• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03H
管理番号 1204927
審判番号 不服2007-12300  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-26 
確定日 2009-10-08 
事件の表示 特願2001-315762「圧電デバイス及びそのパッケージ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月31日出願公開、特開2002-319838〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は、平成13年10月12日の出願(国内優先権主張平成13年2月19日)であって、その特許請求の範囲に記載された発明は、平成18年10月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認める。
そして、その請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】 圧電振動片を実装するための空所を画定した矩形の箱状をなすベースと、前記空所内に前記圧電振動片を気密に封止するように、低融点ガラスにより前記ベースの上端面に接合したガラス材料の矩形薄板からなる蓋とを備え、
前記低融点ガラスが前記ベース上端面と前記蓋の下面とを、前記ベースの全内周縁と前記蓋の全周縁との間で所定の封止幅w1をもって接合し、更に前記低融点ガラスが、前記ベース上端面において、前記蓋の全周縁に沿って前記ベースの矩形の縦・横方向の各側辺との間及び各角部の端縁との間に所定の幅w2をもって回り込むように、前記蓋の矩形の各角部が削除されかつ前記ベース上端面及び前記蓋の縦・横寸法が決定されていることを特徴とする圧電デバイスのパッケージ。」

なお、上記請求項1中の「前記低融点ガラスが、前記ベース上端面において、前記蓋の全周縁に沿って前記ベースの矩形の縦・横方向の各側辺との間及び各角部の端縁との間に所定の幅w2をもって回り込む」なる記載は、本願の明細書及び図面の記載を参酌すると、以下の事項を規定しているものと認められる。
(1)パッケージを上から見たとき、本願の図1(B)等に示されるように、低融点ガラスが、蓋の全周縁の外側にw2の幅ではみ出、ベースの矩形の縦・横方向の各側辺と各角部の端縁は、そのw2の幅の外側にある。
(2)パッケージの断面を見たとき、本願の図1(C)等に示されるように、低融点ガラスが、蓋の側面にまで達する。


2.引用例記載の発明

(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である平成12年6月16日に頒布された特開2000-165180号公報 (以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。

(1-1)「凹状ベースの側壁上面とカバーとを低融点ガラスによって封止する表面実装容器において、前記凹状ベースの平面外形よりも前記カバーを小さくして、前記カバーの外周に段部を設けて中央側に突出領域を形成し、前記突出領域の外周に低融点ガラスの粉末を塗布して前記凹状ベースの開口面を封止したことを特徴とする表面実装用容器。」(【請求項1】)

(1-2)「本発明は、ガラス封止による表面実装用の水晶振動子(面実装振動子とする)を利用分野とし、特にカバー外れを防止して耐衝撃性を良好とし、しかも外形寸法を一定にした表面実装用容器(実装容器とする)に関する。」(段落【0001】)

(1-3)「これにより、気密度及び接合強度を高め」(段落【0005】)

(1-4)「本発明では、・・・カバーを凹状ベースの板面面積より小さくした」(【0015】)

(1-5)「凹状ベース10は矩形状として、・・・外形寸法(長さ×幅)は8.0×4.5mmで、脚部10aの幅は1.2mmである」(段落【0016】)

(1-6)「平板状のカバー11は、・・・外形寸法は凹状ベース10より小さく7.2×4.1mmである。」(段落【0018】)

(1-7)「溶融時のガラス9は段部19によって生ずる溝内に流入するので、脚部10aから外部へのガラス9の突出を防止する。また、段部19により接合路(シールパス)も長くなる。したがって、平面外形の寸法を規格内に維持して搭載時等におけるガラス9の破損を少なくして封止を確実にする。」(段落【0025】)

(1-8)「上記実施例ではカバー11の角部を除く外周に段部19を設けたが、これは製造上の問題で角部を含む全外周に段部19を設けてもよい。」(段落【0026】)

ここで、上記(1-3)に摘記した「これにより、気密度及び接合強度を高め」なる記載は、引用例1の従来の技術についての記載ではあるが、引用例1の記載全体から見て、引用例1の主題発明も、該引用例1の従来の技術と同じ課題解決を目指したものと認められるから、該引用例1の主題発明においても、「気密度及び接合強度を高め」という課題の解決は当然に図られているものと認められ、上記(1-1)等にある「封止」は、当然に「気密に封止」することを意味しているものと認められる。

また、引用例1の図1からは、カバーが、各角部が削除された矩形の薄板とされていることが看取される。

さらに、引用例1の図2からは、低融点ガラスが、ベース上端面とカバーの下面とを、前記ベースの内周縁と前記カバーの周縁との間で所定の封止幅をもって接合している様子、及び前記低融点ガラスが、容器を上から見たときカバーの周縁の外側にはみ出ている様子、が看取される。
ここで、引用例1の図2は、ある一断面についての図ではあるが、上記(1-8)の、角部も辺部と同様の形状となし得る旨の記載や、上記の図2から看取される様子を容器の部位によって異なるものとすべき理由は何もないと考えられること、等の事情を勘案すれば、引用例1には、上記の図2から看取される様子を全周にわたる断面において具備した容器が開示されていると解するのが妥当である。

したがって、引用例1には、以下の発明(以下、「引用例1記載発明」と呼ぶ。)が記載されているといえる。

「水晶振動子を実装するための空所を画定した矩形の箱状をなすベースと、前記空所内に前記水晶振動子を気密に封止するように、低融点ガラスにより前記ベースの上端面に接合した矩形薄板からなるカバーとを備え、
前記低融点ガラスが前記ベース上端面と前記カバーの下面とを、前記ベースの全内周縁と前記カバーの全周縁との間で所定の封止幅をもって接合し、更に前記低融点ガラスが、容器を上から見たとき前記カバーの全周縁の外側にはみ出るように、前記カバーの矩形の各角部が削除されかつ前記ベース上端面及び前記カバーの縦・横寸法が決定されている実装容器。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である平成12年4月11日に頒布された特開2000-106515号公報 (以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

「この圧電振動子片21を気密に収容する圧電振動子用容器は、例えば酸化アルミニウム質焼結体等のセラミックスから成り、上面に圧電振動子片21が搭載される搭載部22aを有する略平板状の絶縁基体22と、ガラス等の透光性材料から成り、絶縁基体22の上面に低融点ガラス等の封止材23を介して接合されることにより絶縁基体22との間の空間に圧電振動子片21を収容する蓋体24とから構成されている。絶縁基体22には、絶縁基体22と蓋体24との間の空間を真空に排気するための貫通孔25がその上面から下面にかけて形成されている。」(段落【0003】)


3.対比
本願発明と引用例1記載発明を対比すると、引用例1記載発明の「水晶振動子」、「カバー」、「実装容器」が、本願発明の「圧電振動片」、「蓋」、「圧電デバイスのパッケージ」にそれぞれ相当する。
また、上記1.の「なお、」以下に言及した点を勘案すると、引用例1記載発明の「前記低融点ガラスが、容器を上から見たとき前記カバーの全周縁の外側にはみ出るように、」と本願発明の「前記低融点ガラスが、前記ベース上端面において、前記蓋の全周縁に沿って前記ベースの矩形の縦・横方向の各側辺との間及び各角部の端縁との間に所定の幅w2をもって回り込むように、」とは、「前記低融点ガラスが、パッケージを上から見たとき前記蓋の周縁の外側にはみ出るように、」の点において共通する。
したがって、両者の間には、以下の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「圧電振動片を実装するための空所を画定した矩形の箱状をなすベースと、前記空所内に前記圧電振動片を気密に封止するように、低融点ガラスにより前記ベースの上端面に接合した矩形薄板からなる蓋とを備え、
前記低融点ガラスが前記ベース上端面と前記蓋の下面とを、前記ベースの全内周縁と前記蓋の全周縁との間で所定の封止幅w1をもって接合し、更に前記低融点ガラスが、パッケージを上から見たとき前記蓋の周縁の外側にはみ出るように、前記蓋の矩形の各角部が削除されかつ前記ベース上端面及び前記蓋の縦・横寸法が決定されている圧電デバイスのパッケージ。」である点。

(相違点1)
本願発明の「蓋」は、ガラス材料とされているのに対し、引用例1記載発明の「カバー」は、ガラス材料とはされていない点。

(相違点2)
本願発明では、「低融点ガラスが、ベース上端面において、蓋の全周縁に沿って前記ベースの矩形の縦・横方向の各側辺との間及び各角部の端縁との間に所定の幅w2をもって回り込むように」、前記蓋の矩形の各角部が削除されかつ前記ベース上端面及び前記蓋の縦・横寸法が決定されているのに対し、引用例1記載発明では、そのようにはされていない、すなわち、引用例1記載発明では、「低融点ガラスが、容器(パッケージ)を上から見たときカバー(蓋)の全周縁の外側にはみ出るように」は前記カバー(蓋)の矩形の各角部が削除されかつ前記ベース上端面及び前記カバー(蓋)の縦・横寸法が決定されているものの、「ベースの矩形の縦・横方向の各側辺と各角部の端縁がそのはみ出る幅(w2)の外側にあるように」、また、「容器(パッケージ)の断面を見たとき、本願の図1(C)等に示されるように、低融点ガラスが、カバー(蓋)の側面にまで達するように」は、前記カバー(蓋)の矩形の各角部が削除されかつ前記ベース上端面及び前記カバー(蓋)の縦・横寸法が決定されていない点。


4.当審の判断

(1)上記相違点について

ア.(相違点1)について
上記2.(2)に摘記したように、引用例2には、引用例1記載発明と同じ技術分野に属する圧電振動子用容器において、蓋体をガラス等の透光性材料とすることが記載されている。そして、該引用例2に記載の「蓋体をガラス等の透光性材料とする」という技術を、引用例1記載発明に適用することを妨げる事情は何も無い。
してみれば、上記引用例2に記載の「蓋体をガラス等の透光性材料とする」という技術を、引用例1記載発明に適用し、その「カバー」(蓋)をガラス材料とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、相違点1の存在をもって本願発明の進歩性を肯定することはできない。

イ.(相違点2)について
上記2.(1-7)に摘記した引用例1の「溶融時のガラス9は段部19によって生ずる溝内に流入するので、脚部10aから外部へのガラス9の突出を防止する。」なる記載によれば、引用例1においても、封止のための低融点ガラスがベース脚部の外側まで突出することは、避けるべきこととして認識されていたものと認められる。
一方、引用例1の図1、2に示されるものにおいて、封止のための低融点ガラスが、ベース脚部の外側まで突出することを避けるためには、ベース脚部10aの幅を広くするか、段部19によって生ずる溝の寸法を大きくすればよいことは、当業者に自明である。
してみれば、引用例1記載発明において、低融点ガラスのベース脚部の外側までの突出を余裕をもって避けるべく、「ベース脚部10aの幅を広くする」、あるいは「段部19によって生ずる溝の寸法を大きくする」という手法を採用し、「ベースの矩形の縦・横方向の各側辺と各角部の端縁が低融点ガラスのはみ出る幅(w2)の外側にあるように」カバー(蓋)の矩形の各角部を削除しかつベース上端面及び前記カバー(蓋)の縦・横寸法を決定することは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、上記「段部19によって生ずる溝の寸法を大きくする」という手法を採用する際、引用例の図2の上方向に該段部19を拡張してもよいことも当業者に自明のことであるが、それを該段部19の内側の垂直面をカバー(蓋)の側面と見なし得るまで拡張しても差し支えないことも当業者に自明である。そして、そのように拡張することは、「容器(パッケージ)の断面を見たとき、本願の図1(C)等に示されるように、低融点ガラスが、カバー(蓋)の側面にまで達するように」カバー(蓋)の矩形の各角部を削除しかつベース上端面及び前記カバー(蓋)の縦・横寸法を決定することにほかならない。
さらにいうならば、ベース部と蓋部を封止剤を使用して封止する際、封止剤が蓋部の側面にまで達するように該封止剤を回り込ませるのが望ましいことは、特開平8-18380号公報や特開2000-150689号公報にも示されるように周知である。
以上のことを総合的に勘案すれば、引用例1記載発明において、上記相違点2に係る本願発明の構成を採用することも、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
よって、相違点2の存在をもってしても、本願発明の進歩性を肯定することはできない。

(2)本願発明の効果について
本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用例1、2の記載事項等から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。


5.むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用例1、2に記載された発明に基いて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について、検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-05 
結審通知日 2009-08-11 
審決日 2009-08-25 
出願番号 特願2001-315762(P2001-315762)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H03H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 弘亘  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 真木 健彦
飯田 清司
発明の名称 圧電デバイス及びそのパッケージ  
代理人 梅田 明彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ