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審決分類 審判 査定不服 出願日、優先日、請求日 審決却下 A01K
管理番号 1201323
審判番号 不服2009-7887  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-25 
確定日 2009-07-31 
事件の表示 特願2001-266540「魚釣り用擬似餌とその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月 4日出願公開、特開2003- 61518〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求を却下する。 
理由 1.本願に対して平成20年11月21日に拒絶査定がされ、その査定の謄本は平成20年12月 3日に本件審判請求人である出願人に送達されたことは郵便物配達証明書により明らかである。
その拒絶をすべき旨の査定に対する審判の請求は、特許法第121条第1項の規定により査定の謄本の送達があった日から30日以内である平成21年1月5日(平成21年1月4日まで閉庁のため。)までにされなければならないところ、本件審判の請求は平成21年3月25日にされているので、上記法定期間経過後の不適法な請求であり、また、その補正をすることができないものである。
したがって、本件審判の請求は、特許法第135条の規定により却下すべきものである。

2.なお、審判請求人の事情にかんがみ付言する。
(1)本願に対する拒絶査定の拒絶の理由は、平成19年11月26日付けでした手続補正により請求項1ないし3に記載された事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反しているというものである。

(2)そこで、上記平成19年11月26日付けでした手続補正(平成19年8月26日提出の手続補正の補正、以下、「本件補正」という。)をみると、特許請求の範囲の請求項1ないし3には、次のとおり記載されている。
「【請求項1】
蒟蒻芋粉、卵殻焼カルシュウム又は蒟蒻用凝固剤、天草、食用色粉と甲殻類の粉末、又はペーストと練り合わせ、上下に中央を凹ませ、中心部に空洞が出来る様に突起物を設けられた各形状の型枠に練り合わせた物を圧入、又は流し込み疑似餌の中心部に空洞部を設け、空洞部より外部に細い穴を数本設け、各甲殻類、魚類の形状に作られた疑似餌
【請求項2】
蒟蒻芋粉に卵殻焼成カルシュウム又はコンニャク用凝固剤、天草、食用色粉と魚貝類の内臓、アラなどの粉末、又はペーストと練り合わせて、上下の中央を凹ませ、中心部に空洞が出来る様に突起物を設けられた、各形状の型枠に、練り合わせた物を圧入又は流し込み、疑似餌の中心部に空洞部を設け、空洞部から外部に細い穴を設け、各甲殻類、魚類の形状に作られた疑似餌
【請求項3】
蒟蒻芋粉に卵殻焼成カルシュウム又はコンニャク用凝固剤、天草、食用色粉と、さなぎ(蚕)の粉末又はペーストと練り合わせ、上下に中央を凹ませ、中心部に空洞が出来る様に突起物を設けられた各形状の型枠に、練り合わせた物を圧入又は流し込み、擬餌餌の中心部に空洞部を設け、空洞部から外部に細い穴を設け、各甲殻類、魚類の形状に作られた疑似餌」

(3)一方、願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求1】コンニャク芋粉、卵殻焼成カルシュウム(コンニャク用凝固剤)、天草、食用色粉と甲殻類の粉末、又はペーストと練り合わせて、上下に中央を凹ませ、中心部に空洞が出来る様に突起物を設けられた、各形状の型枠に、練り合わせた物を圧入又は流し込み、擬似餌の中心部に空洞部を設け、空洞部から外部に数本の細い穴を設け、各甲殻類の形状に作られた擬似餌
【請求2】請求1項、文面の甲殻類を魚貝類に変更した文面
【請求3】請求1項、文面の甲殻類をさなぎ(蚕)に変更した文面
【請求4】請求1項、文面の甲殻類を魚の内臓に変更した文面
【請求5】各形状に作られた中心部に甲殻類の形状であれば、甲殻類を、魚、ゴカイ類であれば、魚類を、幼虫類であれば、さなぎ(蚕)を、卵であれば、魚の内臓をペースト状にし、中心部に詰め込んで作られた擬似餌
【請求6】コニニャク芋粉、卵殻焼成カルシュウム、天草、食用色粉、1、甲殻類、2、魚貝類、3、魚の内臓、4、サナギ(蚕)などのペースト又は粉の1から4の中の一点と練り合わせ、薄い帯状に造り、甲殻類又は魚の形状に方抜きして造られる疑似餌」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はコンニャク芋粉、卵殻焼成カルシュウム、色粉、天草、甲殻類、魚介類、さなぎ(蚕)等に拠って、各部門に組み合わせ練り合わせて、作られた魚釣りに使用する擬似餌」
「【0004】
【課題を解決する為の手段】甲殻類をペースト状又は粉末をコンニャク芋粉、卵殻焼成カルシュウム、色粉、天草と練り、各甲殻類の形状の型枠に入れて疑似餌をつくり、ゴカイ類を作るときは魚貝類をペースト状又は、粉末をコンニャク芋粉、卵殻焼成カルシュウム、色粉、天草と練りゴカイ類の型枠にいれ疑似餌を作り、卵類を作るときはサナギ(蚕)をペースト状又は粉末をコンニャク芋粉、卵殻焼成カルシュウム、色粉、天草と練り合わせて型枠に入れて作る。」
「【0006】
【発明の実施の形態】一図において、着色されたコンニャクAに拠って作られた、甲殻類(代表海老)、の中心部、頭部から尻尾まで空洞にし、中心部から本体の外に対して、各所に細い穴1を設け、充填口Bから甲殻類をペーストにしたものを注入針Cによって、空洞部Fを作られた部分に充填する。
【0013】2図において、着色されたコンニャクDによって創られた、ゴカイ類の中心部、頭部から尻尾まで空洞にし、中心部から本体の外に対して、各所に細い穴1を設け、重点口Bから魚介類をペーストにしたものを注入針Cによって、空洞部Fを作られた部分に充填する。」
「【0016】本発明は、以上説明したように構成されているので、以下の記載されるような効果を奏する。
【0017】コンニャク芋粉、卵殻焼成カルシュウム、天草、着色剤、甲殻類(魚貝類、魚の内臓、アラ、サナギ)などのペースト、又は、粉末によって練り合わせ各形状の型枠に圧入又は流し込みで、造られたコンニャクの疑似餌は臭いも保たれ、身切れも無く、形体も自然に近く効果的である。」

(4)本件補正後の請求項1に記載の「卵殻焼カルシュウム」は、「卵殻焼成カルシュウム」の誤記と認められる。そして、本件補正後の請求項1ないし3に記載の「卵殻焼成カルシュウム(請求項1では「卵殻焼カルシュウム」)又は蒟蒻用凝固剤」は、卵殻焼成カルシュウム以外の蒟蒻用凝固剤を含むものである。
一方、当初明細書の【請求1】の「卵殻焼成カルシュウム(コンニャク用凝固剤)」が、コンニャク用凝固剤としての「卵殻焼成カルシュウム」を意味しているのか、「卵殻焼成カルシュウム又はコンニャク用凝固剤」を意味しているのか明確でない。
そこで、当初明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌すると、発明の詳細な説明には、上記段落【0001】、【0004】に記載のとおり、「卵殻焼成カルシュウム」を用いることしか記載されておらず、他のコンニャク用凝固剤を用いることは記載も示唆もない。
そうすると、【請求1】の「卵殻焼成カルシュウム(コンニャク用凝固剤)」は、「卵殻焼成カルシュウム」がコンニャク用凝固剤であることを説明しているものと解され、卵殻焼成カルシュウム以外の蒟蒻用凝固剤については、当初明細書又は図面に何ら記載も示唆もないから、本件補正後の請求項1ないし3に記載の「コンニャク用凝固剤」は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項ではない。

(5)また、本件補正後の請求項1に係る発明には、「甲殻類の粉末、又はペースト」を練り合わせた材料からなる「魚類の形状に作られた疑似餌」が含まれ、請求項2に係る発明には、「魚貝類の内臓、アラなどの粉末、又はペースト」を練り合わせた材料からなる「甲殻類の形状に作られた疑似餌」が含まれ、請求項3に係る発明には、「さなぎ(蚕)の粉末、又はペースト」を練り合わせた材料からなる「甲殻類、魚類の形状に作られた疑似餌」が含まれる。
一方、当初明細書の【請求1】には、「甲殻類の粉末、又はペースト」を練り合わせた材料からなる「甲殻類の形状に作られた疑似餌」が記載されている。
また、【請求2】及び【請求3】の記載は明りょうではないが、文言どおり解釈すると、【請求2】は、「魚貝類の粉末、又はペースト」を練り合わせた材料からなる「魚貝類の形状に作られた疑似餌」、【請求3】は、「さなぎ(蚕)の粉末、又はペースト」を練り合わせた材料からなる「さなぎ(蚕)の形状に作られた疑似餌」と解釈できる。
さらに、発明の詳細な説明には、上記段落【0004】に、甲殻類のペースト状又は粉末を練り合わせた材料で甲殻類の形状を、魚貝類のペースト状又は、粉末を練り合わせた材料でゴカイ類の形状を、サナギ(蚕)のペースト状又は粉末を練り合わせた材料で卵類の形状を作ることが記載されている。
しかし、「甲殻類の粉末、又はペースト」を練り合わせた材料で、魚類の形状の疑似餌を形成すること、「魚貝類のペースト状又は、粉末」を練り合わせた材料で甲殻類の形状の疑似餌を形成すること、「サナギ(蚕)のペースト状又は粉末」を練り合わせた材料で甲殻類、魚類の形状に作られた疑似餌を形成することは、当初明細書及び図面には記載されていないし示唆もない。
したがって、本件補正後の請求項1ないし3に係る発明は、当初明細書及び図面等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである。

(6)以上のとおり、本件補正は、当初明細書及び図面に記載された範囲内においてなされたものではなく、特許法第17条の2第3項の要件を満たしていないから、本願は、同法第49条第1項の規定により拒絶されるべきものである。

(7)さらに、本願の請求項1に係る発明の新規性進歩性についても検討する。
審査における拒絶理由で引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平2000-93047号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「魚肉、アミエビ、エビ殻の粉末等と、ふすま、おから、さなぎ粉等を適宜に選んで混練し、それに小麦粉等のツナギ材を加え、ゴカイ等の虫類とか、エビ、カニ、また小アジ、イカナゴ、シロウオ等、釣りの対象となる魚等の好む象形物を成形し、この際、象形物の内部を空洞として、当該空洞に臭い剤をいれ、空洞より外部に貫通した多数の小孔を設けておいて、水中において内部より海中に臭い剤が拡散されるようにした疑似餌」の発明が記載されている(段落【0005】参照)。
同じく審査における拒絶理由で引用された特開平10-28493号公報、(以下、「刊行物2」という。)、特開2000-83514号公報(以下、「刊行物3」という。)には、蒟蒻粉(グルコマンナン)及び蒟蒻凝固剤着色剤を練り合わせて型に圧入し、任意の形状の疑似餌とすることが記載されている(刊行物2【請求項4】、段落【0011】等、刊行物3【請求項4】等参照)。
そして、刊行物1記載の発明において、疑似餌の形状を保持するためのツナギ材として、刊行物2、3に記載の蒟蒻粉及び蒟蒻凝固剤を使用すること、生餌に似た色とするための食用色素を練り合わせることは当業者が容易になしうることである。
請求項1に係る発明では、疑似餌の成分として天草を練り合わせているが、天草の成分がゲル化することは周知であり、ツナギ材として天草を加えて練り合わせることは当業者が適宜なしうることである。
したがって、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができないものであり、本願は、同法第49条第2項の規定により拒絶されるべきものである。

3.むすび
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2009-06-11 
出願番号 特願2001-266540(P2001-266540)
審決分類 P 1 8・ 03- X (A01K)
最終処分 審決却下  
前審関与審査官 南澤 弘明  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 神 悦彦
伊波 猛
発明の名称 魚釣り用擬似餌とその製造方法  

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