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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E01C
管理番号 1204941
審判番号 不服2008-711  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-10 
確定日 2009-10-08 
事件の表示 平成10年特許願第152379号「舗装体及びアスファルト混合物」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月14日出願公開、特開平11-343606〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は,平成10年6月2日の出願であって,平成19年11月26日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成20年1月10日に審判請求がなされたものである。

そして,その請求項1に係る発明は,平成19年7月23日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める。
「【請求項1】 アスファルト混合物を一層で締固めた表層をもつ舗装体であって,該表層の上層部の空隙率が中下層部の空隙率より大きく,該表層が上層部の空隙率が20%を越えず中下層部の空隙率が3%を下回らない範囲で傾斜機能型表層を形成していることを特徴とする舗装体。」
(以下,「本願発明」という。)

2.特許法第30条新規性喪失の例外規定の適用の適否
2-1.経緯
本件の請求人は,本願に係る発明について,出願と同時に特許法第30条第1項の規定の適用を受けることを申請するとともに,併せて同条第4項に規定する証明する書類として,本願発明の発明者である市原利昭,森川友紀,及び本願発明の発明者でない早坂保則が,「第22回日本道路会議 一般論文集(B)」p.492-493記載の「排水性舗装のキメ深さを持つ積雪寒冷地用SMAの試験施工」(以下,「刊行物」という。)の発明を,社団法人日本道路協会が平成9年12月1?4日に開催した第22回日本道路会議において発表したことを証明するとする社団法人日本道路協会発行の書面を提出している。
なお,請求人は平成19年7月23日付けで,本願発明の発明者は,溝渕優,市原利昭,森川友紀の3名であることを宣誓する宣誓供述書を提出している。

一方,原査定の拒絶の理由は,上記刊行物には空隙率の具体的数値が記載されておらず,また,この点は技術常識より明らかであるとも認められないので,本願発明と刊行物記載の発明とは,傾斜機能型表層の空隙率において相違するものであるから,上記刊行物記載の発明は,特許法第30条新規性喪失の例外規定の適用を受けることができず,本願発明は,刊行物記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである,というものである。

2-2.請求人の主張
これに対して,本件の請求人は,審判請求の理由において,要約すると次のとおり主張している。
(1)本願発明の技術思想は,刊行物に記載されている「上層は排水性舗装に近似したキメ深さを持つが,中層から下層にかけてはSMAの性質を持つ」舗装体に相当する舗装体,即ち,舗装体の表層の上層部が排水性舗装の性質をもち中下層部がSMAの性質をもつ舗装体,を提供することにあり,本願発明の「20%」及び「3%」という数値は,発明の範囲を明確化するために当業者が「排水性舗装」及び「SMA」の空隙率として認識している数値を示したものであり,当該数値自体が発明として厳密な臨界性をもつものではなく,技術思想上は,それぞれ「排水性舗装の空隙率」及び「SMAの空隙率」という意味内容をもつものである。
(2)排水性舗装の空隙率がほぼ20%であり,SMAの空隙率がほぼ3%であることは当業者が十分に承知していた技術事項である。
これらの点は,請求人が提出した甲第1号証(「排水性舗装技術指針(案)」(平成14年発行),2,3,33及び34頁)に,排水性舗装の空隙率の目標値として「20%程度」,「空隙率は目標空隙率の±1%以内とする」と記載されており,また,甲第2号証(出願人発行の「エスマックシリーズ」と題するパンフレット,8頁の表)に,「エスマック(SMA)の空隙率3%」と記載されているるように,当業者が十分に承知していた技術事項である。
(3)以上のとおりであるから,本願に係る発明は,特許法第30条新規性喪失の例外規定の適用を受けることができるものであり,拒絶査定は違法なものである。

2-3.刊行物に記載された発明
上記刊行物には,図面とともに,以下の記載がある。
(1a)「「機能性SMA」の特徴は,上層は排水性舗装に近似したキメ深さを持つが,中層から下層にかけてはSMAの性質を持つことにある。従って,排水機能および騒音低減機能については,排水性舗装ほどではないが,その耐久性については,従来の耐流動混合物,耐摩耗混合物と比較しても数段高く・・・」(492頁23?28行)

(1b)表-1には,バインダ量がそれぞれ異なる機能性SMAの室内配合試験における空隙率が,4.3?8%範囲内である旨が開示されている。

(1c)「3.試験施工
(1)施工
室内配合検討により,設計バインダ量を6.2%とし,表-2に示す配合条件により試験施工を行った。・・・
試験施工は,下記に示す条件により行った。なお,B,D区間の1次転圧温度が,A,C区間より20℃低いのは,寒冷期の施工を想定したものである。

「機能性SMA」は,・・・均等なキメ深さを確保するのがキーポイントである。試験舗装の結果,均等なキメ深さを確保するためには,シビアな温度管理が必要であることが確認できた。
すなわち,混合物製造時の温度管理はもちろんのこと,運搬時の温度低下防止対策,アスファルトフイニッシャのスクリード部分の事前加熱,混合物の連続供給と敷均し,転圧時の温度管理および転圧方法が重要であることが確認できた。特に転圧方法においては,重複して転圧される部分を極力少なくすることが必要であった。・・・」(493頁1?17行)

2-4.判断
上記記載事項(1a)?(1c)をみると,刊行物には,アスファルト混合物を一層で締固めた表層をもつ舗装体であって,該表層の上層は排水性舗装に近似したキメ深さを持つが,中層から下層にかけてはSMAの性質を持つ舗装体については記載され,全体の空隙率も記載されているものの,刊行物のその他の記載を見ても,舗装体の各層の具体的な空隙率については記載されていない。
一方,請求人は,排水性舗装の空隙率が20%程度,SMAの空隙率が3%程度であることは技術常識であり,本願発明はこのような当業者が「排水性舗装」及び「SMA」の空隙率として認識している数値を示したにすぎないものであること,及び当該数値自体が厳密な臨界性を持つものではない旨主張している。
しかし,本願発明に「上層部の空隙率が20%を越えず中下層部の空隙率が3%を下回らない範囲」と明示されている以上,明確に数値範囲を規定しているものと解さざるを得ず,また,当該数値についても,排水性舗装の空隙率は20%程度,SMAの空隙率が3%程度であることが「排水性舗装の空隙率が20%を越えず」,「SMAの空隙率が3%を下回らない」と同じ意味であるとは言うことができない。

2-5.まとめ
以上のことから,請求人が特許法第30条第1項の規定の適用を受けようとして提出した刊行物に記載された発明は,本願発明と重複するところがあるものの同一ではなく,よって,本願は,特許法第30条第1項新規性喪失の例外規定の適用を受けることができない。

3.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物(市原利昭,森川友紀,早坂保則著,「第22回日本道路会議 一般論文集(B)」p.492-493),及びその記載事項(1a)?(1c)は,前記「2.2-2.」に記載した通りである。また,表-2に示す混合物を供給敷均し,上記記載事項(1c)に示す条件で転圧して機能性SMAを得ていることから,刊行物には,アスファルト混合物を一層で締め固めた表層を持つ舗装体である発明が記載されているということができる。
よって,以上の記載事項から見て,刊行物には,以下の発明が記載されているものと認められる。
「アスファルト混合物を一層で締固めた表層をもつ舗装体であって,該表層の上層は排水性舗装に近似したキメ深さを持つが,中層から下層にかけてはSMAの性質を持つ舗装体。」(以下,「刊行物記載の引用発明」という。)

4.対比
刊行物記載の引用発明は,上層は排水性舗装に近似したキメ深さを持ち,中層から下層にかけてはSMAの性質を持っていることから,上層の空隙率が中下層の空隙率より大きいことは明らかである。

よって,本願発明と刊行物記載の引用発明とは,
「アスファルト混合物を一層で締固めた表層をもつ舗装体であって,該表層の上層部の空隙率が中下層部の空隙率より大きく形成している舗装体。」
である点で一致し,以下の点で相違している。

(相違点)
空隙率について,本願発明は上層部の空隙率が20%を越えず中下層部の空隙率が3%を下回らない範囲であるのに対し,刊行物記載の引用発明は,空隙率の具体的数値は不明である点。

5.判断
相違点について検討する。
刊行物記載の引用発明も,上層部を排水性舗装に近似させ,中下層部をSMAの性質を持たせるものであり,上層部の空隙率を高く,中下層部の空隙率を低くするものであることは明らかである。そして,具体的に空隙率を決定するに際し,舗装体の排水性と耐久性を勘案し,適宜な数値範囲で空隙率を決定することは,当業者であれば当然に行う事項であり,また,本願の明細書等を参酌しても,上層部の空隙率が20%を越えず中下層部の空隙率が3%を下回らない範囲と決定することに臨界的意義が見いだせないから,上層部と中下層部の空隙率を具体的に決定するに際し,本願発明のような数値範囲とすることに,当業者であれば格別の困難性はない。

そして,本願発明の効果は,刊行物記載の引用発明から予測することができる程度のことである。

6.むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物記載の引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件は拒絶すべきものである。

7.付言
請求人は審判請求の理由において,以下の点を含む補正を行う意思がある旨主張している。
(ア)粗骨材として硬質で扁平骨材の含有量が15重量%以下,好ましくは10重量%以下の稜角に富んだものを用いる点
(イ)微細繊維として植物性繊維を添加する点
(ウ)一次転圧温度が150℃以上かつ温度ムラが15℃以内とする点
(エ)二次転圧温度が90℃以下かつ転圧回数が1往復とする点
しかし,上記2.で述べたように,空隙率についての具体的記載が刊行物にない以上,特許法第29条第2項の規定を受けることとなる。特に,(ア)の「15重量%以下」とする点,(ウ),(エ)の点は上記刊行物に記載された事項ではないため,これらが付加されれば,空隙率の記載を削除したとしても,上記5.と同様の判断となるし,空隙率の記載を削除した上で(イ)の事項を付加したとしても,舗装体に植物性繊維を付加することは周知の技術であるから,拒絶査定の備考の最後になお書きで引用された刊行物に記載された発明と当該周知の技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たことであると言わざるを得ない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-06 
結審通知日 2009-08-11 
審決日 2009-08-24 
出願番号 特願平10-152379
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 範久  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 草野 顕子
神 悦彦
発明の名称 舗装体及びアスファルト混合物  
代理人 斉藤 武彦  
代理人 畑 泰之  
代理人 畑 泰之  
代理人 斉藤 武彦  
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