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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02C
管理番号 1199736
審判番号 不服2007-23066  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-23 
確定日 2009-06-25 
事件の表示 特願2000-131985「コンタクトレンズの製造方法およびコンタクトレンズ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月 9日出願公開、特開2001-311916〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成12年5月1日の出願であって、平成19年4月17日付けで拒絶理由が通知され、同年6月25日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年7月13日付けで拒絶査定がされたため、これを不服として同年8月23日付けで本件審判請求がされるとともに、同年9月25日付けで手続補正書が提出されたものである。
そして、当審においてこれを審理した結果、平成21年1月27日付けの補正の却下の決定により平成19年9月25日付けの手続補正を却下するとともに、平成21年1月27日付けで拒絶理由を通知したところ、平成21年4月6日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで明細書について手続補正がされたものである。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年4月6日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「コンタクトレンズの製造方法であって、
コンタクトレンズの素材と同一または異なるモノマーに所定の色相の色素を混合して着色用のインクを製造し、
前記コンタクトレンズに対応して用意された図柄転写用の部材において、前記コンタクトレンズの周辺に位置するベベルに対応する位置であって、該コンタクトレンズの光学部に対応する位置を環状に取り囲む複数箇所に、幾何学的模様を離散的に配置した凹部を形成し、
前記着色用のインクを前記凹部に注入し、
該凹部に転写用のパッドを押圧することにより、前記凹部のインクをパッドにて採取し、
該パッドをコンタクトレンズの凸型および凹型の成型型のうち凸型に押圧することにより、コンタクトレンズの成形箇所に、前記採取したインクを転写し、
該転写された凸型と前記凹型とを用いてコンタクトレンズの凹面および凸面の成型を行なって、コンタクトレンズの前記光学部を取り囲む位置に、前記複数の幾何学的模様を、前記色相のインクを用いて形成するコンタクトレンズの製造方法。」


第2 当審の判断
1 引用刊行物の記載事項
当審で通知した拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平2-134612号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の(ア)ないし(シ)の記載が図示とともにある。

(ア)「1.透明な中央視覚部分と、それを取巻く色付虹彩部分を有する成形コンタクトレンズを製造する方法であって、
(a)硬化性又は熱可塑性の色付液状物をコンタクトレンズ成形金型の金型面の、前記レンズの虹彩部分を形成する部位に被覆して、該金型面上に、金型の内部空間に露出した表面と金型面に接触した表面を有する色付フィルムを形成し、
(b)該色付フィルムを該虹彩部分の部位に維持した状態でレンズの本体を形成するためのレンズ形成用液状物を前記金型に装入して該色付フィルムの周りに形造りし、それによって、該成形されたレンズが金型から取出されたとき色付フィルムが該レンズの本体と一体になり、色付フィルムの表面がレンズの外表面の一部となるようにすることを特徴とする成形コンタクトレンズ製造方法。
2.前記色付フィルム及びレンズの表面は、実質的に平滑で連続していることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の成形コンタクトレンズ製造方法。
3.前記色付液状物は、前記レンズ形成用液状物と実質的に同じ硬化性液状物であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の成形コンタクトレンズ製造方法。」(公報第1頁左欄第6行?第1頁右欄第12行)

(イ)「12.前記色付フィルムは、前面成形用金型と後面成形用金型の少なくとも一方の金型面に被覆することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の成形コンタクトレンズ製造方法。
13.前記色付フィルムは、後面成形用金型の金型面に被覆することを特徴とする特許請求の範囲第12項記載の成形コンタクトレンズ製造方法。」(公報第2頁左上欄第20行?第2頁右上欄第7行)

(ウ)「17.該コンタクトレンズをキャスト成形によって成形することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の成形コンタクトレンズ製造方法。」(公報第2頁右上欄第19行?第2頁左下欄第1行)

(エ)「産業上の利用分野
本発明は、成形色付コンタクトレンズ及びその製造方法に関する。
従来の技術
成形色付コンタクトレンズは、コンタクトレンズが一般に受け入れられるようになったことと、一般に容貌を気にかける人が多くなったことと、コンタクトレンズの構造(ハードレンズ、ソフトレンズ、酸素透過性レンズ等)が改良されたことの結果として人気が高まっている。」(公報第3頁左上欄第4?13行)

(オ)「本発明の重要な特徴は、深さを有する色付パターンをプラスチック製コンタクトレンズに創生し、それによって眼に見えるテクスチャー(色模様)を与え、しかもレンズの表面を平滑にすることができることである。本発明のレンズの表面には、着用者の眼を刺激するような隆起が存在しない(従来の印刷法によってレンズに色を施した場合には隆起が生じる)。従って、本発明のレンズは、着用したとき快適であり、そのテクスチャーによりダイナミックな美容効果を提供する。」(公報第6頁右下欄第6行?第15行)

(カ)「色付フィルムは、いろいろな印刷法によって金型に被覆することができる。実際、色付フィルムは、ブラシで金型に塗布してもよい。いうまでもなく、レンズの商業的生産においては、周知の自動技法を用いて、例えばポリジメチルシロキサンゴム等の軟質ゴムパッドを介して蝕刻プレートから転写印刷することによってパターン(色付フィルム)を金型に印刷することが望ましい。」(公報第7頁左上欄第8行?第15行)

(キ)「金型面に色付フィルムを形成するのに用いられる色付液状物は、通常、ビヒクルと着色剤とから成る。このビヒクルは、液状の熱可塑性コーチング材又は硬化性コーチング材を包含する。そのようなコーチング材は、それ自体が液体であるか、あるいは溶剤又は稀釈剤を用いて液状にされる。ビヒクルは、多相の組成物、例えばコーチング材を水などの稀釈剤に分散させたものである。そのようなビヒクルるの例としてはラテックス又はエマルジョンがある。着色剤は、コンタクトレンズに色付けするのに使用されている慣用の反応性又は不反応性の染料、又は、コーチング技術において一般に使用されているいろいろな顔料の内の任意のものであってよい。コーチング材は、レンズの滅菌に通常使用されるオートクレーブ処理の条件に耐えることができるものであることが望ましい。例えば、コーチング材は、最終コンタクトレンズが150℃のオートクレーブに約5?30分間通される際にそれに耐えることができることが望ましい。樹脂と混合した、最終コンタクトレンズ内の着色剤は、通常の使用においてレンズを処理するのに用いられる催涙液又は洗浄剤及び殺菌剤に対して耐性を有し、催涙液や洗浄剤及び殺菌剤によって除去されないものであることが望ましい。
色付液状物のビヒクルは、熱可塑性又は硬化性であってよい。この液状物は、当業者には周知の態様で液状で供給されるプラスチック又は樹脂内に選択された着色剤を混合することによって調製することが望ましい。」(公報第7頁右上欄第8行?第7頁左下欄第17行)

(ク)「本発明に使用することができるもう1つの樹脂は、硬化性の樹脂である。この硬化性樹脂は、熱可塑性にされ得ないものであるという点で熱硬化性樹脂の部類に分類することができる。この種の樹脂には、本発明に使用し得るものが多数あるが、最も望ましいのは、レンズ形成用液状混合物に対して親和性を有する樹脂か、あるいはレンズ形成用液状混合物と同じ樹脂である。この場合、色付フィルムは、液体として金型面に被覆し、半ば又は完全硬化させることができる。樹脂は、液体として金型面に被覆された段階では、A又はB段階であってよい、即ち、全く硬化していない状態(A段階)か、又は半ば硬化しているが、まだ液状である状態(B段階)であってよい。金型面に被覆した樹脂がA段階である場合は、その樹脂をある程度硬化させてB段階に変換することが望ましい。この被覆樹脂は、レンズ形成用液状混合物を金型へ注ぎ込む前に完全硬化(C段階)させてもよく、あるいは、その完全硬化は、レンズ形成用液状混合物を金型へ注ぎ込み、レンズを成形し、該混合物をC段階へ完全硬化させるまで保留してもよい。」(公報第7頁右下欄第17行?第8頁左上欄第18行)

(ケ)「本発明によれば、レンズ形成用材料を金型へ供給する前に、レンズの瞳孔即ち視覚部分を透明のままに残すようにしてレンズの虹彩部分に色付けするように金型面に液状色付フィルムを形成しておく。いうまでもなく、レンズの視覚部分の寸法は、眼の拡大に対応する大きさとする。金型面上に形成する液状色付フィルムのパターンは、慣用の技法によって蝕刻されたパターンを有する金属板を用いて形成することができる。蝕刻されたパターンは、色付液状物を充填して平にならし柔軟なシリコーンゴム製の転写スタンプをパターンに押しつけてパターンをスタンプの面に写し取る。次いで、そのスタンプを金型面に押圧してパターンをスタンプから金型面に転写させ、金型面に色付フィルムを被覆する。次いで、この色付フィルムを、そのビヒクルが熱可塑性でない場合は、部分重合又は完全硬化させることができる。その後、レンズ形成用材料を金型へ供給する。」(公報第10頁右上欄第6行?第10頁左下欄第3行)

(コ)「次ぎの工程は、第2A図に示されている。この工程では、インキを含有していない慣用のレンズ形成用モノマー混合物(液状物)6を第1図の金型1内の金型面2上へ流し込んで先に重合又は半ば重合している色付フィルム又は熱可塑性色付フィルム4の上に重ね、色付フィルム4をレンズ形成用モノマー混合物6の下に埋没させる。
第2B図は、レンズ形成用モノマー混合物が金型の回転により金型面上にスピンキャスト(回転流延)され、慣用のスピンキャストレンズ8の形とされたところを示す。このレンズの前面(コンタクトレンズを着用する人の眼に接触しない外側面)の幾何学的寸法形状は、金型面によって決定され、レンズの後面(コンタクトレンズを着用する人の眼に接触する内側面)の幾何学的寸法形状は、スピンキャストの物理学的条件によって決定される。この慣用のレンズ形成用モノマー混合物を重合させるために、やはり重合条件に付す。この重合条件は、先の工程で色付フィルムが部分的に(半ば)しか重合されていない場合は、レンズ形成用モノマー混合物並びに色付フィルムを完全重合状態にもたらすように選定される。色付フィルムの部分的重合は、その色付フィルムの表面と、レンズ形成用モノマー混合物によって形成される透明なレンズマトリックス(レンズ本体)との間の強固な結合を促進するためには好ましい方法である。」(公報第11頁左上欄第17行?第11頁左下欄第3行)

(サ)「本発明は、スピンキャスト法だけではなく、キャスト(注型、流し込み)成形法にも適用することができる。第5図は、キャスト成形法のための前面用(レンズの前面を成形するための)金型20を示す。この金型の内側面即ち金型面22に上述したいろいろなパターンのうちの任意のパターン23の色付フィルムを被覆する。第5A図は、それによって得られたレンズ27を示す。このレンズは、先に説明した本発明のスピンキャストレンズと実質的に同じ形態を有する。
第6図は、キャスト成形法のための後面用(レンズの後面を成形するための)金型24を示す。この金型の金型面25に上述したいろいろなパターンのうちの任意のパターン26の色付フィルムを被覆する。第6A図は、それによって得られたレンズ29を示す。
上記第5図の方法と第6図の方法を組合せて用いることもできる。その場合、ある特定の色(例えば白色)の色付パターンを後面用金型に被覆し、それと同じ色又は異なる色(例えば濃青色)の色付パターンを前面用金型に被覆する。これによって、例えば見る人に実際に生きているような感覚を与える多色模様付外観、あるいは、見る人の側に反射する白色の背景を用いた明るい色調を有する色付コンタクトレンズが得られる。そのようなレンズは第7図に示されている。
レンズの両面に色付パターンを施すこの方法は、まずパターンを上述したような後面用金型と前面用金型の両方に固定することによって実施することができる。次いで、レンズ形成用モノマー混合物を各金型にそれぞれ供給し、各モノマー混合物を部分的に重合し、それによってパターンをそれぞれレンズの後面及び前面に固着させる。次いで、2つの金型を合わせ、重ね合わされた後面と前面のレンズ形成用モノマー混合物を重合させて結合し、硬化を完了させて、両面にパターンを有する色付コンタクトレンズを形成する。」(公報第11頁左下欄第20行ないし第12頁左上欄第16行)

(シ)第5,6図から、キャスト成型法のための後面用金型は凸型であり、前面用金型は凹型であることが読み取れる。

2 引用例1に記載の発明の認定
引用例1の上記記載事項(ア)ないし(シ)から、引用例1には次の発明が記載されていると認めることができる。

「透明な中央視覚部分とそれを取巻く色付虹彩部分を有する成形コンタクトレンズを製造する方法であって、
金属板に蝕刻されたパターンにレンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物と着色剤とを含む硬化性の色付液状物を充填し、転写スタンプを前記パターンに押しつけて前記色付液状物のパターンを前記転写スタンプの面に写し取り、次いで、前記転写スタンプを凸型である後面用金型の表面に押圧して前記色付液状物のパターンを前記転写スタンプから前記後面用金型の表面に転写して、コンタクトレンズの虹彩部分に色付けするように前記後面用金型の表面に液状色付フィルムを形成し、
前記色付フィルムを前記虹彩部分の部位に維持した状態でコンタクトレンズの本体を形成するための前記レンズ形成用モノマー混合物を前記後面用金型及び凹型である前面用金型に装入して前記色付フィルムの周りに成形し、それによって、成形されたコンタクトレンズが金型から取出されたとき前記色付フィルムが前記コンタクトレンズの本体と一体になり、前記色付フィルムの表面が前記コンタクトレンズの外表面の一部となるようにする成形コンタクトレンズ製造方法。」(以下、「引用発明1」という。)

3 本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
(1)引用発明1の「成形コンタクトレンズを製造する方法」は、本願発明の「コンタクトレンズの製造方法」に相当する。

(2)引用発明1の「レンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物」、「着色剤」、「色付液状物」は、それぞれ、本願発明の「コンタクトレンズの素材と同一または異なるモノマー」、「色相の色素」、「着色用のインク」に相当する。
したがって、引用発明1の「レンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物と着色剤とを含む硬化性の色付液状物」を製造することは、本願発明の「コンタクトレンズの素材と同一または異なるモノマーに所定の色相の色素を混合して着色用のインクを製造」することに相当する。

(3)引用発明1では、「金属板に蝕刻されたパターンにレンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物と着色剤とを含む硬化性の色付液状物を充填し、転写スタンプを前記パターンに押しつけて前記色付液状物のパターンを前記転写スタンプの面に写し取り、次いで、前記転写スタンプを凸型である後面用金型の表面に押圧して前記色付液状物のパターンを前記転写スタンプから前記後面用金型の表面に転写して、コンタクトレンズの虹彩部分に色付けするように前記後面用金型の表面に液状色付フィルムを形成」しているから、引用発明1の「金属板に蝕刻されたパターン」は「コンタクトレンズの虹彩部分に色付けする」パターンと同一のパターンであることは明らかである。
したがって、引用発明1の「コンタクトレンズの虹彩部分に色付けする」「パターン」が「蝕刻された」「金属板」は、本願発明の「前記コンタクトレンズに対応して用意された図柄転写用の部材」に相当し、引用発明1の「金属板に蝕刻されたパターン」は、本願発明の「凹部」に相当するとともに、引用発明1の「金属板」に「コンタクトレンズの虹彩部分に色付けする」「パターン」を「蝕刻」することと、本願発明の「前記コンタクトレンズに対応して用意された図柄転写用の部材において、前記コンタクトレンズの周辺に位置するベベルに対応する位置であって、該コンタクトレンズの光学部に対応する位置を環状に取り囲む複数箇所に、幾何学的模様を離散的に配置した凹部を形成」することとは、「前記コンタクトレンズに対応して用意された図柄転写用の部材において、模様を配置した凹部を形成」する点で一致する。

(4)引用発明1の「金属板に蝕刻されたパターンにレンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物と着色剤とを含む硬化性の色付液状物を充填」することは、本願発明の「前記着色用のインクを前記凹部に注入」することに相当する。

(5)引用発明1の「転写スタンプ」は、本願発明の「転写用のパッド」に相当する。
そして、引用発明1の「転写スタンプを前記パターンに押しつけて前記色付液状物のパターンを前記転写スタンプの面に写し取」ることは、本願発明の「該凹部に転写用のパッドを押圧することにより、前記凹部のインクをパッドにて採取」することに相当する。

(6)引用発明1の「凸型である後面用金型」、「凹型である前面用金型」は、それぞれ、本願発明の「凸型」「の成型型」、「凹型の成型型」に相当する。
そして、引用発明1の「前記転写スタンプを凸型である後面用金型の表面に押圧して前記色付液状物のパターンを前記転写スタンプから前記後面用金型の表面に転写して、コンタクトレンズの虹彩部分に色付けするように前記後面用金型の表面に液状色付フィルムを形成」することは、本願発明の「該パッドをコンタクトレンズの凸型および凹型の成型型のうち凸型に押圧することにより、コンタクトレンズの成形箇所に、前記採取したインクを転写」することに相当する。

(7)引用発明1の「コンタクトレンズの本体を形成するための前記レンズ形成用モノマー混合物を前記後面用金型及び凹型である前面用金型に装入して前記色付フィルムの周りに成形」することは、本願発明の「該転写された凸型と前記凹型とを用いてコンタクトレンズの凹面および凸面の成型を行な」うことに相当する。
したがって、引用発明1の「前記色付フィルムを前記虹彩部分の部位に維持した状態でコンタクトレンズの本体を形成するための前記レンズ形成用モノマー混合物を前記後面用金型及び凹型である前面用金型に装入して前記色付フィルムの周りに成形し、それによって、成形されたコンタクトレンズが金型から取出されたとき前記色付フィルムが前記コンタクトレンズの本体と一体になり、前記色付フィルムの表面が前記コンタクトレンズの外表面の一部となるようにする」ことと、本願発明の「該転写された凸型と前記凹型とを用いてコンタクトレンズの凹面および凸面の成型を行なって、コンタクトレンズの前記光学部を取り囲む位置に、前記複数の幾何学的模様を、前記色相のインクを用いて形成する」こととは、「該転写された凸型と前記凹型とを用いてコンタクトレンズの凹面および凸面の成型を行なって、前記模様を、前記色相のインクを用いて形成する」点で一致する。

(8)以上から、本願発明と引用発明1とは、

「コンタクトレンズの製造方法であって、
コンタクトレンズの素材と同一または異なるモノマーに所定の色相の色素を混合して着色用のインクを製造し、
前記コンタクトレンズに対応して用意された図柄転写用の部材において、模様を配置した凹部を形成し、
前記着色用のインクを前記凹部に注入し、
該凹部に転写用のパッドを押圧することにより、前記凹部のインクをパッドにて採取し、
該パッドをコンタクトレンズの凸型および凹型の成型型のうち凸型に押圧することにより、コンタクトレンズの成形箇所に、前記採取したインクを転写し、
該転写された凸型と前記凹型とを用いてコンタクトレンズの凹面および凸面の成型を行なって、前記模様を、前記色相のインクを用いて形成するコンタクトレンズの製造方法。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点〉
本願発明の「凹部」は、「前記コンタクトレンズの周辺に位置するベベルに対応する位置であって、該コンタクトレンズの光学部に対応する位置を環状に取り囲む複数箇所に、幾何学的模様を離散的に配置」したものであり、本願発明の「コンタクトレンズ」では「コンタクトレンズの前記光学部を取り囲む位置に、前記複数の幾何学的模様」が配置されているのに対し、引用発明1の「金属板に蝕刻されたパターン」は「コンタクトレンズの虹彩部分に色付けする」パターンであり、引用発明1の「コンタクトレンズ」では透明な中央視覚部分を取巻く「虹彩部分に色付け」されている点。

4 相違点についての判断
コンタクトレンズの分野では、コンタクトレンズの規格を外見上判別したり、左右のレンズを区別したりするために、文字や記号や数字や図形からなる着色部をコンタクトレンズの周縁部に複数離散的に設けることは、本願出願時において当業者に周知の技術的事項である(実願平1-133364号(実開平3-71320号)のマイクロフィルム(明細書第2頁第4?18行、第11?12図等)、特開平4-270312号公報(段落【0001】?【0002】、【0014】?【0015】、図1,4?5等)、米国特許第4,193,671号明細書(第1欄第22行?第2欄第2行、第4欄第40行?第5欄第32行、FIG.1?3等)を参照。)。
そして、本願発明の「模様」が「幾何学的」であることの意味について、本願の明細書の発明の詳細な説明の段落【0010】には、「着色部は、幾何学的な形状でとすることができる。ここで幾何学的な形状とは、ハート形、星形、円形、四角形、三角形、千鳥格子などの広く知られた形状、表意文字、表音文字、音符や交通標識など所定の観念を想起させる記号など、人間によって案出された形状である。この様な幾何学的な形状は、自然界に存在する形状を人間の観念によって抽象化したり、特定の意志や意味を伝えるために案出されたものであり、自然界に存在する形状と異なっている。従って、自然物との峻別は容易となって紛失防止の効果が顕著となる。また、コンタクトレンズの着色部が、虹彩や角膜などの疾病に起因するものとの誤解を招くこともなくなる。」と記載されているから、上記周知技術における「文字や記号や数字や図形からなる着色部」は、本願発明の「幾何学的模様」に相当する。
すると、上記周知技術に基づいて、引用発明1の「コンタクトレンズ」の周縁部に文字や記号や数字や図形からなる着色部を複数離散的に設けること、及び、前記文字や記号や数字や図形からなる着色部に対応する位置に、「コンタクトレンズ」の「色付け」パターンに対応する「金属板に蝕刻されたパターン」を設けることは、当業者にとって容易に想到し得る。
そして、文字や記号や数字や図形からなる着色部が、コンタクトレンズの周縁部にどのような態様で複数離散的に配置されていても、コンタクトレンズの規格を外見上判別したり、左右のレンズを区別したりすることが可能であることは当業者にとって自明であるから、引用発明1の「コンタクトレンズ」の周縁部に文字や記号や数字や図形からなる着色部を複数離散的に設ける際、前記文字や記号や数字や図形からなる着色部をコンタクトレンズの光学部に対応する位置を環状に取り囲む複数箇所に配置することは、当業者が適宜なし得る設計変更である。
したがって、引用発明1に上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

5 本願発明の進歩性の判断
以上検討したとおり、引用発明1に上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。
また、本願発明の効果も、引用例1に記載された発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものに過ぎない。
したがって、本願発明は引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-21 
結審通知日 2009-04-28 
審決日 2009-05-11 
出願番号 特願2000-131985(P2000-131985)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴野 幹夫  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 小松 徹三
日夏 貴史
発明の名称 コンタクトレンズの製造方法およびコンタクトレンズ  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  
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