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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16C |
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管理番号 | 1203357 |
審判番号 | 不服2007-30168 |
総通号数 | 118 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-11-06 |
確定日 | 2009-09-10 |
事件の表示 | 特願2002-564270「操作ケーブルを位置固定するための固定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月22日国際公開、WO02/64985、平成16年 6月17日国内公表、特表2004-518098〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、特許法第184条の3第1項の規定により、特許協力条約に基づく国際出願日である2002年2月15日(パリ条約による優先権主張2001年2月15日、ドイツ連邦共和国)に特許出願されたものとみなされた出願であって、平成19年7月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年11月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同法第184条の12第2項の規定により読み替えられた同法第17条の2第2項の規定に基づき、平成19年11月30日付けで誤訳訂正書の提出とともに明細書に対する手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 2.補正の却下の決定 [結論] 本件補正を却下する。 [理由] 2-1 補正事項 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に対する以下のような補正を含むものである。 (1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「シフト操作部または変速機に操作ケーブルを位置固定するための固定装置であって、操作ケーブルを被覆した外被端部材と、該外被端部材を収容する、シフト操作部または変速機に設けられた収容エレメントとが設けられている形式のものにおいて、外被端部材(5)が環状の溝(13)を有しており、収容エレメント(6)が、操作ケーブル(1)の位置固定された状態で前記環状の溝(13)内に係合している少なくとも1つの突出部(16,17)を有しており、収容エレメント(6)が、溝平面に対して平行に位置する平面に延在する少なくとも1つのばねエレメント(15)を備えていることを特徴とする、操作ケーブルを位置固定するための固定装置。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「シフト操作部または変速機に操作ケーブルを位置固定するための固定装置であって、操作ケーブルを被覆した外被端部材と、該外被端部材を収容する、シフト操作部または変速機に設けられた収容エレメントとが設けられている形式のものにおいて、外被端部材(5)が環状の溝(13)を有しており、収容エレメント(6)が、操作ケーブル(1)の位置固定された状態で前記環状の溝(13)内に係合している少なくとも1つの突出部(16,17)を有しており、収容エレメント(6)が、溝平面に対して平行に位置する1つの平面に延在する、外被端部材(5)に作用して収容エレメント(6)からの外被端部材(5)の滑り抜けを阻止するための少なくとも1つのばねエレメント(15)を備えていることを特徴とする、操作ケーブルを位置固定するための固定装置。」(下線は、審判請求人が付したものである。) 2-2 補正の目的 上記補正は、補正前の「ばねエレメント(15)」に関し、「溝平面に対して平行に位置する1つの平面に延在する」とその形状をさらに特定して限定するとともに、「外被端部材(5)に作用して収容エレメント(6)からの外被端部材(5)の滑り抜けを阻止する」としたものである。そして、この補正により、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題に変更を生じるということもない。 そうすると、この補正の目的は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮に合致するものである。 2-3 独立特許要件 本件補正は、上述のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、本件補正後の本願発明が改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に合致し、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。 2-3-1 本件補正後の本願発明 本件補正後の本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、本件補正により補正された、特許法第184条の6第2項の規定により願書に添付して提出したものとみなされた明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであると認めるところ、その記載は、上述2-1(2)のとおりである。 2-3-2 刊行物に記載の発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願のパリ条約に基づく優先権主張日より前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-39016号公報(以下、単に「刊行物」という。)には、「コントロールケーブルの端末固定装置」に関し、図面とともに次の記載がある。 a)「【発明の属する技術分野】本発明は、アウタチューブにインナケーブルを摺動自由に挿通したコントロールケーブルのアウタチューブの端末を固定部材である板状のブラケットに固定する装置に関する。」(段落【0001】) b)「【発明の実施の形態】・・・(略)・・・図1において、1はアウタチューブ2にインナケーブル3を摺動自由に挿通したコントロールケーブルであって、・・・(略)・・・ケース6が取り付けられている・・・(略)・・・。 10は固定部材である板状のブラケットであって、U字形の切割溝11の上部両側に角形孔20が形成されて、その上縁が段部21となっている。 ケース6の先端部外周には凹溝7が形成されていて、その凹溝7に嵌着されたばね片14とともにブラケット10の切割溝11にケース6を嵌入することにより、ケース6がブラケット10に対して軸方向および半径方向に移動不能に固定されているので、その詳細な構造を図2?図7に基づいて説明する。」(段落【0012】?【0014】 c)「ばね片14はばね板を打ち抜いてを屈曲したものであって、図2、3、4に示すように、なだらかに湾曲した主板15の一側に緩やかに湾曲した2本の脚片16が斜め内側を向けて対称に曲成され、各脚片16の長さ方向の中央部に対応する凹面17が形成されており、主板15の他側の両端部には側板18が曲成されていて、各側板18には弾性爪片19が斜め内側に向けて打ち出すことにより形成されている。 このばね片14は、図5、6、7に示すように、主板15を反対側に曲げながら脚片16を広げてケース6の凹溝7に嵌入し、主板15の弾性復元力により凹面17で凹溝7を締め付け、次いで、これをブラケット10の切割溝11に押し込むと、脚片16が直線状に弾性変形してケース6の軸方向の移動が阻止されるとともに、弾性爪片19が段部21に係止してばね片14及びケース6がブラケット10の切割溝11からの脱出が阻止される。」(段落【0015】、【0016】) 以上の記載を総合すると、刊行物には、次の発明が記載されているものと認める(以下、「引用発明」という。)。 「コントロールケーブル1に取り付けられたケース6と、ケース6を固定するブラケット10とを有するコントロールケーブル1の端末固定装置において、ケース6が凹溝7を有しており、ブラケット10が切割溝11を有しており、ケース6の凹溝7をばね片14とともに切割溝11に嵌入することにより、ケース6をブラケット10に対し軸方向及び半径方向に固定するようにした、コントロールケーブル1の端末固定装置。」 2-3-3 対比 (1)一致点 本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「コントロールケーブル1」は、いずれの装置に対して固定されるものであるのか明らかではないものの、その機能ないし構造からみれば、本願補正発明における「操作ケーブル」にひとまず相当するるとともに、以下同様に、「ケース6」は「外被端部材」に、「ブラケット10」及び「ばね片14」は「収容エレメント」に、「凹溝7」は「環状の溝」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「ばね片14」は、「ケース6」の「凹溝7」に嵌入され、「ケース6をブラケット10に対し軸方向及び半径方向に固定する」にものであるから、その機能からみれば、本願補正発明における「外被端部材に作用して収容エレメントからの外被端部材の滑り抜けを阻止するための少なくとも1つのばねエレメント(15)」にひとまず相当する。 次に、引用発明の「ブラケット10」は、「ケース6」の「凹溝7」に係合する「切割溝11」を有するものであるところ、その形状からみれば、「ブラケット10」は、実質的に、本願補正発明における「少なくとも1つの突出部」を有するものであるということができる。 そして、引用発明の「コントロールケーブル1の端末固定装置」は、その機能からみて実質的に本願補正発明における「操作ケーブルを位置固定するための固定装置」に相当する。 してみれば、本願補正発明と引用発明とは、本願補正発明の表記にならえば、次の点で一致する。 「操作ケーブルを位置固定するための固定装置であって、操作ケーブルを被覆した外被端部材と、該外被端部材を収容する収容エレメントとが設けられている形式のものにおいて、外被端部材が環状の溝を有しており、収容エレメントが、操作ケーブルの位置固定された状態で前記環状の溝内に係合している少なくとも1つの突出部を有しており、収容エレメントが、外被端部材に作用して収容エレメントからの外被端部材の滑り抜けを阻止するための少なくとも1つのばねエレメントを備えている、操作ケーブルを位置固定するための固定装置。」 (2)相違点 一方、本願補正発明と引用発明とは、次の点で相違する。 a)相違点1 本願補正発明は、「シフト操作部または変速機に操作ケーブルを位置固定するための固定装置」であるのに対して、引用発明は、「コントロールケーブル1」をいずれの装置に対して固定するものであるのか明らかではない点。 b)相違点2 本願補正発明は、「ばねエレメント」が「溝平面に対して平行に位置する1つの平面に延在する」ものであるのに対して、引用発明の「ばね片14」は、そのような形状ないし配置であるということができるか否か、必ずしも明確ではない点。 2-3-4 相違点の判断 (1)相違点1について 変速機において操作ケーブルを用いること及び変速操作部又は変速機に当該操作ケーブルを固定することは、慣用される技術である(例えば、実願昭56-39792号(実開昭57-153025号)のマイクロフィルムの第1図等参照。)。そして、引用発明の「コントロールケーブル1」及びその「端末固定装置」は、技術的にみて、適用対象が特段限定されるわけではなく、操作ケーブルにて装置を操作するに当たり、広く適用が可能なものであることは、当業者にとって明らかである。 そうすると、引用発明における「コントロールケーブル1」を変速機において適用し、変速操作部又は変速機に固定するようにすることは、当業者にとって容易に想到し得たものである。 (2)相違点2について 引用発明における「ばね片14」は、上述2-3-2c)で摘記したように、2本の「脚片16」を有しており、これが「ケース6」の「凹溝7」にはまりこむことで、「ケース6をブラケット10に対し軸方向及び半径方向に固定する」ものである。ところで、この「ばね片14」は、「主板15」の弾性によって「脚片16」の「凹面17」が「凹溝7」を締め付けるとともに、「弾性爪片19」が「ブラケット10」の「段部21」に係止して「ばね片14」を「ケース10」に固定するものであるが「ケース6」の固定に直接寄与している部位は、「脚片16」である。そして、この「脚片16」は、固定された後は、「凹溝7」に対して平行に位置する1つの平面に延在するものである。そうすると、「ばね片14」全体の形状は、1つの平面に延在するものではないが「ケース6」の固定に直接寄与している部位は、「脚片16」であって、当該部位は、「凹溝7」に対して平行に位置する1つの平面に延在する部位であると評価することができる。してみれば、当該相違点2は、実質的なものではない(なお、本願の実施例における「ばねエレメント15」は、「互いに90°の角度を成して位置する2つの脚部9,10を有する山形もしくはアングル形の形状を有している。ばねエレメント15の一方の脚部9はシフト操作部のハウジング部分11に位置固定されている。」(本願明細書の段落【0014】)とされており、その全体の形状は、1つの平面に延在するものではない。すなわち、「外被端部材5」を固定するための「脚部10」と、「ばねエレメント15」自体を「収容エレメント6」に固定するための「脚部9」とが異なる平面に延在するものであり、この点において、引用発明の「ばね片14」と同様の構造である。)。 また、そうでないとしても、「ばね片14」の形状は、製造コストや脱着性、固定力等を考慮して当業者が適宜設定すべき事項であり、「ばね片14」において「脚片16」と「主板15」とを1つの平面上に延在させるようにしたり、「弾性爪片19」まで含めた「ばね片14」の全体形状を1つの平面に延在するようにすることは、当業者にとって設計的になし得る事項である。 そして、本願補正発明は、単純な構成と小数の構成部品点数とに基づいて廉価な作成が可能等の効果を奏するものであるが、それらが当業者に予測できない顕著なものであるとまでいうことはできない。 したがって、本願補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 なお、審判請求人は、審判請求書において、引用発明における「ばね片14」の形状に関し、3次元に形成されていて複数の平行な平面にわたって伸びている点について指摘するとともに、実施例における「ばねエレメント(15)」全体は、互いに直角に配置された「2つの脚部(9,10)」からなるアングル形の形状を有しているが「脚部(9)」は、「ばねエレメント(15)」を「ハウジング部分(11)」に取り付けるためにしか働かず、「脚片10」のみが実質的な「ばねエレメント」である旨の主張をする。しかし、これらに対する当審の判断は、上述(2)のとおりである。 2-4 補正の却下の決定のむすび 以上のとおりであるから、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 3-1 本願発明 本件補正は、上述のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明は、特許法第184条の6第2項の規定により願書に添付して提出したものとみなされた明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の1ないし6に記載されたとおりのものと認めるところ、請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、上述2-1(1)のとおりである。 3-2 刊行物に記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及び引用発明は、上述2-3-2のとおりである。 3-3 対比及び判断 上述2.のとおり、本願補正発明は、本願発明のすべての発明特定事項を備えた上で、その一部をさらに限定して特定したものであるところ、その本願補正発明が引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願は、特許請求の範囲の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-04-07 |
結審通知日 | 2009-04-16 |
審決日 | 2009-04-28 |
出願番号 | 特願2002-564270(P2002-564270) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F16C)
P 1 8・ 575- Z (F16C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 谿花 正由輝 |
特許庁審判長 |
山岸 利治 |
特許庁審判官 |
岩谷 一臣 川上 益喜 |
発明の名称 | 操作ケーブルを位置固定するための固定装置 |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 矢野 敏雄 |