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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1201756
審判番号 不服2006-28828  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-12-27 
確定日 2009-08-06 
事件の表示 特願2000-109055「画像形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月26日出願公開、特開2001-296685〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年4月11日の出願であって、平成17年4月21日付けで通知された拒絶理由に対して、同年6月17日付けで手続補正書が提出されたが、平成18年11月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月27日付けで審判請求がなされるとともに、平成19年1月15日付けで手続補正書が提出され、その後、当審での審尋に対して、平成20年11月10日付けで回答書が提出され、平成21年2月9日付けで、平成19年1月15日付けの手続補正の却下の決定を行うとともに、同日付けで拒絶理由の通知を行い、これに対して、平成21年4月17日付けで手続補正書及び意見書が提出されたたものであって、「画像形成方法」に関するものと認める。


第2 当審の拒絶理由通知の概要
平成21年2月9日付けで通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

『 2.記載不備について
本願の請求項1の記載は、上記(補正後)の請求項1の記載から、「該画像形成方法がフルカラータンデム方式である」との記載を削除し、また、流動性指数の範囲を「5mm以上18mm以下」から「20mm以下」へと拡げるものであるが、「流動性指数測定方法」の記載については同じである。 したがって、上記「第2 2.」で示したのと同様の判断理由により、 本願の測定方法で用いられる絞り装置や測定条件等が不明確であるから、本願の流動性指数を測定する方法を特定することができず、結局、本願の流動性指数の定義を特定することができないので、請求項1に係る発明、及び請求項1を引用する請求項2?7に係る発明は、明確でない。
よって、本願の請求項1?7に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、本願の測定方法で用いられる絞り装置や測定条件等が不明確であり、本願の流動性指数を測定する方法を特定することができないから、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1?7に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
よって、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。』

ここで、上記拒絶理由で「上記「第2 2.」で示したのと同様の判断理由により」とされた「第2 2.」は、上記拒絶理由の通知書において、補正の却下の決定の理由を記載した箇所であって、その記載は、以下のとおりである。

『2.記載要件の検討
請求項1では、「以下の方法により測定される流動性指数が20mm以下である」との記載に続いて、その測定方法として、「流動性指数測定方法:銀塩写真機の絞りの部分の上にトナー3gを入れ、徐々に絞りを開けていき、使用したトナーの半分以上が絞りの穴から落下した時の絞り直径(mm)を流動性指数とした。」との記載がある。
また、発明の詳細な説明には、【0031】にも請求項1と同様の記載があり、【0081】には「[流動性指数] 銀塩写真機から取り出した絞りの上にトナー3gをのせ、少しずつ絞りを開けていった。始めて1.5gのトナーが落下したときの絞りの開口直径を測定した。同様に5回行い、最大と最小を除いた3点の平均値を流動性指数(mm)とした。」との記載がある。
本願の上記流動性指数は、銀塩写真機の絞りを利用した手法によるものであり、銀塩写真機の絞りを利用した手法は、従来から利用されているトナーの流動性を測る手法(例えば、篩いを用いた方法、安息角や嵩密度をみる方法)とは異なるものであり、また、トナー以外の分野において、流動性を測定する手法として一般的に使用されていたともいえない。
そして、本願の流動性指数を測定する手法については、用いられる絞り装置や測定条件等が、当業者に自明ではないから、特許請求の範囲や発明の詳細な説明において、用いられる絞り装置や測定条件等が、明確に開示されている必要がある。
しかしながら、以下の点で、本願の測定方法で用いられる絞り装置や測定条件等が不明確である。
・「銀塩写真機から取り出した絞り」とあるが、絞りの材質や表面状態が、トナー落下の程度に影響することは当然であるのに、材質や表面状態が特定されていない。例えば、トナーが滑りやすい絞りか、滑りにくい絞りかにより、トナー落下の程度は全く異なる。
・「トナー3gをのせ」とあるが、閉じた絞りにトナーをのせる方法が、トナー落下の程度に影響することは当然であるのに、トナーののせ方が特定されていない。例えば、のせる範囲は、開く絞りの中心部分(開くと開口となる部分の中心)から5mm半径か、10mm半径か、高さは5mmか、10mmか、開く絞りの中心部分が高く周辺が低い円錐状にのせるのか、あるいは、逆にすり鉢状にのせるのか、あるいは、全体に平らにのせるかなどの条件により、トナー落下の程度は全く異なる。
・「少しずつ絞りを開けていった」とあるが、開く速度、開く形態が、トナー落下の程度に影響することは当然であるのに、それらが特定されていない。例えば、開く速度が1mm/secか、3mm/secか、0.1mm/secかで、トナー落下の程度は全く異なるであろう。また、絞り羽の形状や個数、絞り羽の動き方、絞り羽の重なり具合、形成される開口の形状、等の微妙な違い(写真機の機種により様々なタイプがある。)が、トナー落下の程度に影響を与えることは明らかである。
・測定環境(湿度、温度)が、トナー落下の程度に影響することは当然であるのに、それらが特定されていない。
したがって、本願の測定方法で用いられる絞り装置や測定条件等が不明確であるから、本願の流動性指数を測定する方法を特定することができず、結局、本願の流動性指数の定義を特定することができないので、請求項1に係る発明、及び請求項1を引用する請求項2?6に係る発明は、明確でない。 よって、補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、本願の測定方法で用いられる絞り装置や測定条件等が不明確であり、本願の流動性指数を測定する方法を特定することができないから、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1?6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない
よって、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。』


第3 手続補正書、意見書の内容
これに対して、請求人より、平成21年4月17日付けで手続補正書及び意見書が提出されたところ、それには以下の内容が含まれる。

(ア)補正された特許請求の範囲
特許請求の範囲の範囲は、次の記載になった。
「【請求項1】少なくとも電子写真感光体及びトナーを用いる画像形成方法において、該電子写真感光体が、CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)27.3°に最大回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを含有する感光層を有し、該トナーが、重合法によるものであり、体積平均粒径が3?8μmであり、且つ以下の方法により測定される流動性指数が5mm以上18mm以下であり、該画像形成方法がフルカラータンデム方式であることを特徴とする画像形成方法。
流動性指数測定方法:銀塩写真機の絞りの部分の上にトナー3gを入れ、徐々に絞りを開けていき、使用したトナーの半分以上が絞りの穴から落下した時の絞り直径(mm)を流動性指数とした。
【請求項2】トナーの体積平均粒径の40%以下の粒径を有する粒子数の全体に占める割合が15個数%以下である請求項1記載の画像形成方法。
【請求項3】トナーが少なくとも水を主体とする分散媒に乳化分散されたポリマー粒子と顔料粒子を凝集させる工程を経て製造されたものである請求項1又は2に記載の画像形成方法。
【請求項4】トナーが外添剤で処理されたものである請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項5】トナーが非磁性一成分トナーである請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項6】感光体が、直径30mm以下のドラム状である請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成方法。」

なお、この特許請求の範囲の記載は、当審において平成21年2月9日付けで補正却下された平成19年1月15日付けの手続補正書に記載された特許請求の範囲の記載と同じである。

(イ)意見書の内容
また、請求人は、意見書にて、上記「第2」で示した拒絶理由に対して、次のように反論している。

『V.次に、拒絶理由通知書の3頁「第2 2.記載要件の検討」で具体的に不明確であると指摘された事項について詳述する。

1.「銀塩写真機から取り出した絞り」について
銀塩写真機には各種のものが知られており、形状、サイズ、形式等様々であるが、該写真機から取り出した絞り部分は、独立した一つの部品として存在し、銀塩写真機のメーカが異なってもほぼ同様の形状、サイズを有するものである。
銀塩写真機の絞り部の一例を図1に示す。

図1は全閉状態(開度1mm)の絞り部を示し、図1(a)はその平面図、図1(b)は側面図である。
図1中、1は絞り羽根、2は絞りフランジ、3は調整つまみを表す。
絞り羽根は薄板状で、同一形状のもの12枚から構成される。材質はアルミニウムで、その表面は精密加工され、平滑度に優れる。絞りフランジは外径53mm、内径34mm、高さ8mmである。調整つまみを絞りフランジの円弧に沿って摺動することにより、絞りの開度(絞り直径)は1?33mmの間で調整可能である。絞り部が全閉した状態が開度1mm、全開した状態が開度33mmとなる。

2.「トナー3gをのせ」について
トナーは、全閉状態(開度1mm)の絞り部の絞り羽根上にのせる。トナーを絞り部にのせるに際し、先ず充填補助具としてカプラーを絞り部にセットする。
カプラーの一例を図2に、絞り部にカプラーをセットした状態を図3に、絞り部にカプラーをセットし、更に所定量のトナー試料を充填した側面図(一部断面図)を図4に示す。
【図2】【図3】【図4】
(当審注:図2?4の記載は省略する。)
図2?4中、1は絞り羽根、2は絞りフランジ、3は調整つまみ、4はカプラー、5はトナー試料を表す。
カプラーは外径35mm、内径25mm、高さ33.5mmのステンレス鋼製円筒であり、トナーの充填補助具として使用される。カプラー内面は精密加工され平滑度に優れる。カプラーの下端部には小さな切り込みがあり、絞りフランジとの結合状態を正常に保持するために機能する。
トナーの嵩密度は0.3?0.4g/cm^(3)程度であるから、絞り部にのせたトナーの高さは約20mmとなる(図4の点々部分5)。カプラーを使用することによりトナーの充填操作が容易になり、かつトナー試料を水平に均一にのせることができる。
粉体の嵩密度をメスシリンダーを用いて測定する例のように、カプラーは粉体を取り扱う補助具として、慣用されるものである。
トナー試料が同一であれば、トナーののせ方に多少の凹凸や偏在があっても、流動性指数の測定値は殆ど同一となる。また、のせるべきトナー試料の重量は2.5?3.5gの範囲で殆ど同一となることを確認している。従って、「トナー3g」とは、必ずしも「トナー3.00g」を意味するものではなく、「約3g」に相当する。

3.「少しずつ絞りを開けていった」について
絞り部の開度が1mmの状態でトナー試料3gをのせ、その後調整つまみを摺動することにより、開度を大きくする。絞り部やカプラーに振動を与えないように、ゆっくり徐々に調整つまみを円弧に沿って摺動することが肝要である。開口速度は特に限定されるものではないが、通常、1?3mm/sec程度である。
図1の絞り部において、開度33mmが最大であるが、開度33mmに至る以前に、のせたトナー試料3gの殆ど全量が一気に落下する現象が観察される。その時点の絞り開度(単位:mm)が「流動性指数」として定義される。
トナーの重力がトナー粒子相互の付着力(凝集力)を上回った時点にトナーの落下が生じるのであって、絞り羽根の形状、枚数、表面状態、重なり具合、動き方、形成される開口の形状、開口速度などはトナーの落下の程度に大きな影響を与えない。しかしながら、かかる影響はゼロではないので、流動性指数は、5点の測定データから最大値及び最小値を除外して、3点平均として求めた。

4.「測定環境(湿度、温度)」について
いわゆる通常環境で測定したものである。通常環境の代表例として、25℃、1気圧、相対湿度50%の条件を採用した。

5.参考図
【図5】【図6】【図7】
(当審注:図5?7の記載は省略する。)
図5は、絞り開度が1mmの状態の絞り部を示す参考図(参考写真)である。コントラストが必ずしも適切ではないが、絞り羽根の形状、開度、調整つまみとその目盛りははっきり認識できる。
図6は、絞り開度が10mmの状態の絞り部を示す参考図(参考写真)である。中心部分に開度10mmの穴の存在が認識でき、調整つまみがある位置の目盛りが10になっていることと符合する。
図7は絞り部にカプラーをセットした参考図(参考写真)である。
・・・(中略)・・・
1.以上詳述した通り、本願発明の「流動性指数」は、明細書の記載に基づき、かつ周知慣用の技術に従って、再現性良好に測定可能なものである。拒絶理由通知で指摘されたような細部にわたる装置の形状、測定条件等の開示がなくても、当業者は市販の銀塩写真機から取り出した絞り部を用いて、充分正確にかつ容易に測定を行うことができる。



第4 当審の判断
1.はじめに
特許請求の範囲の請求項1には、「以下の方法により測定される流動性指数が5mm以上18mm以下であり」との記載に続いて、その測定方法として、「流動性指数測定方法:銀塩写真機の絞りの部分の上にトナー3gを入れ、徐々に絞りを開けていき、使用したトナーの半分以上が絞りの穴から落下した時の絞り直径(mm)を流動性指数とした。」との記載がある。
また、発明の詳細な説明には、【0031】にも請求項1と同様の記載があり、【0081】には「[流動性指数] 銀塩写真機から取り出した絞りの上にトナー3gをのせ、少しずつ絞りを開けていった。始めて1.5gのトナーが落下したときの絞りの開口直径を測定した。同様に5回行い、最大と最小を除いた3点の平均値を流動性指数(mm)とした。」との記載がある。
しかし、当審の拒絶理由通知で述べたように、本願の上記流動性指数は、銀塩写真機の絞りを利用した手法によるものであり、銀塩写真機の絞りを利用した手法は、従来から利用されているトナーの流動性を測る手法(例えば、篩いを用いた方法、安息角や嵩密度をみる方法)とは異なるものであり、また、トナー以外の分野において、流動性を測定する手法として一般的に使用されていたともいえない。
そして、本願の流動性指数を測定する手法については、用いられる絞り装置や測定条件等が、当業者に自明ではないから、特許請求の範囲や発明の詳細な説明において、用いられる絞り装置や測定条件等が、明確に開示されている必要がある。
これに対して、請求人は、上記「第3」で、「本願発明の「流動性指数」は、明細書の記載に基づき、かつ周知慣用の技術に従って、再現性良好に測定可能なものである。拒絶理由通知で指摘されたような細部にわたる装置の形状、測定条件等の開示がなくても、当業者は市販の銀塩写真機から取り出した絞り部を用いて、充分正確にかつ容易に測定を行うことができる。」と主張しているので、以下、請求人の主張を検討しつつ、当審の判断を示す。

2.「銀塩写真機から取り出した絞り」について
(a)本願の流動性指数測定方法は、請求項1や発明の詳細な説明の【0031】に記載されるように、「銀塩写真機の絞りの部分の上にトナー3gを入れ、徐々に絞りを開けていき、使用したトナーの半分以上が絞りの穴から落下した時の絞り直径(mm)を流動性指数とした。」というものであり、
絞りの材質や表面状態が、トナー落下の程度に影響することは当然であり(例えばトナーが滑りやすい絞りか、滑りにくい絞りかにより、トナー落下の程度は全く異なる)、また、絞り羽の形状や個数、絞り羽の動き方、絞り羽の重なり具合、形成される開口の形状、等の微妙な違いが、トナー落下の程度に影響を与えることも明らかであるから、
流動性指数測定方法の条件として、「銀塩写真機の絞り」の仕様が特定されることは、請求項1に係る発明を特定する上で必須であるところ、
特許請求の範囲を含む明細書、図面には、「銀塩写真機の絞り」の仕様を特定することができる記載がない。

(b)請求人は、「銀塩写真機の絞り」の仕様について、意見書で、「銀塩写真機には各種のものが知られており、形状、サイズ、形式等様々であるが、該写真機から取り出した絞り部分は、独立した一つの部品として存在し、銀塩写真機のメーカが異なってもほぼ同様の形状、サイズを有するものである。」と主張して、銀塩写真機の絞り部の一例を、図1に示して、「絞り羽根は薄板状で、同一形状のもの12枚から構成される。材質はアルミニウムで、その表面は精密加工され、平滑度に優れる。絞りフランジは外径53mm、内径34mm、高さ8mmである。調整つまみを絞りフランジの円弧に沿って摺動することにより、絞りの開度(絞り直径)は1?33mmの間で調整可能である。絞り部が全閉した状態が開度1mm、全開した状態が開度33mmとなる。」と説明している。
確かに、「写真機から取り出した絞り部分は、独立した一つの部品として存在し、銀塩写真機のメーカが異なってもほぼ同様の形状、サイズを有するもの」と大雑把にはいえるかもしれないが、「銀塩写真機の絞り」が、厳格に標準化された、全く同一の形状、サイズのものばかりであるとは到底いえないものである。
請求人が図1で例示する「絞り羽根は薄板状で、同一形状のもの12枚から構成される。材質はアルミニウムで、その表面は精密加工され、平滑度に優れる。」ものが、周知な「銀塩写真機の絞り」であり、実際に発明者が使用したものであるとしても、異なる仕様の「銀塩写真機の絞り」が存在することは否定することができない。例えば、絞り羽根の枚数や形状が異なり、また、その材質や表面性状が異なるものが存在することは、文献を示すまでもなく明らかである。
そうすると、請求人の釈明を検討してみても、本願で用いられる「銀塩写真機の絞り」の仕様を、当業者が自明であると理解し得る程度にまで、客観的に特定することができない。

3.「トナー3gをのせ」について
請求人は、本願の流動性指数測定方法では充填補助具としてカプラーを使用することを、意見書で初めて明らかにし、「粉体の嵩密度をメスシリンダーを用いて測定する例のように、カプラーは粉体を取り扱う補助具として、慣用されるものである。」と釈明している。
充填補助具としてカプラーを使用することは慣用手段であるとしても、カプラー内径25mmというサイズまでは慣用ではないというべきである。
また、請求人は、トナー3gをのせたときの、絞り部にのせたトナーの高さが約20mmになるとも説明しているが、絞り部にのせたトナーの高さは、本願の流動性指数測定方法の条件としては重要なものであるというべきである。例えば、トナーが絞り部に高く積まれているほど、小さい絞り開口でも落下しやすいことは容易に想起されるところである。そして、絞り部にのせた3gのトナーの高さは、カプラー内径というサイズに依存するものであるから、それらサイズが特定されている必要があるところ、精確なサイズは、本願の明細書及び図面には記載されておらず、また、当業者に自明でもない。

4.「少しずつ絞りを開けていった」について
請求人は、意見書で「トナーの重力がトナー粒子相互の付着力(凝集力)を上回った時点にトナーの落下が生じるのであって、絞り羽根の形状、枚数、表面状態、重なり具合、動き方、形成される開口の形状、開口速度などはトナーの落下の程度に大きな影響を与えない。」と説明する。
請求人が「銀塩写真機の絞り」の仕様の多様性について、どの程度のものを念頭においているかは不明であるが、本願の請求項1で規定する流動性指数が、「5mm以上18mm以下」(使用したトナーの半分以上が絞りの穴から落下した時の絞り直径(mm))というように、1mm単位の精度を要求するものであり、請求人の認識を超えて多様性を有する「銀塩写真機の絞り」において(上記1.参照)、仕様の違いを超えて、0.5mm程度の測定差におさまるかどうかは不明である。

5.「測定環境(湿度、温度)」について
請求人が釈明する「いわゆる通常環境で測定したものである。通常環境の代表例として、25℃、1気圧、相対湿度50%の条件を採用した。」は、通常、想定される程度の測定環境ではあるから、「測定環境(湿度、温度)」については、本願明細書に明記はないが、一応理解はできる。

6.まとめ
以上のこと(特に上記2.?4.)から、意見書での請求人の主張等を検討しても、本願の測定方法で用いられる絞り装置や測定条件等が不明確であるから、本願の流動性指数を測定する方法を特定することができず、結局、請求項1に係る発明の根幹をなす「流動性指数」の定義を特定することができないので、請求項1に係る発明、及び請求項1を引用する請求項2?6に係る発明は、明確でない。
よって、特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

また、本願の測定方法で用いられる絞り装置や測定条件等が不明確であり、本願の流動性指数を測定する方法を特定することができないから、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1?6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
よって、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。


第5 むすび
以上のとおりであるから、本願は、特許第36条第6項第2号、及び同条第4項に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-03 
結審通知日 2009-06-09 
審決日 2009-06-22 
出願番号 特願2000-109055(P2000-109055)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G03G)
P 1 8・ 536- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 淺野 美奈  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 伏見 隆夫
伊藤 裕美
発明の名称 画像形成方法  
代理人 特許業務法人志成特許事務所  
代理人 長谷川 曉司  

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