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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A01M
管理番号 1204827
審判番号 無効2008-800231  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-11-04 
確定日 2009-10-05 
事件の表示 上記当事者間の特許第4083781号発明「携帯用害虫防除装置」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 特許第4083781号の請求項1ないし2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
平成12年 1月17日 原出願(特願2000-7985号)
平成18年11月22日 本件出願(特願2006-315702号)
〔特許法第44条第1項の規定に基づく原出
願からの分割出願
平成19年 2月22日 本件出願公開(特開2007-44055号)
平成19年10月19日 拒絶査定不服審判請求
(不服2007-28625号)
平成20年 1月25日 不服2007-28625号審決〔成立〕
平成20年 2月22日 本件特許の設定登録
(特許第4083781号)
平成20年 4月30日 本件特許掲載公報発行
平成20年11月 4日 本件無効審判請求
(無効2008-800231号)
平成21年 1月 6日 答弁書提出(被請求人)
平成21年 3月19日 弁駁書提出(請求人)
平成21年 5月 1日 第2答弁書提出(被請求人)



第2.当事者の主張の概要
〔1〕審判請求人の主張及び提出した証拠方法
審判請求人は,審判請求書及び弁駁書において,「特許第4083781号発明の請求項1及び2に係る発明についての特許は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」ことを請求の趣旨とし,甲第1号証乃至甲第30号証及び参考資料1を提出して,次の無効理由を主張している。

1.無効理由(進歩性欠如)
(特許法第29条第2項〔同法第123条第1項第2号〕)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は,甲第1号証に記載された発明および甲第2号証に記載された発明又は周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。したがって,その特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。


2.証拠方法
<審判請求書に添付>
甲第1号証:特表平9-512443号公報
甲第2号証:国際公開WO90/13359号パンフレット
甲第2号証-1:上記パンフレットの訳文
甲第3号証:実願昭62-170521号(実開平1-74778号)
のマイクロフィルム
甲第4号証:実願平4-71801号(実開平7-81号)のCD-R
OM
甲第5号証:実願平1-117311号(実開平3-56379号)の
マイクロフィルム
甲第6号証:実願昭62-44699号(実開昭63-151776号)
のマイクロフィルム
甲第7号証:実願昭63-112900号(実開平2-34178号)
のマイクロフィルム
甲第8号証:実願昭60-179808号(実開昭62-90369号)
のマイクロフィルム
甲第9号証:実開昭60-81785号公報
甲第10号証:実開平3-85880号公報
甲第11号証:特願2000-7985号(原出願)の平成18年9月
19日付け拒絶理由通知書
甲第12号証:「家庭の環境衛生 害虫忌避剤と誘引殺虫剤」,小川謙
吾・井口辰興,都薬雑誌・Vol.12 No.8(1990),
p.61?66
甲第13号証:「特集・衛生害虫用殺虫剤の使い方と安全性 家庭用殺
虫剤の種類と使い方」,南手良裕,生活と環境・平成7年7
月号,日本殺虫剤工業会技術部会,p.43?51
甲第14号証:特開平3-113002号公報
甲第15号証:実願昭61-177734号(実開昭63-83559
号)のマイクロフィルム
甲第16号証:特開平11-182487号公報
甲第17号証:特開平6-346302号公報
甲第18号証:平成20年(ワ)第19402号 特許権侵害行為差止
請求事件(原告:アース製薬(株),被告:フマキラー(株))
の平成20年10月15日付け原告準備書面(1)

<弁駁書に添付>
甲第19号証:特開2006-325585号公報
甲第20号証:特開平11-139903号公報
甲第21号証:特開平11-169051号公報
甲第22号証:特開平10-191862号公報
甲第23号証:特開平11-308955号公報
甲第24号証:特開平5-68459号公報
甲第25号証:特開平7-111850号公報
甲第26号証:特開平11-322504号公報
甲第27号証:特開平11-127756号公報
甲第28号証:特開平7-236399号公報
甲第29号証:実願昭60-66055号(実開昭61-182273
号)のマイクロフィルム
甲第30号証:実願平5-75890号(実開平6-75179号)の
CD-ROM
参考資料1:平成20年(ワ)第19402号 特許権侵害差止請求事
件(原告:アース製薬(株),被告:フマキラー(株))の平成
20年10月17日付け被告第1準備書面


〔2〕被請求人の主張及び提出した証拠方法
被請求人は,答弁書及び第2答弁書において,「本件無効審判の請求は成り立たない 審判費用は請求人の負担とする との審決を求める。」ことを答弁の趣旨として,乙第1号証乃至乙第3号証を提出して,次のように主張している。

1.無効理由(進歩性欠如)について
(進歩性を有する。無効理由は存在しない。)
請求人の主張は,本件特許発明が従来の携帯用害虫防除装置の改良を目的としたものであること(本件明細書【0004】段【0005】段参照)を無視したものであるばかりでなく,本件特許発明1と引用発明1又は2,及び本件特許発明2と引用発明2との一致点の認定について大幅な誤りを犯している。
その理由は,引用発明1,2の認定を誤ったためであり,請求人の主張は根拠のないものである。


2.証拠方法
<答弁書に添付>
乙第1号証:特願平7-523885号(甲第1号証出願)の平成16
年2月27日付け拒絶理由通知書
乙第2号証:特願平7-523885号(同上)の出願記事
乙第3号証:実願平5-75890号(実開平6-75179号)のC
D-ROM



第3.本件特許発明
本件特許の請求項1,2に係る発明は,本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。
「【請求項1】
害虫防除成分を保持し気流が当てられると前記害虫防除成分が揮散される薬剤保持体と、前記薬剤保持体に気流を当てるファンとがチャンバ内に収納され、前記チャンバには、前記チャンバ内に外気を取り入れる吸気口と、前記害虫防除成分を含んだ気流をチャンバ外に放出する排気口と、使用者が身に付けるための保持手段と、が設けられた携帯用害虫防除装置であって、
前記薬剤保持体は前記チャンバ内に挿着され、そして
前記使用者が前記保持手段を用いて装置本体を身に付けて起立した状態で、前記装置本体の上部及び下部に前記排気口が設けられることにより、
前記使用者の胴体表面の上方向及び下方向に沿って前記害虫防除成分を含んだ気流が放出される
ことを特徴とする害虫防除装置。」
「【請求項2】
前記使用者が起立した状態で、前記胴体表面の上方向及び下方向のみに前記害虫防除成分を含んだ気流が放出されるように、前記排気口が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の害虫防除装置。」
(以下,本件特許の請求項1,2係る発明を,「本件特許発明1」などといい,これらをまとめて,「本件特許発明」といい,また,その特許を,「本件特許」という。)



第4.当審の判断
【1】甲号各証の記載
(1)甲第1号証(特表平9-512443号公報)
甲第1号証には,「香料類似物質用のダイナミックデフューザ」に関して,次の記載がある。

<第1,2の実施例に共通する事項>
(1a)「【特許請求の範囲】
1.香料のような液体物質を自然に拡散させるダイナミックデフューザにおいて、このデフューザは液体物質用の容器と拡散領域にある空気流発生装置とを有し、前記デフューザは、前記容器が液体に対しては不透過性でガスに対しては透過性である薄膜によって封止され、前記薄膜の少なくとも一部が容器の垂直側壁を構成し、また、前記デフューザは、前記容器を水平軸の回りに回転させる装置を含み、これによって液体物質を少なくとも間欠的に前記垂直側壁を形成する薄膜に接触状態にすることを特徴とするダイナミックデフューザ。
2.容器の垂直側壁を形成する前記薄膜の内面は吸収物質で被覆されていることを特徴とする請求項1記載のデフューザ。
3.容器(14)は形状がリング状で、空気流発生装置は前記容器の中央開孔部に配置され、前記空気流発生装置によって作られた空気流が前記薄膜によって構成された前記垂直側壁の全領域にわたって前記中央開孔から外側に生じるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のデフューザ。
4.前記空気流発生装置は回転円形板(13)に取り付けられた羽車(6)と、その周辺部に取り付けられたリング状容器(14)とを有し、前記薄膜(16)は前記円板(13)が回転中に前記羽車(6)によって空気が分配される方向に対し半径方向に位置していることを特徴とする請求項3記載のデフューザ。
5.前記デフューザはリング状容器を有する外部本体と、羽車を有する円板と、前記円板を回転させる装置とを有し、前記外部本体には2組の開孔(25、26)が設けられ、その第1組は円板(29)の回転軸(D)の近傍の領域に位置して羽車(24)に面し、また、第2セットは前記円板(29)に対して放射状の領域に位置することを特徴とする請求項4記載のデフューザ。
6.前記外部本体は2組の開孔(25、26)を隔て、前記円板(29)の回転中前記羽車(24)の頂面(24a)と同一面をなす内部リング状ショルダ(30)を備えることを特徴とする請求項5記載のデフューザ。
7.前記外部本体は外囲(32)とカバー(23)によって構成され、前記カバー(23)には2組の開孔(25、26)と内部リング状ショルダ(30)とが備えられていることを特徴とする請求項6記載のデフューザ。
・・・」(2頁1行?3頁16行)

(1b)「本発明は香料デフューザ、或いは更に一般的には大気中に自然に拡散する物質、例えば脱臭剤、殺虫剤、殺菌剤等のデフューザに関し、さらに詳しくは、例えば、物質の自然な拡散と周囲大気中への発散を助長するための空気流発生装置を有するデイフューザに関する。」(4頁3?6行)

(1c)「このデフューザは香料のような自然蒸発液状物質用のデフューザで、このデフューザは前記液状物質用の容器と拡散領域中に位置する空気流発生装置とを含む。特徴的なことは、容器は液体には不透過性でガスに対しては透過性の薄膜によって閉じられ、前記薄膜の少なくとも一部は容器の垂直な側壁を形成し、加えて、デイフューザは水平軸を中心として容器を回転させるように容器を変位させる装置を有し、これによって液体物質を少なくとも間欠的に前記垂直な側壁を形成する薄膜に接触させるようになっていることである。
容器が回転すると、これに含まれる液体は、その時まだ容器中に発見される液体物質の量に無関係に、薄膜によって構成された垂直な側壁の少なくとも一部と常に接触状態にある。したがって、容器の運動は、容器中の液の量が長期間の使用によって減少した後においても、薄膜を常に湿らせることを可能とする。」(5頁14?24行)

(1d)「このようにして、この、本発明の好ましい実施例においては、容器が回転すると、空気流を発生させるのに使用したのと同一の装置を使用して薄膜が同時に連続的に濡らされる。
有利なことには、本発明のデフューザは、前記デフューザを構成する要素セット、即ち、リング状容器、羽車を有する円板、および前記円板を回転する装置用の外囲器として作用する外部本体を有し、加えてこの外部本体は2組の孔が設けられ、その第1組は円板の回転軸の近くに位置し羽車に面し、また第2セットは前記円板に対して半径方向に離れて位置している。このようにして第1セットの開孔を経由して外部本体内にはいり、第2セットを経由して本体から離れる空気流が生じる。この空気流は必然的に、円板の周辺に位置する容器を閉じる円形の薄膜の表面上を通過する。」(6頁11?21行)

(1e)「本発明は、添付図面に示されるような液体香料のダイナミックデフューザの好ましい実施例に関する以下の説明を読むことによって更によく理解されよう。
図1は液体香料用のダイナミックデイフューザの第1の実施例を示す断面図、
図2はダイナミックデフューザの第2の実施例を示す断面図、そして
図3は第2の実施例を上部から見た平面図である。
本発明の装置の目的は、香料、脱臭剤、殺虫剤、または室内の空気中に散布する事を希望するその他各種の物質を拡散することである。さらに詳しくは、本装置は、自然の拡散が空気流と組み合わされると言う意味でダイナミックな拡散を使用することである。」(7頁22行?8頁2行)

[図面]
【図1】

【図2】

【図3】


<第1の実施例に関する事項>
(1f)「図1に示す例においては、装置は液体状態にある香料用のダイナミックデフューザ1である。
デフューザ1は外囲器2とこれを閉じるカバー3とから構成されており、外囲器2は空気流を発生させる要素とさらに液状香料の拡散を可能とさせる要素とを含んでいる。
空気流発生要素はその本体が外囲器2の中央部分に横向きに固定され、その回転シャフト5がカバー3の内部に軸受けされるモータ4と、後述する取り外し自在のカートリッジ7の一部を構成する羽車6で構成されている。
モータ4は外囲器2内に入れられた電池8で付勢され、これは外囲2の外側に取り付けられたスイッチ9によって制御される。勿論、スイッチは外観的な理由または利用を許可されていない人による不所望の使用を防止するために外囲の中側に設置してもよい。
外囲器2は閉鎖板10で閉鎖されるが、これは外囲2に取り付け自在で回転シャフト5が通過する中央孔11を有している。
シャフト5によって回転されるように設計されているカートリッジ7は使用後、すなわち、液体状態にあるすべての香料12が拡散された後に、廃棄可能とするために、取り外し可能になっている。
カートリッジ7はその上に液体状態の香料12を含む容器と羽車6の両者を乗せている円板13を含んでいる。
羽車6はカートリッジ7の回転軸Dを中心とする2つの同心円の間に伸びる複数のブレードで作られている。容器14はリング状の中空体でほぼ矩形の断面を有し円板13の羽車6を有する面に反対側の面13に位置している。容器14は3つの面上のみで閉鎖され、その開放面15は液体に不透過性でガスに透過性である薄膜16で覆われている。・・・
・・・
図1に示されるように、容器14はカートリッジ7の回転軸を中心として同軸的で、また羽車6の外側に位置している。
カートリッジ7は円板13の軸方向肉厚部19内に形成されたソケット18内に端部5aが受け入れられた回転シャフト5上に固定される。
外囲器2およびそのカバー3は好ましくはその形状がほぼ円筒形で、カバー3はその環状周辺部の回り全体に空気流通溝20を有している。
・・・
デイフューザは次のように動作する。使用者は薄膜16から封止フィルム21を外すことによってカートリッジ7を開放することにより使用を始める。その後、カバー3が開いている間、使用者はカートリッジ7を回転シャフト5上に固定し、自由端5aを、シャフト5の前記端部5aを受け入れるように適当に形成されているソケット18内に係合する。
カートリッジ7はこれで使用可能になり使用者はカバー3を閉めることができる。スイッチ9の使用によって使用者はモータ4を回転し、これによってシャフト5を回転させる。したがってカートリッジ7は水平軸Dを中心として回転する。
カートリッジが回転すると、容器14内に含まれる液状の香料12は薄膜16と常に接触を保つ。この薄膜16は液体に不透過性でガスに透過性であり、外囲14の側壁の一つを形成している。この恒常的接触によって、香料は薄膜16を通して自然に拡散することができる。
さらに、カートリッジ7の回転中、羽車6は空気を軸Dから円板13の周辺に向けて流れるようにする。羽車6が2つの同心円間に伸びているという配列により、羽車の周辺全体に亘る空気の一様で連続的な運動を達成することが可能となる。そしてこれによって薄膜16の外面に面して位置する周辺領域、即ち、容器14からの香料が自然に拡散する領域をカバーする空気流を発生することができる。この領域を通過する空気流はカバー3の周辺に位置する溝20を介して排出さ、香気を与えるべき領域にダイナミックに加えられる。
当然、デフューザ1が使用中なので、容器14内の液状香料12の量は、蒸発により減少する。香料の量が減少するので、容器14内の液のレベルは下がり、任意の瞬間カートリッジ7の底部に位置する薄膜16の一部のみが液体香料12に実際に接触するようになる。しかし、容器14の各回転ごとに、全ての薄膜16が残留液を通って移動し、その結果、液体香料12に、多かれ少なかれ常に浸積される。このような浸積は薄膜16の内面を覆う吸収物質17によって助長される。
従って一様で連続的な香料の大気中への拡散を保証しながら容器14中に含有される液体香料をすべて使用することが可能となる。
・・・
上述したようなデイフューザ1は電池、例えば1.5ボルト電池または9ボルト電池によって付勢する事ができるが、しかしこれを太陽電池によって付勢することができ、これによって公共の場所での電池の使用に伴う欠陥を回避することができる。太陽電池でモータが付勢されると、モータの回転数は太陽電池を大なり小なり遮蔽することによって連続的に調節することが可能である。」(8頁3行?10頁26行)

<第2の実施例に関する事項>
(1g)「デフューザ22の第2の実施例が図2と3に示されている。
デイフューザ22は主として、そのカバー23の構造とその羽車24の構造によって第1の実施例と相違している。
図3に示されるように、カバー23は2組の開孔25、26を有している。第1セットの開孔25はカートリッジ28の回転軸D上に事実上位置する領域27内のカバー23を通して開孔されている。
第2セットの開孔26は前記カバー23の全体に延びる領域内に位置し、これはカートリッジ28の円板29に対して放射状に位置している。
カバー23は又内部ショルダ30を有するがこれは形状がリング状で軸Dに関して対称的で、羽車が軸Dを中心として回転するとき羽車24の上面24aと同一面上にある。
このようにして、カートリッジ28が軸Dを中心として回転すると、空気流がカバー23中で作られるが、その空気入り口は第1セットの開孔であり、また、空気出口は第2セットの開孔26である。この空気流は図2中に矢印Fで示され羽車24のブレードが動くスペースを通過するように強制される。このスペースは円板29とリング状のショルダ30との間で区切られる。この空気流は香料を収納するリング状容器31を覆う薄膜(図示せず)の上を必然的に通過している。真直ぐなブレードを有する羽車24によって、空気力学的な効率に関して優秀な結果が得られた。
第2実施例においては、デフューザ22の形状は円形ではなく、若干卵形であり、モータを付勢する電池は外囲器32の頂上部分に格納されている。これは、図3に示されるように、非常に小型で外観の美しいデフューザを得ることができる。一様な分布の空気流を得るために外囲器頂部中の開孔26に占められる領域は同一ハウジングの底部部分に位置する開孔26により占められる領域と同一でなければならないことは重要である。」(10頁27行?11頁23行)

<その他の事項>
(1h)上記(1g)の「デイフューザ22は主として、そのカバー23の構造とその羽車24の構造によって第1の実施例と相違している。」との記載からみて,デイフューザ22の各部材の構造や機能は,カバー23と羽車24を除き,デフューザ1(第1の実施例)の各部材(カバー3と羽車6を除く)の構造や機能と共通しているものと解される。

(1i)上記(1e)の「本発明の装置の目的は、香料、脱臭剤、殺虫剤、または室内の空気中に散布する事を希望するその他各種の物質を拡散することである。」との記載,上記(1f)の「モータ4は外囲器2内に入れられた電池8で付勢され、これは外囲2の外側に取り付けられたスイッチ9によって制御される。」,「デイフューザ1は電池、例えば1.5ボルト電池または9ボルト電池によって付勢する事ができるが、しかしこれを太陽電池によって付勢することができ、これによって公共の場所での電池の使用に伴う欠陥を回避することができる。」との記載,及び,上記(1g)の「第2実施例においては、デフューザ22の形状は円形ではなく、若干卵形であり、モータを付勢する電池は外囲器32の頂上部分に格納されている。これは、図3に示されるように、非常に小型で外観の美しいデフューザを得ることができる。」との記載からみて,デフューザ1,22は,室内や公共の場所での使用に供されるものであって,電池や太陽電池により駆動される非常に小型のものであると解される。

これら(1a)?(1i)の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば,甲第1号証には,「第2の実施例」に相当する発明として,次の発明(以下,「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「香料或いは周囲大気中に自然に拡散する物質である脱臭剤,殺虫剤,殺菌剤等を含む香料類似物質を保持し空気流Fが当てられると前記香料類似物質がその側壁の一つを形成する薄膜を通して周囲大気中に拡散されるリング状容器31と,前記リング状容器31に空気流Fを当てる羽車24とが外囲器32及びカバー23によって構成される外部本体内に収納され,前記外部本体には,空気入り口となる第1セットの開孔25と,空気出口となる第2セットの開孔26と,が設けられた香料類似物質用のダイナミックデフューザ22であって,
前記リング状容器31は前記外部本体内に挿着され,そして
前記外部本体の頂部及び底部に前記第2セットの開孔26が設けられることにより,
第1セットの開孔25を経由して外部本体内にはいり,リング状容器31を覆う薄膜の表面上を通過し,頂部及び底部の第2セットの開孔26を経由して外部本体から離れる空気流Fが生じるようにした,
室内や公共の場所での使用に供され,電池や太陽電池により駆動される非常に小型の香料類似物質用のダイナミックデフューザ22。」


(2)甲第2号証(国際公開WO90/13359号パンフレット)
甲第2号証(訳文は甲第2号証-1を参照)には,「PORTABLE VAPOR-DISPENSING DEVICE」(携帯式蒸気拡散装置)に関して,次の記載がある。

(2a)1頁2?18行の記載
「Technical Field
The present invention is generally directed to a device that is specifically designed to contain and to vaporize a volatile fluid.
The present invention, more particularly, is directed to a vapor-dispensing device that is portable.
Such a portable vapor-dispensing device is utilized to vaporize an effective amount of at least a portion of a volatile fluid, such as an evaporable liquid insecticide or an evaporable insect repellent. The portable device of the present invention, moreover, is specifically designed to provide an evaporated-fluid vapor envelope around a user of the device. Thus, the portable device of the present invention can e.g. provide either an envelope of insecticidal vapor or an envelope of insect-repellent vapor, respectively, around such a user for insect-elimination or insect-repellency purposes.」
(訳文:技術分野
本発明は,概括的に,揮発性液体を格納し且つ蒸発させるように具体的にデザインされた装置に向けられている。
本発明は,特に携帯式の蒸気拡散装置に向けられている。
そのような携帯式蒸気拡散装置は,蒸発性の液体殺虫剤又は蒸発性の防虫剤のような揮発性液体の少なくとも一部の有効量を蒸発させるのに使用される。さらに,本発明の携帯式装置は,装置使用者のまわりに蒸発液体蒸気のおおいをもたらすようにデザインされている。従って,本発明の携帯式装置は,例えば,駆虫又は防虫目的のために使用者のまわりに殺虫剤蒸気のおおい又は防虫剤蒸気のおおいのいずれかをもたらすことができる。)

(2b)5頁19行?6頁15行の記載
「Industrial Applicability
While the above summary briefly discusses one particular embodiment of our present invention, such embodiment being specifically designed to be worn by a user, it will be appreciated by those skilled in the art that our invention can readily be incorporated into other types of movable vaporizer devices such as those types of vaporizers which are designed to be placed on table tops, counter tops, desks, night stands, and like locations.
・・・
Accordingly, one object of the present invention is to provide a portable vapor-dispensing device able to be carried on the person of a user, or able to be moved in connection with the needs of a user. The device is specifically designed for vaporizing a biologically-active volatile fluid such as an evaporable liquid insecticide or an evaporable liquid insect repellent. Upon vaporizing at least a portion of such a volatile fluid, a biologically-active vapor is released from our portable device. Release of such a biologically active vapor from our device is in a manner so as to provide an envelope of active ingredient-containing vapor around the user for the purpose of eliminating and/or repelling insects.」
(訳文:産業上の利用可能性
上記概要で,使用者に装着されるように特別にデザインされた,本発明の特定の実施例について簡単に議論したが,本発明がテーブル頂面,カウンター頂面,机,寝室用ランプ及びそれと同様な場所に置かれるようにデザインされた蒸発器のような他の形式の移動可能な蒸発装置にも組み込むことが容易にできることが当業者によく理解される。
・・・
本発明の1つの目的は,使用者に装着することができる,又は使用者の必要に関連して移動させることができる携帯式の蒸気拡散装置を提供することである。本装置は,蒸発性の液体殺虫剤又は蒸発性の液体防虫剤のような生物学的有効揮発性液体を蒸発させるために具体的にデザインされている。そのような揮発性の液体の少なくとも一部の蒸発により,生物学的有効蒸気が本携帯式装置から解放される。本装置からのそのような生物学的有効蒸気の解放は,虫を駆除及び/又は忌避する目的のために,使用者のまわりに有効成分含有蒸気のおおいをもたらすような方式で行われる。)

(2c)7頁30行?8頁23行の記載
「Brief Description of the Drawing Figures
In the accompanying drawing figures,
FIGURE 1A is a front perspective view of one embodiment of the invention;
FIGURE 1B is a rear perspective view of the embodiment shown in FIGURE 1A;
FIGURE 2 is a vertical cross-sectional view, taken generally from the plane 2-2 shown in FIGURE 1A;
FIGURE 3 is another vertical cross-sectional view, taken generally from the plane 3-3 shown in FIGURE 1A;
・・・
FIGURE 6 is a perspective view of the device of FIGURE 1A, on a reduced scale relative thereto, showing the invention in use in a manner so as to provide an envelope of biologically-active vapor around the person of the user;
・・・
Throughout the drawings, like reference numerals refer to like parts.」
(訳文:図面の簡単な説明
添付図面において,
図1Aは,本発明の一実施例の正面斜視図である。
図1Bは,本発明の一実施例の背面斜視図である。
図2は,図1Aに示した平面2-2に沿う,縦断面図である。
図3は,図1Aに示した平面3-3で沿う,他の縦断面図である。
・・・
図6は,使用者の身体のまわりに生物学的有効蒸気のおおいをもたらす方式で使用される本発明を示す,図1Aの装置の縮小倍率での斜視図である。
・・・
図面全体で,同様な参照番号は同様な部品に言及している。)

[図面]
【図1A】 【図1B】

【図2】 【図3】

【図6】


(2d)8頁24行?11頁6行の記載
「Best Mode For Carrying Out The Invention
・・・
Referring now in detail to the accompanying drawing figures, it will be seen that there is illustrated in FIGURES 1A,1B, and 2 through 6 one embodiment of a portable vapor-dispensing device, capable of being carried on the person of the user, in accordance with the principles of the present invention. ・・・
Referring now initially to FIGURES 1A,1B, and 2 through 6, the portable vapor-dispensing device 100 of the invention includes a housing 110 which comprises a front housing section 120 and a rear housing section 140 joined together by suitable fastening means such as threaded fastener 150 (FIGURE 2).
・・・
Attached to the device 100, preferably to the rear section 140 of the housing 110, is a clip 160 (FIGURES 1B and 2) which allows the device 100 to be carried directly on the clothing of the user. Such a clip 160, moreover, enables the device 100 to otherwise be located in close relation to the user. For example, the device 100 can be attached directly to the belt 170 of the user, as is shown in FIGURE 6, or the device can be attached to an article in close relation to the user, such as a tent flap, a backpack or a handbag (the three, last-mentioned arrangements not being shown herein).
Referring now, in particular, to FIGURES 2 and 3, a reservoir 200 is arranged within the device 100 for containing a volatile fluid "F", preferably biologically-active, such as an evaporable liquid insecticide or an evaporable liquid insect repellent. ・・・
・・・
Referring to FIGURE 2, it can be seen that reservoir 200, thus disposed within an upper portion of housing 110, defines a fluid chamber 220 for receiving and containing the vaporizable fluid "F". Integrally depending from an internal upper portion of fluid reservoir 200 is a frusto-conical-shaped funnel-like plume-emitting chimney member 240 which provides a means for release of the vaporized fluid from the device 100. In particular, such vapor release is through upper opening 260, defined by the upper portions of front and rear housing sections 120 and 140 (FIGURES 1A and 1B), to the environment of use.」
(訳文:好適実施例の説明
・・・
添付図面について詳細に述べれば,図1A,1B及び2-6には,本発明の原理に従い,使用者の身体に装着できる,携帯式蒸気拡散装置の一実施例が図示されている。・・・
最初に図1A,1B及び2-6を参照すれば,本発明の携帯式蒸気拡散装置100は,ネジ部品150(図2)のような適当な固定手段により一緒に接合された前側ハウジング部120と後側ハウジング部140を含むハウジング110を含んでいる。
・・・
装置100,好ましくはハウジング110の後部140には,装置100を使用者の衣服に直接装着することを可能にするクリップ160(図1B及び2)が取付けられている。さらに,そのようなクリップ160は,別のやり方として,装置100を使用者に近接して置くことも可能している。例えば,装置100は図6に示されているように使用者のベルト170に直接取付けることができるし,またこの装置は,テントのたれぶた,バックパックまたはハンドバッグのような,使用者に近接した物品に取付けることができる(最後の3つの配置はここには図示されていない)。
特に,図2及び3を参照すれば,タンク200が,好ましくは蒸発性の液体殺虫剤又は蒸発性の液体防虫剤のような生物学的有効の揮発性液体“F”を格納するために、装置100内に配設されている。・・・
・・・
図2を参照すれば,ハウジング110の上部内に配置されたタンク200が蒸発性の液体“F”を受容し格納するための液室220を画成していることを見ることができる。液体タンク200の内側上部には,装置100から蒸発させられた液体を解放する手段を提供する円錐台形で漏斗状の蒸気噴流放出筒部材240が一体化されている。特に,そのような蒸気解放は,前側及び後側ハウジング部120及び140(図1A及び1B)の上部に画成された上部開口260を通じて,使用環境に対して行われる。)

(2e)15頁32行?16頁18行の記載
「Thus, in operation, when the switch 410 of the portable vapor-dispensing device of the invention is set in the "on" position, heating coil 380 provides heat to passageway or tube 320. The vaporizable fluid "F" enters passageway or tube 320, via its underside, and is heated by conduction heating; and the volatile fluid substance which is vaporized by the thus-conducted heat is released to the environment through upper opening 260 of chimney 240.
As set forth above, a primary use of the invention is for providing an envelope of insecticidal or insect repellent fog around the user. ・・・
Those insecticidal or insect-repellent evaporable fluids which are useful in our present invention are limited only to the extent that such fluids are vaporizable, are of a composition which is capable of forming a vapor of sufficient density to provide an envelope of insecticidal or insect repellent vapor around the user, and are non-toxic.」
(訳文:従って,作動中に,本発明の携帯式蒸気拡散装置が“ON”位置に設定された時,加熱コイル380が通路又は管320に熱を供給する。蒸発性の液体“F”は通路又は管320内にその下方から入り,伝導熱で加熱され,このようにして伝導された熱により蒸発させられた蒸発性の液体物質は筒240の上部開口260を通って周囲に解放される。
上記説明のように,本発明の主たる用途は,使用者の周りに殺虫剤または防虫剤の霧のおおいをもたらすことである。・・・
これらの本発明において有用な殺虫又は防虫蒸発性液体は,そのような液体が蒸発性のものであり,使用者の周りに殺虫剤又は防虫剤蒸気をもたらすのに十分な密度の蒸気を形成し得る組成物からなり,無害である範囲にだけ限定される。)

(2f)16頁34行?17頁2行の記載
「While a primary object of the invention is to provide for a portable insecticidal or insect repellent vapor-dispensing device, it should be understood, as was briefly mentioned above, that still other vaporizable fluids are contemplated within the scope of our present invention, such as air fresheners, perfumes, deodorants, medicaments, and the like.」
(訳文:本発明の主たる目的は携帯式の殺虫剤又は防虫剤蒸気拡散装置を提供することであるが、上記で簡単に述べたように、空気清浄剤、芳香剤、脱臭剤、医薬等のような他の蒸発性の液体も、本発明の範囲内にあると熟慮していると理解されるべきである。)

(2g)そして,図6(Fig-6-)には,使用者がクリップ160を用いて携帯式蒸気拡散装置100(ハウジング110)を装着して起立した状態で,携帯式蒸気拡散装置100(ハウジング110)の上部開口260から,使用者の周りに揮発性液体Fを含んだ蒸気噴流が解放されて,液体蒸気(霧)のおおいをもたらしている様子が記載されている。

これら(2a)?(2g)の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば,甲第2号証には,次の発明(以下,「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。

「蒸発性の液体殺虫剤又は液体防虫剤のような揮発性液体Fを格納するタンク200がハウジング110内に収納され,前記ハウジング110には,前記揮発性液体Fを含んだ蒸気噴流をハウジング110外に解放する開口260と,使用者の衣服,例えばベルト170に直接装着することを可能にするクリップ160と,が設けられた携帯式蒸気拡散装置100であって,
前記タンク200は前記ハウジング110内に挿着され,そして,
前記使用者が前記クリップ160を用いてハウジング110を装着して起立した状態で,前記ハウジング110の上部に開口260が設けられることにより,
前記使用者の周りに前記揮発性液体Fを含んだ蒸気噴流が解放される
蒸気拡散装置100。」


(3)甲第3号証(実願昭62-170521号(実開平1-74778号)のマイクロフィルム)
甲第3号証には,「携帯用防虫器」に関して,次の記載がある。
(3a)「携帯容体と、この携帯容体内に設け且つ外部電源より電源を蓄積する充電機構と、加熱により防虫臭気を発する薬含マットと、携帯容体内に備え且つ薬含マットを支持しこれに熱を加える前記充電機構に接続した加熱体とより構成する・・・携帯用防虫器。」(実用新案登録請求の範囲)
(3b)「図中1は携帯容体で、小型の箱状に形成して壁面一側に使用者のバンド等へ引っ掛ける係止鈎片2を突設してある。」(明細書4頁11?13行)


(4)甲第4号証(実願平4-71801号(実開平7-81号)のCD-ROM)
甲第4号証には,「使い捨て携帯蚊取り器」に関して,次の記載がある。
「【構成】蚊取り用薬剤マット1を加熱する為に使い捨ての化学発熱体2を取り付けこれを、押さえ具6により密着させ、気化した薬効成分を、拡散用窓3より放出し、吊り下げ用紐5により容器を服地などに止めて使用する、使い捨て携帯蚊取り器である。」(【要約】)


(5)甲第5号証(実願平1-117311号(実開平3-56379号)のマイクロフィルム)
甲第5号証には,「携帯用蚊取り具」に関して,次の記載がある。
「同図(b)に示すように、前記蚊取り剤18を含む発熱剤が封入された袋体16はケーシング19内に収めて使用できるようにしている。・・・
・・・また上端部には紐b等を挿通して吊り下げて使用できるよう係止部21を形成してある。」(明細書7頁16行?8頁9行)


(6)甲第6号証(実願昭62-44699号(実開昭63-151776号)のマイクロフィルム)
甲第6号証には,「蚊取器」に関して,次の記載がある。
「第3図は、この蚊取シート12の薬液を気化させる熱源となる熱源体20を示す。・・・これに使用される袋体22はその底面に断熱用のシート材24(ウレタン等)が貼着されている。・・・
更にこの袋体22には、蚊取器10としての使用に際して、紐等による吊下げを容易とするために、その一端部に通孔25が穿設されている。」(明細書6頁12行?7頁8行)


(7)甲第7号証(実願昭63-112900号(実開平2-34178号)のマイクロフィルム)
甲第7号証には,「蚊除器」に関して,次の記載がある。
「1.蚊取線香使用の、バンド及び安全ピン付、小型携帯蚊除器。」(実用新案登録請求の範囲)


(8)甲第8号証(実願昭60-179808号(実開昭62-90369号)のマイクロフィルム)
甲第8号証には,「蚊取線香容器」に関して,次の記載がある。
「・・・更に容器本体10の胴部11には係止部材14が連結され、この係止部材14に鉤状の懸吊具15が係合されている。ここで、使用に際しては、携帯する者のベルト等に懸吊具15を掛止することにより本考案に係る蚊取線香容器を携帯することができる。」(明細書4頁9?15行)


【2】本件特許発明1について
〔1〕本件特許発明1と甲1発明との対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「空気流F」は,本件特許発明1の「気流」に相当し,以下同様に,「周囲大気中に拡散」は,「揮散」に相当し,「羽車24」は,「ファン」に相当し,「(外囲器32及びカバー23によって構成される)外部本体」は,「チャンバ」或いは「装置本体」に相当し,「(空気入り口となる)第1セットの開孔25」は,「(チャンバ内に外気を取り入れる)吸気口」に相当する。
また,甲1発明の「香料類似物質」は,「香料或いは周囲大気中に自然に拡散する物質である脱臭剤,殺虫剤,殺菌剤等を含む」ものであるから,本件特許発明1の「害虫防除成分」或いは「(害虫防除成分を含む)薬剤」に相当し,したがって,甲1発明の「リング状容器31」は,「その側壁の一つを形成する薄膜を通して(香料類似物質が)周囲大気中に拡散される」ものであるから,本件特許発明1の「(気流が当てられると害虫防除成分が揮散される)薬剤保持体」に相当し,以下同様に,「第2セットの開孔26」は,「(害虫防除成分を含んだ気流をチャンバ外に放出する)排気口」に相当し,「香料類似物質用のダイナミックデフューザ22」は,「害虫防除装置」に相当する。
そして,甲1発明の「外部本体の頂部及び底部に第2セットの開孔26が設けられることにより,第1セットの開孔25を経由して外部本体内にはいり,リング状容器31を覆う薄膜の表面上を通過し,頂部及び底部の第2セットの開孔26を経由して外部本体から離れる空気流Fが生じる」と,本件特許発明1の「使用者が保持手段を用いて装置本体を身に付けて起立した状態で、装置本体の上部及び下部に排気口が設けられることにより、使用者の胴体表面の上方向及び下方向に沿って害虫防除成分を含んだ気流が放出される」とは,「装置本体の上部及び下部に排気口が設けられることにより,上方向及び下方向に害虫防除成分を含んだ気流が放出される」で共通する。

そうすると,両者は,
「害虫防除成分を保持し気流が当てられると前記害虫防除成分が揮散される薬剤保持体と,前記薬剤保持体に気流を当てるファンとがチャンバ内に収納され,前記チャンバには,前記チャンバ内に外気を取り入れる吸気口と,前記害虫防除成分を含んだ気流をチャンバ外に放出する排気口と,が設けられた害虫防除装置であって,
前記薬剤保持体は前記チャンバ内に挿着され,そして
前記装置本体の上部及び下部に前記排気口が設けられることにより,
上方向及び下方向に害虫防除成分を含んだ気流が放出される
害虫防除装置。」の点で一致し,次の点で相違する。

<相違点1>
害虫防除装置について,
本件特許発明1が,「使用者が身に付けるための保持手段」が設けられて,「使用者が保持手段を用いて装置本体を身に付けて」使用できる「携帯用」のものであるのに対して,
甲1発明では,使用者が身に付けるための保持手段についての開示がなされておらず,使用者が保持手段を用いて装置本体を身に付けて使用できる携帯用のものであるのか定かでない点。

<相違点2>
害虫防除装置の使用による害虫防除成分を含んだ気流の放出について,
本件特許発明1が,「使用者が保持手段を用いて装置本体を身に付けて起立した状態で装置本体の上部及び下部に排気口が設けられることにより、使用者の胴体表面の上方向及び下方向に沿って害虫防除成分を含んだ気流が放出される」のに対して,
甲1発明では,害虫防除装置が,図上,装置本体の上部及び下部に排気口が設けられているものの,使用者が保持手段を用いて装置本体を身に付けて起立した状態で使用されるものであるのか定かでなく,したがって,使用者の胴体表面の上方向及び下方向に沿って害虫防除成分を含んだ気流が放出されるのか定かでない点。


〔2〕相違点の検討
<相違点1について>
相違点1について検討する。
先ず,甲1発明の害虫防除装置が,「室内や公共の場所」でどのような態様で使用されるものであるかについて,考察してみる。
甲1発明の害虫防除装置は,「室内や公共の場所での使用に供され,電池や太陽電池により駆動される非常に小型の」ものであるから,それの使用態様(例えば,壁や柱に取り付けるなどして使うのか否か,使用者に付属させて使うのか否か,等)に格別の制限はないものであると解するのが自然である。
また,害虫防除装置を使用者が身に付ける携帯用のものとして使用することは,例えば,甲第3号証乃至甲第8号証に記載されているように,害虫防除装置の技術分野において従来から普通に行われていることでもある。
そうすると,甲1発明の害虫防除装置を,使用者が身に付ける携帯用のものとして使用しようと考えることは,当業者の技術常識の範囲内のことと思量される。

一方,甲第2号証には,上記「【1】(2)」で説示したとおりの発明(甲2発明)が記載されているものと認められるところ,甲2発明の「液体殺虫剤又は液体防虫剤のような揮発性液体F」は,本件特許発明1の「害虫防除成分」に相当し,以下同様に,「ハウジング110」は,「チャンバ」或いは「装置本体」に相当し,「蒸気噴流」は,「気流」に相当し,「解放」は,「放出」に相当し,「開口260」は,「排気口」に相当し,「(使用者の衣服,例えばベルト170に直接装着することを可能にする)クリップ160」は,「(使用者が身に付けるための)保持手段」に相当し,「装着して」は,「身に付けて」に相当し,「(携帯式)蒸気拡散装置100」は,「(携帯用)害虫防除装置」に相当するから,
甲2発明には,「チャンバに,害虫防除成分を含んだ気流をチャンバ外に放出する排気口と,使用者が身に付けるための保持手段と,が設けられた携帯用害虫防除装置であって,前記使用者が前記保持手段を用いて装置本体を身に付けて起立した状態で,前記装置本体の上部に排気口が設けられることにより,前記使用者の周りに前記害虫防除成分を含んだ気流が放出される害虫防除装置。」の技術が開示されているものと認められる。

そうすると,甲1発明の害虫防除装置について,その装置本体に使用者が身に付けるための保持手段を設け,使用者が前記保持手段を用いて装置本体を身に付けることにより,携帯用のものとして使用できるようにすることは,当業者の技術常識の範囲内において適宜なしうる程度の技術的事項ということができる。

したがって,甲1発明に,甲2発明に開示された上記技術及び害虫防除装置の技術分野における周知技術を適用して,本件特許発明1の上記相違点1に係る構成を想到することは,当業者が格別の技術的困難性を要することなしに容易になしえたものといわざるをえない。

<相違点2について>
相違点2について検討する。
先ず,甲1発明の害虫防除装置が,どのような姿勢で使用されるものであるかについて,考察してみる。
甲第1号証には,上記(1f)に「空気流発生要素はその本体が外囲器2の中央部分に横向きに固定され、・・・」と記載され,上記(1g)に「第2実施例においては、・・・モータを付勢する電池は外囲器32の頂上部分に格納されている。・・・一様な分布の空気流を得るために外囲器頂部中の開孔26に占められる領域は同一ハウジングの底部部分に位置する開孔26により占められる領域と同一でなければならないことは重要である。」と記載されており,
これによると,「空気流発生要素」の本体が「外囲器2の中央部分に横向きに固定され」ること,「(第2セットの一方の)開孔26」が「外囲器頂部」にあること,「(第2セットの他方の)開孔26」が「同一ハウジング(外囲器)の底部部分」にあること,等が直接的に記載されている。
また,甲第1号証には,上記(1e)に「図3は第2の実施例を上部から見た平面図である」と記載されているものの,上記(1c)に「薄膜の少なくとも一部は容器の垂直な側壁を形成し、加えて、デイフューザは水平軸を中心として容器を回転させる・・・これによって液体物質を少なくとも間欠的に前記垂直な側壁を形成する薄膜に接触させるようになっている」,「容器が回転すると、これに含まれる液体は、その時まだ容器中に発見される液体物質の量に無関係に、薄膜によって構成された垂直な側壁の少なくとも一部と常に接触状態にある。したがって、容器の運動は、容器中の液の量が長期間の使用によって減少した後においても、薄膜を常に湿らせることを可能とする。」と記載され,上記(1d)に「容器が回転すると、空気流を発生させるのに使用したのと同一の装置を使用して薄膜が同時に連続的に濡らされる」と記載され,上記(1f)に「したがってカートリッジ7は水平軸Dを中心として回転する。カートリッジが回転すると、容器14内に含まれる液状の香料12は薄膜16と常に接触を保つ。この薄膜16は液体に不透過性でガスに透過性であり、外囲14の側壁の一つを形成している。この恒常的接触によって、香料は薄膜16を通して自然に拡散することができる。」,「デフューザ1が使用中・・・容器14内の液のレベルは下がり、任意の瞬間カートリッジ7の底部に位置する薄膜16の一部のみが液体香料12に実際に接触する・・・容器14の各回転ごとに、全ての薄膜16が残留液を通って移動し、その結果、液体香料12に、多かれ少なかれ常に浸積される。・・・従って一様で連続的な香料の大気中への拡散を保証しながら容器14中に含有される液体香料をすべて使用する」と記載されており,
これによると,「容器(リング状容器)」が回転している使用状態においては,「容器」が「水平軸D」を中心に回転すること,「薄膜の少なくとも一部は容器の垂直な側壁を形成」すること,「液体物質の量に無関係に、薄膜によって構成された垂直な側壁の少なくとも一部と常に接触」して「薄膜を常に湿らせる」こと,「容器の各回転ごとに、全ての薄膜が残留液を通って移動」すること(つまり,容器の回転により全ての薄膜が湿らされる(濡らされる)こと),「液体香料」のすべてが残らず使用できること,等が明確に記載されている。(尚,図1をみると,「容器14」の下方部にのみ「液体香料」を示す符号「12」が付されている。)

以上の記載を総合すると,甲1発明の害虫防除装置は,図1乃至3に示された上下の関係を維持した姿勢で使用されるものであって,使用される際には,装置本体(外部本体)の上部及び下部に排気口(第2セットの開孔26)が設けられるものであると解するのが自然である。

そうすると,甲1発明の害虫防除装置について,その装置本体に使用者が身に付けるための保持手段を設け,使用者が前記保持手段を用いて装置本体を身に付けることにより,携帯用のものとして使用できるようにする際に,それの使用姿勢を,使用者が保持手段を用いて装置本体を身に付けて起立した状態で,装置本体の上部及び下部に排気口が設けられるようにし,これにより,使用者の胴体表面の上方向及び下方向に沿って害虫防除成分を含んだ気流が放出されるようにすることは,当業者の技術常識の範囲内において適宜なしうる程度の技術的事項ということができる。

したがって,甲1発明に,甲2発明に開示された上記技術及び害虫防除装置の技術分野における周知技術を適用して,本件特許発明1の上記相違点2に係る構成を想到することは,当業者が格別の技術的困難性を要することなしに容易になしえたものといわざるをえない。

尚,被請求人は,上述したところの,甲1発明の害虫防除装置の使用姿勢に関して,答弁書の「第2.3.(3)」で,「ところで、引用発明2(当審注:甲1発明のこと)についての第3図は『第2の実施例を上部から見た平面図である。』・・・と説明されており、第2図は第3図のII-II線における断面図ということになる。すなわち、引用発明2は第3図のように平において使用するものであり、香水等の蒸気を含んだ気流は、水平方向に放出されているのである。・・・」(11頁5?12行)と主張し,第2答弁書の「第1.5.」で,「・・・甲第1号証は,本来平置きするもので,このため回転させることによって初めて膜を介して揮発成分を揮散する構造になっている。・・・すなわち,甲第1号証の発明は,本件特許発明とは解決しようとする課題において全く異なっている。・・・」(5頁3?15行)と主張し,同,「第3.1.」で,「・・・しかし,容器は甲第1号証の図2のD-D′線を中心として回転しているので,液体物質は遠心力で容器の壁を這い上がり,薄膜に接することになる。・・・」(8頁15?21行)と主張している。
しかしながら,甲第1号証には,第3図が,第2の実施例(デイフューザ22)を「上部から見た平面図」であるとして説明されているとしても,その「上部」が使用状態での「上部」を意味するとはいっていないのであり,しかも,デイフューザ1,22を,平において使用するとか,平置きして使用するとか,さらには,液体物質を遠心力により薄膜に接するようにするとかの記載も,一切なされていないのであるから,このような被請求人の主張は,甲第1号証の記載を正解しないものであって,採用することはできない。

また,被請求人は,甲1発明の害虫防除装置に使用される殺虫剤に関しても,答弁書の「第1.2.」で,「・・・この点甲1には『殺虫剤』にも使用できるとは記載されてはいるが、自然に揮発しない蒸気圧の低い殺虫剤に使用することはできない。・・・」(4頁8?14行)と主張し,同,「第2.2.(4)」で,「なお、甲1に殺虫剤の記載はあるが『自然に揮発する物質』の1例として記載されているにすぎず、本件実施例に記載のトランスフルトリンのような蒸気圧が低く自然に揮発しない殺虫剤をも含めた意味で記載されているわけではない。・・・」(8頁12?19行)と主張し,第2答弁書の「第2.2.」で,「本件特許発明は,薬剤が自然蒸発する種類のものを構成要件として含んでいない。このことは,本件特許発明の請求項1に,『害虫防除成分を保持し気流が当てられると前記害虫防除成分が揮散される薬剤保持体』と記載され,・・・ていることからして明らかである。」(6頁16?19行)と主張している。
しかしながら,「薬剤が自然蒸発する種類のものを構成要件として含んでいない」とか,「薬剤」を「トランスフルトリンのような蒸気圧が低く自然に揮発しない殺虫剤」にすべきであるとかについて,本件特許明細書中に一切言及されておらず,且つ,そのようなことは,特許請求の範囲にも全く規定されていない事項であるから,このような被請求人の主張は,本件特許明細書若しくは特許請求の範囲の記載に基づかないものであって,採用することはできない。


〔3〕作用効果・判断
そして,本件特許発明1によって奏する作用効果も,甲1発明,甲2発明に開示された技術及び害虫防除装置の技術分野における周知技術から普通に予測できる範囲内のものであって,格別なものがあるとは認められないから,本件特許発明1は,甲1発明,甲2発明に開示された技術及び害虫防除装置の技術分野における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえない。



【3】本件特許発明2について
〔1〕本件特許発明2と甲1発明との対比
本件特許発明2は,本件特許発明1について,「使用者が起立した状態で、胴体表面の上方向及び下方向のみに害虫防除成分を含んだ気流が放出されるように、排気口が配置されている」と限定したものである。

そして,甲1発明の害虫防除装置は,排気口(第2セットの開孔26)が装置本体(外部本体)の上部(頂部)及び下部(底部)のみに設けられ,上(頂部)方向及び下(底部)方向のみに害虫防除成分(香料類似物質)を含んだ気流(空気流F)が放出されるようになっているものである。

そうすると,本件特許発明2と甲1発明とは,結局のところ,本件特許発明1と甲1発明との上記一致点に加えて,「上方向及び下方向のみに害虫防除成分を含んだ気流が放出されるように,排気口が配置されている」点でも一致し,「使用者が起立した状態で、胴体表面の上方向及び下方向のみに害虫防除成分を含んだ気流が放出される」か否かの点で相違することになるが,当該相違点は,上記本件特許発明1と甲1発明との相違点2と,実質上共通するものである。


〔2〕相違点についての検討
上記相違点(相違点2)についての検討は,上記「【2】〔2〕」で説示したとおりである。


〔3〕作用効果・判断
そして,本件特許発明2によって奏する作用効果も,甲1発明,甲2発明に開示された技術及び害虫防除装置の技術分野における周知技術から普通に予測できる範囲内のものであって,格別なものがあるとは認められないから,本件特許発明2は,甲1発明,甲2発明に開示された技術及び害虫防除装置の技術分野における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえない。



第5.むすび
以上のとおりであり,本件特許発明1,2は,何れも,甲1発明,甲2発明に開示された技術及び害虫防除装置の技術分野における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって,同法第123条第1項第2号の規定により無効にすべきものである。

審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人の負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-31 
結審通知日 2009-08-10 
審決日 2009-08-27 
出願番号 特願2006-315702(P2006-315702)
審決分類 P 1 113・ 121- Z (A01M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 南澤 弘明  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 宮崎 恭
関根 裕
登録日 2008-02-22 
登録番号 特許第4083781号(P4083781)
発明の名称 携帯用害虫防除装置  
代理人 桶川 美和  
代理人 小松 勉  
代理人 高橋 元弘  
代理人 末吉 亙  
代理人 吉原 省三  
代理人 岩田 麻衣子  
代理人 前 直美  
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