中7に順次浸透し、また雨水貯留施設とした場合には、上述したように貯留した雨水Wを、排水管16を介して雨水処理手段(例えば、下水道)により排水処理されるように構成するものである。」
(エ)図面の【図1】から『ハニカムブロック12が遮水性のシート11内に積層されている』点が読みとれる。

(1)上記(イ)の「前記貯留部4の壁面4aには、破壊を生じない深さ、即ち、貯留部4の壁面4aの土砂が崩壊しない程度の深さで、階段状に掘削した段切り部8が形成してあり、そしてこの段切り部8には、図示しないセメントモルタルを吹き付けて側壁の崩壊を防止している。…」という記載から、甲第11号証の請求項1に記載の発明における「段切り部」は『セメントモルタルを吹き付けて形成されている』ものといえる。
(2)上記(イ)の「…この段切り部8の底面及び壁面には、透水性または遮水性のシート10を敷設してある。即ち、雨水Wを貯留する場合には遮水性のシート10を敷設し、地中6に浸透させる場合には透水性のシート10を張り付けて敷設するものである。」という記載から、甲第11号証の請求項1に記載の発明は『段切り部の底面及び壁面には、遮水性のシートを敷設してある』ものといえる。
(3)上記(ウ)の「…、また遮水性おシートとしては、ゴム,塩化ビニル,ポリエチレン等を素材としてシート状の物を使用するものである。…」(当審註:上記「遮水性おシート」は『遮水性シート』の誤記と認定した。)という記載から、甲第11号証に記載の発明において、「遮水性シート」は『ゴムを素材としたシート状』であるといえる。
(4)上記(ウ)の「…また雨水貯留施設とした場合には、上述したように貯留した雨水Wを、排水管16を介して雨水処理手段(例えば、下水道)により排水処理されるように構成するものである。」という記載から、甲第11号証の請求項1に記載の発明における「雨水集水管及び排水管」は『貯留部に貯留された雨水を集水及び排水するためのもの』であるといえる。

以上から、甲第11号証には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

『雨水の貯留部の壁面に、破壊を生じない深さで階段状に掘削しセメントモルタルを吹き付けて形成される段切り部を形成し、
段切り部の底面及び壁面にはゴムを素材としたシート状の遮水性のシートを敷設し、
段切り部の底面及び壁面の遮水性のシート内に複数のプラスチック製のハニカムブロックを、段切り部の壁面形状に対応させて積層させ、
埋設材料を介して貯留部に貯留された雨水を集水及び排水するための雨水集水管及び排水管を設置し、
その上部を埋め戻し材料により埋め戻した、地下貯留浸透施設の構造。』

3.本件特許発明1について
3-1.対比
(1)まず、引用発明の「段切り部の底面及び壁面」、「ゴムを素材としたシート状の遮水性のシート」、「敷設し」、「プラスチック製のハニカムブロック」、「積層させ」は、それぞれ、本件特許発明1の「内底部及び内周側」、「可変形性の非透水性内張層」、「構成し」、「単位骨格部材」、「充填し」に相当する。
(2)また、引用発明の「貯留部」を具備した「地下貯留浸透施設」は、その「壁面に、破壊を生じない深さで階段状に掘削しセメントモルタルを吹き付けて形成される段切り部を形成し、段切り部の底面及び壁面にはゴムを素材としたシート状の遮水性のシートを敷設」される空間を具備した、水貯留用構造物である(なお、「雨水」は「水」の一種であるといえる。)。これに対して本件特許発明1の「タンク用空間」を具備した「水貯留用タンク」は、「その少なくとも内底部及び内周側に可変形性の非透水性内張層を構成」される「空間」を具備した水貯留用構造物である。
よって、引用発明の「貯留部」を具備した「地下貯留浸透施設」と本件特許発明1の「タンク用空間」を具備した「水貯留用タンク」は、その少なくとも内底部及び内周側に可変形性の非透水性内張層を構成された空間を具備した水貯留用構造物である点で共通する。
(3)また、引用発明は「貯留部に貯留された雨水を集水及び排水するための雨水集水管及び排水管を設置し」ており、引用発明の「排水管」は「貯留部に貯留された雨水を」「排水するため」に貯留部の一部に設けられた開口部であるといえる。
よって、引用発明の「排水管」は、本件特許発明1の「開口部」に相当する。
(4)また、引用発明の「複数のプラスチック製のハニカムブロック」は「段切り部の壁面形状に対応させて積層」されるものであるから、複数のプラスチック製のハニカムブロックの積層体を有するものといえる。
よって、引用発明の「複数のプラスチック製のハニカムブロック」は、本件特許発明1の「空間保持骨格」に相当する。

したがって、本件特許発明1と引用発明は、以下の点で一致し、その他の点で相違するものと認められる。

《一致点》
「一部に開口部を有する空間の少なくとも内底部及び内周側に可変形性の非透水性内張層を構成し、かつ該非透水性内張層内に複数の単位骨格部材を充填して空間保持骨格を構成した水貯留用構造物。」

《相違点1》
その少なくとも内底部及び内周側に可変形性の非透水性内張層を構成される空間を具備した水貯留用構造物が、本件特許発明1では「タンク用空間」を具備した「水貯留用タンク」であるのに対して、引用発明では「貯留部」を具備した「地下貯留浸透施設」である点。

3-2.判断
(1)『その内底部及び内周側に可変形性の非透水性内張層を構成されるものであり、水を貯留するための地下構造物を、タンク用空間を具備した水貯留用タンクとする』点は、以下に示すように水貯留用の地下構造物の技術分野において周知技術である(以下「周知技術1」という。)。
例えば、第1次審決において引用した実願昭52-116947号(実開昭54-42116号)のマイクロフィルム(主に明細書1頁14行?2頁16行,4頁19行?5頁1行,6頁7?8行,第2,3,5図参照。)には『コンクリート製の円弧板のセグメント1を組み立てた地下に設置される円筒状の貯水槽において、その内底部及び内周側に、水密性に優れた例えば塩化ビニール製の内袋18を構成される』点が記載されている。ここで、上記「コンクリート製の円弧板のセグメント1を組み立てた地下に設置される円筒状の貯水槽」は「水を貯留するための地下構造物」であり、これは「タンク用空間」を具備した「水貯留用タンク」であるといえる。また、上記「水密性に優れた例えば塩化ビニール製の内袋18」は「可変形性の非透水性内張層」である。
また、第1次審決において引用した実願平3-107489号(実開平5-54389号)のCD-ROM(主に明細書段落【0006】,【0007】,【0009】及び図面【図1】参照。)には『予め地下にコンクリート層4からなるタンク3を構築しておき、タンク3のコンクリート層4の内壁面に、厚さ1?2mmの伸縮可能な熱溶着タイプ(サーモプラスチック,サーモプラスチックラバー等)の袋状に形成したシート6を敷設する』点が記載されている。ここで、上記「予め地下にコンクリート層4からなるタンク3」は「水を貯留するための地下構造物」であり、これは「タンク用空間」を具備した「水貯留用タンク」であるといえる。また、上記「厚さ1?2mmの伸縮可能な熱溶着タイプ(サーモプラスチック,サーモプラスチックラバー等)の袋状に形成したシート6」は「可変形性の非透水性内張層」である。
(2)また、引用発明は水貯留用の地下構造物の技術分野に属する発明であるといえるので、上記周知技術1と同一の技術分野に属している。また、引用発明の「貯留部」を具備した「地下貯留浸透施設」と上記周知技術1の「タンク用空間」を具備した「水貯留用タンク」とは、共に水貯留用の地下構造物である点で共通しているので、相互に代替性があるものといえる。また、当業者が相互に代替性がある手段を置き換えることに格別の困難性があるものとはいえない。
(3)よって、引用発明に上記周知技術1を適用して、「貯留部」を具備した「地下貯留浸透施設」を「タンク用空間」を具備した「水貯留用タンク」に置き換えることは、当業者において容易に想到し得るものと認められる。
(4)そして、本件特許発明1の奏する効果も引用発明及び周知技術1から当業者が容易に予測し得る範囲内のものにすぎない。

3-3.むすび
以上のとおり、本件特許発明1は、引用発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


4.本件特許発明2について
4-1.対比
本件特許発明2と引用発明とを対比するにあたって、本件特許発明2と本件特許発明1との関係、及び上記「3.」の「3-1.対比」において本件特許発明1と引用発明とを対比した事項を踏まえると、本件特許発明2と引用発明は、以下の点(「相違点2」という。)で相違し、その余の点で一致しているものと認められる。

《相違点2》
その少なくとも内底部及び内周側に可変形性の非透水性内張層を構成される空間を具備した水貯留用構造物が、本件特許発明2では「既存の防火タンクを利用した」「タンク用空間」を具備した「水貯留用タンク」であるのに対して、引用発明は、その「壁面に、破壊を生じない深さで階段状に掘削しセメントモルタルを吹き付けて形成される段切り部を形成し、段切り部の底面及び壁面にはゴムを素材としたシート状の遮水性のシートを敷設」されるものであり、雨水を貯留するための「貯留部」を具備した「地下貯留浸透施設」である点。

4-2.判断
(1)『その内底部及び内周側に可変形性の非透水性内張層を構成されるものであり、水を貯留するための地下構造物を、既存のタンクを利用したタンク用空間を具備した水貯留用タンクとする』点は、以下に示すように水貯留用の地下構造物の技術分野において周知技術である(以下「周知技術2」という。)。
例えば、第1次審決において引用した実願昭52-116947号(実開昭54-42116号)のマイクロフィルム(主に明細書1頁14行?2頁16行,4頁19行?5頁1行,6頁7?8行,第2,3,5図参照。)には『コンクリート製の円弧板のセグメント1を組み立てた地下に設置される円筒状の貯水槽において、その内底部及び内周側に、水密性に優れた例えば塩化ビニール製の内袋18を構成される』点が記載されている。ここで、上記「コンクリート製の円弧板のセグメント1を組み立てた地下に設置される円筒状の貯水槽」は「水を貯留するための地下構造物」であり、これは「タンク用空間」を具備した「水貯留用タンク」であるといえる。また、上記「水密性に優れた例えば塩化ビニール製の内袋18」は「可変形性の非透水性内張層」である。
また、上記明細書1頁14行?2頁16行には、「最近、地震や火災に備え主として地下に建設される貯水槽がある。この貯水槽として…円弧板のセグメントを建設現場に運搬して組立て、主として地下に所望の円筒状の貯水槽を得るようにしたものがある。然るにこの種の貯水槽は…例えば地震や経年変化等により貯水槽の接合面以外にクラックが生じ、そこから水が漏れてしまう恐れがある。このため上記水槽の内側に水密性に優れた袋を取り付けることが要望されており、…」との記載がある。この記載から、上記「コンクリート製の円弧板のセグメント1を組み立てた地下に設置される円筒状の貯水槽」は、貯水槽の内側に水密性に優れた袋を取り付ける以前から利用されていたものであるといえ、すなわち既存のものであるといえる。
また、第1次審決において引用した実願平3-107489号(実開平5-54389号)のCD-ROM(主に明細書段落【0006】,【0007】,【0009】及び図面【図1】参照。)には『予め地下にコンクリート層4からなるタンク3を構築しておき、タンク3のコンクリート層4の内壁面に、厚さ1?2mmの伸縮可能な熱溶着タイプ(サーモプラスチック,サーモプラスチックラバー等)の袋状に形成したシート6を敷設する』点が記載されている。ここで、上記「予め地下にコンクリート層4からなるタンク3」は「水を貯留するための地下構造物」であり、これは「タンク用空間」を具備した「水貯留用タンク」であるといえる。また、上記「厚さ1?2mmの伸縮可能な熱溶着タイプ(サーモプラスチック,サーモプラスチックラバー等)の袋状に形成したシート6」は「可変形性の非透水性内張層」である。
また、上記明細書段落【0002】には「従来、コンクリート層から成るタンクを地下に埋設して成る地下タンクは、雨水の他,防火用水,工場の廃液等を貯留するために使用されているが、特に工場の廃液等を貯留するため地下タンクは、化学薬品を含有する内容液が地下る浸透するのを防止するために、コンクリート層の内壁面にゴムライニングを施したり、またパルプ工場からの廃液(亜硫酸ガス)からの防蝕をするために、エポキシコーティング等を施してある。」との記載がある。この記載から、上記「予め地下にコンクリート層4からなるタンク3」は、工場の廃液等を貯留するため以外の地下タンクとして用いられる場合には、従来から利用されていたものといえ、すなわち既存のものであるといえる。
(2)また、引用発明は水貯留用の地下構造物の技術分野に属する発明であるといえるので、上記周知技術2と同一の技術分野に属している。また、引用発明の「貯留部」を具備した「地下貯留浸透施設」と上記周知技術2の「タンク用空間」を具備した「水貯留用タンク」とは、共に水貯留用の地下構造物である点で共通しているので、相互に代替性があるものといえる。また、当業者が相互に代替性がある手段を置き換えることに格別の困難性があるものとはいえない。
(3)また、「タンク」が「防火タンク」である点について検討するに、『タンクが防火用である』点は、例えば上記実願昭52-116947号(実開昭54-42116号)のマイクロフィルム(主に明細書1頁16?17行参照)に記載されているように周知技術であるから(以下「周知技術3」という。)、当業者が上記周知技術2の「タンク用空間」を防火用タンクと認識することに格別の困難性は見いだせない。
また、「タンク」に対する「防火」という限定事項は、単にタンクの用途を限定したものに過ぎず、「タンク」自体の構造等を特定する事項ではないので、上記限定事項自体に格別の技術的意義を見いだすことはできない。
(4)よって、引用発明に上記周知技術2,3を適用して、「貯留部」を具備した「地下貯留浸透施設」を「既存の防火タンクを利用した」「タンク用空間」を具備した「水貯留用タンク」に置き換えることは、当業者において容易に想到し得るものと認められる。
(5)そして、本件特許発明2の奏する効果も引用発明及び周知技術2,3から当業者が容易に予測し得る範囲内のものにすぎない。

4-3.むすび
以上のとおり、本件特許発明2は、引用発明及び周知技術2,3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.本件特許発明3について
5-1.対比
本件特許発明3と引用発明とを対比するにあたって、本件特許発明3と本件特許発明1との関係、及び上記「3.」の「3-1.対比」において本件特許発明1と引用発明とを対比した事項を踏まえると、本件特許発明3と引用発明は、上記相違点1に加えて、以下の点(「相違点3」という。)で相違し、その余の点で一致しているものと認められる。

《相違点3》
タンク用空間の開口部に、本件特許発明3は「その非透水性内張層内に延びる汲み出し手段であって、該非透水性内張層内に貯留してある水を汲み出すための汲み出し手段を設置した」のに対し、引用発明は「排水管を設置し」「貯留部に貯留された雨水を」「排水」している点。

5-2.判断
(1)まず、上記相違点1については、上記「3.」の「3-2.判断」で検討したとおりである。
(2)また、上記相違点3について、『水貯留用タンクの開口部に該タンク内に延びる汲み出し手段であって、該タンク内に貯留してある水を汲み出すための汲み出し手段を設置する。』点は、例えば、甲第3号証〔特公平7-86239号公報〕(主に【図2】の「揚水ポンプ6」,「取水パイプ7」参照。)、甲第4号証〔やってみよう雨水利用〕(主に図の「井戸用ポンプ」参照)に記載されているように、水貯留用の地下構造物の技術分野において周知技術である(以下「周知技術4」という。)。
(3)よって、引用発明に上記周知技術4を適用して、引用発明において、「排水管を設置し」「貯留部に貯留された雨水を」「排水」するのに替えて、貯留部の「排水管」に該貯留部内に延びる汲み出し手段であって、該貯留部内に貯留してある水を汲み出すための汲み出し手段を設置することは、当業者において容易に想到し得るものと認められる。
(4)そして、本件特許発明3の奏する効果も引用発明及び周知技術1,4から当業者が容易に予測し得る範囲内のものにすぎない。
5-3.むすび
以上のとおり、本件特許発明3は、引用発明及び周知技術1,4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.本件特許発明4について
6-1.対比
本件特許発明4と引用発明とを対比するにあたって、本件特許発明4と本件特許発明1との関係、及び上記「3.」の「3-1.対比」において本件特許発明1と引用発明とを対比した事項を踏まえ、更に、引用発明の「ゴムを素材としたシート状の遮水性のシート」は、本件特許発明4の「ゴムシート」に相当する点を踏まえると、本件特許発明4と引用発明は、上記相違点1で相違し、その余の点で一致しているものと認められる。

6-2.判断
上記相違点1については、上記「3.」の「3-2.判断」で検討したとおりである。

6-3.むすび
以上のとおり、本件特許発明4は、引用発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


7.本件特許発明5について
7-1.対比
本件特許発明5と引用発明とを対比するにあたって、本件特許発明5と本件特許発明1との関係、及び上記「3.」の「3-1.対比」において本件特許発明1と引用発明とを対比した事項を踏まえると、本件特許発明5と引用発明は、上記相違点1に加えて、以下の点(「相違点4」という。)で相違し、その余の点で一致しているものと認められる。

《相違点4》
構成される空間保持骨格が、本件特許発明5は「複数の」「籠状部材を上下方向及び縦横方向に連設配置して」なるのに対して、引用発明は「ハニカムブロックを」「積層させ」てなる点。

7-2.判断
(1)まず、上記相違点1については、上記「3.」の「3-2.判断」で検討したとおりである。
(2)また、上記相違点4について、『単位骨格部材として、複数の籠状部材を上下方向及び縦横方向に連設配置して空間保持骨格を構成する』点は、例えば甲第4号証〔やってみよう雨水利用〕,甲第5号証〔特開昭55-157380号公報〕及び甲第6号証〔特公平4-26648号公報〕に記載されているように、水貯留用の地下構造物の技術分野において周知技術である(以下「周知技術5」という。)。
(3)よって、引用発明に上記周知技術5を適用して、引用発明において、「ハニカムブロックを」「積層させ」てなるのに替えて、「複数の」「籠状部材を上下方向及び縦横方向に連設配置して」なるようにすることは、当業者において容易に想到し得るものと認められる。
(4)そして、本件特許発明5の奏する効果も引用発明及び周知技術1,5から当業者が容易に予測し得る範囲内のものにすぎない。
7-3.むすび
以上のとおり、本件特許発明5は、引用発明及び周知技術1,5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


8.本件特許発明6について
8-1.本件特許発明6と引用発明との対比
本件特許発明6と引用発明とを対比するにあたって、本件特許発明6と本件特許発明1との関係、及び上記「3.」の「3-1.」において本件特許発明1と引用発明とを対比した事項を踏まえると、本件特許発明6と引用発明は、上記相違点1に加えて、以下の点(「相違点5」という。)で相違し、その余の点で一致しているものと認められる。

《相違点5》
構成される空間保持骨格が、本件特許発明6は「複数の」「四辺形枠体を上下方向及び縦横方向に連結して」なるのに対して、引用発明は「ハニカムブロックを」「積層させ」てなる点。

8-2.相違点についての判断
(1)まず、上記相違点1については、上記「3.」の「3-2.判断」で検討したとおりである。
(2)また、上記相違点5について、『単位骨格部材として、複数の四辺形枠体を上下方向及び縦横方向に連結して空間保持骨格を構成する』点は、例えば甲第4号証〔やってみよう雨水利用〕、甲第5号証〔特開昭55-157380号公報〕、甲第6号証〔特公平4-26648号公報〕、甲第7号証〔特開昭60-144470号公報〕、甲第8号証〔実願昭48-74429号(実開昭50-22506号)のマイクロフイルム〕に記載されているように、水貯留用の地下構造物の技術分野において周知技術である(以下「周知技術6」という。)。
(3)よって、引用発明に上記周知技術6を適用して、引用発明において、「ハニカムブロックを」「積層させ」てなるのに替えて、「複数の」「四辺形枠体を上下方向及び縦横方向に連結して」なるようにすることは、当業者において容易に想到し得るものと認められる。
(4)そして、本件特許発明6の奏する効果も引用発明及び周知技術1,6から当業者が容易に予測し得る範囲内のものにすぎない。
8-3.むすび
以上のとおり、本件特許発明6は、引用発明及び周知技術1,6に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

9.無効理由I-2についてのまとめ
以上のことから、本件特許発明1乃至6についての特許は、いずれも特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号の規定に該当する。


第6-2.無効理由の有無についてのむすび
以上、無効理由I-2について検討したとおり、本件特許発明1乃至6についての特許は、いずれも特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号の規定に該当するから、その余の無効理由について検討するまでもなく、無効にすべきものである。
また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-07 
結審通知日 2009-04-17 
審決日 2009-04-28 
出願番号 特願平8-48112
審決分類 P 1 113・ 851- ZB (E03B)
P 1 113・ 121- ZB (E03B)
P 1 113・ 855- ZB (E03B)
P 1 113・ 841- ZB (E03B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 深田 高義菊岡 智代  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 飯野 茂
森口 正治
登録日 2005-08-19 
登録番号 特許第3710192号(P3710192)
発明の名称 水貯留用タンク  
代理人 西 良久  
代理人 小原 英一  

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