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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47L
管理番号 1205998
審判番号 不服2007-15665  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-05 
確定日 2009-10-28 
事件の表示 平成10年特許願第550607号「掃除シートとして有用な構造体」拒絶査定不服審判事件〔平成10年11月26日国際公開、WO98/52459、平成13年12月25日国内公表、特表2001-527455〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成10年5月20日の出願(パリ条約による優先権主張1997年5月23日、及び同年8月12日、米国)であって平成19年2月21日付けで拒絶査定がなされ(平成19年3月6日発送。)、これに対し、平成19年6月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成19年6月19日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成19年6月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年6月19日付けの手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。「30?120g/m^(2)の坪量とした連続した高坪量領域と、
前記高坪量領域で取り囲まれ、規則的な反復パターンで配置され、前記高坪量領域の坪量の80%以下の坪量とした複数の分散した不連続な低坪量領域とを含む不織掃除シート。」(下線部は補正個所を示す)

(2)補正の目的
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「掃除シート」を、「不織掃除シート」と限定するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3-1)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平7-184815号公報(以下「引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア「網状シートの片面若しくは両面に、繊維ウエブの繊維絡合で形成された不織布状の繊維集合体が、その構成繊維間の絡合と共に該網状シートに対しても絡合状態で一体化されたシートであって、破断強度が500g/30mm以上、且つ、500g/30mm荷重時の伸度が10%以下であり、更に上記シート中の不織布状の繊維集合体に、その繊維配向と垂直方向の応力-ひずみ曲線の初期勾配で表される交絡係数が10?500mであることを特徴とする清掃用シート。
上記不織布状の繊維集合体の目付が40?100g/m^(2)であることを特徴とする請求項1記載の清掃用シート。」(特許請求の範囲【請求項1】、【請求項2】)

イ「【産業上の利用分野】本発明は、不織布を利用した業務用、家庭用の清掃用シートに関するものであり、より詳しくは、種々のダストの捕集を目的とした乾式清掃用シートに関するものである。」(段落【0001】)

ウ「本発明の清掃用シートは、網状シートと繊維集合体とから成り、例えば図1及び図2に示す如く、繊維ウェブを積層した状態の清掃用シート1は、その網状シート2(又は12)の片面若しくは両面に繊維ウェブ3を重ね合わせた状態とし、繊維ウェブ3が絡合して不織布状の繊維集合体3としてその構成繊維間の絡合と共に該網状シート2に対しても絡合状態で一体化される。網状シート2は図3に示す如く格子状のネットに限らず、図4(A) 乃至(C) に示すような孔を多数有する有孔フィルム12であっても良く、一定の孔を有し、繊維ウェブ3が絡合状態で一体化する担体であれば特に限定されるものではない。また図3及び図4において、上記網状シート2、12に形成された孔の形状は種々変形可能であり、有孔フィルム12等では、図4(A) に示すような丸形状であっても図4(B) に示すように星型形状であってもよく、更に図4(C) に示すように丸型と星型とを組み合わせたものであってもよい。」(段落【0008】)

エ「・・・繊維集合体としてはポリエステル繊維1.5デニール、51mmを常法のカードで目付48g/m^(2)の繊維ウエブと成るよう該網状シートの上下層に積層した後、低エネルギー条件でウォーターニードリング処理を施し・・・」(段落【0027】)

そして、図3には、記載ウに関連して、規則的に配置された多数の不連続な孔を有する格子状のネットが、また、図4(A) 乃至(C) には、規則的に配置された多数の不連続な孔を有する有孔フィルム12が示されている。

上記記載事項について検討すると、引用例には、網状シートに不織布状の繊維集合体が絡合状態で一体化されたシートであって、不織布状の繊維集合体の目付が40?100g/m^(2)である清掃用シートが記載されている(前記ア参照)。

また、記載イには、引用例に係る発明は、不織布を利用した業務用、家庭用の清掃用シートに関するものである旨の記載がある。

さらに、記載ウには、清掃用シートは、網状シート2(又は12)の片面若しくは両面に繊維ウェブ3を重ね合わせた状態とし、繊維ウェブ3を絡合して不織布状の繊維集合体3とし、繊維集合体3は、その構成繊維間の絡合と共に網状シート2に対しても絡合状態で一体化される旨の記載がある。
すなわち、引用例記載の不織布を利用した掃除シートは、繊維集合体と一体に絡合した、規則的に配置された多数の不連続な孔を有する網状シートを有する。

また、記載ウには、網状シート2は、図3に示す如く格子状のネットに限らず、図4(A) 乃至(C) に示すような孔を多数有する有孔フィルム12であっても良く、一定の孔を有し、繊維ウェブ3が絡合状態で一体化する担体であれば特に限定されるものではない旨の記載がある。

そして、図3には、記載ウに関連して、規則的に繰り返し配置された多数の不連続な孔を有する格子状のネットが、また、図4(A) 乃至(C) には、規則的に繰り返し配置された多数の不連続な孔を有する有孔フィルム12が示されている。

なお、上記記載ウに関連して、引用例に添付された、本願の優先日前である平成8年10月29日発行の「特許法第17条の2の規定による補正の掲載」には、段落【0008】の記載を補正する【手続補正4】に、網状シートとしてさらに、ガーゼ状の織布のように織り目空間の比較的大きな目の粗い織布や、繊維ウエブを重ね合わせてそれらを絡合状態で一体化し得る繊維空隙を有する不織布が例示されていることを付記する。

引用例記載の「不織布状の繊維集合体」は、例えば前記エに、繊維を常法のカードで所定の目付をもつ繊維ウエブと成るよう積層した後、低エネルギー条件でウォーターニードリング処理を施して形成する旨記載されているが、カードにより所定の目付をもつ均一なウエブとされた繊維に、ウォーターニードリング処理するにあたり、これに格別パターンを形成する旨の記載もないことから、繊維ウエブを通常のウォーターニードリング処理により、従来より周知のいわゆるスパンレース不織布と同様な、均一な不織布に形成するものといえる。

一方、引用例記載の不織布を利用した清掃用シートは、繊維集合体と一体に絡合した、規則的に配置された多数の不連続な孔を有する網状シートを有するが、網状シートの孔以外の部分(以下「シート部」という。)に対応する不織布を利用した清掃用シートの部分(以下「シート部対応部」という。)と、網状シートの孔の部分(以下「孔部」という。)に対応する不織布を利用した清掃用シートの部分(すなわち、不職布状の繊維集合体のみからなる部分、以下、「孔部対応部」という)とでは、シート部の目付に相当する分だけ、その目付に差があることは明らかである。

そこで、引用例記載の不織布を利用した清掃用シートは、連続するシート部に対応する、シート部の目付に相当する分だけ目付の大きなシート部対応部と、規則的に繰り返し配置された多数の不連続な孔部に対応する、目付が40?100g/m^(2)であって目付の小さな孔部対応部とを有しているといえる。

これら記載事項ア?エ及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。

「シート部と孔部とからなる網状シートと、目付が40?100g/m^(2)である不職布状の繊維集合体とを一体化した清掃用シートであって、連続するシート部に対応する、シート部の目付に相当する分だけ目付の大きなシート部対応部と、
前記シート部対応部で取り囲まれ、網状シートの規則的に繰り返し配置された多数の不連続な孔部に対応する、目付が40?100g/m^(2)であって目付の小さな孔部対応部とを含む、不織布を利用した清掃用シート。」

(3-2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「不織布を利用した清掃用シート」は、網状シートを含んだ実質的に不織布からなる、清掃に用いるシートであるといえる。

一方、本願補正発明の「不織掃除シート」は、不織布からなる掃除シートであるが、本願補正発明が記載された、補正後の請求項1を引用する請求項5には、「・・・スクリム材料を含む、・・・不織掃除シート。」と記載され、また、当初明細書の第16頁第4?7行には「・・・高分子網(本明細書中で「スクリム」材料とも呼ぶ。)を入れることは好ましい。」と記載されていることから、網状シート、すなわちスクリム材料を含むものを積極的に排除するものとはいえない。

したがって、引用発明の「不織布を利用した清掃用シート」は、本願補正発明の「不織掃除シート」に相当する。

また、引用発明の「目付」と本願補正発明の「坪量」とは、その用語の使用分野が布帛と紙である点で異なるが、ともにシート状物の厚みを重量で表現するための単位であって、いずれも1平方メートルあたりのグラム数で表示されるものであるので、両者は実質的に同じ単位といえる。

そして、引用発明の「網状シートの連続するシート部に対応する、シート部の目付に相当する分だけ目付の大きなシート部対応部」と、本願補正発明の「30?120g/m^(2)の坪量とした連続した高坪量領域」とは、いずれも「連続した高坪量の領域」である点で共通する。

さらに、引用発明の「前記シート部対応部で取り囲まれ、網状シートの規則的に繰り返し配置された多数の不連続な孔部に対応する、目付が40?100g/m^(2)であって目付の小さな孔部対応部」と、本願補正発明の「前記高坪量領域で取り囲まれ、規則的な反復パターンで配置され、前記高坪量領域の坪量の80%以下の坪量とした複数の分散した不連続な低坪量領域」とは、いずれも「前記高坪量の領域で取り囲まれ、規則的な反復パターンで配置された複数の分散した不連続な低坪量の領域」である点で共通する。

そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「連続した高坪量の領域と、
前記高坪量の領域で取り囲まれ、規則的な反復パターンで配置された複数の分散した不連続な低坪量の領域と
を含む不織掃除シート。」

そして、両者は次の点で相違する(対応する引用発明(引用例記載)の用語を( )内に示す)。

(相違点1)
本願補正発明は、連続した高坪量の領域が、「30?120g/m^(2)の坪量とした」高坪量領域であるのに対し、引用発明は、連続した高坪量の領域が、「網状シートのシート部の坪量(目付)に相当する分だけ坪量(目付)の大きな」高坪量領域(シート部対応部)であって、その坪量が明らかでない点。

(相違点2)
本願補正発明は、低坪量の領域が、「高坪量領域の坪量の80%以下の坪量とした」低坪量領域であるのに対し、引用発明は、低坪量の領域が、「坪量(目付)が40?100g/m^(2)であ」る低坪量領域(目付の小さな孔部対応部)であり、低坪量領域(目付の小さな孔部対応部)の坪量の高坪量領域(シート部対応部)の坪量に対する比率が不明な点。

(3-3)相違点の判断
上記相違点1,2について検討する。
引用発明の低坪量領域(目付の小さな孔部対応部)の坪量(目付)、すなわち繊維集合体の坪量(目付)は、40?100g/m^(2)であって、これは、本願補正発明の高坪量領域の坪量である30?120g/m^(2)の数値範囲の上限以内にある。

一方、引用発明にあっては、繊維集合体と一体化させる網状シートの寸法あるいは、網状シートを構成するシート部の坪量(目付)を、繊維集合体に対してどの程度にするかは、不織布を利用した清掃用シートに要求される性能、強度等を勘案して、当業者が実験により適宜設定し得た設計的事項であるといえる。
引用発明も、種々のダストの捕集を目的とするものである(前記「(3-1)イ」)ことから、その設定にあたり、高坪量領域(シート部対応部)の坪量となる、繊維集合体の坪量(目付)とシート部の坪量(目付)との合算値を120g/m^(2)以下とし、また、低坪量領域(目付の小さな孔部対応部)の坪量となる繊維集合体の坪量(目付)を、この合算値の80%以下として、相違点1,2に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、当業者であれば通常の創作能力を用いて、適宜なし得たことであるといえる。

さらに、相違点に係る「30?120g/m^(2)の坪量」、「高坪量領域の坪量の80%以下の坪量」という数値限定による本願補正発明の作用効果について検討しても、これらによる格別な臨界効果を見いだすこともできないことから、かかる数値限定自体に進歩性を認めることもできない。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(3-4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という)は、平成18年9月7日付けの手続補正書により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「30?120g/m^(2)の坪量とした連続した高坪量領域と、
前記高坪量領域で取り囲まれ、規則的な反復パターンで配置され、前記高坪量領域の坪量の80%以下の坪量とした複数の分散した不連続な低坪量領域と
を含む掃除シート。」

4.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記2.(3-1)に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、前記2.(1)の本願補正発明から、「掃除シート」の限定事項である「不織」との構成を省いたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(3-3)に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項にかかる発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-28 
結審通知日 2009-06-02 
審決日 2009-06-15 
出願番号 特願平10-550607
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A47L)
P 1 8・ 121- Z (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長馬 望栗山 卓也  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 渋谷 知子
長崎 洋一
発明の名称 掃除シートとして有用な構造体  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 古川 秀利  
代理人 梶並 順  
代理人 曾我 道治  

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