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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F22B |
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管理番号 | 1201698 |
審判番号 | 不服2007-22820 |
総通号数 | 117 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-08-20 |
確定日 | 2009-07-14 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第507092号「貫流ボイラの始動方法とその始動システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 2月13日国際公開、WO97/05425、平成11年 9月 7日国内公表、特表平11-510241〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本件に係る出願(以下、「本願」という。)は、1996年7月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1995年8月2日、独国)を国際出願日とする出願であって、平成19年5月14日付けで拒絶査定がなされ(発送日:平成19年5月22日)、これに対し、同年8月20日に審判請求がなされたものである。本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年8月9日付け補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「化石燃料(B)用の多数のバーナ(5)を有する燃焼室(6)を備え、この燃焼室(6)の気密囲壁(12)が少なくともほぼ垂直に配置されている蒸発器管(4)によって形成され、この蒸発器管(4)の給水側が下から上に向けて貫流されるようにした貫流ボイラの始動方法において、燃料流量と給水流量との比率、および始動前に蒸発器管(4)内の水位(H)が、給水(S)が蒸発器管(4)を貫流する際に完全に蒸発するように調整されることを特徴とする貫流ボイラの始動方法。」 2.刊行物 原査定の拒絶の理由(平成18年9月21日付け拒絶理由通知)に示された、日本国内で頒布された刊行物である特開昭59-195009号公報(以下、「公知刊行物1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。 ア.「貫流ボイラにおいては、このため起動バイパス系を設け、起動時の余 剰の給水をバイパスするようにしている。」(第1ページ右下欄第19行?第2ページ左上欄第2行) イ.「第1図で、1はボイラ装置の火炉、2は火炉1の炉壁を構成する水壁管、3aは前方炉壁に備えられた缶前バーナ、3bは後方炉壁に備えられた缶後バーナである。近年の大容量石炭焚貫流ボイラでは、これらバーナは5段乃至6段設置されている。」(第2ページ左上欄第5?10行) ウ.第1図には、水壁管2の給水側が下から上に向けて貫流されるようにしたことが、図示されている。 上記記載事項及び図面の記載内容からみて、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されている。 「石炭用複数のバーナ装置2、3を有する火炉1を備え、この火炉1の炉壁が水壁管2によって形成され、この水壁管2の給水側が下から上に向けて貫流されるようにした貫流ボイラの始動方法において、起動バイパス系を設け、起動時の余剰の給水をバイパスするようにした貫流ボイラの始動方法。」 また、原査定の拒絶の理由(平成18年9月21日付け拒絶理由通知)に示された、日本国内で頒布された刊行物である実願昭63-29731号(実開平1-136204号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。 ア.「ボイラ水を前記内部区画室に先んじて外部区画室に供給し、ボイラの運転を開始するものであるが、・・・この外部区画室内のボイラ水がボイラ運転開始後、短時間内に沸騰して所望の温度、圧力の水蒸気が発生し、該起動開始ののちに内部区画室内にボイラ水が充満し、その後にこのボイラ水も沸騰してボイラ全体が定常運転状態となり、」(第3ページ第6?15行) イ.「次に、この貫流ボイラの運転の態様について説明すると、予めすべての手動弁8を閉めてから給水ポンプ5を運転し、下部ドラム4へのボイラ水の給水を開始する。この場合、ボイラ水は下部ドラム4および水管2のうち、内管7を除く部分すなわち前記外部区画室に給水されるが、その水位がH_(1)に達すればバーナ10に点火してボイラの燃焼を開始し、水位がH_(3)に達したら給水を停止する。これ以降、給水ポンプ5は水管2の内管7の外側部分の水位がH_(2)以上、H_(3)以下となるように、そのON,OFFが制御され、何らかの原因で水位がH_(1)に降下すればバーナ10の燃焼が停止する。」(第5ページ第6?18行) ウ.「保有されたボイラ水は内管7の外側にあって直接ボイラ伝熱面を介して加熱されるから、極く短時間内に所定の温度、圧力の蒸気が発生し始めることになる。 かくて、内管7外のボイラ水からの蒸気を所望箇所へ所定時間供給したら、」(第6ページ第1?6行) エ.「以上のように、このボイラでは、内管7を設けていない従来のボイラに比べて、(1)前記水位H_(1)に達するまでの所用時間が、ほぼ内管7の容積分だけ短縮され、(2)給水停止時の水位、及び燃焼室から熱を受ける伝熱面は同一であるが、保有水量がほぼ内管7の容積分だけ減少し、その分だけ発生する蒸気の昇温、昇圧時間が短縮され、結局起蒸時間は、上記(1)、(2)の合計時間だけ短縮される。」(第6ページ第15行?第7ページ第3行) オ.「起蒸時間が短く、しかも負荷変動に強い蒸気ボイラを構造簡単、安価に提供でき、しかもその運転、維持管理も簡便に行えるなどの実益が得られるものである。」(第7ページ第16?20行) 上記記載事項及び図面の記載内容からみて、刊行物2には、次の発明(以下、「刊行物2記載の発明」という。)が記載されている。 「水管2の水位がH_(1)に達すればバーナ10に点火してボイラの燃焼を開始し、水位がH_(3)に達したら給水を停止させ、これ以降は、水位がH_(2)以上、H_(3)以下となるようにし、極く短時間内に所定の温度、圧力の蒸気が発生し始めるように起蒸させた貫流ボイラの運転開始方法。」 3.対比 本願発明と刊行物1記載の発明を対比する。 刊行物1記載の発明の「石炭」は、本願発明の「化石燃料」に、以下同様に、「複数のバーナ装置2、3」は、「多数のバーナ(5)」に、「火炉1」は、「燃焼室(6)」に、「炉壁」は、「気密囲壁(12)」に、「水壁管2」は、「蒸発器管(4)」に、それぞれ相当する。 したがって、上記両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「化石燃料(B)用の多数のバーナ(5)を有する燃焼室(6)を備え、この燃焼室(6)の気密囲壁(12)が少なくともほぼ垂直に配置されている蒸発器管(4)によって形成され、この蒸発器管(4)の給水側が下から上に向けて貫流されるようにした貫流ボイラの始動方法。」 [相違点] 貫流ボイラの始動方法において、本願発明では、「燃料流量と給水流量との比率、および始動前に蒸発器管(4)内の水位(H)が、給水(S)が蒸発器管(4)を貫流する際に完全に蒸発するように調整される」のに対して、刊行物1記載の発明では、起動バイパス系を設け、起動時の余剰の給水をバイパスするようにしている点。 4.当審の判断 以下、上記相違点について検討する。 まず、刊行物2記載の発明と本願発明とを対比する。 本願発明の詳細な説明の項には「始動前に即ち最初のバーナの燃焼前に」とあることから、本願発明において「始動前」とは、「最初のバーナの燃焼前」を意味している。 したがって、刊行物2記載の発明の「水管2の水位がH_(1)に達すればバーナ10に点火して」は、本願発明の「始動前に蒸発器管(4)内の水位(H)が、調整されること」に相当し、以下同様に、刊行物2記載の発明の「バーナ10に点火してボイラの燃焼を開始し、水位がH_(3)に達したら給水を停止させ、これ以降は、水位がH_(2)以上、H_(3)以下となるように」することは、本願発明の「燃料流量と給水流量との比率が調整されること」に、刊行物2記載の発明の「極く短時間内に所定の温度、圧力の蒸気が発生し始めるように起蒸させた」は、本願発明の「給水(S)が蒸発器管(4)を貫流する際に完全に蒸発するように調整されること」に、刊行物2記載の発明の「貫流ボイラの運転開始方法」は、本願発明の「貫流ボイラの始動方法」に、それぞれ相当する。 したがって、刊行物2記載の発明は、「貫流ボイラの始動方法において、燃料流量と給水流量との比率、および始動前に蒸発器管(4)内の水位(H)が、給水(S)が蒸発器管(4)を貫流する際に完全に蒸発するように調整されることを特徴とする貫流ボイラの始動方法。」と言い換えることができる。」 そして、刊行物2記載の発明は、刊行物1記載の発明と同様に貫流ボイラの始動方法に関するものであって技術分野を同じくするものであるから、刊行物2記載の発明を刊行物1記載の発明に適用することは当業者が容易になし得たものである。 また、刊行物2記載の発明が奏する、貫流ボイラの始動を構造簡単、安価に提供できるという効果は、本願発明が奏する効果と同様であることから、本願発明の奏する効果は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の発明から当業者が予測できた範囲内のものである。 よって、本願発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-01-28 |
結審通知日 | 2008-01-31 |
審決日 | 2008-02-13 |
出願番号 | 特願平9-507092 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F22B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 清水 康、松下 聡 |
特許庁審判長 |
岡 千代子 |
特許庁審判官 |
長崎 洋一 佐野 遵 |
発明の名称 | 貫流ボイラの始動方法とその始動システム |
代理人 | 山口 巖 |