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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1201087
審判番号 不服2006-21007  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-21 
確定日 2009-07-22 
事件の表示 特願2003-422074「コンピュータ装置,予約処理方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月20日出願公開,特開2004-145899〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成11年10月19日に特許出願した特願平11-296081号(以下「原出願」という。)の一部を分割して平成15年12月19日に新たな特許出願としたものであって,平成18年5月15日付けの拒絶理由通知に対して,平成18年7月24日に意見書と手続補正書が提出されたが,平成18年8月11日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成18年9月21日に審判が請求されたものである。

2 本願発明
平成18年7月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載によれば,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりである。

「ネットワークを介してユーザの端末に接続されて,各種の役務の提供や各種の物品の販売で必要となる予約処理を実行するコンピュータ装置であって,
ユーザが前記端末に入力した該ユーザの個人情報と予約要求情報とを入手する入手手段と,
予約情報を記憶する予約情報記憶手段を参照して,前記予約要求情報の割り当ての可否を判断し,予約の割り当てを行う割当手段と,
前記入手手段が入手した個人情報と前記割当手段が割り当てた予約情報とを対応付けて前記予約情報記憶手段に登録する登録手段と,
前記ユーザに対して発行する仮の会員カードのカード番号を取得し,該カード番号を該ユーザの予約情報と対応付けて前記予約情報記憶手段に記録する記録手段とを備えることを,
特徴とするコンピュータ装置。」

3 引用刊行物と引用発明
(1)原査定の拒絶の理由において引用された,原出願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開平7-271871号公報(以下「引用刊行物」という。)には,次の記載がある(下線は当審で付加)。

ア 発明の背景・課題について
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は興行予約システムに関し,詳しくはICカード等の可搬型データ担体に記録したデータの照合等を行うことにより,興行場の予約および入場許可等を行う興行予約システムおよび興行場予約方法に関する。
【0002】【従来の技術】イベント等の興行場への入場の許可を判断する方法としては,従来より係員がチケットの有無により判断するのが一般的であった。また,一部においてチケットに設けられた磁気データ記録部を読み取ることにより,入場の許可の判断を行う方法も用いられていた。
【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,チケットの有無を判断する前者の方法にあっては,チケットの偽造が容易になされ,不正な入場が多発していた。特に,近年のカラーコピー技術の進歩により,真偽の区別がつかない程の精巧な偽造を行うことが可能となり,不正な入場は増加傾向にあった。磁気データを読み取る後者の方法によっても,市販の装置を用いて磁気カードに記録された磁気パターンの読み取りおよび書換え等が容易になされ,不正入場者が後を絶たなかった。
【0004】また,現在の興行場の予約システムとしては,電話予約によるものが一般的である。すなわち,予約者は電話によりイベントの予約を行い,イベント主催者は予約番号を記録しておく。そして,後日,予約者は決められた期日までにプレイガイドに出向き,料金と引き換えにチケットを受け取っていた。しかしながら,このような従来の興行場予約システムにあっては,予約者は電話予約の後にプレイガイドに出向かなければならないため,予約に要する時間および労力は膨大なものであった。さらに,電話予約はされたものの,期日までにチケットの交換がなされなかった場合には,キャンセルによりイベント主催者は不利益を蒙ることになる。
【0005】【発明の目的】そこで,本発明は,興行場への不正入場を防止するとともに,興行場の予約を容易に行うことのできる興行場予約システムおよび興行場予約方法を提供することを目的としている。」

イ 実施例について(図1?4とともに)
「【0030】【実施例】以下,本発明の一実施例に係る興行場予約システムを図面を参照しながら説明する。
【0031】図1は,本実施例に係る興行場予約システムの概念図である。この図において,符号101は各種イベントの入場券を発行する発券センタ101であり,符号102は個人宅を表している。また,符号104は銀行,符号105はイベント会場を表している。予約者は通信回線を介して個人宅102から発券センタ101に対してチケットの予約,プリベイドによる料金の支払い等を行うことが可能である。また,発券センタ101からは,銀行104に対して予約者の口座からチケットの料金の引き落し等を行うことができる。イベントの予約がなされ,かつ,料金の支払いが完了した場合には,予約者の所持するICカード103に正当な入場者であることを示すデータが書き込まれる。そして,予約者がICカード103をイベント会場105に備えられた端末に挿入すると,端末はICカード103の所持者が正当な予約者であることを確認した上でゲートを開く。これにより,正当な予約者のみがイベント会場105のゲートを通過することができ,不正入場者を排除することが可能となるものである。
【0032】図2は,本実施例に係る興行場予約システムの概略構成図である。発券センタ側コンピュータ201,個人端末202,銀行側コンピュータ204,イベント会場側端末205は通信回線210を介して接続されている。発券センタ側コンピュータ201は,各種イベントの予約,入場料金の受取等の処理を行うものである。個人端末202は,通信回線210との間でデータの送受信を行うモデム,ICカード103に対してデータの読み書きを行うリーダライタ等により構成されている。また,銀行側コンピュータ204は,予約者の口座から料金の引き落し等の処理を行うコンピュータシステムにより構成されている。イベント会場側端末205はイベント会場に備えられたものであって,ICカード103の所持者が正当な予約者であるか否かを確認し,ゲートの開閉等を行う機能を備えたものである。
【0033】以上のように構成された興行場予約システムの作用を図3,図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0034】図3のフローチャートは予約処理を表している。このフローチャートにおいて,予約者は,個人宅102から発券センタ101に対して,先ず電話によりチケットの予約を行う(S101)。予約者が会員用のICカード103を所持し(S102でYES),かつ,個人宅102に個人端末202がある場合(S103でYES)には,予約者は個人端末202にICカード103を挿入する(S104)。
【0035】一方,予約者が会員用のICカード103を所持していない場合(S102でNO)には,発券センタ101において予約番号を記録しておき(S112),後日予約者に対して会員用のICカード103を発行する(S113)。ICカード103を受け取った予約者は,このICカード103を店頭に備えられた端末に挿入し(S114),予約番号等のデータを入力する(S115)。」

ウ イベント会場における処理
「【0042】上述した図3,図4の処理により,イベントの予約を行った予約者は,後日イベント会場にICカード103を持参し,イベント会場に備えられたイベント会場側コンピュータ205にICカード103を挿入する。イベント会場側コンピュータ205は,ICカード103のデータを読み取り,予約が正当になされたか否かを判断する。そして,正当であると判断した場合にのみゲートを開き,ICカード103持参者の入場を許可する。・・・」

(2)引用発明
上記ア?ウの記載によれば,発券センタ側コンピュータ201と個人端末202及びイベント会場側端末205が通信回路210を介して接続されたシステムであって(段落【0032】),予約者が個人宅から発券センタに対して電話でチケットの予約を行った場合(段落【0034】),予約者が会員用のICカード103を所持していないときには,発券センタ101において予約番号を記録しておき,後日予約者に対して会員用のICカード103を発行する(段落【0035】)ことにより,プレイガイドに出向かなくてもイベントの予約ができるようにした興行場予約システム(以下「本願発明」という。)が開示されているといえる。

4 対比
(1)予約者がイベントの予約を行う場合,氏名等の当該予約者を識別するための情報(個人情報)及び予約するイベントとその場所,日時,種別等を特定するための情報(予約要求情報)を発券センタに対して伝える必要があることは,当然のことであるから,引用発明においても,発券センタは,予約に際して,「個人情報と予約要求情報とを入手」していることが明らかである。
また,引用刊行物には明示的に記載されていないが,引用発明においても,発券センタ側で,その時点の予約情報を参照して予約の割り当ての可否を判断し,予約の割り当てを行って,割り当てた予約情報を個人情報と対応付けて記憶するようにしているものと考えるのが,自然である(予約の割り当てを行うためには,その時点での予約情報を参照することが必要であり,また,割り当てた予約情報が個人情報と対応付けられていなければ,予約の用をなさない。)。そうすると,引用発明も,本願発明の「割当手段」と「登録手段」に相当する構成を備えているものと理解できる。
さらに,引用発明において,予約者に対して発行されるICカードには,発券センタ101において記録された予約番号のデータが入力され(段落【0035】の第2文),この予約番号が,ICカードを識別する番号となるから,引用発明における「予約番号」は,本願発明の「カード番号」に相当する。
最後に,引用発明において,予約の後に発行されるのは会員用のICカードであるのに対し,本願発明で予約の後に発行されるのは「仮の会員カード」とされているが,本願明細書の段落【0097】には,「実施形態例では,仮会員カードとして磁気記録構成のものを用いたが,ICカードのようなものであってもよい。この場合には,会場端末4には,磁気カードリーダ40に代えて,ICカードリーダが用意されることになる。」と記載されていること,両者とも,予約時に会員になっていない場合に後に発行されるものであることからみると,両者間に実質的な相違はないものと理解できる。

(2)以上の検討によれば,本願発明と引用発明との一致点と相違点は,次のとおりとなる。

ア 一致点
「ネットワークを介してユーザの端末に接続されて,各種の役務の提供や各種の物品の販売で必要となる予約処理を実行するコンピュータ装置であって,
ユーザの個人情報と予約要求情報とを入手する入手手段と,
予約情報を記憶する予約情報記憶手段を参照して,前記予約要求情報の割り当ての可否を判断し,予約の割り当てを行う割当手段と,
前記入手手段が入手した個人情報と前記割当手段が割り当てた予約情報とを対応付けて前記予約情報記憶手段に登録する登録手段と,
前記ユーザに対して発行する仮の会員カードのカード番号を取得し,該カード番号を該ユーザの予約情報と対応付けて前記予約情報記憶手段に記録する記録手段とを備えることを,
特徴とするコンピュータ装置。」

イ 相違点
本願発明では,「ユーザが端末に入力した該ユーザの個人情報と予約要求情報を入手する入手手段」を備えているのに対し,引用発明では,予約者(ユーザ)の個人情報と予約要求情報を,当該予約者からの電話により,入手している点。
5 判断
(1)ネットワークを介した予約システムにおける技術水準
ア 周知例
・長野晶子「実践使えるホームページ第1回 航空券,指定席券を予約・購入空席情報や運行状況確認も簡単」日経PC21(日経BP社,1998年1月1日発行)第3巻,第1号,第198?203頁(以下「周知例1」という。)
・深川岳志「これは使える!実用ホームページ第2回 飛行機の空席状況を照会その場で予約を入れる」Touch PC(株式会社毎日コミュニケーションズ,1999年2月24日発行)第4巻,第2号,第98?99頁(以下「周知例2」という。)
上記周知例は,いずれも,原査定の拒絶の理由において提示されたものである。

イ 周知例1,2の記載内容
・周知例1
周知例1には,JALが提供する「チケットレスサービス」について,次の記載がある。
「続いて表示される,「お申込み手続きの選択」の画面で,カードの種類ごとに申し込み方法を選択する(図5)。FAXでの申し込みも可能だ。ここではインターネット経由で「JALカード会員以外」で申し込んでみよう。
「氏名」「住所」「電話番号」「クレジットカード番号と有効期限」などを記入後,パスワードを入力,登録する(図6)。しばらくすると,あなたの名前と「お申込み番号」が出てくる(図7)ので控えておく。加入手続きはこれだけでよい。・・・
サービスに加入できれば,いよいよ搭乗する便の予約が可能になる。国内線予約サービスの画面で,「予約・チケットレスサービス」をクリックし,お申込み番号とパスワードを入力,予約ボタンをクリックする(図8)。続いて表示される画面で,搭乗予定日,出発地,到着地をボックスから選択(図9),「空席照会」ボタンをクリックする。これで図10のように空席情報が表示されるので,これを参考にフライトを選び,運賃を確認して「予約便の登録」をクリック,「便名確認」をする。続いて「お名前の登録」を選択。次に,搭乗者名,同行者,希望座席,運賃の種類などを入力する(図12)。必要なら,復路の予約もできる。
搭場(審決注,「搭乗」の誤記と認められる。)する便の入力などが終われば,「予約」をクリックする。予約内容と運賃が表示されるので,内容に間違いがなければ「チケットレス(決済)」をクリック,これで航空券の購入まで,すべての手続きが完了し,代金がクレジットカードで決済される。・・・」(周知例1の200頁下欄後から8行?201頁第3欄後から7行)

・周知例2
周知例2には,ANA/ANKが提供する「インターネット国内線予約サービス」についての説明があり,98頁と99頁の予約画面から,名前,住所,電話番号などの個人情報を入力したり,搭乗日と区間を選択する情報を入力したりして,予約が完了する様子を見て取ることができる。

ウ 以上の記載から,予約システムにおいて,ネットワークを介して接続されたユーザの端末から入力された予約者(ユーザ)の個人情報と予約要求情報を入手して,予約の処理を行うことは,本願の原出願の出願日前において,周知の技術であったものと認められる。

(2)相違点の検討
上の周知技術を前提とすれば,引用発明において,電話によって予約に必要な情報(個人情報と予約要求情報)を得ることに代えて,ネットワークを介して接続されたユーザの端末から入力された予約者(ユーザ)の個人情報と予約要求情報を入手するように設計変更することにより,上記相違点の構成とすることは,当業者が容易に想到したことといえる。

(3)そうすると,本願発明は,引用発明及び周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと判断される。

(4)なお,審判請求人は,審判請求の理由において,本願発明は,「ライト不可能なカードを用いることができる」のに対して,引用発明は,ICカードを用い,予約番号等のデータを記録しており,本願発明とはまったくことなると述べているが,本願の特許請求の範囲の請求項1には,単に「仮の会員カード」とされているのみであり,また,本願明細書の段落【0097】には,「実施形態例では,仮会員カードとして磁気記録構成のものを用いたが,ICカードのようなものであってもよい。」と記載され,用いるカードは,ライト可能なものとなっている。さらに,請求項1に規定されているのは,ユーザに対して仮の会員カードが発行されるところまでであって,そのカードがどのような形態のものであるかとか,いつどのような情報が記録されるかについては,何ら限定がない。
したがって,審判請求人の主張は,特許請求の範囲の記載に基づかないものであり,採用できない。

6 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-20 
結審通知日 2009-04-28 
審決日 2009-06-02 
出願番号 特願2003-422074(P2003-422074)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田川 泰宏菅原 浩二  
特許庁審判長 相田 義明
特許庁審判官 清田 健一
小山 満
発明の名称 コンピュータ装置、予約処理方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体  
代理人 小笠原 吉義  
代理人 山谷 晧榮  
代理人 岡田 光由  

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