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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D04H
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D04H
管理番号 1206354
審判番号 不服2005-11198  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-15 
確定日 2009-10-30 
事件の表示 特願2001- 56059「不織布及びその製法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月16日出願公開、特開2001-316962〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下「本願」という。)は、平成10年4月9日に出願された特願平10-135881号(平成14年法律第24号の改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる改正前(以下「平成14年改正前」という。)の特許法第41条第1項の規定による優先権の主張:平成9年4月9日 特願平9-126202号)(以下、「原出願」という。)の一部を、平成13年2月28日に平成14年法改正前の特許法第44条第1項の規定に基づいて分割して新たな特許出願(平成14年法改正前の特許法第41条第1項の規定による優先権の主張 特願平9-126202号 平成9年4月9日)としたものであって、以降の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成17年 2月10日付け 拒絶理由通知
平成17年 4月25日 意見書・手続補正書
平成17年 5月11日付け 拒絶査定
平成17年 6月15日 本件審判請求
平成17年 7月15日 手続補正書
平成17年 9月 8日 手続補正書(審判請求理由補充書)
平成17年10月 5日付け 前置報告
平成19年 9月 4日付け 審尋
平成19年11月12日 回答書
平成20年 7月31日付け 補正の却下の決定・拒絶理由通知
平成20年10月 6日 手続補正書(2通)
平成20年10月10日 意見書
(なお、平成17年7月15日付けの手続補正は、平成20年7月31日付けの補正の却下の決定をもって却下された。)

第2 当審が通知した拒絶理由
当審が通知した平成20年7月31日付けの拒絶理由通知は、概略以下の理由を含むものである。
「第4 特許法第44条第1項に規定する要件について
この出願と原出願(特願平10-135881号)との関係について、平成14年法律第24号による改正前の特許法第44条第1項に規定する要件(以下、単に「分割要件」という。)を満たしているか否かを検討する。
・・(中略)・・
(3) 小括
上記(1)及び(2)のとおり、本願発明1?本願発明5は、原出願当初明細書等に記載されていない態様を含むもので、分割要件を満たしていない。

3 まとめ
本願発明1及び本願発明2は、原出願当初明細書等に記載されていない態様1-2及び態様4-2を含むものであるから、原出願当初明細書等に記載した事項の範囲内でなく、分割要件を満たしておらず、この出願について出願日の遡及は認められないものである。

第5 拒絶の理由
・・(中略)・・
2 拒絶の理由2
この出願は、明細書の特許請求の範囲の記載が下記(1)の点で、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」との要件に適合しないから、平成14年法律第24号による改正前の特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1) この出願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、(請求項の記載と整合させた段落があり、また、同じ記載を繰り返した部分も存在するものの)実質的に、原出願の明細書の発明の詳細な説明の記載と同じものということができる。
そして、上記「第4」で記載したとおり、本願発明1?本願発明5は、原出願当初明細書等に記載した事項の範囲内でなく、分割要件を満たしていないのであるから、原出願の明細書の発明の詳細な説明の記載と実質的に同じものであるこの出願の明細書の発明の詳細な説明に、本願発明1?本願発明5が記載されていないことは明らかである。
そうすると、この出願の請求項1?請求項5の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するということはできない。

・・(中略)・・

4 拒絶の理由4
この出願は、上記第4で述べたとおり分割要件を満たさない出願であるから、この出願について出願日の遡及は認められず、そうすると、この出願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物A?Mに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・・(中略)・・
(1) 刊行物
刊行物A:特開平11-1896号公報
刊行物B:特開昭55-98998号公報
刊行物C:特開平9-72072号公報
刊行物D:特開平8-333271号公報
刊行物E:登録実用新案第3032802号公報
刊行物F:特開平3-29623号公報
刊行物G:特開昭62-275466号公報
刊行物H:日本繊維機械学会不織布研究会編,不織布の基礎と応用,平成5年8月25日,社団法人日本繊維機械学会発行, 11,19?23,83,96?97,189?191,331?333及び375ページ
刊行物I:特開平7-143940号公報
刊行物J:特開平5-211838号公報
刊行物K:機能材料1997年1月号 43ページ?49ページ」

第3 本願に係る発明
本願に係る発明は、平成17年4月25日及び平成20年10月6日(2通)の各日付けでした各手続補正により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3に記載された事項により特定される下記のとおりのものである(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)。
「【請求項1】 ウーロン茶、緑茶若しくは紅茶の茶殻又はこれら二種以上の茶殻を常温又は常温より高い温度の水で抽出して製造された茶殻抽出液の乾燥物を含むプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布であることを特徴とする不織布。
【請求項2】 不織布が衛生シーツに使用されるものであることを特徴とする請求項1に記載の不織布。
【請求項3】 不織布に、ウーロン茶、緑茶若しくは紅茶の茶殻又はこれら二種以上の茶殻を、常温又は常温より高い温度の水で抽出して製造された茶殻抽出液を、プラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布に噴霧し、乾燥することを特徴とする不織布の製造方法。」

第4 当審の判断
平成20年10月6日付けの手続補正により補正された本願の願書に添付した明細書(以下「本願明細書」という。)の記載に基づき、上記第2に示した理由について再度検討する。

1.特許法第44条第1項に規定する要件について
本願と原出願(特願平10-135881号)との関係について、分割要件を満たしているか否かをまず再度検討するが、分割要件の検討にあたっては、分割された出願に係る発明が、原出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「原出願当初明細書等」という。)に記載したもので、さらに分割の直前の原出願の願書に添付した明細書又は図面に記載したものであることを要するところ、事案にかんがみ、まず、本願に係る上記各発明が、原出願当初明細書等に記載したものか否かにつき検討する。

(1)原出願当初明細書等の記載
原出願当初明細書等には、以下の記載がある。
<原-1>
「【請求項1】 一種以上の茶殻抽出液の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項2】 一種以上の茶殻抽出液の乾燥物及び吸水性樹脂を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項3】 一種以上の茶殻抽出液の乾燥物と、並びに吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物とを含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項4】 吸水性の紙層部と、前記吸水性の紙層部の面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部とを備えており、前記吸水性の紙層部又は前記吸水性混合層部、或いは、前記吸水性の紙層部並びに前記吸水性混合層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項5】 上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の紙層部と、前記紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部を備えており、前記不透水性膜部は、前記吸水性混合層部の下方に位置して配置されており、前記紙層部又は前記吸水性混合層部、或いは、前記紙層部及び前記吸水性混合層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項6】 上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、該第一紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部と、該吸水性混合層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、前記第二紙層部の下方に位置して配置され、前記第一紙層部、前記吸水性混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項7】 上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、前記第一紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部と、該吸水性混合層部の下面に接して位置する吸水性材料粉層部と、該吸水性材料粉層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、該第二紙層部の下方に位置して配置され、前記第一紙層部、前記吸水性混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項8】 一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項9】 一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物及び吸水性樹脂を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項10】 一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殼の乾燥物、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項11】 吸水性の紙層部と、前記吸水性の紙層部の面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部を備えており、前記吸水性の紙層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殼の乾燥物を含むことを特徴とする衛生シーツ。
【請求項12】 上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の紙層部と、前記紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部を備えており、前記不透水性膜部は、前記吸水性混合層部の下方に位置して配置されており、前記紙層部又は前記吸水性混合層部、或いは前記紙層部及び前記吸水性混合層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項13】 上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、該第一紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部と、該吸水性混合層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、前記第二紙層部の下方に位置して配置されており、前記第一紙層部、前記吸水性混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を含むことを特徴とする衛生シーツ。
【請求項14】 上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、前記第一紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部と、該吸水性混合層部の下面に接して位置する吸水性材料粉層部と、該吸水性材料粉層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、該第二紙層部の下方に位置して配置されており、前記第一紙層部、前記吸水性混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を含むことを特徴とする衛生シーツ。
【請求項15】 吸水性材料粉が、木材パルプの粉砕物、古紙パルプの粉砕物、木粉、紙粉、ラミネート加工紙の粉砕物、並びにおむつ、紙おむつ又は動物の紙おむつの廃材粉砕物、生理用ナプキン廃材粉砕物、チタン紙及びパンチ屑などの屑紙の粉砕物並びに生理用ナプキン廃材の粉砕物であることを特徴とする請求項3乃至7及び請求項10乃至14の何れか一項に記載の衛生シーツ。
【請求項16】 吸水性樹脂が、一以上の吸水性樹脂又は一以上の吸水性繊維或いはこれらの混合物、或いは一以上の吸水性樹脂廃材粉又は一以上の吸水性繊維廃材粉或いはこれらの混合物であることを特徴とする請求項2乃至7及び請求項9乃至14の何れか一項に記載の衛生シーツ。
【請求項17】 吸水性材料粉及び吸水性樹脂の配合物が、紙おむつ若しくは動物の紙おむつの廃材粉砕物、動物用シーツ廃材粉砕物、或いは乳パッド廃材、失禁パッド廃材、汗パッド廃材又は生理用ナプキン廃材の粉砕物或いはこれらの二以上の粉砕物の混合物であることを特徴とする請求項3乃至7及び請求項10乃至14の何れか一項に記載の衛生シーツ。
【請求項18】 多孔層部がプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布で形成されていることを特徴とする請求項5乃至7及び請求項12乃至14の何れか一項に記載の衛生シーツ。
【請求項19】 第一の紙層部の上に、吸水性材料粉及び吸水性樹脂粉の混合物又は吸水性繊維を載せ、その上に第二の紙層部を配置して、積層物を形成し、この積層物を加圧して一体に形成し、この一体に形成された積層物をプラスチック製の不透水性膜部材の上に載せ、第一の紙層部の上に、透水性の多孔層部材を載せ、この積層物を加圧して一体に形成することを特徴とする衛生シーツの製造方法。」(【特許請求の範囲】)
<原-2>
「【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、紙おむつ廃材、生理用ナプキン廃材等の有機物廃材を利用した衛生シーツに関し、特に、寝具用シーツ、マスク、アイマスク、トイレットペーパー、ティッシュ、弁座シート、座席用ヘッドカバー、枕カバー、おむつ、紙おむつ及び動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド及び動物用シーツに使用できる衛生シーツに関する。また、本発明は、長時間使用して衛生状態を保持することができる使い捨ての衛生シーツに関し、特に、特に、寝具用シーツ、マスク、アイマスク、トイレットペーパー、ティッシュ、弁座シート、座席用ヘッドカバー、枕カバー、おむつ、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド及び動物用シーツに使用できる使い捨ての衛生シーツに関する。」(【0001】)
<原-3>
「【従来の技術】一般に、衛生用シーツは、寝具用シーツ、紙おむつ、生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド、おむつ及びペット用シーツなどに使用されている。例えば、寝具用シーツは、ベッドや敷布団の上に敷いて、ベッドや布団の耐久性を保ち、ベッドや布団を清潔に維持するために用いられている。就寝中にも、人間の皮膚からは、汗以外に水分が絶えず外に排泄されており、これらの水分は、寝床や寝衣に吸い取られるので、例えば、寝具用シーツには、保温性及び適度の吸湿性を備えることが要求される。
また、寝具用シーツや寝具は、吸湿性や吸水性の高い繊維で形成されるので、皮膚表面から脱落した角化した角質層や皮膚に付着した塵に皮膚の皮脂や汗などによる垢などが付着して、汚染され易く、病原菌が増殖することとなり、特に、蓐瘡等の場合に問題である。そこで、寝具用シーツや寝具については、常に清潔さを保つために、常に清浄さが保てるように、頻繁に取り替えて、繰り返し使用できるように、洗濯に強い木綿等が素材として使用されている。」(【0002】?【0003】)
<原-4>
「【発明が解決しようとする課題】しかし、木綿製等の寝具用シーツの場合、取り替える度毎に、洗濯されるが、比較的嵩ばるのと、汚れの程度が相違し、また洗濯により清浄にできる程度も相違するので、自動洗濯機等によるとしても、希望するように清潔にすることは難しく、またそのようにするには多くの手間を要して問題である。そこで、パルプ粉砕物に粉状の高吸水性樹脂を含有保持させた吸水層を設けた使い捨ての寝具用シーツが使用されている。しかし、パルプ粉砕物が、従前に比して入手困難であり、比較的高価であるために、使い捨ての寝具用シーツは、パルプ粉砕物の使用量を減らし、このパルプ粉砕物の減った分の吸水能を高吸水性樹脂で補って形成されている。そのために、寝具用シーツは、比較的薄く形成されることとなり、弾力性に乏しく、比較的堅いものとなり、問題とされている。また、パルプ粉砕物を補うために加えられた高吸水性樹脂の発熱量は、減らしたパルプ粉砕物の発熱量に比してかなり低いために、使用後で濡れたシーツなどの場合には、燃料を加えないと燃焼が維持できなくなり、外部から熱を与えなければ焼却できなくなり問題である。
一方、缶入りのお茶及びパック入りのお茶の製造業から排出される、お茶の浸出滓の茶殻、及び該茶殻に残留して茶殻から滲出する茶殻残留廃液は膨大な量に上っている。しかし、茶殻はかなりの量の茶殻残留液を含むために、堆肥等に有効利用するにも、その処理が難しく、問題とされている。しかも、茶殻残留廃液には、タンニン類が含まれているために、その侭廃棄できず、廃棄するには、活性汚泥法等により無害化処理をしなければならず、またその沈殿物は専ら焼却処理しなければならず問題とされている。本発明は、従来の寝具用シーツ等の再使用の際に多くの手間を要する問題点を解決すると共に、缶入りのお茶及びパック入りのお茶の製造工程で発生する茶殻及び茶殼残留廃液の処理を目的としている。」(【0004】?【0005】)
<原-5>
「【課題を解決するための手段】本発明者は、ウーロン茶を抽出した茶殻について水又は湯により浸出した茶殻抽出液が、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、レジオネラ菌及び連鎖球菌の増殖を24時間以上に亙って阻害することを発見し、また緑茶を抽出した茶殻について水又は湯により浸出した茶殻抽出液が、黄色ブドウ球菌、レジオネラ菌及び連鎖球菌の増殖を24時間に亙って阻害することを発見し、さらに紅茶を抽出した茶殻について水または湯により浸出した茶殼抽出液が、黄色ブドウ球菌及び連鎖球菌の増殖を24時間に亙って阻害することを発見して本発明に至った。本発明は、一種以上の茶殻抽出液、即ち一種以上の茶殻残留廃液を含む茶殻の浸出液、又は前記一種以上の茶殻を常温水又は常温より高い温度の加熱水により浸出した茶殻抽出液、この再浸出された茶殻の混合物を、吸水性の紙層部、吸水性材料粉と吸水性樹脂の混合層部、或いは吸水性の紙層部と前記混合層に含浸保持させて乾燥して得られる衛生的に優れた衛生シーツを提供するものであり、また、一種以上の茶殻抽出液、茶殻残留廃液及び茶殻を活用できる、安価な使い捨て衛生シーツを提供することを目的としている。」(【0006】)
<原-6>
「即ち、本発明は、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツにあり、また、本発明は、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物及び吸水性樹脂を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツにあり、さらに、本発明は、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物と、並びに吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物とを含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツにあり、さらにまた、本発明は、吸水性の紙層部と、前記吸水性の紙層部の面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部とを備えており、前記吸水性の紙層部又は前記吸水性混合層部、或いは、前記吸水性の紙層部並びに前記吸水性混合層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツにある。
さらに、本発明は、上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の紙層部と、前記紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部を備えており、前記不透水性膜部は、前記吸水性混合層部の下方に位置して配置されており、前記紙層部又は前記吸水性混合層部、或いは、前記紙層部及び前記吸水性混合層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツにあり、また、本発明は、上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、該第一紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部と、該吸水性混合層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、前記第二紙層部の下方に位置して配置され、前記第一紙層部、前記吸水性混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツにあり、さらにまた、本発明は、上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、前記第一紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部と、該吸水性混合層部の下面に接して位置する吸水性材料粉層部と、該吸水性材料粉層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、該第二紙層部の下方に位置して配置され、前記第一紙層部、前記吸水性混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツにある。
さらに、本発明は、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツにあり、また、本発明は、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、茶殼についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物及び吸水性樹脂を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツにあり、さらに、本発明は、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツにあり、さらにまた、本発明は、吸水性の紙層部と、前記吸水性の紙層部の面に接して位置する吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部を備えており、前記吸水性の紙層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を含むことを特徴とする衛生シーツにある。
さらに加えて、本発明は、上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の紙層部と、前記紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部を備えており、前記不透水性膜部は、前記吸水性混合層部の下方に位置して配置されており、前記紙層部又は前記吸水性混合層部、或いは前記紙層部及び前記吸水性混合層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツにあり、また、本発明は、上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、該第一紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部と、該吸水性混合層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、前記第二紙層部の下方に位置して配置されており、前記第一紙層部、前記吸水性混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を含むことを特徴とする衛生シーツにあり、さらにまた、上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、前記第一紙層部の下面に接して位置する、吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む吸水性混合層部と、該吸水性混合層部の下面に接して位置する吸水性材料粉層部と、該吸水性材料粉層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、該第二紙層部の下方に位置して配置されており、前記第一紙層部、前記吸水性混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を含むことを特徴とする衛生シーツにある。さらに加えて、本発明は、第一の紙層部の上に、吸水性材料粉及び吸水性樹脂粉の配合物又は吸水性繊維を載せ、その上に第二の紙層部を配置して、積層物を形成し、この積層物を加圧して一体に形成し、この一体に形成された積層物をプラスチック製の不透水性膜部材の上に載せ、第一の紙層部の上に、透水性の多孔層部材を載せ、この積層物を加圧して一体に形成することを特徴とする衛生シーツの製造方法にある。」(【0007】?【0010】)
<原-7>
「【発明の実施の形態】本発明の衛生シーツは、寝具用シーツ、マスク、アイマスク、トイレットペーパー、ティッシュ、弁座シート、座席用ヘッドカバー、枕カバー、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド及び動物用シーツに使用でき、長時間に亙って良好な衛生状態を保持することができるものである。本発明において、衛生シーツは、寝具用シーツ、マスク、アイマスク、トイレットペーパー、ティッシュ、弁座シート、座席用ヘッドカバー、枕カバーに使用できる衛生シーツであり、有機物廃材を原料として、安価に製造することができ、使い捨て用素材に適している。さらにまた、本発明の衛生シーツは、透水性の多孔層部と、プラスチック製の不透水性膜部の間に配置できるように形成して、寝具用シーツ、使い捨て用のおむつ、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド及び動物用シーツとすることができる。本発明において、動物用シーツは、従来の動物用シーツと同様に、排泄用として使用されるものであるが、その他に、休養及び就寝用として使用されるものである。」【0011】
<原-8>
「本発明において、寝具用シーツ、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド及び動物用シーツとする場合には、その上面は、多孔層部、例えばポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、ビニロン樹脂等のプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布層部又はポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂等のプラスチック製の多孔膜で形成することができ、下面の不透水性膜部は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のプラスチック製の不透水性膜で形成することができる。本発明において、前記多孔層部の下には、その下面に接して第一の吸水性の紙層部を設けることができる。」(【0012】)
<原-9>
「本発明において、紙粉は、粉状の紙又は吸水性樹脂を含む粉状の紙であり、例えば、製本時に発生する紙粉、不織布製造時に発生する紙粉、製紙工程において発生する紙粉、及び集塵ロスの紙粉、並びに紙おむつ、生理用ナプキン、ショルダーパッド、バストパッド、ヒップパッド、失禁パッド、乳パッド又は汗パッド等のパッド類及び衛生材料製造時に発生する高吸水性樹脂を含む紙粉を意味する。木材パルプに、木粉及びパンチ屑の粉砕物を加える場合には、木粉及びパンチ屑の粉砕物の量は、木材パルプの3?20重量%以下、好ましくは3?10重量%以下である。また、本発明においては、前記混合層部の下面に接して吸水性材料層部を設けることができ、さらに該木材パルプ層部の下面に接して第二の吸水性の紙層部を設けることができる。」(【0016】)
<原-10>
「【実施例】以下、本発明の実施の態様の例を説明するが、本発明は、以下の説明及び例示によって何等制限されるものではない。図1は、本発明の一実施例の動物用シーツの説明図である。図2は本発明の別の一実施例の動物用シーツの説明図である。図3は、本発明の動物用シーツを製造する工程を示す概略の工程図である。図1乃至図3において対応する箇所には同一の符号が付されている。
図1において、動物用シーツ1は、ポリエチレンフィルム2(3重量部)の上に高吸水性ポリマーシート3(17.6重量部)が配置され、その上にウーロン茶製造時に発生する茶殻を水で抽出した茶殻抽出液の乾燥物を含有する吸水紙4(4.7重量部)が配置され、その上を、ポリプロピレン不織布5(2.2重量部)で覆い、該ポリプロピレン不織布5の端部は、最下層の前記ポレエチレンフィルム2の端部とホットメルト接着剤を介してホットメルト接着されている。
図2において、動物用シーツ1は、ポリエチレンフィルム2(3重量部)の上に吸水紙4(2.1重量部)が配置され、その上に綿状パルプ6(16.9重量部)が配置され、その上に、高吸水性樹脂7(3重量部)が配置され、その上にウーロン茶製造時に発生する茶殻を水で抽出した茶殻抽出液の乾燥物及び紅茶茶製造時に発生する茶殻を水で抽出した茶殻抽出液の乾燥物を含む印刷インキが印刷されている吸水紙4(4.7重量部)が配置され、その上を、ポリプロピレン不織布5(2.2重量部)で覆い、ポリプロピレン不織布5の端部は、最下層のポレエチレンフィルム2の端部とホットメルト接着剤を介してホットメルト接着されている。
図1及び図2に示す実施例においては、一種又は二種以上の茶殻抽出液の乾燥物を含有させた吸水紙を使用する事例を示したが、一種又は二種の茶殻抽出液の乾燥物に同種又は他種類の茶殻の乾燥物をも含有する吸水紙を使用することもできる。この場合は、一種以上の茶殻抽出液の抽出液と一種以上の茶殻の混合物を、吸水紙に噴霧等により含浸させて、乾燥させて製造することができる。図1及び図2に示す実施例においては、緑茶の茶殻抽出液としては、含水率60乃至65%の緑茶の茶殻200gに水500mlを加えて10分間抽出して得られた緑茶茶殻抽出液を使用し、ウーロン茶の茶殻抽出液としては、含水率60乃至65%のウーロン茶の茶殻140gに水350mlを加えて10分間抽出して得られたウーロン茶殻抽出液を使用し、紅茶の茶殻抽出液としては、含水率60乃至65%の紅茶の茶殻210gに水525mlを加えて10分間抽して得られた紅茶茶殼抽出液を使用した。
これらの茶殻抽出液は、セルロース系素材で接着剤及び油剤が使用されていない不織布に噴霧された。各茶殻抽出液の噴霧の量は、前記不織布について、一辺の長さが100cmの正方形に切り出して測定された。測定結果を次の表1に示す。


」(【0026】?【0030】)
<原-11>
「図3において、吸水紙4のロール8は、吸水紙送り出しローラ9により引き出されて、綿状パルプ6の供給ローラ10に送られて、粉砕機11で粉砕された綿状パルプ6が供給される。綿状パルプ6が供給された吸水紙4は、吸水紙4上の綿状パルプ6の量が一定となるように調整されている。一種以上の茶殻抽出液(茶殻の再浸出液)は、噴霧箇所12に送られて、一種以上の茶殻抽出液を噴霧器13から噴霧される。本例においては、このようにして、一種以上の茶殻抽出液の再抽出液が、吸水紙4上の一定量の綿状パルプに噴霧される。一種以上の茶殻抽出液の再抽出液が噴霧された吸水紙4は、高吸水性樹脂7の散布箇所14に送られる。高吸水性樹脂7の散布箇所14に送られた一種以上の茶殻抽出液が噴霧された吸水紙4には、高吸水性樹脂7が高吸水性樹脂散布機15から散布される。高吸水性樹脂7が散布された吸水紙4は、上側吸水紙4の供給箇所16に送られて、吸水紙4のロール8から上方に吸水紙4が載せられる。上下に吸水紙4が配置された積層帯状物17は、エンボス機18に送られてエンボスが形成される。エンボスが形成された積層帯状物は17は、マットカッター19に送られて、長さ450mmの積層物に切断される。切断された積層物の下方には、下方からポリエチレンフィルム2がポリエチレンフィルム2のロール20から供給され、積層物はポリエチレンフィルム2の上に載せられて、ポリプロピレン不織布5を被せる箇所21に送られる。
ポリプロピレン不織布5は、ポリプロピレン不織布5のロール22から送られ、途中ホットメルト接着剤が噴霧器23から噴霧される。ホットメルト接着剤が噴霧されたポリプロピレン不織布5は、積層物上に載せられる。ポリプロピレン不織布が載せられた積層物は、サイドシール機24に送られて、両側部は、圧着されて、ホットメルト接着剤により接着される。両側部が接着された積層物は、エンドシール機25に送られて長手方向両端部が接着され、製品カッター26に送られ、所定の寸法に切断され製品として送られる。製品カッター26で切断された製品は、折り機によって折られ包装機により包装されて出荷される。
本例においては、動物用シーツを例に説明したが、他の衛生シーツの場合は、紙漉機等により、紙層部が形成されて乾燥工程に移行する段階で、茶殻抽出液、例えばウーロン茶の茶殻抽出液が噴霧されて含浸される。茶殻抽出液が含浸された紙層部は、乾燥機内で高温で乾燥され、消毒されて衛生シーツとして提供される。この場合、茶殻抽出液に、複数種の茶殻抽出液を混合した混合抽出液を含浸させて乾燥することができる。このように各種の抽出液を混合することにより、より強力な微生物の増殖の抑制作用を発揮させることができる。」(【0031】?【0033】)
<原-12>
「【発明の効果】本発明において、衛生シーツは、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えているので、従来のシーツに比して、缶入り及びパック入りのウーロン茶、緑茶、紅茶の製造時に発生する、例えば茶殻残留廃液を含む茶殻についての抽出液の乾燥物の作用により、汗等の臭いが抑制され、発汗による湿り、及び細菌の増殖を抑えることができ、長時間に亙って、衛生的な状態を保つことができる。缶入り及びパック入りのウーロン茶、緑茶、紅茶の製造時に発生する、例えば茶殻残留廃液を含む茶殻を有効に活用することができる。
また、本発明においては、上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、該第一紙層部の下面に接して位置する吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む混合層部と、該混合層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、前記第二紙層部の下方に位置して配置されており、前記第一紙層部、前記混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、又は一種以上の茶殻抽出液の乾燥物及び一種以上の茶殻の乾燥物の混合物を含むので、従来の紙おむつ、動物用シーツと比して、排泄した尿により濡れがなく、尿や体臭による汚臭を抑制することができ、例えば、愛玩用の動物用として、休養時、就寝時又は排泄時に使用して、周囲を良好な衛生状態に保っことができる。本発明においては、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、又は一種以上の茶殻抽出液の乾燥物及び茶殼についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を使用して、衛生シーツの使用時の細菌の増殖を抑制するので、大量の一種以上の茶殻抽出液又は一種以上の茶殻から滲出する茶殻残留排液を使用することとなり、従来、活性汚泥処理等により処理されていた廃液を有効に利用でき、缶入り又はパック入りのお茶製造時の廃液及び廃物処理工程を省くことができる。」(【0034】?【0035】)
<原-13>
「【図1】本発明の一実施例の動物用シーツの説明図である。
【図2】発明の別の一実施例の動物用シーツの説明図である。
【図3】本発明の動物用シーツを製造する工程を示す概略の工程図である。」
(【図面の簡単な説明】)
<原-14>
「1 動物用シーツ
2 ポレエチレンフィルム
3 高吸水性ポリマーシート
4 吸水紙
5 ポリプロピレン不織布
6 綿状パルプ
7 高吸水性樹脂
8 吸水紙4のロール
9 吸水紙送り出しローラ
10 綿状パルプの供給ローラ
11 粉砕機
12 一種以上の茶殻抽出液の再抽出液の噴霧箇所
13 一種以上の茶殻抽出液の再抽出液の噴霧器
14 高吸水性樹脂7の散布箇所
15 高吸水性樹脂7の散布機
16 上側吸水紙4の供給箇所
17 積層帯状物16
18 エンボス機
19 マットカッター
20 ポリエチレンフィルム2のロール
21 ポリプロピレン不織布5を被せる箇所
22 ポリプロピレン不織布のロール
23 ホットメルト接着剤噴霧器
24 サイドシール器
25 エンドシール機
26 製品カッター」(【符号の説明】)
<原-15>



」(【図1】)
<原-16>



」(【図2】)
<原-17>



」(【図3】)

(2)検討
摘示した<原-1>?<原-17>の各記載を総合すると、原出願当初明細書等には、従来の寝具用シーツ等の再使用、製造及び廃棄の際などに生ずる種々の問題点の解決とともに、缶入りのお茶及びパック入りのお茶の製造工程で発生する茶殻等の活用による安価な使い捨て衛生シーツの提供を目的・課題とし(摘示<原-4>及び<原-5>)、「一種以上の茶殻抽出液の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツ」又は「一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えていることを特徴とする衛生シーツ」を課題解決の手段とする発明(摘示<原-1>及び<原-6>)が記載され、そして、この発明は、「従来のシーツに比して、缶入り及びパック入りのウーロン茶、緑茶、紅茶の製造時に発生する、例えば茶殻残留廃液を含む茶殻についての抽出液の乾燥物の作用により、汗等の臭いが抑制され、発汗による湿り、及び細菌の増殖を抑えることができ、長時間に亙って、衛生的な状態を保つことができ」、「缶入り及びパック入りのウーロン茶、緑茶、紅茶の製造時に発生する、例えば茶殻残留廃液を含む茶殻を有効に活用することができ」、「一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、又は一種以上の茶殻抽出液の乾燥物及び茶殼についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を使用して、衛生シーツの使用時の細菌の増殖を抑制するので、大量の一種以上の茶殻抽出液又は一種以上の茶殻から滲出する茶殻残留排液を使用することとなり、従来、活性汚泥処理等により処理されていた廃液を有効に利用でき、缶入り又はパック入りのお茶製造時の廃液及び廃物処理工程を省くことができる」こと(摘示<原-12>)を効果とするものであるということができる。
そして、原出願当初明細書等において、「衛生シーツ」は、「特に、寝具用シーツ、マスク、アイマスク、トイレットペーパー、ティッシュ、弁座シート、座席用ヘッドカバー、枕カバー、おむつ、紙おむつ及び動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド及び動物用シーツに使用できる・・・。また、・・・、特に、寝具用シーツ、マスク、アイマスク、トイレットペーパー、ティッシュ、弁座シート、座席用ヘッドカバー、枕カバー、おむつ、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド及び動物用シーツに使用できる使い捨ての衛生シーツ・・・。」(摘示<原-2>)、「寝具用シーツ、マスク、アイマスク、トイレットペーパー、ティッシュ、弁座シート、座席用ヘッドカバー、枕カバー、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド及び動物用シーツに使用でき・・・。・・・、寝具用シーツ、マスク、アイマスク、トイレットペーパー、ティッシュ、弁座シート、座席用ヘッドカバー、枕カバーに使用できる衛生シーツであり・・・使い捨て用素材に適している。さらにまた、本発明の衛生シーツは、透水性の多孔層部と、プラスチック製の不透水性膜部の間に配置できるように形成して、寝具用シーツ、使い捨て用のおむつ、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド及び動物用シーツ・・・。」(摘示<原-7>)であるとされている。
ここで、原出願当初明細書等には、「衛生シーツ」を「寝具用シーツ、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド及び動物用シーツとする場合には、その上面は、多孔層部、例えばポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、ビニロン樹脂等のプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布層部又はポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂等のプラスチック製の多孔膜で形成することができ」(摘示<原-8>)ると記載されているところ、実施例において具体的に記載されている「衛生シーツ」は、実質的に図2で表される動物用シーツ1(ポリエチレンフィルムの上に吸水紙が配置され、その上に綿状パルプが配置され、その上に、高吸水性樹脂が配置され、その上に特定の茶殻抽出液の乾燥物を含む印刷インキが印刷されている吸水紙が配置され、その上を、ポリプロピレン不織布で覆い、ポリプロピレン不織布の端部は、最下層のポリエチレンフィルムの端部とホットメルト接着剤を介してホットメルト接着したもの。摘示<原-10>参照。)のように、吸水性の紙層部、吸水性混合層部、不透水性膜部、多孔層部などを有し、例えば【図3】(摘示<原-16>)のような設備で製造されるもののみである。なお、原出願当初明細書等の発明の詳細な説明には、「衛生シーツ」のうちの「寝具用シーツ、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド及び動物用シーツ」の上面の多孔層部を構成するために用いる場合に多孔層部に特定の茶殻抽出液の乾燥物を含ませることや、図2で表される動物用シーツ1においてポリプロピレン不織布に特定の茶殻抽出液の乾燥物を含ませることについては、何ら記載されていない。
さらに検討すると、原出願当初明細書等には、「含水率60乃至65%の緑茶の茶殻200gに水500mlを加えて10分間抽出して得られた緑茶茶殻抽出液・・・、含水率60乃至65%のウーロン茶の茶殻140gに水350mlを加えて10分間抽出して得られたウーロン茶殻抽出液・・・、含水率60乃至65%の紅茶の茶殻210gに水525mlを加えて10分間抽して得られた紅茶茶殼抽出液を使用し」(摘示<原-10>)、これらの茶殻抽出液を「セルロース系素材で接着剤及び油剤が使用されていない不織布に噴霧」(摘示<原-10>)し、各茶殻抽出液の噴霧の量を、「前記不織布について、一辺の長さが100cmの正方形に切り出して測定」(摘示<原-10>)したことについて記載されており、原出願当初明細書等の発明の詳細な説明には、このような特定の茶抽出液が噴霧され(乾燥され)たセルロース系素材からなる不織布をどのような用途に用いるのかなどについて具体的に何ら記載されていないことなどからみると、当該セルロース系不織布は、衛生シーツのうちの「寝具用シーツ、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド及び動物用シーツ」の上面の多孔層部を構成するために用いられるものの一例として開示されたものであるというべきであり、さらにまた、本願発明における「プラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布」は、「ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、ビニロン樹脂等のプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製」のものであって(摘示<原-8>)、(人工)プラスチック繊維製であるものとは解することができない上記「セルロース系素材からなる不織布」が該当するものとはいえない。
そうすると、原出願当初明細書等には、あくまでも衛生シーツのうちの「寝具用シーツ、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド及び動物用シーツ」の上面の多孔層部を構成するための「プラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布」が記載されているだけであるといわざるを得ず、その余の原出願当初明細書等の記載を精査しても、「特定の茶殻抽出液の乾燥物を含むプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布」について、原出願当初明細書等に記載されているということはできない。

(3)小括
以上のとおりであるから、原出願当初明細書等の上記記載状況の下では、原出願当初明細書等に、特定の使用態様・用途から独立してそれ自体として把握し得る「特定の茶殻抽出液の乾燥物を含むプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布」及び「その製造方法」に係る発明は記載されていないというべきである。

(4)審判請求人の主張
審判請求人は、上記平成20年10月10日付け意見書において、
「[3] 分割の要件について
(1) 本願の原出願の特願10-135881(以下、原出願という)の願書に最初に添付した明細書の段落[0040]及び[0041]には、
『・・(中略)・・
これらの茶殻抽出液は、セルロース系素材で接着剤及び油剤が使用されていない不織布に噴霧された。
・・(中略)・・』
と記載している。
この記載は、原出願の願書に最初に添付した明細書に、「茶殻抽出液の乾燥物を含む不織布の発明」が記載されていることを示している。
(2) また、原出願の願書に最初に添付した明細書の段落[0034]には、吸水性の紙層部について、
『[0034]
【作用】
本発明において、衛生シーツは、茶殻抽出液の乾燥物が含まれている吸水性の紙層部を備えているので、緑茶、ウーロン茶や紅茶等のお茶の茶殻抽出液の乾燥物の作用により、汗等により湿っても、吸水性に優れ、且つ細菌の増殖が抑えられ、長時間に亙って、衛生的な状態を保つことができる。
本発明は、このように、缶入り又はパック入りのウーロン茶、紅茶及び/又は緑茶等のお茶製造産業において多量に発生するウーロン茶、紅茶及び緑茶の茶殻及びそれら茶殻の茶殻残留廃液を衛生シーツの原料として活用して、衛生シーツの衛生状態を、汗等により湿っても、細菌の増殖を抑えて、長時間に亙って良好な状態に保つことができる。』
と記載している。
(3) さらに、原出願の願書に最初に添付した明細書の段落[0017]?[0019]には、「茶殻抽出液の乾燥物」及び「茶殻抽出液の乾燥物が含まれている吸水性の紙層部」について、
『[0017]
本発明において、茶殻抽出液は、茶殻を抽出した抽出液、又は浸出後の茶殻に含有される茶殻残留廃液、或いはこれらの混合物を意味する。
一種以上の茶殻抽出液は、パック入り又は缶入りのウーロン茶、緑茶及び紅茶製造時に抽出滓として排出される茶殻を常温水で又は常温より高い温度の加熱水で浸出して製造することができる。パック入り又は缶入りのウーロン茶、緑茶及び紅茶製造時に抽出滓として排出される茶殻は、一般に、茶殻残留廃液を含んで排出されるが、本発明において、茶殻は、茶殻残留廃液を含んでいてもよく、脱水又は乾燥されていても良い。茶殻についての抽出を終えた茶殻は、茶殻についての浸出後の茶がらであり、残留廃液を含んでいてもよく、脱水又は乾燥されていても良い。
本発明において、一種以上の茶殻抽出液は、緑茶、ウーロン茶又は紅茶の抽出残渣を常温で又は常温より高い温度の加熱水で浸出して製造することができる。
[0018]
本発明において、衛生シーツは、一種以上の茶殻抽出液を、噴霧法、塗布法又は浸漬法等により含浸させた吸水性の紙層等の紙層部を、乾燥することにより製造することができる。乾燥する過程で、吸水性の紙層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物を含有させることができる。
本発明において、衛生シーツは、一種以上の茶殻抽出液、或いは該茶殻抽出液に異種の一種以上の茶殻の茶殻抽出液又は同種又は異種の茶殻の茶殻残留廃液を混ぜた一種以上の茶殻抽出液と一種以上の茶殻残留廃液の混合液、或いは茶殻抽出液に、該抽出液と同種又は異種の茶殻を混ぜた一種以上の茶殻抽出液と一種以上の茶殻との懸濁状混合物を、噴霧法、塗布法又は浸漬法等により含浸させた吸水性の紙層等の紙層部を、乾燥することにより製造でき、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、或いは、一種以上の茶殻抽出液と一種以上の茶殻残留廃液の混合液の乾燥物、或いは一種以上の茶殻抽出液の乾燥物と茶殻乾燥物の混合物を含有する、吸水性の紙層等の紙層部を有するものである。
[0019]
本発明において、茶殻を混合し又は混合しない一種以上の茶殻抽出液、又は一種以上の茶殻残留廃液或いは茶殻を混合し又は混合しない、一種以上の茶殻抽出液及び一種以上の茶殻残留廃液を、印刷インキ組成物と配合して印刷インキに形成することができ、又はこの印刷インキに適当な着色材を配合して、印刷用カラーインキに形成することができる。印刷用カラーインキの場合には、吸水性の紙層部面に全般に亙って所望の模様及び文字を印刷でき、例えば、装飾模様、並びに商業宣伝用の模様及び文字を吸水性の紙層部に印刷することができる。
吸水性の紙層部に含浸させる、一種以上の茶殻抽出液における茶殻抽出液の濃度、茶殻抽出液と茶殻残留廃液の混合液における茶殻抽出液の濃度、或いは一種以上の茶殻抽出液と茶殻の混合物における茶殻抽出液の濃度は、抽出時において使用される茶殻の単位重量に対する抽出に使用する浸出液の水の容量を変えて調整することができる。一種以上の茶殻抽出液における茶殻抽出液の濃度、茶殻抽出液と茶殻残留廃液の混合液における混合割合、或いは一種以上の茶殻抽出液と茶殻の混合物における混合割合は、細菌の増殖の抑制効果が発揮できるように、適宜変えることができる。
茶殻は、抽出され易いので、比較的短時間で抽出することができる。しかし、抽出時間は、2時間以内、特に1時間以内とすると、抽出時間を少なくできるので好ましい。』
と記載している。
(4)ところで、当業者であれば、原出願の出願前に、例えば、ご引用の刊行物Hの記載からも伺えるように、紙層部の性状から不織布の性状は予想できるから、本願発明の不織布の構成、目的及び効果は、原出願の明細書に記載されるところである。
したがって、原出願は不織布に係る発明を包含するものであるから、本願は、特許法第44条第1項の規定に基づき、二以上の発明を包含する特許出願の一部を新たな特許出願としたものであり、特許出願の分割の要件を備えるものである。
したがって、本願は、特許法第44条第2項の規定により、もとの特許出願の時にしたものとみなされるべきものである。
(5)また、原出願の明細書の衛生シーツに係る部分は、本願発明の不織布の使用の一態様であり、本願発明の不織布の作用効果の一であるから、本願明細書は、本願発明の実施態様及び作用効果を説明する上で、衛生シーツに係る部分の記載を利用するものである。
したがって、本願明細書に、衛生シーツに係る記載箇所があっても、それらは、本願発明の不織布の使用態様の一であり、本願発明の不織布の作用効果の一を具体的に示すものであるから、「不織布」の発明の構成、作用及び効果をより具体的に示すものであり、特許を受けようとする発明を明確にするものと思料する。」
と主張している(意見書「[3] 分割の要件について」の欄)。
そこで、原出願当初明細書等の記載に基づき検討すると、原出願当初明細書等には、段落【0040】及び【0041】は存在せず、仮に、段落【0029】及び【0030】に係る指摘の単なる誤記であったとしても、上記「(2)検討」で説示したとおり、当該部分には、「特定の茶殻抽出液の乾燥物を含むプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布」又は「その製造方法」について記載されているものとはいえない。
また、上記段落【0034】及び【0017】?【0019】の記載を検討しても、特定の茶殻抽出液の乾燥物を含有させているのは、「紙層部」であって、「プラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布」の部分に特定の茶殻抽出液の乾燥物を含有させることが記載されているものとはいえない。
したがって、審判請求人の上記意見書における「[3] 分割の要件について」の欄の主張は、いずれも原出願当初明細書等の記載に基づかないものであり、根拠を欠くものであるから、採用する余地がなく、当審の上記検討結果を左右するものではない。

(5)分割要件に係るまとめ
以上のとおり、本願発明1ないし3は、いずれも原出願当初明細書等に記載されていないものであるから、本願発明1ないし3につき、分割直前の原出願の願書に添付された明細書又は図面に記載したものか否かの検討を行うまでもなく、本願に係る出願の分割は、分割要件を満たしておらず、本願は、原出願の出願日に出願したものとみなすことができない。
また、本願は、原出願の出願日に出願したものとみなすことができないのであるから、現実の出願日に出願したと解すべきものであるが、当該実際の出願日は、本願に係る優先権主張の基礎となる特許出願の日から1年以内ではないから、平成14年改正前の特許法第41条第1項第1号に該当し、同法同条同項に規定する要件を満たしておらず、本願は、同法同条第2項に規定する優先権主張の効果を得ることもできない。

2.拒絶理由について

(1)はじめに
上記1.で説示したとおり、本願に係る出願の分割は、分割要件を満たしていないものであるから、現実の出願日(平成13年2月28日)に先の出願に基づく優先権主張がなく出願したものとして、当審が通知した上記拒絶理由につき、再度検討する。

(2)平成14年改正前特許法第36条第6項に係る理由(上記「拒絶の理由2」)

ア.検討するにあたって(前提)
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆる、「明細書のサポート要件」)に適合するか否かは、「特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきもの」(知財高裁特別部平成17年(行ケ)第10042号判決)であるから、この観点に立って検討する。

イ.本願明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
(審決注:摘示における下線部は、平成20年10月6日付けの手続補正(2通)により補正された部分である。)

(ア)「【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布に関し、例えば、紙おむつ廃材、生理用ナプキン廃材等の有機、物廃材を利用した衛生シーツに使用されるプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布に関する。本発明は、特に、上面を形成する透水性薄層部の多孔層部にプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布を使用する、寝具用シーツ、マスク、アイマスク、トイレットペーパー、ティッシュ、弁座シート、座席用ヘッドカバー、枕カバー、おむつ、紙おむつ及び動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド及び動物用シーツに使用できる衛生シーツに関する。
また、本発明は、長時間使用して衛生状態を保持することができるプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布を使用する使い捨ての衛生シーツに関し、特に、特に、寝具用シーツ、マスク、アイマスク、トイレットペーパー、ティッシュ、弁座シート、座席用ヘッドカバー、枕カバー、おむつ、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド及び動物用シーツに使用できるプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布を使用する使い捨ての衛生シーツに関する。」(【0001】)

(イ)「【従来の技術】
一般に、衛生用シーツは、寝具用シーツ、紙おむつ、生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パッド、おむつ及びペット用シーツなどに使用されている。例えば、寝具用シーツは、ベッドや敷布団の上に敷いて、ベッドや布団の耐久性を保ち、ベッドや布団を清潔に維持するために用いられている。
就寝中にも、人間の皮膚からは、汗以外に水分が絶えず外に排泄されており、これらの水分は、寝床や寝衣に吸い取られるので、例えば、寝具用シーツには、保温性及び適度の吸湿性を備えることが要求される。
また、寝具用シーツや寝具は、吸湿性や吸水性の高い繊維で形成されるので、皮膚表面から脱落した角化した角質層や皮膚に付着した塵に皮膚の皮脂や汗などによる垢などが付着して、汚染され易く、病原菌が増殖することとなり、特に、蓐瘡等の場合に問題である。
そこで、寝具用シーツや寝具については、常に清潔さを保つために、常に清浄さが保てるように、頻繁に取り替えて、繰り返し使用できるように、洗濯に強い木綿等が素材として使用されている。」(【0002】?【0003】)

(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
しかし、木綿製等の寝具用シーツの場合、取り替える度毎に、洗濯されるが、比較的嵩ばるのと、汚れの程度が相違し、また洗濯により清浄にできる程度も相違するので、自動洗濯機等によるとしても、希望するように清潔にすることは難しく、またそのようにするには多くの手間を要して問題である。
そこで、パルプ粉砕物に粉状の高吸水性樹脂を含有保持させた吸水層を設けた使い捨ての寝具用シーツが使用されている。しかし、パルプ粉砕物が、従前に比して入手困難であり、比較的高価であるために、使い捨ての寝具用シーツは、パルプ粉砕物の使用量を減らし、このパルプ粉砕物の減った分の吸水能を高吸水性樹脂で補って形成されている。そのために、寝具用シーツは、比較的薄く形成されることとなり、弾力性に乏しく、比較的堅いものとなり、問題とされている。また、パルプ粉砕物を補うために加えられた高吸水性樹脂の発熱量は、減らしたパルプ粉砕物の発熱量に比してかなり低いために、使用後で濡れたシーツなどの場合には、燃料を加えないと燃焼が維持できなくなり、外部から熱を与えなければ焼却できなくなり問題である。
一方、缶入りのお茶及びパック入りのお茶の製造業から排出される、お茶の浸出滓の茶殻、及び該茶殻に残留して茶殻から滲出する茶殻残留廃液は膨大な量に上っている。しかし、茶殻はかなりの量の茶殻残留液を含むために、堆肥等に有効利用するにも、その処理が難しく、問題とされている。しかも、茶殻残留廃液には、タンニン類が含まれているために、その侭廃棄できず、廃棄するには、活性汚泥法等により無害化処理をしなければならず、またその沈殿物は専ら焼却処理しなければならず問題とされている。
本発明は、従来の寝具用シーツ等の再使用の際に多くの手間を要する問題点を解決すると共に、缶入りのお茶及びパック入りのお茶の製造工程で発生する茶殻及び茶殻残留廃液の処理を目的としている。」(【0004】?【0005】)

(エ)「【課題を解決するための手段】
本発明者は、ウーロン茶を抽出した茶殻について水又は湯により浸出した茶殻抽出液が、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、レジオネラ菌及び連鎖球菌の増殖を24時間以上に亙って阻害することを発見し、また緑茶を抽出した茶殻について水又は湯により浸出した茶殻抽出液が、黄色ブドウ球菌、レジオネラ菌及び連鎖球菌の増殖を24時間に亙って阻害することを発見し、さらに紅茶を抽出した茶殻について水または湯により浸出した茶殻抽出液が、黄色ブドウ球菌及び連鎖球菌の増殖を24時間に亙って阻害することを発見して本発明に至った。
本発明は、一種以上の茶殻抽出液、即ち一種以上の茶殻残留廃液を含む茶殻の浸出液、又は前記一種以上の茶殻を常温水又は常温より高い温度の加熱水により浸出した茶殻抽出液、この再浸出された茶殻の混合物を、吸水性の紙層部、吸水性材料粉と吸水性樹脂の混合層部、或いは吸水性の紙層部と前記混合層に含浸保持させて乾燥して得られる衛生的に優れた衛生シーツを提供するものであり、また、一種以上の茶殻抽出液、茶殻残留廃液及び茶殻を活用できる、安価な使い捨て衛生シーツを提供することを目的としている。
即ち、本発明は、ウーロン茶、緑茶若しくは紅茶の茶殻又はこれら二種以上の茶殻を常温又は常温より高い温度の水で抽出して製造された茶殻抽出液の乾燥物を含むプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布であることを特徴とする不織布にある。
さらに、本発明は、ウーロン茶、緑茶若しくは紅茶の茶殻又はこれら二種以上の茶殻を常温又は常温より高い温度の水で抽出して製造された茶殻抽出液の乾燥物を含む不織布において、不織布が衛生シーツに使用されるものであることを特徴とする不織布にある。
さらに加えて、本発明は、不織布に、ウーロン茶、緑茶若しくは紅茶の茶殻又はこれら二種以上の茶殻を、常温又は常温より高い温度の水で抽出して製造された茶殻抽出液を噴霧し、乾燥することを特徴とする不織布の製造方法にある。」(【0006】?【0009】)

(オ)「本発明において、寝具用シーツ、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド及び動物用シーツとする場合には、その上面は、多孔層部、例えばポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、ビニロン樹脂等のプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布層部又はポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂等のプラスチック製の多孔膜で形成することができ、下面の不透水性膜部は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のプラスチック製の不透水性膜で形成することができる。本発明において、前記多孔層部の下には、その下面に接して第一の吸水性の紙層部を設けることができる。」(【0012】)

(カ)「本発明において、茶殻抽出液は、茶殻を抽出した抽出液、又は浸出後の茶殻に含有される茶殻残留廃液、或いはこれらの混合物を意味する。
・・(中略)・・
本発明において、一種以上の茶殻抽出液は、緑茶、ウーロン茶又は紅茶の抽出残渣を常温で又は常温より高い温度の加熱水で浸出して製造することができる。
本発明において、衛生シーツは、一種以上の茶殻抽出液を、噴霧法、塗布法又は浸漬法等により含浸させた吸水性の紙層等の紙層部を、乾燥することにより製造することができる。乾燥する過程で、吸水性の紙層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物を含有させることができる。
本発明において、衛生シーツは、一種以上の茶殻抽出液、或いは該茶殻抽出液に異種の一種以上の茶殻の茶殻抽出液又は同種又は異種の茶殻の茶殻残留廃液を混ぜた一種以上の茶殻抽出液と一種以上の茶殻残留廃液の混合液、或いは茶殻抽出液に、該抽出液と同種又は異種の茶殻を混ぜた一種以上の茶殻抽出液と一種以上の茶殻との懸濁状混合物を、噴霧法、塗布法又は浸漬法等により含浸させた吸水性の紙層等の紙層部を、乾燥することにより製造でき、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、或いは、一種以上の茶殻抽出液と一種以上の茶殻残留廃液の混合液の乾燥物、或いは一種以上の茶殻抽出液の乾燥物と茶殻乾燥物の混合物を含有する、吸水性の紙層等の紙層部を有するものである。
本発明において、茶殻を混合し又は混合しない一種以上の茶殻抽出液、又は一種以上の茶殻残留廃液或いは茶殻を混合し又は混合しない、一種以上の茶殻抽出液及び一種以上の茶殻残留廃液を、印刷インキ組成物と配合して印刷インキに形成することができ、又はこの印刷インキに適当な着色材を配合して、印刷用カラーインキに形成することができる。印刷用カラーインキの場合には、吸水性の紙層部面に全般に亙って所望の模様及び文字を印刷でき、例えば、装飾模様、並びに商業宣伝用の模様及び文字を吸水性の紙層部に印刷することができる。
吸水性の紙層部に含浸させる、一種以上の茶殻抽出液における茶殻抽出液の濃度、茶殻抽出液と茶殻残留廃液の混合液における茶殻抽出液の濃度、或いは一種以上の茶殻抽出液と茶殻の混合物における茶殻抽出液の濃度は、抽出時において使用される茶殻の単位重量に対する抽出に使用する浸出液の水の容量を変えて調整することができる。一種以上の茶殻抽出液における茶殻抽出液の濃度、茶殻抽出液と茶殻残留廃液の混合液における混合割合、或いは一種以上の茶殻抽出液と茶殻の混合物における混合割合は、細菌の増殖の抑制効果が発揮できるように、適宜変えることができる。
茶殻は、抽出され易いので、比較的短時間で抽出することができる。しかし、抽出時間は、2時間以内、特に1時間以内とすると、抽出時間を少なくできるので好ましい。」(【0017】?【0019】)

(キ)「【作用】
本発明において、衛生シーツは、茶殻抽出液の乾燥物が含まれている吸水性の紙層部を備えているので、緑茶、ウーロン茶や紅茶等のお茶の茶殻抽出液の乾燥物の作用により、汗等により湿っても、吸水性に優れ、且つ細菌の増殖が抑えられ、長時間に亙って、衛生的な状態を保つことができる。
本発明は、このように、缶入り又はパック入りのウーロン茶、紅茶及び/又は緑茶等のお茶製造産業において多量に発生するウーロン茶、紅茶及び緑茶の茶殻及びそれら茶殻の茶殻残留廃液を衛生シーツの原料として活用して、衛生シーツの衛生状態を、汗等により湿っても、細菌の増殖を抑えて、長時間に亙って良好な状態に保つことができる。」(【0024】)

(ク)「図3において、吸水紙4のロール8は、吸水紙送り出しローラ9により引き出されて、綿状パルプ6の供給ローラ10に送られて、粉砕機11で粉砕された綿状パルプ6が供給される。綿状パルプ6が供給された吸水紙4は、吸水紙4上の綿状パルプ6の量が一定となるように調整されている。一種以上の茶殻抽出液(茶殻の再浸出液)は、噴霧箇所12に送られて、一種以上の茶殻抽出液を噴霧器13から噴霧される。
本例においては、このようにして、一種以上の茶殻抽出液の再抽出液が、吸水紙4上の一定量の綿状パルプに噴霧される。一種以上の茶殻抽出液の再抽出液が噴霧された吸水紙4は、高吸水性樹脂7の散布箇所14に送られる。高吸水性樹脂7の散布箇所14に送られた一種以上の茶殻抽出液が噴霧された吸水紙4には、高吸水性樹脂7が高吸水性樹脂散布機15から散布される。
高吸水性樹脂7が散布された吸水紙4は、上側吸水紙4の供給箇所16に送られて、吸水紙4のロール8から上方に吸水紙4が載せられる。上下に吸水紙4が配置された積層帯状物17は、エンボス機18に送られてエンボスが形成される。エンボスが形成された積層帯状物は17は、マットカッター19に送られて、長さ450mmの積層物に切断される。切断された積層物の下方には、下方からポリエチレンフィルム2がポリエチレンフィルム2のロール20から供給され、積層物はポリエチレンフィルム2の上に載せられて、ポリプロピレン不織布5を被せる箇所21に送られる。
ポリプロピレン不織布5は、ポリプロピレン不織布5のロール22から送られ、途中ホットメルト接着剤が噴霧器23から噴霧される。ホットメルト接着剤が噴霧されたポリプロピレン不織布5は、積層物上に載せられる。ポリプロピレン不織布が載せられた積層物は、サイドシール機24に送られて、両側部は、圧着されて、ホットメルト接着剤により接着される。両側部が接着された積層物は、エンドシール機25に送られて長手方向両端部が接着され、製品カッター26に送られ、所定の寸法に切断され製品として送られる。製品カッター26で切断された製品は、折り機によって折られ包装機により包装されて出荷される。
本例においては、動物用シーツを例に説明したが、他の衛生シーツの場合は、紙漉機等により、紙層部が形成されて乾燥工程に移行する段階で、茶殻抽出液、例えばウーロン茶の茶殻抽出液が噴霧されて含浸される。茶殻抽出液が含浸された紙層部は、乾燥機内で高温で乾燥され、消毒されて衛生シーツとして提供される。この場合、茶殻抽出液に、複数種の茶殻抽出液を混合した混合抽出液を含浸させて乾燥することができる。このように各種の抽出液を混合することにより、より強力な微生物の増殖の抑制作用を発揮させることができる。」(【0042】?【0044】)

(ケ)「【発明の効果】
本発明において、衛生シーツは、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えているので、従来のシーツに比して、缶入り及びパック入りのウーロン茶、緑茶、紅茶の製造時に発生する、例えば茶殻残留廃液を含む茶殻についての抽出液の乾燥物の作用により、汗等の臭いが抑制され、発汗による湿り、及び細菌の増殖を抑えることができ、長時間に亙って、衛生的な状態を保つことができる。缶入り及びパック入りのウーロン茶、緑茶、紅茶の製造時に発生する、例えば茶殻残留廃液を含む茶殻を有効に活用することができる。
また、本発明においては、上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、該第一紙層部の下面に接して位置する吸水性材料粉及び吸水性樹脂が配合された配合物を含む混合層部と、該混合層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、前記第二紙層部の下方に位置して配置されており、前記第一紙層部、前記混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、又は一種以上の茶殻抽出液の乾燥物及び一種以上の茶殻の乾燥物の混合物を含むので、従来の紙おむつ、動物用シーツと比して、排泄した尿により濡れがなく、尿や体臭による汚臭を抑制することができ、例えば、愛玩用の動物用として、休養時、就寝時又は排泄時に使用して、周囲を良好な衛生状態に保っことができる。
本発明においては、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物、又は一種以上の茶殻抽出液の乾燥物及び茶殻についての抽出を終えた一種以上の茶殻の乾燥物を使用して、衛生シーツの使用時の細菌の増殖を抑制するので、大量の一種以上の茶殻抽出液又は一種以上の茶殻から滲出する茶殻残留排液を使用することとなり、従来、活性汚泥処理等により処理されていた廃液を有効に利用でき、缶入り又はパック入りのお茶製造時の廃液及び廃物処理工程を省くことができる。」(【0045】?【0046】)

上記(ア)?(ケ)の摘示によれば、本願明細書の発明の詳細な説明には、「プラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布に関し、例えば、紙おむつ廃材、生理用ナプキン廃材等の有機、物廃材を利用した衛生シーツに使用されるプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布」及び「長時間使用して衛生状態を保持することができるプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布を使用する使い捨ての衛生シーツ」(上記(ア))についての発明が記載されていて、「従来の寝具用シーツ等の再使用の際に多くの手間を要する問題点を解決すると共に、缶入りのお茶及びパック入りのお茶の製造工程で発生する茶殻及び茶殻残留廃液の処理を目的として」おり(摘示(ウ))、また、「衛生的に優れた」「安価な使い捨て衛生シーツを提供することを目的としている」(摘示(エ))ものであって、これらを発明の解決すべき課題とするものであり、「衛生シーツは、一種以上の茶殻抽出液の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えているので、従来のシーツに比して、缶入り及びパック入りのウーロン茶、緑茶、紅茶の製造時に発生する、例えば茶殻残留廃液を含む茶殻についての抽出液の乾燥物の作用により、汗等の臭いが抑制され、発汗による湿り、及び細菌の増殖を抑えることができ、長時間に亙って、衛生的な状態を保つことができる。缶入り及びパック入りのウーロン茶、緑茶、紅茶の製造時に発生する、例えば茶殻残留廃液を含む茶殻を有効に活用することができる。」(摘示(キ)及び(ケ))という効果が得られる旨が記載されていると認められる。
しかしながら、本願明細書の発明の詳細な説明には、「茶殻抽出液の乾燥物を含むプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布」又は当該「不織布」が使用された「衛生シーツ」が、上記課題・目的(特に「汗等の臭いが抑制され、発汗による湿り、及び細菌の増殖を抑えることができ、長時間に亙って、衛生的な状態を保つことができる」点)を全て解決・達成できると当業者が認識し得たということを裏付けるような記載は存在しない。

ウ.発明の詳細な説明に記載された発明と請求項に係る発明との対比・検討

(ウ-1)請求項1について
本願明細書の発明の詳細な説明には、従来の寝具用シーツ等の再使用の際の問題点の解決、茶殻及び茶殻残留廃液の有効活用による処理及び衛生的に優れた安価な使い捨て衛生シーツの提供等の課題を解決するために、茶殻抽出液の乾燥物を含む吸水性の紙層部を備えた衛生シートとしたことが記載されているものの、請求項1に記載された技術事項で特定される「茶殻抽出液の乾燥物を含むプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布」又は当該「不織布」を備えた「衛生シーツ」が、上記課題を解決できることは記載又は示唆されておらず、してみると、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願発明1が、上記課題を解決することができると当業者において認識できる程度に、具体例等を開示して記載しているということはできない。
また、本願明細書の発明の詳細な説明には、茶殻抽出液が種々の菌類の増殖を阻害することが記載されており(上記摘示(エ))、当該事項は、本願が上記1.で説示したとおり分割不適法であることから原出願の出願公開(特開平11-1896号公報)により少なくとも公知となったものではあるものの、茶殻抽出液ではなく、茶殻抽出液の乾燥物又は当該乾燥物を含むプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布が、茶殻抽出液同様の効果を奏し、「汗等の臭いが抑制され、発汗による湿り、及び細菌の増殖を抑えることができ、長時間に亙って、衛生的な状態を保つことができる」なる課題解決がなされるか否かは、当業者にとっても不明であって、試行錯誤による確認を要する事項であるものといえる。
(例えば、プラスチック繊維製不織布の代表例の一つであり、本願明細書の発明の詳細な説明にも衛生シートの茶殻抽出液の乾燥物を含まない多孔層部を構成する材料として使用される「ポリプロピレン不織布」は、種々の極性材料(特に水性媒体)とのぬれ性(親和性)に極めて乏しいことが当業者の技術常識の範疇の事項であるから、本願発明3のように不織布に対して茶殻抽出液を噴霧塗布し乾燥させたからといって、茶殻抽出液の乾燥物を不織布の繊維表面に定着できるか否か不明であって、当該不織布が、「長時間に亙って、衛生的な状態を保つ」なる効果を奏するか不明である。)
そして、本願明細書の発明の詳細な説明には、(人工)プラスチック繊維製であるものとは解することができない「セルロース系素材からなる不織布」に茶殻抽出液を噴霧塗布し乾燥させた場合、重量が増加し茶殻抽出液の乾燥物が定着していることが具体例として記載されているのみであり(【0040】?【0041】)、当該不織布に係る「長時間に亙って、衛生的な状態を保つ」なる効果及び「セルロース系素材からなる不織布」以外のプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布の場合については、何ら記載されていない、これらが当業者にとって技術常識に照らして自明な事項であるということもできない。
してみると、当業者が技術常識に照らしても、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願発明1が、「長時間に亙って、衛生的な状態を保つ」なる効果を奏することができると当業者において認識できる程度に記載しているということはできない。

(ウ-2)請求項2について
また、請求項2の記載は、請求項1の記載を引用して、「不織布が衛生シーツに使用されるものであることを特徴とする請求項1に記載の不織布」と記載されているものであるから、上記(ウ-1)で説示した理由と同一の理由により、仮に当業者が技術常識に照らしたとしても、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願発明2が、「長時間に亙って、衛生的な状態を保つ」なる効果を奏することができると当業者において認識できる程度に記載しているということはできない。

(ウ-3)
さらに、請求項3は、「不織布に、ウーロン茶、緑茶若しくは紅茶の茶殻又はこれら二種以上の茶殻を、常温又は常温より高い温度の水で抽出して製造された茶殻抽出液を、プラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布に噴霧し、乾燥することを特徴とする不織布の製造方法」と記載されているものであるが、上記(ウ-1)でも説示したとおり、(人工)プラスチック繊維製であるものとは解することができない「セルロース系素材からなる不織布」以外のプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布に対して茶殻抽出液を噴霧し乾燥させる不織布の製造方法につき具体的に記載されておらず、当該製造方法により製造された不織布が、「長時間に亙って、衛生的な状態を保つ」なる効果を奏するか否かについても記載されていないから、上記(ウ-1)で説示した理由と同一の理由により、仮に当業者が技術常識に照らしたとしても、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願発明3が、「長時間に亙って、衛生的な状態を保つ」なる効果を奏する不織布を製造することができると当業者において認識できる程度に記載しているということはできない。

エ.審判請求人の主張
審判請求人は、平成20年10月10日付け意見書において、
「既に述べたように、本願明細書及び原明細書の発明の詳細な説明には、本願の請求項1に記載の「ウーロン茶、緑茶若しくは紅茶の茶殻又はこれら二種以上の茶殻を常温又は常温より高い温度の水で抽出して製造された茶殻抽出液の乾燥物を含むプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布」及び本願の請求項3に記載の「不織布に、ウーロン茶、緑茶若しくは紅茶の茶殻又はこれら二種以上の茶殻を、常温又は常温より高い温度の水で抽出して製造された茶殻抽出液を、プラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布に噴霧し、乾燥することを特徴とする不織布の製造方法」について、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されている。
したがって、本願の特許請求の範囲の記載の請求項1、2及び3に記載の発明は、何れも、本願明細書の発明の詳細な説明に、十分に記載されたものであり、明確である。
よって、本願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。」
と主張する(意見書「[6]拒絶理由2について」の欄)が、上記ウ.でそれぞれ指摘及び説示したとおり、本願明細書の発明の詳細な説明には、(人工)プラスチック繊維製であるものとは解することができない「セルロース系素材からなる不織布」以外のプラスチック繊維製又はレーヨン繊維製の不織布に対して茶殻抽出液を噴霧し乾燥させる不織布の製造方法につき具体的に記載されておらず、当該製造方法により製造された不織布が、「長時間に亙って、衛生的な状態を保つ」なる効果を奏するか否かについても記載されていないのであるから、本願発明1ないし3を当業者が実施できるか否かはともかく、上記ウ.で説示したとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願発明1ないし3が、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された解決しようとする課題を解決できると当業者が認識できるように記載されているとはいうことができない。
してみると、請求人の上記意見書における主張は、明らかに当を得ないものであり、採用する余地がない。

オ.小括
したがって、これらを総合すると、本願発明1ないし3が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということもできないから、請求項1ないし3の各記載は、同各項に記載された事項で特定される特許を受けようとする本願発明1ないし3が、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるということができず、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するということはできない。

(3)特許法第29条第2項に係る理由(上記「拒絶の理由4」)

ア.当審が通知した理由
当審が通知した拒絶の理由4の概略につき、平成20年10月6日付けの手続補正(2通)の結果を踏まえて表現すると、以下のとおりのものとなる。

本願は、上記1.で説示したとおり分割要件を満たさない出願であるから、本願について出願日の遡及は認められず、そうすると、本願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物A?Mに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物
刊行物A:特開平11-1896号公報
刊行物B:特開昭55-98998号公報
刊行物C:特開平9-72072号公報
刊行物D:特開平8-333271号公報
刊行物E:登録実用新案第3032802号公報
刊行物F:特開平3-29623号公報
刊行物G:特開昭62-275466号公報
刊行物H:日本繊維機械学会不織布研究会編,不織布の基礎と応用,平成5年8月25日,社団法人日本繊維機械学会発行, 11,19?23,83,96?97,189?191,331?333及び375ページ
刊行物I:特開平7-143940号公報
刊行物J:特開平5-211838号公報
刊行物K:機能材料1997年1月号 43ページ?49ページ

そこで、上記拒絶理由の当否につき、以下検討する。

イ.刊行物に記載された事項

(ア)刊行物A:特開平11-1896号公報
原出願の公開公報であって、原出願当初明細書等と同一の内容であり、それに記載された事項は、上記1.で指摘した<原-1>ないし<原-17>のとおりである。

(イ)刊行物H:日本繊維機械学会不織布研究会編,不織布の基礎と応用,平成5年8月25日,社団法人日本繊維機械学会発行,11,19?23,83,189?191,331?332,375ページ
<H-1>
「不織布に使用される繊維は天然,人造と広範囲であり,綿,麻,羊毛,石綿,ガラス,アセテート,ナイロン,ポリエステル,ポリプロピレンなどがあるが,特に湿式不織布には木材パルプが大量に使用されている.」(11ページ3?5行)
<H-2>
「不織布用繊維の選択に当たっては,不織布の製法,・・・などが勘案される.それと同時に重視されるのは最終製品の特性である.所望特性は不織布製法,後加工法および主副原料の選択により得られるが,とりわけ原料繊維の特性に由来する要因が重要である.繊維には,原料の選択,混合使用,改質,改良剤添加などの原料により得られる特性,繊維の製造法により得られる特性および繊維化後の物理的,化学的処理によって得られる特性がある.表2・6に繊維の特性と製法および応用例を示した.






」(19ページ下から5行?23ページ3行)
<H-3>
「第3章 不織布の製法
3・1 製造方法の分類
不織布は繊維をシート状に形成させ,ウェブ(web,シート,マット,バット,ラップ,フリースなどともいう)とし,ウェブ内の繊維を接着あるいは絡み合わせ(ボンディング,bonding)て布形化し,さらに仕上加工して作られる.ウェブは主に短繊維あるいはフィラメントから形成され,短繊維を使用するものには乾式(dry system)と呼ばれ,カーディングやエアレイを含むものと,湿式(wet system)と呼ばれ抄紙法からなるものがあるが,湿式のなかにはフィラメントから作られるものもある.」(83ページ1行?9行)
<H-4>
「3・4・4 コーティング加工
現在,不織布に行われているコーティング(coating)には含浸,ロールコーティング,ナイフコーティング,カレンダートッピング,Tダイコーティング,粉体コーティング,スプレーコーティング,特殊コーティングなどがある.これらの加工は,不織布という素材の持つ特性を生かしながら,その用途に基づく要求品質の付与を狙いとしているが,コーティング加工上,欠点である不織布の多孔体と,ルーズな繊維で構成されているため,機械的外力,摩擦を強く掛けられないなどの点を,うまく克服し不織布に適した方式になっている.
コーティング加工の歴史は,旧く古代エジプトにさかのぼることができ,ミイラを包む織物にゴム樹液や樹脂液でコーティング加工したことから始まるとされている.それ以降,織物,編物,フィルム,そして不織布にと,あらゆる基材に,コーティングが施され,その主成分である樹脂や,機能性薬剤の新たなる開発,進歩によって,非常に高度化,多様化してきている.その中で不織布を基材としたコーティング製品のその用途および実例,そしてどういう機能をどういうコーティングによって具現化するのか,表3.28(審決注:表3.28は加熱ローラーの用法に係るものであり、表3.32の誤りと認める。)にその概要を示す.

・・(中略)・・
(g)スプレーコーティング法:図3.87のスプレーガンを用いて樹脂を点状にウェブに付着させ,仕上げる方法であるが含浸と比較すると嵩高な不織布に仕上げることと乾燥エネルギーが少なくて済むのが特徴である.キルティング材,フィルター材など広く用いられる.」(189ページ下から4行?196ページ下から13行)
<H-5>
「6・3 医療用
近年,医療用不織布製品は,メーカーが病院のニーズに合わせた製品開発を積極的に進めるようになる一方で,病院においてもその特徴が認識されるようになり,使用量は確実に増加している.
・・(中略)・・
6・3・1 国内市場の現状
市場における主要製品は用途別に次のように挙げられる.
(1)用途別-主要製品
手術室;・・・,マスク,・・・、手術台シーツ,
ICU,病棟;・・・,マスク,・・・シーツ,・・・
・・(中略)・・
上記のように多種類の商品が使われている.」(331ページ1行?332ページ12行)
<H-6>
「6・7 衛生用
不織布を用いた衛生用品としては,ベビー用および大人用紙おむつ,生理用ナプキン,失禁用パッドなとがある.」(375ページ10行?12行)

ウ.検討

(ア)刊行物Aに記載された発明
刊行物Aには、緑茶、ウーロン茶又は紅茶の各茶殻を水により抽出してなる茶殻抽出液をセルロース系素材で接着剤及び油剤が使用されていない不織布に噴霧した後乾燥させてなる不織布が記載されており、不織布に茶殻抽出液を噴霧し乾燥させた場合、重量が増加していることも記載されている(<原-10>)。
してみると、不織布に茶殻抽出液を噴霧し乾燥させた場合、重量が増加していることからみて、乾燥後の不織布は、茶殻抽出液の乾燥物を含むものと解するのが自然であり、また、当該水による抽出について、抽出温度に係る特段の記載がないことからみて、常温で抽出を行っているものといえる。
したがって、刊行物Aには、本願請求項1に倣い表現すると、
「ウーロン茶、緑茶若しくは紅茶の茶殻を常温の水で抽出して製造された茶殻抽出液の乾燥物を含むセルロース素材製の不織布」
に係る発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

(イ)本願発明1との対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、「ウーロン茶、緑茶若しくは紅茶の茶殻を常温の水で抽出して製造された茶殻抽出液の乾燥物を含む不織布」に係る発明である点で一致し、下記の点でのみ相違していることが明らかである。
相違点:不織布の材料につき、本願発明1では、「プラスチック繊維製又はレーヨン繊維製」であるのに対し、引用発明では、「セルロース素材製」である点

(ウ)相違点に係る検討
そこで上記相違点につき検討すると、上記刊行物Hにも記載されているとおり、不織布に使用される繊維は、人造のものを含めて広範囲であり、アセテート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレンなどのプラスチック繊維あるいは木材パルプなどのセルロース素材を使用することは当業界周知慣用の技術であり(摘示<H-1>)、不織布用の繊維の選択にあたっては、不織布の製法及び最終製品の特性に応じて行うことも当業界周知慣用の技術である(摘示<H-2>)から、引用発明において、セルロース素材製の不織布に代えて、単に所望に応じて、上記当業界周知慣用の技術に基づき、アセテート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレンなどのプラスチック繊維製のものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。

(エ)本願発明1の効果について
本願発明1の効果につき、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を検討しても、不織布の材料につき「プラスチック繊維製又はレーヨン繊維製」のものを選択使用したことにより、当業者が予測し得ない、顕著な効果を奏しているものということができない。

(オ)小括
以上のとおり、本願発明1は、引用発明に基づいて、当業界周知慣用の技術を付加することにより、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

(カ)審判請求人の主張
審判請求人は、平成20年10月10日付け意見書において、上記「拒絶の理由4」につき縷々主張している(「[4]拒絶理由3について」、「[5]拒絶理由4について」及び「[6]本願発明の進歩性」の各欄)。
しかしながら、当該各主張は、いずれも上記刊行物Aにつき本願出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物ではないとの見地にたったものであるところ、本願は、上記1.で説示した理由により分割不適法であって、出願日が現実の出願日であるから、上記刊行物Aは、本願出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるというべきである。
したがって、審判請求人の上記意見書における主張は、その根拠を欠くものであり、当を得ないものであるから、採用する余地がなく、当審の上記「拒絶の理由4」に係る判断を左右するものではない。

エ.「拒絶の理由4」に係るまとめ
以上のとおりであるから、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

第5 まとめ
以上のとおり、本願請求項1ないし3の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するとはいえないものであり、同法同条同項に規定する要件を満たしていないものであるとともに、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができないものであるから、他の拒絶理由につき検討するまでもなく、本願は、特許法第49条第2号及び同法同条第4号に該当し、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-01 
結審通知日 2009-07-28 
審決日 2009-08-19 
出願番号 特願2001-56059(P2001-56059)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (D04H)
P 1 8・ 537- WZ (D04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 裕彰  
特許庁審判長 原 健司
特許庁審判官 松本 直子
橋本 栄和
発明の名称 不織布及びその製法  
代理人 中里 浩一  
代理人 滝口 昌司  

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