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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01D |
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管理番号 | 1206210 |
審判番号 | 不服2006-14019 |
総通号数 | 120 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-07-03 |
確定日 | 2009-10-26 |
事件の表示 | 特願2000-102894「内面溝付きタービン壁」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月21日出願公開、特開2000-320304〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯、本願発明 本願は、平成12年4月5日(パリ条約による優先権主張1999年4月6日、米国)を出願日とする出願であって、平成17年5月30日付けで拒絶理由が通知され、平成17年7月26日付けで手続補正がなされると共に意見書が提出され、平成18年3月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年7月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成18年7月28日付けで審判請求書の請求の理由について手続補正がなされたものであり、その請求項1ないし19に係る発明は、上記平成17年7月26日付け手続補正により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「燃焼ガス20に面する外面30と、インピンジメント空気により冷却される反対側内面40と、この内面における複数の隣合うリッジ44と溝46とからなり、 熱伝達冷却を増すために、前記リッジの高さCが冷却空気の境界層厚さDを超えるように定められるタービン壁28。」 第2.引用文献記載の発明 (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表平9-507549号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面と共に、次の事項が記載されている。 ア.「【特許請求の範囲】 1.ガスタービンの第一段中空エアフォイルであって、 エアフォイル形状の外面と内面とをそれぞれ有するエアフォイル壁面と、 前記エアフォイル内に設けられて前記エアフォイル壁面の内面から離間されている中空のチューブであって、このチューブと前記内面との間にフローチャンバが形成されるチューブと、 前記中空のチューブを通じて冷却エアーを供給するエアー供給手段と、 前記エアフォイルの後端に位置して前記フローチャンバと流体的に連通しているエアー出口と、 前記内面上に設けられた複数の伸長した表面突出部と、 前記突出部の少なくともいくつかと対応して前記中空のチューブ内に設けられた複数のフロー開口部と、 を有することを特徴とするエアフォイル。」(特許請求の範囲請求項1) イ.「技術分野 本発明は、実質的な空冷が要求されるガスタービンのファーストステージエアフォイル即ち第一段エアフォイルに関し、特に、衝突冷却(インピンジメント冷却)配列に関する。」(第4ページ第3行?第6行) ウ.「発明の背景 高効率ガスタービンエンジンにおいては、タービンに供給されるガスの温度が高温であることが要求される。従って、第一段のベーンやブレードは、それらの設計最高温度に近い温度で動作することになる。 これらのベーン及びブレードは、寿命を長くするために、冷却が必要とされる。そのための一般的な方法としては、ベーンやブレードのエアフォイル等の冷却するためにこれらの構造の内部に供給されている、圧縮機からの高圧エアーを活用することである。 この冷却エアーを表面冷却に用いるための方法がいくつか知られている。上記エアーがブレードの外側フィルムに沿って流れるように制御したうえで上記外表面からエアーを流出させることで、上記外表面のフィルム冷却を行うことができる。内面の対流冷却また用いられ、熱交換効率を工場するために、場合によってはトリップス トリップが設けられる。衝突冷却は、冷却されるエアフォイルの内部表面に対して、高速の流れを実質的に垂直に向けることでもなされる。 日本国の特開昭58-197402号公報においては、エアーは、突出部間に位置したブレードの内部表面に衝突する。これらの突出部は、上記ブレードの壁面の内表面から、エアー通路の全高にわたって延びている。」(第4ページ第7行?第24行。なお、本文の下線部「工場する」は、「向上する」の誤記と解される。) エ.「発明の開示 エアフォイル内において、エアフォイルの壁面の内表面から離間して、中空のチューブが設けられる。これは、チューブと内表面との間にフローチャンバ(流通室)を形成する。エアー出口は、上記フローチャンバと流体的に連通しているエアフォイルの後端に位置している。上記中空のチューブ内に設けられた複数のフロー開口部によって、チューブの中心部に供給された冷却エアーは、これらの開口部を通過し、エアフォイルの内部表面に対して衝突し、その後にエアー出口を通過して外部へと流れ出る。複数の表面突出部、または伸長した表面突出部が内部表面に設けられており、フロー開口部は、少なくともこれら突出部のいくつかと対応して設けられる。 内部通路の伸長した表面は、インピンジメント冷却即ち衝突冷却に対して有効な表面積を増加させる。内部表面積の増加により、通路壁からの熱交換効率が工場する。熱交換と表面積との関係は、熱交換式Q=H×A×デルタTによって示される。ここで、Qは交換された熱、Hは熱交換効率、Aは表面積、デルタTは壁面とエアー との温度差を示す。上記熱交換式から、表面積(A)は、壁面からの熱交換(Q)が増加するにつれて増加することが示される。 伸長された表面による利点は、上記伸長した表面がトリップストリップの形態をとるときは、エアーの衝突する部位から離れた位置においても生じる。これらの位置では、トリップストリップがフローチャンネル内で乱流を促進し、従って熱交換が促進される。」(第4ページ第25行?第5ページ第17行。なお、本文の下線部「工場する」は、「向上する」の誤記と解される。) オ.「図面の簡単な説明 図1は、冷却されたエアフォイルの断面図である。 図2は、トリップストリップを覆う衝突開口部を示す2-2断面図である。 図3は、ローカルトリップストリップに対する開口部の関係を示す3-3断面図である。 図4は、先細すなわちテーパ状のエアフォイルチャンバを示す4-4断面図である。」(第5ページ第18行?第24行) カ.「発明の最適実施形態 図1に、壁面12と内表面14とを有するエアフォイル10を示す。中空のチューブ16は、このエアフォイル内に配置され、エアフォイルの内面からは離間されている。 これにより、エアー室18が中空のチューブとエアフォイル表面の内面との間に形成される。エアー出口20は、エアフォイルの後端22に配置されており、このエアー出口は、エアー室18と流体的に連通している。 圧縮機の吐出口からエアーを受けるエアフォイルの一端には、エアー供給手段24が設けられ、エアフォイルに冷却エアーを供給する。チューブ壁面26は、その内部を冷却エアーが流通する複数の開口部28を有する。この冷却エアーは、エアフォイルの内表面14に対して衝突する。 複数の伸長された表面突出部30は、内表面14上に位置し、チューブ壁面26を貫通する開口部28は、少なくとも上記突出部のいくつかと対応している。 上記開口部を流通する流体29は、矢線32に示されるように、出口20に向かって流れる。 上記突出部は、フローチャンバ18内に延びてこのチャンバの高さよりも短く、流体の流通を可能としている。これらの突出部は、セグメント化されており、エアー出口への方向に対して約45°の角度をなしている。これらの突出部の主な機能は、衝突フロー領域における熱交換面を増加させることである。第二の機能は、この開口部間の領域において、交差する流れが存在することによって、乱流及び熱交換を向上することである。 図3に示されるように、突出部30は、表面14上における実質的に半円柱の隆起部となっている。上記特別な領域である突出部では、表面積が50?60%増加している。突出部が設けられている領域全体では、表面積が15%増加している。」(第5ページ第25行?第6ページ第21行) (2)ここで、上記記載事項(1)ア.ないしカ.及び図面から、引用文献に記載されたものについて、次のことが分かる。 上記ア.ないしウ.の記載から、引用文献に記載されたものは、ガスタービンエンジンのベーンやブレードのエアフォイル等を冷却するために、圧縮機からの高圧エアーをエアフォイルの内部表面に対して、高速の流れを垂直に向けることにより、衝突冷却を行うものであることが分かる。 上記エ.ないしカ.の記載及び図面から、引用文献に記載されたものにおいて、圧縮機の吐出口から供給されたエアーは、中空のチューブ16に供給され、チューブ壁面に形成された複数の開口部28から、エアフォイル10の内表面14に対して衝突し、内表面14上には、複数の伸長された表面突出部30が形成されていて、衝突フロー領域における熱交換面を増加させていることが分かる。 上記エ.ないしカ.の記載及び図面から、引用文献に記載されたものにおいて、複数の伸長された表面突出部30の間の表面は、溝を形成していることが分かる。 (3)引用文献記載の発明 上記記載事項(1)、(2)より、引用文献には次の発明が記載されていると認められる。 「ガスに面する外表面と、衝突する冷却エアーにより冷却される内表面14と、この内表面14における複数の伸長された表面突出部30と、複数の伸長された表面突出部30の間の表面とからなるエアフォイル。」(以下、「引用文献記載の発明」という。) 第3.本願発明と引用文献記載の発明との対比 本願発明と引用文献記載の発明を対比すると、引用文献記載の発明における「ガス」、「外表面」、「インピンジメント空気」、「内表面14」、「複数の伸長された表面突出部30と、複数の伸長された表面突出部30の間の表面」及び「エアフォイルの壁面」は、その機能及び作用からみて、本願発明における「燃焼ガス」、「外面」、「衝突する冷却エアー」、「反対側内面」、「複数の隣合うリッジと溝」及び「タービン壁」にそれぞれ相当する。 そうすると、本願発明と引用文献記載の発明とは、 「燃焼ガスに面する外面と、インピンジメント空気により冷却される反対側内面と、この内面における複数の隣り合うリッジと溝とからなるタービン壁。」で一致し、次の点において相違している。 <相違点> 「リッジの高さ」に関して、本願発明においては、「熱伝達冷却を増すために、前記リッジの高さCが冷却空気の境界層厚さDを超えるように定められる」のに対し、引用文献記載の発明においては、その点が明らかでない点。 第4.当審の判断 上記<相違点>について検討する。 ガスタービンの技術分野において、熱伝達冷却を増すために、「リッジ(隆起部)の高さ」を、「冷却空気の境界層厚さを超えるように定める」点は、従来周知の技術(例えば、特開平9-195703号公報の段落【0004】、特開平10-274001号公報の段落【0003】、特開平10-274002号公報の段落【0004】参照。以下、「周知技術」という。)にすぎない。 したがって、上記引用文献記載の発明における「リッジ(隆起部)の高さ」として、上記周知技術を考慮して、上記<相違点>に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜に選択・採用する程度のことにすぎない。 なお、本願発明を全体として検討しても、引用文献記載の発明及び上記周知技術から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。 第5.むすび したがって、本願発明は、引用文献記載の発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-05-22 |
結審通知日 | 2008-05-27 |
審決日 | 2008-06-09 |
出願番号 | 特願2000-102894(P2000-102894) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F01D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤原 直欣 |
特許庁審判長 |
早野 公惠 |
特許庁審判官 |
金澤 俊郎 石井 孝明 |
発明の名称 | 内面溝付きタービン壁 |
代理人 | 松本 研一 |
代理人 | 荒川 聡志 |
代理人 | 小倉 博 |
代理人 | 黒川 俊久 |