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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1205569
審判番号 不服2007-24417  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-06 
確定日 2009-10-15 
事件の表示 特願2002-158386「プラズマディスプレイパネルの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年12月 5日出願公開、特開2003-346657〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年5月31日の特許出願であって、平成18年8月17日付けで最初の拒絶理由が通知され、平成18年10月23日付けで手続補正がされた後、平成19年2月5日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成19年4月16日付けで手続補正がされたが、平成19年7月27日付けで、平成19年4月16日付けの手続補正について補正の却下の決定がされるとともに、拒絶査定がされたものである。
これに対して、平成19年9月6日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、平成19年10月9日付けで手続補正がされたものである。

第2 平成19年10月9日付け手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成19年10月9日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を次のように補正する事項を含むものである。

(本件補正前、即ち、平成18年10月23日付け手続補正により補正されたもの)
「【請求項1】
複数本のローラーを基板の搬送方向に並べて配置することにより構成した搬送手段を有し、その搬送手段によって、セッター上に載せた基板を搬送するとともに、基板に設けたパネル構造物の焼成を行うに際し、
セッター材料が主成分としてSiO_(2)を62.1wt%、Al_(2)O_(3)を20.1wt%有する低膨張率結晶化ガラスであり、ローラー材料がSi金属を2?50wt%、SiCを98?50wt%含むSi-SiC材料であるプラズマディスプレイパネルの製造方法。」

(補正後)
「【請求項1】
プラズマディスプレイパネルを構成する前面または背面の基板をセッターの上に載せ、前記セッターを搬送手段によって搬送しながら前記基板に設けたパネル構造物の焼成を行うに際し、
SiC材料の粉末とバインダーとを混合させたものをローラー形状に成型し、さらにSi材料とともに加熱してバインダーを焼成・除去するとともにSi材料を溶融させてSi金属を2?50wt%、SiCを50?98wt%含浸させて製造したSi-SiC材料の複数本のローラーを、前記セッターの搬送方向に並べて前記搬送手段を構成し、
前記ローラーの上に、主成分としてSiO_(2)を62.1wt%、Al_(2)O_(3)を20.1wt%の有する低膨張率結晶化ガラスを前記セッターとして載せて前記基板を搬送して、前記基板に設けたパネル構造物の焼成を行う
プラズマディスプレイパネルの製造方法。」

2 補正の適否
(1)補正の目的
本件補正で特許請求の範囲についてする補正は、実質的に以下の事項からなるものである。
ア 本件補正前の請求項1に記載した発明特定事項である基板について、プラズマディスプレイパネルを構成する前面または背面の基板であることを限定する事項。
イ 本件補正前の請求項1に記載した発明特定事項であるSi金属を2?50wt%、SiCを98?50wt%含むSi-SiC材料であるローラー材料からなるローラーについて、SiC材料の粉末とバインダーとを混合させたものをローラー形状に成型し、さらにSi材料とともに加熱してバインダーを焼成・除去するとともにSi材料を溶融させてSi金属を2?50wt%、SiCを50?98wt%含浸させて製造したSi-SiC材料のローラーと、その製造方法を限定する事項。
ウ 本件補正前の請求項1に記載した発明特定事項である複数本のローラーによるセッター上に載せた基板の搬送について、前記セッターを前記ローラーの上に載せて搬送することを限定する事項。

上記アないしウの事項はいずれも、本件補正前の請求項1に記載した発明特定事項を限定するものであるから、本件補正で特許請求の範囲についてする補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(2)独立特許要件
(2)-1 特許法第36条第6項第1号及び第2号
ア 本件補正後の請求項1には、「Si材料を溶融させてSi金属を2?50wt%、SiCを50?98wt%含浸させて製造したSi-SiC材料の複数本のローラー」と記載されている。
この記載は、Si金属と、SiCを何に含浸させてSi-SiC材料の複数本のローラーを製造するのか、不明確である。
よって、請求項1に係る発明は明確でない。

イ アに記載したとおり、本件補正後の請求項1の上記の記載は、字句通り解釈すれば、SiCを何かに含浸させることを特定するものである。
一方、発明の詳細な説明には、含浸について以下の記載がある。
「【0045】SiCローラー7aをさらに詳しく説明する。これは、SiC材料の粉末とバインダーとを混合させた後、ローラー形状に成型し、その後、さらにSi材料とともに加熱することにより、バインダーを焼成・除去するとともに、Si材料を溶融させてローラーに含浸させたものであり、Si金属を2?50wt%、SiCを98?50wt%含むSi-SiC材料と定義されるものである。」
上記のとおり、【0045】には、Si材料を溶融させて、SiC材料粉末とバインダーとを混合、成型したローラーに含浸させることは記載されているものの、SiC材料を何かに含浸させることは記載されていない。このことは、発明の詳細な説明の他の箇所にも記載も示唆もされていない。
よって、請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものではない。

上記のとおり、本件補正後の請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものではなく、また、本件補正後の請求項1に係る発明は不明確であるから、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(2)-2 特許法第29条第2項
ア 本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
プラズマディスプレイパネルを構成する前面または背面の基板をセッターの上に載せ、前記セッターを搬送手段によって搬送しながら前記基板に設けたパネル構造物の焼成を行うに際し、
SiC材料の粉末とバインダーとを混合させたものをローラー形状に成型し、さらにSi材料とともに加熱してバインダーを焼成・除去するとともにSi材料を溶融させてローラーに含浸させて製造した、Si金属を2?50wt%、SiCを50?98wt%含むSi-SiC材料の複数本のローラーを、前記セッターの搬送方向に並べて前記搬送手段を構成し、
前記ローラーの上に、主成分としてSiO_(2)を62.1wt%、Al_(2)O_(3)を20.1wt%有する低膨張率結晶化ガラスを前記セッターとして載せて前記基板を搬送して、前記基板に設けたパネル構造物の焼成を行う
プラズマディスプレイパネルの製造方法。」

なお、本件補正により補正された請求項1の記載中、「(2)-1 特許法第36条第6項第1号及び第2号 ア、イ」に記載した点は、以下の理由により上記のとおり認定した。

本件補正により補正された請求項1の記載の「Si材料を溶融させてSi金属を2?50wt%、SiCを50?98wt%含浸させて製造したSi-SiC材料の複数本のローラー」という事項は、「(2)-1 特許法第36条第6項第1号及び第2号 イ」で摘記した発明の詳細な説明【0045】の記載を参酌すると、「Si材料を溶融させてローラーに含浸させて製造した、Si金属を2?50wt%、SiCを50?98wt%含むSi-SiC材料の複数本のローラー」と解釈できることは、合理的であり、かつ明らかである。

また、本件補正により補正された請求項1の「主成分としてSiO_(2)を62.1wt%、Al_(2)O_(3)を20.1wt%の有する低膨張率結晶化ガラス」という記載は、「主成分としてSiO_(2)を62.1wt%、Al_(2)O_(3)を20.1wt%有する低膨張率結晶化ガラス」の誤記であることは明らかであるから、この点についても上記のとおり認定した。

イ 引用文献に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-66066号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

<記載事項1>
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガラス基板に形成した構成要素を焼き固めるのに使用する焼成炉に関し、特にプラズマディスプレイ用基板などの電子部品としてのガラス基板の焼成工程において好適に使用される焼成炉の技術分野に属するものである。」

<記載事項2>
「【0002】
【従来の技術】従来より、この種のガラス基板上に形成された構成要素を焼き固める焼成炉としては図1に示すタイプのものが一般に使用されている。通常、ガラス基板の溶融温度は800℃程度であるのに対し、電極やリブの焼成温度は500?600℃であるため、焼成中にガラス基板は軟化する。このため、図1に示すように、焼成中でも軟化しない耐熱性のセッターSの上にガラス基板Gを載せた状態で焼成を行うようになっている。プラズマディスプレイ用基板の焼成には、このセッターとして結晶化ガラス板(例えば、日本電気硝子製「ネオセラムN-O」)が用いられている。」

<記載事項3>
「【0003】図1に示す焼成炉では、まず焼成炉本体1の外においてリフターコンベア2の上段位置にあるセッターSの上にガラス基板Gが載せられる。そして、ガラス基板GはセッターSと共に入口コンベア3により焼成炉本体1における上段通路の中に導入され、そのままセッターSと共にローラコンベアで搬送されながら加熱部にて常温から500?600℃程度のピーク温度まで加熱された後、徐冷部にて400℃程度にまで冷却される。次いで、上段通路の端まで搬送されたところでガラス基板GはセッターSと共にリフターコンベア4により下段通路に降下され、下段通路内をローラコンベアで逆方向に搬送されながら冷却部にて常温まで戻される。ガラス基板Gを載せたセッターSが出口まで到達すると、出口コンベア5によりリフターコンベア2に移し替えられ、そこで焼成を終えたガラス基板Gが除去される。そして、空になったセッターSはリフターコンベア2で上段位置に移動し、ここで次のガラス基板Gが載置されて焼成工程が繰り返される。」

<記載事項4>
図1の記載は以下のとおりである。





(ア)記載事項1の記載のとおり、引用文献1には、プラズマディスプレイ用基板などの電子部品としてのガラス基板に形成した構成要素を焼き固める焼成工程に使用する焼成炉に関する発明が記載されている。

(イ)記載事項2の記載のとおり、引用文献1には、ガラス基板GをセッターSの上に載せた状態でガラス基板上に形成された構成要素を焼き固める焼成を行うことが記載されている。

(ウ)記載事項2の記載のとおり、引用文献1には、プラズマディスプレイ用基板の焼成に、セッターSとして日本電気硝子製「ネオセラムN-0」結晶化ガラス板を用いることが記載されている。また、日本電気硝子製「ネオセラムN-0」結晶化ガラス板が、SiO_(2)を第一成分、Al_(2)O_(3)を第二成分とするものであることは、本願出願時における技術常識である(この点については必要であれば、特開平4-245443号公報の【0010】?【0012】、特開2000-231008号公報の【0017】参照。)。

(エ)プラズマディスプレイはその構成部材としてプラズマディスプレイパネルを備えることは本願出願時の技術常識であり、前記(ア)、(ウ)のプラズマディスプレイ用基板がプラズマディスプレイパネルを構成する前面または背面の基板を指すことも、本願出願時の技術常識からみて自明のことである。

(オ)前記(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)から、引用文献1には、プラズマディスプレイパネルを構成する前面または背面のガラス基板Gに形成した構成要素を焼き固める焼成を行うプラズマディスプレイパネルの製造方法が記載されているといえる。

(カ)記載事項3の記載のとおり、引用文献1には、セッターSの上にガラス基板Gが載せられ、ガラス基板GはセッターSと共にローラコンベアで搬送されながら加熱され、冷却され、常温まで戻されて焼成が行われることが記載されている。

(キ)記載事項3及び記載事項4の記載及び本願出願時の技術常識からみて、前記(カ)のローラコンベアが、複数本のローラをガラス基板G及びセッターSの搬送方向に並べて構成されること、及び、前記(カ)の搬送について、ローラの上にセッターSを載せてガラス基板Gを搬送することは、いずれも引用文献1に記載されているに等しい事項である。

したがって、記載事項1?記載事項4の記載に基づけば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「プラズマディスプレイパネルを構成する前面または背面のガラス基板GをセッターSの上に載せ、前記セッターSをローラコンベアによって搬送しながら前記ガラス基板Gに形成した構成要素を焼き固める焼成を行うに際し、
複数本のローラを、前記セッターSの搬送方向に並べて前記ローラコンベアを構成し、
前記ローラの上に、SiO_(2)を第一成分、Al_(2)O_(3)を第二成分とする日本電気硝子製「ネオセラムN-0」結晶化ガラス板を前記セッターSとして載せて前記ガラス基板Gを搬送して、前記ガラス基板Gに形成した構成要素を焼き固める焼成を行う
プラズマディスプレイパネルの製造方法。」

原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-253259号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

<記載事項5>
「【発明の属する技術分野】本発明は、セラミックス製品や電子部品等を急速加熱処理するローラハース炉のローラとして好適に用いることのできる、特に反りが少なく、耐クリープ性に優れたローラ材およびその製造方法に関する。」

<記載事項6>
「【0002】
【従来の技術】近年、各種セラミックス製品や電子部品等の製造において急速加熱する必要性が増大するとともに、従来のプッシャー型炉に替わり連続的に搬送するローラハース炉への転換が図られてきた。一般にローラハース炉用ローラには耐熱性、高温強度、耐熱衝撃性、耐摩耗性、耐食性などの材質特性に優れていることが必要であり、従来からムライトが使用されている。ムライトは高温においても安定で耐熱性は優れているが、耐熱衝撃性や高温強度が低く、熱冷サイクルの繰り返しによりクラックや材質破損が生じ易い欠点がある。
【0003】そこで、ムライトに比べて耐熱衝撃性や高温強度が高いSiC系のローラ材の検討が行われている。SiC材は上記の耐熱性、高温強度、耐熱衝撃性、耐摩耗性、耐食性などの材質特性に優れており、SiC粉粒を焼結する方法で製造される。例えば、再結晶焼結法はSiC粉末を成形したのち2000℃以上の温度で熱処理してSiC粒子の再配列と粒成長作用によりSiC粒子相互を強固に結合焼結するものである。」

<記載事項7>
「【0008】本発明者らは、再結晶焼結SiC焼結体を対象にして、特定気孔径を有する再結晶質SiC焼結体の気孔に所定量の金属Siを含浸充填した場合には、耐熱衝撃性や高温強度を損なうことなく、反り精度および耐クリープ性の向上を図ることができることを見い出した。
【0009】本発明は上記の知見に基づいて開発されたものであり、その目的は高い耐熱衝撃性および高温強度を備えるとともに高温変形が少なく、反り精度ならびに耐クリープ性の優れたローラハース炉用ローラ材及びその製造方法を提供することにある。」
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するための本発明によるローラハース炉用ローラ材は、平均気孔径が10μm 以上の再結晶質SiC焼結体の気孔に金属Siが充填され、金属Siの含有率が10?30重量%のSiC-Si複合組成からなることを構成上の特徴とする。
【0011】また、その製造方法は、SiC粉に有機バインダー及び水を加えて混練、成形したのち加熱乾燥し、非酸化性雰囲気中1900?2300℃の温度で熱処理して得られた平均気孔径10μm 以上の再結晶質SiC焼結体に、金属Siの融液を接触させて再結晶質SiC焼結体の気孔中に金属Siを10?30重量%の含有率で充填することを構成上の特徴とする。」

<記載事項8>
「【0014】また、本発明のローラハース炉用ローラ材の製造方法は、先ず原料となるSiC粉にメチルセルロースやグリセリン等の有機バインダーおよび水を加えて充分に混練し、混練物を加圧成形や鋳込成形等の適宜な手段により所望形状に成形したのち加熱乾燥して水および有機バインダーを除去し、次いで窒素、アルゴン等の非酸化性雰囲気中で1900?2300℃の温度で熱処理することによって、基材となる再結晶質SiC焼結体を得る。この場合、SiC粉の粒度調整、有機バインダーの混合比率等を変えることにより基材の気孔性状を調節することができるが、平均気孔径を10μm 以上とするためには熱処理温度を1900℃以上に設定してSiC粒子を充分に粒成長させることが必要である。熱処理温度が1900℃未満では再結晶化が充分に進まず、平均気孔径を10μm 以上とするこができない。一方、熱処理温度が2300℃を越えると再結晶時の粒成長が著しくなって、平均気孔径は大きくなるが強度低下を招くこととなるため、熱処理温度は1900?2300℃の範囲に設定される。
【0015】このようにして得られた平均気孔径10μm 以上の再結晶質SiC焼結体に金属Siを接触させた状態で加熱し、金属Siを溶融させることにより金属Siの融液は毛細管現象により再結晶質SiC焼結体の気孔中に含浸して充填される。この場合に、充填するSi量はSiC焼結体に対して10?30重量%の含有率の範囲に設定される。すなわち、金属Siを充填したSiC-Si材はSiCが90?70重量%、Siが10?30重量%の複合組成割合に制御される。」

<記載事項9>
「【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。
【0017】実施例1?4、比較例1?4
平均粒子径の異なるSiC粉に、有機バインダーとしてメチルセルロース及び水を用い、これらの混合比を変えて充分に混練し、混練物を押し出し成形により外径35mm、内径25mm、長さ2000mmのパイプ状に成形した。これらの成形体を乾燥後、アルゴンガス雰囲気中で加熱温度を変えて熱処理し、気孔性状の異なる再結晶質SiC焼結体を作製した。次いで、これらの再結晶質SiC焼結体の上に金属Siを敷き詰め、アルゴンガス雰囲気中で1800℃の温度に加熱して金属Siを溶融させ、再結晶質SiC焼結体の気孔中に金属Si融液を異なる量比で含浸して、金属Siを充填した。このようにして得られたSiC-Si複合材について、再結晶焼結時の熱処理温度、SiC焼結体の気孔性状および充填した金属Siの含有率を表1に示した。」

(ク)記載事項5の記載のとおり、引用文献2には、セラミック製品や電子部品等を急速加熱処理するローラハース炉のローラとして用いることのできるローラ材に関する発明が記載されている。

(ケ)記載事項6の記載のとおり、引用文献2には、一般にローラハース炉用ローラには耐熱性、高温強度、耐熱衝撃性、耐摩耗性、耐食性などの材料特性に優れていることが必要であること、SiC材は耐熱性、高温強度、耐熱衝撃性、耐摩耗性、耐食性などの材質特性に優れていることが記載されている。

(コ)記載事項7の記載のとおり、引用文献2には、再結晶質SiC焼結体の気孔に金属Siが充填され、金属Siの含有率が10?30重量%のSiC-Si複合組成からなる、高い耐熱衝撃性および高温強度を備えるとともに高温変形が少なく、反り精度ならびに耐クリープ性の優れたローラハース炉用ローラ材が記載されている。

(サ)記載事項8の記載のとおり、引用文献2には前記(コ)のローラハース炉用ローラ材の製造方法として、SiC粉に有機バインダー及び水を加えて混練し、混練物を所望形状に成形したのち加熱乾燥して水および有機バインダーを除去し、次いで熱処理することによって再結晶質SiC焼結体を得て、再結晶質SiC焼結体に金属Siを接触させた状態で加熱し、金属Siを溶融させることにより金属Siの融液を再結晶質Si焼結体の気孔中に含浸して充填する製造方法が記載されている。
また、上記の「所望形状」の具体例として、パイプ状とすることが記載事項9に記載されている。

(シ)前記(コ)の「SiC-Si複合組成」という記載及び前記(サ)の製造方法からみて、前記(コ)のSiC-Si複合組成からなるローラ材は、10?30重量%の金属Siの残部はSiCであると認められる。そうすると、前記(コ)のSiC-Si複合組成からなるローラ材は、金属Siの含有率が10?30重量%であり、SiCの含有率が70?90重量%のSiC-Si複合組成からなるものであるといえる。

したがって、記載事項5?記載事項9の記載に基づけば、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「セラミック製品や電子部品等を急速加熱処理するローラハース炉のローラとして用いるローラ材であって、SiC粉に有機バインダー及び水を加えて混練し、混練物をパイプ状に成形したのち加熱乾燥して水および有機バインダーを除去し、次いで熱処理することによって再結晶質SiC焼結体を得て、再結晶質SiC焼結体に金属Siを接触させた状態で加熱し、金属Siを溶融させることにより金属Siの融液を再結晶質Si焼結体の気孔中に含浸して充填して製造した、再結晶質SiC焼結体の気孔に金属Siが充填され、金属Siの含有率が10?30重量%、SiCの含有率が70?90重量%のSiC-Si複合組成からなる、高い耐熱衝撃性および高温強度を備えるとともに高温変形が少なく、反り精度ならびに耐クリープ性の優れたローラハース炉用ローラ材。」

本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-229564号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

<記載事項10>
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ローラーハースキルン用のロールに関する。
【0002】
【従来の技術】陶磁器、タイル、電子材料等の焼成工程を経て製造される製品の製造において、近年、省エネルギー、生産性の向上等の観点から、迅速焼成可能なローラーハースキルンを使用した焼成が広く行われるようになってきている。
【0003】このローラーハースキルンにおいて、被焼成物(製品)を搬送するために用いられるロールには、ムライト(3Al_(2)O_(3)・2SiO_(2))材料、アルミナ(Al_(2)O_(3))材料、炭化珪素(SiC)質材料等からなるものが知られており、使用条件等に応じて使い分けられている。例えば、被焼成体が白色乃至黄色の場合には、製品汚損の可能性が低く、かつ安価なムライト材料やアルミナ材料からなるものが採用されやすい。しかし、これらの材料からなるロールは耐荷重性が低く、荷重変形しやすいため寿命は短い。一方、SiC質材料は耐荷重性に優れ、長寿命が期待できるため使用したい素材ではあるが、被焼成体が白色乃至黄色の場合には、SiC質材料からなるロールは製品汚損の可能性があるため採用されにくい。」

<記載事項11>
「【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係るローラーハースキルン用ロールを図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るローラーハースキルン用ロールの断面図である。このロールは、図に示すように、円筒状の外管1と、外管1の中空部に挿入された同じく円筒状の内管3とからなる二重管構造のロールである。内管3は外管1の内径よりも小さな外径を有し、両者の間には接着剤層5が形成されている。内管3と外管1とは、この接着剤層5を介して一体に接合されているため、内管3と外管1との間ですべり現象が生じることがなく、製品搬送の駆動力は外管に効率よく伝えられる。
(中略)
【0012】一方、内管の構成材料には、SiC質材料を用いる。SiC質材料は強度や耐クリープ性に優れ、荷重による変形や破壊が生じにくいため、内管の構成材料として用いることによりロール全体としての耐荷重性や寿命を向上させることができる。前述のように、SiC質材料は、単独でロール材に用いると、被焼成物が白色乃至黄色の場合に製品汚損の可能性があるが、被焼成物及び焼成雰囲気と直接接触を持たないロール内側の内管にのみ用いることによって、この問題は解消される。
【0013】SiC質材料としては、SiC焼結体、再結晶SiC焼結体及び金属Si含有SiC(Si-SiC)焼結体のうちのいずれかを用いることが好ましい。これらのうちのいずれの材料を用いるかは、通常、そのロールが使用されるローラーハースキルン内の温度により決められる。例えば、ローラーハースキルン内の温度が1400℃程度までのときはSi-SiC焼結体が、1500℃程度までのときはSiC焼結体がそれぞれ好適に使用できる。また、ローラーハースキルン内の温度が1600℃程度にまで達するときは、上記SiC質材料のうちで最も耐熱性が高い再結晶SiC焼結体を用いるのが好ましい。なお、これらSiC質材料の熱膨張係数は4×10^(-6)/℃程度である。」

<記載事項12>
「【0014】ここで、再結晶SiC焼結体及びSi-SiC焼結体からなる内管の作製方法の一例を説明する。まず、再結晶SiC焼結体からなる内管の場合は、SiC粒子に、有機質バインダー及び水分又は有機溶剤を加えて成形用原料とし、これを所定寸法の円筒状成形体に成形した後、得られた成形体を不活性ガス雰囲気中で中で焼成することにより作製することができる。Si-SiC焼結体からなる内管の場合は、SiC粒子に、有機質バインダー及び水分又は有機溶剤を加え、要すれば、更に炭素質粉を添加して成形用原料とし、これを所定寸法の円筒状成形体に成形した後、得られた成形体をSi雰囲気中で焼成することにより作製することができる。なお、Si-SiC焼結体の金属Si含有量は、15?25重量%程度とすることが好ましい。」

(ス)記載事項10のとおり、引用文献3には、電子材料等の焼成工程に使用されるローラーハースキルン用のロールに関する発明が記載されている。

(セ)記載事項11の記載のとおり、引用文献3には、円筒状の外管1と、外管1の中空部に挿入された同じく円筒状の内管3とからなる二重管構造のロールの、内管の構成材料に用いられるSiC質材料として金属Si含有SiC(Si-SiC)焼結体を用いることが記載されている。

(ソ)記載事項12の記載のとおり、引用文献3には前記Si-SiC焼結体からなる内管の作成方法として、SiC粒子に、有機質バインダー及び水分又は有機溶剤を加えて成形用原料とし、これを所定寸法の円筒状成形体に成形した後、得られた成形体をSi雰囲気中で焼成することにより作製することが記載されている。

したがって、記載事項10?記載事項12の記載に基づけば、引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。
「電子材料等の焼成工程に使用されるローラーハースキルン用のロールであって、SiC粒子に、有機質バインダー及び水分又は有機溶剤を加えて成形用原料とし、これを所定寸法の円筒状成形体に成形した後、得られた成形体をSi雰囲気中で焼成することにより作製したSi-SiC焼結体からなる内管と、外管とからなる二重管構造のロール。」

ウ 対比
本願補正発明と引用発明1とを比較する。

(ア)引用発明1の「ガラス基板G」は、本願補正発明の「基板」に相当し、以下同様に、「ガラス基板Gに形成した構成要素」は「基板に設けたパネル構造物」に、「焼き固める焼成を行う」は「焼成を行う」に、「セッターS」は「セッター」に、「ローラコンベア」は「搬送手段」に、「ローラ」は「ローラー」に、それぞれ相当する。

(イ)本願補正発明の「低膨張率結晶化ガラス」の「低膨張率」は、膨張率の比較の基準、程度が不明である。そこで、本願の発明の詳細な説明の記載を参酌すると、発明の詳細な説明【0044】には、次の記載がある。
「ここで、本実施の形態での特徴的なところは、(中略)また、セッター4として、低膨張率結晶化ガラス材料、例えば、日本電気硝子株式会社製のネオセラムN-0(商品名)を用いたことである(以下、ネオセラムセッターと記す)。」
そうすると、本願補正発明の低膨張率結晶化ガラス材料は、引用発明1の日本電気硝子製「ネオセラムN-0」結晶化ガラス板を包含すると認められるから、引用発明1の「日本電気硝子製「ネオセラムN-0」結晶化ガラス板」は、本願補正発明の「低膨張率結晶化ガラス」に相当するといえる。

(ウ)引用発明1の結晶化ガラス板が「SiO_(2)を第一成分、Al_(2)O_(3)を第二成分とする」ことと、本願補正発明の結晶化ガラスが「主成分としてSiO_(2)を62.1wt%、Al_(2)O_(3)を20.1wt%有する」こととは、結晶化ガラスが「SiO_(2)を第一成分、Al_(2)O_(3)を第二成分とする」点で共通する。

よって、本願補正発明と引用発明1の両者は、
「プラズマディスプレイパネルを構成する前面または背面の基板をセッターの上に載せ、前記セッターを搬送手段によって搬送しながら前記基板に設けたパネル構造物の焼成を行うに際し、
複数本のローラーを、前記セッターの搬送方向に並べて前記搬送手段を構成し、
前記ローラーの上に、SiO_(2)を第一成分、Al_(2)O_(3)を第二成分とする低膨張率結晶化ガラスを前記セッターとして載せて前記基板を搬送して、前記基板に設けたパネル構造物の焼成を行う
プラズマディスプレイパネルの製造方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
ローラーの材料について、本願補正発明は、Si金属を2?50wt%、SiCを50?98wt%含むSi-SiC材料のローラーであるのに対して、引用発明1は、ローラの材料が不明である点。

[相違点2]
ローラーの製造方法について、本願補正発明は、SiC材料の粉末とバインダーとを混合させたものをローラー形状に成型し、さらにSi材料とともに加熱してバインダーを焼成・除去するとともにSi材料を溶融させてローラーに含浸させて製造したローラーであるのに対して、引用発明1は、ローラの製造方法が不明である点。

[相違点3]
セッターとしての低膨張率結晶化ガラスが、本願補正発明は、主成分としてSiO_(2)を62.1wt%、Al_(2)O_(3)を20.1wt%有するのに対して、引用発明1は、SiO_(2)を第一成分、Al_(2)O_(3)を第二成分とする日本電気硝子製「ネオセラムN-0」からなる点。

エ 相違点についての判断
上記相違点について検討する。

(相違点1について)
引用発明2を再掲する。
「セラミック製品や電子部品等を急速加熱処理するローラハース炉のローラとして用いるローラ材であって、SiC粉に有機バインダー及び水を加えて混練し、混練物をパイプ状に成形したのち加熱乾燥して水および有機バインダーを除去し、次いで熱処理することによって再結晶質SiC焼結体を得て、再結晶質SiC焼結体に金属Siを接触させた状態で加熱し、金属Siを溶融させることにより金属Siの融液を再結晶質Si焼結体の気孔中に含浸して充填して製造した、再結晶質SiC焼結体の気孔に金属Siが充填され、金属Siの含有率が10?30重量%、SiCの含有率が70?90重量%のSiC-Si複合組成からなる、高い耐熱衝撃性および高温強度を備えるとともに高温変形が少なく、反り精度ならびに耐クリープ性の優れたローラハース炉用ローラ材。」

引用発明1と引用発明2とはいずれも、電子部品をローラを有する搬送手段により搬送して加熱処理を行うことに関する発明である。
また、引用発明2は、上記のとおり、金属Siの含有率が10?30重量%、SiCの含有率が70?90重量%のSiC-Si複合組成からなる、高い耐熱衝撃性および高温強度を備えるとともに高温変形が少なく、反り精度ならびに耐クリープ性の優れたローラ材の発明である。
そして、引用発明1においても、ガラス基板Gを搬送するローラコンベアを構成するローラとして、高い耐熱衝撃性および高温強度を備えるとともに高温変形が少なく、反り精度ならびに耐クリープ性の優れたローラが好ましいことは当業者には明らかであるから、引用発明1のローラの材料として、引用発明2と同様の金属Siの含有率が10?30重量%、SiCの含有率が70?90重量%のSiC-Si複合組成からなるローラ材を用いることは、電子部品を搬送しながら加熱処理を行う際に用いるローラ材として公知の材料から最適なものを選択したに過ぎず、当業者の通常能力の発揮の域を出るものではない。

以上のとおり、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明1,2に基づいて、当業者が容易に想到し得る事項である。

(相違点2について)
「(相違点1について)」に記載したとおり、引用発明1において引用発明2のローラ材を用いることは容易であるところ、引用発明2は、当該ローラ材がSiC粉に有機バインダー及び水を加えて混練し、混練物をパイプ状に成形したのち加熱乾燥して水および有機バインダーを除去し、次いで熱処理することによって再結晶質SiC焼結体を得て、再結晶質SiC焼結体に金属Siを接触させた状態で加熱し、金属Siを溶融させることにより金属Siの融液を再結晶質Si焼結体の気孔中に含浸して充填して製造したものである。
そうすると、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項と引用発明2のローラ材を得るための製造方法に関する事項とを比較すると、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は、Si材料とともに加熱してバインダーを焼成・除去するとともにSi材料を溶融させてローラーに含浸させて製造したものであるのに対して、引用発明2は、成形体を加熱乾燥してバインダーを除去し、熱処理して再結晶質SiC焼結体を得て、金属Siを接触させた状態で加熱して金属Si融液を再結晶質Si焼結体に含浸させて製造したものである点、即ち、バインダーを焼成・除去するとともにSi材料を溶融させてローラーに含浸させるか否かで相違している。

ここで、引用発明3を再掲する。
「電子材料等の焼成工程に使用されるローラーハースキルン用のロールであって、SiC粒子に、有機質バインダー及び水分又は有機溶剤を加えて成形用原料とし、これを所定寸法の円筒状成形体に成形した後、得られた成形体をSi雰囲気中で焼成することにより作製したSi-SiC焼結体からなる内管と、外管とからなる二重管構造のロール。」

この引用発明3の電子材料等の焼成工程に使用されるローラーハースキルン用ロールを構成するSi-SiC焼結体は、成形体をSi雰囲気中で焼成することにより、バインダーを焼成・除去するととともにSi材料を溶融、含浸したものであることは明らかである(この点について必要であれば、特開2000-130951号公報の【0010】、【0012】、特開2000-356471号公報の【0015】、【0017】参照。)。

つまり、引用発明3にみられるとおり、電子材料の焼成工程に使用されるSi-SiC焼結体のロールとして、バインダーを焼成・除去するとともにSi材料を溶融、含浸して製造したものは公知である。

したがって、引用発明1において引用発明2のSiC-Si複合組成からなるローラ材を用いた際に、そのローラ材を引用発明3におけるSi-SiC焼結体のロールのようにバインダーを焼成・除去するとともにSi材料を溶融、含浸して製造したものとすることは、単に公知のローラ材の製造方法からどの方法を採用するかという、当業者が適宜なし得る設計変更程度のことである。

以上のとおり、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明1?3に基づいて、当業者が容易に想到し得る事項である。

(相違点3について)
本願補正発明と引用発明1とは、セッターとしての低膨張率結晶化ガラスがSiO_(2)を第一成分、Al_(2)O_(3)を第二成分とする点で共通していることは先に記載したとおりである。そして、本願補正発明においてSiO_(2)を62.1wt%、Al_(2)O_(3)を20.1wt%と含有量を特定する点には、発明の詳細な説明を参酌しても単に日本電気硝子株式会社製のネオセラムN-0を用いたネオセラムセッターの組成を特定したに過ぎず、同じネオセラムN-0を用いた引用発明1に対して格別の技術的意義を見い出すことはできない。
よって、引用発明1においてセッターとしてのSiO_(2)を第一成分、Al_(2)O_(3)を第二成分とする日本電気硝子製「ネオセラムN-0」結晶化ガラス板を、主成分としてSiO_(2)を62.1wt%、Al_(2)O_(3)を20.1wt%有するものとすることは、当業者が適宜なし得る設計事項に過ぎない。

以上のとおり、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に想到し得る事項である。

オ 本願補正発明の効果及び審判請求書における請求人の主張について
本願補正発明の効果及び審判請求書における請求人の主張について検討する。

(ア)本願補正発明の効果について、発明の詳細な説明には以下の記載がある。
「【0012】
この製造方法によると、ローラーとセッターとの摩擦により発生する磨耗粉を削減することが可能となり、パネル構造物への異物の付着や混入が大幅に低減し、良好な表示特性のPDPを実現できる。」

「【0047】
【表1】(略)
SiC材料は滑り性が良いため、SiCローラー7aとネオセラムセッター4aとの摩擦は小さくなり、磨耗粉は発生しにくくなる。また、SiC材料は高温域においても歪の発生が小さいため、SiCローラー7aは常に安定してネオセラムセッター4aと接触するようになり、点接触などによる異常磨耗の発生が低減されることになる。
【0048】
ここで、セッター4をネオセラムセッター4aとし、ローラー7を、ムライトローラーとした場合とSiCローラー7aとした場合とで、磨耗粉の発生量の比較を行ったところ、ムライトローラーを用いた場合に比べてSiCローラー7aを用いた場合の方が、磨耗粉発生量を“1/3.5”と、大幅に減少させることが可能であることを確認した。
【0049】
そして、そのような構成の焼成装置を用いたプラズマディスプレイパネルの製造方法により、パネル構造物2への異物の付着や混入が低減されることも確認した。(表2)にその結果を示す。
【0050】
【表2】

PDPのパネル構造物2の品質へ大きく悪影響を与える異物の粒径は1μm以上であり、特に10μm以上の異物は致命的なパネル不良となるが、本実施の形態であるSiCローラー7aとネオセラムセッター4aとの組み合わせによれば、ネオセラムセッター4aと従来のムライトローラーとの組み合わせに比べて異物の個数は大幅に低減されることが判る。
【0051】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法によれば、セッター材料が主成分としてSiO_(2)を62.1wt%、Al_(2)O_(3)を20.1wt%有する低膨張率結晶化ガラスであり、ローラー材料がSi金属を2?50wt%、SiCを98?50wt%含むSi-SiC材料であるので、ローラーとセッターとの摩擦により発生する磨耗粉を大幅に低減することができ、これにより、パネル構造物への異物の付着や混入が低減でき、良好な表示特性のPDPを実現できる。」

(イ)また、請求人は審判請求書(平成19年10月9日付け手続補正書(方式)参照。)において以下の旨を主張している。
「 すなわち特開平10-253259号公報におきましては、ムライトに対するSiCの利点は耐熱衝撃性および高温強度であり、耐摩耗性という観点では同等であると認識されているものと考えます。これは特開平10-253259号公報における[実施例]での比較例の項目に「耐摩耗性」がないことからも明らかと考えます。
このことにより、セッターとローラーとの間の摩擦により発生する磨耗粉を低減するという目的に対し、ムライト材料と同等の耐摩耗性と認識されるSiC系ローラーを用いるということには容易には想到し得ないものと考えます。」(以下、「主張1」という。)

「 さらには、ローラー材の耐摩耗性を高くすることがセッターとローラーとの間の摩擦により発生する磨耗粉の低減になるとは一概には言えないものと考えます。すなわち、ローラー材を耐摩耗性の高い材質とした場合、対照的に、擦れ合う相手、すなわちセッターの方がより磨耗してしまうということが考えられ、結果として、磨耗粉の発生がより増大してしまうという場合もあり得ると考えられるからであります。
すなわち、セッターとローラーとの摩擦により発生する磨耗粉の削減は、一方の材質の耐摩耗性を上げるというだけで達成できるものではなく、セッターの材質とローラーとの材質との相対的な耐磨耗性により決定されるものであり、従いまして、セッターの材質とローラーとの材質との組み合わせの最適化が非常に重要であると考えます。
ここで、引用文献1および特開平10-253259号公報のいずれにも、セッター材料としては、主成分としてSiO_(2)を62.1wt%、Al_(2)O_(3)を20.1wt%有する低膨張率結晶化ガラスとし、ローラー材料としては、SiC材料の粉末とバインダーとを混合させた後、ローラー形状に成型し、さらにSi材料とともに加熱することにより、バインダーを焼成・除去するとともに、Si材料を溶融させてローラーに含浸させることで、Si金属を2?50wt%、SiCを98?50wt%含むSi-SiC材料とする、という組み合わせは開示されておらず、またこの組み合わせにより、ローラーとセッターとの摩擦により発生する磨耗粉を削減することができ、もって、パネル構造物への異物の付着や混入を低減することができ、良好な表示特性のPDPを実現できる、という、引用発明と比較した有利な効果につきましてもなんら開示はなく、その示唆すらありません。 なおこの効果は、引用発明においては認識されていない課題を解決することで得られる効果であり、従いまして、当業者の予測しうる範囲を超える顕著な効果であると思料いたします。」(以下、「主張2」という。)

(ウ)まず、本願補正発明の効果について検討する。
上記の発明の詳細な説明の記載によれば、本願補正発明によりパネル構造物への異物の付着や混入が低減できる理由は、ローラーとセッターとの摩擦により発生する磨耗粉を大幅に低減することができるためであり、これはSiC材料の滑り性が良いため、SiCローラーとネオセラムセッターとの摩擦は小さくなり、磨耗粉は発生しにくくなること、及び、SiC材料は高温域においても歪の発生が小さいため、SiCローラーは常に安定してネオセラムセッターと接触するようになり、点接触などによる異常磨耗の発生が低減されることになることに起因する効果である。
また、発明の詳細な説明における効果の確認についての上記【0048】?【0050】の記載をみると、いずれもネオセラムセッターを用いた場合について、SiCローラーを用いた場合とムライトローラーを用いた場合とが比較されているのみである。
要するに、発明の詳細な説明には、SiC材料の特性に起因する効果がネオセラムセッターを用いた場合に奏されたことが記載されているにとどまるのであって、本願補正発明の効果が、「セッターの材質とローラーとの材質との組み合わせの最適化」を行った結果奏される効果であることが裏付けられているとは到底いえない。

一方、引用発明2のローラ材は耐熱衝撃性や高温強度を損なうことなく、反り精度および耐クリープ性の向上を図ることができるものであることは上記のとおりであり、また、引用文献2には、SiC材は耐熱性、高温強度、耐熱衝撃性、耐摩耗性、耐食性などの材質特性に優れていることが記載されていることも、「イ 引用文献に記載された発明 (ケ)」に記載したとおりである。

そうすると、本願補正発明の効果は、引用発明2のローラ材の耐摩耗性、耐クリープ性等を公知のネオセラムセッターの搬送に利用したものに他ならないから、引用文献1,2に磨耗粉や異物についての記載がなくとも、引用発明1,2から、当業者が予測し得る範囲内のものである。

(エ)次に、主張1について検討する。
引用発明2のローラ材は耐熱衝撃性や高温強度を損なうことなく、反り精度および耐クリープ性の向上を図ることができるものであることは上記のとおりであり、引用文献2には、SiC材は耐摩耗性に優れていることが記載されていることも上記のとおりである。
よって、これらの特性に着目して、公知のローラ材との比較実験を行って材料を選択することは、当業者の通常能力に発揮に過ぎず、磨耗粉を低減するためにSiC系ローラーを用いるということには容易には想到し得ない旨の主張1は採用することができない。

(オ)主張2について検討する。
前記(ウ)に記載したとおり、本願の発明の詳細な説明には、SiC材料の特性に起因する効果がネオセラムセッターを用いた場合に奏されたことが記載されているにとどまるのであって、「セッターの材質とローラーとの材質との組み合わせの最適化」を行った結果奏される効果であることが裏付けられているとは到底いえない。
よって、セッターの材質とローラーとの材質の組み合わせの最適化を行ったことに基づく主張2は採用することができない。

カ まとめ
よって、本願補正発明は、引用発明1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 補正の却下の決定についてのまとめ
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成19年10月9日付け手続補正は上記のとおり却下されることになり、平成19年4月16日付け手続補正は平成19年7月27日付け補正の却下の決定で却下されているので、本願の特許請求の範囲は、平成18年10月23日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載した事項から特定される次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
複数本のローラーを基板の搬送方向に並べて配置することにより構成した搬送手段を有し、その搬送手段によって、セッター上に載せた基板を搬送するとともに、基板に設けたパネル構造物の焼成を行うに際し、
セッター材料が主成分としてSiO_(2)を62.1wt%、Al_(2)O_(3)を20.1wt%有する低膨張率結晶化ガラスであり、ローラー材料がSi金属を2?50wt%、SiCを98?50wt%含むSi-SiC材料であるプラズマディスプレイパネルの製造方法。」

第4 原査定の拒絶の理由の概要
本願の原査定の拒絶の理由である平成19年2月5日付け拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1
・引用文献等1-2

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2001-66066号公報
2.特開平10-253259号公報

第5 当審の判断
1 引用文献に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-66066号公報、即ち引用文献1には、「第2 補正の適否 (2)独立特許要件 (2)-2 特許法第29条第2項 イ 引用文献に記載された発明」に記載した記載事項1?記載事項4が図面とともに記載されている。

そして、「第2 補正の適否 (2)独立特許要件 (2)-2 特許法第29条第2項 イ 引用文献に記載された発明 (ア)?(キ)」に記載したとおり、記載事項1?記載事項4の記載に基づけば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1’」という。)が記載されている。
「複数本のローラをガラス基板Gの搬送方向に並べて配置することにより構成したローラコンベアを有し、そのローラコンベアによって、セッターSの上に載せたガラス基板Gを搬送するとともに、ガラス基板Gに形成した構成要素を焼き固める焼成を行うに際し、
セッターSがSiO_(2)を第一成分、Al_(2)O_(3)を第二成分とする日本電気硝子製「ネオセラムN-0」結晶化ガラス板であるプラズマディスプレイパネルの製造方法。」

原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-253259号公報、即ち引用文献2には、「第2 補正の適否 (2)独立特許要件 (2)-2 特許法第29条第2項 イ 引用文献に記載された発明」に記載した記載事項5?記載事項9が図面とともに記載されている。

そして、「第2 補正の適否 (2)独立特許要件 (2)-2 特許法第29条第2項 イ 引用文献に記載された発明 (ク)?(シ)」に記載したとおり、記載事項5?記載事項9の記載に基づけば、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2’」という。)が記載されている。
「セラミック製品や電子部品等を急速加熱処理するローラハース炉のローラとして用いるローラ材であって、金属Siの含有率が10?30重量%、SiCの含有率が90?70重量%のSiC-Si複合組成からなる、高い耐熱衝撃性および高温強度を備えるとともに高温変形が少なく、反り精度ならびに耐クリープ性の優れたローラハース炉用ローラ材。」

2 対比
本願発明と引用発明1’とを比較すると、「第2 補正の適否 (2)独立特許要件 (2)-2 特許法第29条第2項 ウ 対比 (ア)?(ウ)」の項に記載したのと同様の理由により、両者は、
「複数本のローラーを基板の搬送方向に並べて配置することにより構成した搬送手段を有し、その搬送手段によって、セッター上に載せた基板を搬送するとともに、基板に設けたパネル構造物の焼成を行うに際し、
セッター材料がSiO_(2)を第一成分、Al_(2)O_(3)を第二成分とする低膨張率結晶化ガラスであるプラズマディスプレイパネルの製造方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明は、ローラー材料がSi金属を2?50wt%、SiCを98?50wt%含むSi-SiC材料であるのに対して、引用発明1’は、ローラの材料が不明である点。

[相違点2]
セッター材料としての低膨張率結晶化ガラスが、本願発明は、主成分としてSiO_(2)を62.1wt%、Al_(2)O_(3)を20.1wt%有するのに対して、引用発明1’は、SiO_(2)を第一成分、Al_(2)O_(3)を第二成分とする日本電気硝子製「ネオセラムN-0」からなる点。

3 相違点についての判断
上記相違点について検討する。

(相違点1について)
相違点1は、「第2 補正の適否 (2)独立特許要件 (2)-2 特許法第29条第2項 ウ 対比」の項に記載した、本願補正発明と引用発明1との相違点1と実質的に同内容である。
そして、「第2 補正の適否 (2)独立特許要件 (2)-2 特許法第29条第2項 エ 相違点についての判断」の項で、「(相違点1について)」で検討したのと同様の理由により、引用発明1’のローラの材料として、引用発明2’と同様の金属Siの含有率が10?30重量%、SiCの含有率が70?90重量%のSiC-Si複合組成からなるローラ材を用いることは、電子部品の加熱処理を行う炉に用いるローラ材として公知の材料から最適なものを選択したに過ぎず、当業者の通常能力の発揮の域を出るものではない。

以上のとおり、相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明1’,2’に基づいて、当業者が容易に想到し得る事項である。

(相違点2について)
相違点2は、「第2 補正の適否 (2)独立特許要件 (2)-2 特許法第29条第2項 ウ 対比」の項に記載した、本願補正発明と引用発明1との相違点3と実質的に同内容である。

そして、「第2 補正の適否 (2)独立特許要件 (2)-2 特許法第29条第2項 エ 相違点についての判断」の項で、「(相違点3について)」で検討したのと同様の理由により、引用発明1’においてセッター材料としてのSiO_(2)を第一成分、Al_(2)O_(3)を第二成分とする日本電気硝子製「ネオセラムN-0」結晶化ガラス板を、主成分としてSiO_(2)を62.1wt%、Al_(2)O_(3)を20.1wt%有するものとすることは、当業者が適宜なし得る設計事項に過ぎない。

以上のとおり、相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明1’に基づいて、当業者が容易に想到し得る事項である。

また、本願発明によってもたらされる効果についても、「第2 補正の適否 (2)独立特許要件 (2)-2 特許法第29条第2項 オ 本願補正発明の効果及び審判請求書における請求人の主張について」の項に記載したのと同様の理由により、引用発明1’,2’から当業者が予測し得る範囲内のものである。

したがって、本願発明は、引用発明1’,2’に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-14 
結審通知日 2009-08-18 
審決日 2009-08-31 
出願番号 特願2002-158386(P2002-158386)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01J)
P 1 8・ 121- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松岡 智也  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 波多江 進
山川 雅也
発明の名称 プラズマディスプレイパネルの製造方法  
代理人 原田 洋平  
代理人 笹原 敏司  
代理人 森本 義弘  
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