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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B41M
審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  B41M
審判 全部無効 2項進歩性  B41M
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B41M
管理番号 1202237
審判番号 無効2007-800269  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-12-04 
確定日 2009-07-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3867915号「偽造防止印刷物及びその製造方法」の特許無効審判事件についてされた平成20年 9月25日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の決定(平成20年(行ケ)第10410号平成21年2月13日言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
平成15年 9月16日 本件特許出願(特願2003-322737号)
平成18年10月20日 本件設定登録(特許第3867915号)
平成19年12月 4日 本件無効審判の請求
平成20年 2月22日 答弁書
平成20年 3月14日 審尋(起案日)
平成20年 4月 2日 回答書(被請求人)
平成20年 4月 2日 回答書(請求人)
平成20年 6月11日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成20年 6月24日 口頭審理の実施
平成20年 6月24日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成20年 7月 1日 物件提出(請求人)
平成20年 7月 7日 上申書(被請求人)
平成20年 7月17日 上申書(請求人)
平成20年 7月22日 上申書(被請求人)
平成20年 9月25日 審決(起案日)
平成21年 1月16日 訂正審判の請求(2009-390004号)
平成21年 2月13日 審決取消しの決定
(平成20年(行ケ)第10410号)
平成21年 3月 5日 上申書
平成21年 3月 5日 訂正請求書
平成21年 4月14日 弁駁書

第2 当事者の主張
1.請求人の主張
(1)無効理由1
本件特許の請求項1乃至5に係る各発明は、甲第1号証の1の証明願に添付の証明書用紙により公然実施された発明及び甲第2号証乃至甲第5号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(ただし、平成20年6月24日の口頭審理において、「無効理由1の趣旨は、甲第1号証の1にかかる公然実施された発明に対して、甲第2?5号証に係る発明を適用するということで容易想到というのであって、甲第2?5号証に係る発明を組み合わせて容易想到とするものではない。」(「第1回口頭審理調書」参照。)と述べている。)

[証拠方法]
なお、以下では、適宜「甲1」?「甲14」と略して標記する場合がある。

(審判請求書と共に提出されたもの)
甲1の1(1)証明願
小林記録紙株式会社に添付帳票の発注があり、平成14年5月
以降から市町村合併に至るまでの間使用した事実を日置市長が
証明するもの)
(2)証明書用紙(「こけけ王国」なる表示のあるもの)
(3)20415371なる番号の付された作業指導票
甲1の2(1)写真撮影報告書
小林クリエイト株式会社の田中順子により2007年8月22日に
撮影された写真1?3が添付されている。
甲1の3(1)実験成績証明書
小林クリエイト株式会社の田中順子により行われた甲1の1に
添付した証明書用紙の色測定報告
3.考察に「試験用紙の各測定箇所は、マンセル表色系での彩度
(Chroma)が0.49?0.66と極めて小さいものであった。
彩度がゼロでないため厳密には無彩色ではないものの、
この程度であれば、一般的な条件下で無彩色で知覚される。」
との報告内容がある。
甲1の4 甲1の1に添付した証明書用紙の複写物

甲2 特開平7-266770号公報
甲3 特開平9-131961号公報
甲4 登録実用新案第3010365号公報
甲5 特公平3-32794号公報

(平成20年4月2日付け回答書と共に提出されたもの)
甲6 宮崎中央運輸株式会社のNo.94-1214-3370の原票番号を付された
着店原票のコピー
荷受け人として東市来町役場情報管理課、荷送人として
小林記録紙株式会社九州営業所、品名記事として証明書用紙
(偽造防止)10,000枚、11818596、5/1必着
とした記載がされている。
(平成20年6月24日の口頭審理において原本を確認。)
甲7 作業指導標なるクリーム色の封筒様のもの
甲8 小林記録紙株式会社における【ビジネスフォーム ガイド
ブック】コピー
刷色一覧表にページ、カラーNo.、刷色名が示され、インキ
コードについての説明が付されている。
(当該【ビジネスフォーム ガイドブック】は、平成20年7月
2日付けで物件提出がなされた。)
添付資料 作業指導標処理フロー

(平成20年6月11日付け口頭審理陳述要領書と共に提出されたもの)
甲9 原稿(平成14年4月25日作成の注文番号1181856の
もの)
甲10 前回刷見本(平成16年2月10日作成の注文番号11817
459のもの)
参考資料1 名古屋文理大学で使用されている証明書用紙
参考資料説明書 名古屋文理大学で使用されている証明書用紙に係る説明

(平成20年7月17日付け上申書と共に提出されたもの)
甲11 特許第3867915号公報(本件公報)
甲12 特開2005-88276号公報
甲13 実公平3-15337号公報
甲14 実公平3-15338号公報

(2)無効理由2
本件特許請求の範囲の請求項1及び2に記載の発明特定事項のうち「目視上、無彩色となる領域」は、どのような条件下で観察した場合に無彩色と知覚されるかが記載されておらず、また、明細書の発明の詳細な説明にもかかる事項について記載されていないから、請求項1及び請求項2に係る発明は不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

(3)無効理由3
本件特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の記載において、「有彩色」及び「無彩色」という用語は両者の境界が不明確であり、また、明細書の発明の詳細な説明にもかかる用語について明確な定義がなされていないから、請求項1及び請求項2に係る発明は不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

(4)無効理由4
本件特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載の発明特定事項のうち「目視上、無彩色となる領域」は、地紋を組み込む場合にどの領域が無彩色となるのかが記載されておらず、また、明細書の発明の詳細な説明にもかかる事項について記載されていないから、請求項1及び請求項2に係る発明は不明確であり、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、地紋を組み込む場合にどのように「目視上、無彩色となる領域」を形成するかについて、明細書の発明の詳細な説明には、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

(5)平成21年4月14日付け弁駁書における主張
平成21年3月5日付けの訂正請求は、特許法第134条の2第1項ただし書各号に掲げる事項を目的としておらず、同条第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合しないから認められるべきではない。
訂正前の特許請求の範囲の請求項1乃至5についての特許は平成19年12月4日付けの審判請求書に記載された無効理由を有しており、無効とされるべきである。
仮に、上記訂正請求が認められるとしても、訂正後の特許請求に範囲の請求項1乃至5についての特許は特許法第123条第1項に規定される無効理由を有しており、無効とされるべきである。
a.無効理由1?3
上記審判請求時の理由を訂正に合わせて変更した理由
b.無効理由4
訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載の発明特定事項のうち「略均一状の面」という特定事項は比較の基準又は程度が不明確であり、発明の外延を把握することができないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
c.無効理由5
訂正後の特許請求の範囲の請求項4及び請求項5にあって、偽造防止版又は刷り合わせ版に地紋版を組み込んだ場合、「偽造防止印刷」と「平網」と「地紋」によって「目視上、略均一状の面」をどのように形成するか当業者が実施し得る程度に明確かつ十分に記載されていないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

[証拠方法]
甲15 平成18年3月23日付け拒絶理由通知
甲16 特開平8-175063号公報
参考資料2 「大辞泉 増補・新装版」株式会社小学館、第841頁

2.被請求人の反論
訂正請求は、適法であり、訂正後の請求項1?5に係る発明には、無効理由がない。

第3 訂正の許否の判断
1.訂正事項
平成21年3月5日付け訂正請求は、添付された特許請求の範囲及び明細書のとおり訂正することを求めるものであり、次の訂正事項からなっている。
訂正事項a:請求項1を「複写機で再現可能な大きい点の集合体もしくは線群と、複写再現能力に満たない小さい点の集合体を組み合わせた偽造防止印刷を有彩色の第1のインキで形成すると共に、上記第1のインキと異なる有彩色の第2のインキで複写再現能力に満たない小さい点の集合体である平網を潜像とその背景となる領域に刷り合わせて、目視上、無彩色となる領域を形成してなる偽造防止印刷物であって、その複写物の刷り合わせ領域に対応した領域には、第1のインキの色により、有彩色の潜像若しくは背景が目視できる状態で現れることを特徴とする偽造防止印刷物。」から「複写機で再現可能な大きい点の集合体もしくは線群と、複写再現能力に満たない小さい点の集合体を組み合わせ、潜像とその背景を構成した偽造防止印刷を有彩色の第1のインキで形成すると共に、上記第1のインキの色と合成すると無彩色になる有彩色の第2のインキで複写再現能力に満たない小さい点の集合体である平網を前記偽造防止印刷を構成する潜像及びその背景と刷り重ねて、目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色となる略均一状の面を形成してなる偽造防止印刷物であって、その複写物上には、前記略均一状の面を形成している無彩色と異なる有彩色の第1のインキの色により、潜像若しくは背景が目視できる状態で現れることを特徴とする偽造防止印刷物。」と訂正する。
訂正事項b:請求項2を「基材上に複写機で再現される大きい点の集合体もしくは線群と複写再現能力に満たない小さい点の集合体を組み合わせた偽造防止版を有彩色の第1のインキで印刷する工程と、複写再現能力に満たない小さい点の集合体である平網を潜像とその背景となる領域に刷り合わせる刷り合わせ版を前記第1のインキと異なる有彩色の第2のインキで印刷し、上記第1のインキと第2のインキとによって、目視上、無彩色となる領域を形成する工程と、からなり、その複写物の刷り合わせ領域に対応した領域には、第1のインキの色により、有彩色の潜像若しくは背景が目視できる状態で現れることを特徴とする偽造防止印刷物の製造方法。」から「基材上に複写機で再現される大きい点の集合体もしくは線群と複写再現能力に満たない小さい点の集合体を組み合わせ、潜像とその背景を構成した偽造防止版を有彩色の第1のインキで印刷する工程と、複写再現能力に満たない小さい点の集合体である平網を前記偽造防止印刷を構成する潜像及びその背景と刷り重ねる刷り合わせ版を前記第1のインキの色と合成すると無彩色になる有彩色の第2のインキで印刷し、前記偽造防止版と前記刷り合わせ版とを刷り重ねることによって、目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色となる略均一状の面を形成する工程と、からなり、その複写物上には、前記略均一状の面を形成している無彩色と異なる有彩色の第1のインキの色により、潜像若しくは背景が目視できる状態で現れることを特徴とする偽造防止印刷物の製造方法。」と訂正する。
訂正事項c:明細書の段落【0008】を「本発明は上記に鑑み提案されたもので、複写機で再現可能な大きい点の集合体もしくは線群と、複写再現能力に満たない小さい点の集合体を組み合わせ、潜像とその背景を構成した偽造防止印刷を有彩色の第1のインキで形成すると共に、上記第1のインキの色と合成すると無彩色になる有彩色の第2のインキで複写再現能力に満たない小さい点の集合体である平網を前記偽造防止印刷を構成する潜像及びその背景と刷り重ねて、目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色となる略均一状の面を形成してなる偽造防止印刷物であって、その複写物上には、前記略均一状の面を形成している無彩色と異なる有彩色の第1のインキの色により、潜像若しくは背景が目視できる状態で現れることを特徴とする偽造防止印刷物に関するものである。」と訂正する。
訂正事項d:明細書の段落【0009】を「また、本発明は、上記偽造防止印刷物の製造方法をも提案するものであり、基材上に複写機で再現される大きい点の集合体もしくは線群と複写再現能力に満たない小さい点の集合体を組み合わせ、潜像とその背景を構成した偽造防止版を有彩色の第1のインキで印刷する工程と、複写再現能力に満たない小さい点の集合体である平網を前記偽造防止印刷を構成する潜像及びその背景と刷り重ねる刷り合わせ版を前記第1のインキの色と合成すると無彩色になる有彩色の第2のインキで印刷し、前記偽造防止版と前記刷り合わせ版とを刷り重ねることによって、目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色となる略均一状の面を形成する工程と、からなり、その複写物上には、前記略均一状の面を形成している無彩色と異なる有彩色の第1のインキの色により、潜像若しくは背景が目視できる状態で現れることを特徴とする。」と訂正する。
訂正事項e:明細書の段落【0010】を「本発明の偽造防止印刷物は、第1のインキの色と第2のインキの色とを合わせた合成色の略均一状のベース面が形成されるものであるが、カラーコピーを取ると、合成色とは異なる色(第1のインキ)の着いた潜像(隠し文字や隠しマークなど)若しくは背景が複写物上に発現するので、複写が行われたことが第三者に容易に且つ明確に認識され、犯罪防止が図られる。そのため、本発明の偽造防止印刷物及びその製造方法は、高度な偽造防止効果が求められる各種の証券類や商品券、或いは各種の証明書類等に利用できる。」と訂正する。

2.訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
1-1. 訂正事項aの内、「、潜像とその背景を構成し」を加えた点は、「偽造防止印刷」について限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
1-2. 訂正事項aの内、「第1のインキと異なる有彩色の第2のインキ」を「第1のインキの色と合成すると無彩色になる有彩色の第2のインキ」と訂正した点は、「第1のインキ」と「有彩色の第2のインキ」の関係を「異なる」から更に限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
1-3. 訂正事項aの内、「潜像とその背景となる領域」を「前記偽造防止印刷を構成する潜像及びその背景」と訂正した点について検討する。
上記1-1.で「偽造防止印刷」について、「潜像とその背景を構成し」と限定したこと、及び、訂正前の記載では、「潜像」及び「その背景」と偽造防止印刷との関係が明らかでなく、更に「領域」がどこを意味するのか不明確であったので、上記1-1.に整合させ、「潜像」及び「その背景」と偽造防止印刷との関係を明らかにしたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。
1-4.訂正事項aの内、「に刷り合わせて」を「と刷り重ねて」と訂正した点について検討する。
訂正前の「刷り合わせ」なる特定は、「毛抜き合わせ」や「刷り重ね」等の手法を特定せずに、単に複数の版を同じ領域に刷ることを意味するから、「刷り合わせ」を「刷り重ね」と訂正する点は、「毛抜き合わせ」等を排除し、「刷り重ね」に限定したものと認められる。また、訂正前の「平網を・・・に刷り合わせて」という表現では、第1のインキの層と第2のインキの層の積層順まで特定しているとまではいえないから、「に刷り合わせて」を「と刷り重ねて」と訂正した点は、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。
1-5.訂正事項aの内、「目視上、無彩色」を「目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色」と訂正した点は、「無彩色」について限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
1-6.訂正事項aの内、「無彩色となる領域を形成してなる偽造防止印刷物」を「無彩色となる略均一状の面を形成してなる偽造防止印刷物」と訂正した点について検討する。
訂正前の記載では、偽造防止印刷物のどの領域が無彩色となるのか明らかでなかったので、本件特許第3867914号公報第3頁第29?30行の「本発明の偽造防止印刷物は、第1のインキと第2のインキとを合わせた合成色の略均一状のベース面が形成されるものである」の記載に基づいて、偽造防止印刷物のベースとなる「略均一状の面」が無彩色となることを明確にしたものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。
1-7.訂正事項aの内、「その複写物の刷り合わせ領域に対応した領域」を「その複写物上」と訂正した点について検討する。
上記1-6.で、偽造防止印刷物のベースとなる面が「無彩色となる略均一状の面」となることを明確にしたことに伴い、「刷り合わせ領域に対応した領域」がどの領域を意味するか不明確となったから、「その複写物の刷り合わせ領域に対応した領域」を「その複写物上」と訂正した点は、上記1-6.に整合させるとともに不明りょうな記載を明りょうにしたものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。
1-8.訂正事項aの内、「第1のインキの色」を「前記略均一状の面を形成している無彩色と異なる有彩色の第1のインキの色」と訂正した点は、「第1のインキの色」について限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
1-9.訂正事項aの内、「第1のインキの色により、有彩色の潜像若しくは背景が目視できる状態で現れる」を「第1のインキの色により、潜像若しくは背景が目視できる状態で現れる」と訂正した点は、上記1-8.で「前記略均一状の面を形成している無彩色と異なる有彩色の第1のインキの色」と訂正したことに伴い、重複する事項を省き、明りょうとするものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。

(2)訂正事項bについて
訂正事項bは、本件請求項1の偽造防止印刷物の製造方法に関する発明であり、訂正事項bの内、下記2-1.?2-8.は、上記訂正事項aで検討したのと同様である。
2-1.「、潜像とその背景を構成し」を加えた点
2-2.「潜像とその背景となる領域」を「前記偽造防止印刷を構成する潜像及びその背景」と訂正した点
2-3.「に刷り合わせて」を「と刷り重ねて」と訂正した点
2-4.「第1のインキと異なる有彩色の第2のインキ」を「第1のインキの色と合成すると無彩色になる有彩色の第2のインキ」と訂正した点
2-5.「目視上、無彩色」を「目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色」と訂正した点
2-6.「その複写物の刷り合わせ領域に対応した領域」を「その複写物上」と訂正した点
2-7.「第1のインキの色」を「前記略均一状の面を形成している無彩色と異なる有彩色の第1のインキの色」と訂正した点
2-8.「第1のインキの色により、有彩色の潜像若しくは背景が目視できる状態で現れる」を「第1のインキの色により、潜像若しくは背景が目視できる状態で現れる」と訂正した点

2-9.訂正事項bの内、「上記第1のインキと第2のインキとによって」を「前記偽造防止版と前記刷り合わせ版とを刷り重ねることによって」と訂正した点は、上記2-3.の訂正に伴い、また、刷り重ねる対象を明りょうとするものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。
2-10.訂正事項bの内、「無彩色となる領域を形成する工程」を「無彩色となる略均一状の面を形成する工程」と訂正した点について検討する。
訂正前の記載では、無彩色となる領域がどこであるか明らかでなかったので、本件特許第3867914号公報第3頁第29?30行の「本発明の偽造防止印刷物は、第1のインキと第2のインキとを合わせた合成色の略均一状のベース面が形成されるものである」の記載に基づいて、偽造防止印刷物のベースとなる「略均一状の面」が無彩色となることを明確にしたものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。

(3)訂正事項c、d、eについて
訂正事項c、d、eは、訂正事項a、訂正事項bに整合させたものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。

(4)まとめ
上記のように、訂正事項a?eは、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたこと、及び実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでないことは明らかである。
したがって、本件訂正は、特許法134条の2第1項ただし書き並びに同条5項で準用する同法126条3項及び4項の規定に適合する。
よって本件訂正を認める。

第4 本件審判請求についての判断
1.本件訂正発明の認定
上記のように本件訂正が認められるから、本件特許第3867915号の請求項1?5に係る発明は、訂正請求書に添付した特許請求の範囲の【請求項1】?【請求項5】に記載されたとおりのものであり、これを分節すると以下の通りである。(A?Iの附番は当審で付した。)(以後、訂正後の請求項1?請求項5に係る発明を「本件訂正発明1」?「本件訂正発明5」ということがある。)

【請求項1】
A.
A1 複写機で再現可能な大きい点の集合体もしくは線群と、
A2 複写再現能力に満たない小さい点の集合体を
A3 組み合わせ、潜像とその背景を構成した偽造防止印刷を有彩色の第1のインキで形成すると共に、
B.上記第1のインキの色と合成すると無彩色になる有彩色の第2のインキで複写再現能力に満たない小さい点の集合体である平網を前記偽造防止印刷を構成する潜像及びその背景と刷り重ねて、
C.目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色となる略均一状の面を形成してなる偽造防止印刷物であって、
D.その複写物上には、前記略均一状の面を形成している無彩色と異なる有彩色の第1のインキの色により、潜像若しくは背景が目視できる状態で現れることを特徴とする
E.偽造防止印刷物。

【請求項2】
F.基材上に複写機で再現される大きい点の集合体もしくは線群と複写再現能力に満たない小さい点の集合体を組み合わせ、潜像とその背景を構成した偽造防止版を有彩色の第1のインキで印刷する工程と、複写再現能力に満たない小さい点の集合体である平網を前記偽造防止印刷を構成する潜像及びその背景と刷り重ねる刷り合わせ版を前記第1のインキの色と合成すると無彩色になる有彩色の第2のインキで印刷し、前記偽造防止版と前記刷り合わせ版とを刷り重ねることによって、目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色となる略均一状の面を形成する工程と、からなり、その複写物上には、前記略均一状の面を形成している無彩色と異なる有彩色の第1のインキの色により、潜像若しくは背景が目視できる状態で現れることを特徴とする偽造防止印刷物の製造方法。

【請求項3】
G.さらに印刷物のデザインとして地紋版又はイラスト版をそれぞれの指定色で印刷する工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の偽造防止印刷物の製造方法。

【請求項4】
H.偽造防止版に印刷物のデザインとして地紋版又はイラスト版を組み込むようにしたことを特徴とする請求項2又は3に記載の偽造防止印刷物の製造方法。

【請求項5】
I.刷り合わせ版に印刷物のデザインとして地紋版又はイラスト版を組み込むようにしたことを特徴とする請求項2?4の何れか一項に記載の偽造防止印刷物の製造方法。

2.甲各号証の記載事項
甲第1号証?甲第5号証には、それぞれ下記の事項が記載されている。
(2-1)甲第1号証の1:以下のA?Cからなる。
A.「証明願」:小林記録紙株式会社にに対し、添付帳票を発注し、平成14年5月以降から市町村合併に至るまでの間使用した事実を日置市長が証明するもの)
B.「証明書用紙」(「こけけ王国」なる表示のあるもの)
C.「20415371なる番号の付された作業指導票」のコピー

ここで、A.「証明願」は、小林記録紙株式会社の代表取締役社長:小林祥浩から、日置市役所(旧東市来町役場)に対し、平成19年5月29日付けで、添付されたC.「20415371なる番号の付された作業指導票」に記載される帳票NO.20415371に係る「証明書用紙(偽造防止)」の発注が、注文番号11818596、11817459、11811373としてなされた事実、及び平成14年5月以降から市町村合併に至るまでの間使用した事実を証明して欲しい旨の証明願いがなされ、これらの事実に間違いないことを、現日置市長:宮路高光の名により平成19年6月8日付けで証明しているものである。
「鹿児島県日置市長」の押印が認められる。
そして、ここで証明対象となるのは、一体に綴じられた「こけけ王国」(湯之元温泉と薩摩焼の郷 サンセット・ビーチ絵江口浜)なる表示のある「証明書用紙」であることが把握できる。

(2-2)甲第1号証の2:写真撮影報告書(小林クリエイト株式会社の田中順子により2007年8月22日に撮影された写真1?3)
A.撮影者:小林クリエイト株式会社 田中順子
B.撮影対象:甲第1号証の1の証明願に添付した証明書用紙
C.撮影日時:2007年8月22日
D.撮影内容の説明

ここで、「写真1」は、潜像及び背景を含む証明書用紙表面の拡大写真である。「写真2」は、写真1の右下部の拡大写真である。「写真3」は、潜像を含まない背景部分の拡大写真である。証明書用紙表面には、潜像が茶色の大きな網点で、背景が茶色の小さい網点で印刷されている。また、「HIGASHIICHIKI」なる地紋が青色の小さい網点で潜像と背景に刷り合わされている。

(2-3)甲第1号証の3:実験成績証明書(小林クリエイト株式会社の田中順子により行われた甲1の1に添付した証明書用紙の色測定報告)
記載内容:「1.実験内容
(1)試験用紙 甲第1号証の1の証明願に添付した証明書用紙
(2)試験方法 JIS Z8722:2000「色の測定方法-反射及び透過物体色」の規定に従い、上記試験用紙の表面の色彩を、分光測色計(ミノルタ CM2002)を用いて下記条件で測定した。
a)測定方法の種類
分光側色方法 方法b(一光路の分光測光器を用いる場合)
b)等色関数の種類
X10Y10Z10表色系
c)測色用イルミナントの種類
標準の光D65
d)照明及び受光の幾何学的条件
条件C
e)三刺激値の計算方法
波長間隔10nmピッチ
(3)測定箇所
試験用紙表面の1?6の測定箇所について測定を行った。図1は、試験用表面の一部分を拡大したものであり、図1において赤丸で囲まれた各部位が、試験用紙表面の各測定箇所1?6に対応している。」
【図1】
「2.結果
L*a*b表色系およびマンセル表色系で表した結果を表1に示す。
【表1】
測定箇所 L* a* b* Hue Value Chroma
1 88.73 0.50 3.36 1.41Y 8.85 0.55
2 88.63 0.35 3.07 2.10Y 8.84 0.49
3 88.52 0.78 3.97 0.45Y 8.83 0.66
4 88.51 0.38 3.13 1.98Y 8.83 0.50
5 88.60 0.46 3.33 1.62Y 8.84 0.54
6 88.44 0.39 3.01 1.94Y 8.82 0.49」
「3.考察
以上のように、試験用紙の各測定箇所は、マンセル表色系での彩度(Chroma)が0.49?0.66と極めて小さいものであった。彩度がゼロでないため厳密には無彩色ではないものの、この程度の彩度であれば、一般的な条件下で無彩色として知覚される。」

(2-4)甲第1号証の4:甲1の1に添付した証明書用紙の複写物
シャープ製AR-C260CS:フルカラーモード、濃度自動調整モードで複写されたものであって、証明書用紙の茶色とライトブルーの網点とが印刷されていた領域に、茶色で「複写」なる文字が目視できる状態で現れている。

(2-5)甲第2号証:特開平7-266770号公報
以下に摘記した記載がある。

「【請求項1】基体表面に、肉眼では一様に認識されるが、複写した場合には警告像部分と背景部分とを肉眼で識別可能に顕出し得るよう印刷した印刷物であって、警告像部分は少なくとも2色のインキで構成し、背景部分も前記警告像部分と同一の少なくとも2色のインキで構成するとともに、同一色インキにおける警告像部分と背景部分とは、異なるスクリーン線数で印刷したことを特徴とする複写偽造防止用印刷物。」

段落【0004】「本発明は、これら従来の偽造防止用印刷物が有していた不都合を解消し、濃い濃度から薄い濃度までの広範囲にわたるカラー複写において、鮮明な警告像もしくは背景が顕出して、警告像を明確に識別し得る複写偽造防止用印刷物を提供することを目的とする。」

段落【0009】「第1の色としてシアン、第2の色としてマゼンタを採用した第1実施例について説明すると、第1の色であるシアン色の印刷状態は図1に示すように、印刷物の基体1表面に、「コピー」の文字2からなる警告像部分をスクリーン線数65線、スクリーン濃度15%程度で印刷し、この文字2以外の地模様3部分を背景部分としてスクリーン線数150線、スクリーン濃度15%程度で印刷する。又、第2の色であるマゼンタ色の印刷状態は図2に示すように、印刷物の基体1表面には、「コピー」の文字2からなる警告像部分をスクリーン線数150線、スクリーン濃度10%程度で印刷し、この文字2以外の地模様3部分を背景部分としてスクリーン線数65線、スクリーン濃度10%程度で印刷する。」

段落【0010】「図示してはいないが、基体1上には通常の印刷物と同様に、タイトル、金額等の各種の印刷が可能である。」

段落【0011】「カラー複写機の濃淡調節を最も淡い状態にして複写した場合には、シアン色インキによるスクリーン線数65線、スクリーン濃度15%程度の印刷部分とマゼンタ色インキによるスクリーン線数150線、スクリーン濃度10%程度の印刷部分を重ね刷りした文字2部分のみがシアン色で確認された。」

段落【0020】「本発明における異なる色の組み合わせは、上述した2原色の組み合わせに限られるものではなく、3原色の組み合わせや、2原色または3原色と墨インキとの組み合わせでもよいものである。また、肉眼による警告像部分と背景部分の識別をより困難にするために、カムフラージュパターンを全面的に印刷してもよいものである。」

(2-6)甲第3号証:特開平9-131961号公報
以下に摘記した記載がある。

段落【0004】「本発明は、上述した問題を解決するためのものであり、目視によっては複写牽制パターンを殆ど判別することができない印刷物を提供することを目的とする。また、本発明は、種々の性能の複写機によっても、あるいは、複写機の性能の向上に対しても、有効に複写牽制機能が機能する複写牽制パターンを有する印刷物を提供することを目的としている。」

段落【0012】「印刷物2を印刷するときに、警告パターン6および背景パターン8と、カムフラージュパターン4とを異なる版を用いて印刷してもよいが、同一の版を用いて印刷すれば、複写部6aに現出する警告パターン6とカムフラージュパターン4とにモアレが生じることを防止でき、警告パターン6aがより明瞭に現出するため、印刷物2の複製形成機能がさらに増大する。」

段落【0024】「上述した実施例では下地に白抜きされたカムフラージュパターンを例示したが、上述した木目模様および正六角形のパターンは第1実施例のように、たとえば、黒色などの有色パターンとして印刷物に形成してもよい。」

(2-7)甲第4号証:登録実用新案第3010365号公報
以下に摘記した記載がある。

段落【0007】「【課題を解決するための手段】本発明においては、万線と網点のいずれか一方を構成子として潜像を形成し且つ他方を構成子として背景を形成し、万線が50線10%、網点が150線10%であるフィルム原版において、基版上の潜像と背景の全体に175線10%の網点からなる地紋を組み込み、一度の刷りで用紙に印刷を施すことによって前記目的を達成することを意図している。」

段落【0008】「【作用】潜像と背景とともに地紋が同じ基版上に組み込んであるため本案原版を用いた印刷は一度で終了する。
そして地紋は、印刷された用紙に模様となって現れるため潜像と背景の双方に干渉し潜像を隠蔽する。用紙を複写機にかけると50線10%の万線は再現されて濃色となるが、150線10%の網点は再現されないで淡色となり、潜像と背景のコントラストが顕著となって潜像が視認される。地紋は175線10%あるため再現されずコピー後の潜像と背景には殆ど干渉することがない。」

(2-8)甲第5号証:特公平3-32794号公報
以下に摘記した記載がある。

特許請求の範囲
「1 複写機で再生されない網点よりなる潜像と複写機で再生される万線よりなる背景をそなえた潜像版を用いて用紙表面に印刷を施し、次に潜像版の万線と干渉してモアレ模様を形成するパターンをそなえたオーバープリント版を用いて用紙表面に複写機で再生されない淡色の重ね刷りを施すようにした印刷物における複写防止用潜像のカムフラージ法。」

1頁2欄12?27行「150線10%の網点よりなる「COPY」と表示した潜像3をそなえ且つ潜像周囲の白地面に50?60線10%程度の万線よりなる背景4をそなえた潜像版2を用いて用紙1の表面に濃色の印刷を施す。そして次に背景4の万線と干渉したときにモアレ模様7を形成する並行線よりなる波形パターン6をそなえたオーバープリント版5を用いて用紙表面に複写機で再生されない淡色の重ね刷りを施して潜像3をカムフラージする。
このようにして得られた印刷物の表面は肉眼をげん惑するモアレ模様7が形成されたことによつて潜像3の存在は全く識別困難となるが、複写機にかけると潜像3とパターン6は再生されず背景4のみ再生される結果潜像3が背景4と区別されて認められる。」

2頁3欄21行?4欄12行「本発明においては潜像版2によつて下刷りを施したのちにオーバープリント版5によつて上刷りを施す手法を用いているため、得られた印刷物は第4図示のように用紙1の上面に、潜像と背景のインキ層Aの上面にパターンのインキ層Bが重合した構成となり、したがつてインキ層Bの色あいは多様に選択し得るので印刷物の用途や体裁に応じた色柄が得られると共に、パターン6の形状や角度を変えることによつて変化に富んだモアレ模様を形成することもできるため印刷物に任意の装飾効果を発揮せしめる実益があり、印刷物における複写防止用潜像をカムフラージする方法として本発明は極めて有利なものである。」

3.当審の判断
本件訂正後の特許請求の範囲の各請求項に係る発明が、明らかに把握できない限り、これら発明を先行技術と対比することはできないことから、これらの発明が明確に把握できず特許法第36条の規定に違反しているとする平成21年4月14日付け弁駁書における無効理由2?5を、無効理由1に先だって検討することとする。

3-1 特許法第36条の規定違反に係る平成21年4月14日付け弁駁書における無効理由2?5についての判断
(1)無効理由3について
当事者双方において争いのないJIS Z8105(色に関する定義)には、「有彩色」及び「無彩色」について次のように定義されている。
「3008無彩色
1.知覚的意味では、色相をもたない知覚色。白、灰及び黒の色名が普通に用いられ、透過物体には、無色及び中性が用いられる。
2.心理的意味では、2007無彩色刺激を参照。」
「2007無彩色刺激
一般的な条件の下で、無彩(知覚)色を生じさせる(色)刺激。
備考:反射・透過物体の測色においては完全拡散。反射、透過面の色は、それを照明する光源が高い彩度に見える場合を除いて、すべてのイルミナントに対して通常、無彩色刺激と見なされる。」
「3009有彩色
1.知覚的意味では、色相をもつ知覚色。日常会話では、多くの場合「色」はこの意味で、白、灰又は黒と対比して用いられる。修飾語「着色coloured」は、普通、有彩色を意味する。
2.心理的意味では、2008有彩色刺激を参照。」
「2008有彩色刺激
最も普通の条件下で、有彩(知覚)色を生じさせる(色)刺激。」
(当審注:「イルミナント」il-lu-mi-nant (noun) 発光体[物]; 【光】 光源.「リーダーズ英和辞典第2版」研究社による)

すると、「有彩色」及び「無彩色」という用語自体は、それらの境界が明確である。
また、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、偽造防止印刷物及び偽造防止印刷物の製造方法であって、その複写物においては、無彩色と異なる有彩色の第1のインキの色により、潜像若しくは背景が現れることが要請されていることは、本件特許明細書の記載からして明らかといえる。
そして、当該偽造印刷物を作製するにあたって、有彩色の第1のインキと合成すると無彩色になる有彩色の第2のインキを刷り重ねることで形成するものであることも明らかとされており、有彩色の組み合わせで無彩色の状態を得るためには、補色関係にある有彩色を混合すればよいこと自体は、技術常識に相当する。
すると、当該「有彩色」及び「無彩色」という用語についての明確な定義が、本件訂正明細書中でなされていないこと、「有彩色」と「無彩色」の境界が学術的に規定されていないことのみをもって、直ちに、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明が明確でないとすることはできない。

ここで、請求人は、本件に係る審査段階において、出願人である被請求人が提出した平成18年6月1日付け意見書では、「「有彩色」であるか「無彩色」であるかという点が、訂正発明の本質的な事項であるように主張されていた。」と指摘している。
しかしながら、当審では、当該被請求人の主張は、あくまでも本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る特定の総体としての発明がどのような作用効果を生じるかに係るものと解すべきであって、当該無効理由3で指摘されるごとくに、単に、「有彩色」及び「無彩色」という用語のみに本質があるとしたものと解するべきではないと考える。

(2)無効理由2について
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2には、発明特定事項において「目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色となる略均一状の面」なる表現が用いられており、これら請求項記載の中で、どのような条件下で観察しているかが、明らかにされていないことは事実である。
そこで、本件訂正明細書の記載を参照するに、
【発明が解決しようとする課題】に係る段落【0007】には、「そこで、プロセス分解を使わずに、単純に色を組み合わせるだけでオリジナルとの比較なしに偽造品が一目で認識出来るよう、カラー複写物上に色の着いた潜像もしくは背景が現れる偽造防止効果を得る事ができ、さらには偽造防止板を別版となるイラストの一部や地紋と組み合わせる事により、色数を増やさずに同様の効果が得られる印刷物を提案する事を目的とする。」との記載がある。 また、【課題を解決するための手段】に係る段落【0008】及び【0009】では、訂正後の特許請求の範囲の請求項記載が繰り返されているのみであるが、【発明の効果】に係る段落【0010】には「本発明の偽造防止印刷物は、第1のインキの色と第2のインキの色とを合わせた合成色の略均一状のベース面が形成されるものであるが、カラーコピーを取ると、合成色とは異なる色(第1のインキ)の着いた潜像(隠し文字や隠しマークなど)若しくは背景が複写物上に発現するので、複写が行われたことが第三者に容易に且つ明確に認識され、犯罪防止が図られる。そのため、本発明の偽造防止印刷物及びその製造方法は、高度な偽造防止効果が求められる各種の証券類や商品券、或いは各種の証明書類等に利用できる。」、同段落【0011】には「さらに、印刷物のデザインとして組み込まれる地紋又はイラスト版に偽造防止版を組み込むことにより、或いは地紋は又はイラスト版に刷り合わせ版を組み込むことにより、色数を増やさずに、即ち製造コストを抑えつつ同様の効果が得られる印刷物を作ることもできる。」なる記載がある。

これらの記載中、前記発明特定事項における「目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色となる略均一状の面」に関連する使用状況に係る表現は、「オリジナルとの比較なしに偽造品が一目で認識出来る」とするものである。
このように、特段に使用状況が定義付けされていないことからすれば、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に係る発明の使用状況については、技術常識を発動して、通常の使用状況を想定することが妥当といえる。
この点、当審の平成20年3月14日付け審尋に対する被請求人の平成20年4月2日付け回答書における、「本件特許発明の請求項1における「目視上、無彩色となる領域」(「目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色となる略均一状の面」に対応した訂正前の記載)とは、本件訂正後の特許発明が、偽造防止印刷物に係るものであるので、偽造防止用印刷物に対し、潜像の存在を感じさせない距離をおいて眼で観察することが慣用的であるため、通常の視力をもつ人間が、通常の使用方法により、通常の眼で観察する限り、無彩色となる領域を、「その印刷物上には無彩色となる領域が形成されている」として知覚することを意味します。」(同回答書8頁8?13行)との被請求人の主張は理解できる。
それ故に、「目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色となる略均一状の面」との特定は、特段に特殊な使用状況下でなく、通常と称し得る状況下において、「目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色となる略均一状の面」と感じられるのであればよいとするものと解される。
それ故に、訂正明細書に条件提示がないことをもって不明であるとする請求人主張は採用できない。

他方、通常使用状況を前提とした場合において、JISにおける「無彩色」の定義を敷衍した厳密な意味からも「無彩色状態」が特定されている、とする被請求人主張は妥当とはいえない。
本件訂正明細書中ではこのような厳密さを裏付けるところはなく、前記のように技術常識をもって初めて理解し得る程度であって、当該「目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色となる略均一状の面」なる特定は、第1のインキの色と第2のインキの色とを合成した合成色としての概ね「無彩色状態」と感じられる略均一状の面が存在すると解されるべきである。

以上のとおりであるから、請求人が主張する訂正後の請求項1及び請求項2に係る発明が不明確であるとする無効理由は存在しない。

(3)無効理由4について
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の記載には、発明特定事項において「略均一状の面」なる表現が用いられている。
一方、本件訂正明細書の詳細な説明の項の段落【0007】には「そこで、プロセス分解を使わずに、単純に色を組み合わせるだけでオリジナルとの比較なしに偽造品が一目で認識出来るよう、カラー複写物上に色の着いた潜像もしくは背景が現れる偽造防止効果を得る事ができ、さらには偽造防止版を別版となるイラストの一部や地紋と組み合わせる事により、色数を増やさずに同様の効果が得られる印刷物を提案する事を目的とする。」、同段落【0010】には「本発明の偽造防止印刷物は、第1のインキと第2のインキとを合わせた合成色の略均一状のベース面が形成されるものであるが、カラーコピーを取ると、合成色とは異なる色(第1のインキ)の着いた潜像(隠し文字や隠しマークなど)若しくは背景が複写物上に発現するので、複写が行われたことが第三者に容易に且つ明確に認識され、犯罪防止が図られる。そのため、本発明の偽造防止印刷物及びその製造方法は、高度な偽造防止効果が求められる各種の証券類や商品券、或いは各種の証明書類等に利用できる。」、同段落【0011】には「さらに、印刷物のデザインとして組み込まれる地紋版又はイラスト版に偽造防止版を組み込むことにより、或いは地紋版又はイラスト版に刷り合わせ版を組み込むことにより、色数を増やさずに、即ち製造コストを抑えつつ同様の効果が得られる印刷物を作ることもできる。」と記載されており、偽造防止印刷と平網で形成される面は、地紋やイラスト等のデザインや各種の証券類や商品券、或いは各種の証明書類等の文字情報等を更に付加するベースとなる面を意味している。
訂正後の請求項1の記載によると、略均一状の面を形成しているものは、「複写機で再現可能な大きい点の集合体もしくは線群と、複写再現能力に満たない小さい点の集合体を組み合わせ、潜像とその背景を構成した偽造防止印刷を有彩色の第1のインキで形成する」偽造防止印刷と「上記第1のインキの色と合成すると無彩色になる有彩色の第2のインキで複写再現能力に満たない小さい点の集合体である平網を前記偽造防止印刷を構成する潜像及びその背景と刷り重ね」た平網である。第1のインキで形成される偽造防止印刷は、複写機で再現可能な大きい点の集合体もしくは線群と、複写再現能力に満たない小さい点の集合体を組み合わせ、潜像とその背景を構成しているから、潜像とその背景の面積率が合わせられていることは明らかであり、その限度で略均一状であると解される。また、第2のインキで形成される平網も一様に分布される点の集合体であるから、その限度で略均一状であると解される。そして、略均一状の両者を刷り重ねて形成された面もその限度で略均一状の面ということができるから、「略均一状の面」について、比較の基準又は程度が記載されていないことをもって、不明確であり、発明の外延を把握することができないとする請求人主張は採用できない。
訂正後の請求項2の記載においても、略均一状の面を形成しているものは、「基材上に複写機で再現される大きい点の集合体もしくは線群と複写再現能力に満たない小さい点の集合体を組み合わせ、潜像とその背景を構成した偽造防止版を有彩色の第1のインキで印刷する」偽造防止印刷と「複写再現能力に満たない小さい点の集合体である平網を前記偽造防止印刷を構成する潜像及びその背景と刷り重ねる刷り合わせ版を前記第1のインキの色と合成すると無彩色になる有彩色の第2のインキで印刷し」た平網である。したがって、上記訂正後の請求項1の記載で検討したのと同様、略均一状の両者を刷り重ねて形成された面もその限度で略均一状の面ということができる。

以上のとおりであるから、請求人が主張する訂正後の請求項1及び請求項2に係る発明が不明確であるとする無効理由は存在しない。

(4)無効理由5について
訂正後の請求項4では、訂正後の請求項2に係る製造方法で用いられている偽造防止版に対して「印刷物のデザインとして地紋又はイラスト版を組み込むようにした」と記載されており、訂正後の請求項5では、訂正後の請求項2に係る製造方法で用いられている刷り合わせ版に対して「印刷物のデザインとして地紋又はイラスト版を組み込むようにした」と記載されている。
しかしながら、地紋(又はイラスト)は、「潜像」(或いは反転して潜像を形成する場合の背景)とは異なり、その存在を目視されないよう求められているものではないと共に、訂正後の請求項2の製造方法で作製される前記「潜像」の機能を失わせるものであってはならないことは道理であることから、「目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色となる略均一状の面」とは本来無縁のものである。
また、上記無効理由4について既に述べたように、「目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色となる略均一状の面」を形成しているものは、「基材上に複写機で再現される大きい点の集合体もしくは線群と複写再現能力に満たない小さい点の集合体を組み合わせ、潜像とその背景を構成した偽造防止版を有彩色の第1のインキで印刷する」偽造防止印刷と「複写再現能力に満たない小さい点の集合体である平網を前記偽造防止印刷を構成する潜像及びその背景と刷り重ねる刷り合わせ版を前記第1のインキの色と合成すると無彩色になる有彩色の第2のインキで印刷し」た平網である。即ち、地紋(又はイラスト)版を組み込まない状態での「偽造防止印刷」と「平網」を刷り重ねて形成された面が略均一状の面であることを規定しているのであって、「地紋」も含んだ面が「目視上、略均一状の面」であると規定しているものではない。
したがって、「偽造防止印刷」と「平網」と「地紋」によって「目視上、略均一状の面」をどのように形成するか不明であると主張する請求人の主張は採用できない。

以上のとおりであるから、請求人が主張する訂正後の請求項4及び請求項5に係る発明が不明確であるとする無効理由は存在しない。

(4)無効理由2?5についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正後の特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないか、または、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとする前記無効理由2?4は、いずれも成り立たない。

3-1 特許法第29条の規定違反に係る無効理由1についての判断
(1)甲1の1に係る「証明書用紙」について
(1-1)甲1の1に係る「証明書用紙」の存否
当該甲1の1について、当初、被請求人は、証明者である現日置市長:宮路高光が、市町村合併前の旧伊集院町長であることをもって、証明自体が無意味であると主張していた。
しかしながら、当審において平成20年3月14日付け審尋を行い、市町村合併前の鹿児島県日置郡東市来町自体が既に存在しておらず、直接的な証明が不可能であること、通常、市町村合併が行われた場合には、特段に取り決めがなければ、後に発足した市が、合併前の町村が行っていた行為或いは合併前の町村に対してなされた手続に係る証明等を包括的に引き継いでいるものと解すべきであること、を指摘したところ、当該(1)「証明願」に係る(2)「証明用紙」がH14年5月時点のものであることは否認するも、旧東市来町役場で使用された証明書用紙自体が存在したことを認めている(口頭審理調書参照)。
口頭審理では、(3)作業指導票に係る原本の提示がなされ、当該(3)作業指導票が原本を両面縮小コピーしたものであることを確認した。
当該(3)作業指導票の片面(表面)の左下部に記載される「11818596」、「11817459」及び「11811373」という3つの「注文番号」からみて、同一仕様の製品が過去3回受注されたことが把握できる。
また、同じく口頭審理において原本を確認したところの甲6の着店伝票は、平成14年月30日付けのものであって、これには「証明書用紙(偽造防止) 10,000枚」の記載に加えて、前記注文番号3つのうち「11818596」が記載されており、「5/1必着」なる添え書きがあることから、平成14年5月の使用開始に合わせるべく、小林記録紙株式会社から旧東市来町役場情報管理課に「証明書用紙(偽造防止)」の納入がなされたことが把握できる。
よって、旧東市来町役場が注文番号「11818596」として発注され、小林記録紙株式会社で作製された「証明書用紙(偽造防止) 10,000枚」が、宮崎運輸を介して納品され、平成14年5月から使用に供されたと認める。

なお、甲1の1に添付された(2)証明書用紙が、いずれの注文番号に係るものかが不明であることについては、請求人自身も平成20年4月2日付け回答書で認めている。
しかしながら、平成20年6月24日付け陳述要領書と同時に甲9として提出された証明書用紙が注文番号11818596に係るものであることは、以下のように明らかである。
口頭審理において、当審から作業指導票による製品管理について請求人に対して説明を求め、平成20年7月17日付け上申書において請求人が説明するところでは、作業指導票内(甲7をみて明らかなように、作業指導票はクリーム色で封筒様の形態をなしている。)には、最初に納品した製品としての証明書用紙が「原稿」として保存されており、後に再度受注した場合に、同一仕様であることを確認された後に、次回受注に備え、新たに作製した製品である証明書用紙と共に先の「原稿」も保存する管理が行われていたことが窺える。
また、前記口頭審理においては、当該甲9の証明書用紙裏面には、「○注」(丸の付された「注」)と共に記載された「11817459」のうち「7459」を線で消して、「1373」と修正してあったことについて説明を求めたところ、請求人は平成20年4月2日付け回答書に添付された「作業指導票処理フロー」には記載がないものの、新たに作製した証明書用紙との別を明らかにすべく、前回注文番号に係る「原稿」の裏に今回作製した証明書用紙の注文番号を記載することが、管理現場において行われていたと回答している。
してみるに、このような作業指導票に係る管理は、顧客要求に応えた製品品質を維持すべく払われる工夫として了解し得るものであることからして、少なくとも、甲9なる証明書用紙が、旧東市来町役場から最初に受注した際に作製されたものであると認定し得る。
そして、前記のように作業指導票による品質管理が適性に行われている前提からみて、先に提出された甲1の1に添付された(2)証明書用紙(偽造防止)と、甲9なる証明書用紙とは同じ品質のものと解し得る。

(1-2)甲1の1に係る「証明書用紙」の認定
甲9なる証明書用紙が、甲1の1の「2.作業指導票」に記載される注文番号11818596に係る旧東市来町役場において平成14年5月に使用開始したものであること、当該甲9なる証明書用紙と、甲1の1に添付された(2)証明書用紙(偽造防止)とが、同じ品質のものと解し得ることは、前記で検討したとおりである。
そこで、当該甲1の1に添付された(2)証明書用紙(偽造防止)を対象とした甲1の2?4を参照して、当該証明書用紙(偽造防止)がいかなるものであるかについて検討する。

甲1の2の写真撮影報告書に添付された「写真1」?「写真3」を観察すると、茶色の大きい網点で潜像である「複写」という文字、同じく茶色の小さい網点で背景、また、前記小さい網点と概ね同じ大きさのライトブルーの小さい網点による「HIGASHIICHIKI」なる地紋が印刷されていることが窺える。
また、甲1の1の証明書用紙の複写物を観察すると、前記茶色の小さい網点及びライトブルーの小さい網点は再現されず、前記茶色の大きい網点のみが再現されたことにより、潜像である「複写」という文字が、茶色に目視できる状態で現れていることが把握できる。

ここで、(2)証明用紙(偽造防止)の印刷状態について、請求人の提出した甲1の2の「撮影内容の説明」には、「「HIGASHIICHIKI」なる地紋が青色の小さい網点で潜像と背景とに刷り合わされている。」と記載されているのに対して、
被請求人は、平成20年2月22日付け答弁書においては、「証明用紙は、およそ50線17%の網点による「複写」なる文字と、およそ150線10%の網点による背景とが茶色のインキで印刷されたものに、ライトブルーのインキで、網点化した各「HIGASHIICHIKI」を間隔を持たせて並べた地紋を、潜像の形(輪郭)を隠すために、上記茶色のインキと重ならないように(さらにいえば、上記茶色のインキと刷り分けられて)印刷している」と主張しており、両者の認定は若干異なる。
そこで、再度、甲1の1の(2)証明書用紙(偽造防止)を複写した甲1の4のものを詳細に観察してみるに、茶色に現出した潜像の「複写」なる文字において、地紋である「HIGASHIICHIKI」に相当する位置で茶色を呈していない箇所が存在している。
さらに、甲1の1に添付された(2)証明書用紙(偽造防止)の拡大写真とされる甲1の2の【写真1】、【写真2】を詳細に観察するに、茶色の大きい網点及び小さい網点は、一部で重なり合う箇所も認められるが、概ね「HIGASHIICHIKI」なる地紋を避けるように配されていることが把握できる。
よって、当該甲1の1の(2)証明書用紙(偽造防止)においては、潜像を含む茶色の網点から、地紋である「HIGASHIICHIKI」に相当する箇所の網点を抜いた版として構成しておき、茶色の網点と地紋とが重ならないような印刷手法が用いられていることが推察される。

また、甲1の3に係る実験成績証明書を参照するに、表1には、甲1の1に添付された証明書用紙表面の1?6の測定箇所についての、L*a*b*表色系およびマンセル表色系で表した結果が示されており、1?6の測定箇所は、いずれも茶色の網点とライトブルーの網点からなる地紋の一部を含んでおり、試験用紙の各測定箇所は、マンセル表色系での彩度(Chroma)が0.49?0.66と極めて小さいものであることが把握できる。

なお、「複写」なる文字を構成している網点に係り、請求人は、「およそ50線15%の大きい網点」と表現し、被請求人は「およそ50線17%の大きい網点」と表現しているので、当該「複写」なる文字に係る網点については、両者を併記した形で認定することする。

以上の検討、及び両当事者において争いのない構成要件を踏まえると、甲1の1に添付された証明書用紙は、以下のものである。

「a
a1 およそ50線15%或いは17%の大きい網点による「複写」なる文字と、
a2 およそ150線10%の小さい網点とが、
a3 「HIGASHIICHIKI」を間隔を持たせて並べた地紋に相当する箇所の網点が抜かれた状態で茶色のインキで印刷されており、
b ライトブルーのインキで、およそ150線10%の小さい網点によって「HIGASHIICHIKI」を間隔を持たせて並べた地紋を、潜像の形(輪郭)を隠すために、茶色のインキと重ならないように刷り分けて印刷して、
c 詳細に見た場合には局所的にライトブルーの「HIGASHIICHIKI」が知覚され、茶色の網点とライトブルーの網点からなる地紋の一部を含んだ印刷部位は、目視上、全体的には茶色に知覚されるものの、マンセル表色系での彩度(Chroma)が0.49?0.66と極めて小さいものであって、
d その複写物には、前記「複写」なる文字が「HIGASHIICHIKI」を間隔を持たせて並べた地紋に相当する箇所の網点が抜かれた状態で茶色で現れる
e.証明書用紙。」
以下、これを「甲1証明書用紙発明」という。なお、附番は当審で付したものである。

(2)本件訂正発明について
(2-1)本件訂正発明1について
請求人の主張は、甲1証明書用紙発明を主要引用発明として、甲1証明書用紙発明に対して、甲第2?5号証に係る発明を適用するということで容易想到を主張するものである。
そこで、本件訂正発明1と甲1証明書用紙発明とを対比する。
甲1証明書用紙発明は、複写機で複写した場合に、「複写」なる文字が「HIGASHIICHIKI」を間隔を持たせて並べた地紋に相当する箇所の網点が抜かれた状態で茶色で目視可能に現れるものであるから、当該「複写」なる文字は潜像とされているものであって、これを複写したその複写物上に、潜像が現れるようにされた偽造防止印刷物であるから、本件訂正発明1における「潜像若しくは背景が目視できる状態で現れる」との規定のうち、「潜像が目視できる状態で現れる」を選択した場合に、本件訂正発明1の「偽造防止印刷物」と共通する。そして、「偽造防止印刷物」が潜像を有している点でも共通している。
甲1証明書用紙発明の「a3 「HIGASHIICHIKI」を間隔を持たせて並べた地紋に相当する箇所の網点が抜かれた状態で茶色のインキで印刷されて」いる「a2 およそ150線10%の小さい網点」及び「b ライトブルーのインキで、およそ150線10%の小さい網点」は、いずれも複写されないことから、本件訂正発明1の「複写再現能力に満たない小さい点」に相当する。
甲1証明書用紙発明の「a1 およそ50線15%或いは17%の大きい網点」は、複写されることから、本件訂正発明1の「複写機で再現可能な大きい点」に相当する。
そして、甲1証明書用紙発明の「a3 「HIGASHIICHIKI」を間隔を持たせて並べた地紋に相当する箇所の網点が抜かれた状態で茶色のインキで印刷されて」いる「a1 およそ50線15%或いは17%の大きい網点による「複写」なる文字」、「a2 およそ150線10%の小さい網点」及び「b ライトブルーのインキで、およそ150線10%の小さい網点によって「HIGASHIICHIKI」を間隔を持たせて並べた地紋」は、いずれも「点の集合体」であることは明らかである。
すると、甲1証明書用紙発明の「a」及び「b」の特定事項からなる偽造防止印刷と、本件訂正発明1の「複写機で再現可能な大きい点の集合体もしくは線群」との選択的表現において、「線群」を除いて「点の集合体」を選択したところの、本件訂正発明1の「複写機で再現可能な大きい点の集合体と、複写再現能力に満たない小さい点の集合体を組み合わせ、潜像とその背景を構成した偽造防止印刷」とは、「複写機で再現可能な大きい点の集合体と、複写再現能力に満たない小さい点の集合体を組み合わせ、潜像を有した偽造防止印刷」で共通する。
また、甲1証明書用紙発明の「a1 およそ50線15%或いは17%の大きい網点による「複写」なる文字」及び「a2 およそ150線10%の小さい網点による背景」は共に、「a3 茶色のインキで印刷されて」おり、当該「茶色のインキ」は有彩色のインキといい得ることから、当該「茶色のインキ」は、本件訂正発明1における「有彩色の第1のインキ」にひとまず相当する。
さらに、甲1証明書用紙発明の「b およそ150線10%の小さい網点」は、ライトブルーのインキで印刷されており、前記「複写」なる文字及び「およそ150線10%の小さい網点」を印刷する「茶色のインキ」とは異なる色のものであり、当該ライトブルーのインキは有彩色のインキといい得る。また、本件訂正発明1における「上記第1のインキの色と合成すると無彩色になる有彩色の第2のインキ」は、第1のインキとは補色関係にあり、第1のインキが有彩色である以上、第1のインキの色とは異なる有彩色であることは明らかである。そうすると、甲1証明書用紙発明の「ライトブルーのインキ」と、本件訂正発明1の「有彩色の第2のインキ」とは、「第1のインキと異なる有彩色の第2インキ」の点でひとまず共通するといえる。
してみれば、甲1証明書用紙発明と本件訂正発明1とは、以下の点で一致する一方、以下の点で相違している。

〈一致点〉
複写機で再現可能な大きい点の集合体と、
複写再現能力に満たない小さい点の集合体を
組み合わせ、潜像を有した偽造防止印刷を有彩色の第1のインキで形成すると共に、
上記第1のインキと異なる有彩色の第2インキで複写再現能力に満たない小さい点の集合体を刷った、偽造防止印刷物であって、
その複写物上には、有彩色の第1のインキの色により、潜像が目視できる状態で現れる
偽造防止印刷物。

〈相違点1〉
第1のインキで形成される偽造防止印刷に関し、本件訂正発明1では、「潜像とその背景を構成した」と特定されているのに対し、甲1証明書用紙発明では当該特定を有しない点。

〈相違点2〉
第1のインキと異なる有彩色の第2インキ及び該インキで刷られる複写再現能力に満たない小さい点の集合体に関し、本件訂正発明1では、「上記第1のインキの色と合成すると無彩色になる」有彩色の第2のインキ、「平網」と特定され、更に、「平網を前記偽造防止印刷を構成する潜像及びその背景と刷り重ねて」と特定されているのに対して、甲1証明書用紙発明では当該特定を有しない点。

〈相違点3〉
本件訂正発明1では、「目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色となる略均一状の面を形成してなる」と特定されているのに対して、甲1証明書用紙発明では、前記特定を有するものとはいえない点。

〈相違点2、3についての判断〉
本件訂正発明の詳細な説明の項の段落【0007】には「そこで、プロセス分解を使わずに、単純に色を組み合わせるだけでオリジナルとの比較なしに偽造品が一目で認識出来るよう、カラー複写物上に色の着いた潜像もしくは背景が現れる偽造防止効果を得る事ができ、さらには偽造防止版を別版となるイラストの一部や地紋と組み合わせる事により、色数を増やさずに同様の効果が得られる印刷物を提案する事を目的とする。」、同段落【0010】には「本発明の偽造防止印刷物は、第1のインキと第2のインキとを合わせた合成色の略均一状のベース面が形成されるものであるが、カラーコピーを取ると、合成色とは異なる色(第1のインキ)の着いた潜像(隠し文字や隠しマークなど)若しくは背景が複写物上に発現するので、複写が行われたことが第三者に容易に且つ明確に認識され、犯罪防止が図られる。そのため、本発明の偽造防止印刷物及びその製造方法は、高度な偽造防止効果が求められる各種の証券類や商品券、或いは各種の証明書類等に利用できる。」、同段落【0011】には「さらに、印刷物のデザインとして組み込まれる地紋版又はイラスト版に偽造防止版を組み込むことにより、或いは地紋版又はイラスト版に刷り合わせ版を組み込むことにより、色数を増やさずに、即ち製造コストを抑えつつ同様の効果が得られる印刷物を作ることもできる。」と記載されており、本件訂正発明1の偽造防止印刷と平網で形成される面は、地紋やイラスト等のデザインや各種の証券類や商品券、或いは各種の証明書類等の文字情報等を更に付加するベースとなる面を意味しており、本件訂正発明1は、ベースとなる面が第1のインキと第2のインキで形成されており、本件訂正発明1の平網は、偽造防止印刷の第1のインキの色と異なる(合成すると無彩色になる)第2のインキの色により第1のインキにより形成された潜像とその背景の色を隠す作用をしているものである。
一方、甲1証明書用紙発明の「b ライトブルーのインキで、およそ150線10%の小さい網点によって「HIGASHIICHIKI」を間隔を持たせて並べた地紋」は、地紋、即ち、デザインとして印刷されているものであって、本件訂正発明1のような地紋やイラスト等のデザインや各種の証券類や商品券、或いは各種の証明書類等の文字情報等を更に付加するベースとなる面を形成するものではない。そうすると、ベースとなる面を形成しているのは、茶色のインキ1色のみといわざるを得ない。
してみると、甲1証明書用紙発明は、ベースとなる面が第1のインキと第2のインキで形成されているものとはいえず、本件訂正発明1とは、全く異なる技術思想のものであり、本件訂正発明1のようにベースとなる面を第1のインキと第2のインキで形成しようとの発想に至るものではなく、甲1証明書用紙発明に相違点2、3に係る構成を採用しようすることは、当業者が容易になし得るものとはいえない。
以上のとおりであるから、相違点1を検討するまでもなく、甲1証明書用紙発明に対して、甲第2?5号証に係る発明を適用するということで容易想到を主張する請求人の理由を採用することはできない。

なお、請求人は、甲第2?5号証いずれか記載の発明を主要引用発明とする主張をしていないが、念のため検討しておく。
甲第3?5号証に記載の発明は、いずれもベースとなる面が第1のインキと第2のインキで形成されているものとはいえないから、甲1証明書用紙発明と同様、本件訂正発明1とは、全く異なる技術思想のものである。
甲第2号証に記載された発明は、ベースとなる面を2種類のインキで形成するものではあるが、各インキでそれぞれ潜像と背景を形成し、それぞれの潜像と背景を見当合わせして刷り重ねるものであり、本件訂正発明1のように一方のインキで平網を形成するものではないし、また、合成すると無彩色になるインクを選択するものでもない。
そして、甲第2号証に記載された発明は、潜像と背景を見当合わせして刷り重ねるものであるから、一方のインキで平網を形成しようとする動機が存在しない。また、合成すると無彩色になるインクを選択しようとする動機も存在しない。そして、甲第2号証に記載された発明は、潜像と背景を見当合わせして刷り重ねるものであるから、モノクロコピーで、潜像と背景が共に現れるのに対し、本件訂正発明1は、モノクロコピーでも潜像が明らかに出現するものであり、甲第2号証に記載された発明から予測できない効果を奏するものである。

(2-2)本件訂正発明2について
本件訂正発明2の偽造防止印刷物の製造方法は、本件訂正発明1の製造方法である。そして、本件訂正発明1の偽造防止印刷物を製造するに際して、「偽造防止版を印刷する工程」、「刷り合わせ版を印刷する工程」及び「偽造防止版と刷り合わせ版とを刷り重ねることによって、略均一状の面を形成する工程」を介することが特定されたものである。
他方、甲1証明書用紙発明は、「物」である証明書用紙であって、製造法を直ちに把握できるものではない。
すると、本件訂正発明2と甲1証明書用紙発明とを対比した場合には、前記で検討した本件訂正発明1と甲1証明書用紙発明との対比における〈一致点〉、〈相違点1〉?〈相違点3〉に加えて、さらに以下の相違点が存在する。

〈相違点4〉
本件訂正発明2は本件訂正発明1の製造方法であることが特定されているのに対して、甲1証明書用紙発明は、物の発明であって、製造方法に係る前記特定を有しない点。

〈相違点に係る判断〉
「(2-1)本件訂正発明1について」欄において前述したとおり、甲1証明書用紙発明は、ベースとなる面が第1のインキと第2のインキで形成されているものとはいえず、本件訂正発明1とは、全く異なる技術思想のものであり、本件訂正発明2のようにベースとなる面を第1のインキと第2のインキで形成しようとの発想に至るものではなく、甲1証明書用紙発明に相違点2、3に係る構成を採用しようすることは、当業者容易になし得るものとはいえない。
よって、相違点1、4を検討するまでもなく、甲1証明書用紙発明に対して、甲第2?5号証に係る発明を適用するということで容易想到を主張する請求人の理由を採用することはできない。

(2-3)本件訂正発明3?5について
本件訂正発明3?5は、本件訂正発明2を引用し、本件訂正発明2の構成に他の構成を付加するものであるから、上記「(2-2)本件訂正発明2について」と同様の理由があることは明白であるから、本件訂正発明3?5は甲1証明書用紙発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正発明1?5は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。

8 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由1ないし無効理由5についての当審の判断は、以上のとおりであり、請求人の主張及び証拠方法によっては、無効とすることができない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
偽造防止印刷物及びその製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーコピーを取ると、元原稿とは異なる色の着いた潜像若しくは背景が複写物上に現れて明確に認識される偽造防止印刷物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の証券類や商品券、或いは各種の証明書類等の偽造に対し、大きい点もしくは線群と小さい点の組み合わせによる偽造防止対策が一般的に行われてきた。
しかし、この技術はモノクロコピーでは十分な偽造防止効果が得られるものの、高性能化したカラーコピー機に対しては、さらに偽造防止効果の高い技術が望まれている。
そのためカラーコピー機対応の偽造防止技術として、色再現性を困難とする事により、複写物の色を変える方法が特許文献1や特許文献2などに提案されている。また2色の異なるインキを用い、異なるスクリーン線数の印刷を重ね刷りする事により、肉眼では潜像が背景と一様に認識され、その複写物では潜像が浮き立つようにした方法が特許文献3や特許文献4などに提案されている。
【0003】
また特許文献5では印刷絵柄の少なくとも一部を写真製版におけるプロセス分解を行い、3原色の1色ないし2色の網点を複写能力に達しない網点で印刷し、残りの1色ないし2色を複写能力に達した網点で印刷する方法が提案されている。
この方法はプロセス分解が基本となるため、絵柄全体もしくは部分的な絵柄の色が変化して、オリジナルとの色の差を発現されるものとなり、常に3色以上の組み合わせて印刷物が形成されるものである。
【0004】
【特許文献1】特開2001-96888公報
【特許文献2】特開平10-193773号公報
【特許文献3】特開平7-266770号公報
【特許文献4】特開平8-244389号公報
【特許文献5】実開昭59-99774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1や特許文献2に記載の方法では、使用されるインキの色が限定されたり、極めて複雑かつ精微な印刷工程を必要とするため、汎用性の点で実用的価値が十分に高くなかった。さらに、特許文献3や特許文献4などに記載の方法では、2色のインキそれぞれにおいて、潜像と背景とを異なるスクリーン線数で網点印刷するものであるため、実際に印刷する場合には潜像と背景を目立たなくする難しい印刷を、違う色で見当を合わせながら刷り重ねる必要があり、難易度が高く、少しでもバランスが崩れると、印刷物上で潜像が見えてしまう虞があった。
【0006】
また、前記特許文献5では、写真製版であるプロセス分解法により減色混合3原色に分解されるため、絵柄全体もしくは部分的な絵柄の色が変化するもので、偽造品として判別するにはオリジナルとの色の差を比較する必要があった。さらに色は必然的にプロセス色(YMCKの4色或いはYMCの3色)に限定され、色数も4色ないし3色と多くなり、製造コストも高いものであった。
【0007】
そこで、プロセス分解を使わずに、単純に色を組み合わせるだけでオリジナルとの比較なしに偽造品が一目で認識出来るよう、カラー複写物上に色の着いた潜像もしくは背景が現れる偽造防止効果を得る事ができ、さらには偽造防止版を別版となるイラストの一部や地紋と組み合わせる事により、色数を増やさずに同様の効果が得られる印刷物を提案する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記に鑑み提案されたもので、複写機で再現可能な大きい点の集合体もしくは線群と、複写再現能力に満たない小さい点の集合体を組み合わせ、潜像とその背景を構成した偽造防止印刷を有彩色の第1のインキで形成すると共に、上記第1のインキの色と合成すると無彩色になる有彩色の第2のインキで複写再現能力に満たない小さい点の集合体である平網を前記偽造防止印刷を構成する潜像及びその背景と刷り重ねて、目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色となる略均一状の面を形成してなる偽造防止印刷物であって、その複写物上には、前記略均一状の面を形成している無彩色と異なる有彩色の第1のインキの色により、潜像若しくは背景が目視できる状態で現れることを特徴とする偽造防止印刷物に関するものである。
【0009】
また、本発明は、上記偽造防止印刷物の製造方法をも提案するものであり、基材上に複写機で再現される大きい点の集合体もしくは線群と複写再現能力に満たない小さい点の集合体を組み合わせ、潜像とその背景を構成した偽造防止版を有彩色の第1のインキで印刷する工程と、複写再現能力に満たない小さい点の集合体である平網を前記偽造防止印刷を構成する潜像及びその背景と刷り重ねる刷り合わせ版を前記第1のインキの色と合成すると無彩色になる有彩色の第2のインキで印刷し、前記偽造防止版と前記刷り合わせ版とを刷り重ねることによって、目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色となる略均一状の面を形成する工程と、からなり、その複写物上には、前記略均一状の面を形成している無彩色と異なる有彩色の第1のインキの色により、潜像若しくは背景が目視できる状態で現れることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の偽造防止印刷物は、第1のインキの色と第2のインキの色とを合わせた合成色の略均一状のベース面が形成されるものであるが、カラーコピーを取ると、合成色とは異なる色(第1のインキ)の着いた潜像(隠し文字や隠しマークなど)若しくは背景が複写物上に発現するので、複写が行われたことが第三者に容易に且つ明確に認識され、犯罪防止が図られる。そのため、本発明の偽造防止印刷物及びその製造方法は、高度な偽造防止効果が求められる各種の証券類や商品券、或いは各種の証明書類等に利用できる。
【0011】
さらに、印刷物のデザインとして組み込まれる地紋版又はイラスト版に偽造防止版を組み込むことにより、或いは地紋版又はイラスト版に刷り合わせ版を組み込むことにより、色数を増やさずに、即ち製造コストを抑えつつ同様の効果が得られる印刷物を作ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
製造コストを抑えるため、色数を増やさないためには、地紋版やイラスト版等に偽造防止版を組み込んだり、刷り合わせ版を組み込んだり、またその両方を採用して製造する。
【実施例1】
【0013】
本発明の偽造防止印刷物の製造方法は、前述のように基材上に複写機で再現される大きい点の集合体もしくは線群と複写再現能力に満たない小さい点の集合体を組み合わせた偽造防止版を第1のインキで印刷する工程と、小さい点の集合体からなる刷り合わせ版を前記第1のインキと異なる色の第2のインキで印刷する工程とを必須とするものであって、特に印刷手法などについて特定するものではなく、例えばオフセット印刷、グラビア印刷など各種の印刷を用いることができる。
以下に、本発明の製造方法を〔1.原稿の作成〕、〔2.製版〕、〔3.刷版〕、〔4.印刷〕に分けて詳細に説明する。
【0014】
〔1.原稿の作成〕
原則的に2色の組み合わせとなるため、原色系以外の合成色にてベース色が形成されるように設定する。
例えば合成色(ベース色)をグレーに設定すると、第1のインキとして赤系、青系を用いた場合に、第2のインキとして緑系、オレンジ系を用いることで対応可能であり、カラーコピー後に現れる赤潜像、青潜像とも色目がグレーより鮮烈に感じ取れるものとなり、偽造防止効果が良好であるため好ましい。尚、背景を第1のインキで形成してカラーコピー後に現れるようにした場合も同様である。このように、潜像を直接的に浮き出させるようにしても、背景を浮き出させて間接的に潜像を浮き出させる、即ち白抜き状態で浮き出させるようにしても良いから、以下の説明では、これらの点を含めた上で説明を簡略化するために、潜像と表記している場合は背景でも良いこと、即ち白抜き潜像を含むものとする。
【0015】
第1のインキと第2のインキとを組み合わせた合成色(ベース色)の例を以下に示す。尚、以下の例はその一部であって、組み合わせは自由に設定できる。
第1のインキ+第2のインキ=合成色(ベース色)
赤+緑=グレー
青+オレンジ=グレー
紫+黄=グレー
青+赤=紫
赤+黄=オレンジ
青+黄=緑
上述の組み合わせにおいて、複写後に現れる潜像若しくは背景は第1のインキの色である赤系か青系であるが、黄及び中間色でも同様の効果は得られる。また、この第1のインキに刷り合わせる第2のインキの色としては、合成色がグレーとなる色を選択することが好ましい。
【0016】
また、刷り合わせ版に用いる第2のインキには蛍光色を採用することが望ましい。原色系の混合では色がくすむため、合成色(ベース色)が全体に沈んだ色となり、カラーコピー後に現れる潜像の対照効果も曇り、潜像の出方も悪くなる。
【0017】
〔2.製版〕
・偽造防止版
偽造防止版は、複写機で再現可能な大きい点の集合体もしくは線群と複写再現能力に満たない小さい点の集合体を組み合わせた偽造防止印刷に用いられるものであって、前記第1のインキによって形成されるものであり、大きい点の集合体もしくは線群を30?70線/インチで構成し、小さい点の集合体を100?300線/インチの網点で構成し、その双方の面積率は5?25%とする事が望ましい。
上述の線数並びに面積率は、小さい点の集合体は目視は可能であっても、各種のカラーコピー機及びモノクロコピー機にて再現されず、大きい点の集合体は目視はもちろん可能であって、各種のカラーコピー機及びモノクロコピー機にても再現されるような範囲を経験的且つ実験的に得たものである。
尚、線数とは1インチ中に存在する線の本数を示し、同じ面積率の場合、線数が大きい(多い)ほど形成される点(網点ドット)は小さくなる。線数の差が大きいほど、境界が目立つ傾向がある。また、面積率は、単位面積中の網点の面積の割合を示す。
例えば150線15%の平網と42線15%の万線をベースに作製された網点万線の偽造防止版は、平網の部分で複写再現能力に満たない小さい点の集合体が印刷でき、万線の部分で複写機で再現可能な線群が印刷できる。
【0018】
・刷り合わせ版
刷り合わせ版は、複写再現能力に満たない小さい点の集合体からなり、前記第2のインキにより形成されるものである。この刷り合わせ版は、前記偽造防止版における小さい点の集合体と同じ若しくは同程度の線数の平網を、モアレが発生しない角度で使用することが望ましい。
そして、偽造防止印刷と刷り合わせ印刷の面積率は5?25%と小さいため、印刷の刷り順による差は基本的に現れない。
【0019】
・イラスト版や地紋版(前記偽造防止版や刷り合わせ版を兼ねない場合)
イラスト版や地紋版は対照となる印刷物において必要ない場合もあり、必要に応じて、即ち各種印刷物に応じて印刷されるものであって、従来と同様に行えば良い。
特に地紋版(白抜き地紋も含まれる)は、コピー前の印刷物において、合成色(ベース色)の色の偏りを緩和する役目を果たし、さらに潜像を見えにくくするカムフラージュの役目も果たすので、本発明の偽造防止印刷物には好適な態様である。
【0020】
・イラスト版や地紋版(前記偽造防止版や刷り合わせ版を兼ねる場合)
イラスト版や地紋版の指定色を利用し、色数を減らすようにしても良い。例えば原稿に赤や青の原色系、及び/又は緑やオレンジ(地紋も含む)が組み込まれている場合、その色を偽造防止版や刷り合わせ版と共通の版にして、色数を減らすことが可能となる。その際、イラスト等の印刷色が薄い場合には、同色で濃度の高いインキに変更し、イラスト等に適正な網をかけて濃度を調整することが望ましい。インキの濃度はプロセス色に準じた設定で変更する。また、この色が他の色と掛け合わせになる場合はモアレが発生しない角度で使用することが望ましい。また、例えば刷り合わせ版に地紋を組み込む場合、その色が緑、オレンジなら20%程度、また黄などの目立たない場合には50%程度の網をかけて対応することが望ましい。
【0021】
〔3.刷版〕
常法に準じ、従来と同様の光量、手法にて刷版を作製すればよい。
【0022】
〔4.印刷〕
・偽造防止印刷
前記偽造防止版で前記第1のインキを用いて偽造防止印刷を行う。
【0023】
・刷り合わせ印刷
前記刷り合わせ版で前記第2のインキを用いて刷り合わせ印刷を行う。
例えば第1のインキによる潜像が特色になる場合には、最終色を設定し、蛍光色を基本とした混色となるような第2のインキで対応することが望ましい。
また、刷り合わせ版に地紋が組み込まれる場合には、コピー結果への影響を考慮して濃度を設定する。
【0024】
・イラスト版や地紋印刷
イラスト版や地紋版に刷り合わせ版が組み込まれている場合、コピー効果を考慮して印刷濃度を設定することが望ましい。
【0025】
尚、本発明に適用される印刷用基材は、所定サイズに予め断裁されたシートでも、ロール巻きで供給される長尺材でも良く、例えば後者の場合には、前述の印刷工程の後、断裁用基準線を目安に、任意のサイズにて断裁処理を行えば良い。また、基材の種類についても特に限定するものではない。例えば表面の反射濃度が低いフルカラー対応コピー用紙や乳白PETでは、色の変化がより強調されるが、一般的なNIP用紙でも、実用充分な偽造防止効果を得ることができる。
【0026】
図1?図4には、本発明による印刷方法の実施例と、従来の印刷方法とを対比させた工程例を示した。尚、図中では、本発明における偽造防止版を「潜像版」と表記している。また、本実施例では、効果を明確化するため、それぞれ簡易な潜像版、刷り合わせ版を用いたが、刷り合わせ版中に潜像を組み込むように、即ち刷り合わせ版として第2の潜像版を用いるようにしても良い。この場合、第1の色、第2の色の潜像を現出させることができる。さらにこのような刷り合わせ版(潜像版)を複数用いると、3色以上の潜像を現出させることができる。尚、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した構成を変更しない限りどのようにでも実施することができる。
【0027】
図1には、カラーコピーで赤色の潜像が現れる偽造防止印刷物を製造する本発明の方法と、カラーコピーで緑色の潜像が現れる偽造防止印刷物を製造する本発明の方法を、従来の印刷方法と対比させた工程例で示した。
まず、「これまでの印刷方法(従来型網点万線)」では、図中には記載していないが、黒系インキのみを用いて150線15%の平網と42線15%の万線をベースに作製された網点万線の偽造防止版にてグレーに見える偽造防止印刷を行った。また、イラスト印刷及び地紋印刷は、それぞれの指定色で行った。
これに対し、本発明の実施例である「コピーで赤色の潜像が出る印刷方法」においても、本発明の実施例である「コピーで緑色の潜像が出る印刷方法」においても、従来型と同様に150線15%の平網と42線15%の万線をベースに作製された網点万線の潜像版にて赤色、緑色の偽造防止印刷を行った。さらに、150線15%の平網にて作製された刷り合わせ版にて緑色、赤色の刷り合わせ印刷を行った。また、イラスト印刷及び地紋印刷は、それぞれの指定色で行った。
同図より明らかなように本発明の実施例である「コピーで赤色の潜像が出る印刷方法」や「コピーで緑色の潜像が出る印刷方法」では、赤と緑を合わせるケースであって、この場合、合成色(ベース色)はグレーになり、でき上がり印刷物は、「これまでの印刷方法(従来型網点万線)」と見た目は全く同じであった。
そして、得られた印刷物をそれぞれカラーコピーした結果、「これまでの印刷方法(従来型網点万線)」では黒色の潜像が現れたのに対し、本発明の実施例である「コピーで赤色の潜像が出る印刷方法」では赤色の潜像が、本発明の実施例である「コピーで緑色の潜像が出る印刷方法」では緑色の潜像が現れた。また、何れのケースも潜像として「無効」の文字を選択したので、複写が行われたこと、正当なものでないことが明確に表示され、特に色の着いた潜像が現れる本発明の実施例ではより鮮明に認識されるものとなった。
【0028】
図2には、本発明によるイラスト版に第1のインキによる偽造防止版を組み込む方法を、従来の印刷方法と対比させた工程例を示した。
まず、「これまでの印刷方法(従来型網点万線)」では、図中には記載していないが、黒系インキのみを用いて150線15%の平網と42線15%の万線をベースに作製された網点万線の偽造防止版にてグレーに見える偽造防止印刷を行った。また、イラスト印刷は赤色で、地紋印刷は指定色で行った。
これに対し、本発明の実施例である「イラスト版に潜像版を組み込む方法」においては、イラスト版に、従来型と同様の150線15%の平網と42線15%の万線をベースに作製された網点万線の潜像版を組み込み、赤色の偽造防止印刷を行った。さらに、150線15%の平網にて作製された刷り合わせ版にて緑色の刷り合わせ印刷を行った。その後、指定色にて地紋印刷を行った。
同図より明らかなように本発明の実施例である「イラスト版に潜像版を組み込む方法」は、「これまでの印刷方法(従来型網点万線)」と同じ色数(同じ印刷回数)であって、でき上がり印刷物の見た目も全く同じであった。
そして、得られた印刷物をそれぞれカラーコピーした結果、「これまでの印刷方法(従来型網点万線」では黒色の潜像が現れたのに対し、本発明の実施例である「イラスト版に潜像版を組み込む方法」では赤色の潜像が現れた。また、潜像として「無効」の文字を選択したので、複写が行われたこと、正当なものでないことが明確に表示され、特に色の着いた潜像が現れる本発明の実施例ではより鮮明に認識されるものとなった。
このように、イラスト版に偽造防止版を組み込むことにより、前記図1の2つの実施例に比べて印刷工程を減らせることが確認された。
【0029】
図3には、本発明による地紋版に第2のインキによる刷り合わせ版を組み込む方法を、従来の印刷方法と対比させた工程例を示した。
まず、「これまでの印刷方法(従来型網点万線)」では、図中には記載していないが、黒系インキのみを用いて150線15%の平網と42線15%の万線をベースに作製された網点万線の偽造防止版にてグレーに見える偽造防止印刷を行った。また、イラスト印刷は指定色で、地紋印刷は緑色で行った。
これに対し、本発明の実施例である「地紋版に刷り合わせ版を組み込む方法」においては、指定色でイラスト印刷した後、従来型と同様に150線15%の平網と42線15%の万線をベースに作製された網点万線の潜像版にて赤色の偽造防止印刷を行った。さらに、地紋版に、150線15%の平網からなる刷り合わせ版を組み込み、緑色の刷り合わせ印刷を行った。
同図より明らかなように、本発明の実施例である「地紋版に刷り合わせ版を組み込む方法」は、「これまでの印刷方法(従来型網点万線)」と同じ色数(同じ印刷回数)であって、でき上がり印刷物の見た目も全く同じであった。
そして、得られた印刷物をそれぞれカラーコピーした結果、「これまでの印刷方法(従来型網点万線」では黒色の潜像が現れたのに対し、本発明の実施例である「地紋版に刷り合わせ版を組み込む方法」では赤色の潜像が現れた。また、潜像として「無効」の文字を選択したので、複写が行われたこと、正当なものでないことが明確に表示され、特に色の着いた潜像が現れる本発明の実施例ではより鮮明に認識されるものとなった。
このように、地紋版に刷り合わせ版を組み込むことにより、前記図1の2つの実施例に比べて印刷工程を減らせることが確認された。
【0030】
図4には、本発明によるイラスト版に第1のインキによる偽造防止版を組み込むと共に、地紋版に第2のインキによる刷り合わせ版を組み込む方法を、従来の印刷方法と対比させた工程例を示した。
まず、「これまでの印刷方法(従来型網点万線)」では、図中には記載していないが、黒系インキのみを用いて150線15%の平網と42線15%の万線をベースに作製された網点万線の偽造防止版にてグレーに見える偽造防止印刷を行った。また、イラスト印刷は赤色で、地紋印刷は緑色で行った。
これに対し、本発明の実施例である「イラスト版に潜像版を組み込み、且つ地紋版に刷り合わせ版を組み込む方法」においては、イラスト版に、従来型と同様の150線15%の平網と42線15%の万線をベースに作製された網点万線の潜像版を組み込み、赤色の偽造防止印刷を行った。さらに、地紋版に、150線15%の平網からなる刷り合わせ版を組み込み、緑色の刷り合わせ印刷を行った。
同図より明らかなように本発明の実施例である「イラスト版に潜像版を組み込み、且つ地紋版に刷り合わせ版を組み込む方法」は、「これまでの印刷方法(従来型網点万線)」よりも少ない色数(少ない印刷回数)であって、でき上がり印刷物は見た目が全く同じであった。
そして、得られた印刷物をそれぞれカラーコピーした結果、「これまでの印刷方法(従来型網点万線」では黒色の潜像が現れたのに対し、本発明の実施例である「イラスト版に潜像版を組み込み、且つ地紋版に刷り合わせ版を組み込む方法」では、赤色の潜像が現れた。また、潜像として「無効」の文字を選択したので、複写が行われたこと、正当なものでないことが明確に表示され、特に色の着いた潜像が現れる本発明の実施例ではより鮮明に認識されるものとなった。
このように、イラスト版に潜像版を組み込み、且つ地紋版に刷り合わせ版を組み込むことにより、前記図2や図3の各実施例よりも更に一工程、即ちこれまでの印刷方法に比べても一工程の印刷工程を減らすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
各種の証券類や商品券、各種の証明書類等に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来の「これまでの印刷方法」(左段)と、本発明による「コピーで赤色の潜像が出る印刷方法」(中央段)と、本発明による「コピーで緑色の潜像が出る印刷方法」(右段)を簡略的にそれぞれ示すと共に、カラーコピーの結果を付記した工程図である。
【図2】従来の「これまでの印刷方法」(左段)と、本発明による「イラスト版に偽造防止版を組み込む方法」(右段)を簡略的にそれぞれ示すと共に、カラーコピーの結果を付記した工程図である。
【図3】従来の「これまでの印刷方法」(左段)と、本発明による「地紋版に刷り合わせ版を組み込む方法」(右段)を簡略的にそれぞれ示すと共に、カラーコピーの結果を付記した工程図である。
【図4】従来の「これまでの印刷方法」(左段)と、本発明による「イラスト版に偽造防止版を組み込み、且つ地紋版に刷り合わせ版を組み込む方法」(右段)を簡略的にそれぞれ示すと共に、カラーコピーの結果を付記した工程図である。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複写機で再現可能な大きい点の集合体もしくは線群と、複写再現能力に満たない小さい点の集合体を組み合わせ、潜像とその背景を構成した偽造防止印刷を有彩色の第1のインキで形成すると共に、上記第1のインキの色と合成すると無彩色になる有彩色の第2のインキで複写再現能力に満たない小さい点の集合体である平網を前記偽造防止印刷を構成する潜像及びその背景と刷り重ねて、目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色となる略均一状の面を形成してなる偽造防止印刷物であって、その複写物上には、前記略均一状の面を形成している無彩色と異なる有彩色の第1のインキの色により、潜像若しくは背景が目視できる状態で現れることを特徴とする偽造防止印刷物。
【請求項2】
基材上に複写機で再現される大きい点の集合体もしくは線群と複写再現能力に満たない小さい点の集合体を組み合わせ、潜像とその背景を構成した偽造防止版を有彩色の第1のインキで印刷する工程と、複写再現能力に満たない小さい点の集合体である平網を前記偽造防止印刷を構成する潜像及びその背景と刷り重ねる刷り合わせ版を前記第1のインキの色と合成すると無彩色になる有彩色の第2のインキで印刷し、前記偽造防止版と前記刷り合わせ版とを刷り重ねることによって、目視上、前記第1のインキの色と前記第2のインキの色とを合成した合成色としての無彩色となる略均一状の面を形成する工程と、からなり、その複写物上には、前記略均一状の面を形成している無彩色と異なる有彩色の第1のインキの色により、潜像若しくは背景が目視できる状態で現れることを特徴とする偽造防止印刷物の製造方法。
【請求項3】
さらに印刷物のデザインとして地紋版又はイラスト版をそれぞれの指定色で印刷する工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の偽造防止印刷物の製造方法。
【請求項4】
偽造防止版に印刷物のデザインとして地紋版又はイラスト版を組み込むようにしたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の偽造防止印刷物の製造方法。
【請求項5】
刷り合わせ版に印刷物のデザインとして地紋版又はイラスト版を組み込むようにしたことを特徴とする請求項2?4の何れか一項に記載の偽造防止印刷物の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-09-05 
結審通知日 2009-06-01 
審決日 2008-09-25 
出願番号 特願2003-322737(P2003-322737)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (B41M)
P 1 113・ 536- YA (B41M)
P 1 113・ 537- YA (B41M)
P 1 113・ 832- YA (B41M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藏田 敦之  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 星野 浩一
上田 正樹
登録日 2006-10-20 
登録番号 特許第3867915号(P3867915)
発明の名称 偽造防止印刷物及びその製造方法  
代理人 福田 武通  
代理人 福田 武通  
代理人 岩田 康利  
代理人 加藤 恭介  
代理人 松浦 喜多男  
代理人 福田 伸一  
代理人 福田 伸一  
代理人 福田 賢三  
代理人 加藤 恭介  
代理人 山本 優  
代理人 福田 賢三  
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