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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1201465
審判番号 不服2006-19060  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-31 
確定日 2009-07-29 
事件の表示 平成11年特許願第228193号「自動取引装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月23日出願公開、特開2001- 52096〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は,平成11年8月12日の出願であって,平成18年7月21日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年8月31日に審判請求がされるとともに,同年9月28日付けで手続補正がなされ,平成21年1月8日付け審尋に対して,平成21年3月19日付けで回答書が提出されたものである。


2.平成18年9月28日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成18年9月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]

2.1 本件補正の内容

平成18年9月28日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の前後の請求項1の記載は,次のとおりである。

[本件補正前の請求項1]

「 【請求項1】取引に必要な情報を表示する画面を有し,且つ顧客が取引操作を行う顧客操作部と,取引時の制御を行う制御部とを備え,元帳データを有するホストコンピュータとの通信により,取引許可が得られた場合に入出金処理を行う自動取引装置において,
顧客の取引用媒体が挿入された際,該媒体の情報を読み取ってホストコンピュータへ送信し,該ホストコンピュータから本人確認に先行して残高と暗証番号を取得し,
顧客が入力した暗証番号を前記ホストコンピュータから取得した暗証番号と照合し,
照合結果が正しければ,前記取得した残高を,前記顧客操作部の金額入力画面に表示し,
さらに,顧客が入力した取引金額をホストコンピュータに送信し,ホストコンピュータからの取引判定結果に基づいて入出金処理を行うよう制御する制御部を備えていることを特徴とする自動取引装置。」

[本件補正後の請求項1]

「 【請求項1】取引に必要な情報を表示する画面を有し,且つ顧客により取引媒体が挿入するともに,顧客が取引操作を行う顧客操作部と,取引時の制御を行う制御部とを備え,元帳データを有するホストコンピュータとの通信により,取引許可が得られた場合に入出金処理を行う自動取引装置において,
顧客の取引用媒体が挿入された際,該媒体の情報を読み取ってホストコンピュータへ送信し,該ホストコンピュータから本人確認に先行して残高と暗証番号を取得し,
顧客が入力した暗証番号を前記ホストコンピュータから取得した暗証番号と照合し,
照合結果が正しければ,前記取得した残高を,前記顧客操作部の金額入力画面に表示し,
さらに,顧客が入力した取引金額をホストコンピュータに送信し,ホストコンピュータからの取引判定結果に基づいて入出金処理を行うよう制御する制御部を備えていることを特徴とする自動取引装置。」
(下線は,補正箇所を示すために審判請求人が付記したものである。)

2.2 本件補正の目的の適否

本件補正は,特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするものであって,本件補正前の「且つ顧客が取引操作を行う顧客操作部」との記載を,「且つ顧客により取引媒体が挿入するともに,顧客が取引操作を行う顧客操作部」と限定するものであるから,平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。

そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について,以下に検討する。

2.3 本願補正発明

本件補正後の請求項1の記載は,上記2.1[本件補正後の請求項1]において摘示したとおりである。

2.4 引用例

(1)引用例1の記載事項と引用発明
ア 原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-290071号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,以下の記載がある。(下線は,当審で付加。)

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,現金自動取引装置における顧客操作時間の短縮に関する。」

(イ)「【0002】
【従来の技術】顧客が支払取引をする前に残高を確認するという動作が多いため,残高照会から支払取引への連続取引が施行されるようになった。しかしこの連続取引は,残高確認で支払取引を選択した場合,本人であることを確認するため,再度暗証入力を行なってから金額入力処理を行なっている。そのため連続取引一回に要する時間は,残高照会取引+支払取引とほとんどかわらないという現状がある。関連する公知例としては,例えば,特開昭63-225891号公報「自動取引操作装置」を挙げることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の連続取引は,取引時間が,残高照会取引+支払取引とほとんどかわらないという問題点がある。そこで本発明では連続取引の取引時間の短縮を目的とする。」

(ウ)「【0004】
【課題を解決するための手段】従来の残高照会から支払取引への連続取引の顧客操作手順は次のようになっている。(1)取引選択→(2)カード挿入→(3)暗証入力→(4)中央交信→(5)残高確認・連続支払選択→(6)暗証入力→(7)金額入力→(8)中央交信→(9)媒体受取り
以上のような操作手順での時間短縮として,(2)カード挿入の後(4)中央交信を行ない,中央交信中に(3)暗証入力を行なう。(4)中央交信が終了したら残高を(7)金額入力画面に表示し,金額入力を行なう。これにより(4)と(5)の一部と(6)の分の時間を短縮することができる。」(丸数字をカッコ数字で表記した。)

(エ)「【0005】
【作用】現金自動取引装置において連続取引が選択されカード挿入後,顧客が暗証を入力する間に中央交信を行ない,金額入力画面に残高を表示する。ここで支払を行なう場合は金額入力を支払をしない場合は取消キーを押下させる。この処理による作用として以下の3点が考えられる。
【0006】1.残高照会から支払取引への連続取引の取引時間が短縮される。
【0007】2.従来2度暗証入力を行なっていたのが1度になるので,顧客操作が簡便化される。【0008】3.残高を金額入力画面に表示するため残高を見ながら金額入力ができる。」

(オ)「【0009】
【実施例】次に本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。
【0010】図1に現金自動取引装置のブロック図を示す。取引制御機構1は,それぞれ通信機構2,入力機構3,入出金機構4,磁気カード機構5,操作誘導ガイダンス機構9と接続されている。また通信機構2は中央処理装置7と回線8を経由して接続されている。」

(カ)「【0011】図2に本発明の実施例である現金自動取引装置における,連続取引の処理フローを示す。実施例の動作について,図1,図2を用いて説明する。
【0012】顧客は現金自動取引装置6内の入力機構3を操作して連続取引を選択する(ステップ1)。取引選択後,操作誘導ガイダンスに従い,磁気カードを挿入する(ステップ2)。次に誘導ガイダンスに従い,暗証入力を行なう(ステップ3)。暗証入力中カードリード終了しだい中央処理装置との中央交信を開始する(ステップ4)。中央処理装置より受信した残高を操作誘導ガイダンス(金額入力画面)に表示する。操作誘導ガイダンスに従い支払取引を行なうか,取引を終了するかを選択する(ステップ5)。ステップ5で支払取引を選択した場合は,中央交信を行ない(ステップ6),ステップ7?9で,カード・明細票・紙幣を受け取り,取引を終了する。ステップ5で残高照会を選択した場合は,カードを受け取り(ステップ10),取引を終了する。」

(キ)「【0013】
【発明の効果】本発明により以下のような効果が得られる。
【0014】顧客が残高照会から支払取引への連続取引を行なう場合の顧客操作時間が短縮される。
【0015】連続取引における暗証入力が一度になるので顧客操作が簡便化される。【0016】金額入力画面に残高が表示されるため,金額を入力するときに,残高を見ながら行なえるので,顧客操作が便利になる。」

イ 上記(オ)の記載及び図1から,取引制御機構1は,通信機構2,入力機構3,入出金機構4,磁気カード機構5,操作誘導ガイダンス機構9と接続されており,取引制御機構1は各機構を制御するものと理解できる。
そして,通信機構2は中央処理装置7と回線8を経由して接続されているから,取引制御機構1は,中央処理装置との中央交信の結果に基づき,各機構を制御するものと理解できる。

ウ 上記(カ)には,現金自動取引装置にカードを挿入すると,現金自動取引装置と中央処理装置は中央交信を行い,中央処理装置から現金自動取引装置に残高が送信されることが記載されていることから,引用例1の現金自動取引装置は,カードを所有する顧客の残高を取得するために,カードが挿入されるとカードの情報を読み出し,読み出した情報を中央処理装置へ送信するものと理解でき,引用例1の中央処理装置は元帳データを有するものと理解できる。

エ 上記(ウ)の従来の顧客操作手順の説明をみると,残高確認のために「(3)暗証入力」をすると「(4)中央交信」を行うこと,その後の支払処理のために「(6)暗証入力」,「(7)金額入力」をすると「(8)中央交信」を行うことが記載されているが,これらの処理は一般的な現金自動預け払い機の手続の説明であるから,「(3)暗証入力→(4)中央交信」とは,顧客が暗証番号を入力すると,中央処理装置に入力された暗証番号を送信し,中央交信中に,中央処理装置で暗証番号の照合処理が行われるものと理解できる。
そうすると,上記(ウ)の「(2)カード挿入の後(4)中央交信を行ない,中央交信中に(3)暗証入力を行なう。(4)中央交信が終了したら残高を(7)金額入力画面に表示し,金額入力を行なう。」との記載,及び上記(カ)の「次に誘導ガイダンスに従い,暗証入力を行なう(ステップ3)。暗証入力中カードリード終了しだい中央処理装置との中央交信を開始する(ステップ4)。中央処理装置より受信した残高を操作誘導ガイダンス(金額入力画面)に表示する。」との記載から,引用例1の現金自動取引装置においても,中央交信中に暗証番号を入力すると,中央交信中に中央処理装置で暗証番号の照合処理を行い,照合処理の結果が正しければ,残高を表示する等の次の手続に移行するものと理解できる。

オ 上記(カ)の「ステップ5で支払取引を選択した場合は,中央交信を行ない(ステップ6),ステップ7?9で,カード・明細票・紙幣を受け取り,取引を終了する。」の記載及び図1から,顧客が入力した支払取引の内容の判定は中央処理装置が行うものと理解できる。

カ そうすると,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「取引に必要な情報を表示する画面を有し,且つ顧客によりカードが挿入するとともに,顧客が取引操作を行う入力機構3と,取引時の制御を行う取引制御機構1とを備え,元帳データを有する中央処理装置7との中央交信により,取引許可が得られた場合に入金処理を行う現金自動取引装置6において,
顧客のカードが挿入された際,該カードの情報を読み取って中央処理装置7へ送信し,暗証入力し,該中央処理装置7の照合処理により,照合結果が正しければ,該中央処理装置7から残高を取得し,
前記取得した残高を,前記顧客操作部の金額入力画面に表示し,
さらに,顧客が入力した取引金額を中央処理装置7に送信し,中央処理装置7からの取引判定結果に基づいて入出金処理を行うよう制御する取引制御機構1を備えていることを特徴とする現金自動取引装置6」

(2)引用例2の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-199363号公報(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに,以下の記載がある。

(ア)「[産業上の利用分野]
本発明は金融機関オンラインシステムに関し,特に現金自動取引装置(CD(Cash Dispenser),ATM(Automatic Teller Machine)等,以下,端末という)が使用される現金自動取引処理(銀行等の金融機関での預金業務に関する自動的な入出金処理等)を行う金融機関オンラインシステムにおける現金自動取引方式に関する。」(第1頁右下欄第9行?同欄第17行)

(イ)「本発明の目的は,上記の点に鑑み,金融機関オンラインシステムにおける現金自動取引処理における応答時間を短縮することができる金融機関オンラインシステムにおける現金自動取引方式を提供することにある。」(第2頁左下欄第1行?同欄第5行)

(ウ)「次に,このように構成された本実施例の金融機関オンラインシステムにおける現金自動取引方式の動作について説明する(ここでは,金融機関として銀行を想定する。)
顧客により口座情報記憶媒体(キャッシュカードや通帳等)が挿入されると,端末1内の口座情報入力手段11はその口座情報記憶媒体中の口座情報を読み込み(ステップ101),その口座情報に基づいてその口座情報記憶媒体が自行用か他行用かを判定する(ステップ102)。
その口座情報記憶媒体が自行用であれば,口座情報入力手段は即座にホストコンピュータ2に向けてその口座情報を送信する(ステップ103)。
ホストコンピュータ2内の照合情報送信手段21は,ステップ103で送信された口座情報に基づき,元帳ファイル23から照合情報(口座情報記憶媒体を挿入した顧客の暗証番号および元帳残高等)を端末1に送信する(ステップ201)。
端末1内の口座情報入力手段口座情報11は,ステップ201で送信された照合情報を端末メモリ14に展開(格納)する(ステップ104)。
一方,端末1内の端末側取引処理手段12は,次のような処理を行う。
ステップ101?104の処理(端末1とホストコンピュータ2との間の通信(電文伝送)処理を含む)と並行して,顧客から取引情報を入力する(ステップ105)。
顧客から入力した取引情報中の暗証番号とホストコンピュータ2からの照合情報(端末メモリ14内の照合情報)中の暗証番号とが同一か否かの検査(暗証番号チェック)を行う(ステップ106)。」(第3頁右下欄第9行?第4頁右上欄第1行)

2.5 対比

次に,本願補正発明と引用発明とを比較する。
引用発明の「カード」,「入力機構3」,「取引制御機構1」,「中央交信」,「現金自動取引装置6」は,それぞれ,本願補正発明の「取引媒体」,「顧客操作部」,「制御部」,「端末装置」,「通信」,「自動取引装置」に相当する。

引用発明の「顧客のカードが挿入された際,該カードの情報を読み取って中央処理装置7へ送信し,暗証入力し,該中央処理装置7の照合処理により,照合結果が正しければ,該中央処理装置7から残高を取得し」との構成と,本願補正発明の「顧客の取引用媒体が挿入された際,該媒体の情報を読み取ってホストコンピュータへ送信し,該ホストコンピュータから本人確認に先行して残高と暗証番号を取得し」との構成とは,以下の点で相違するものの,「顧客の取引用媒体が挿入された際,該媒体の情報を読み取ってホストコンピュータへ送信し,該ホストコンピュータから残高を取得」する点で共通する。

そうすると,本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。

[一致点]
「取引に必要な情報を表示する画面を有し,且つ顧客により取引媒体が挿入するともに,顧客が取引操作を行う顧客操作部と,取引時の制御を行う制御部とを備え,元帳データを有するホストコンピュータとの通信により,取引許可が得られた場合に入出金処理を行う自動取引装置において,
顧客の取引用媒体が挿入された際,該媒体の情報を読み取ってホストコンピュータへ送信し,該ホストコンピュータから残高を取得し,
照合結果が正しければ,前記取得した残高を,前記顧客操作部の金額入力画面に表示し,
さらに,顧客が入力した取引金額をホストコンピュータに送信し,ホストコンピュータからの取引判定結果に基づいて入出金処理を行うよう制御する制御部を備えていることを特徴とする自動取引装置」

一方で,両者は,次の点で相違する。

[相違点]
暗証番号の照合について,本願補正発明では,自動取引装置が「顧客の取引用媒体が挿入された際,該媒体の情報を読み取ってホストコンピュータへ送信し,該ホストコンピュータから本人確認に先行して残高と暗証番号を取得し」,その後,自動取引装置が「顧客が入力した暗証番号を前記ホストコンピュータから取得した暗証番号と照合」するのに対し,引用発明では,そのような構成は記載されていない点。

2.6 当審の判断

[相違点]について
引用例2の上記(イ)及び(ウ)には,金融機関オンラインシステムにおける現金自動取引処理の応答時間を短縮するために,端末が口座情報記憶媒体中の口座情報をホストコンピュータに送信し,ホストコンピュータが該口座情報に基づいて元帳ファイルから照合情報(顧客の暗証番号及び元帳残高等)を端末に送信し,端末が該照合情報中の暗証番号と顧客が入力した暗証番号が同一か否かの暗証番号チェックを行うことが開示されている。
そして,処理の応答時間を短縮することは,自動取引装置が一般に有する課題であるから,引用発明に引用例2に記載された事項を適用して,自動取引装置が媒体の情報を読み出し,読み出した情報をホストコンピュータへ送信し,自動取引装置が本人確認である暗証番号の照合に先行してホストコンピュータから残高と暗証番号を取得し,その後,自動取引装置が暗証番号の照合を行う構成とすることは,当業者が容易になし得る設計変更の範囲内のものと判断される。
したがって,引用発明において,自動取引装置が,顧客の取引用媒体が挿入された際,該媒体の情報を読み取ってホストコンピュータへ送信し,該ホストコンピュータから本人確認に先行して残高と暗証番号を取得し,その後,自動取引装置が顧客が入力した暗証番号を前記ホストコンピュータから取得した暗証番号と照合する構成(相違点にかかる構成)とすることは,当業者が容易になし得たものである。

本願補正発明の効果も当業者の予測し得た範囲内のものである。

よって,本願補正発明は,引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願補正発明は,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2.7 むすび

以上より,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,結論のとおり決定する。


3.本願発明について

平成18年9月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成18年4月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「 【請求項1】取引に必要な情報を表示する画面を有し,且つ顧客が取引操作を行う顧客操作部と,取引時の制御を行う制御部とを備え,元帳データを有するホストコンピュータとの通信により,取引許可が得られた場合に入出金処理を行う自動取引装置において,
顧客の取引用媒体が挿入された際,該媒体の情報を読み取ってホストコンピュータへ送信し,該ホストコンピュータから本人確認に先行して残高と暗証番号を取得し,
顧客が入力した暗証番号を前記ホストコンピュータから取得した暗証番号と照合し,
照合結果が正しければ,前記取得した残高を,前記顧客操作部の金額入力画面に表示し,
さらに,顧客が入力した取引金額をホストコンピュータに送信し,ホストコンピュータからの取引判定結果に基づいて入出金処理を行うよう制御する制御部を備えていることを特徴とする自動取引装置。」


4.引用例

4.1 引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及びその記載事項は,前記「2.4(1)」に記載したとおりである。

4.2 引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された引用例2及びその記載事項は,前記「2.4(2)」に記載したとおりである。


5.対比・判断

本願発明は,前記2.で検討した本願補正発明から「且つ顧客により取引媒体が挿入するともに,顧客が取引操作を行う顧客操作部」に関して「顧客により取引媒体が挿入するともに,」との限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記2.6に記載したとおり,引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.むすび

以上のとおり,本願発明は,引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-21 
結審通知日 2009-05-26 
審決日 2009-06-08 
出願番号 特願平11-228193
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 満  
特許庁審判長 相田 義明
特許庁審判官 手島 聖治
松田 直也
発明の名称 自動取引装置  
代理人 重久 啓子  
代理人 渡部 章彦  
代理人 今村 辰夫  

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