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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09F
管理番号 1204227
審判番号 不服2008-5664  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-06 
確定日 2009-09-17 
事件の表示 特願2001-324714「プラズマディスプレイ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月 9日出願公開、特開2003-131580〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成13年10月23日の出願であって、平成17年12月15日付けで拒絶理由が通知され、平成18年2月20日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成20年1月31日付けで拒絶査定がなされたため、これを不服として同年3月6日に本件審判請求がされるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。
そして、当審においてこれを審理した結果、平成21年4月14日付けの補正の却下の決定により平成20年3月6日付けの手続補正を却下するとともに、平成21年4月14日付けで拒絶理由を通知したところ、平成21年6月22日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで明細書について手続補正がされたものである。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年6月22日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「少なくとも前面側が透明な一対の基板を基板間に放電空間が形成されるように対向配置しかつ複数の放電セルを有するパネル本体と、このパネル本体を前面に保持しかつ後面側に前記パネル本体を表示駆動するための回路ブロックを取付けたシャーシ部材と、前記パネル本体を収容しかつ前記パネル本体の前面側の画像表示領域が表出する開口部を有する前面枠と前記シャーシ部材に固定される金属製のバックカバーとからなる筐体と、前記前面枠の開口部を塞ぐように周縁部を押え金具と前面枠により挟持することにより取付られかつ前記前面枠の開口部より大きい透明な前面保護板とを有し、前記パネル本体と前面保護板との間に画像表示領域の周辺部に沿って前記パネル本体のシール部上に位置するように枠状の弾性体を配置し、かつ前記枠状の弾性体の上辺部の一部に開口部を設けたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。」

第2 当審の判断
1 引用刊行物の記載事項
当審で通知した拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-237844号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の(ア)ないし(キ)の記載が図面とともにある。

(ア)「【請求項1】 背面を開口する箱状のシャーシの前面に、プラズマディスプレイパネルを接着し、内部にプラズマディスプレイパネルを駆動する駆動基板、表示用信号を処理する信号基板、前記駆動基板、信号基板等に電力を供給する電源基板等を取り付け、同シャーシを前面に開口を有する箱状の筐体に収納し、同シャーシ前面に、光学フィルタ等を表示窓に固定した前面パネルを取り付けてなることを特徴とする表示装置。」

(イ)「【請求項7】 前記光学フィルタとプラズマディスプレイパネルとの間の周縁に防塵ゴムを挟持するようにしたことを特徴とする請求項1記載の表示装置。」

(ウ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表示装置に係わり、とくに、プラズマディスプレイパネルの放熱を良くし、パネル前面の防塵を可能としたものに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、プラズマディスプレイパネル(PDP)を使用した表示装置は、図3に示すように、PDP3の裏面に間隔を開けて駆動基板61を取り付け、これを裏面に配置して内部に表示用信号を処理する信号基板62、前記駆動基板61および信号基板62に電力を供給する電源基板63等を取り付けたシャーシ40に固定し、同シャーシ40を前面に開口を有する箱状の筐体1に収納し、同シャーシ40前面に、光学フィルタ21等を表示窓に固定した前面パネル2を固定するようにしていた。しかし、この構成では、PDP3およびその駆動基板61から発生する熱を放熱するため、PDP3と前記シャーシ40間および前記光学フィルタ21間に隙間を設け、この隙間にファン5により通風して冷却するようにしており、PDP3と光学フィルタ21との間の隙間に埃がつき易いばかりか、薄型化の阻害要因となっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は以上述べた問題点を解決し、薄型化を図るとともにPDPの表面を防塵することのできる表示装置を提供することを目的としている。」

(エ)「【0011】
【発明の実施の形態】以上のように、本発明の表示装置においては、背面を開口する箱状のシャーシの前面に、プラズマディスプレイパネルを接着し、内部にプラズマディスプレイパネルを駆動する駆動基板、表示用信号を処理する信号基板、前記駆動基板、信号基板等に電力を供給する電源基板等を取り付け、同シャーシを前面に開口を有する箱状の筐体に収納し、同シャーシ前面に、光学フィルタ等を表示窓に固定した前面パネルを取り付けたので、プラズマディスプレイパネルから発生する熱をシャーシに伝導して放熱できるとともに、駆動基板を他の信号基板、電源基板と同じ流風路に配置し、各基板から発生する熱を同時に放熱することができる。したがって、従来設けていたPDPとシャーシ間の隙間を無くすことができ、また、PDPと光学フィルタ間に通風する必要がなく、隙間を小さくして薄型化が図れるとともに、防塵ゴム等により防塵することも可能となる。
【0012】
【実施例】以下、図面に基づいて本発明による表示装置を詳細に説明する。図1は本発明による表示装置の一実施例を示す要部側断面図である。図において、1は筐体であり、下面に吸気孔1a上面に排気孔1bを備えている。2は前面パネルで、前面の窓枠には光学フィルタ21が取り付けられており、この光学フィルタ21の背面周縁には防塵ゴム21aが接着固定されている。3は前記光学フィルタ21の背面に配置され、光学フィルタ21との間に防塵ゴム21aを挟持するプラズマディスプレイパネル(PDP)である。4はアルミ等、熱伝導性のよい材料で形成したシャーシで、前面に前記PDP3を接着して密着固定している。このシャーシ4の下部側壁には前記筐体1の吸気孔1aに対応する流風孔4aが形成されており、上部側壁には前記筐体1の排気孔1bに対応して冷却用のファン5を取り付けるファン取付部4bが設けられている。内部には基板取付用のボス4cが複数設けられており、同ボス4cにPDPを駆動する駆動基板61、表示用信号等を処理する信号基板62、前記各基板61、62に電力を供給する電源基板63がネジ10等で取り付けられている。」

(オ)「【0014】以上の構成において、つぎにその組み立て手順を説明する。まず、PDP3をシャーシ4の前面に接着して固定する。つぎに、シャーシ4にファン5、駆動基板61、信号基板62、電源基板63、金具取付部4dをそれぞれ固定して各間の配線を行う。一方、前面パネル2の窓枠に、光学フィルタ21を取り付け、光学フィルタ21の裏面周縁に防塵ゴム21aを接着して固定しておく。この光学フィルタ21を取り付けた前面パネル2をシャーシ4の前面にネジ11で固定する。最後に前記前面パネル2に取り付けたシャーシ4を筐体1に収納してネジ12で固定して完成する。
【0015】以上のように構成したので、プラズマディスプレイパネル(PDP)3から発生する熱はシャーシ4に伝熱される。このシャーシ4に伝熱された熱は、吸気孔1a、流風孔4aを介して吸入された空気により、駆動基板61、信号基板62、電源基板63等と共に放熱され、温まった空気はファン5により排気孔1bから排気される。
【0016】
【発明の効果】以上説明したように、本発明による表示装置によれば、背面を開口する箱状のシャーシの前面に、プラズマディスプレイパネルを接着し、内部にプラズマディスプレイパネルを駆動する駆動基板、表示用信号を処理する信号基板、前記駆動基板、信号基板等に電力を供給する電源基板等を取り付け、同シャーシを前面に開口を有する箱状の筐体に収納し、同シャーシ前面に、光学フィルタ等を表示窓に固定した前面パネルを取り付けたので、プラズマディスプレイパネルから発生する熱をシャーシに伝導し、シャーシから放熱できるとともに、駆動基板を他の信号基板、電源基板と同じ流風路に配置し、各基板から発生する熱を同時に放熱することができる。したがって、従来設けていたPDPとシャーシ間の隙間を無くすことができ、また、PDPと光学フィルタ間に通風する必要がなく、隙間を少なくして薄型化が図れるとともに、防塵ゴム等により防塵することも可能となる。」

(カ)引用例1の上記記載事項(エ)の段落【0012】及び図1から、シャーシ4のプラズマディスプレイパネル接着面と反対側の面にボス4cが複数設けられ、同ボス4cにプラズマディスプレイパネル3を駆動する駆動基板61が取り付けられていることを読み取ることができる。

(キ)引用例1の上記記載事項(ア)、(エ)及び図1から、光学フィルタは前面パネルの表示窓よりも大きいことを読み取ることができる。

また、当審で通知した拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-284677号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の(ク)ないし(ソ)の記載が図面とともにある。

(ク)「【請求項2】 表示体と、該表示体を取り付けるフレームと、前記フレームに取り付き前記表示体の前面をカバーするフロントパネルと、前記フレームの背面に取り付くリアパネルとを備え、前記フロントパネルまたは前記リアパネルの内少なくとも一方の上面と下面とに放熱用の開口を設け、さらに、前記フロントパネルまたは前記リアパネルの内少なくとも一方と前記表示体との間に設けた空間に、エアーフィルタ部材を配置したことを特徴とする表示装置。
【請求項3】 エアーフィルタ部材を通気性と防塵性を備えたスポンジとしたことを特徴とする請求項2記載の表示装置。」

(ケ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表示体にPDP(プラズマディスプレイパネル)等を使用して薄型に構成し、台上据置き型、あるいは壁面据置き型への対応を容易にする表示装置(国際特許分類 H04N 5/64)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の表示体にPDP等を使用して薄型に構成し、台上据置き型、あるいは壁面据置き型への対応を容易にする表示装置は、特に装置内部で発生する熱の放出方法が問題であり、例えば、特開平7-322171号公報に示すように、装置内部で発生する熱を構造体であるフレームに伝導し、前記フレームに一体形成された外周の放熱フィンから放熱させる表示装置がある。
【0003】図4に従来の表示装置の構造を示しており、発熱体であるPDP等の表示体14および信号ユニット15を締結部材16a16bを用いて構造体であるフレーム17に夫々締結することにより、表示装置内部で発生する熱をフレーム17に伝導し、前記フレーム17に一体形成された外周の放熱フィン18から放熱させる構成となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このように、表示装置内部で発生する熱の放出については熱の発生源からいかに熱を伝導し外部へ放出させるかが課題であるが、PDPのように表示体自体が発熱体である表示装置については、表示体表面の温度をいかに外部へ放出するかが課題の一つである。特に表示体の表示側(視聴者側)は発生する熱をフレーム等に伝導するための構造体を配置できないため、表示体の温度上昇を抑えることが困難であった。」

(コ)「【0006】本発明によれば、PDPのように表示体自体が発熱体で、しかも表示体の表示側(表示装置前面側)に熱をフレーム等へ伝導するための構造体を配置できない構成において、空気の対流により表示体表面の熱の滞留を防ぎ、表示体の温度上昇を抑えることができる表示装置を提供できる。」

(サ)「【0008】請求項2に記載の発明は、表示体と、該表示体を取り付けるフレームと、前記フレームに取り付き前記表示体の前面をカバーするフロントパネルと、前記フレームの背面に取り付くリアパネルとを備え、前記フロントパネルまたは前記リアパネルの内少なくとも一方の上面と下面とに放熱用の開口を設け、さらに、前記フロントパネルまたは前記リアパネルの内少なくとも一方と前記表示体との間に設けた空間に、エアーフィルタ部材を配置したことを特徴とする表示装置としたものであり、放熱用の孔からホコリ等が前記表示体前表面部分と前記フロントパネルの空間に侵入するのを防ぐという作用を有する。
【0009】請求項3に記載の発明は、エアーフィルタ部材を通気性と防塵性を備えたスポンジとしたことを特徴とする請求項2記載の表示装置としたものであり、放熱用の孔から侵入したホコリ等の排除が容易にできるという作用を有する。」

(シ)「【0014】以下、本発明の実施の形態について、図1から図3を用いて説明する。
(実施の形態)図1は本発明の一実施の形態における表示装置と据置き台の後面斜視図である。表示装置を構成する筐体1は、表示装置背面に固定できる取り付け部2を備えた据置き台3により台上に安定して設置されている。
【0015】図2は本発明の一実施の形態における表示装置と据置き台の断面図である。図2において、符号4はPDPのように表示体自体が発熱体である表示体、5は前記表示体4を前面側に取り付ける枠形のフレーム、6は前記フレーム5に取り付けられ前記表示体4の前面をカバーするフロントパネル、7は前記フレーム5の背面に取り付けるリアパネルである。
【0016】本発明の表示装置は、表示体4と、前記表示体を取り付ける枠形のフレーム5と、前記フレームに取り付き前記表示体の前面をカバーするフロントパネル6と、前記フレームの背面に取り付くリアパネル7とを備えた構成としている。
【0017】また、前記表示体4の表示部8と前記フロントパネル6のと間に空間9を設け、かつ、少なくとも前記フロントパネル6の上面と下面とにそれぞれ放熱用の孔10a、10bが配置してある。
【0018】表示体4で発生する熱は空気の対流により前記フロントパネル6に配置された放熱用の孔10aから表示装置外部へ放出されるため、表示体4の温度上昇を抑えることができる。なお、以上の説明では、放熱用の孔10aおよび10bはフロントパネル6に配置した例で説明したが、リアパネル7に配置しても同様に実施可能である。」

(ス)「【0021】また、前記フロントパネル6と前記表示体4の表示部外の外周部の空間9に通気性がありかつ、防塵性のあるエアーフィルタ部材たとえば、発泡ウレタンフォーム等のスポンジ13a、13bを配置することにより、前記放熱用の孔10aあるいは10bからホコリ等が前記表示体4の前面表面部分8と前記フロントパネル6の空間9に侵入するのを防ぐことができる。」

(セ)「【0024】さらに、エアーフィルタ部材として任意の部材を用いてよいことは言うまでもない。例えば、多孔性セラミックス、多孔性焼結金属、不織布や繊維部材等からなるエアーフィルタ等としてよい。
【0025】
【発明の効果】以上のように本発明の表示装置によれば、空気の対流により表示体表面の熱の滞留を防ぎ、表示体の温度上昇を抑えることができる。(以下省略)」

(ソ)図1,2から、フロントパネル6とリアパネル7は、プラズマディスプレイパネルのような表示体4を収容する筐体1を構成することを読み取ることができる。

2 引用例1に記載の発明の認定
引用例1の上記記載事項(ア)ないし(キ)から、引用例1には次の発明が記載されていると認めることができる。

「背面を開口する箱状のシャーシの前面にプラズマディスプレイパネルを接着し、前記シャーシの内部であって前記シャーシのプラズマディスプレイパネル接着面と反対側の面に前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動基板を取り付け、前記シャーシを前面に開口を有する箱状の筐体に収納してネジで固定し、光学フィルタを表示窓に固定した前面パネルを前記シャーシの前面に取り付けてなるプラズマディスプレイパネル表示装置において、
前記光学フィルタは前記前面パネルの前記表示窓よりも大きく、
前記光学フィルタと前記プラズマディスプレイパネルとの間の周縁に防塵ゴムを挟持するようにした、
プラズマディスプレイパネル表示装置。」(以下「引用発明」という。)

3 本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
(1)引用発明の「プラズマディスプレイパネル表示装置」は、本願発明の「プラズマディスプレイ装置」に相当する。
また、プラズマディスプレイパネルが、少なくとも前面側が透明な一対の基板を基板間に放電空間が形成されるように対向配置しかつ複数の放電セルを有することは、本願出願時の技術常識であるから、引用発明の「プラズマディスプレイパネル」は、本願発明の「少なくとも前面側が透明な一対の基板を基板間に放電空間が形成されるように対向配置しかつ複数の放電セルを有するパネル本体」に相当する。

(2)引用発明の「前面にプラズマディスプレイパネルを接着」する「背面を開口する箱状のシャーシ」は、本願発明の「このパネル本体を前面に保持」する「シャーシ部材」に相当する。
また、引用発明の「前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動基板」は、本願発明の「前記パネル本体を表示駆動するための回路ブロック」に相当し、引用発明の「内部であって」「プラズマディスプレイパネル接着面と反対側の面に前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動基板を取り付け」た「背面を開口する箱状のシャーシ」と、本願発明の「後面側に前記パネル本体を表示駆動するための回路ブロックを取付けたシャーシ部材」とは、「パネル本体を保持する面と反対の面側に前記パネル本体を表示駆動するための回路ブロックを取付けたシャーシ部材」である点で一致する。

(3)引用発明の「プラズマディスプレイパネル表示装置」では、「プラズマディスプレイパネル」の画像表示領域が「前面パネル」の「表示窓」から表出していることは明らかである。したがって、引用発明の「プラズマディスプレイパネル」の前面側の画像表示領域が表出する「表示窓」を有する「前面パネル」は、本願発明の「前記パネル本体の前面側の画像表示領域が表出する開口部を有する前面枠」に相当する。
また、引用発明の「シャーシ」に「ネジで固定」される「前面に開口を有する箱状の筐体」と、本願発明の「前記シャーシ部材に固定される金属製のバックカバー」とは、「前記シャーシ部材に固定されるバックカバー」である点で一致する。
さらに、引用発明の「プラズマディスプレイパネル表示装置」は、「プラズマディスプレイパネル」が「接着」された「シャーシ」「を前面に開口を有する箱状の筐体に収納し」、「前面パネルを前記シャーシの前面に取り付けてなる」ものであるから、引用発明の「プラズマディスプレイパネル」は「前面パネル」及び「前面に開口を有する箱状の筐体」の中に「収納」されている。したがって、引用発明の「前面パネル」及び「前面に開口を有する箱状の筐体」は、本願発明の「前記パネル本体を収容し」「前面枠と」「バックカバーとからなる筐体」に相当する。

(4)引用発明の「プラズマディスプレイパネル表示装置」では、引用発明の「前面パネル」の「表示窓に固定」された「光学フィルタ」を通して、「プラズマディスプレイパネル」の画像表示領域が外部から視認可能となっていることは明らかであるから、引用発明の「光学フィルタ」は透明であると認めることができる。また、引用発明の「光学フィルタ」は「プラズマディスプレイパネル」の視認側(前面側)に配置されていることは明らかであるから、引用発明の「光学フィルタ」は「プラズマディスプレイパネル」の「前面」を保護する機能を有すると認めることができる。
したがって、引用発明の「前記前面パネルの前記表示窓よりも大き」な「光学フィルタ」と、本願発明の「前記前面枠の開口部を塞ぐように周縁部を押え金具と前面枠により挟持することにより取付られかつ前記前面枠の開口部より大きい透明な前面保護板」とは、「前記前面枠の開口部より大きい透明な前面保護板」である点で一致する。

(5)引用発明の「防塵ゴム」は「前記光学フィルタと前記プラズマディスプレイパネルとの間の周縁」に「挟持」されているから、引用発明の「防塵ゴム」は枠状に配置されていることは明らかである。
また、引用発明の「防塵ゴム」が「プラズマディスプレイパネル」の画像表示領域に配置されると表示画像の視認に悪影響が出るから、引用発明の「防塵ゴム」は「プラズマディスプレイパネル」の画像表示領域の周辺部に沿って配置されていることも明らかである。
すると、引用発明の「前記光学フィルタと前記プラズマディスプレイパネルとの間の周縁に防塵ゴムを挟持する」ことと、本願発明の「前記パネル本体と前面保護板との間に画像表示領域の周辺部に沿って前記パネル本体のシール部上に位置するように枠状の弾性体を配置」することとは、「前記パネル本体と前面保護板との間に画像表示領域の周辺部に沿って枠状の弾性体を配置」する点で一致する。

(6)すると、本願発明と引用発明とは、

「少なくとも前面側が透明な一対の基板を基板間に放電空間が形成されるように対向配置しかつ複数の放電セルを有するパネル本体と、このパネル本体を前面に保持しかつ前記パネル本体を保持する面と反対の面側に前記パネル本体を表示駆動するための回路ブロックを取付けたシャーシ部材と、前記パネル本体を収容しかつ前記パネル本体の前面側の画像表示領域が表出する開口部を有する前面枠と前記シャーシ部材に固定されるバックカバーとからなる筐体と、前記前面枠の開口部より大きい透明な前面保護板とを有し、前記パネル本体と前面保護板との間に画像表示領域の周辺部に沿って枠状の弾性体を配置したプラズマディスプレイ装置。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点1〉
本願発明の「パネル本体を表示駆動するための回路ブロック」は「シャーシ部材」の「後面側」に取り付けられているのに対し、引用発明の「プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動基板」は「背面を開口する箱状のシャーシ」「の内部であって前記シャーシのプラズマディスプレイパネル接着面と反対側の面」に取り付けられている点。

〈相違点2〉
本願発明の「バックカバー」は「金属製」であるのに対し、引用発明の「筐体」には材質について限定がない点。

〈相違点3〉
本願発明の「前面保護板」は「前記前面枠の開口部を塞ぐように周縁部を押え金具と前面枠により挟持することにより取付られ」るのに対し、引用発明の「光学フィルタ」にはこのような限定がない点。

〈相違点4〉
本願発明の「枠状の弾性体」は「前記パネル本体のシール部上に位置するように」配置されるのに対し、引用発明の「前記光学フィルタと前記プラズマディスプレイパネルとの間の周縁」に「挟持」された「防塵ゴム」にはこのような限定がない点。

〈相違点5〉
本願発明の「前記枠状の弾性体」はその「上辺部の一部に開口部を設けた」のに対し、引用発明の「前記光学フィルタと前記プラズマディスプレイパネルとの間の周縁」に「挟持」された「防塵ゴム」にはこのような限定がない点。

4 相違点についての判断
(1)相違点1について
プラズマディスプレイパネル表示装置の技術分野において、前面にプラズマディスプレイパネルを保持し、前記前面と反対の面側に前記プラズマディスプレイパネルを表示駆動するための回路基板を取り付け、さらに、前記プラズマディスプレイパネルを後部から収納するバックケース部と固定されるシャーシ部材として板状のシャーシ部材を採用するとともに、前記板状のシャーシ部材の後面側に前記プラズマディスプレイパネルを表示駆動するための回路基板を取り付けることは、本願出願時において当業者に周知の技術的事項である(例えば、特開平10-240138号公報(特に、段落【0030】、【0032】?【0034】、図5?6等)、特開2000-47596号公報(特に、段落【0007】?【0008】、図1?2)、特開平11-119678号公報(特に、段落【0011】?【0020】、図1等)を参照。)。
そして、引用発明の「シャーシ」はその「前面にプラズマディスプレイパネルを接着し」、その「内部であって前記シャーシのプラズマディスプレイパネル接着面と反対側の面に前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動基板を取り付け」、「前面に開口を有する箱状の筐体に」「ネジで固定」されるものであるから、引用発明の「シャーシ」も、前面にプラズマディスプレイパネルを保持し、前記前面と反対の面側に前記プラズマディスプレイパネルを表示駆動するための回路基板を取り付け、さらに、前記プラズマディスプレイパネルを後部から収納するバックケース部と固定されるシャーシ部材である。
すると、引用発明に上記周知技術を適用して、引用発明の「背面を開口する箱状のシャーシ」を板状のシャーシ部材とするとともに、前記板状のシャーシ部材の後面側に前記プラズマディスプレイパネルを表示駆動するための回路基板を取り付けることは、当業者にとって容易に想到し得る。
したがって、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

(2)相違点2について
プラズマディスプレイパネル表示装置の技術分野において、プラズマディスプレイパネルを収納するケースをフロントケース部とバックケース部とからなる前後二分割構成とするとともに、前記バックケース部の材質として金属を採用することは、本願出願時において当業者に周知の技術的事項である(一例として、特開平10-240138号公報(特に、段落【0031】、図5?6等)を参照。)。
そして、引用発明の「プラズマディスプレイパネル」を収納するケースも、「前面パネル」と「筐体」とからなる前後二分割構成となっている。
すると、引用発明に上記周知技術を適用して、引用発明の「筺体」の材質として金属を採用することは、当業者にとって容易に想到し得る。
したがって、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

(3)相違点3について
プラズマディスプレイパネル表示装置の技術分野において、光学フィルタ等プラズマディスプレイパネルの前面に配置される部材を前記部材の周縁部を押さえ金具と前記プラズマディスプレイパネルを収納するケースの前面枠とにより挟持して、前記部材を前記前面枠の開口部を塞ぐように取り付けることは、本願出願時において当業者に周知の技術的事項である(例えば、特開平11-282367号公報(特に、段落【0002】、図4)、特開平11-305676号公報(特に、段落【0014】、図1)を参照。)。
すると、引用発明に上記周知技術を適用して、引用発明の「光学フィルタ」の周縁部を押さえ金具と「前面パネル」とにより挟持して、前記「光学フィルタ」を前記「前面パネル」の「表示窓」を塞ぐように取り付けることは、当業者にとって容易に想到し得る。
したがって、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

(4)相違点4について
プラズマディスプレイパネルが、少なくとも前面側が透明な一対の基板間の画像表示領域の周辺部にシール部を有するものであることは、本願出願時の技術常識であるから、引用発明の「プラズマディスプレイパネル」も、少なくとも前面側が透明な一対の基板間の画像表示領域の周辺部にシール部を有するものであることは明らかである。
そして、上記第2の3(5)で述べたとおり、引用発明の「防塵ゴム」が「プラズマディスプレイパネル」の画像表示領域に配置されると表示画像の視認に悪影響が出るから、引用発明の「防塵ゴム」は「プラズマディスプレイパネル」の画像表示領域の周辺部に沿って配置されていることも明らかである。
すると、引用発明の「防塵ゴム」を「プラズマディスプレイパネル」の画像表示領域の周辺部に設けるに当たり、画像表示領域の周辺部である「プラズマディスプレイパネル」のシール部上に前記「防塵ゴム」を配置することは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。
したがって、上記相違点4に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

(5)相違点5について
引用例2の上記記載事項(ク)ないし(ソ)から、引用例2には、フロントパネルの上面と下面とに放熱用の開口を設け、さらに、前記フロントパネルとプラズマディスプレイパネル表示体の表示部外の外周部の空間に、通気性と防塵性を備えたスポンジからなるエアーフィルタ部材を配置することによって、前記プラズマディスプレイパネル表示体から発生する熱を空気の対流により前記フロントパネル上面の放熱用の孔からプラズマディスプレイパネル表示装置外部へ放出するようにして、前記プラズマディスプレイパネル表示体から発生する熱が前記プラズマディスプレイパネル表示体の表示側(表示装置前面側)において滞留しないようにした旨記載されている。このように、引用例2のプラズマディスプレイパネル表示装置では、プラズマディスプレイパネル表示体から発生する熱を空気の対流により前記フロントパネル上面の放熱用の孔からプラズマディスプレイパネル表示装置外部へ放出するようにしている以上、引用例2のプラズマディスプレイパネル表示体の表示部外の外周部に設けられたスポンジからなるエアーフィルタ部材の上辺部が通気性を備えていることは明らかであるし、引用例2のスポンジからなるエアーフィルタ部材は通気性のみならず防塵性も備えているから、引用例2のスポンジからなるエアーフィルタ部材は、プラズマディスプレイパネル表示体の視認側(前面側)にほこりが侵入するのを防ぎつつ、プラズマディスプレイパネル表示体から発生する熱により温まった空気をプラズマディスプレイパネル表示装置外部へ放出する機能を有していることも明らかである。
そして、引用発明の「防塵ゴム」と引用例2のスポンジからなるエアーフィルタ部材とは、プラズマディスプレイパネルの視認側(前面側)に配置されて、前記プラズマディスプレイパネルを視認側(前面側)から収納する部材(引用発明の「光学フィルタ」、引用例2の「フロントパネル」)と前記プラズマディスプレイパネルの前面と間に設けられ、かつ、防塵性を有する枠状の弾性体である点で共通し、引用発明の「プラズマディスプレイパネル表示装置」と引用例2のプラズマディスプレイパネル表示装置とは、プラズマディスプレイパネルから発生する熱を外部に放出するとともに、プラズマディスプレイパネルの視認側(前面側)にほこりが侵入するのを防止するという課題が解決されるプラズマディスプレイパネル表示装置である点で共通する(引用例1の上記記載事項(ウ)、(オ)、及び、引用例2の上記記載事項(コ)、(サ)?(セ)を参照。)。
すると、引用例2の記載に基づいて、引用発明の「防塵ゴム」の上辺部に通気性を持たせることは、当業者にとって容易に想到し得る。
そして、開口部を設けて通気性を持たせることは本願出願時における周知技術であるから、引用発明の「防塵ゴム」の上辺部に通気性を持たせる際、引用発明の「防塵ゴム」の上辺部に開口部を設けるようにすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。
したがって、上記相違点5に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

5 本願発明の進歩性の判断
以上検討したとおり、引用発明に上記相違点1ないし5に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。
また、本願発明の効果も、引用例1,2に記載された発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものに過ぎない。
したがって、本願発明は引用例1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は引用例1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-09 
結審通知日 2009-07-14 
審決日 2009-07-27 
出願番号 特願2001-324714(P2001-324714)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河原 英雄  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 村田 尚英
日夏 貴史
発明の名称 プラズマディスプレイ装置  
代理人 永野 大介  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  

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