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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
管理番号 1205571
審判番号 不服2007-25814  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-20 
確定日 2009-10-15 
事件の表示 特願2003-166175「プラズマディスプレイパネルの駆動方法及び画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月29日出願公開、特開2004- 29794〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年12月8日に出願した特願平10-348072号(優先権主張 平成10年1月22日、平成10年9月4日)の一部を平成15年6月11日に新たな特許出願(優先権主張 平成10年1月22日、平成10年9月4日)としたものであって、平成19年8月16日付け(同年8月21日発送。)で拒絶査定がされたところ、これに対して、平成19年9月20日に拒絶査定不服審判が請求され、平成21年5月20日付け(同年5月26日発送。)で当審において拒絶の理由を通知し、これに対して、平成21年7月10日付けで意見書が提出されたものである。

第2 記載要件に関して(特許法第36条)
1.当審の拒絶理由の内容
当審において平成21年5月20日付けで通知した記載不備(特許法第36条違反)に関する拒絶の理由の概略は以下のとおりである。

「1)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていない。
2)本願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、平成14年改正前特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

理由 1),2)
請求項1について
(1)「前記初期化期間中に、上昇する時の電圧変化率の平均値が1V/μs以上、6V/μs以下であり」との構成は、初期化パルスを印加した際に発生する放電によってパネル全体が発光しコントラストを低下させるとの課題を解決するために、【図10】に示された測定結果に基づき導き出されたものであると考えられるが、上記電圧変化率として示された数値範囲は、上記【図10】には記載されていない(2.1V/μs,2.625V/μs,3.5V/μs,4.2V/μs,5.25V/μs,10.5V/μsの各平均変化速度は記載されているが、1V/μs,6V/μsの値は記載されていない。)。してみると、上記請求項に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない(そもそもにおいて、段落【0067】?【0075】に示された数値範囲が、【図10】から如何にして導き出されたものであるのかも不明である。)。
さらに、上記記載は、パルス電圧Vdataとの関係において無関係な記載となっているが、【図10】には、パルス電圧Vdataと無関係な測定結果は示されていない。
(2)・・・・・。
?
(6)・・・・・。
(7)「上昇する時の電圧変化率の平均値が1V/μs以上、6V/μs以下であり、かつ、 下降し始める時の電圧変化率が前記上昇する時の電圧変化率の平均値より大きい」と記載されているが、電圧変化率の平均値は絶対値で記載されたものではなく、してみると、下降時の変化率が上昇時の変化率よりも大きいとの記載は、技術常識に反している。
請求項2について
(8)上記請求項1に関する指摘を参照のこと。
請求項3,4について
(9)上記(1)-(2),(4)-(7)に関する指摘を参照のこと。
発明の詳細な説明、図面について
(10)【図9】、【図10】の記載から、如何にして段落【0067】-【0075】で述べられているような技術的事項を導き出すことができるのか不明である。
(11)【図10】の記載を参酌するにα=5.25とα=10.5との差異よりも、α=2.1とα=2.625の差異の方がより顕著である。してみると、α=5.25とα=10.5との間の値であるα=6が、どのような理由の元に臨界値として選択されているのか、その技術的意義及びその理由が不明である。
同様に、α=1が選択された理由も不明である。
(12)・・・・・。
(13)・・・・・。」

2.審判請求人による意見書における主張
審判請求人は、平成21年7月10日付けの意見書において、以下のように主張している。

「 上記の理由1)、2)につきましては、拒絶理由通知書の(1)?(13)に、その理由が述べられております。(1)?(13)のそれぞれにつきまして、出願人側の意見を申し述べます。
(1)1V/μs、6V/μsの値の記載が無いとされていますが、1V/μsの値は明細書中の段落(0072)に、6V/μsの値は明細書中の段落(0071)に記載されています。また、その範囲の根拠も明細書中の段落(0071)(0072)に記載されています。
(2)・・・・・。
?
(6)・・・・・。
(7)平均値の大小関係について言及しておりますので、数学的にも技術的にも比較可能であり、技術常識に反しているとは言えないものと思料致します。
(8)上記の(1)?(7)において述べた通りです。
(9)上記の(1)?(2)、(4)?(7)において述べた通りです。
(10)、(11)段落(0070)?(0072)に記載されているように、10V/μs以上では、コントラストが著しく悪化し、△Qが3.5pC以下においては、書き込み不良が発生することから、1V/μs未満では、書き込み動作が上手く行かないことは明らかであると思料致します。
(12)、(13)・・・・・。」

3.当審の判断
3-1 特許法第36条第6項第1号について
(ア)指摘(1)に関して、審判請求人は「・・・また、その範囲の根拠も明細書中の段落(0071)(0072)に記載されています。」旨主張しているが、段落【0071】及び【0072】には、「【0071】 αが6V/μs程度までの範囲においては、αを増加させることによって、Vdataに対する△Qのプロットの傾きが増加し、より低いVdataにおいても、正常な駆動が可能となる。これらのαの範囲では初期化パルスの放電による発光が維持放電に比べて非常に弱いのでコントラストを低下させることはない。しかし、αを10V/μs以上に増加させるとコントラストが著しく低下する。 【0072】 これは、立ち上がり部分でのαが大きすぎると初期化パルスの立ち上がり部分で強い放電が発生し、過剰な壁電圧を蓄積するために、立ち下がり部分でも放電を起こし所謂自己消去放電が発生し、初期化パルスによる発光が強くなるためにコントラストが低下する。さらに、このような条件下では、均一な初期化による壁電圧の制御ができないため、それに続く書き込み期間での書き込み放電不良が発生する。 このため、最適なαの値は、1≦α≦9[V/μs]であることがわかる。」と記載しているのみである。また、上記αについて、図面の【図10】には、2.1V/μs,2.625V/μs,3.5V/μs,4.2V/μs,5.25V/μs,10.5V/μsの各平均変化速度は記載されているが、1V/μs,6V/μsの値は記載されていない。また、図面の【図10】以外には、αについて記載されていない。したがって、発明の詳細な説明又は図面において、「上昇する時の電圧変化率の平均値が1V/μs以上、6V/μs以下であり」との具体的な数値範囲の選択に対して十分な技術的な裏付けが為されていない。
ここで、特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断されるべきものである。
してみると、本願の請求項1に記載された発明が、明細書のサポート要件に適合するためには、発明の詳細な説明に、その選択される数値範囲と得られる効果(性能)との関係の技術的な意味が、特許出願時において、具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度に記載されているか、又は、特許出願時の技術常識を参酌して、当該数値範囲内であれば、所望の効果(性能)が得られると当業者において認識できる程度に、具体例を開示して記載することが必要であると解される。(平成17年(行ケ)第10042号 特許取消決定取消請求事件より一部抜粋。)
そこで上記特許取消決定取消請求事件の判事事項に照らして、本願の発明の詳細な説明の記載を、請求項1の記載との関係において検討するに、本願の発明の詳細な説明には、請求項1の記載と単に表現上の整合性を取った程度の記載があるのみで、十分な技術的な裏付けが為された具体的な記載があるわけではなく、また、具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度の記載が為されているわけでもない。よって、「前記初期化期間中に、上昇する時の電圧変化率の平均値が1V/μs以上、6V/μs以下であり」との発明特定事項は、発明の詳細な説明に記載されたものでないことは明らかである。

(イ)指摘(7)に関して、審判請求人は「平均値の大小関係について言及しておりますので、数学的にも技術的にも比較可能であり、技術常識に反しているとは言えないものと思料致します。」と主張している。
しかしながら、下降し始める時の電圧変化率が、負の値を取ることは技術的に明白であり、その負の値が、上昇する時の電圧変化率の平均値、即ち、正の値より大きくなることは、数学的にも技術的にもあり得ないことである。 よって、「下降し始める時の電圧変化率が前記上昇する時の電圧変化率の平均値より大きい」との発明特定事項は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

(ウ)指摘(8)に関して、審判請求人は「上記の(1)?(7)において述べた通りです。」と主張している。
しかしながら、上記(ア)及び(イ)で述べたことと同様の理由により、依然として、記載不備が解消していない。

(エ)指摘(9)に関して、審判請求人は「上記の(1)?(2)、(4)?(7)において述べた通りです。」と主張している。
しかしながら、上記(ア)で述べたことと同様の理由により、依然として、記載不備が解消していない。

3-1-1 小括
よって、本願の請求項1ないし4に係る発明に関して、上記(ア)ないし(エ)において指摘した発明特定事項が、発明の詳細な説明に記載されていないことは明らかであるから、してみると、上記請求項1ないし4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

3-2 特許法第36条第4項について
指摘(10)、(11)に関して、審判請求人は「段落(0070)?(0072)に記載されているように、10V/μs以上では、コントラストが著しく悪化し、△Qが3.5pC以下においては、書き込み不良が発生することから、1V/μs未満では、書き込み動作が上手く行かないことは明らかであると思料致します。」と主張している。
しかしながら、壁電荷の移動量△Q[pC]と書き込みパルス電圧Vdata[V]の関係を測定した【図10】の記載を参酌するに、平均変化速度αとして2.1V/μs,2.625V/μs,3.5V/μs,4.2V/μs,5.25V/μs,10.5V/μsは記載されているが、1V/μs,6V/μsの値は記載されておらず、上昇する時の電圧変化率の平均値が1V/μs以上、6V/μs以下が、臨界値として技術的意義を有しているとの十分な裏付けが為されているとはいえない。
さらに、α=5.25とα=10.5との差異よりも、α=2.1とα=2.625の差異の方がより顕著であり、してみると、α=5.25とα=10.5との間の値であるα=6が、どのような理由の元に臨界値として選択されているのか、その技術的意義及びその理由が不明である。同様に、α=1が選択された理由も不明である。

3-2-1 小括
よって、発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。

4.まとめ
したがって、本願は、特許法第36条第4項、第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第3 進歩性に関して(特許法第29条第2項)
1.当審の拒絶理由の内容
当審において平成21年5月20日付けで通知した進歩性(特許法第29条第2項違反)に関する拒絶の理由の概略は以下のとおりである。

「3)本願の請求項1ないし4に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された特開昭59-181393号公報又は特開平10-143107号公報に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」

2.本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成18年12月15日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】 第1及び第2電極の対を有する複数の放電セルが形成されたプラズマディスプレイパネルの駆動方法であって、
前記駆動方法は、
初期化を行う初期化期間を有し、
前記初期化期間中に、上昇する時の電圧変化率の平均値が1V/μs以上、6V/μs以下であり、かつ、
下降し始める時の電圧変化率が前記上昇する時の電圧変化率の平均値より大きい波形を有するパルスを前記放電セルに印加する
プラズマディスプレイパネルの駆動方法。」

なお、本願発明が特許を受けることができるものであるか検討するに当たって、「第2 記載要件に関して(特許法第36条) 3.当審の判断」の(ウ)に関しては、技術常識を参酌して、「下降し始める時の電圧変化率が前記上昇する時の電圧変化率の平均値より大きい波形を有するパルス」とは、「下降し始める時の電圧変化率の絶対値が前記上昇する時の電圧変化率の平均値の絶対値より大きい波形を有するパルス」であるとして、また、「下降し始める時の電圧変化率」とは、本願の発明の詳細な説明の記載及び当該技術分野の技術常識を参酌して、「下降時の電圧変化率」であるとして、以下の検討を行う。

3.優先権主張の効果について
本願の請求項1ないし4に係る発明については、本願の分割の原出願の優先権主張の基礎となった先の出願である特願平10-010214号、特願平10-250749号の何れにも記載されていないから、優先権主張の効果はなく、請求項1ないし4についての特許法第29条第2項の規定に関する判断の基準日は、本願の原出願の現実の出願日である平成10年12月8日である。

4.引用例に記載された発明
原査定の拒絶の理由及び当審拒絶理由で引用され、本願の原出願の出願前である平成10年5月29日に頒布された刊行物である特開平10-143107号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、AC型のプラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma DisplayPanel)の駆動方法に関する。」

(2)「【0016】
【発明の実施の形態】図1は本発明に係るPDPの内部構造を示す斜視図である。例示のPDP1は、3電極構造の面放電形式のAC型PDPである。前面側のガラス基板11の内面に、マトリクス表示のラインL毎に一対のサステイン電極X,Yが配列されている。サステイン電極X,Yは、それぞれが透明導電膜41と金属膜42とからなり、AC駆動のための誘電体層17で被覆されている。誘電体層17の表面にはMgOからなる保護膜18が蒸着されている。背面側のガラス基板21の内面には、下地層22、列選択のためのアドレス電極A、絶縁層24、セルを画定するための隔壁29、及びカラー表示のための3色(R,G,B)の蛍光体層28R,28G,28Bが設けられている。各隔壁29は平面視において直線状である。これら隔壁29によって放電空間30がライン方向にサブピクセル毎に区画され、且つ放電空間30の間隙寸法が一定値(例えば150μm)に規定されている。放電空間30にはネオンにキセノンを混合したペニングガスが充填されている。表示のピクセル(画素)は、ライン方向に並ぶ3つのサブピクセルからなる。隔壁29の配置パターンがストライプパターンであることから、放電空間30のうちの各列に対応した部分は、全てのラインLに跨がって列方向に連続している。各列内のサブピクセルの発光色は同一である。各サブピクセルの範囲内の構造体がセル(表示素子)であり、画面SCはセルの集合によって構成されている。画面SCの仕様は表1のとおりである。」

(3)「【0021】図3は第1実施形態に係る駆動方法における印加電圧の波形図である。各サブフィールドsfの表示期間のうちのリセット期間TRは、それ以前の点灯状態の影響を防ぐため、画面全体を非帯電状態とする期間である。このリセット期間TRにおいて、本発明に固有の駆動制御が行われる。すなわち、自己放電に必要な壁電荷を帯電させる全面書込み過程に先立って、帯電セルのみで放電を生じさせる書込み準備過程を行う。具体的には、面放電開始電圧より低い波高値Vv(例えば170V)の正極性の補助書込みパルスPvをサステイン電極Xに印加する。その後、補助書込みパルスPvによる放電で生じた空間電荷が十分に残存する20μs程度の期間内に全面書込み過程を行う。この例では全面書込み過程として、サステイン電極X,Y間の相対駆動電圧(バイアス電位差Vw)が面放電開始電圧より十分に高くなるように、サステイン電極Xに波高値Vsの正極性の書込みパルスPwxを印加し、同時にサステイン電極Yに波高値Vsの負極性の書込みパルスPwyを印加する。加えて、面放電のトリガーとしての対向放電を生じさせるためにアドレス電極Aに波高値Vaw(例えば60V)の正極性の書込みパルスPwaを印加する。このような書込み準備過程及び全面書込み過程を含むリセット過程の作用は後述する。」

(4)「【0035】図8の駆動方法は、リセット期間TRにおいて、書込みパルスPwx,Pwyを印加する全面書込み過程に先立って、パルス幅taがサステインパルスPsより長い正極性の補助書込みパルスPv2をサステイン電極Xに印加するものである。補助書込みパルスPv2の波高値は、サステイン電圧Vsより20?50V程度低い値に設定する。パルス幅taを長くすることにより、短い場合よりも確実に放電が生じる。つまり、書込み準備過程の信頼性を高めることができる。パルス幅taの実用範囲は10?20μsである。
【0036】図9の駆動方法は、リセット期間TRにおいて、書込みパルスPwx,Pwyを印加する全面書込み過程に先立って、パルス幅taがサステインパルスPsより長く且つ立上がりの緩やかな正極性の補助書込みパルスPv3をサステイン電極Xに印加するものである。補助書込みパルスPv3の波高値は、サステイン電圧Vsと同じ値とする。立上がりが緩やかであれば、実効電圧が徐々に上昇して放電開始電圧に達した時点で放電が生じ、放電による発光が急峻な立上がりの場合よりも弱い。つまり、補助書込みパルスPv3を鈍波状とすることにより、不要の発光を抑えてコントラストを高めることができる。鈍波状とするには、電源とサステイン電極Xとの間に抵抗を挿入すればよい。抵抗が介在する分だけ電圧遷移の時定数が増大し、パルスの立上がりが緩やかになる。」

(5)図面の図3から、正極性の補助書込みパルスPvの波高値Vv(例えば170V)とサステインパルスPsの波高値Vsが、Vv=Vsであることを、見て取れる。

(ア)上記摘記事項(1)及び(2)並びに図面の図1の記載から、サステイン電極X、Yの対を有する複数の放電空間(30)が形成されたプラズマディスプレイパネルの駆動方法を、読み取ることができる。

(イ)上記摘記事項(1)及び(4)から、駆動方法は、書込み準備過程を行うリセット期間TRを有することを、読み取ることができる。

(ウ)上記摘記事項(2)ないし(4)及び図面の図3、図9の記載からから、リセット期間中に、上昇する時の電圧の変化率を平均した値が8.5V/μs?17V/μsであり、かつ、下降時の電圧の変化率の絶対値が前記上昇する時の電圧の変化率を平均した値の絶対値より大きい波形を有する補助書込みパルスPv3を放電空間(30)に印加することを、読み取ることができる。

したがって、上記摘記事項(1)ないし(4)及び図面の記載からみて、引用例1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「サステイン電極X、Yの対を有する複数の放電空間(30)が形成されたプラズマディスプレイパネルの駆動方法であって、
前記駆動方法は、
書込み準備過程を行うリセット期間TRを有し、
前記リセット期間中に、上昇する時の電圧の変化率を平均した値が8.5V/μs?17V/μsであり、かつ、
下降時の電圧の変化率の絶対値が前記上昇する時の電圧の変化率を平均した値の絶対値より大きい波形を有する補助書込みパルスPv3を放電空間(30)に印加する、
プラズマディスプレイパネルの駆動方法。」(以下、「引用発明」という。)

5.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「サステイン電極X、Yの対」は、本願発明の「第1及び第2電極の対」に相当し、以下同様に、「複数の放電空間(30)」は「複数の放電セル」に、「プラズマディスプレイパネルの駆動方法」は「プラズマディスプレイパネルの駆動方法」に相当するから、引用発明の「サステイン電極X、Yの対を有する複数の放電空間(30)が形成されたプラズマディスプレイパネルの駆動方法」は、本願発明の「第1及び第2電極の対を有する複数の放電セルが形成されたプラズマディスプレイパネルの駆動方法」に相当する。

(2)引用発明の「書込み準備過程」、「リセット期間TR」は、それぞれ本願発明の「初期化」、「初期化期間」に相当するから、引用発明の「前記駆動方法は、書込み準備過程を行うリセット期間TRを有し、」は、本願発明の「前記駆動方法は、初期化を行う初期化期間を有し」に相当する。

(3)引用発明の「リセット期間中」は、本願発明の「初期化期間中」に相当し、以下同様に、「上昇する時の電圧の変化率を平均した値」は「上昇する時の電圧変化率の平均値」に、「下降時の電圧の変化率の絶対値」は「下降時の電圧変化率の絶対値」に、「上昇する時の電圧の変化率を平均した値の絶対値」は「上昇する時の電圧変化率の平均値の絶対値」に、「補助書込みパルスPv3」は「パルス」に相当するから、引用発明の「前記リセット期間中に、上昇する時の電圧の変化率を平均した値が8.5V/μs?17V/μsであり、かつ、下降時の電圧の変化率の絶対値が前記上昇する時の電圧の変化率を平均した値の絶対値より大きい波形を有する補助書込みパルスPv3を放電空間(30)に印加する」は、本願発明の「前記初期化期間中に、上昇する時の電圧変化率の平均値が1V/μs以上、6V/μs以下であり、かつ、下降し始める時の電圧変化率が前記上昇する時の電圧変化率の平均値より大きい波形を有するパルスを前記放電セルに印加する」と「前記初期化期間中に、上昇する時の電圧変化率の平均値が所定の値であり、かつ、下降し始める時の電圧変化率が前記上昇する時の電圧変化率の平均値より大きい波形を有するパルスを前記放電セルに印加する」との限りにおいて一致する。

したがって、本願発明と引用発明の両者は、 以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

<一致点>
「第1及び第2電極の対を有する複数の放電セルが形成されたプラズマディスプレイパネルの駆動方法であって、
前記駆動方法は、
初期化を行う初期化期間を有し、
前記初期化期間中に、上昇する時の電圧変化率の平均値が所定の値であり、かつ、
下降時の電圧変化率の絶対値が前記上昇する時の電圧変化率の平均値の絶対値より大きい波形を有するパルスを前記放電セルに印加する
プラズマディスプレイパネルの駆動方法。」

<相違点>
上昇する時の電圧変化率の平均値が、本願発明では、「1V/μs以上、6V/μs以下」であるのに対して、引用発明では、「8.5V/μs?17V/μs」である点。

6.判断
上記相違点について検討する。
引用例1の段落【0036】において「・・・補助書込みパルスPv3の波高値は、サステイン電圧Vsと同じ値とする。立上がりが緩やかであれば、実効電圧が徐々に上昇して放電開始電圧に達した時点で放電が生じ、放電による発光が急峻な立上がりの場合よりも弱い。つまり、補助書込みパルスPv3を鈍波状とすることにより、不要の発光を抑えてコントラストを高めることができる。」と記載されているように、引用発明の解決しようとする技術課題は本願発明と同一であり、また、本願の明細書の記載を参照しても本願発明が、引用発明に比して、不要の発光を抑えてコントラストを高めることに関して顕著な作用、効果を有しているとはいえない。
また、プラズマディスプレイパネルの駆動において、リセット期間の電圧の立上がりを緩やかにしすぎると確実なリセットの妨げとなることや、駆動に際して十分なアドレス期間やサステイン期間を得られず、駆動の安定性やピーク輝度の低下を招くことも技術的に明白である。
さらに、プラズマディスプレイパネルに同じ駆動波形の電圧を印加したとしても、1.放電セルの封入ガスの種別・組成比 2.放電電極対の放電間隙 3.放電電極を被覆する誘電体層と保護層の材質(誘電率)・表面状態 の少なくとも3つの条件によって、異なった放電動作を示すことは技術常識であり、また、駆動に際しての時間的な余裕もパネルの解像度に応じて異なることも技術的に明白である。
してみると、リセット期間の電圧の立上がりを緩やかにすることにより、不要の発光を抑えてコントラストを高めるか、または、リセット期間の電圧の立上がりを早めることにより、駆動の安定性やピーク輝度の向上を得るかは、単なるトレードオフの関係に過ぎず、どのような電圧変化率の値を採用するかは、プラズマディスプレイパネルの例えば上記3つの条件やパネルの解像度などを考慮して、当業者が適宜決定すべき程度の単なる設計的事項にすぎない。

よって、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項は、当業者が適宜決定すべき程度の単なる設計的事項にすぎないものである。したがって、該相違点に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明から当業者が容易に想到し得た程度のものにすぎない。
そして、本願発明の奏する作用効果も、引用例1の記載から当業者が予測可能な範囲内のものである。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.まとめ
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願は、特許法第36条第4項、第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、かつ、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2ないし4に係る発明についての判断を示すまでもなく、本件出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-06 
結審通知日 2009-08-18 
審決日 2009-09-03 
出願番号 特願2003-166175(P2003-166175)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G09G)
P 1 8・ 121- WZ (G09G)
P 1 8・ 536- WZ (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 直明  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 小松 徹三
西島 篤宏
発明の名称 プラズマディスプレイパネルの駆動方法及び画像表示装置  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 永野 大介  
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