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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1200056
審判番号 不服2005-18096  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-21 
確定日 2009-06-15 
事件の表示 平成 8年特許願第184305号「核スピントモグラフィ装置における画像シェーデングの防止装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 5月 6日出願公開、特開平 9-117426〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成8年6月3日(パリ条約による優先権主張1995年6月1日、ドイツ連邦共和国)にされた特許出願(平成8年特許願184305号。以下「本件出願」という。)につき、平成17年6月15日付けで拒絶査定がなされ、同月23日に発送されたところ、拒絶査定に対する審判が同年9月21日に請求されたものである。

第2 本件出願に係る発明
本件出願の請求項1?6に係る発明は、平成17年4月22日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものと認める。

【請求項1】「 マルチエコーシーケンスで作動される核スピントモグラフィ装置における画像シェーデングの防止装置であって、或1つの時点toにて励起高周波パルス(RF1)によりスピンの横磁化を被検対象物内に生成し、前記励起高周波パルス(RF1)につづいて、時点t1,t3,t5・・・にて 、横磁化をリフェーズする少なくとも2つのリフォーカシング高周波パルス(RF2,RF3,RF4・・・)を後続継起させ、そして時点t2,t4,t6・・・にて読出インターバルを後続継起させるようにした当該装置において、
パルスシーケンスの期間中印加される磁場勾配(G)は少なくとも1つの方向で次の条件を充足するようにし、即ち、
【数1】(別紙)
但し、nは2以上の整数であるようにしたことを特徴とする核スピントモグラフィ装置における画像シェーデングの防止装置」

なお、「少なくとも2つのリフォーカシング高周波パルス(RF1,RF2,RF3,RF4・・・)」は「少なくとも2つのリフォーカシング高周波パルス(RF2,RF3,RF4・・・)」の誤記、「nは自然数である」は「nは2以上の整数である」の誤記として上記のごとく認定した。

第3 引用刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-245920号公報(以下、「引用刊行物A」という。)には、
(A-1)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、NMR(核磁気共鳴)現象を利用してイメージングを行うMRイメージング装置に関し、とくにタギング撮像法により被検体の動態を観察するMRイメージング装置に関する。」こと、
(A-2)「【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、この発明によるMRイメージング装置においては、1個の章動RFパルスとそれに続く複数のリフォーカスRFパルスとを被検体に照射して順次エコー信号を発生させ、各RFパルスと同時にスライス選択用傾斜磁場パルスを印加するとともに、位相エンコード用傾斜磁場パルスを印加し、さらに各エコー信号について読み出し用傾斜磁場パルスを印加し、傾斜磁場パルスを制御することによりプライマリエコー成分とスティミュレイテッドエコー成分を分離させた上でこれら2つの成分の信号から同時にデータ収集し、収集したデータから画像を再構成することが特徴となっている。
・・・
【0008】
【実施例】以下、この発明の好ましい一実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。この発明の一実施例では、図1に示すようなパルスシーケンスを図2に示すような構成で行なう。まず、図2について説明すると、主マグネット1は静磁場を発生するためのもので、この静磁場に重畳するように傾斜磁場コイル2によって傾斜磁場が印加される。傾斜磁場コイル2はX、Y、Zの3軸方向に磁場強度がそれぞれ傾斜する傾斜磁場を発生する。これら3軸方向の傾斜磁場の任意の1つを選択し、あるいは任意の複数個を組み合わせることにより、後述のスライス選択用傾斜磁場Gs、読み出し(及び周波数エンコード)用傾斜磁場Gr、位相エンコード用傾斜磁場Gpが形成される。被検体3はこの静磁場及び傾斜磁場が加えられる空間に配置される。この被検体3には、励起RFパルスを被検体3に照射するとともにこの被検体3で発生したNMR信号を受信するためのRFコイル4が取り付けられている。
【0009】傾斜磁場コイル2には傾斜磁場電源5が接続され、図1のGr、Gp、Gsで示すような波形のパルスとされた傾斜磁場発生用電力が供給される。RFコイル4には切換器6を介して送信パワーアンプ7とプリアンプ10とが接続されている。この切換器6は励起時には送信パワーアンプ7側に切り換えられ、受信時にはプリアンプ10側に切り換えられる。送信パワーアンプ7には、信号発生器9からのRFキャリア信号を送信回路8において所定波形の変調信号で振幅変調したRF信号が送られてくる。プリアンプ10には受信回路11が接続され、信号発生器9からの信号を参照信号として受信信号の位相検波が行なわれる。検波された信号はA/D変換器12によりサンプリングされデジタルデータに変換されてコンピュータ13に取り込まれる。
【0010】コンピュータ13は、送信回路8における励起RFパルスの変調信号波形を制御し、信号発生器9の周波数を定め、A/D変換器12のサンプリングタイミング及び周波数を定める。また、傾斜磁場電源5を制御して傾斜磁場パルスのタイミング、波形、強度等を任意にプログラムする。さらに、収集したデジタルデータから画像を再構成する処理などを行なう。表示装置14は再構成画像などを表示する。」こと、
(A-3)「【0011】このようなMRイメージング装置において、コンピュータ13の制御の下に図1に示すようなパルスシーケンスを行なう。この図1のパルスシーケンスはいわゆるマルチプルスピンエコー法によるもので、1個の章動RFパルス(90°パルス)21を印加すると同時にスライス選択用傾斜磁場Gs51のパルスを加え、つぎに4個のリフォーカスRFパルス(180°パルス)22?25を、Gsパルス52?55とともに順次加えていく。
【0012】そして、90°パルス21と最初の180°パルス22との間にGrパルス31を加え、さらに180°パルス22?25の各々の後に、Grパルス32?35およびGpパルス41?48を加えることにより、位相を揃えてエコー信号を発生させるとともに、周波数エンコードおよび位相エンコードを行なう。Gpパルス41、43、45、47が位相エンコード用であり、すべて同一の位相エンコードステップとなるよう制御されている。Gpパルス42、44、46、48はリワインド用であり、それらの各々の前のGpパルス41、43、45、47と同一波高値で極性を反転させてある。
【0013】この場合、通常であれば、図1のAで示すようにE1?E4の各時点で第1?第4のエコー信号を得るようにするのであるが、この実施例ではGrパルス31の波高値を増大させて図1のBで示すようにE1、E2、E’2、…でエコー信号を得るようにする。なお、この図1のA、Bでは縦軸は各エコーの位相の進み量を示す(このような図示の仕方はたとえば、Y. Zur, et al.; Journal of Magnetic Resonance, 71, 212-228, 1987を参照)。」こと、
(A-4)「【0014】これをもう少し詳しく説明すると、スピンエコー法では、90°パルス21によりスピンを90°倒し、180°パルス22を加えることにより反転させて位相が揃ってくることによりエコー信号を発生させるのであるが、実際にはリフォーカスパルスの不完全性により1つのリフォーカスパルス22では90°しか倒れず2つのリフォーカスパルス22、23が印加されて始めて位相が反転する成分があり、前者の成分をプライマリエコー成分、後者の成分をスティミュレイテッドエコー成分と称する。図1のA、Bではプライマリエコー成分の位相進み量を実線で、スティミュレイテッドエコー成分の位相進み量を点線で示している。
【0015】通常のパルスシーケンスの設計では、このプライマリエコー成分とスティミュレイテッドエコー成分の位相進み量が等しくなるようにされており、これによって図1のAで示すようにE2(当審注:E1はE2の誤記)?E4の各時点でプライマリエコー成分とスティミュレイテッドエコー成分の位相が同時に揃うことになり、2つの成分のエコー信号が同時に発生する。これに対して、上記の実施例ではGrパルス31の波高値をGrパルス32、33、34、35よりも増大させ、これにより各成分の位相進み量を図1のBで示すように変化させている。すなわち、Grパルス31の波高値を大きくしたため90°パルス21から180°パルス22までの期間での位相進み量がより大きくなって、図1のBの傾きは図1のAよりも大きくなっているが、他の期間では位相進み量は図1のAとBとで同じであり傾きは等しくなっている。」ことが記載されている。
(A-5)また、図1には、
(1)プライマリエコー成分の位相進み量を示す実線とスティミュレイテッドエコー成分の位相進み量を示す点線がリフォーカスRFパルス(180°パルス)23と24の間、及び24と25の間のそれぞれ位相0の位置で交差していること、
(2)1個の章動RFパルス(90°パルス)21が印加された後に、4個のリフォーカスRFパルス(180°パルス)22?25が順次印加されること、
(3)Grパルス31の幅よりGrパルス32?35のパルスの幅の方が広く、波高値がほぼ等しいこと、
がそれぞれ描かれている。
上記(A-1)?(A-5)の記載のうち、特に図1のAに関連する記載に注目すると、上記引用刊行物Aには、
「マルチプルスピンエコー法によるパルスシーケンスで制御するコンピュータを有するMRイメージング装置であって、
1個の章動RFパルス(90°パルス)21が印加された後に、4個のリフォーカスRFパルス(180°パルス)22?25が順次印加され、
1個の章動RFパルス(90°パルス)21と最初のリフォーカスRFパルス(180°パルス)22との間にGrパルス31を加え、さらにリフォーカスRFパルス(180°パルス)22?25の各々の後に、読み出し(及び周波数エンコード)用傾斜磁場Grパルス32?35を加えるようにしたMRイメージング装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

第4 対比・判断
(4a-1)本願発明と引用発明とを対比する。
(i)引用発明の「MRイメージング装置」は、NMR(核磁気共鳴)現象を利用してイメージングを行う装置であり、コンピュータによりマルチプルスピンエコー法によるパルスシーケンスで制御することから、本願発明の「マルチエコーシーケンスで作動される核スピントモグラフィ装置」に相当する。
(ii)引用発明の「章動RFパルス(90°パルス)21」、「リフォーカスRFパルス(180°パルス)22?25」が、それぞれ本願発明の「励起高周波パルス(RF1)」、「少なくとも2つのリフォーカシング高周波パルス(RF2,RF3,RF4・・・)」に相当する。
(iii)引用発明の「MRイメージング装置」は、1個の章動RFパルスとそれに続く複数のリフォーカスRFパルスとを被検体に照射して順次エコー信号を発生させるものであって、章動RFパルスを被検体に照射することによりスピンを90°倒すことから、引用発明の「1個の章動RFパルス(90°パルス)21」は、本願発明の「励起高周波パルス(RF1)」と同様に、「或1つの時点to」に、「スピンの横磁化を被検対象物内に生成」するものである。
さらに、引用発明の「リフォーカスRFパルス(180°パルス)22?25」は、1個の章動RFパルス(90°パルス)21によりスピンを90°倒し、その後順次加えることによりスピンを反転させて位相が揃ってくることによりエコー信号を発生させるパルスであるから、本願発明の「少なくとも2つのリフォーカシング高周波パルス(RF2,RF3,RF4・・・)」と同様に「前記励起高周波パルス(RF1)につづいて、時点t1,t3,t5・・・にて 、横磁化をリフェーズする」ものであり、「前記励起高周波パルス(RF1)につづいて」、「後続継起させ」られるパルスである。
(iv)引用発明の「読み出し(及び周波数エンコード)用傾斜磁場Grパルス32?35」が、本願発明の「読出インターバル」に相当する。
そして、引用発明の「読み出し(及び周波数エンコード)用傾斜磁場Grパルス32?35」は、リフォーカスRFパルス(180°パルス)22?25の各々の後に加えられていることから、本願発明の「読出インターバル」と同様に「時点t2,t4,t6・・・にて」「後続継起」させられるものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「マルチエコーシーケンスで作動される核スピントモグラフィ装置であって、
或1つの時点toにて励起高周波パルス(RF1)によりスピンの横磁化を被検対象物内に生成し、前記励起高周波パルス(RF1)につづいて、時点t1,t3,t5・・・にて 、横磁化をリフェーズする少なくとも2つのリフォーカシング高周波パルス(RF2,RF3,RF4・・・)を後続継起させ、そして時点t2,t4,t6・・・にて読出インターバルを後続継起させるようにした核スピントモグラフィ装置。」である点で一致し、次の相違点(ア)で相違している。
・相違点(ア)
本願発明の核スピントモグラフィ装置が「画像シェーデングの防止装置」を備えており、その「画像シェーデングの防止装置」は「パルスシーケンスの期間中印加される磁場勾配(G)は少なくとも1つの方向で次の条件を充足するようにし、即ち、
【数1】(別紙)
但し、nは2以上の整数である核スピントモグラフィ装置における画像シェーデングの防止装置」であるのに対して、引用刊行物Aにはそのような記載がない点。

(4a-2)当審の判断
(a)本件出願の特許請求の範囲の請求項4には、「請求項1から3までのうち何れか1項記載の装置であって、各核共鳴信号(S)が長さT及び振幅Aの読出磁場勾配(GR)のもとで読出され、そして、励起高周波パルス(RF1)と第1のリフォーカシング高周波パルス(RF2)との間にプリフェーズパルス(GRV)が読出方向に挿入されるようにした当該装置において、 前記プリフェーズパルス(GRV)は振幅A及び長さT/2を有することを特徴とする装置。」と記載されていることから、本願発明の【数1】を満たす例として読出磁場勾配(GR)とプリフェーズパルス(GRV)、すなわち、読出インターバルのパルスが含まれることは明らかである。そこで、引用発明の1個の章動RFパルス(90°パルス)21と最初のリフォーカスRFパルス(180°パルス)22との間に加えられるGrパルス31と読み出し用傾斜磁場Grパルス32?35について判断する。
(b)上記引用刊行物Aの(A-4)には「【0014】・・・スピンエコー法では、90°パルス21によりスピンを90°倒し、180°パルス22を加えることにより反転させて位相が揃ってくることによりエコー信号を発生させるのであるが、実際にはリフォーカスパルスの不完全性により1つのリフォーカスパルス22では90°しか倒れず2つのリフォーカスパルス22、23が印加されて始めて位相が反転する成分があり、前者の成分をプライマリエコー成分、後者の成分をスティミュレイテッドエコー成分と称する。【0015】通常のパルスシーケンスの設計では、このプライマリエコー成分とスティミュレイテッドエコー成分の位相進み量が等しくなるようにされており、これによって図1のAで示すようにE2?E4の各時点でプライマリエコー成分とスティミュレイテッドエコー成分の位相が同時に揃うことになり、2つの成分のエコー信号が同時に発生する。」ことが記載されていることから、引用発明のマルチプルスピンエコー法によるパルスシーケンスでは、プライマリエコー成分とスティミュレイテッドエコー成分の位相が同時に揃うことにより、2つの成分のエコー信号が同時に発生することになる。
ところで、上記引用刊行物Aの(A-5)には、プライマリエコー成分とスティミュレイテッドエコー成分の位相が同時に揃うことにより、2つの成分のエコー信号が同時に発生するためのパルスシーケンスとして、1個の章動RFパルス(90°パルス)21と最初のリフォーカスRFパルス(180°パルス)22との間に加えられるGrパルス31のパルス幅より、読み出し用傾斜磁場Grパルス32?35のパルス幅の方が広く、波高値がほぼ等しくしてパルスを加えるパルスシーケンスが記載されており、さらに、プライマリエコー成分とスティミュレイテッドエコー成分の位相が同時に揃うように2つの成分のエコー信号が同時に発生するためのパルスシーケンスとしては、例えば特開平2-65842号公報の1頁右下欄10行?2頁右上欄6行、及び第2図に記載されているように、1個の章動RFパルス(90°パルス)と最初のリフォーカスRFパルス(180°パルス)との間に加えられるパルス幅に対して、読み出し用傾斜磁場パルスのパルス幅を2倍の大きさとするとともにパルスの波高値をほぼ等しくしていることから、引用発明においても、プライマリエコー成分とスティミュレイテッドエコー成分の位相が同時に揃うように2つの成分のエコー信号が同時に発生するためのパルスシーケンスとして、1個の章動RFパルス(90°パルス)と最初のリフォーカスRFパルス(180°パルス)との間に加えられるGrパルス31のパルス幅に対して、読み出し用傾斜磁場パルスGr32?35のパルス幅を2倍の大きさとするとともに波高値をほぼ等しくしているものと推認される。そして、1個の章動RFパルス(90°パルス)と最初のリフォーカスRFパルス(180°パルス)との間に加えられるパルスに対して、読み出し用傾斜磁場パルスのパルス幅を2倍の大きさとするとともに波高値を同じにすることは、例えば特開昭60-138446号公報の第6頁右下欄3?11行及び第6図(特に、式(2)?(5)において、読み出し(傾斜磁場)勾配Gxのパルスが期間0?τ、τ?2τ、2τ?3τ、3τ?4τで積分される際、同じ大きさの読み出し(傾斜磁場)勾配Gxとして計算されていることから、1個の章動RFパルス(90°パルス)と最初のリフォーカスRFパルス(180°パルス)との間に加えられるパルスと、読み出し用傾斜磁場パルスとは波高値が同じで、かつ、パルス幅は2倍であることになる)、又は特開平6-169896号公報の図5に記載されているように、技術常識であるから、引用発明の1個の章動RFパルス(90°パルス)と最初のリフォーカスRFパルス(180°パルス)との間に加えられるGrパルス31に対して、読み出し用傾斜磁場パルスGrパルス32?35は波高値が同じでパルス幅が2倍であるものと推認される。
(c) 一方、核スピンの共鳴周波数ω、磁界B、核磁気回転比γ、各スピンの位相Φとすると、これらには電磁気学的にみて、
ω=γB、Φ=∫ωdt=∫γBdt (1)
の関係があり、
さらに、基本磁場B0と磁場勾配による不均一な磁場Bx、By、Bzが加わる磁場Bについては、例えば特開昭60-189905号公報の3頁左下欄14行に記載されているように、
|B|=B0+Bz+(Bx^(2)+By^(2))/2B0+・・・ (2)
の関係があることが知られている。
また、X、Y、Z方向の各磁場Bx、By、Bzと磁場勾配Gx、Gy、Gzとに、例えば特開平7-51243号公報の段落番号【0027】に記載されているように、
Gx=∂Bz/∂x、Gy=∂Bz/∂y、Gz=∂Bz/∂z
の関係があり、X方向磁場勾配に対して
Bz=∫Gxdx=Gx・x (3)
となり、さらにマックスウェルの方程式のrotB=0より、X方向磁場勾配に対して、
∂Bz/∂x-∂Bx/∂z=0
の式が得られる。この式は上記(3)より
Gx-∂Bx/∂z=0
の式となり、この式からBxを求めると、
Bx=∫Gxdz=Gx・z (4)
の式が得られることは明らかである。
上記(2)式に、式(3)、及び式(4)を代入すると、X方向勾配磁場に対して、
|B|=B0+Gx・x+Gx^(2)・z^(2)/2B0+・・・ (5)
の関係式が得られることは明かな事項である。
(d)ここで、引用発明のGrパルス31?35が加えられる時間をt0、t1、t3、t5、t7とし、さらに、上記引用刊行物Aの(A-4)の段落番号【0015】に記載されている、図1のAで示されるE1?E4のうち、プライマリエコー成分とスティミュレイテッドエコー成分の位相が同時に揃うように2つの成分のエコー信号が同時に発生する各時点E2?E4の時間をt2、t4、t6、t8とすると、スピンの位相Φは上記(a)において例示した特開昭60-138446号公報の第6図、又は特開平6-169896号公報の図5に記載されているように読み出し用傾斜磁場Grパルス32?35が加えられるとGrパルス32?35の中央で位相Φが反転することになるから、例えばGrパルス31?33が加えられたときのプライマリエコー成分のt4の時点でのスピン位相Φpは、上式(1)を用いると、
Φp=∫_(t0)^(t1)γBdt-∫_(t1)^(t3)γBdt+∫_(t3)^(t4)γBdt (6)
となり、スティミュレイテッドエコー成分のt4の時点でのスピン位相Φsは、
Φs=-∫_(t0)^(t1)γBdt+∫_(t3)^(t4)γBdt (7)
となることは明らかである。(当審注:式(6)、式(7)において、例えば、∫_(t0)^(t1 )は時間t0?t1の積分を意味する。)
ここでプライマリエコー成分とスティミュレイテッドエコー成分の位相が同時に揃うよう位相が発生することから、Φp=Φsであり、Φp-Φs=0が成り立つはずである。そこでプライマリエコー成分によるスピン位相Φpとスティミュレイテッドエコー成分によるスピン位相Φsとの位相差Φp-Φsについて検討すると、上式(6)及び(7)から、
Φp-Φs
=∫_(t0)^(t1)γBdt-∫_(t1)^(t3)γBdt+∫_(t3)^(t4)γBdt-(-∫_(t0)^(t1)γBdt+∫_(t3)^(t4)γBdt)
=2∫_(t0)^(t1)γBdt-∫_(t1)^(t3)γBdt (8)
の関係が成り立つ。ここで、上記式(5)の磁場勾配Gxの一次の項については、
Φp(一次)-Φs(一次)
=2∫_(t0)^(t1)γGx・xdt-∫_(t1)^(t3)γGx・xdt
=γx(2∫_(t0)^(t1)Gxdt-∫_(t1)^(t3)Gxdt) (9)
上記式(5)の磁場勾配Gxの二次の項については、同様に、
Φp(二次)-Φs(二次)
=γx^(2)(2∫_(t0)^(t1)Gx^(2)dt-∫_(t1)^(t3)Gx^(2)dt)/2B0 (10)
となることは明らかである。
(e)上記(b)に記載したように、引用発明の1個の章動RFパルス(90°パルス)と最初のリフォーカスRFパルス(180°パルス)との間に加えられるGrパルス31に対して、読み出し用傾斜磁場Grパルス32?35はパルス幅の大きさが2倍で、波高値が同じであるものと推認されることから、Grパルス31のパルス幅をT、波高値をAとすると、読み出し用傾斜磁場パルスGrパルス32?35のパルス幅は2T、波高値はAとなる。
この値を上記(d)の式(9)、式(10)に代入すると、
Φp(一次)-Φs(一次)
=γx(2A・T-A・2T)=0
また、
Φp(二次)-Φs(二次)
=γx^(2)(2A^(2)・T-A^(2)・2T)/2B0=0
となる。
(f)そうすると、上記(d)の式(10)において、
Φp(二次)-Φs(二次)=0
すなわち、
∫_(t0)^(t1)Gx^(2)dt=(1/2)・∫_(t1)^(t3)Gx^(2)dt
が成り立つから、引用発明の1個の章動RFパルス(90°パルス)と最初のリフォーカスRFパルス(180°パルス)との間に加えられるGrパルス31と、読み出し用傾斜磁場Grパルス32?35は、本願発明の【数1】の式のn=2の場合と同様に「パルスシーケンスの期間中印加される磁場勾配(G)は少なくとも1つの方向で次の条件を充足するようにし、即ち、
【数1】(別紙)
但し、nは2の整数である」を満たすことになる。そして、∫_(t0)^(t1)Gx^(2)dt=(1/2)・∫_(t1)^(t3)Gx^(2)dtが成り立つことにより、磁場勾配Gxの二次の項の影響が無くなる点で本願発明と同じ構成であるから、引用発明においても本願発明と同様に画像シェーデングが防止されるはずである。
よって、引用発明のMRイメージング装置も本願発明の【数1】の式のn=2の場合と同様に「画像シェーデングの防止装置装置」を備えており、その「画像シェーデングの防止装置」は「パルスシーケンスの期間中印加される磁場勾配(G)は少なくとも1つの方向で次の条件を充足するようにし、即ち、
【数1】(別紙)
但し、nは2の整数である核スピントモグラフィ装置における画像シェーデングの防止装置」であることになる。
してみると、本願発明の発明特定事項は、すべて引用刊行物Aに示されているものであって、本願発明は、引用刊行物Aに記載された発明である。
(g)また、仮に上記(b)に記載したように、引用発明において、1個の章動RFパルス(90°パルス)と最初のリフォーカスRFパルス(180°パルス)との間に加えられるGrパルス31に対して、読み出し用傾斜磁場パルスGr32?35のパルス幅が2倍の大きさであり、波高値が同じでであることが推認できないとしても、上記(b)に記載したごとく、1個の章動RFパルス(90°パルス)と最初のリフォーカスRFパルス(180°パルス)との間に加えられるGrパルス31に対して、読み出し用傾斜磁場パルスGr32?35のパルス幅が2倍の大きさで、かつ、波高値を同じとすることは、特開昭60-138446号公報の第6頁右下欄3?11行及び第6図、又は特開平6-169896号公報の図5に記載されているように技術常識であるから、引用発明においても1個の章動RFパルス(90°パルス)と最初のリフォーカスRFパルス(180°パルス)との間に加えられるGrパルス31に対して、読み出し用傾斜磁場パルスGr32?35のパルス幅が2倍の大きさで、かつ、波高値を同じとすることは当業者が容易になし得るものである。
さらに、1個の章動RFパルス(90°パルス)と最初のリフォーカスRFパルス(180°パルス)との間に加えられるGrパルス31に対して、読み出し用傾斜磁場パルスGr32?35のパルス幅が2倍の大きさで、かつ、波高値を同じとすることにより、上記(e)に記載したように、プライマリエコー成分によるスピン位相Φpとスティミュレイテッドエコー成分によるスピン位相Φsとの磁場勾配の二次の項による位相差を0とすることができることから、本願発明の【数1】の式のn=2の場合と同様に「パルスシーケンスの期間中印加される磁場勾配(G)は少なくとも1つの方向で次の条件を充足するようにし、即ち、
【数1】(別紙)
但し、nは2の整数である」を満たすことになる。
そして、∫_(t0)^(t1)Gx^(2)dt=(1/2)・∫_(t1)^(t3)Gx^(2)dtが成り立つことにより、磁場勾配Gxの二次の項の影響が無くなる点で本願発明と同じ構成であるから、引用発明においても、1個の章動RFパルス(90°パルス)と最初のリフォーカスRFパルス(180°パルス)との間に加えられるGrパルス31に対して、読み出し用傾斜磁場パルスGr32?35のパルス幅が2倍の大きさで、かつ、波高値を同じとすることにより、本願発明と同様に画像シェーデングが防止されるはずである。
よって、引用発明のMRイメージング装置も画像シェーデングが防止されることから、引用発明においても1個の章動RFパルス(90°パルス)と最初のリフォーカスRFパルス(180°パルス)との間に加えられるGrパルス31に対して、読み出し用傾斜磁場パルスGr32?35のパルス幅が2倍の大きさで、かつ、波高値を同じとすることにより、画像シェーデング防止ができるものであり、本願発明の【数1】のn=2の場合と同様に「画像シェーデングの防止装置」を備えており、その「画像シェーデングの防止装置」は「パルスシーケンスの期間中印加される磁場勾配(G)は少なくとも1つの方向で次の条件を充足するようにし、即ち、
【数1】(別紙)
但し、nは2の整数である核スピントモグラフィ装置における画像シェーデングの防止装置」であるように構成することは当業者が容易になし得るものである。
そして、本願発明によってもたらされる効果は、上記引用発明及び技術常識から予測される範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本願発明は、引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は上申書において、
「本件出願人は、平成17年6月15日付け(起案日)拒絶査定におけるご指摘に鑑みて、本願請求の範囲について以下の記載のように、旧請求項1における「…少なくとも1つの方向で次の条件を充足するようにし…」の事項を「…スライス選択方向で次の条件を充足するようにし…」(新請求項1)と「…位相エンコード方向で次の条件を充足するようにし…」(新請求項2)の事項に絞る限定的減縮を行う心づもりがありますので、なにとぞ補正の機会を与えていただけますよう宜しくご配慮賜りたく重ねてお願い申し上げます。」旨を主張しているが、拒絶の理由の通知時、及び拒絶査定時と二度の補正の機会が与えられていたにも拘わらず、請求人は補正しなかったことから、新たに補正の機会を与える必要性は認められないものであって、請求人の主張は採用できない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができないものであるか、もしくは、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。




























別紙


 
審理終結日 2007-12-27 
結審通知日 2008-01-04 
審決日 2008-01-17 
出願番号 特願平8-184305
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 113- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 幸仙  
特許庁審判長 後藤 時男
特許庁審判官 田邉 英治
門田 宏
発明の名称 核スピントモグラフィ装置における画像シェーデングの防止装置  
代理人 山崎 利臣  
代理人 久野 琢也  
代理人 ラインハルト・アインゼル  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
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