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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1202717
審判番号 不服2007-14161  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-17 
確定日 2009-08-20 
事件の表示 特願2005-11950「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成18年8月3日出願公開、特開2006-198096〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年1月19日に出願されたものであって、平成18年8月2日付けで通知された2回目の拒絶理由通知の指定期間内である同年10月13日に意見書及び手続補正書が提出され、平成19年1月11日付けで最後の拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年3月14日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年4月13日付けで、平成19年3月14日付けの補正を却下するとともに拒絶査定がなされたため、これを不服として同年5月17日付けで本件拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年6月18日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年6月18日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の【請求項1】は、
「スタート操作により回転を開始する複数のリールを、各リール上の図柄が所定の入賞配列となるよう停止させることにより、入賞図柄に応じた遊技媒体が払い出されるスロットマシンであって、
ゲーム毎に抽選を行い、当該抽選の結果に応じて、各ゲームを、
抽選の結果所定の大当たりに当選すると、当該大当たり当選の効果がそのゲーム又は以降のゲームにおいて所定条件が成立するまで維持され、所定条件が成立することによって所定の大当たり遊技が開始する役物状態と、
役物状態を除く遊技状態であって、遊技媒体の総払出数と総投入数の差が0である初期状態から、抽選によることなく開始して最初の役物状態が開始するまで継続するとともに、最初の役物状態の開始後は、各役物状態が終了するごとに、抽選によることなく開始する一般遊技状態と、に制御する制御手段を備え、
制御手段は、一般遊技状態における出玉率を、遊技媒体の総払出数が総投入数より多くなる出玉率とし、役物状態における出玉率を、遊技媒体の総払出数が総投入数より少なくなる出玉率となるようにゲームを制御することを特徴とするスロットマシン。」
と補正された(下線部が本件補正により追加された事項)。

本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明特定事項である「一般遊技状態」について「遊技媒体の総払出数と総投入数の差が0である初期状態から、抽選によることなく開始して最初の役物状態が開始するまで継続するとともに、最初の役物状態の開始後は、各役物状態が終了するごとに、抽選によることなく開始する」との限定事項を付加したものに実質的に相当するので、平成18年法律第55号による改正前の特許法17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるか検討する。

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-102922号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
(1-ア)
「【従来の技術】遊技機の一種として、複数の図柄(識別情報の一種)が所定間隔おきにリールに付されて構成された図柄列を可変表示した後に停止図柄を表示する可変表示手段を備えたスロットマシン等が知られている。この種の遊技機では、可変表示手段の所定領域である有効ラインに表示される停止図柄が特定図柄であることを必要条件として、例えばビッグボーナスゲームのような遊技者に有利な所定のゲーム(特別遊技状態)が発生するものが提供されている。」(段落【0002】)

(1-イ)
「スロットマシン1は、前面を開放した箱状のマシン本体2を有している。」(段落【0036】)

(1-ウ)
「マシン本体2内には、可変表示手段を構成する左リール11,中リール12及び右リール13が収納されている。」(段落【0038】)

(1-エ)
「各リール11,12,13の外周面には、それぞれ識別情報としての図柄が多数設けられている。」(段落【0040】)

(1-オ)
「図柄としては、ビッグボーナスゲームに移行するための第1特別図柄としての「7」図柄がある。「7」図柄としては白色のもの(例えば、左リール第20番目。以下、適宜「白7」図柄と称す)と、赤色のもの(例えば、左リール第21番目。以下、適宜「赤7」図柄と称す)とがある。また、レギュラーボーナスゲームに移行するための第2特別図柄としての「BAR」図柄(例えば、左リール第19番目)がある。・・・また、小役の払出が行われる小役図柄としての「スイカ」図柄(例えば、左リール第4番目)、「ベル」図柄(例えば、左リール第2番目)、「チェリー」図柄(例えば、左リール第3番目)がある。」(段落【0042】)

(1-カ)
「小役図柄に関し、「スイカ」図柄が後述する有効ライン上に左・中・右と揃った場合には15枚のメダル払出、「ベル」図柄が有効ライン上に左・中・右と揃った場合には8枚のメダル払出、左リール11の「チェリー」図柄が有効ライン上に停止した場合には2枚のメダル払出が行われる。」(段落【0043】)

(1-キ)
「第1特別図柄(ビッグボーナス図柄)の組合せである「赤7」図柄又は「白7」図柄が同一色で有効ライン上に左・中・右と揃った場合には15枚のメダル払出、第2特別図柄(レギュラーボーナス図柄)の組合せである「BAR」図柄が有効ライン上に左・中・右と揃った場合には15枚のメダル払出が行われる。」(段落【0044】)

(1-ク)
「フロントパネル3の表面のうち表示窓5,6,7の下方左側には、各リール11,12,13を一斉(同時である必要はない)に回転開始させるために操作されるスタートレバー25が設けられている。スタートレバー25は可変表示を開始させるべく操作される開始操作手段を構成する。スタートレバー25の右側には、回転している各リール11,12,13を個別に停止させるために操作されるボタン状のストップスイッチ27,28,29が設けられ」(段落【0049】)

(1-ケ)
「スロットマシン1には、遊技に関する各種の制御を行うための制御装置51が備えられている。制御装置51は、制御を司るCPU,遊技プログラムを記憶したROM,遊技の進行に応じた必要なデータを記憶するRAM,各種機器との連絡をとるポート,各種抽選の際に用いられる乱数発生器,時間計数や同期を図る場合などに使用されるクロックパルス発生回路等を含む制御回路基板を有し、その制御回路基板をボックスに収納してなる制御基盤ボックスによって構成されている。」(段落【0062】)

(1-コ)
「制御装置51は、「小役抽選手段」を備えている。小役抽選手段は、スタート検出センサ61からの検出信号が入力されたタイミングによって、小役払出条件が成立したか否かの抽選を行う。」(段落【0067】)

(1-サ)
「制御装置51は、「リプレイゲーム抽選手段」を備えている。リプレイゲーム抽選手段は、スタート検出センサ61からの検出信号が入力されたタイミングによって、リプレイゲーム移行条件が成立したか否かの抽選を行い、これによってリプレイフラグの成立の有無が決定される。」(段落【0068】)

(1-シ)
「制御装置51は、「リプレイゲーム制御手段」を備えている。リプレイゲーム制御手段は、通常遊技中にリプレイフラグが成立している場合、各リール11,12,13の停止時に、後述するリプレイ成立テーブルの内容を参照しながら、一定の引き込み停止制御を加えて半強制的にリプレイ図柄を有効ライン上に停止させる。そして、有効ライン上にリプレイ図柄が停止することを条件に、次回の遊技を無償で行うことができるようにするものである。勿論、このリプレイゲームが行われる場合にも各種抽選は実行されている。」(段落【0069】)

(1-ス)
「制御装置51は、「レギュラーボーナス抽選手段」を備えている。レギュラーボーナス抽選手段は、スタート検出センサ61からの検出信号が入力されたタイミングによって、レギュラーボーナス移行条件が成立したか否かの抽選を行い、これによってレギュラーボーナスフラグの成立の有無が決定される。」(段落【0070】)

(1-セ)
「制御装置51は、「レギュラーボーナス制御手段」を備えている。レギュラーボーナス制御手段は、通常遊技中に、前記レギュラーボーナスフラグが成立している場合、各リール11,12,13の停止時に、レギュラーボーナス成立テーブルの内容を参照しながら、一定の引き込み停止制御を加えて半強制的に第2特別図柄(レギュラーボーナス図柄)を有効ライン上に停止させる。そして、有効ライン上にレギュラーボーナス図柄が停止することを条件に、予め設定された所定のゲーム回数(ここでは12回)を上限として、現状遊技状態である通常遊技状態からレギュラーボーナスゲームに移行させ、その後元の遊技状態に復帰させるものである。」(段落【0071】)

(1-ソ)
「制御装置51は、「レギュラーボーナス中抽選手段」を備えている。レギュラーボーナス中抽選手段は、レギュラーボーナス中にのみ有効化され、スタート検出センサ61からの検出信号が入力されたタイミングによって、所定の図柄(ここでは、リプレイ図柄)の抽選を行う。かかる図柄の抽選は、通常の抽選とは異なり、例えばレギュラーボーナス中はリプレイ図柄が有効ライン上に揃った場合に所定枚数(例えば15枚)のメダルが払い出されるように設定しておき、かかるリプレイ図柄をメダル払出図柄として、当該メダル払出図柄が揃う条件を満たすか否かの抽選とされている。そして、前記レギュラーボーナス制御手段は、前記抽選の結果、リプレイフラグ(ここでいうリプレイフラグは通常遊技中のものとは異なり、レギュラーボーナス用に新たに設定されたものである。)が成立した場合には前記メダル払出図柄以外の図柄が有効ライン上に揃わないように各リール11,12,13を制御するものであり、しかもメダル払出図柄が所定回数(例えば8回)揃った場合には前記所定の遊技回数(12回)に達していなくともレギュラーボーナスゲームを終了させる。」(段落【0072】)

(1-タ)
「制御装置51は、「ビッグボーナス抽選手段」を備えている。ビッグボーナス抽選手段は、スタート検出センサ61からの検出信号が入力されたタイミングによって、ビッグボーナス移行条件が成立したか否かの抽選を行い、これによってビッグボーナス成立フラグの有無が決定される。」(段落【0073】)

(1-チ)
「制御装置51は、「ビッグボーナス制御手段」を備えている。ビッグボーナス制御手段は、通常遊技中に、前記ビッグボーナスフラグが成立すると、各リール11,12,13の停止時に、後述するビッグボーナス成立テーブルの内容を参照しつつ、一定の引き込み停止制御を加えて半強制的に第1特別図柄(ビッグボーナス図柄)を有効ライン上に停止させる。そして、有効ライン上にビッグボーナス図柄が停止することを条件に、予め設定された所定の遊技回数(ここでは30回)を上限として、現状遊技状態である通常遊技からビッグボーナスゲームに移行させ、その後、原則的には元の通常遊技状態に復帰させるものである。」(段落【0074】)

(1-ツ)
「制御装置51は、「ビッグボーナス中抽選手段」を備えている。ビッグボーナス中抽選手段は、ビッグボーナス中にのみ有効化され、スタート検出センサ61からの検出信号が入力されたタイミングによって、小役図柄の抽選及びジャックインの抽選を行い、小役フラグ及びジャックインフラグの成立の有無が決定される。そして、前記ビッグボーナス制御手段は、小役フラグの成立によって所定の小役図柄を有効ライン上に揃わせるべく小役成立テーブルを参照しつつ各リール11,12,13を半強制的に引き込み停止制御する。」(段落【0075】)

(1-テ)
「ビッグボーナスゲームは、前記所定の遊技回数(30回)内で所定回数(例えば3回)を上限とするジャックインが可能であり、ビッグボーナスゲーム中のジャックイン中における遊技回数は前記30回の回数には加算されないようになっている。そして、ビッグボーナス制御手段は、前記所定の遊技回数(30回)内であっても、レギュラーボーナスゲームが所定回数(3回)終了した時点でビッグボーナスゲームを強制的に終了させる。」(段落【0077】)

(1-ト)
「前記スタートレバー25の操作に基づく検出信号が制御装置51に入力されたタイミングで、通常遊技中では、小役抽選手段、リプレイゲーム抽選手段、レギュラーボーナス抽選手段、ビッグボーナス抽選手段による各抽選が行われる。」(段落【0092】)

(1-ナ)
「小役抽選手段による抽選結果が、小役フラグ成立を意味する場合は、適宜の小役図柄を有効ライン上に停止させ得る権利がそのゲームにおいてのみ与えらえられる。また、リプレイゲーム抽選手段による抽選結果が、リプレイフラグ成立を意味する場合は、リプレイゲームへ移行する権利がそのゲームにおいてのみ与えられる。また、レギュラーボーナス抽選手段による抽選結果がレギュラーボーナスフラグ成立を意味する場合は、レギュラーボーナスゲームへ移行する権利が与えられ、そのフラグはレギュラーボーナスゲームへ移行するまで保持される。また、ビッグボーナス抽選手段による抽選結果がビッグボーナスフラグ成立を意味する場合は、ビッグボーナスゲームへ移行する権利が与えられ、そのフラグはビッグボーナスゲームへ移行うするまで保持される。さらに、各抽選手段の抽選結果が、いずれの条件成立をも意味しない場合には、いずれのフラグもたたない。」(段落【0093】)」

(1-ニ)
「以上の各抽選手段による抽選が終了した後、遊技者がストップスイッチ27,28,29を任意の順序で操作すると、・・・制御装置51は、操作された各ストップスイッチ27,28,29に対応したリール11,12,13を個別に停止させるべく、モータ駆動回路81を介して各リールモータ15,16,17を停止制御する。」(段落【0094】)

(1-ヌ)
「有効ライン上に揃った図柄が小役図柄或いは何ら払出のない図柄の組合せである場合には、通常遊技が続行される。一方、有効ライン上に揃った図柄の組合せがリプレイ図柄の組合せである場合にはリプレイゲーム制御手段によって次回のゲームを無償で行うことができるリプレイゲームが実行される。また、有効ライン上に揃った図柄の組合せがレギュラーボーナス図柄の組合せである場合にはレギュラーボーナス制御手段によってレギュラーボーナスゲームが実行される。また、有効ライン上に揃った図柄の組合せがビッグボーナス図柄の組合せである場合にはビッグボーナス制御手段によってビッグボーナスゲームが実行される。」(段落【0098】)

以上の記載事項を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「ビッグボーナスゲームに移行するためのビッグボーナス図柄、レギュラーボーナスゲームに移行するためのレギュラーボーナス図柄、小役図柄の一つとしてベル図柄を含む図柄が、外周面にそれぞれ設けられて可変表示手段を構成する左リール11,中リール12及び右リール13と、各リール11,12,13を回転開始させるために操作されるスタートレバー25と、回転している各リール11,12,13を個別に停止させるために操作されるボタン状のストップスイッチ27,28,29が設けられ、ベル図柄が有効ライン上に左・中・右と揃った場合には8枚のメダル払出が、ビッグボーナス図柄またはレギュラーボーナス図柄が有効ライン上に左・中・右と揃った場合には15枚のメダル払出が行われるスロットマシンであって、
遊技に関する各種の制御を行うための制御装置51が備えられ、制御装置51は、小役抽選手段、リプレイゲーム抽選手段、レギュラーボーナス抽選手段及びビッグボーナス抽選手段等の各種の抽選手段、並びに、リプレイゲーム制御手段、レギュラーボーナス制御手段及びビッグボーナス制御手段を備え、前記スタートレバー25の操作のタイミングで、通常遊技中では、小役抽選手段、リプレイゲーム抽選手段、レギュラーボーナス抽選手段、ビッグボーナス抽選手段による各抽選が行われ、小役抽選手段による抽選結果が、小役フラグ成立を意味する場合は、適宜の小役図柄を有効ライン上に停止させ得る権利がそのゲームにおいてのみ与えられ、リプレイゲーム抽選手段による抽選結果が、リプレイフラグ成立を意味する場合は、リプレイゲームへ移行する権利がそのゲームにおいてのみ与えられ、レギュラーボーナス抽選手段による抽選結果がレギュラーボーナスフラグ成立を意味する場合は、レギュラーボーナスゲームへ移行する権利が与えられ、また、ビッグボーナス抽選手段による抽選結果がビッグボーナスフラグ成立を意味する場合は、ビッグボーナスゲームへ移行する権利が与えられ、各抽選手段による抽選が終了した後、遊技者がストップスイッチ27,28,29を任意の順序で操作すると、制御装置51は、遊技者に操作された各ストップスイッチ27,28,29に対応したリール11,12,13を個別に停止させるべく停止制御がなされ、有効ライン上に揃った図柄が小役図柄或いは何ら払出のない図柄の組合せである場合には、通常遊技が続行され、有効ライン上に揃った図柄の組合せがリプレイ図柄の組合せである場合にはリプレイゲーム制御手段によって次回のゲームを無償で行うことができるリプレイゲームが実行され、有効ライン上に揃った図柄の組合せがレギュラーボーナス図柄の組合せである場合にはレギュラーボーナス制御手段によってレギュラーボーナスゲームが、予め設定された所定のゲーム回数、または、メダル払出図柄が所定回数揃うまで実行され、有効ライン上に揃った図柄の組合せがビッグボーナス図柄の組合せである場合にはビッグボーナス制御手段によってビッグボーナスゲームが、予め設定された所定の遊技回数、または、レギュラーボーナスゲームが所定回数終了するまで実行されるスロットマシン。」

原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2(特開平11-178982号公報)には、以下の記載が図面とともにある。
(2-ア)
「集中役モードを当選したときはコインの出玉率を高めるスロットマシンにおいて、
前記集中役モードを終了することを示す特定図柄を表示可能に構成し、
前記集中役モードの終了を当選したときは前記特定図柄の引込み停止動作を実行し、その引込み停止動作により前記特定図柄を表示できたときは前記集中役モードを終了する制御手段を備えたことを特徴とするスロットマシン。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)

(2-イ)
「前記制御手段は、前記特定図柄の引込み停止動作にかかわらず当該特定図柄を表示できなかったときは集中役モードの終了当選を継続して有効とすることを特徴とする請求項1記載のスロットマシン。」(【特許請求の範囲】【請求項2】)

(2-ウ)
「検出回路17は、スタートレバー9が操作されたことを検出してCPU12に通知する。CPU12は、検出回路17からスタートレバー9が操作されたことを通知されたときは乱数回路18から乱数値を獲得して抽選図柄を決定する。この場合、抽選図柄としては、ビッグボーナス図柄、レギュラボーナス図柄、10枚小役図柄、2枚小役図柄、リプレイ図柄、集中役モード開始図柄、集中役モード終了図柄、外れ図柄などが設定されている。」(段落【0020】)

(2-エ)
「この集中役モードにおいては小役の当選確率を通常よりも高く設定するので、所謂出玉率(ベース)が高い状態となる。」(段落【0046】)

(2-オ)
「本実施例では、集中役モードの終了を示すどくろ図柄をリール3a?3cに設け、抽選処理により集中役モード終了図柄を当選したときは、どくろ図柄が揃うように引込み停止処理を行い、有効表示ラインにどくろ図柄を揃えて停止表示できたときは集中役モードを終了するようにした。」(段落【0048】)

引用文献2の上記(2-ア)の記載には「集中役モードを終了することを示す特定図柄」とあり、この記載中の「特定図柄」の具体例として、上記(2-ウ)、(2-オ)の記載に「集中役モード終了図柄」または「どくろ図柄」との用語が混用されているが、これらは同じ意味であると認められるため、以下では「集中役モード終了図柄」との用語に統一する。

以上の記載事項より、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「集中役モードを当選したときはコインの出玉率を高めるスロットマシンにおいて、前記集中役モードを終了することを示す集中役モード終了図柄を表示可能に構成し、前記集中役モードの終了を当選したときは前記集中役モード終了図柄の引込み停止動作を実行し、引込み停止動作にかかわらず当該集中役モード終了図柄を表示できなかったときは集中役モードの終了当選を継続して有効とし、引込み停止動作により前記集中役モード終了図柄を表示できたときは前記集中役モードを終了する制御手段を備えたスロットマシン。」

3.本願補正発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
本願補正発明と引用発明1とを比較すると、引用発明1の「左リール11,中リール12及び右リール13」は、本願補正発明の「複数のリール」に相当し、これらのリールは、「スタートレバー25」が操作されて「回転開始」されるのであるから、「スタート操作により回転を開始する」ものといえる。
さらに、引用文献1全体の記載等からみて、以下のことが言える。
a.引用発明1の「ビッグボーナス図柄」、「レギュラーボーナス図柄」あるいは「ベル図柄」が「有効ライン上に左・中・右と揃」うことと、本願補正発明の「図柄が所定の入賞配列となるよう停止」することに相違はない。しかも、「ビッグボーナス図柄」または「レギュラーボーナス図柄」が有効ライン上に揃った場合と「ベル図柄」が有効ライン上に揃った場合とでメダル払出の枚数が異なっているので、本願補正発明の「入賞図柄に応じた遊技媒体が払い出される」に相当する構成を、引用発明1は当然有する。

b.引用発明1は「スタートレバー25の操作のタイミング」で、通常遊技中では、小役抽選手段、リプレイゲーム抽選手段、レギュラーボーナス抽選手段、ビッグボーナス抽選手段による各抽選が行われており、また、「スタートレバー25」がゲーム毎に操作されることは、スロットマシンの技術常識に照らして明らかである。

c.引用発明1の「制御装置51」は、上記(1-ナ)?(1-ヌ)の記載より、各抽選手段による抽選結果が「小役フラグ成立」、「リプレイフラグ成立」、「レギュラーボーナスフラグ成立」あるいは「ビッグボーナスフラグ成立」かに応じて、「通常遊技」、「リプレイゲーム」、「レギュラーボーナスゲーム」あるいは「ビッグボーナスゲーム」という異なる種類の遊技状態に制御するものであり、このうち「通常遊技」は、遊技媒体の総払出数が総投入数より少なくなる出玉率となっていることはスロットマシンの技術常識に照らして明らかであり、差玉状況という観点で遊技者にとって不利な遊技状態(以下、「不利状態」という。)ということができる。一方、本願補正発明における「役物状態」は、その開始条件はさておき、制御手段によって「遊技媒体の総払出数が総投入数より少なくなる出玉率」となるようにゲームが制御されるのだから、両者は不利状態である点で共通する。上記異なる種類の遊技状態のうち「レギュラーボーナスゲーム」及び「ビッグボーナスゲーム」は、遊技媒体の総払出数が総投入数より多くなる出玉率となっていることは自明であり、差玉状況という観点で遊技者にとって有利な遊技状態(以下、「有利状態」という。)ということができる。一方、本願補正発明における「一般遊技状態」は、制御手段によって「遊技媒体の総払出数が総投入数より多くなる出玉率」となるようにゲームが制御されるのだから、両者は有利状態である点で共通する。但し、その開始条件は相違点となる。そして、上記有利状態は、引用文献1の上記(1-セ)、(1-ソ)、(1-チ)及び(1-テ)の記載より、所定の条件つまり「メダル払出図柄が所定回数揃うまで」、「予め設定された所定の遊技(ゲーム)回数」あるいは「レギュラーボーナスゲームが所定回数終了した時点」で終了し、元の通常遊技状態(不利状態)に復帰するのだから、これらの条件は不利状態の開始条件ということができる。なお、上記異なる種類の遊技状態のうち「リプレイゲーム」は、遊技媒体の払出数と投入数とが等しくなるものの、上記(1-シ)の記載にあるとおり、無償で次回のゲームを行うことができ、遊技媒体の減少ペースを抑えるという意味では遊技者にとって有利な遊技状態(有利状態)に属するものといえる。よって、引用発明1の「制御装置51」は、「所定の開始条件で遊技が開始される不利状態と、不利状態を除く遊技状態である有利状態とに制御する」機能を実質的に備える。

したがって、本願補正発明と引用発明1とは、
「スタート操作により回転を開始する複数のリールを、各リール上の図柄が所定の入賞配列となるよう停止させることにより、入賞図柄に応じた遊技媒体が払い出されるスロットマシンであって、
ゲーム毎に抽選を行い、当該抽選の結果に応じて、各ゲームを、所定の開始条件で遊技が開始される不利状態と、不利状態を除く遊技状態である有利状態と、に制御する制御手段を備え、
制御手段は、有利状態における出玉率を、遊技媒体の総払出数が総投入数より多くなる出玉率とし、不利状態における出玉率を、遊技媒体の総払出数が総投入数より少なくなる出玉率となるようにゲームを制御することを特徴とするスロットマシン。」である点で一致し、以下の各点で相違する。

<相違点1>
不利状態の開始条件が、本願補正発明では「抽選の結果所定の大当たりに当選すると、当該大当たり当選の効果がそのゲーム又は以降のゲームにおいて所定条件が成立するまで維持され、所定条件が成立すること」であるのに対し、引用発明1では「メダル払出図柄が所定回数揃うまで」、「予め設定された所定の遊技回数」あるいは「レギュラーボーナスゲームが所定回数終了した時点」である点。

<相違点2>
本願補正発明の制御手段が、有利状態を「遊技媒体の総払出数と総投入数の差が0である初期状態から、抽選によることなく開始して最初の役物状態が開始するまで継続する」よう制御を行うのに対し、引用発明1ではそのような制御を行っていない点。

<相違点3>
最初の不利(役物)状態の開始後の有利状態の開始条件が、本願補正発明では「役物状態が終了するごとに、抽選によることなく」であるのに対し、引用発明1では「ビッグボーナス抽選手段(またはレギュラーボーナス抽選手段またはリプレイゲーム抽選手段)による抽選結果がビッグボーナスフラグ(またはレギュラーボーナスフラグまたはリプレイフラグ)成立を意味し」、かつ、「有効ライン上に揃った図柄の組合せがビッグボーナス図柄(またはレギュラーボーナス図柄またはリプレイ図柄)の組合せである場合」である点。

4.相違点の判断及び本願補正発明の独立特許要件の判断
<相違点1>について
引用発明2における「集中役モード」は、引用文献2の上記(2-エ)の記載より、差玉状況という観点で遊技者にとって有利な遊技状態であることは明らかであり、上記「3.」で認定した一致点における「有利状態」に相当する。同様に、引用発明2における「集中役モードの終了を当選したとき」、「引込み停止動作にかかわらず当該集中役モード終了図柄を表示できなかったときは集中役モードの終了当選を継続して有効とし」及び「引込み停止動作により前記集中役モード終了図柄を表示できたとき」は、それぞれ本願補正発明における「抽選の結果所定の大当たりに当選すると」、「当選の効果がそのゲーム又は以降のゲームにおいて所定条件が成立するまで維持され」及び「所定条件が成立する」に、それぞれ相当する。また、引用文献2の上記(2-エ)の記載より、「小役の当選確率」が通常に設定されている遊技状態(以下、単に「通常状態」という。)が存在することも自明であり、この通常状態は、上記「3.」で認定した一致点における「不利状態」に相当する。さらに、上記不利状態は、「集中役モード」の終了後に開始されることは明らかであるとともに、当該不利状態における遊技を「所定の大当たり遊技」と称することに格別の意義は認められない。
そうすると、引用発明2は「有利状態と、抽選の結果所定の大当たりに当選すると、当該大当たり当選の効果がそのゲーム又は以降のゲームにおいて所定条件が成立するまで維持され、所定条件が成立することによって所定の大当たり遊技が開始する不利状態とに制御する制御手段を備えたスロットマシン」と言い換えることができる。
引用発明1と引用発明2は、共にスロットマシンの技術分野に属し、かつ、差玉状況が有利な遊技状態と不利な遊技状態とに切替え制御を行う点でも共通するため、引用発明1における「通常遊技」(不利状態)の開始条件として、「メダル払出図柄が所定回数揃うまで」、「予め設定された所定の遊技(ゲーム)回数」あるいは「レギュラーボーナスゲームが所定回数終了した時点」に換え、上記引用発明2の「抽選の結果所定の大当たりに当選すると、当該大当たり当選の効果がそのゲーム又は以降のゲームにおいて所定条件が成立するまで維持され、所定条件が成立する」ことを採用し、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者にとって想到容易である。

<相違点2>について
<相違点2>のうち、有利状態が「遊技媒体の総払出数と総投入数の差が0である初期状態から、抽選によることなく開始」するよう制御を行う点(以下、「<相違点2-1>」という。)は、例えば、特開2001-300001号公報(特に、段落【0084】参照)に示される他、遊技場開店時の電源投入後の最初の遊技(本願補正発明の「遊技媒体の総払出数と総投入数の差が0である初期状態」に相当)から所定時間が経過するまで、遊技者にとって有利な遊技状態を提供するサービス(いわゆるモーニングサービス)として、従来より広く一般に行われている事項(以下、「慣用技術」という。)であり、<相違点2-1>は、当該慣用技術をスロットマシンの機械に具現化したものに過ぎず、設計事項というべきものである。さらに、不利状態の開始条件として引用発明2を採用することの想到容易性は、上記「<相違点1>について」で述べたとおりであり、引用発明1に上記慣用技術を適用したものにおいて、該引用発明2を併せて採用すれば、「遊技媒体の総払出数と総投入数の差が0である初期状態から、抽選によることなく開始」した有利状態を、最初の不利状態が開始されるまで継続するよう制御を行うこと、つまり、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者にとって想到容易である。

<相違点3>について
有利状態を、不利状態の終了後、抽選によらず開始することは、例えば、下記の周知例1?3に示されるとおり、本願出願前に周知(以下、「周知技術」という。)である。よって、引用発明1における「ビッグボーナスゲーム(またはレギュラーボーナスゲームまたはリプレイゲーム)」(有利状態)の開始条件として、当該周知技術を適用し、不利状態が終了するごとに、抽選によることなく有利状態を開始すること、すなわち相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者にとって想到容易である。

・周知例1:特開2003-220182号公報
段落【0202】には「「天井」とは、BB又はRB終了後、遊技回数が所定遊技回数(例えば1500回)が消化されるまでの間に設定されるモードで、通常時の通常遊技よりも当選確率が高い値に設定される。」と記載されている。

・周知例2:特開2002-224285号公報
段落【0018】には「システムコントローラ10には、ゲーム回数を計数するとともに、予め任意のゲーム回数を記憶設定できるゲームカウンタ23が接続されている。ゲームカウンタ23は、1ゲーム毎の乱数抽選によって特別図柄に当選しない場合に、ゲーム回数を消化ゲーム数として累積計数し、その回数が予め設定された回数例えば500回に達するまで計数する。ゲーム消化回数が設定回数に達すると、ゲームカウンタ23はその旨の出力信号をシステムコントローラー10に出力する。システムコントローラ10は、この信号を受け取ると、当選役抽選テーブル19のテーブルを高確率用に変更して、特別遊技状態としてゲーム制御を行うように構成されている。」と記載されている。

・周知例3:特開2002-78858号公報
段落【0060】及び【0061】には、それぞれ「(高確率遊技制御手段120)高確率遊技制御手段120は、高確率テーブルによる遊技に移行させるためのものである。入賞抽選手段110は、通常の遊技時は低確率テーブルを用いて抽選を行っている。そして、一定期間中の獲得メダル数(投入枚数と払い出し枚数の差枚数)が一定枚数以下になった場合、・・・あるいはハズレ遊技制御手段140の制御に基づき一定回数のハズレ遊技が行われた後に特典として、高確率遊技が開始される。」、「高確率テーブルとは、例えば、小役入賞の抽選確率を通常テーブルに比して高く設定してあると共に再遊技及びハズレの抽選確率を低確率テーブルよりも低く設定してあるもの等であって、低確率テーブルを用いて抽選したときよりも遊技者にとって利益が大きくなるように形成されているものである。」と記載されている。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明1、引用発明2、上記慣用技術及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2、上記慣用技術及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

[補正の却下の決定のむすび]
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年10月13日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「スタート操作により回転を開始する複数のリールを、各リール上の図柄が所定の入賞配列となるよう停止させることにより、入賞図柄に応じた遊技媒体が払い出されるスロットマシンであって、
ゲーム毎に抽選を行い、当該抽選の結果に応じて、各ゲームを、抽選の結果所定の大当たりに当選すると、当該大当たり当選の効果がそのゲーム又は以降のゲームにおいて所定条件が成立するまで維持され、所定条件が成立することによって所定の大当たり遊技が開始する役物状態と、役物状態を除く一般遊技状態と、に制御する制御手段を備え、
制御手段は、一般遊技状態における出玉率を、遊技媒体の総払出数が総投入数より多くなる出玉率とし、役物状態における出玉率を、遊技媒体の総払出数が総投入数より少なくなる出玉率となるようにゲームを制御することを特徴とするスロットマシン。」

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、上記「第2[理由]2.」に記載したとおりである。

3.本願発明の進歩性の判断
本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明の発明特定事項である「一般遊技状態」に関して「遊技媒体の総払出数と総投入数の差が0である初期状態から、抽選によることなく開始して最初の役物状態が開始するまで継続するとともに、最初の役物状態の開始後は、各役物状態が終了するごとに、抽選によることなく開始する」との限定事項を省いたものに実質的に相当する。そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに上記限定事項を付加したものに実質的に相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]4.」に述べたとおり、引用発明1、引用発明2、上記慣用技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、上記慣用技術及び周知技術は、上記「第2[理由]3.」で認定した一致点における有利状態が「遊技媒体の総払出数と総投入数の差が0である初期状態から、抽選によることなく開始して最初の役物状態が開始するまで継続するとともに、最初の役物状態の開始後は、各役物状態が終了するごとに、抽選によることなく開始する」ことに関するものであるから、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そして、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-16 
結審通知日 2009-06-23 
審決日 2009-07-07 
出願番号 特願2005-11950(P2005-11950)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中澤 真吾池谷 香次郎  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 河本 明彦
川島 陵司
発明の名称 スロットマシン  
代理人 渡辺 喜平  
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