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審決分類 審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  H02M
審判 全部無効 2項進歩性  H02M
管理番号 1204366
審判番号 無効2006-80188  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-09-21 
確定日 2009-08-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第3758165号「順次バーストモード活性化回路」の特許無効審判事件についてされた平成20年7月7日付け審決に対し、訂正審判2008-390125号の訂正を認める審決が確定したことにより、知的財産高等裁判所において、特許法第181条第1項の規定による審決取消の判決(平成20年(行ケ)第10418号 平成21年3月10日判決言渡し)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3758165号についての出願は、2002年1月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年1月9日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成18年1月13日に特許権の設定登録がされ、その後、本件特許請求の範囲の請求項1ないし68に係る発明の特許(以下「本件特許」という。)に対して特許の無効審判が請求され、本件特許請求の範囲の請求項1ないし68に係る発明の特許を無効とする審決がなされたところ、該審決に対する訴えが提起され、その訴訟中に訂正審判(以下「第1次訂正審判」という。)が請求され、知的財産高等裁判所において、審決取消の決定がなされ確定し、被請求人より、指定期間内に訂正請求がなされた。(なお、第1次訂正審判は、特許法第134条の3第4項の規定により、取り下げられたものとみなされる。)その後、「訂正を認める。本件特許を無効とする。」旨の審決がなされたところ、該審決に対する訴えの提起〔平成20年(行ケ)第10418号〕がなされ、その訴訟中に訂正審判(以下「第2次訂正審判」という。)が請求され(なお、前記訂正請求は、平成21年6月9日に取り下げられた。)、平成21年2月2日に訂正を認める旨の審決がなされ確定したものである。

2.本件特許第3758165号の請求項1ないし9に係る発明は、上記のとおり確定した第2次訂正審判により訂正された次のとおりのものである。(以下「本件特許発明1ないし9」という。)
「【請求項1】液晶装置のバックライトに用いられる複数の冷陰極蛍光ランプ負荷の調光制御のための可変パワー調整回路であって、該回路は、
前記冷陰極蛍光ランプ負荷がオンである期間を規定する可変なパルス幅を有するパルス信号を発生するパルス変調器と、
スクリーン表示の掃引に用いられるビデオ信号を基準信号として受け、該基準信号に基づき周波数選択信号を発生する周波数セレクタと、
前記パルス変調器および前記周波数セレクタに接続されているとともに、前記パルス信号及び前記周波数選択信号を受け、それぞれが前記周波数選択信号によって決まる周波数を有し、少なくとも四つが異なる開始タイミングである、前記複数の冷陰極蛍光ランプ負荷のための複数の位相シフトバースト信号を発生する位相遅延アレイと、
前記位相シフトバースト信号を受けるために前記位相遅延アレイに接続されているとともに、少なくとも4つの前記冷陰極蛍光ランプ負荷への電力を調整するための高電圧ACパワー調整信号であって、前記位相シフトバースト信号のパルス幅に対応したACパワー信号区間を持つ少なくとも4つの高電圧ACパワー調整信号を発生する少なくとも二つの位相アレイドライバーとを具備し、
前記冷陰極蛍光ランプ負荷は、前記高電圧ACパワー調整信号をそれぞれ受けるとともに、前記高電圧ACパワー調整信号の電力に基づいて発光し、
前記周波数セレクタは、前記基準信号の周波数をk倍化した信号(kは基準信号の倍係数)を前記周波数選択信号として発生し、
前記パルス信号のパルス幅は、前記周波数選択信号の周期より小さな値であり、
前記位相遅延アレイは、前記周波数選択信号の周期を有し前記パルス信号のパルス幅を有する信号を、各前記冷陰極蛍光ランプ負荷を独立して制御するための前記位相シフトバースト信号として発生するものであり、
前記高電圧ACパワー調整信号は、前記位相シフトバースト信号の位相値に等しい位相値を有しており、
各前記位相アレイドライバーは、180°位相が異なる二つの前記位相シフトバースト信号を受けて、180°位相の異なる二つの前記高電圧ACパワー調整信号を発生し、
前記位相アレイドライバーの少なくとも一つは、対応する前記冷陰極蛍光ランプ負荷へ電力を供給するためのランプ回路を有し、
各前記位相アレイドライバは近接して配置されており、
前記位相アレイドライバは、第1位相アレイドライバと第2位相アレイドライバとを少なくとも有して構成され、
前記第1位相アレイドライバは、前記高電圧ACパワー調整信号の一つである第1高電圧ACパワー調整信号を出力する第1出力端と、前記第1高電圧ACパワー調整信号とは180°位相が異なる第2高電圧ACパワー調整信号を出力する第2出力端とを有し、
前記第2位相アレイドライバは、前記高電圧ACパワー調整信号の一つである第3高電圧ACパワー調整信号を出力する第3出力端と、前記第3高電圧ACパワー調整信号とは180°位相が異なる第4高電圧ACパワー調整信号を出力する第4出力端とを有し、
前記第1高電圧ACパワー調整信号の位相は、前記第3高電圧ACパワー調整信号の位相よりも進んでおり、
前記第3高電圧ACパワー調整信号の位相は、前記第2高電圧ACパワー調整信号の位相よりも進んでおり、
前記第2高電圧ACパワー調整信号の位相は、前記第4高電圧ACパワー調整信号の位相よりも進んでおり、
前記第1出力端と第2出力端と第3出力端と第4出力端とは、該第1出力端、第2出力端、第3出力端、第4出力端の順序で配置されており、
前記第1出力端と第2出力端と第3出力端と第4出力端とは、それぞれ、前記冷陰極蛍光ランプ負荷のそれぞれの一つに接続されていることを特徴とする可変パワー調整回路。
【請求項2】
請求項1に記載の回路において、前記複数の位相シフトバースト信号の各位相シフトバースト信号は、各負荷を調整することを特徴とする可変パワー調整回路。
【請求項3】
請求項1に記載の回路において、前記パルス変調器は、前記パルス幅を選択するための可変セレクタを有することを特徴とする可変パワー調整回路。
【請求項4】
請求項3に記載の回路において、前記可変セレクタはDC信号を提供するディマー回路と三角波を発生する発振器とを有し、前記パルス幅が前記DC信号と前記三角波との交点によって決まることを特徴とする可変パワー調整回路。
【請求項5】
請求項4に記載の回路において、前記ディマー回路は更に、前記DC信号のDC値を設定するための調光セレクタと、前記パルス幅変調信号のパルス幅を発生するために用いられる、前記DC信号と前記三角波の前記交点を決めるための極性セレクタとを有することを特徴とする可変パワー調整回路。
【請求項6】
請求項1に記載の回路において、前記位相遅延アレイは、前記位相シフトバースト信号の少なくとも二つが異なる開始タイミングを有するように、前記複数の位相シフトバースト信号の各位相シフトバースト信号のタイミングを取るためのカウンタを有することを特徴とする可変パワー調整回路。
【請求項7】
請求項1に記載の回路において、前記位相遅延アレイは、少なくとも一つの位相遅延値を発生するための位相遅延発生器を有していることを特徴とする可変パワー調整回路。
【請求項8】
請求項7に記載の回路において、前記少なくとも一つの位相遅延値は一定値であることを特徴とする可変パワー調整回路。
【請求項9】
請求項1に記載の回路において、前記位相遅延アレイは、発生すべき前記位相シフトバースト信号の数を決定するための少なくとも一つの選択信号入力を有することを特徴とする可変パワー調整回路。」

3.請求人の主張の概要
これに対して、請求人は、以下に示す第1及び第2の理由(以下「無効理由1」,「無効理由2」という。)により、本件特許発明1ないし9についての特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに対してなされたものであるから特許法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきであると主張するとともに、平成21年5月18日付の意見書において、第2次訂正審判による訂正が特許法第126条第3項及び第4項に規定する要件に違反してなされたものであり(以下、「無効理由3」という。)、また、該訂正が同法第126条第5項に規定する要件に違反してなされたものである(以下「無効理由4」という。)から、本件特許発明1ないし9についての特許は,同法第123条第1項第8号の規定により無効とされるべき旨主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第14号証を提出している。

(1)無効理由1
本件特許発明1ないし9は甲第1号証に記載された発明に基づいて、あるいは甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(2)無効理由2
本件特許発明1ないし9は甲第3号証に記載された発明に基づいて、あるいは甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(3)無効理由3
第2次訂正審判による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものでなく、実質上特許請求の範囲を変更するものであるから、特許法第126条第3項及び第4項に規定する訂正要件を満足しないものである。
(4)無効理由4
第2次訂正審判による訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は、甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、特許法第126条第5項に規定する要件に違反する。

4.被請求人の主張の概要
一方、被請求人は、本件特許発明1ないし9は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明及び周知技術並びにそれらの組み合わせに対して、課題、構成及び作用効果が顕著に相違するので特許法第29条第2項に該当せず、無効とされるべきものではない旨、及び、第2次訂正審判による訂正事項はいずれも願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内でなされており、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない旨主張している。

5.無効理由3について
そこで、まず、第2次訂正審判による訂正が願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内でなされたものであるか、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものであるかについて検討する。
(1)請求人の主張の概要
請求人は、上記意見書の「7.理由」の「(2)特許法第126条第3項及び同第4項違反について」において、本件特許発明1は、訂正前には「……少なくとも二つが異なる開始タイミングである、……複数の位相シフトバースト信号を発生する位相遅延アレイと、」とあったものを訂正後には「……少なくとも四つが異なる開始タイミングである,……複数の位相シフトバースト信号を発生する位相遅延アレイと、」と訂正しており、また、複数の負荷を少なくとも4つ以上の負荷と限定し,パワー調整信号及び位相アレイドライバの数を,少なくとも一つから,少なくとも4つ及び少なくとも二つと限定しているが、訂正前の本件特許明細書の記載によれば,負荷の数は最小限が6個と記載されており、「少なくとも4つの負荷」との記載はなく、また、「少なくとも4つ」の負荷に何らかの技術的意義がある旨の記載もなく、さらに、少なくとも四つの位相シフトバースト信号を発生することや、少なくとも4つのパワー調整信号を発生する少なくとも二つの位相アレイドライバを具備することの記載はなく、またこれらの数値に何らかの技術的意義がある旨の記載もないので、当該訂正は願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものに該当しない旨主張し、その根拠として知財高裁の平成20年12月25日に判決言渡しがあった平成20年(行ケ)第10254号の判決を引用している。

(2)判断
本件特許発明1の上記訂正は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「位相遅延アレイ」について「パルス変調器および周波数セレクタに接続されているとともに」との限定を付加するとともに、「開始タイミング」について「少なくとも二つ」から「少なくとも四つ」に減縮するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件特許明細書の段落【0021】に記載されているように、負荷の数の実施例の最小数は6であるが、同段落及び図5bを見れば「如何なる数の負荷を規定するのにも適用できる」旨記載されるように、6より少ないものも可能であることが記載されている。
そして、同書の段落【0032】の記載と図8の実施例を参照すれば、n/2(個)の各位相遅延ドライバが相補信号(n個の信号から選ばれた180°位相の異なる二つずつの位相シフトバースト信号のn/2組の各組み合わせ信号)である電力調整信号を発生するとともに各位相遅延ドライバ間の位相を((T/2)/nずつ)異ならせたもの、すなわち、少なくとも四つの負荷に対して一方の二つの負荷に与える電力の位相が180°異なるとともに他方の二つの負荷に与える電力の位相が一方の負荷に与える電力の位相とは異なるようにした組み合わせの構成が示されており、この実施例によれば少なくとも四つのパワー調整信号を発生する少なくとも二つの位相アレイドライバを具備し、負荷の数が四つ以上の実施例が示されているものといえる。すなわちこの実施例では、負荷の数が二つのものは除外されるとともに、負荷の数が6つであることを必要としない四つ以上の偶数個である発明が記載されているといえる。なお、明細書の発明の詳細な説明の上記段落及び図面については出願当初から補正はされていない。
そうすると上記の訂正は願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内でなされたものといえる。
また、図8の実施例を参照して同書の段落【0032】の記載を見れば、この訂正により高リップル電流及びノイズの発生を排除するという本件特許発明の課題が変更されるものでもないから実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものということはできない。

なお、請求人は、知財高裁の判決を引用して、これらの数値に何らかの技術的意義がある旨の記載もないので当該訂正は願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものに該当しない旨主張しているが、上記のとおり、願書に添付した明細書に四つ以上とする実施例が明りょうに記載されていたことが認められる以上、明細書又は図面に明確には記載されていなかった事項を追加する訂正に対する上記判決とは異なり、技術的意義の有無にかかわらず本件特許発明1の上記訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でなされたものというべきである。

したがって、無効理由3には理由がない。

6.無効理由1,2,4について
次に、本件特許発明1ないし9が甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができるか、また、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。
(1)甲各号証
無効審判請求人から提出された、甲第1号証ないし甲第14号証の記載内容は以下のとおりである。

(i)甲第1号証(特開平11-3039号公報)
・「【請求項1】LCDバックライトを点灯する点灯回路において、
バックライトを点灯するための信号を発振する発振回路と、
この発振回路によって発振された信号をもとにバックライトを点灯する所定デューティの信号を生成する調光回路と、
この調光回路によって生成された所定デューティの信号の位相をシフトさせる位相調整回路と、
この位相調整回路によってシフトされない信号に従って第1のバックライトを点灯およびシフトされた信号に従って第2のバックライトを点灯するドライブ回路とを備えたことを特徴とするLCDバックライト点灯回路。」
・「【請求項3】LCDバックライトを点灯する点灯回路において、
液晶表示ユニットに供給するフレーム信号をもとにバックライトを点灯する所定周波数の信号を発振するVCO回路と、
このVCO回路によって発振された信号をもとにバックライトを所定デューティの信号でドライブするドライブ回路とを備えたことを特徴とするLCDバックライト点灯回路。」
・「【請求項5】請求項3あるいは請求項4のVCO回路によって発振された信号を、上記発振回路によって発振された信号とすることを特徴とする請求項1記載のLCDバックライト点灯回路。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、LCDバックライトを点灯するLCDバックライト点灯回路に関するものである。」
・「【0002】
【従来の技術】従来、液晶表示用のバックライトは通常、所定の周波数で点灯し、当該点灯した照射光について液晶の部分的な透過の違いによってテキストやイメージなどを表示している。」
・「【0003】
【発明が解決しようとする課題】この際、低い周波数の所定デューティの信号でバックライトを駆動して点灯し、液晶の部分的な透過の違いによるテキストやイメージの像を表示すると、フリッカが発生したり、液晶表示のフレーム周波数とバックライトの点灯との干渉によってチラツキが発生したりするという問題が生じた。」
・「【0004】本発明は、これらの問題を解決するため、複数本のバックライトを交互に点灯してフリッカを無くしたり、フレーム周波数と同期させてバックライトを点灯しフレーム周波数との干渉によるチラツキを無くしたりすこと(「すること」の誤記)を目的としている。」
・「【0006】調光回路2、21、22は、発振回路1によって発振された信号をもとにバックライトを点灯する所定デューティの信号を生成するものである。位相調整回路3、31は、調光回路2、21、22によって生成された所定デューティの信号の位相をシフトさせるものである。」
・「【0007】ドライブ回路4、5、14は、所定デューティの信号をもとにバックライトを点灯させるものである。VCO回路13は、フレーム信号に同期した信号を発振するものである。」
・「【0016】調光回路2は、発振回路1によって発振させた所定周波数の信号をもとに、バックライト6、7を点灯するための所定周波数の所定デューティの信号を生成するものである(図1の(c)参照)。」
・「【0017】位相調整回路3は、調光回路2によって生成した信号の位相をシフトさせるものであって、例えば図1の(c-1)、(c-2)に示すように約180°位相をシフトさせるものである。」
・「【0020】以上の構成のもとで、発振回路1によって発振された信号をもとに調光回路2が所定周波数の所定デューティのバックライト6、7を駆動する信号を生成し、位相調整回路3が生成された所定周波数の所定デューティの信号の位相をほぼ180°シフトさせ、ドライブ回路4、5が位相シフトさせない所定周波数の所定デューティの信号をもとにバックライト6を駆動して点灯、および位相シフトさせた所定周波数の所定デューティの信号をもとにバックライト6を駆動して点灯する。これにより、バックライト6、7を交互に点灯し、点灯の回数を約2倍にしてチラツキ(フリッカ)を無くすことが可能となる。」
・「【0037】図2の(c-2)は、VCO出力信号を示す。VCO出力信号は、VCO回路13の出力信号であって、ここでは、図2の(c-1)のフレーム信号に同期した信号である。尚、VCO出力信号は、フレーム信号に同期した所定周波数のデューティ50%の信号であって、このままの信号でバックライト15を点灯駆動してもよいし、デューティ50%を任意に調整した信号にして点灯駆動してもよいし、更に図示しないが位相が180°異なるもう1組みの信号を図1の(c-1)、(c-2)のように生成し、バックライト15を2組み設けて交互に点灯するようにしてもよい。」
・「【0039】以上の図2の(c-1)のフレーム信号に同期して図2の(c-2)のVCO出力信号を生成し、この同期したVCO出力信号をもとにバックライト15を点灯駆動することにより、液晶の部分的な透過、非透過と、液晶の裏面からバックライト15で照射する照射光との同期ずれによるチラツキ(干渉によるチラツキ)の発生を無くすことが可能となる。更に、図1で説明したように、バックライト15を2組み設けて交互に点灯して点灯繰り返し周期を約2倍にしてチラツキ(フリッカ)を無くすことが可能となる。」

これらの記載によれば甲第1号証には、次の事項からなる発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「液晶表示用のバックライトに用いられる第1及び第2のLCDバックライトの点灯回路であって、該回路は、
前記バックライトを点灯するための所定周波数の所定デューティの信号を生成する調光回路と、
フレーム信号に同期した信号を発振するVCO回路と、
VCO回路が発振する信号をもとに生成された所定デューティの信号の位相をシフトさせる位相調整回路と、
所定デューティの信号をもとに前記各LCDバックライトを点灯させるドライブ回路とを具備し、
前記位相調整回路はバックライトを点灯する回数を約2倍にし、
前記各ドライブ回路は、180°位相が異なる二つの前記信号を受けて、180°位相の異なる二つの各所定デューティの信号を生成してLCDバックライトをドライブして点灯する点灯回路。」

(ii)甲第2号証(特開平10-335089号公報)
・「【0002】
【従来の技術】従来、液晶の裏側に配置されるバックライトとしては、通常、冷陰極管が使用されている。冷陰極管の点灯電圧は、200V?300V程度と高く、これは、5V?6V程度の電圧を昇圧することで得ている。そのためにこれの点灯回路は、インバータ回路が用いられるが、最近では小型化の要請から電磁方式のインバータではなく、圧電トランスを用いたインバータ回路が用いられるようになってきている。また、この種の駆動回路においては、バックライトを調光するためにPWM制御のバースト調光用発振器が内蔵されている。」
・「【0003】……パルス発振回路2は、定常点灯状態において、その周波数が自動制御される発振回路であって、基準電圧発生回路4bとの誤差に応じて誤差信号を発生する誤差増幅器4cから制御信号を受けて、所定の発振周波数になるように制御される。なお、誤差増幅器4cの検出側の入力は、冷陰極管7の管電流を抵抗Rを介して電圧に変換した電圧信号が加えられる。
【0004】バースト発振回路8は、三角波発生回路9と、PWM駆動パルス回路10、ゲート回路11、PWMスライス電圧発生回路12、外付け調光用抵抗回路13、そして定電流源14とから構成され、PWM駆動パルス回路10のバーストパルス出力をゲート回路11を介してFETの駆動トランジスタTrのゲートに加えて、これをスイッチングする。駆動トランジスタTrは、圧電トランス駆動回路5に設けられたトランジスタであって、電源ラインVccからフライバックスイッチング回路5aへ電力を供給するスイッチ回路になっている。そこで、この駆動トランジスタTrがバースト駆動され、その駆動パルスの発生期間がPWM制御されることで、発生する昇圧電圧が制御され、もって冷陰極管7(バックライト)が調光される。なお、点線枠の駆動パルス発生回路1とバースト発振回路8とは、IC化された回路である。ここで、PWM駆動パルス回路10は、コンパレータ10aとコンパレータ10bとからなり、コンパレータ10aは、可変周波数のパルス発振回路2の出力を外付けコンデンサ2aを介して三角波として基準電圧入力(-側入力)に受ける。そして、PWMスライス電圧発生回路12の電圧を信号入力側(+側入力)に受けてこれらを比較することでPWM制御された60kHz?150kHz程度の駆動パルスを発生する。PWMスライス電圧発生回路12は、圧電トランス6の一次側の駆動電流を抵抗回路6aを介して電圧値に変換し、この帰還電圧として受けてこれと基準電圧VREFとを比較することで自動レベル制御された電圧を発生する。」
・「【0005】コンパレータ10bは、定電流源14から調光用抵抗回路13に流された電流によって発生する電圧をPWM制御のスライス電圧として基準電圧入力(-側入力)に受け、三角波発生回路9の出力を信号入力側(+側入力)に受けてこれらを比較することでPWM制御された150Hzのウインドウパルスを発生する。ゲート回路11は、1入力が負論理入力を持つ2入力ANDゲート11aとインバータ11bとからなり、コンパレータ10aの出力をANDゲート11aの一方の入力に、コンパレータ10bの出力をANDゲート11aの負論理側入力にそれぞれ受けて、コンパレータ10bのLOWレベル期間をウインドウ期間として図3に示すようなPWM制御されたバーストパルスを発生してインバータ11bを介して駆動トランジスタTrのゲートに加えてこれを駆動する。このときのコンパレータ10bのLOWレベル期間(ウインドウ幅)は、調光用抵抗回路13により制御され、その周波数は三角波発生回路9と同じである。」
・「【0008】
【発明が解決しようとする課題】このようなPWM制御の調光用バーストパルス発生回路を有するバックライト照明装置にあっては、三角波発生回路9の出力のスライスレベルを選択することでバーストパルス発生期間を調整し、もって陰極線管の発光輝度調整をする。この場合の周波数は、150Hz程度であって、画像表示のための59Hz?60Hzの垂直同期信号の周波数の2倍の高調波である120Hzに近い値に設定されている。この周波数をより高くすると、調光の範囲が狭くなり、この周波数を低くすると、垂直同期信号と干渉し、あるいは、垂直同期信号に対するノイズとなり、画像が乱れる問題を生じる。」

(iii)甲第3号証(特開平5-113604号公報)
・「【0014】5はランプ点灯制御部であり、電源入力検出部2からの検出結果を受けて、バックライト用の複数のランプ6、6、・・・の点灯制御を行うために設けられている。
【0015】このランプ点灯制御部5は、ランプ6、6、・・・への給電を行うか否かを格別に規定するスイッチ7、7、・・・と、これらのスイッチ7、7、・・・のスイッチング制御を司るスイッチング制御部8とを有している。」
・「【0018】9は液晶表示パネルであり、これに図示しない映像信号処理回路からの信号が表示され、裏側からバックライト光に照らし出された後レンズ10を介して前方に映像が投影されるようになっている。」
・「【0041】図10のスイッチング制御部8は、発振部35、PWM制御部36、遅延回路37、37、・・・、FETドライブ回路38、38、・・・からなっている。
【0042】つまり、発振部35の出力パルスはPWM制御部36に送られた後、直接に又は遅延回路37、37、・・・を介してFETドライブ回路38、38、・・・に送出されるようになっており、PWM制御部36は電源入力検出部2からの検出信号に応じたパルス幅をもった信号を生成して遅延回路37、37、・・・や、FETドライブ回路38に供給する。
【0043】よって、NチャンネルFET39、39、・・・はFETドライブ回路38、38、・・・からの制御信号によってオン/オフ制御され、ランプ6、6、・・・が順次に切り換えられて点滅制御が行われる。
【0044】例えば、図11(a)に示すように2個のランプ6_1、6_2が設けられており、これらのランプの点灯制御用に2つのFET39_1、39_2が設けられている場合を想定する。
【0045】スイッチング制御部8からFET39_1、39_2に送られる制御信号(これらをそれぞれ「S1」、「S2」とする。)によってこれらFET39_1、39_2がともにオン状態になっているときに消費電力やバックライト光の明るさが最大となり、図11(b)に示すように制御信号S1、S2のデューティーサイクルが50%で、お互いに周期Tの2分の1だけ時間軸方向にシフトした位相関係にある場合には、消費電力が半分となりバックライト光の明るさも暗くなる。
【0046】このように電源容量に応じて制御信号のオン期間の幅を変える、つまり、電源容量が小さくなるにつれて制御信号のデューティーサイクルが小さくなるように制御すれば、消費電力が少なくなり、バックライト光の明るさが低下する分電源に余裕ができ、小容量のバッテリーを使っていても比較的長い時間に亘ってプロジェクタ装置1を駆動することができる。」

(iv)甲第4号証(特開昭64-14895号公報)
・「一般的に、蛍光放電管を点灯させるには、蛍光放電管が、放電開始時には持続放電時の数倍の電圧を印加しなければ放電を開始しないという特性を有し、一方、持続放電時にはその供給電流が増加してもその端子間電圧が一定値に近いという負特性を有することから、その放電開始時においては、蛍光放電管の持続放電電圧以上の電圧をその両電極間に印加し、点灯後においては、蛍光放電管に流れる電流を規制するとともに、電源の電圧変動に対する流入電流を安定化する機能を備えた点灯装置が必要となる。」(1頁右下欄17行?2頁左上欄7行)
・「まず、第2図に示すスイッチ40がオンすると、発振用トランジスタ18及び前記した共振回路に電力が供給され、電子安定器2が作動を開始して蛍光放電管L1?L8のそれぞれの一端にコンデンサ41a?41hを介して高周波電圧が印加される。(尚、このコンデンサ41a?41hは蛍光放電管に直流分の電圧が印加されないようにするためのもにである。)これと同時に、マイクロコンピュータ3が作動を開始し(ステップ1)、中央処理装置9は記憶装置8から記憶されている点灯パターン(蛍光放電管L1?L8の点灯順序、出力ポート6から出力されるパルスのデューティー比に関するデータ)を取り出して、出力ポート6の出力端子P1?P8のいずれかの端子にどの位のデューティー比のパルスを出力するかを演算し(ステップ2)、この結果を出力ポート6に出力し、所定の出力端子に所定のデューティー比のパルスを出力する。」(4頁左上欄7行?右上欄4行)
・「マイクロコンピュータ3における出力ポート6の各出力端子P1?P8から、第4図に示すような波形のパルスが出力されると、スイッチング分は、5a,5b,5c,5d,5e,5f,5g,5hの順にスイッチングが行われることになるので、蛍光放電管L1?L8は、第3図(「第5図」の誤記)巾T’時間ずつ順次点灯することになる。これを微視的にみれば蛍光放電管は一灯ずつ点灯していることになるが、出力ポート6から出力されているパルスの周期は非常に短い(例えば、点灯時間1ms、消灯時間5ms、この場合はデューティー比1/6)ので、人間の目には8灯とも同時に点灯しているように見え、また、電子安定器2から出力されている電圧は約40KHz程度の高周波電圧であるので、フリッカなどの不具合が生じるおそれはない。
さらに、第5図に示すように、出力ポート6から出力されるデューティー比を大きくすると、当然、各蛍光放電管の点灯時間が長くなり、また、2灯が同時点灯している時間があるので、第4図のような波形を各スイッチング部に与えた場合よりも照度が上がることになる。すなわち、出力ポート6から出力されるパルスのデューティー比を変化させると、これに比例して照度を自由に変化させることができることになる。」(4頁左下欄7行?右下欄10行)
・第6図には、ランプ印加電圧波形(パワー調整信号に相当)が出力ポートパルス波形(位相シフトバースト信号に相当)の位相値に等しい位相値を有することが示唆されている。

(v)甲第5号証(特開2000-184727号公報)
・「【0007】図9は図8の電源回路の各部の動作を示す。コンパレータ101においては、誤差増幅器114の出力電圧VBと抵抗124の端子電圧VCの内、いずれか電圧の低い方がVAと比較される。起動時には、出力端子111の出力電圧Voutは零であり、抵抗112,113で分圧される電圧VEも零である。分圧電圧VEは、誤差増幅器114で基準電圧Verrと比較される。分圧電圧VEが零のときには、誤差増幅器114の出力電圧VBは、正側に最大限振り切れている。したがって、コンパレータ101は出力電圧VAとVCとを比較し、起動後は、コンデンサ115の電位(端子電圧VC)は零から徐々に充電されながら上昇するので、コンパレータ101の出力電圧VDのパルス幅も徐々に広がってくる。これにより、ソフトスタートが開始される。この間、誤差増幅器114の出力VBは基準電圧Viを越えているので、コンパレータ121の出力はハイレベルになり、トランジスタ116が導通する結果、トランジスタ122,117はコンデンサ115を充電する。コンデンサ115の端子電圧VCが基準電圧Verrを越える前に、出力端子111の出力電圧Voutは所定の値に達し、誤差増幅器114の入力はVE≒Verrにバランスし、出力電圧VBは基準電圧Vi以下になり、トランジスタ116が遮断する。ここで、コンデンサ115の端子電圧VCは、抵抗123,124により決まる電圧によって安定する。」
・「【0008】電源回路の安定動作中に出力端子111間が短絡すると、出力電圧Voutは零になる。このため、誤差増幅器114の出力電圧VBは、正側にシフトし、基準電圧Viを越える。その結果、トランジスタ116が導通し、コンデンサ115はトランジスタ117により充電される。コンデンサ115の端子電圧が基準電圧Verrを越えると、コンパレータ118の出力電圧はハイレベルに転じ、この出力電圧がラッチ回路119にラッチされる。これにより、トランジスタ120が導通し、出力トランジスタ102はオフになる。」
・「【0027】電圧保護回路310は、負荷インピータンスが高いために圧電トランス301の昇圧比が高くなり、圧電トランス出力電圧Voが大きくなったときに、圧電トランス301が過振動により自己破壊するのを防止するために設けられている。分圧回路318には、圧電トランス301の二次側電極から出力される圧電トランス出力電圧Voが印加される。分圧回路318の出力電圧は、整流回路319によって直流電圧Vrに変換された後、比較ブロック320に入力される。比較ブロック320は、基準電圧Vmaxと整流回路319の出力電圧を比較し、Vr>Vmaxの状態にあるとき、2つの出力信号Vp1(積分器315をリセットする信号),Vp2(VC0317の出力周波数の上限値を変更する信号)を出力する。Vp1は入力電圧が基準電圧Vmaxより大きい間のみ出力される信号であり、Vp2は入力電圧が基準電圧Vmaxより大きくなったとき、或る時間(積分器315の出力が最低電圧から最高電圧に変化するまでに要する時間)だけ出力を継続する信号である。」
・「【0028】図14は、図12の電源回路の各部の動作を示す。図14においては、圧電トランス301の駆動周波数と圧電トランス出力電圧Vo、出力信号Vp1,Vp2の関係が示されている。積分器315の出力は、出力信号Vp1が入力されると最低電圧になる。したがって、分圧回路318の分圧比は、これ以上大きくなると圧電トランス301の特性劣化を招くというレベルの出力電圧Voが、整流回路319を通過後基準電圧Vmaxと等しくなる(Vo=Vmax)ように設定する。
【0029】負荷302がノートパソコン用LCDのバックライトに用いられる冷陰極管の場合、これに用いられる圧電トランス301の定格出力は、一般に4W程度である。このような圧電トランス301では、その出力電圧Voの最大値を1500V?2000V程度に設定しておけば特性劣化を防ぐことができ、かつ、冷陰極管(負荷302)の点灯開始電圧を上回る値となる。」
・「【0049】以上の構成において、負荷302からの負荷電流Ioは、過小電流検出回路401に入力される。過小電流検出回路401は、負荷電流Ioを電圧値に変換した値を整流回路404で整流して得た整流出力電圧と基準電圧Vsとを比較器405で比較する。整流回路404からの整流出力電圧が基準電圧Vsを越えるとき、比較器405は高レベルの出力信号を発生する。
【0050】遅延回路402は、過小電流検出回路401から低レベルの電圧が入力されたときに動作し、所定の遅延信号Vadを遮断回路403へ出力する。また、遅延回路402には、過電圧保護回路310から出力電圧Vp2が入力される。この出力電圧Vp2は、圧電トランス301の出力電圧が所定値よりも大きいときに過電圧保護回路310から出力される。遅延回路402は出力電圧Vp2によって制御され、2種類の遅延信号を出力する。すなわち、出力電圧Vp2が高レベル信号であるときには、遮断回路403が遮断動作を開始させるまでに長い時間が経過するような遅延信号Vadを出力し、また、出力電圧Vp2が低レベル信号であるときには、遮断回路403が遮断動作を開始させるまでの時間が短くなるような遅延信号を出力する。
【0051】遮断回路403は、遅延回路402から或る時間以上継続して遅延信号Vadが入力され続けると、圧電トランス301の駆動を停止する信号を出力する回路である。」

(vi)甲第6号証(特開2000-48987号公報)
・「【請求項2】 複数の電源電圧に対応して放電ランプを点灯させる放電灯点灯手段と;放電灯点灯手段の出力電圧を検出する出力電圧検出手段と;放電ランプをソフトスタートする際に出力電圧検出手段で検出された放電灯点灯手段の出力電圧に対応して放電灯点灯手段の出力を一定に制御する制御手段と;を具備したことを特徴とする放電灯点灯装置。」
・「【0030】また、ランプ電圧が400V以下になると蛍光ランプFL1 ,FL2 が点灯したと判断して、蛍光ランプFL1 ,FL2 の両端間の電圧が低くなり、補助巻線Tr2dに誘起される電圧も低下し、ツェナダイオードZD7 が逆阻止状態になり、トランジスタQ14 のエミッタには抵抗R51 および抵抗R52 から電流が供給されるソフトスタート時とは異なるゲインとなり、インバータ回路15の出力は低くなり蛍光ランプFL1 ,FL2 を点灯させる。」
・「【0039】請求項2記載の放電灯点灯装置によれば、出力電圧検出手段で放電灯点灯手段の出力電圧を検出し、この電源電圧検出手段で検出された電圧に基づきフィードバック制御により、制御手段は放電灯点灯手段の出力を可変するため、ソフトスタート時にも放電灯点灯手段の出力を一定にして、放電ランプがコールドスタートしたり、予熱不足となることを防止できる。」

(vii)甲第7号証(特開平8-138876号公報
・「【0002】
【従来の技術とその問題点】……IC20はDC-DCコンバータを構成するスイッチング作動用のPNP型トランジスタTR21のベース回路を制御する集積回路(IC)であり、降圧型チョッパー回路として動作する。このICは三角波を発生する発振器OSCと二つの比較用演算増幅器A1と演算増幅A2と発信器OSCと演算増幅器A1かA2のいずれか一方の出力電圧とを比較するPWMコンパレータCOMPと、このPWMコンパレータにより駆動され、前記スイッチング作動用のPNPトランジスタTR21のベースを駆動する出力トランジスタ113とを有する。このICは、前記のようにPWMのようにPWMコンパレータで発信器OSCと比較する他方のPWMコンパレータ入力回路には二つの演算増幅器A1、A2が接続されているが、これら二つの演算増幅器の内の出力電圧が高い方の電圧と発振器OSCの出力とが比較される。……ダイオードD15、D16は冷陰極管CFL31に流れる放電電流の正の成分を整流するためのものである。R18、C19は電流波形を直流化するためのローパスフィルタを構成する抵抗とコンデンサである。このフィルタ出力は、DC-DCコンバータ制御用IC20の演算増幅器A2の十入力端に接続される。すなわち、コンデンサC19の両端には放電電流の正のサイクル平均値に比例した電圧が得られ、この電圧とDC-DCコンバータ制御用IC20内部の基準電圧とが演算増幅器A2で比較され、両者の差電圧に比例した出力電圧が得られる。図8に示すように、この出力電圧とDC-DCコンバータ制御用IC20の発信器OSCの三角波出力とがPWMコンパレータで比較される。すなわち、放電電流が何等かの原因で増加すると……減少する。従って、放電電流の定電流制御を可能としている。R32、R33はDC-DCコンバータの出力電圧を定電圧するための抵抗であり、これは冷陰極管CFL31を接続しないとき、または放電を開始する以前の昇圧トランスT10の二次コイル10Sの電圧を定電圧化するためのDC-DCコンバータ出力電圧検出用の抵抗である。抵抗R32、R33の接続点はDC-DCコンバータ制御用IC20の演算増幅器A1の十入力端に接続され、負帰還ループを構成し、DC-DCコンバータの出力電圧を定電圧化している。演算増幅器A1、A2の出力はOR接続されているので、演算増幅器A1、A2の出力電圧の高い方が優先されてPWMコンパレータに入力される。」

(viii)甲第8号証(特開平10-308289号公報)
・「【0002】
【従来の技術】冷陰極管は、外径が細く長寿命である特徴を有し、液晶表示パネルのバックライト光源や照明器具として広く応用されている。冷陰極管は数十kHz?数百kHzで高周波駆動され、その輝度調整方法としてバースト調光と電流調光とがある。」
・「【0003】バースト調光は、冷陰極管に流れる高周波電流を間欠動作させ、導通期間を調整することによって冷陰極管の時間平均的な輝度を制御するものである。間欠周波数は、ちらつきが人間の目に感じないように、通常100Hz以上に設定され、バースト波形のデューティ比が小さくなるほど輝度が小さくなる。」
・「【0007】その動作について説明する。入力電源端子(不図示)の電圧が起動電圧に達するか、あるいは点灯信号が入力され、図5の起動信号STがたとえばローレベルからハイレベルになると、起動回路1が動作して制御回路3にパルス信号を出して、交流発生回路4から負荷5(冷陰極管)の放電開始電圧以上の電圧を発生させる。負荷5の放電が一度開始すると、制御回路3および交流制御回路4だけで放電が持続するとともに、起動回路1の役目は終了するため、結局、起動回路1の動作時間は通常1ミリ秒程度である。」
・「【0013】本発明に従えば、起動回路による起動開始時点から所定の起動期間だけ、予め設定した輝度調整値に関係なく、調光制御回路による制御可能な輝度範囲内のうち最大輝度になるように冷陰極管を点灯する。その後、放電が安定化した時点で、予め設定した輝度調整値となるように制御する。」
・「【0024】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施の一形態を示すブロック図である。冷陰極管点灯回路は、冷陰極管である負荷15を高周波駆動するための交流発生回路14と、調光信号LCに基づいて冷陰極管の輝度を制御するための調光制御回路12と、負荷15の電流を制御し安定化するための制御回路13と、起動信号STに基づいて放電開始に必要な電圧が発生するように制御回路13および交流発生回路14を制御するための起動回路11と、調光制御回路12の動作内容を制御するための動作制御回路16などで構成される。図1の構成は、バースト調光と電流調光の両方に共通である。」
・「【0025】まずバースト調光の場合を説明する。この場合、交流発生回路14は負荷15を間欠的に高周波駆動し、調光制御回路12は高周波電流の導通期間を調整することによって、輝度制御を行う。動作制御回路16は、起動回路11による起動開始時点から所定の起動期間だけ、調光制御回路12による間欠動作を連続動作に切換える。」

(ix)甲第9号証(特開平10-327587号公報)
・「【0002】
【従来の技術】近年、持ち運びの容易なノート型パーソナルコンピュータ等には、その表示装置として液晶表示器が広く用いられている。この液晶表示装置の内部には、液晶表示パネルを背照すべく、所謂バックライトとして冷陰極管が備えられており、その冷陰極管を点灯させるには、電池等の直流低電圧から点灯開始時1000Vrms以上、定常点灯時、500Vrms程度の交流高電圧への変換が可能な昇圧インバータが必要とされる。」
・「【0036】しかしながら、上述の手法によると、パルス電源回路8の発振期間(デューティー)を約20%?100%に調整することで、相対輝度を約10%?100%の範囲で変えることができるが、相対輝度を0%まで調整することは不可能である。その理由について説明すると、発振期間を0%、即ち圧電トランス1の駆動を停止させると、管電流が零となるため、管電流を所定値に保持しようとする電圧制御発振回路8の周波数制御により、周波数が下限値(例えば、図2の山形の特性の左端付近)まで掃引される。下限周波数では、共振周波数から大きくずれているため、圧電トランス1は冷陰極管の点灯開始に必要な高電圧を発生させることができず、再点灯できなくなってしまう。また、再点灯しても共振特性の左側では管電流を略一定にする周波数制御が正帰還となるために正常な制御が行われない。つまり、輝度を0%に調整した後、正常な動作に戻れないという問題が生じる。そこでこの問題を改善した第2の実施形態を以下に説明する。」
・「【0038】図中、9は、誤差増幅回路5から出力される制御電圧Vctrと基準電圧Vref2とを比較し、その比較結果に応じてHighまたはLowの信号を出力する電圧比較回路である。電圧制御発振回路6Aは、図5の電圧制御発振回路6と同様、誤差増幅回路5の出力電圧に応じて駆動回路7に発振信号を出力する電圧制御発振回路であるが、更に、電圧制御発振回路6Aが出力する発振信号の周波数を上限周波数(初期周波数)にするストローブ端子Pが設けられている。以下、電圧制御発振回路6Aの構成及び動作について説明する。」
・「【0040】図中、スイッチング素子6aには、誤差増幅回路5の出力電圧と内部電圧Vidとが入力されている。ここで、内部電圧Vidは、駆動回路7への発振信号を上限周波数(初期周波数)に固定するために用いる。これらの入力は、ストローブ端子Pに入力される信号の状態に応じてスイッチング素子6aにより切り換えられ、V/Fコンバータ6bに入力されて周波数に変換される。」
・「【0041】本実施形態において、電圧制御発振回路6Aは、ストローブ端子Pに“High”が入力されたときには誤差増幅回路5の出力電圧を選択し、その出力電圧に応じた周波数の信号を駆動回路7へ出力する。以下、この一連の制御動作を「通常の調光動作」と言う。一方、電圧制御発振回路6Aは、ストローブ端子Pに“Low”が入力されたときには、内部電圧Vidを選択し、その内部電圧Vidに応じた周波数の信号を駆動回路7へ出力する。」
・「【0042】ここで、上限周波数には、圧電トランス1が複数有する共振特性のうち、当該制御回路が制御に使用している共振特性における高周波数側の所定の制御範囲内であって、出力電圧が極小値(例えば、図2のfa)を示す周波数に設定するのが望ましい。これは、一般に圧電トランスがその固有振動数の整数倍毎に共振周波数を有するため、当該制御回路が調光制御に使用している共振特性における上限周波数より大きな周波数までを採用すると、次の山形の共振特性の範囲に入ってしまい、正常な制御ができなくなってしまうからである。」

(x)甲第10号証(特開平11-67474号公報)
・「【請求項1】直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、該インバータの出力電圧を入力とする圧電トランスとを備え、該圧電トランスの出力電圧を放電灯に印加する放電灯点灯装置において、無負荷時或いは始動時に圧電トランスの出力電圧を放電灯の始動可能な最低電圧以上で且つ圧電トランスが破壊する電圧よりも小さい所定電圧で制限する手段と、放電灯の確実な始動に必要な電圧印加時間以上で且つ回路保護に不十分となる時間よりも小さい所定時間経過後、放電灯の点灯が確認されない場合、圧電トランスの出力電圧を前記所定電圧よりも低下或いは出力電圧の発生を停止させる手段を備えたことを特徴とする放電灯点灯装置。」
・「【0028】次に、放電灯RLを接続しない、無負荷状態での回路動作を図2(a)(b)を用いて説明する。今回路動作を開始させると、前記と同様にまずタイマ回路14が動作し、時間をカウントし始める。同時に周波数が図2(a)に示すように低い方へスイープを始め、圧電トランス1の出力電圧が上昇する。無負荷状態であるので、出力電圧は上昇し続け、所定電圧(放電灯RLを低温でも始動できる電圧)VH に達すると(時間t1 )、分圧抵抗Ra、Rbにより分圧された電圧がダイオードD2 を介して積分器13に与えられてV-Fコンバータ12の出力周波数を高くし、出力電圧がVH 以上にならないように制御する。」
・「【0029】このように出力電圧はVH で略一定に保たれ、放電灯RLの確実な始動点灯に必要な始動電圧の印加時間≦(t2 -t1 )に達した後、回路保護に不十分な時間となる前の時間t2 でタイマ回路7がタイムアップし、V-Fコンバータ12の出力周波数を高い周波数に切り換え、出力電圧を低下させ(図2(a))。或いは時間t2 でタイマ回路14がタイムアップした時V-Fコンバータ12を停止させ、実施的に回路を休止させて出力を0にする(図2(b))。」
・「【0030】これにより、低温時においても、放電灯RLの始動点灯できる電圧を供給でき、且つ無負荷時においても、圧電トランス1の高出力状態が回路保護に不十分となる時間まで継続されることはなく、圧電トランス1の破壊、温度上昇、劣化及びインバータ11のスイッチ素子、インダクタンス素子のストレス増加、樹脂部品の絶縁劣化等が防止される。」
・「【0055】(実施形態7)本実施形態は、実施形態2の如く無負荷時に圧電トランス1からバースト状の出力電圧を所定時間発生する回路構成において……」

(xi)甲第11号証(実願平4-85672号(実開平6-50297号)のCD-ROM)
・「【請求項1】 スイッチング素子によって直流電源電圧をチョッピング制御するDC-DC変換回路を備え、該DC-DC変換回路の出力電圧をDC-AC変換して冷陰極管を駆動する冷陰極管点灯装置において、
冷陰極管の負荷電流を検出して該負荷電流に比例した負荷電流検出電圧を出力する負荷電流検出手段と、
調光手段によって調節可能であり前記負荷電流検出電圧に対する比較基準電圧として設定されてなる負荷電流基準値と前記負荷電流検出電圧とを比較して相互の偏差信号を出力する第1の比較器と、
前記DC-DC変換回路の出力電圧を検出して該出力電圧に比例した電圧検出電圧を出力する電圧検出手段と、
前記第1の比較器の出力信号に所定電圧を重畳させて前記電圧検出電圧に対する比較基準電圧として生成されてなる負荷電圧基準値と前記電圧検出電圧とを比較して相互の偏差信号を前記スイッチング素子に負帰還制御信号として出力する第2の比較器とを備えた、
ことを特徴とする冷陰極管点灯装置。」
・「【0005】
……。また、UVLOは定電圧誤動作防止回路で、基準電圧VREF が所定の異常電圧に低下するとトランジスタQ1 を作動させてコンデンサCS を放電させ、PWM比較部PWM等の作動を停止させると共に出力選択ゲートGに禁止信号OFFを与える。」
・「【0006】
インバータ回路3は、周知の共振型プッシュプルマルチバイブレータから構成されている。即ち、中間タップ311cを有する一次巻線311 と、二次巻線312 及び三次巻線313 とを備えた変圧器31、NPN型のトランジスタ32,33、抵抗器34、35、コンデンサ36,37から構成されている。」

(xii)甲第12号証(特開平11-202285号公報)
・「【請求項2】 液晶表示部の垂直ブランキング期間を含まない垂直走査期間を垂直期間T1 とし、この垂直期間T1 をN個の走査期間に区分し、このN個の走査期間の走査順をN個の発光領域の配列順と対応させた関係において、
自己の発光領域に対応する走査期間の走査が開始された時点からT1 /N期間の間、次段に配列された発光領域を発光させることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。」
・「【0021】また、バックライト部13は液晶表示部12の表示面を照明するバックライト33を備えており、このバックライト33は、液晶表示部12の垂直走査方向に対してN個、たとえば4個に区分された短冊形状の発光領域33-1,33-2,33-3,33-4を有しており、これら各発光領域33-1,33-2,33-3,33-4毎に放電ランプ34-1,34-2,34-3,34-4が設けられている。」
・「【0022】これら各放電ランプ34-1,34-2,34-3,34-4に対しては、点灯制御回路35が設けられている。この点灯制御回路35は、分周用のカウンタ36およびシフトレジスタ37、点灯駆動用のインバータ38を有しており、カウンタ36によって走査シフトクロックφ2 を分周し、シフトレジスタ37により走査タイミングパルスSTV に同期して分周された信号を各インバータ38に順次与えることによって、4個の発光領域33-1,33-2,33-3,33-4毎にそれぞれ設けられた放電ランプ34-1,34-2,34-3,34-4を、所定の周期で1本づつ順次点灯および消灯させる。したがって、バックライト33は、N個の発光領域33-1,33-2,33-3,33-4毎に順次スキャン発光する。」

(xiii)甲第13号証(米国特許第5239293号明細書、和訳は、無効審判請求書第61頁第14行?第62頁第2行の記述による。)
・「要約 液晶ディスプレイ(LCD)マトリックスパネルのバックライト用の蛍光管を可変に時間変調することによって、LCDのフリッカを減少させる方法及び装置蛍光管は、パネルの背後に置かれ、パネルの画素行と平行に並ぶ。各蛍光管への高周波サプライが、チョッピングレイトを変調した低周波周期パルス制御信号により変調される。各低周波周期パルス制御信号のチョッピングレイトの変調は、対応する制御信号によって決定される。各制御信号は、1つの発生器から供与され、2つの連続する制御信号間で、Tを画像のリフレッシュ周期、Mを蛍光管の数として、T/Mだけ位相がシフトされている。各制御信号は個別に調整され、各蛍光管に臨む画素ゾーンにおける平均光透過率と後方照度とを、実質的に逆位相とする。」(第1頁右欄ABSTRACT)
・「14図に係る実施例では、制御信号発生器3は、カウンタ31にデコーダ32を後続させて構成される。カウンタ31は、フレーム信号ST(15図)を受け、イメージスキャンの都度、カウンタをゼロにリセットする。水平同期信号SLは、カウンタをインクリメントするクロック信号を表す。カウンタ31は、出力がデコーダ回路32に向かう。受け取ったバイナリーワードに従い、デコーダ回路32は、スキャニングに同期して時間TAの間連続的に、サプライ信号ST1?STMを与える。しかも、これら信号は、ある信号と次の信号(図15のSTj-1とSTj)との間にT/Mの位相シフトを有する。」(第6欄第31行?第43行)

(xiv)甲第14号証(OHM電気電子用語事典)
・「マルチプレクサ multiplexer 多くの入力と単一の出力をもつような装置のこと.入力信号を順次切り換えて,同一線路で次々に送信したり,あるいは入力信号をいったん記憶し,一時点にそのうちの一つを選んで,そのまま送信するような装置である.多重化装置ともいう.」(第915頁?916頁)

(2)請求人の主張の概要
(2-1)請求人は、意見書の「7.理由」の「(3)特許法第126条第5項違反について」の「イ」において、第2次訂正審判における審決は、本件特許発明1と、甲1発明との一致点として、「各位相アレイドライバーは、180°位相が異なる二つの位相シフトバースト信号を受けて、180°位相の異なる信号でランプ負荷へ電力を供給する可変パワー調整回路」を挙げているので,前記審決における相違点(viii)「180°位相が異なる二つの位相シフトバースト信号を受けて、180°位相の異なる信号で冷陰極蛍光ランプ負荷へ電力を供給する」「各位相アレイドライバー」に関し、本件特許発明1が「180°位相が異なる二つの位相シフトバースト信号を受けて、180°位相の異なる二つの高電圧ACパワー調整信号を発生」するのに対し、甲1発明では「各ドライブ回路は、180°位相が異なる二つの信号を受けて、180°位相の異なる二つの各所定デューティーの信号を生成してLCDバックライトをドライブして点灯」するものである点とは、実質的には、「各位相アレイドライバーが、本件特許発明1では高電圧ACパワー調整信号を発生するのに対し、甲1発明では所定デューティーの信号を生成している点」と解さざるを得ないが「高電圧}にはさしたる意味がない旨主張し、更に、甲第1号証の図1には、位相調整回路3から180°位相が異なる信号がドライブ回路4及びドライブ回路5に入力することが示されているが、請求項1には、位相調整回路によってシフトされない信号に従って第1のバックライトを点灯およびシフトされた信号に従って第2のバックライトを点灯するドライブ回路とを備えた旨記載されているから、図ではドライブ回路4とドライブ回路5とが区別して示されていても、ドライブ回路4及びドライブ回路5とを一体のドライブ回路と解することができるから、相違点(viii)は実質的な相違点ではないと判断されるべき旨主張している。
(2-2)また、同「ウ」において、第2次訂正審判における審決は、甲各号証には、一つの位相アレイドライバーが180°位相の異なる二つの信号を受けて、180°位相の異なる二つの信号を発生してランプ負荷に供給する点については記載も示唆もされていないと説示しているが、4つ以上のランプ負荷に供給する信号を、位相アレイドライバーに相当する回路により位相を異ならせて供給する構成は容易である旨前記審決で既に判断している事項である旨主張し、同「エ」において、前記審決が説示するように、液晶装置のバックライトとして4つ以上のランプを備えること、及び、これらのランプを同時に点灯することによるリップルを防止するために、4つ以上のランプを異なる開始タイミングで4つ以上の点灯回路により点灯することは甲第12号証、甲第13号証等に記載されており周知技術である旨主張している。
そして、負荷が4つである場合には、負荷にT’/4だけ位相がシフトした4つの信号を供給することは周知であるから、甲1発明においてもバックライトを4つとし、T’/4だけ位相がシフトした4つの信号を供給することは容易であり、その際甲1発明において、一つの位相アレイドライバーに加え、当該ドライバーと位相がT’/4だけ異なる二つの位相シフトバースト信号を受けるもう1つの位相アレイドライバーを設ければ、T’/4だけ位相がシフトした4つの信号を供給できることは自明であり、かつ、そうすることが自然である旨主張している。
(2-3)また、同「オ」において、第2次訂正審判における審決は、相違点(ix)「本件特許発明1が、「位相アレイドライバーの少なくとも一つは、対応する冷陰極蛍光ランプ負荷へ電力を供給するためのランプ回路を有し、
各前記位相アレイドライバは近接して配置されており、
前記位相アレイドライバは、第1位相アレイドライバと第2位相アレイドライバとを少なくとも有して構成され、
前記第1位相アレイドライバは、前記高電圧ACパワー調整信号の一つである第1高電圧ACパワー調整信号を出力する第1出力端と、前記第1高電圧ACパワー調整信号とは180°位相が異なる第2高電圧ACパワー調整信号を出力する第2出力端とを有し、
前記第2位相アレイドライバは、前記高電圧ACパワー調整信号の一つである第3高電圧ACパワー調整信号を出力する第3出力端と、前記第3高電圧ACパワー調整信号とは180°位相が異なる第4高電圧ACパワー調整信号を出力する第4出力端とを有し、
前記第1高電圧ACパワー調整信号の位相は、前記第3高電圧ACパワー調整信号の位相よりも進んでおり、
前記第3高電圧ACパワー調整信号の位相は、前記第2高電圧ACパワー調整信号の位相よりも進んでおり、
前記第2高電圧ACパワー調整信号の位相は、前記第4高電圧ACパワー調整信号の位相よりも進んでおり、
前記第1出力端と第2出力端と第3出力端と第4出力端とは、該第1出力端、第2出力端、第3出力端、第4出力端の順序で配置されており、
前記第1出力端と第2出力端と第3出力端と第4出力端とは、それぞれ、前記冷陰極蛍光ランプ負荷のそれぞれの一つに接続されている」との構成を有するのに対し、甲1発明はそのような構成を有していない点」について、甲各号証には、相違点(ix)に係る構成で特定される位相アレイドライバーの配置、及び位相アレイドライバーの配列に対応した複数の高電圧ACパワー調整信号の位相の関係について、記載も示唆もされていないと判断しているが、上記のように、甲1発明において、「180°位相の異なる二つの位相シフトバースト信号を受けて、180°位相の異なる信号でランプ負荷へ電力を供給する」位相アレイドライバーに加え、当該ドライバーと位相がT’/4だけ異なる二つの位相シフトバースト信号を受けるもう1つの位相アレイドライバーを設けることは当業者にとって容易であり、当該構成を採用すれば、相違点(ix)に係る構成で特定される位相アレイドライバーの配置、及び位相アレイドライバーの配列に対応した複数の高電圧ACパワー調整信号の位相の関係となるから、相違点(ix)は、当業者にとって容易であると判断されるべきである旨主張している。(なお、本件特許明細書中では、位相シフトバースト信号の周期をT/2としているので、ここでは区別のために甲1発明における位相シフトバースト信号の周期をT’とした。)

(3)判断
本件特許発明1の、上記(2-1)に相違点(viii)として記載した構成、及び上記(2-3)に相違点(ix)として記載した構成は、甲各号証のいずれにも記載されていない。
この相違点に対して請求人は、概略上記(2)のように主張しているが、本件特許発明1は、それぞれが180°位相の異なる二つの位相シフトバースト信号を受ける位相アレイドライバを、少なくとも二つ有して構成され、負荷の数をnとし、前記位相シフトバースト信号の周期をT/2とするとき各位相アレイドライバ間で(T/2)/nずつの位相遅延値を有するものであるのに対し、甲1発明では、甲第1号証の【0017】に「位相調整回路3は、調光回路2によって生成した信号の位相をシフトさせるものであって、例えば図1の(c-1)、(c-2)に示すように約180°位相をシフトさせるものである。」と記載されていることから、この「約180°」が、本件特許発明1における、(T/2)/nにおけるn=2の場合に対応するものであり、すなわち、甲1発明においては、二つのバックライトを交互に点灯することでフリッカを無くすという目的の下に二つのドライブ信号を位相遅延値Dとして「約180°(本件特許発明1の表現では(T/2)/2)」ずらすだけのものである。
さらに、本件特許発明1ではそれぞれ(T/2)/nの位相差を有する位相シフトバースト信号の中から選択した「180°位相が異なる二つの位相シフトバースト信号を受けて、180°位相の異なる二つの……パワー調整信号を発生」する「位相アレイドライバー」を“複数”有するものであるのに対し、甲1発明では、負荷が2つの場合には180°位相を異ならせることが開示されるにとどまるものである点で相違している。
この相違点に対して請求人は、負荷が4つになれば甲第1号証に記載の構成のものを位相を異ならせて2つ寄せ集めて本件特許発明1の構成とすることが自然である旨主張するが、甲第1号証には、他の甲号証と同様に複数の負荷に供給する信号を、発振回路出力の1周期を負荷の数で割った位相だけずらすものとすることが開示されているものであるから、負荷が4つになった場合にT’/4だけ位相がシフトした4つの信号を供給できることが自明であるが、その自明の構成では、甲第4号証、甲第12号証等に記載の周知技術を考慮すればT’/4だけ位相がシフトした4つの信号がその順に負荷に与えられる構成とすることが自然であるというべきであり、負荷が4つの場合について何ら開示されていない甲第1号証に記載の発明において、負荷を4つとした場合にT’/4だけ位相がシフトした4つの信号の中からT’/2だけ位相の異なる2つを選択して一つの位相アレイドライバが受けるようにすることや、約180°位相の異なる2つの信号を発生する1つの位相アレイドライバーに加えて、このドライバーと位相がT’/4だけ異なる2つの位相シフトバースト信号を受けるもう1つの位相アレイドライバーを設けるものとすることは記載も示唆もされておらず、請求人が主張するように、負荷が4つになれば甲第1号証に記載された180°位相の異なる二つの位相シフトバースト信号を出力する対の構成のものをもう1つ増加させることが自然であるということもできない。
すなわち、本件特許発明1において相違点(viii)として記載した構成は、本件特許明細書の段落【0032】に記載されるように、位相シフトバースト信号の周期であるT/2を負荷の数nで割った位相遅延値D=(T/2)/nを有するn個の信号の中から位相が180°異なる位相シフトバースト信号を二つずつ選択して一つの位相遅延ドライバに入力しているものであり、その構成に加えて相違点(ix)として記載した構成を有するものであるから、本件特許発明1は、甲1発明のように負荷が2つのとき、2つの位相シフトバースト信号が180°位相が異なる構成のものにおいて、単に負荷を4つ以上としただけのものではなく、その配置の順番に特有の構成を有するというべきであり、このような順番に関しては,甲各号証を見ても記載も示唆もされていない。

したがって、本件特許発明1は、請求人の主張するように甲各号証記載の発明から容易に得られるとすることはできない。

よって、他の相違点について検討するまでもなく本件特許発明1が甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

また、本件特許発明2ないし9はいずれも本件特許発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものである。そうすると、本件特許発明1が、上記のとおり上記甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができないので、本件特許発明2ないし9も同様の理由により、上記甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

そうすると、本件特許発明1ないし9が、請求人の主張する証拠及び理由によって特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとすることもできない。
したがって、無効理由1,2及び4には理由がない。

7.むすび
以上のとおりであるから、無効審判請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-19 
結審通知日 2008-06-24 
審決日 2009-07-17 
出願番号 特願2002-557170(P2002-557170)
審決分類 P 1 113・ 841- Y (H02M)
P 1 113・ 121- Y (H02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川端 修  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 大河原 裕
仁木 浩
登録日 2006-01-13 
登録番号 特許第3758165号(P3758165)
発明の名称 順次バーストモード活性化回路  
代理人 小西 恵  
復代理人 木内 敬二  
代理人 渡邊 隆  
代理人 志賀 正武  
代理人 村山 靖彦  
代理人 豊岡 静男  
代理人 三好 広之  

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